『オズのボームさん』
第八幕 ファッションショーの様に
この日は休日で皆は前にお話した様にそれぞれが好きな服を着てお洒落をして見せ合うことにしました、それでです。
皆それぞれこれはという服を着ますが服を着る必要のない人達はそれぞれ洗濯をしてもらったりお風呂に入って毛をブラッシングしてもらったり油を塗ってピカピカに磨いてもらってです。
奇麗にしました、それでかかしもです。
お洗濯をしてもらって新しい藁を中に入れてもらいました、そうして全身に油を塗ったうえでピカピカに磨いてもらった樵に尋ねました。
「今の僕はどうかな」
「うん、凄く奇麗だよ」
樵はかかしに笑顔で答えました。
「とてもいいよ」
「お洗濯をしてもらってね」
「中の藁まで替えてもらって」
「この通りだよ、君だってね」
樵もというのです。
「油を塗って磨いてもらって」
「奇麗だね」
「全身ピカピカでね」
そうした風になっていてというのです。
「とてもだよ」
「奇麗だね」
「お洒落だよ」
本当にというのです。
「これ以上はないまでにね」
「では僕もかな」
ファイター大尉も出て来ました、見れば主君の樵と同じくピカピカです。
「奇麗かな」
「うん、君もだよ」
かかしは大尉にも笑顔で答えました。
「物凄くね」
「奇麗になっているんだね」
「ピカピカに磨かれていてね」
樵がそうである様にというのです。
「凄くね」
「それは何よりだよ」
「そう、お洗濯をしたらこの通りよ」
つぎはぎ娘はくるくると踊りながら言います。
「普段から奇麗なあたしが遥かによ」
「奇麗になるっていうのね」
「そうよ」
ガラスの猫に言います。
「この通りね」
「あんたいい匂いもするわよ」
「お洗濯したからよね」
「ええ、洗剤のいい匂いがするわよ」
こう言うのでした。
「私の次に魅力的よ今のあんた」
「あんたの次?」
「私を見なさい」
ガラスの猫はつぎはぎ娘に胸を張って言いました。
「ガラスの身体を磨いてもらってよ」
「普段より奇麗になったのね」
「そうよ、だからね」
それでというのです。
「あんたは私の次によ」
「奇麗だっていうのね」
「そういうことよ」
「誰かが一番ということないんじゃないかな」
ジャックは頭のカボチャを代えて身体に油を塗って磨いてです。
服は燕尾服にしています、そうして言うのでした。
「皆それぞれ個性があるからね」
「はいーーそうですーーから」
チクタクも言ってきます、彼も全身磨かれています。油を塗ってからそうされていてピカピカの状態です。
「どなたがーー一番かはーーです」
「ないよね」
「そうですーーよね」
「チクタクも奇麗だしね」
見ればゼンマイまでそうなっています。
「そして僕もだね」
「ジャックさんーーお洒落ーーですーーよ」
「そうなんだね」
「今のーージャックさんーーはーー最高ーーです」
こうジャックに言うのでした。
「最高のーージャックさんーーです」
「僕として最高なんだね」
「そうーーです」
「まあそれぞれの最高の状態だったらね」
木挽きの馬もピカピカです。
「いいんじゃないかな」
「そうだよね」
「つぎはぎ娘も奇麗でね」
「ガラスの猫もね」
「僕達もそうで」
「皆がね」
「あら、私は皆の中で一番だと思ってるわよ」
お風呂の後で奇麗にブラッシングしてもらっているエリカが来ました、トトもハンクもビリーナもそうしています。臆病ライオンと腹ペコタイガーもです。そのうえでそれぞれの頭や尻尾や鬣の先にリボンがあります。
「何といってもね」
「そう言うのがあんたね」
ビリーナがエリカに言ってきました。
「いつも自分が一番よね」
「猫はそうでしょ」
「そうよね」
「けれどそれはあんたもでしょ」
「私も?」
「あんたもいつも胸張ってるからね」
それでというのです。
「そうでしょ」
「そう言われるとね」
「やっぱりそうよね」
「私も今この中で私が一番決まってると思うわ」
「ほら見なさい」
「というかね」
トトは胸を張り合う二人に言ってきました、見れば彼の頭のリボンは青です。エリカはピンクでビリーナは赤です。
「別にレースでもコンテストでもないから」
「だからなの」
「そんな張り合うこともないよ」
「あら、コンテストでなくてもよ」
エリカはトトに言いました。
「別によ」
「一番だと思ってるんだ」
「私は普段から一番奇麗でね」
