『オズのボームさん』




                第十二幕  整頓が終わって

 階の整頓はとても順調に進んでいます、オズマはその状況を見て皆に満面の笑顔でこう言いました。
「もう九割五分は終わったわ」
「九十五パーセントね」
「ええ、それだけ終わったわ」 
 ドロシーに笑顔で答えました。
「今日でね」
「そうなのね」
「だから明後日にでもね」
「終わりね」
「そうなるわ」
「そうなのね、よかったわ」
「階は広くて本も本棚も多かったけれど」
 それでもというのです。
「それもよ」
「いよいよ終わりね」
「ええ、けれど焦らないでね」
 オズマはドロシーに少し真剣な感じになってお話しました。
「その残り五分、五パーセントをね」
「やり遂げるのね」
「そうしましょう、百パーセントまでね」
「完全に終わるまでね」
「お仕事だから」
 それでというのです。
「最後までね」
「焦らないでね」
「落ち着いてしっかりと」
 そうしてというのです。
「やっていきましょう」
「そうね、ではまた明日ね」
「しましょう、それで明後日は金曜日で」
 オズマは曜日のお話もしました。
「金曜日には確実に終わるから」
「それで土曜日と日曜日はお休みだから」
「土曜日は皆でピクニックに行きましょう」 
 こう提案するのでした。
「そして整頓が終わったお祝いをしましょう」
「ピクニックでお祝いね」
「ええ、都を出てね」 
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「都の外で」
「そこの小山まで出て」
「皆でピクニックね」
「のどかな緑の絨毯の上で暖かい日差しの下でお弁当を食べましょう」
「それではね」 
 ドロシーも頷いてでした。 
 皆で今は晩ご飯とお風呂を楽しんで寝ました、そしてでした。
 次の日もお仕事をしてでした。
 その次の日金曜日もしましたが。
 エリカはお仕事の中でこんなことを言いました。
「本当に終わりが近いわね」
「あと少しよ」
 ガラスの猫も言ってきました。
「ほんの一角位よ」
「ええ、拭く本棚もモップをかける範囲も少しで」
「壁や天井もそうでね」
「そして収める本もよ」
 つぎはぎ娘は本を収めながら言います。
「あと少しよ」
「いや、あれだけあったのがね」
 ハンクの言葉はしみじみとしたものでした。
「もう少しで終わりだね」
「何時終わるかと思っていても」
 木挽きの馬の言葉もしみじみとしたものでした。
「終わるんだね」
「本当にやっていけば終わるわね」
 ビリーナも言いました。
「絶対にね」
「いや、今回は凄い勉強になったよ」
 トトは本棚の低い場所を拭きながら言います、前足で雑巾を器用に使っています。
「大変なことも続けていけば終わるんだね」
「それがーー少しずつーーでもですーーね」
 チクタクは本を奇麗にしちえます。
「終わりーーますーーね」
「やっぱり続けないと駄目なんだね」 
 臆病ライオンは残り僅かとなった本を運んでいます。
「こうしたことも」
「というか絶対に終わる」
 腹ペコタイガーもそうしています。
「何でもね」
「そうだね、じゃあ最後まで頑張ろう」
 ジャックはモップを使っています。
「そうしていこう」
「うん、焦らずにね」
 大尉はこのことを言いつつ本を本棚に入れています。
「やっていこうね」
「是非ね」
 ボームさんも応えてでした。
 皆でどんどんお仕事をしていきました、あと少しになったそれを皆で力を合わせていきます。そしてお昼前にでした。
 完全に終わりました、かかしはピカピカになってきちんと整頓された階を見て満面の笑顔で言いました。
「遂にやったね」
「うん、整頓が終わったね」 
 樵も言いました。
「お掃除もね」
「完全にね」
「これでよし」
 魔法使いも言いました。
「まさにそんな気持ちだね」
