『新オズのカボチャ頭のジャック』




               第五幕  天主閣から見た景色

 皆は朝起きて朝ご飯の場でお話しました。
「何かね」
「ええ、旅館に泊まってる気分よ」
「日本のね」
「畳のお部屋でお布団で寝て」
「天主閣にいる気がしないよ」
「左様、この城の天主閣は違うのじゃ」
 信長さんが言ってきました、見れば朝ご飯は白いご飯にです。
 ゆで卵にめざし、お漬けものに梅干しそれに海苔に茸とお豆腐のお味噌汁にです。
 焼き味噌があります、信長さんはまずはです。 
 梅干を食べてその種を左手の平に吹き出してから他のものを食べます、そのうえで恵梨香達にお話するのでした。
「安土城はな」
「昨日見せてくれた通りにですね」
「色々な教えが描かれていて」
「それで人が住める様になっていて」
「そうしたところが違うんですね」
「他のお城と」
「本来天守閣と書くな」 
 漢字でのお話もしました。
「しかしこの安土城はじゃ」
「天主閣ですね」
「天を守るんじゃなくて」
「天の主ですね」
「同じ読み方でも」
「そうなりますね」
「そうじゃ、そこが違ってな」
 それでというのです。
「あらゆる教えを描かせてじゃ」
「人が住める様にもしている」
「そこが違うんですね」
「こうした豪勢な暮らしが出来るんですね」
「旅館にいるみたいな」
「そうなんですね」
「左様、だが今はな」
 ここでこうも言った信長さんでした。
「外の世界の昔の安土城より遥かに立派であるぞ」
「あっ、現代の技術を使ってですね」
「そうして造ったからですね」
「そうしたからですね」
「今のオズの国の技術を使ったから」
「それで、ですね」
「全く違う、エレベーターやエスカレーターもあるしな」 
 そうしたものもというのです。
「何もかもがな」
「安土桃山時代とは違いますか」
「あの頃とは」
「もっと立派で、ですか」
「暮らしやすいんですね」
「今のこのお城は」
「左様、最高の城になっておるぞ」 
 信長さんは五人に満面の笑みで答えました、見れば信長さんは主の座に座っていますが。
 その上の場所にオズマがいます、オズマは城主である信長さんの上の座に今回の旅の服装である動きやすい膝まで覆った白いスカートとブラウスの服でお姫様座りをしてそのえうで静かに食べています。
「わしもそれが嬉しい」
「そうなんですね」
「やっぱり時代や場所が変わると変わりますね」
「同じ建物でも」
「技術が違うから」
「そうなんですね」
「そうじゃ、わしも今ではテレビを観てじゃ」
 そうしてというのです。
「パソコンも扱っておるぞ」
「殿は無類の新しもの好きでして」
 丹羽さんが言ってきました。
「外の世界におられた時からです」
「あっ、何かとですよね」
 恵梨香がお味噌汁を飲みながら言ってきました。
「新しいものがお好きで」
「鉄砲もかなり使われてましたね」
 ジョージはめざしをお箸に取って言いました。
「そうでしたね」
「南蛮から色々な知識を教わって」
 神宝はお漬けものを食べながら言いました。
「学んでおられましたね」
「政策も新しいもので」 
 ナターシャはご飯を食べながらこのことを言いました。
「日本を変えられましたね」
「それで今もなんですね」
 カルロスは茹で卵を食べつつ言います、その卵は半熟です。
「新しいものがお好きですね」
「左様、スマートフォンも持っておるしな」 
 信長さんは五人に応えました。
「気球も自動車も飛行機も潜水艦も真っ先に乗ったぞ」
「それは凄いですね」
「流石信長さんです」
「今もそうされるなんて」
「本当に新しいものがお好きなんですね」
「好奇心旺盛なんですね」
「スーツも持っておってな」
 ファッションにも興味を持っているというのです。
「ジャズやラップも好きであるぞ」
「うわ、凄いですね」
「とても戦国時代の人に思えません」
「スーツも持っておられて」
「ジャズやラップもなんて」
「素晴らしいですね」
「そうであろう、ラーメンやハンバーガーも好きであるしな」
 こうした食べものもというのです。
「パエリアもスパゲティも好物じゃ」
「全く、殿の新しいもの好きは変わりませんな」
 平手さんも笑って言います。
「お陰でそれがしは今もはらはらしておりますぞ」
「ははは、爺のその心配性も相変わらずじゃな」