「皆がそれぞれの中で一番奇麗になってもなんだ」
「私が一番奇麗なんだよ」
「そういう考えなんだね」
「そういうことよ、ただ私は私でそう思っていてね」
そうしてというのです。
「皆にもそう思えとは言わないでしょ」
「思ってもいないね」
「私は私よ」
あくまでというのです。
「私がそう思っていても他の人もそう思えとはね」
「言わないね」
「決してね」
それはというのです。
「何があってもよ」
「それが君だね」
「そういうことよ」
「どう思っていても自分の中だけならいいね」
ハンクも言ってきました、彼もまた奇麗になっています。
「それで終わっているなら」
「そうでしょ」
「誰にも迷惑かけないならね」
「猫はそう思うものだしね」
腹ペコタイガーが言ってきました、お風呂のシャンプーの香りがとてもいいです。
「まあそれはね」
「別にいいね、むしろそう思わない猫なんてね」
臆病ライオンの鬣の緑のリボンがとても奇麗です。
「いないね」
「そうだね」
「僕もそれはわかるよ」
「僕達もだよ」
「何と言っても僕達もネコ科だしね」
「猫の仲間だから」
「よくわかるよ」
こうお話するのでした、お互いの間で。
「そこは」
「本当にそうだね」
「全く以てね」
「というかね」
ここで言ったのは魔法使いでした、いつものタキシードとシルクハットそれに縞模様のズボンと革靴ではなく。
紋付羽織り袴です、その姿で言うのでした。
「そう思わない猫は猫じゃないよ」
「そうだよね」
「やっぱりね」
「それで今の私だけれど」
魔法使いは臆病ライオンと腹ペコタイガーに尋ねました。
「どうかな」
「いいね」
「羽織袴なんてね」
「その紋はオズの国の紋章だね」
「それにしているね」
「そうだよ、私はオズの国の人になっているからね」
だからだというのです。
「紋はそれにしたんだ」
「貴方の家紋ではないのだね」
ムシノスケ教授は白を基調としたアラビアの服です、尖った靴で服のあちこちにエメラルドやダイアモンド、ルビーにサファイア等様々な宝石が飾られていてとても奇麗です。帽子まで被っていて実に見事なものです。
「そうなのだね」
「私の家は家紋がないんだ」
「そうなんだね」
「何しろ王侯貴族でもないしね」
「日本では普通のお家にあるみたいだけれど」
「私は日本人ではないから」
だからだとです、魔法使いは教授に答えました。
「それでだよ」
「家紋はないんだ」
「そう、だからね」
それでというのです。
「この通りだよ」
「オズの国の家紋にしたんだね」
「そうだよ」
こうお話するのでした。
「この通りね、そう言う君の今の恰好は」
「どうかな」
「まるでカリフだよ」
教授に笑顔で言いました。
「アラビアンナイトの」
「ハールーンさんみたいなかな」
「うん、実に豪奢だね」
「実は今あちらのことを学んでいてね」
「アラビアのだね」
「それでなんだ」
その為にというのです。
「アラビアの服にも興味があってね」
「着たんだね」
「そうなのだよ」
「成程ね」
「着てみるといいものだよ」
気に入っているとです、教授はにこりとして述べました。
「まことに」
「そうなんだね」
「だから貴方も今度どうかな」
「着てみるよ」
魔法使いは笑顔で答えました、そしてです。
モジャボロは弟さんと一緒ですが弟さんのマハラジャの様な恰好を見て言いました。
「インドだね」
「そう言う兄さんはタイだね」
「うん、この前タイ料理を食べてね」
モジャボロは全身金色で眩しい位です、お風呂に入って髪の毛だけでなくお髭も奇麗に編んでセットしてそこにもきらきらとしたものを着けています。
「それがとてもよかったからね」
「タイにしたんだね」
「そうなんだ、タイの礼装だけれど」
昔のです。
「こんなに凄いとは思わなかったよ、しかしね」
「しかし?」
「そう言うお前もかなりだね」
そのマハラジャの様な服装の弟さんに言うのでした。
「何かダンスを踊りそうな位だよ」
「歌いながらだね」
「沢山の人達と一緒にね」
「悪くないね、インドの服はこれまで着たことがなかったけれど」
「いいものだね」
「とてもね」
弟さんはお兄さんに笑顔で答えました。
「こうした礼装もだよ」
「悪くないね」
「タイやインドもまた」
「とてもね」
「冒険し過ぎたでしょうか」
ジュリアは困ったお顔で出てきました、見ればです。