「あまりにも嬉しくて笑顔になってしまうよ」
 モジャボロは実際ににこにことしています。
「こうしてね」
「僕もだよ」
 モジャボロの弟さんもでした。
「終わったと思うとそれだけでね」
「終わった」
「さて、ではだね」
 ムシノスケ教授も笑顔になっています。
「まずはお昼を食べようか」
「お昼は中華料理です」
 ジュリアが言ってきました。
「色々な種類の点心と麺それに炒飯とデザートもあります」
「いいね、じゃあ皆で楽しもう」 
 ボームさんは笑顔で応えました。
「今からね」
「それでは」
 皆大仕事が終わってまずはでした。
 中華料理海老蒸し餃子やフカヒレ餃子、蟹焼売に水餃子に唐揚げ、チンジャオロースや韮餅、豚腹煮込み、北京ダック、海老チリソース、フカヒレスープ、白身魚を蒸したものにピータン豆腐、かに玉に塩味や醤油味それに海鮮の麺に炒飯にお粥、ライチやマンゴー杏仁豆腐といったものをです。
 皆で食べます、トロットはその中で言いました。
「終わった後はね」
「尚更美味しいわね」
 ベッツイが応えました。
「本当に」
「ええ、やり遂げたと思って」
「尚更ね」
「だからね」
「お箸が進むわね」
「そうよね」
「こうして点心を食べると」
 ナターシャは唐揚げを食べつつ言いました。
「お茶が美味しいのよね」
「お茶とも合うのよね、点心って」
 恵梨香は海老チリソースを食べつつナターシャに応えました。
「本当に」
「だから飲茶なんだね」
 カルロスはフカヒレ餃子を食べています。
「そう言うんだね」
「食べものがあってお茶もある」 
 ジョージはピータン豆腐を食べて言いました。
「最高だね」
「大仕事を終えた後の飲茶は最高です」
 神宝は醤油の麺を食べながらお話しました。
「これ以上はないまでに」
「そうだね、君達はお茶を飲んでいるけれどね」 
 ボームさんは五人に赤ワインを飲みながら応えました。
「飲茶はお酒でもよくてね」
「お酒にも合うんですね」
「そうなんですね」
「実際ボームさんワイン飲んでおられますし」
「お酒と一緒でも楽しめる」
「そうしたものなんですね」
「これまでお話している通りにね、僕は今赤ワインを飲んでいるけれど」
 飲んで今度は炒飯を食べます。
「桂花陳酒やライチ酒とも合うんだよ」
「杏酒もいいね」 
 魔法使いがボームさんに応えました。
「甘いお酒がいいよね」
「中華料理にはね」
「ワインもよくてね」
「ビールとも合うよ」
「結構色々なお酒と合うんだよね」
「お茶にも合っていてね」
「それもまた中華料理が愛されている理由の一つだね」
 モジャボロは言いつつシードル、林檎のお酒を飲んでいます。
「そうなんだよね」
「そうそう、それなんだよ」 
 まさにとです、ボームさんは応えました。
「美味しいだけでなくね」
「色々な飲みものとも合うんだよね」
「ジュースとも合うしね」
「コーラともね」
「僕はビールを飲んでいるけれど」 
 モジャボロの弟さんは実際にそちらを飲んでいます、一リットルのジョッキで白い泡が上にある緑色のエメラルドの都のビールです。
「こちらとも合うよ」
「そうだよね」
「さっきは紹興酒を飲んだけれど」
「中国のお酒だね」
「こちらともね」 
 実にというのです。
「合うよ」
「僕もビールを飲む時があるけれどね」
「中華料理を食べる時もだね」
「その時もだよ」
「楽しめるね」
「実にね」
 ボームさんは笑顔で答えました。
「ビールもいいよ」
「そうだね」
「ビールは偉大な飲みものだよ」 
 魔法使いは笑ってお話しました。
「どんなお料理にも合うね」
「それこそ中華料理にでもでね」
「ドイツ料理やトルコ料理にもで」
「当然アメリカ料理にも合って」
「日本料理やタイ料理にもで」
「メキシコ料理にもベトナム料理にも」 
 こうしたお料理にもというのです。
「合うよ」
「どんなお料理にもね」