「今は心配しておりませんが」
「はらはらするか」
「ご自身でヘリコプターを操縦されたりしまして」
「飛行機も潜水艦もな」
「スポーツカーで思いきり速度を出されますし」
 そうしたこともするというのです。
「全く以てです」
「わしを見ておるとか」
「はらはらし通しです」
「わしは今もわしであるからのう」
「そうしたところは変わりませぬな」
「戦国の世からな。もっとも酒はな」
 こちらはといいますと。
「今もじゃ」
「苦手ですな」
「ビールもワインも飲めぬ」
 こうしたものもというのです。
「ジュースならよいがのう」
「それに牛乳もですな」
「そうしたものは好きであるが」
 それでもというのです。
「やはりな」
「酒は、ですな」
「どうしても駄目じゃ」
 オズの国においてもというのです。
「ほんの少し飲んでな」
「酔い潰れられますな」
「あれだけは駄目じゃ」 
 こう言うのでした。
「どうしてもな」
「そうでありますな」
「色々と新しいもの珍しいものが好きでな」
 そうしてというのです。
「オズの国の全てを満喫しておるが」
「酒だけは」
「駄目じゃ、ちょっと口にしてな」 
 そうしてというのです。
「まことにじゃ」
「それで終わりですな」
「杯の一杯でも飲むとな」
 それだけでというのです。
「わしは酔い潰れるわ」
「そうですな、しかしそれでようございます」
 平手さんは信長さんに笑ってお話しました。
「大酒は毒になりますからな」
「外の世界ではよお言われておったのう」
「殿が飲まれぬならです」
「それに越したことはないな」
「オズの国においても」
「そうであるな、だからな」
 それでというのです。
「わしはこれからも酒はな」
「飲まれませぬな」
「他のことを楽しむぞ」
「さすれば」
「そして今日はな」
 信長さんはこうも言いました。
「天主の最上階に上がってじゃ」
「そこからだね」
「景色を眺めるんだね」
「左様、昼はそうしてな」
 かかしと樵に答えます。
「夜はライトアップじゃ」
「天主閣をだね」
「そうするんだね」
「いや、天主だけでなくな」
 それだけでなくというのです。
「城全体をそうして気球でも使って少し離れたところからじゃ」
「観るんだね」
「今夜はそうするんだ」
「そうしようぞ」
「実はです」
 ここで今度は前田さんが言ってきました。
「殿は外の世界でもそうしておられます」
「というと?」
「安土城の天主を提灯で飾って」 
 ガンプに答えます。
「そして夜に照らしたのです」
「安土桃山時代のライトアップだね」
「それをされました」
「あれは大成功であったのう」
 信長さんはまた笑って言いました。
「それで今宵もじゃ」
「ライトアップをするんだ」
「今は電灯を使ってな」
 そうしてというのです。
「その様にするぞ」
「信長さんって昔にそうしたことを思いついてなんだ」
「していたぞ」
「それも凄いね」
「そうであるか、では今日は映画も観るか」 
 信長さんはこちらもと言いました。
「わしを扱ったな」
「あの、殿」
 ここで長方形の逞しい感じの人が言ってきました。
「我等の武芸もです」
「見せたいか」
「槍や馬の」
「ふむ、よいのう」
 信長さんはその人の言葉に頷きました。
「では内蔵助、お主とじゃ」
「はい」
「鎮吉、お主もじゃ」
 今度は細面で長身の人に言いました。
「剣舞をやってみよ」
「はい、それでは」
「その様に」
「この人達は誰かな」
 ジャックは名前を呼ばれたお二人を見て言いました。
「一体」
「それがしの名は佐々内蔵助、諱を成政という」
「拙者は川尻秀隆、諱を鎮吉という」
 お二人はそれぞれジャックに答えました。
「共に今も殿にお仕えしておる」
「宜しくな」
「九郎、お主は馬じゃな」 
 信長さんは穏やかな顔の人にも言いました」
「よいな」
「それではこの原田九郎直政必ずや」
「他の者もそれぞれな」
 こう言うのでした。
「見せてもらうぞ、わしも弓をじゃ」
「殿はそちらですな」
「見せようぞ」
 こう羽柴さんに答えました。
「わしはな」
「それでは、しかしそれがしは武芸になりますと」
 ここで羽柴さんはどうにもというお顔になって言いました。
「からっきしですな」
「何を言う、お主はすばしっこく動いてじゃ」