緑のアジサイ姿です、上着は濃い目の緑で下のズボンは緑です。そうして上着の前と袖に奇麗なエメラルドで造った模様があります。
「この服は」
「アオザイなんだ」
「はい」
袴姿の魔法使いに答えます。
「前からいい服だと思っていたので」
「それでだね」
「今回いい機会と思ってです」
そうしてというのです。
「着てみたのですが」
「冒険し過ぎだっていうんだね」
「そう思いました」
着てみてというのです。
「本当に、ただ」
「ただ?」
「いざ着てみますと」
そのアオザイをというのです。
「体型が出て」
「アオザイはそうだね」
「いいデザインだと思いますが」
それでもというのです。
「そこが恥ずかしいです」
「そうなんだね」
「はい、ですが似合ってるでしょうか」
「凄くいいよ」
魔法使いはジュリアに笑顔で答えました。
「似合っているよ」
「そうならいいですが」
「君は普段のメイド服もいいけれどね」
そちらも似合っているというのです。
「他の服も何かと似合うと思っていたけれど」
「アジサイもですか」
「凄くね」
実際にというのです。
「似合っていてね」
「そうしてですか」
「いいと思うよ」
ジュリアに笑顔でお話します。
「とてもね」
「そうですか」
「それに体型が出ていても」
アオザイを着ると、というのです。
「そうした服だからね」
「それで、ですか」
「そこは割り切るといいよ」
こうジュリアに言います。
「別に裸でもないね」
「はい、それは」
「それならね」
服を着ているのならというのです。
「それでだよ」
「いいですか」
「そうだよ、似合ってもいるし」
「それでは」
「そういうことでね、しかしこうして羽織袴だと」
魔法使いは自分の今の服について笑ってこうも言いました。
「何かね」
「どうされましたか?」
「お侍になった気分だよ」
「お侍さんですか」
「袴だからね、それに下駄を履いているし」
足袋にそれとなっています。
「余計にだよ」
「お侍さんになった気分ですか」
「刀はないけれどこうして扇子も出せば」
実際にそうもします。
「尚更かな」
「はい、何かです」
ジュリアは扇子を出して拡げて煽りだした魔法使いに笑顔で応えました。
「本当にです」
「お侍みたいだね」
「そう見えます」
「ううん、そちらにすべきだったかな」
ボームさんも出てきました、見ればです。
この人は烏帽子に袴です、浅葱色の上着に下は白で烏帽子は黄金です。その服装で出て来て言うのでした。
「僕も」
「ボームさんは平安時代ですか」
「その時のお公家さんの服を着てみたんだ」
ボームさんはジュリアにこう答えました。
「少し考えてね」
「そうだったんですね」
「うん、普段の当時のアメリカの服でなくてね」
スーツで首に細いリボンがあるそれでなくてというのです。
「日本の服でと思って」
「それで、ですか」
「日本の歴史は長くてね」
「服もですね」
「それぞれの時代のものがあるけれど」
「その中で、ですね」
「一体何を着ようかと思って」
そうしてというのです。
「色々見て考えたけれど」
「そちらにされましたか」
「そうしたんだ、けれどね」
袴姿の魔法使いを見て言うのでした。
「魔法使いさんを見るとね」
「袴もですね」
「いいかなと思うよ」
「いや、ボームさんもかなりいいよ」
魔法使いはボームさんに言いました。
「そう言ったら私もだよ」
「この烏帽子の礼装をなんだ」
「着たいと思うよ、まるでね」
「まるで?」
「源氏物語や竹取物語だよ」
こうしたお話の様だというのです。
「本当にね」
「かぐや姫だね」
「うん、かぐや姫はね」
この人はといいますと。
「オズの国にいるけれど」
「オズの国の月にいてね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「時々こちらに来てくれるけれど」
「基本はあちらにいるね」
「オズの国の月にね」
「私達もオズの国の月に行けるけれど」
「空を飛んでね」
「けれど普段はこちらにいるから」
オズの国にというのです。
「離れた場所にいるとね」
「思ってしまうね」
「どうしてもね」
こんなことをお話するのでした、そしてです。
そうしたお話をしながらです、皆で神宝達五人が来たのを見ました、五人は何とです。
