『オズのボームさん』
第六幕 外の世界の本
皆で図書館の中で本を整頓している中で、です。
ムシノスケ教授はある本を見付けてこう言いました。
「この本はここにあってはいけないね」
「どんな本かな」
「ヘロドトスの歴史だよ」
教授はボームさんに答えました。
「歴史の本ではあるけれどね」
「それは外の世界の歴史の本だからね」
「そう、だからね」
「この階はあくまでオズの国の歴史の本を保存する階だからね」
ボームさんも言います。
「外の世界は外の世界で」
「そちらの資料を置いている場所があるからね」
「だからね」
それでというのです。
「この本はね」
「そちらに移そう」
「そうしよう」
「こっちには史記があるよ」
キャプテン=ビルはその本を見付けました。
「司馬遷のね」
「ああ、今度は史記なんだ」
「そう、その本があったよ」
キャプテンもボームさんにお話します。
「その本がね」
「それも違うね」
「こっちにはギゾーのヨーロッパ文化史があるし」
モジャボロも見付けました。
「これもまたね」
「外の世界の本だよ」
「何か急に外の世界の歴史書が出て来たね」
「そうだね」
「歴史は歴史でも」
モジャボロはまた言いました。
「オズの国と外の世界ではね」
「違う歴史だからね」
「分けないとね」
「そうだね」
「オズの国は外の世界と隔絶しているかね」
モジャボロの弟さんも言います。
「だからね」
「そう、オズの国は独自の歴史を歩んでいてね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「外の世界とはだよね」
「また違うよ」
「そうなんだよ」
こう言うのでした。
「どうしてもね」
「オズの世界でもそれぞれの国はつながっていてね」
かかしはオズの国の歴史のお話をしました。
「例えばマンチキンであったことがギリキンにも影響する」
「そうそう、そんなことはいつもだよ」
腹ペコタイガーが応えました。
「連鎖的にね」
「影響していくね」
「風が吹けば桶屋が儲かるっていうか」
「そんな風になっているね」
「何かが起こるとその場だけでなくて」
「色々起こっていってね」
「歴史の大きな出来事になって」
そうしてというのです。
「後々まで影響を与える」
「そんなことがあるね」
「僕達がしてきたことでもだね」
臆病ライオンも言ってきました。
「そうだね」
「うん、オズの国中に影響を与えてね」
樵が臆病ライオンに応えました。
「その結果ね」
「オズの国に決定的な影響を与える」
「そうなってきたよね」
「そうだね」
「私がかかしさんや樵さんを助けて臆病ライオンと出会って」
ドロシーも言います。
「それが今のオズの国に大きな影響を与えてるのよね」
「私とも出会ってね」
「私ともね」
エリカとビリーナも言ってきました。
「お陰で私達今オズの国にいてね」
「何かと動いてね」
「私なんて今じゃ鶏の国の女王よ」
「私は王宮の猫よ」
「そうなったのもね」
「あんたと会ってオズの国に入ってだしね」
「ドロシーが来てだよ」
木挽きの馬もドロシーに言います。
「オズの国は凄く変わったんだよ」
「そうよね」
「オズの国と外の世界は確かに隔絶していてね」
「殆ど影響がないわね」
「けれどドロシーが来たことはね」
このことはというのです。
「オズの国に大きな影響を与えているよ」
「そうよね」
「私が来てもなんだよね」
魔法使いは少し苦笑いを浮かべて言いました。
「一時的にオズの国を治めてね」
「ええ、そうしていてね」
「ドロシーと出会ってその座を降りて外の世界に戻って」
「また来てね」
「今では本物のオズの魔法使いだよ」
「そうなったわね」
「それもこれもだよ」
そうなったこともというのです。
「ドロシーが竜巻に逢った」
「そのことがよね」
「きっかけだよ」
「カンサスの竜巻がオズの国を変えたんだ」
「そのことは事実ね」
「そうよ、ただそれでも影響が来ることが僅かなことはね」
オズマが言ってきました。
「事実でオズの国の歴史とね」
「外の世界の歴史はだね」
「学問で別の分野になるわ」
オズマはボームさんにもお話しました。
「そうなるわ」
「だからこの本達はね」
「ええ、他の場所にね」
「おいて整頓しましょう」
「それではね」
ボームさんはオズマに頷いて応えました。
「そうしましょう」
「そういうことでね」
「こっちには平家物語と太平記があるわね」
つぎはぎ娘はその二つの書を見付けました。
「これも歴史の本ね」
「いや、どちらも正確には歴史の本じゃないよ」
ボームさんはつぎはぎ娘にこう言いました。
「残念だけれどね」
「そうなの?」
「軍記ものといってね」
そう分類される本だというのです。
「事実を元に創作されたものなんだ」
「歴史小説みたいなの?」
「そうなんだ」
「そうだったのね」
「そう、だからね」
「歴史の本にはならないのね」
「歴史を元にしていてもね」
それでもというのです。