「フランス料理にはどうですか?」
 神宝が尋ねました。
「そちらは」
「うん、合うけれど」
 ボームさんは神宝に笑顔で答えました、ワインを飲んで赤いお顔になっています。
「フランス料理やイタリア料理、スペイン料理は気分的にワインかな」
「そちらですか」
「そうだよ」
 こう答えるのでした。
「気分的にね、そしてワインもどの国のお料理にもだよ」
「合うんですね」
「この中華料理やパスタや肉料理の時は赤ワインで」
 今ボームさんは実際にそちらを飲んでいます。
「魚介類や和食の時は白ワインだね」
「そちらですね」
「あとオズの国のワインはそれぞれの色のものもあるね」
 オズの国のそのお話もするのでした。
「青、黄色、緑、紫とね」
「そして赤ですね」
「五色のワインがあるんですね」
「オズの国には」
「赤ワインだけじゃなくて」
「そうですね」
「白ワインもあってね」
 神宝達五人にお話します。
「そうなんだ、そして白ワインも透明だけれど」
「それでもですか」
「それぞれの国で、ですか」
「色が違うんですか」
「オズの国ではですね」
「そうなっているんですね」
「透明でそれぞれの国の色が入っているんだ」
 そうなっているというのです。
「そうしたワインもあるんだ」
「それで外の世界にある様なワインもあるのよ」 
 オズマもお話しました。
「ノンアルコールのものもね」
「今私達はノンアルコールのワインを飲んでるけれど」 
 ドロシーは青、マンチキン産のものを飲んでいます。
「貴方達もどうかしら」
「頂いていいですか」
「ワインも」
「お茶だけじゃなくて」
「そちらもですか」
「飲んでいいですか」
「オズの国は遠慮は無用でしょ」
 ドロシーは五人ににこりと笑って答えました。
「それでここに出ているものは好きなだけ飲んで食べていいから」
「だからですね」
「楽しくですね」
「食べてよくて」
「飲んでいいんですね」
「私達も」
「そうよ、だから飲みたいなら飲んでね」
 こう言ってでした。
 ドロシーは五人にそれぞれのワインをボトルで置いてもらいました、そうして五人もグラスで飲みますと。
 するとです、五人は笑顔で言いました。
「美味しいですね」
「点心にもよく合っています」
「それで余計に美味しいです」
「前もこの組み合わせ楽しんだと思いますけれど」
「確かにいいですね」
「そうよね、では皆で食べてね」
 こう言ってでした。
 皆でどんどん飲んで食べていきます、そうしてでした。
 点心を食べていってデザートもそうして飲みもしてでした。
 この日はお昼から楽しみました、夜もその様にしてお風呂も入りました。
 その次の日は朝起きると朝ご飯を食べてからでした。
 皆でピクニックに出ました、都を出て春を思わせる日差しと空気の中で黄色い煉瓦の道を歩いていきます。
 そうしつつです、つぎはぎ娘は踊りながら歩いて言いました。
「お祝いにピクニックって素敵ね」
「全くだね」
 かかしの足取りも軽いです。
「普通のパーティーもいいけれどね」
「ピクニックでのパーティーもね」
「いいね」
「そうよね」
「小山の頂上に着いたらね」 
 ブリキの樵も言います。
「その時はだよ」
「うん、お弁当を食べようね」 
 臆病ライオンもうきうきとしています。
「そうししようね」
「食べられる人達はね」
「そして君達はだね」
「食べて飲んで喜ぶ皆の笑顔を見てだよ」
 樵は臆病ライオンに答えました。
「心の栄養にするよ」
「そうだね」
「そう、そしてね」 
 そのうえでというのです。
「満足させてもらうよ」
「それではね」
「確か小山の頂上にはお弁当の木があるね」
 腹ペコタイガーはこのことを言いました。
「お弁当が実になっている」
「うん、水筒の木もあるよ」
 トトが言ってきました。
「そちらもね」