それぞれオズの国の服を着ています、神宝はマンチキンのジョージはカドリングのカルロスはウィンキーの服を着てです。
恵梨香はギリキンのナターシャはエメラルドの都の服を着ています、青に赤、黄色、紫に緑にとです。
三角で広い幅に鈴が一杯付いた帽子に長袖のシャツとズボンそれにブーツです、それぞれの色の服を着てです。
皆のところに来ましたがボームさんは目を見開いて言いました。
「まさかね」
「まさかですか」
まずはジョージが応えました。
「僕達がこの服を着るなんて思いませんでしたか」
「実は前から着たいと思っていました」
カルロスはこう言いました。
「オズの国の服を」
「とてもお洒落で可愛らしいので」
恵梨香も言います。
「私達もって」
「私達普段はそれぞれの好きな服を着ていますが」
ナターシャは自分の着ている服を見つつお話します。
「いい機会だと思いまして」
「それで着てみました」
五人の最後に神宝が言いました。
「いい機会だと思いまして」
「そうなんだね」
ボームさんは五人のその言葉に頷きました。
「まさかその服とは思わなかったよ」
「しかしね」
「これはいいね」
かかしと樵が言ってきました、そして南北戦争の頃のアメリカの服普段ボームさんが着ているそれに近い礼装のキャプテン=ビルも言ってきました。
「いや、オズの国の服とはね」
「キャプテンもだね」
「思わなかったよ」
こう言うのでした。
「本当に」
「ですが僕達にとってはです」
「オズの国の服は元々自分達の服でないので」
「だからです」
「前から着たいと思っていまして」
「それで着させてもらいました」
「そうなんだね、そういえばわしもだよ」
キャプテンも言いました。
「オズの国の服は着ないよ」
「それは僕もだね」
「僕もだね」
モジャボロと弟さんも言いました。
「元々オズの国の住人じゃなくて」
「言うなら移民だからね」
「オズの国の服はね」
「着ることはないよ」
「わしもだね」
魔法使いもでした。
「考えるとね」
「外の世界から来た人はオズの国の服を着ることは少ないみたいだね」
ボームさんも言いました。
「オズの国はそれぞれ好きな服を着てもいいけれど」
「オジョ君はオズの国出身だからいつも着ているけれどね」
教授も言います。
「外の世界から来ると最初に馴染みがないことは事実だね」
「それが大きいのかな」
ボームさんはまた言いました。
「やっぱり」
「そうかも知れないわね」
ビリーナも言ってきました。
「思えばね」
「この子達もそんなこと言ってるしね」
「着ようと思えば着られてもね」
つぎはぎ娘はこう言いました。
「皆馴染みのある服が好きね」
「その通りだね」
「だからよ」
その為にというのです。
「外の世界から来た人達はあまり着ないのよ」
「最初に着た服に馴染んでいるからだね」
「このこと意外と大きいみたいだね」
ジャックも考える感じで言いました。
「僕はオズの国で産まれたから着なくても思わないけれどね」
「ううん、それでこの子達を見たら」
ボームさんはその五人を見て思いました。
「普段と違う感じがするんだね」
「そうだね、けれど似合ってるね」
ハンクはこのことを素直に褒めました。
「五人共ね」
「そうだね、まさにオズの国の子供達だね」
「そうとしか見えないわ」
エリカが見てもです。
「何処から見てもね」
「昔はオズの国の人は大人でももっと小さかったから」
ガラスの猫はこのことを言いました。
「この子達を見てこのことも思い出したわ」
「気付いたら皆大きくなったんだよね」
トトはガラスの猫に応えました。
「平均して三十センチか四十センチ位ね」
「本当にオズの国の大人の人大きくなったね」
木挽きの馬もしみじみとして言います。
「そうなったね」
「うん、ドロシーが最初に来た時は」
「また言うボームさんでした。
「皆もっと小さかったね」
「大人と子供も今より差がなかったね」
ファイター大尉が言ってきました。
「体格に」
「それでこの子達を見たら」
かかしは神宝達を見ています。
「そのことも思い出したね」
「そういえば僕達も大きくなったかな」
樵は自分達のことを思いました。
「あの時と今も目線は大人と同じだね」
「そういえばそうだね」
臆病ライオンは樵の言葉にはっとなりました。
「皆目線は変わってないよ」
「大人が大きくなってもね、だったら」