「また違うんだ」
「そうなのね」
「三国志演義もなんですよね」
神宝が言ってきました。
「実は」
「ああ、あの本も事実とはかなり違うんだよね」
ジョージは神宝のその言葉に応えました。
「実は」
「色々史実と違って創作が入っていて」
恵梨香も言います。
「史実ではいない人やない武器が出たりね」
「そうなのよね、幽霊とか妖術も出て」
ナターシャはそうしたお話をしました。
「仙人さんも出たりね」
「だから史記とかと違うんだね」
カルロスも言いました。
「三国志演義は」
「関羽さんも出る面白い作品だけれどね」
ファイター大尉は少し残念そうに述べました。
「実際の歴史とはかなり違うんだね」
「そうなんだ、関羽さんの武器の青龍偃月刀もね」
ボームさんは大尉に関羽さんの代名詞の一つであるいつも持っているあのとても大きな武器のお話をしました。
「史実では持っていなかったんだ」
「そうだったんだね」
「確か赤兎馬もね」
関羽さんの愛馬もです。
「史実ではだよ」
「乗っていなかったんだね」
「そうだったと思うよ」
「そうだったんだ」
「だから三国志演義もね」
「歴史書じゃないんだね」
「そうだよ」
こうお話しました。
「小説としては素晴らしいけれどね」
「成程ね」
「そういえば真田十勇士の人も実際は皆あの名前じゃなかったんだよね」
ジャックはこの人達について思いました。
「そうだったね」
「そうだよ、猿飛佐助さんはね」
「実は違う名前だね」
「十勇士でそのままの名前で歴史に出ている人は六人位かな」
「それだけなんだ」
「三人か四人しかという説もあるみたいだね」
そうだというのです。
「そして佐助さん達はね」
「別の名前なんだ」
「それで幸村さんに仕えていたんだ」
「そうだったんだね」
「そう思うと歴史の本と小説って一緒にしたらよくないんだね」
ハンクはしみじみと思いました。
「そうなんだね」
「全くーーですーーね」
チクタクはハンクに同意しました。
「そこをーー間違えるーーとーーです」
「よくないね」
「本当ーーに」
「そういえば平家物語もおかしな場面があるね」
ボームさんは言いました。
「平清盛さんが病気になってお水に浸かってもそのお水が熱湯になる」
「そんなこと外であるの?」
「幾ら熱が出てもそれはないよ」
ボームさんはガラスの猫に答えました。
「清盛さんはマラリアで高熱が出ていたらしいけれどね」
「それでもなのね」
「流石にお水が熱湯になって」
そうしてというのです。
「その熱湯で茹で卵が出来る位なんてね」
「ならないんだね」
「とてもね」
そうだというのです。
「事実平家物語も史実と違う描写が多いよ」
「そうなのね」
「清盛さんだって性格が全く違うしね」
「清盛さんってあの優しいお爺さん?」
「そうよね、頭を剃ってるね」
ベッツイとトロットがお話しました。
「オズの国にもおられるわね」
「穏やかで家族と周りの人達を大切にしてね」
「私達も随分可愛がってくれるわ」
「頭がよくて器の大きな素敵な人よ」
「それが平家物語では横暴な人なんだ」
ボームさんは二人にもお話しました。
「史実と違ってね」
「あんないい人が?」
「とても優しいお爺さんなのに」
「それでもなのね」
「平家物語ではそうなのね」
「そうなんだ、史実とは本当に違うから」
平家物語にしてもです。
「軍記ものは今で言うと小説だよ」
「だから別の階に移すんですね」
ジュリアは平家物語や太平記を別の場所に移す本のところに置いたボームさんを見てそのうえで言いました。
「そうされますね」
「うん、そうだよ」
歴史の本ではないからというのです。
「そうするよ」
「わかりました、それでは」
「うん、それと歴史の本は年ごとに書く編年体とそれぞれの人や国を書く紀伝体があるから」
ボームさんは歴史書のお話もしました。
「そこも注意してね」
「そうですよね、ただオズの国は誰も死なないですね」
神宝はボームさんのお話を聞いて言いました。
「そうですから」
「紀伝体も完結しないんだ」
「現代までをですね」
「書いてね」
「それからまたですね」
「定期的にね」
書いてまとめるだけのものが溜まればというのです。
「書き足していくんだ」
「オズの国ではそうですね」
「紀伝体でもね」
「そうなんですね」
「ちなみに僕達の伝もあるよ」
「そうなんですか」
「皆ね、君達五人だってね」
笑顔で神宝達に言うのでした。
「あるよ」
「えっ、僕達のことも書いてくれるんですか」
「オズの国の歴史に」
「しかもそれぞれの伝記があるなんで」
「それは驚きました」
「凄いですね」
「当然よ、貴方達もオズの国で貴重な出来事に色々関わっているからね」
オズマは五人にどうして彼等の伝記があるのかお話しました。
「だからよ」
「それで、ですか」
「僕達の伝もあるんですか」
「それでオズの国の歴史に書かれているんですね」
「そうなんですね」
「それで残るんですね」