「じゃあ飲んで食べられるね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「君も好きなだけ食べられるよ」
「じゃあ最初は何を食べようかな」
 舌なめずりしての言葉でした。
「一体」
「思いつくものを食べればいいんだよ」 
 魔法使いは腹ペコタイガーにアドバイスしました、黄色い煉瓦の左右の緑の見事な草原とそこにいる生きもの達を見ながら。
「君のね」
「何でもいいんだね」
「これだと思ったものをね」
「最初に食べればいいんだね」
「その次に食べるものもね」
 そちらもというのです。
「そうしたらいいよ」
「そういうことだね」
「そう、沢山の食べものがあってね」 
 そうしてというのです。
「何でも食べていいのなら」
「これだと思ったものをだね」
「食べればいいんだよ」
「それだけだね」
「そうだよ、それだけだよ」 
 まさにというのです。
「難しく考えることはないんだ」
「そうなんだね」
「簡単に考えて」 
 そしてというのです。
「食べていけばいいよ、迷う必要はないよ」
「そうね、迷っても美味しいものを食べるのならね」 
 トロットは笑顔で言いました。
「それならね」
「うん、難しく考えて迷ってもだね」
 キャプテンも言います、義足の方の足も普通に軽やかです。
「どのみち美味しいものを食べるんだから」
「迷うことはないわね」
「そんな必要はないよ」
「そういうことだね」
「サンドイッチもお饅頭もいいし」
 ベッツイも言います。
「何でもね」
「あったかいのがいいですよね」
 こう言ったのは神宝でした。
「何といっても」
「あっ、貴方はそうよね」
「はい、今は冷えたものも食べられますが」 
 神宝はベッツイに答えました。
「それでも基本は」
「温かいものね」
「中国ではです」
「冷たいものよりもね」
「温かいものが喜ばれるんです」
「そうよね」
「最近はお刺身やお寿司も食べますけれど」
 それでもというのです。
「ずっとです」
「冷たいものを食べなかったのよね」
「火を通していないと」 
 さもないと、というのです。
「食べなかったです」
「そうだったわね」
「オズの国も長い間冷たいものはあまり食べなかったよ」
 ムシノスケ教授が言ってきました。
「基本ね」
「タルタルステーキもね」
 モジャボロは思いながらお話しました。
「あまり食べなかったね」
「そうだったね」
「うん、オズの国でもね」
「そしてオズの国に影響を与えているアメリカでもだね」
「冷たいものは基本食べなかったよ」
「パン位だったね」
「パンもトーストがあったしね」
 焼いたそれがというのです。
「中国程じゃなくても」
「温かいものが喜ばれたね」
「そこに主に日本からだったね」
「そうした食べものが入って」 
 お刺身やお寿司がというのです。
「アメリカに来た日系人の人達から」
「和食が入って」
「生ものも食べる様になったね」
「冷たいものもね」
「それで中国でもお寿司とか食べる様になって」
 そしてとです、神宝がまた言いました。
「僕もですが」
「けれど基本はなのね」
「お弁当も暖かい方がいいです」
 こうジュリアに答えました。
「やっぱり」
「その方が親しみがあるのね」
「どうしても」
「そうよね」
「はい、ですから」
「小山の頂上に着いたら」
「温かいお弁当をです」
 それをというのです。
「是非共」
「そうするのね」
「そうさせてもらいます」
「けれどサンドイッチは温かくしないわよね」
 このことを聞いたのはエリカでした。
「流石に」
「しないよ」
 神宝もそれはと答えます。
「中国でもね」
「そうよね」
「最近中国でも食べるけれどね」 
 サンドイッチをです。
「けれどね」
「温かくしないわね」
「流石にね」
「それならよ」
「お弁当もだね」
「いいでしょ」
「うん、それに僕は冷えたものでも平気だから」
 そうした食べものでもというのです。