腹ペコタイガーも言いました。
「僕達も大きくなっているんだ」
「確かに身体測定をすれば結果が出ているけれど」
ムシノスケ教授はここからお話しました。
「我々も確かに大きくなっているよ」
「自覚はーーないーーですーーが」
チクタクも思いました。
「そうなってーーいるのーーですーーね」
「そうだね」
ボームさんは頷きました。
「言われてみると」
「そうーーですーーね」
「うん、それでこの子達も来たし」
「後はーーですーーね」
「オズマ姫達だね」
「オズマ姫もドロシーさんも龍袍ですね」
神宝は楽しそうに言いました。
「そうですね」
「一体どれだけ素晴らしいか」
ナターシャも楽しみにしている感じです。
「期待しています」
「ならですね」
ジョージはうきうきとした感じです。
「今は待つことですね」
「こうした時待つのって楽しいですね」
カルロスはジョージ以上に明るい感じになっています。
「心が自然と嬉しくなって」
「それならですね」
恵梨香も言います。
「今は皆で待つことですね」
「そうしようね」
ボームさんも笑顔で言います、そうしてでした。
皆でオズマ達が来るのを待ちました、そして暫くしてジュリアが言いました。
「来られました」
「そうだね」
ボームさんが応えました。
「今ね」
「来られました」
「うわっ、凄いですね」
神宝はそのオズマ達を見て言いました、見ればです。
オズマ達はそれぞれ龍袍中国の皇帝が着る服を着てやってきました、五人共様々な宝石や金銀を使った糸で装飾されたオズの国の五色を配して九匹の龍を描いた服と冠を身に着けてお部屋に入ってきました。
ですが服がそれぞれ違うのでトトが言いました。
「あれっ、それぞれね」
「服が違うわね」
つぎはぎ娘も言いました。
「そうね」
「同じ龍を飾った服でも」
「かなり違うわね」
「それは王朝によって違うからなんだ」
ボームさんがお話します。
「中国の服はね」
「時代によって違うんだ」
「そうなんだ、時代によって服も変わるね」
「オズの国でもね」
トトもそれはと答えます。
「そうだね」
「それでなんだ」
「中国でもそうでね」
「だからドロシー達もなんだ」
「同じ龍袍でもね」
それでもというのです。
「デザインが違うんだ」
「そうなんだね」
「私の服は宋の頃のものなの」
オズマが微笑んでお話しました。
「その頃よ」
「私は唐よ」
ドロシーはこの時代でした。
「その時代の服なの」
「私は清なの」
トロットも言ってきました。
「一番新しい時代ね」
「それで私は明なの」
最後にベッツイが言ってきました。
「どうかしら」
「皆凄く似合ってるよ」
かかしは四人に手放しという感じで言いました。
「まさにプリンセスの中のプリンセスだよ」
「四人揃うと尚更いいね」
樵も四人に言います。
「豪華絢爛だよ」
「そうだね、ただね」
臆病ライオンはここでこう言いました。
「四人共王女様だね」
「そうだよ、だから着ている服は実は皇帝のものでなくてね」
ボームさんがお話します。
「皇后のものだよ」
「女性だからだね」
「龍袍は皇帝と皇后そして皇帝のお母さんである皇太后しか着られなかったんだ」
「そうだったんだ」
「あと先の皇帝上皇もかな」
この人もというのです。
「着られたんだ」
「そうした風になっていたんだ」
「それでオズマ姫達は女の子だから」
「皇后さんの服だね」
「それを着ているんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、そしてね」
ボームさんはさらに言いました。
「オズマ姫達はその服だけれどオズの国の国家元首だから」
「いいんだね」
「そうだよ」
「あれっ、龍の数が違うね」
腹ペコタイガーはこのことに気付きました。
「ドロシーとベッツイとトロットは九匹だけれど」
「オズマは十二匹でしょ」
ドロシーが笑顔で応えました。
「そうでしょ」
「君達三人は九匹でね」
「オズマはオズの国の国家元首だからだよ」
「それで三匹多いんだ」
「私達は中国の皇帝の龍袍にちなんで九匹だけれど」
服にある龍の数はというのです。
「オズマは国家元首だから」
「三匹多くしたんだ」
「ブリキの樵は皇帝で」
ウィンキーの国のというのです。
「オズマはその皇帝の上に立っているから」
「それでオズの国の国家元首だからだね」