 柴田さんがその羽柴さんに言います。
「まるで猿じゃ」
「猿と言われている様に」
「そうじゃ、だからな」 
 それでというのです。
「お主はそちらでじゃ」
「武芸を見せよというのですな」
「殿が言われるとな」
「猿、お主は話上手であるからな」 
 信長さんは羽柴さんにはこう言いました。
「だからな」
「それで、ですか」
「姫の案内役を頼む」
「さすれば」
「子供も好きであろう」
「これが大好きでして」
「ならばな」 
 それならというのです。
「宜しく頼むぞ」
「わかり申した」
「では武芸に映画を披露して」
 そうしてというのです。
「そしてな」
「そのうえで、ですな」
「昼も夜も馳走を出して」
「楽しむのですな」
「そうしようぞ」
 笑顔で言ってでした。
 信長さんは朝ご飯の後すぐに皆に織田家の人達も武芸を披露しました、ご自身も弓を手に見せます。
 そして映画の時にこんなことを笑って言いました。
「この様に痛快に無茶をしておるとな」
「栄華の中の信長さんがなんだ」
「わしとしても面白いぞ」
 お寺を焼いたりしている映画の中のご自身を観てジャックにお話します。
「うつけだたわけだの言われてな」
「お寺を焼いたりなんだ」
「酒を飲んだりのう」
「実際の信長さんと違うのに?」
「それがよいのじゃ。わしはこう思われておるとな」
 その様にというのです。
「実にじゃ」
「面白いですか」
「うむ、だからな」 
 それでというのです。
「わしは映画自体が好きじゃが」
「ご自身の映画はなんだ」
「大好きじゃ、最近はわしがおなごになったりしておる」
「いや、小説等ではです」
 ここで池田さんが言ってきました。
「殿は随分とです」
「好き勝手に描かれておるのう」
「アニメでもそうで」
「そしてこうしてな」
「映画でもです」
「しかしそれが面白くてな」
 信長さんは池田さんにもお話します。
「観ておるのじゃ」
「そうなのですね」
「神仏を信じず自分を魔王と称するか」
「時には悪役になりますな」
「悪者でも随分大袈裟であるな」
「実際の殿とは全く違っていても」
「また面白くてな」 
 それでというのです。
「こうして観るのじゃ、しかもじゃ」
「その時にも甘いものはですな」
「欠かせぬわ」
 アイスクリームとアイスティーを楽しみながら言います。
「この様にな」
「ですな、やはり」
「このアイスもじゃ」
 アイスクリームのお話もします、今食べている。
「まことによい」
「甘く冷たく」
「非常にじゃ」
「殿はお好きですな」
「そこにシロップを入れてミルクも入れたな」
「紅茶ですな」
「これもよい、あとチョコレートもな」
 こちらのお菓子もというのだ。
「よいのう」
「そういったものも殿が最初に召し上がられましたな」
「オズの国に来てな」
「そうでしたな」
「だからわしは甘いものが好きでな」
「新しいものがですな」
「好きだからのう」
 信長さんは池田さんにお話しました。
「他の者はどう思ってもじゃ」
「そういったものも召し上がられ」
「楽しむ、それで勝三郎よ」
「何でしょうか」
「お主も出ておるぞ」
 映画を見て言いました。
「権六も牛助も五郎左もな」
「あの、それがしここまで男までではありませぬ」 
 池田さんはご自身を演じている俳優さんを見て思わず笑ってしまいました、そのうえで信長さんに応えました。
「とても」
「わしもですぞ」
 柴田さんも言いました。
「別人ではないですか」
「しかもこの様なことを言ったか」
「記憶にありませぬな」
「それも面白い、映画のわし等と実際のわし等は全く違う」
 それはというのです。
「そうではないか」
「ですな、つくづく」
「我等も何かと描かれておりまする」
「小説でも書かれて」
「それぞれ違いますな」
「それが面白い、それで姫もどうであるか」
 オズマにも言うのでした。
「面白いか」
「ええ、映画自体も面白くてね」
 オズマは信長さんににこりとして答えました。
「そちらの信長さんと今ここにいてくれている信長さんの違いもね」
「面白いのう」
「そう思うわ」
「わし自身であるからな」
「余計に面白いわね」
「そうじゃ、では映画が終われば昼飯であるが」
「その時もね」
「楽しもうぞ、今度は洋食じゃ」 
 そちらを出すというのです。
「味噌カツにじゃ」
「名古屋のお料理ね」