「中国人も最近は抵抗がなくなっていているから」
「いいのね」
「基本そちらが好きというだけでね」
「成程ね、それも文化ね」
「食文化だね」
「私は猫だからそこはわかりにくかったわ」
「そうそう、猫舌って言うね」
 トトはこのことを言いました、皆で小山に向かって歩きながら。
「猫って」
「そうだね、熱いものが苦手なのを猫舌って言うけれど」
 ハンクも言います。
「まさにね」
「猫は猫舌でね」
「熱いものは苦手だね」
「そうだね」
 トトはハンクの言葉に頷きました。
「言われてみると」
「温かいものは確かに美味しいしね」
 モジャボロは神宝のその考えに頷いていました。
「そうだね」
「身体も温まるしね」 
 弟さんはお兄さんの言葉に頷きました。
「そう思うとね」
「いいね」
「うん、外の世界では衛生の意味でもいいしね」
「熱消毒をしてね」
「それでいいね」
「そういえば何故中国で食べものは冷えたものは好まれないか」
 ムシノスケ教授が言ってきました。
「それはまさに衛生対策だったね」
「そうだったんだ」
「うん、食べものは絶対に煮るか焼くか揚げるか蒸すかしてだよ」
 教授はジャックにお話しました。
「そうしてだよ」
「衛生対策をしていたんだ」
「火を通して熱消毒をしてだよ」 
 そのうえでというのです。
「安全な様にしていたんだ」
「そうだったんだね」
「中華料理が火の料理と言われるには理由があったんだ」
 教授は強い声で言いました。
「これがね」
「昔の船は火がなくてね」
 キャプテンはしみじみと言いました。
「大航海時代の時とかはね」
「嵐があったら火を使っている時大変だからね」
 ビリーナが言ってきました。
「船が揺れて火もそれで揺れてね」
「燃え移ってね」
「私だってここに来た時嵐に遭ったし」
「そうだったね」
「ベッツイとハンクもそうだったしね」
「それで食べものもだよ」
「保存が効くものね」
 ビリーナも言いました。
「塩漬けのお肉とかお魚とか固いチーズやパンとかね」
「それで冷たいものばかりだったんだ」
「そうだったのよね」
「わし等が外の世界にいた時は船も食事も遥かによくなっていたけれどね」
「何かその頃の船の食べものって美味しくなかったらしいね」 
 臆病ライオンは少し嫌そうに言いました。
「どうも」
「そうなんだ」
「うん、物凄く塩辛いお肉やお魚で」 
 臆病ライオンはまずは腹ペコタイガーにこのことからお話しました。
「パンも岩みたいに固い」
「そうだったんだ」
「それでそうしたもの以外にはないんだ」
「食べものがなんだ」
「そうだったんだよ」
「それが昔の船の食べものだったんだね」
「僕も我慢出来ないだろうね」
 こう腹ペコタイガーに言うのでした。
「そんなものは」
「それを言うと僕もかな」
「君もそうだろうね」
「やっぱりそうだね」
「これはね」
「こうした時食べる必要がなくてよかったと思うわ」
 ガラスの猫は歩きつつお澄まし顔で言いました。
「本当にね」
「そうーーですーーか」
「ええ、そんなこと考えるのってね」
 ガラスの猫はチクタクに答えました。
「わずらわしいから」
「だからーーですーーか」
「ええ、最初から考えなくてよ」
 その必要がなくてというのです。
「いいのよ」
「そういうことーーですーーか」
「そうよ、快適よ」
 こう言うのでした。
「それでね」
「食べなくていいってそんなにいいのかしら」
 ベッツイは首を傾げさせました。
「果たして」
「あたしは快適よ」
 つぎはぎ娘はくるくると踊りながら言ってきました。
「それでね」
「貴女はいつもそう言うわね」
「それで寝る必要もなくてね」
「そのこともいいのね」
「だって一日中遊べるのよ」
 だからだというのです。
「それでよ」
「快適なのね」
「そうよ、身体も疲れないしね」
「この身体はこの身体で最高だよ」