「龍の数が多くてね」
それでというのです。
「十二匹なの」
「成程ね」
「十二は大切な数字でもあるからよ」
外ならないオズマも言ってきました、みらびやかな中国の豪奢な服を着たオズマはドロシー達と一緒に並んでいると四人の可愛い女神様がいるみたいです。
「それでこの数にしたの」
「そうだね、十二は外の世界でもオズの国でも大切な数字だね」
教授が応えました。
「ギリシアの神様もオリンポスは十二神でね」
「それで星座もでしょ」
「そうだね」
「それでキリスト教も十二使徒でね」
こちらもというのです。
「中国でも干支がそうでしょ」
「十二だね」
「だからなの」
「オズマ姫も十二の龍を飾っているんだ」
「今着ている龍袍にね」
「そういうことだね」
「そうなの、けれどこうして龍袍を着たことは」
オズマはあらためて言いました。
「滅多にないことだからね」
「嬉しいわよね」
トロットが明るい声で言ってきました。
「尚更」
「そうよね」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「今とても嬉しいわ」
「本当にそうね」
「普段は西洋のドレスやマントや冠が礼装だけれど」
ベッツイは自分の龍袍を上から下まで見ながら思いました。
「中国だとこうだっていうことね」
「そうね、神宝のお国だとね」
オズマはベッツイにも応えました。
「こうした服ということね」
「そうよね」
「それで着ていたら」
「東洋の気持ちも味わえて」
「素敵よね」
「流石オズの国ですね」
神宝はしみじみとして思いました。
「龍袍姿のお姫様達が見られるなんて」
「そうだね、こんなことはだね」
「ドラマや漫画だけのことですから」
こうボームさんにも言うのでした。
「尚更です」
「不思議に思えるね」
「はい」
実際にというのです。
「この目で見られるなんて」
「オズの国は不思議なことで一杯だからね」
「こうした不思議もあるんですね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「そういうことだよ」
「そうなんですね」
「ええ、それでだけれど」
オズマはにこりとして言ってきました。
「今日のお昼だけれど」
「はい、それですが」
ジュリアが応えました。
「オズマ様達が龍袍、中国の服なので」
「だからなのね」
「お昼は中華料理ですが」
そのメニューのことをお話するのでした。
「満漢全席です」
「それなのね」
「何がいいかと思いましたが」
それでもというのです。
「姫様方が龍袍ということなので」
「だからなのね」
「中華料理しかもです」
「一番豪華な」
「はい、シェフの方とお話しまして」
「満漢全席なのね」
「そちらにすることにしました」
そうしたというのです。
「お食事を食べられる方は。飲みものはです」
「そちらもなのね」
「はい、お茶も用意して」
「中国はやっぱりお茶ね」
「そちらも用意しまして」
そしてというので。
「お酒は紹興酒や桂花陳酒です」
「そう、中国はお酒もいいんだよね」
ボームさんは笑顔で応えました。
「そちらも美味しんだよね」
「だから用意しました」
ジュリアはボームさんにも応えました。
「そちらも」
「そうなんだね」
「はい、ボームさんもお好きですね」
「甘いものも好きでね」
それと共にというのです。
「お酒もだよ」
「そうですね」
「そして桂花陳酒だとね」
こちらのお酒だと、というのです。
「これがまたね」
「そのお味がですね」
「お菓子にも合うからね」
だからだというのです。
「いいね」
「ビールもいいだけど」
モジャボロは少し残念そうに言いました。
「甘いものには合わないね」
「どうしてもそうだね」
魔法使いもそれはと頷きます。
「ビールはね」
「あと紹興酒もだね」
「日本酒もだね」
「穀物で造ったお酒はそうなのかな」
かかしは聞いて思いました。
「聞く限りでは」
「そうかも知れないね」
樵もそれはとなりました。
「僕達は食べることも飲むこともないからわからないけれど」
「そこはね」
「そうかも知れないね」
「穀物のお酒はね」
「甘いものには合いにくいのかな」
「ウイスキーは別にして」
キャプテンはこのお酒はと言いました。
「ビールや日本酒や紹興酒はだね」