「それに鉄板のナポリタンにな」
「そちらもあるのね」
「そうじゃ、名古屋の洋食を楽しんでもらう」
 オズマに対してお話します。
「昼はな」
「そちらね」
「当然海老フライもある」
「それは絶対かしら」
「うむ、名古屋であるならな」
 それならというのです。
「わしの頃は清州に城があった」
「丁度名古屋だったのね」
「そうじゃ、わしは今で言う名古屋で生まれ育ってな」
 そうしてというのです。
「あそこに親しんでおった」
「それでオズの国では」
「名古屋の料理にも親しんでおる」
「洋食についても」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「そうしておる」
「そうなのね」
「それで夜はきし麺を考えておる」
「そちらね」
「おやつはういろうじゃ」
 その時はというのです。
「そちらじゃ」
「お茶の時は」
「そうじゃ、ういろうもよいのう」
 信長さんはアイスを食べながらにこりとなりました。
「実にな」
「大好物かしら」
「うむ」
 その通りだというのです。
「あちらもな」
「甘いものでしかも名古屋のものだから」
「わしの故郷であるからな」
 名古屋はというのです。
「当時は那古屋といったが」
「漢字が違うわね」
「しかしあの地であることは変わらぬ」
 それでというのです。
「そこの食いものならな」
「好きなのね」
「そうじゃ、ういろうも食べるぞ」
 信長さんはとても楽しそうに言いました。
「今日は名古屋料理を満喫じゃ」
「そこに焼き味噌も入るのかしら」
「勿論じゃ」
 笑顔で言ってでした。
 その後で皆を安土城の天主閣の最上階に案内しましたが。
 そこからの景色に皆うっとりとなりました。
「壮観だね」
「ええ、お山の頂上からそびえ立っているからね」
 恵梨香はジャックに応えて言いました。
「周りに高いものもないから」
「ギリキンの先まで見えるね」
「街も村も山も川もね」
「これは素晴らしいよ」
「天主閣も奇麗でね」
「景色まで素晴らしいなんてね」
「最高ね」
 恵梨香はにこりとして言いました。
「ここは」
「全くだよ」
「わしは毎日ここに来て眺めておる」
 信長さんは笑ってお話しました。
「日課じゃ」
「こんな素敵な日課を楽しんでいるんだ」
「左様、よいであろう」
「とてもね」
「毎日しておるぞ、ではこの後でな」
「お昼だね」
「それを楽しもうぞ」
 信長さんはこの日他には能も催し皆に名古屋の料理を振舞いました、そして夜には皆を飛行船に乗せてです。
 そうしてお空からライトアップした安土城を見せます、黒に近い紫の世界の中に白い光で照らし出されてです。
 青い瓦に白い壁、金箔や朱で彩られた天主閣それにお城全体が浮かび上がっています、皆飛行船の窓からそのお城を見てうっとりとなっています。
 そのうえで飛行船の中にもうけられた畳のお部屋に座ってきし麺や名古屋コーチンの唐揚げに天むすその他の名古屋料理を楽しんでいます、そこで信長さんはお茶を飲みながらそのうえで皆に尋ねました。
「どうじゃ、安土城の夜景は」
「ううん、これもいいね」
「天主閣からの眺めもよかったけれどね」
 かかしと樵が応えました。
「こちらも最高だね」
「幻想的ですらあるね」
「外の世界では提灯を使ってしたがな」
 そのライトアップをというのです。
「今は電灯を使ってじゃ」
「ライトアップをしているね」
「こうしてだね」
「うむ、わしは科学も好きであるからな」
 それでというのです。
「こうしておる、ただな」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「ここの灯りは趣向を変えてな」
 そうしてというのです。
「電灯は使っておらぬ」
「じゃあ何かな」
「何を使っているのかな」
「これじゃ」
 こう言ってです、行灯を指差しますと。
 その中には無数の蛍達がいます、そしてでした。
 飛行船の中に無数の蛍達が出て来て灯りとなっています、これにはかかしも樵もうっとりとなりました。
「おお、蛍を灯りに使うとは」
「これは見事だね」
「ううむ、蛍光を使って夜に本を読んで学ぶというが」  
 ムシノスケ教授も言いました。
「これは素晴らしい」
「お城の夜景を見ながら蛍の光の中でパーティーをするなんてね」 