 樵は人間の身体だった時のことも思い出して言いました。
「本当にね」
「確かにね」
 かかしも言います。
「本を読もうと思えば一日中だしね」
「灯りさえあればね」
「それで読めるしね」
「夜空を幾らでも見ることが出来るしね」
「このこともいいね」
「全くだよ」
「夜空を見てどの星座が何処にあるかを確かめる」
 ファイター大尉はにこにことしてお話しました。
「ロマンチックだね」
「大尉は星を見ることも好きなのね」
「そうなんだ」 
 ベッツイに笑顔で答えました。
「これもまた心の栄養になるよ」
「そうなのね」
「だからね」 
 それでというのです。
「僕としてはだよ」
「食べなくてもいいのね」
「そうなんだ」
「走ろうと思えばずっと走られるしね」
 木挽きの馬はこのことに喜んでいます。
「いいよね」
「そうそう、夜のお散歩もいいものだよ」
 ジャックもにこにことした感じです。
「夜のピクニックもいいね」
「そうだよね」
「お昼もいいけれどね」
「夜のピクニックとは斬新だね」 
 魔法使いはジャック達のお話を聞いてそれはとなりました、いつも通りタキシードにシルクハットでお洒落にしています。
「それはまた」
「ええ、けれどジャック達が楽しいのならね」 
 ドロシーは魔法使いに応えました。
「それならね」
「それでいいね」
「ええ、その人が楽しいならね」
「寝ることも楽しいし」
「私達はそれを楽しんで」
「そしてジャック達は夜も楽しむ」
「それもいいわね」
 こうしたお話をしながらです。
 皆で小山に向かい周りに適度に木々がある小山の黄色い煉瓦の道も進んでいってそうして頂上に着きました。
 頂上に着くとでした、オズマは笑顔で言いました。
「時間を見たらね」
「丁度いいね」 
 ボームさんも言います、二人共それぞれの時計を見ています。
「十二時だね」
「そうね、それじゃあね」
「今からだね」
「ご飯を食べましょう」
「お昼をね」
「そしてお昼はね」
 それはといいますと。
「お弁当よ」
「食べられる人はそれぞれ好きなお弁当を取ろう」
 ボームさんはオズマと一緒に皆にお話しました。
「そうしようね」
「では私が取ります」
 ジュリアは自分から申し出ました。
「皆さん欲しいお弁当を言って下さい」
「ジュリア、その必要はないわ」
 オズマはそのジュリアに笑顔で言いました。
「全くね」
「どうしてですか?」
「だってここは王宮じゃないのよ」
 こう言うのでした。
「だからね」
「それで、ですか」
「ええ、貴女はメイドじゃないから」
 だからだというのです。
「お仕事を離れているからね」
「では私は」
「それぞれが好きなお弁当を取って食べるから」
「姫様もですか」
「勿論よ」
 笑顔のままでの返事でした。
「だからね」
「それでは」
「皆それぞれが好きなお弁当を取ってね」
 オズマは皆に言いました。
「いいわね」
「そうしようね」
 ボームさんも笑顔で応えてでした。 
 皆でそれぞれのお弁当を取って敷かれた絨毯の上に靴を脱いで座りました、そのうえで皆で食べはじめますが。
 ボームさんは神宝達のそれぞれのお弁当を見て言いました。
「皆美味しそうだね」
「八宝菜と包いいですよ」
 神宝はこのお弁当でした。
「ザーサイと茶卵、ライチにお茶もありますし」
「ピロシキとビーフストロガノフですが」
 ナターシャはこの組み合わせのお弁当です。
「飲みものは紅茶でうんと甘くしています」
「ハンバーガーとチキンナゲットとフルーツの盛り合わせで」 
 ジョージはこうした組み合わせでした。
「ポテトサラダにホットコーヒーです」
「豚肉を焼いたものとトロピカルフルーツにパンです」
 カルロスはこうしたお弁当です。
「玉蜀黍とマテ茶もあります」
「私は幕の内弁当です」
 恵梨香はこれでした。
「日本のお茶を飲みものにしました」
「それぞれだね、いいね」