「甘いものには合わないね」
「そうだね」
ボームさんはそれはと応えました。
「言われてみると」
「ビールといえば」
キャプテンは強い声で言いました。
「ソーセージやベーコン、枝豆にフライに串カツだよ」
「餃子や麺類もだね」
「そういうものが会うもので」
「甘いものはだよ」
「合わないね」
「そのビールもありますよ」
ジュリアはにこりとしてです、ボームさん達にお話しました。
「よかったらです」
「満漢全席を食べながらだね」
「召し上がって下さい、そしてデザートの時は」
「まただね」
「他のお酒をどうぞ」
こう言うのだった。
「そうして下さい」
「それではね」
こうしたお話をしてでした。
皆は宮殿の中の一室中華風のお部屋の中のやはり中華風の円卓に座って満漢全席を食べました。そこでなのでした。
皆エメラルドのお箸で食べますがそれで、です。
満漢全席を食べてです、神宝達五人は言いました。
「うわ、これは」
「また美味しいね」
「こんな美味しい中華料理そうないよ」
「オズの国は美味しいものばかりでも」
「これは特に」
「流石は中国で最高とされるご馳走だね」
ボームさんも食べて言いました。
「桁外れの美味しさだよ」
「そうですね」
「流石満漢全席です」
「高低が食べるお料理です」
「凄い美味しさです」
「本当に」
「僕もこんな美味しいものを食べられて」
そしてというのです。
「幸せだよ」
「そうね」
オズマもにこりと笑って応えます。
「食べられてよかったわ」
「そうだね、では今は」
「楽しんでね」
「沢山食べてだね」
「召し上がってね」
「中国はお料理で有名だけれど」
こう言ったのはドロシーでした。
「それでオズの国でもね」
「美味しいけれどね」
「特にね」
「この満漢全席はね」
「素晴らしいわ、こんなものが食べられて」
本当にというのです。
「私も幸せよ」
「私もよ」
「龍袍みたいな奇麗で立派な服を着られて」
「それで皆とね」
「こうして食べられてね」
「最高に幸せよ、幸せに満ちているのがね」
オズマはエメラルドの箸を使いつつドロシーに応えました。
「オズの国でね」
「今もということね」
「そうよ、だからね」
それでというのです。
「私もよ」
「幸せね」
「最高の気持ちよ」
まさにというのです。
「これ以上はないわ」
「そうですよね、それで龍袍ですが」
ここで神宝がオズマに尋ねました。
「普通の人達も着られますか」
「ええ、けれど龍の数は決まっていて」
「それで、ですか」
「私は十二匹、ドロシーとベッツイ、トロットは九匹で」
それでというのです。
「他の人達はなくてもいいし八匹までならね」
「いいですか」
「そうなっているわ」
こうお話するのでした。
「国家元首と王女はね」
「そうなっているんですね」
「そうよ、だから貴方達もね」
「龍袍を着られるんですね」
「だからよかったらね」
「着てもですね」
「いいわよ」
神宝ににこりと笑って答えました。
「そうよ」
「そうですよね」
「だからね」
それでというのです。
「よかったらね」
「はい、今度こうした時があれば」
「着てみるのね」
「そうさせてもらいます」
「国家元首のしきたりはあるけれど」
ボームさんも言ってきました。
「それでも皆が好きな服を着られることはね」
「いいことですよね」
「そうだね」
「はい」
神宝もその通りと答えました。
「僕もそう思います」
「だからね」
「龍袍もですね」
「よかったらね」
是非にというのです。
「着てね」
「そうさせてもらいます」
神宝は笑顔で応えました。
「是非共」
「それではね」
「そしてですね」
神宝はさらに言いました。
「この満漢全席も」
「ええ、またね」
「食べていいですね」
「そうよ、オズの国は食べものもよ」
「誰が何を食べてもいいですね」
「誰かしか食べてはいけないものはね」
そうしたものはというのです。
「オズの国にはないわ」
「だからですね」
「宮廷料理も食べていいし」
それにというのです。
「この満漢全席もね」
「食べていいですね」
「そうよ、だからね」
「またですね」
「皆でいただきましょう」
「わかりました」
神宝は満面の笑顔で応えました、そうしてです。
皆でそれぞれの服を楽しんでから満漢全席も楽しんで休日も過ごしました、そのうえでまたお仕事に向かうのでした。