 ガンプもうっとりとなっています。
「こんな素晴らしいことはないよ」
「そうね。流石信長さんね」
 オズマはにこりとして言いました。
「本当に」
「そう言ってくれるか」
「ええ、明日朝に出発するけれど」
「この度のよい思い出の一つになるな」
「間違いなくね」
「それは何より。わしは趣向を凝らしてじゃ」
 その様にしてというのです。
「日々楽しんでおるってな」
「この様にしてなのね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「客人が来たらな」
「もてなしてくれているのね」
「ドロシー王女にしてもな」
「あの娘もなのね」
「何度か来てくれておってな」
 ドロシーのことも笑顔でお話します。
「今ではすっかり仲良しじゃ」
「お友達なのね」
「それでも姫も何時かと思っておったが」
「今回こうしてお邪魔して」
「嬉しいことこの上ない」
 オズマにきし麺を食べつつ笑顔でお話します。
「まことにな」
「そうなのね」
「そうじゃ、しかしな」
「姫は見たところ王女と似ておるな」
「ドロシーとなのね」
「そうしたところが多いな」 
 こうも言うのでした。
「これはベッツイ王女にトロット王女もであるが」
「確かに」
 羽柴さんも頷きました。
「言われてみれば」
「そうであるな」
「それぞれの個性派ありますが」
 それでもというのです。
「どなたも明るくて活発で」
「そうした方々でな」
「よく笑って冒険好きで」
「似ておる部分も多いな」
「誰にも公平でよく気がついて」
「そうしたところがな」 
 オズマを見て言うのでした。
「似ておる」
「そうですな」
「そうなのよね。私達って結構ね」
 オズマ自身認めました。
「似ている部分が多いのよね」
「ドロシー王女ともな」
「トロット、ベッツイともね」
「まるで四姉妹じゃ、外見は違うがな」 
 それはというのです。
「しかしな」
「それでもよね」
「そうじゃ、だからな」
 それでとういうのです。
「今ドロシー王女も思い出した」
「そうなのね」
「面白い娘じゃな、それで奥も気に入っておるぞ」
「奥さんもなのね」
「濃がのう」
 この人がというのです。
「妹の市もな」
「その人もなのね」
「随分とな、そして市じゃが」
 信長さんはオズマにお話しました。
「明日姫達が発つ時に紹介するが」
「何でも凄く奇麗な人と聞いてるけれど」
「これがもう素晴らしいまでにお奇麗なのですぞ」
 羽柴さんが言ってきました。
「今は浅井殿に嫁いでおられますが」
「某です」
 少しふくよかな感じで信長さん達の中で一番大きな人が言ってきました。
「浅井新九郎、諱を長政といいます」
「今ではわしの家臣の一人となっておってな」
 信長さんもお話します。
「市の婿じゃ」
「以後宜しくです」
「こちらこそ。そういえば信長さんは随分整ったお顔立ちね」
 オズマは信長さんのお顔を見て言いました。
「それなら妹さんもね」
「ははは、そのわしより遥かにじゃ」
「美形なのね」
「驚くぞ」 
 そこまでだというのです。
「市の奇麗さといったらな」
「そうなのね」
「我が奥も奇麗であるが」
「市さんはなのね」
「これ以上はないまでにな」 
 それこそというのです。
「だから明日発つ時にな」
「奥さんとなのね」
「市とも会ってな」
 そうしてというのです。
「最後の思い出にされよ」
「そうさせてもらうわね」
「そして今はな」
「お城のライトアップをなのね」
「蛍の光で観ながらな」
 そうしてというのです。
「そのうえでな」
「名古屋の食べものを楽しんで」
「満喫するのじゃ、さてわしは甘いものを飲むな」 
 大好きなそれをというのです。
「そうするか」
「やっぱりお酒よりもなのね」
「遥かにな」
「甘い飲みものの方がお好きね」
「サイダーを飲もう」
 こう言ってでした。
 信長さんは甘いものも飲んで皆と一緒に夜景を楽しみました、そうしてからでした。お風呂にも入ってよく寝て。
 日の出前に起きて日の出を天主閣の最上階で観てでした。
 朝ご飯、名古屋のモーニングを楽しんでから出発しましたが。
 信長さんに奥さんの濃姫きりっとしたお顔で黒く長い髪の毛を持つその人を紹介されてそのうえで、でした。