 ボームさんはサンドイッチを食べつつ応えました。
「皆沢山食べるんだよ」
「王宮からここまで随分歩いたわね」
「そうよね」
 ドロシーはオズマの言葉に頷きました。
「そう思うとかなり運動したし」
「それならね」
「しかも今日はお祝いだし」
「ここに来たのはその意味もあるしね」
「図書館の整頓が終わって」
「そのお祝いだから」
 そのこともあるからだというのです。
「それではね」
「ここは楽しまないとね」
「ではね」
「皆で沢山食べましょう」
「今食べているお弁当だけじゃなくて」
「他にもね」
「それではね」
 またボームさんが言ってきました。
「僕も次は何を食べようか」
「色々あるから目に入ったものを食べればいいわ」
「僕が前に言った様にだね」
「ええ、それでね」
 まさにというのです。
「いいわね」
「そうだね、ではサンドイッチの次はお饅頭にしようか」
 ボームさんはオズマに言われて笑顔で応えました。
「そうしようか」
「お饅頭ね」
「中国の中にお肉が入ったね」
「あちらにするのね」
「うん、それを食べて」 
 そうしてというのです。
「楽しもうか」
「いいわね」
 オズマもにこりと笑って応えました。
「そちらも。では私もね」
「オズマ姫もだね」
「次はお饅頭にするわ」
「今はパンでもだね」
「今度はね」
「包もいいわね」
 ドロシーは今はそれを食べています。
「こちらも」
「ええ、そちらも中国のお料理でね
「美味しいわ、ふんわりしていて」
「そうよね」
「蒸しパンみたいでね」
「そちらもいただこうかな」
 ボームさんはドロシーのお話を聞いてこう思いました。
「お饅頭とね」
「どちらもなのね」
「うん、いただこうかな」
「そうね、では私もね」
 ドロシーも笑顔で応えました。
「お饅頭もいただくわ」
「包にだね」
「そうするわ」
「ではそうしようね」
「一緒にね」
「私は次はカツサンドにしようかな」
 ボームさんはハムサンドを食べつつ言いました。
「そちらにね」
「カツサンド美味しいよ」
 それを食べているモジャボロが応えました。
「実際にね」
「ではそれをいただくよ」
「それではね」
 こうしたお話をしてでした。 
 皆でお弁当を食べてお喋りも楽しみますがお弁当の木々の中に入ってお弁当箱の一つを取ろうとした時にでした。
 ベッツイは目を丸くして言いました。
「ボタンがいるわ」
「ボタン=ブライト?」
「ええ、その子がね」
 一緒にいるトロットに答えました。
「ほら、あそこね」
「あら、確かに」
 トロットはベッツイが指差した方を見て言いました、見ればです。
 そこに確かにボタン=ブライトがいました。気持ちよさそうに寝ています。その彼を見てトロットは言いました。
「またかしら」
「そうね、この子はね」
「いつも寝ている間に移動してね」
「他の場所に行くから」
「それも何処に行くかわからないから」
「オズの国の何処かにね」
「稀に外の世界にも行くし」
「オズの国の出入り口の傍だけれどね」 
 二人でお話します。
「それで今回もなのね」
「寝ている間に移動したのね」
「どうしようかしら」
「気持ちよさそうに寝ているし」
「このまま寝かせてあげてもいいけれど」
「私達のピクニックに参加させてあげようかしら」
「あれっ、誰かいるのかな」
 二人がお話しているとでした。
 ボタンは目を覚ましました、そして起き上がって左手で瞼をこすりながら言いました。
「ここ何処かな」
「エメラルドの都の小山よ」 
 トロットが答えました。
「そこよ」
「あっ、トロットさん」
「ええ、私よ」
「他の皆もいるね」 
 ボタンは皆も見て言いました。
「そうなんだ」
「今はピクニックをしているの」
「それで皆いるんだ」
「そうなのよ」
「成程ね、僕昨日の夜までクマセンターにいたけれど」
「寝ている間に移動したんだね」
 ボームさんも言いました。
「そうなんだね」
「そうだね」
 ボタンもそれはと頷きました。
「いつも通りね」
「そうだね」
「あの、貴方もここに来たから」 
 オズマはボタンにこう言いました。
「これから一緒にピクニックを楽しまない?」
「今からだね」
「ええ、どうかしら」
「僕も参加していいんだ」
 ボタンはオズマに問い返しました。
「今ここにいるだけなのに」
「出会ったのが縁よ」
 オズマはボタンに微笑んで答えました。
「だからその縁を大切にしてね」
「僕もなんだ」
「ええ、一緒にね」
「ピクニックを楽しむんだ」
「そうしましょう」
「それじゃあね」
 ボタンはオズマの言葉に頷いてでした。
 皆がいる絨毯のところに行きました、そしてお弁当箱も手にしていますが。
 お握りとお漬けもののものです、唐揚げや野菜のおひたしもあります。
「これにしたよ」
「和風だね」
「うん、最近お握りが好きだから」
 ボタンはボームさんに答えました。
「それでなんだ」
「お握りにしたんだね」
「そうだよ、お握り美味しいよね」
「僕もそう思うよ」 
「そうだね」
「では今はお饅頭と包を食べているけれど」
 それでもというのです。
「次はね」
「お握りにするんだ」
「それを食べたらお腹一杯かな」
「じゃあ僕もです」
 神宝も言ってきました。
「次はです」
「お握りだね」
「そちらにします」
 こう言うのでした。
「ボタンが食べているのを見て美味しそうだから」
「じゃあ一緒に食べようね」
「そうしましょう」
「しかしボタンはどうしてお握りが好きになったのかしら」
 恵梨香はふと思いました。
「一体」
「オズの国にもお握りはあるけれどね」
 カルロスも言いました。
「基本パンだしね」
「それでボタンもパンが好きだったけれど」
 ジョージも考えました。
「それでどうしてお握りが好きになったのかな」
「それには理由がある筈だけれど」
 ナターシャも思うのでした。
「何処かで食べたのかしら」
「わかんなーーーい」
 ボタンは子供達にこう答えました。
「そこは覚えていないよ」
「そうなんだ」
「そこはボタンね」
「やっぱりわからないんだ」
「そうじゃないかしらって思ったけれど」
「わからないんだね」
「うん、気付いたら好きになっていたんだ」
 そうだというのです。
「僕はね、パンも好きだけれど」
「お握りもだね」
「そうなったんだね」
「それで今はお握りなんだ」
「お茶もあるし」
「日本のお茶もね」
「どちらも好きだよ、海苔もだしね」
 お握りに着いているそちらもというのです。
「好きだよ」
「では食べようね」 
 ボームさんはボタンに笑顔で応えました、もう包やお饅頭は食べ終えていてお握りを食べようとしています。神宝達五人も今はお握りを前にしています。
「これから」
「そうしましょう、それでだけれど」
 オズマも言ってきました。
「これから整頓が完成したことのお祝いのね」
「パーティーをだね」
「ここでしましょう」
 こう言うのでした。
「今からね」
「そうするんだね」
「予定通りにね」
「楽しい予定だね」
「そうでしょ」
「うん、では」
「皆乾杯しましょう」
 オズマは皆に言いました。
「そしてね」
「これからだね」
「もう飲んで食べているけれど」
 それでもというのです。
「皆で楽しくね」
「今から乾杯をして」913
「さらにそうしましょう」
 オズマがこう言ってでした、皆はボタンも交えてです。
 それぞれのコップにお酒やジュースを入れて乾杯しました、そのうえでお弁当も食べて楽しいピクニックのパーティーの時間を過ごしました。


オズのボームさん   完


                 2022・3・11








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