 背が高くて誰よりも黒く奇麗な膝まである絹の様な光沢を放つ髪の毛に切れ長で流麗な長い睫毛を持つ琥珀の様な目に整った眉に面長で白い雪の様なお肌を持っていてです。 
 紅の小さな唇を持った戦国時代の着物を着た女性を見て皆思わず息を飲みました。
「この人が市さんね」
「これはまた美人さんね」
「こんな奇麗な人がおられるなんて」
「まさにお姫様だね」
「日本の美人さんだね」
「これが濃と市じゃ」
 信長さんは家臣の人達を後ろに恵梨香達にお二人を紹介しました。
「はじめまして、濃と申します」
「市と申します」
「織田信長の妻です」
「妹の一人です」
 お二人はにこりと笑って答えました。
「今回は見送りに来させてもらいました」
「皆様をそうする為に」
「そうなのね、では今回はね」
 オズマはお二人の言葉を受けて笑顔で応えました。
「これでお別れだけれど」
「笑顔で、ですね」
「お別れですね」
「お別れの時は笑顔で」 
 そうしてというのです。
「そしてね」
「それで、ですね」
「またお会いするその時を楽しみにすることですね」
「そうしましょう」
 こう言ってでした。
 皆は笑顔で再会の時を楽しみにしてお互いに手を振って別れました。オズマ達はそのまま安土城の正門で信長さんと別れてです。
 旅を再開しました、お城が遠くなった時にでした。ジャックはこう言いました。
「市さんって物凄い美人さんだったね」
「うん、驚いたよ僕も」
 カルロスが応えました。
「信長さんも整ったお顔だったけれど」
「市さんは際立っていたね」
 神宝も言います。
「背も高くて髪も奇麗で」
「あんな奇麗な人オズの国でもそうはいないよ」
 ジョージはこうまで言いました。
「女優さんやモデルさんでも相当なものだよ」
「お肌も奇麗で姿勢もよくて」 
 ナターシャは細かく言いました。
「着物の上からでもスタイルのよさがわかったわ」
「市姫は戦国時代で一番奇麗だと言われていたんだ」
 教授がここでお話しました。
「実はね」
「そうだったんだね」
「そしてだよ」
 教授はジャックにお話しました。
「オズの国に来られてもね」
「あれだけの美人だね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「私も噂は聞いていたが」
「それでもだね」
「実際に見るとね」
 その目でというのです。
「全く違うね」
「お話に聞くのとだね」
「実際に見ると」
「百聞は一見に如かずというけれど」
「お話を聞くより美人さんだったね」
「遥かにね、あれだけの美人さんはね」 
 教授はしみじみとした口調で言いました。
「オズの国でもオズマ姫等ね」
「僅かだね」
「そうだよ」
「本当に奇麗だったわね」
 オズマもしみじみとした口調で言います。
「市さんは」
「オズマもそう言うんだ」
「ええ、お姫様でなかったら」
 ジャックにお話します。
「トップモデルか大女優よ」
「そこまで奇麗だね」
「そう思うわ。ただ穏やかな人ね」
 そのお人柄のお話もしました。
「農さんもそうだったけれど」
「信長さんの奥さんの」
「信長さんは凄く陽気で明るい人だけれど」 
 お兄さんのこの人はとうのです。
「あの人はね」
「逆にだね」
「穏やかな人ね」
「大人しくて」
「そう見えたわ」
「信長さんは本当にずっとです」 
 ここで信長さんと同じ日本人の恵梨香が言ってきました。
「気性が激しくてかっとなると血も恐れない」
「そんな人だって言われていたのね」
「はい、横紙破りで」
「斬新であることの裏返しね」
「突拍子もない人だって」  
 その様にというのです。
「言われていてお酒もです」
「酒乱みたいな人だって」
「言われていたんですが」
「実際は明るくて陽気でね」
「気さくでおもてなしがお好きで」
「気遣いも出来る人だったわね」
「それで甘いものが」
 お酒ではなくです。
「大好きでしたね」
「そうした人だったわね」
「それがです」
 そうしたことがというのです。
「本当にです」
「違っていたわね」
「そうでしたね」
「その信長さんとは違って」
 市姫はというのです。
「どうもね」
「穏やかですね」
「兄妹でも違うわね」
「それに結構年齢が離れている感じがしたよ」 
 ジャックはこのことを指摘しました。
「何かね」
「ああ、そうだったね」
 ガンプはジャックの言葉に頷きました。
「言われてみると」
「そうだよね」
「十歳以上ね」
「そうだったね」
「兄妹でも」
「歳が離れていたね」
「そう、信長さんは兄弟姉妹が多かったのだよ」 
 教授がお話してきました。
「そして市姫とは実際にだよ」
「年齢が離れていたんだ」
「そうだったんだ」
「成程ね」
「お子さんも多くて」
「ご家族多かったんだ」
「当時にしてもね」
 ジャックに学者さんとしてお話します。
「そうだったんだ」
「その中に市さんもいたんだね」
「そして浅井長政さんに嫁いだんだ」
「ご夫婦になったんだね」
「そうなんだ、あと秀吉さんだけれど」
 羽柴さんのお話もしました。
「どうもあの人は市姫を慕っているね」
「あっ、何かそんな感じがしたね」
「そうだね」
 かかしも樵も言われて気付きました。
「言われてみれば」
「そんな風だったよ」
「このことは日本では昔から言われている様だよ」
「そうなのかな」
 ジャックはそのお話を聞いて日本人の恵梨香に尋ねました。
「そんなお話あるのかな」
「私はまだ聞いてないわ」
「そうなんだ」
「ちょっと勉強してみるわ」
「そうするんだね」
「これからね。けれどね」
 こうも言った恵梨香でした。
「秀吉さんって小柄って聞いてたけれど」
「あまりそんな感じなかったね」
「周りの人達と比べて」
 それでというのです。
「少しね」
「小柄な位だね」
「それ位だったわね」
「信長さんはすらりとしていてね」
「高めって感じだったわね」
「そうだね」
「秀吉さんは当時の日本の人達の平均身長と然程変わらなかったんだ」
 また教授がお話してきました。
「実はね」
「そうだったんだ」
「あの人達は今の日本の人達の平均身長になっているけれど」
「秀吉さんもそうで」
「当時秀吉さんは実はあまり小さくなくて」
 小柄と言われていてもというのです。
「今の日本人の身長に合う様になると」
「然程小さくはないんだ」
「そうだよ、信長さんは一七五はあったね」
「それ位だったね、あの人は」
「そして市姫は一八〇近かったね」
「信長さんよりもね」
「あの人は戦国時代でも有名な長身だったんだ」
 この人はというのです。
「それで今の日本人の平均身長になると」
「あの背丈なんだ」
「そうなんだ」
「成程ね、物凄い美人さんで背も高いと思ったら」
「戦国時代の日本にいた時からだったんだ」
 その頃からというのです。
「背が高かったんだ」
「そういうことだね」
「そもそもオズの国の人の背丈も変わっているね」 
 かかしはこのことを指摘しました。
「昔は一五〇ない人ばかりだったよ」
「ドロシーが最初に来た頃はね」
 樵も言います。
「そうだったね」
「それが今ではだよ」
「大人の男の人で一七五はあるね」
「平均身長はね」
「ええ、大きくなったわね皆」
 オズマも言いました。
「確かに」
「そうだね」
「そうなっていったね」
「私もそうだし」
 オズマ自身もというのです。
「他の皆もね」
「食べるものも変わって」
「そうもなったね」
「牛乳やお肉も沢山食べる様になったしね」
 このこともあってというのです。
「本当にね」
「今はね」
「皆大きくなったわ」
「それで信長さん達もだね」
「そうなったのよ、もっと関羽さんは最初からかなり大きいから」
 この人はといいますと。
「変わってないわね」
「外の世界にいた時と」
「そうよ」
 ジャックにお話しました。
「あの人はね」
「元々大きいとなんだ」
「そのままよ、あまりにも大きいとね」
 関羽さんの様にというのです。
「だってあの人は二メートルを優に超えてるじゃない」
「物凄い大男だよね」
「そんな人はね」
「背丈は変わらないんだね」
「今でも同じ大きさでしょうから」
 だからだというのです。
「変わらないのよ」
「あまりにも大きな人は」
「そうよ、オズの国ではね」
「そのこともわかったよ」
「それは何よりね。ではね」
「今からもだね」
「先に進んでいきましょう」
 水田そして南瓜畑を開拓開墾するそこにというのです。
 笑顔でこうお話してでした、皆で北に北にと進んでいくのでした。安土城を後にしても皆の楽しい旅は続きます。








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