「そうよ、貴方達のことは編年体の本でも書かれているから」
そちらでもというのです。
「永遠に残るわよ」
「その名前が」
「そうなんですね」
「オズの国に」
「オズの国の歴史に」
「そうなんですね」
「そうなのよ」
こう言うのでした。
「そのことは覚えておいてね」
「もう忘れられません」
「そんな素晴らしいことは」
「ずっと覚えておきます」
「外の国にいる時も」
「そしてどんなことがあっても」
「ちなみに僕達は伝、列伝でね」
ボームさんはまた言いました。
「オズマ姫は紀だよ」
「あっ、オズマ姫はオズの国の国家元首で」
「君主だからですね」
「それで、ですね」
「紀ですね」
「そうなるんですね」
「君主でも国家元首で帝と言っていいからね」
だからだというのです。
「そうなるんだ」
「そしてオズの国では外の世界と事情が違ってね」
「かかし君は一時オズの国の主だったし僕はウィンキーの皇帝だけれどね」
「オズマ姫が正式な国家元首だからね」
「それで僕達は列伝なんだ」
かかしと樵がその辺りの事情をお話します。
「魔法使いさんもそうでね」
「グリンダさんもだよ」
「そしてドロシー達は紀になるんだ」
魔法使いも言いました。
「オズの国ではね」
「ドロシー嬢とベッツイ嬢、トロット嬢の三人はだよ」
ボームさんがその紀で書かれている人のお話をしました。
「オズの国では紀で書かれているんだ」
「そこは外の世界とは違いますね」
「外の世界の紀伝体とは」
「また違いますね」
「聞いていますと」
「そうなっているんですね」
「そこはオズの国独特でね」
それでというのです。
「そうなっているんだ」
「そこは違いますね」
「オズの国独特ですね」
「外の世界の紀伝体は紀は帝王だけですが」
「オズの国では王女がそうなるんですね」
「そこは違いますね」
「そう、オズマ姫とドロシー嬢達は王女でね」
そうしてというのです。
「国家元首と大切なお友達だからね」
「外の世界とオズの国は何かと違うけれど」
魔法使いもお話します。
「そこは違うね」
「そうだね」
「そしてオズの国の歴史編纂室は紀伝体が第一だね」
「そうなっているよ」
「そうだね」
「それは中国と同じですね」
神宝はお話を聞いて思いました。
「中国の歴史書も紀伝体が基本なんで」
「そうだったね、君の国はね」
「はい、史記と漢書からです」
「そうなっているね」
「それで史記ではです」
この本ではといいますと。
「項羽さんや劉邦さんが帝王で」
「紀で書かれているね」
「それで蕭何さんや張良さん、韓信さん達はです」
「列伝だね」
「そうなっています」
こうボームさんにお話します。
「そこは分けられています」
「今君が言った人達は皆オズの国にいるよ」
「今はですね」
「項羽さんはいつも武芸の鍛錬をしていてね」
そうしてというのです。
「劉邦さんはお酒ばかり飲んでるよ」
「この国では帝王じゃないので」
「それぞれの趣味を満喫しているよ」
「そうなんですね」
「劉邦さんは本当にお酒が好きなのよね」
ドロシーは笑ってお話しました。
「それでおられるとね」
「ええ、自然と人が集まるわね」
「それでいつも宴会をしているわね」
「そうね」
オズマはドロシーの劉邦さんのお話に頷きました。
「オズの国ではね」
「とても楽しそうにね」
「項羽さんの力はとても強くて」
ベッツイはこの人のお話をしました。
「関羽さん並に大きくて」
「関羽さんは項羽さんにはとても敵わないって言ってるわね」
トロットも言います。
「その強さには」
「そうよね」
「実際に項羽さんの力と体力は凄いね」
ボームさんも認めることでした。
「オズの国の中でも」
「流石に巨人程大きくなくても」
「巨人並よね」
「それで武芸もね」
「物凄いわね」
「外の世界では伝説的な強さだったそうだけれど」
項羽さんという人はというのです。
「それもね」
「頷けるわね」
「あの関羽さんより遥かにっていうのもね」
「そうだね、そしてその項羽さんはね」
この人はというのです。
「史記ではだよ」
「帝王だったから」
「紀なのね」
「史記の中でも項羽さんの紀は特に素晴らしいんだ」
「項羽本紀ですね」
神宝が応えました。
「本当に史記の中でもです」
「特に評判がいいね」
「はい」
その通りだというのです。
「あの部分は」
「そうだよね」
「文章といい」
「オズの国は英語だけれどね」
「英語でもですね」
「僕が読んでも素晴らしいと思うよ」
ボームさんは神宝に答えました。
「本当にね」
「そうなんですね」
「うん、だからね」
それでというのです。
「史記は読んで印象に残っているよ」
「そしてその中でもですね」
「項羽本紀はね」
「お好きですか」
「史記の中でも特に印象的だよ」
「それは何よりですね」
「全くだよ、それで史記はね」
あらためてこの本のお話をしました。
「外の世界の歴史のコーナーにだよ」
「置きますね」
「そうするよ」
「わかりました、では今から」
「僕が運んでおくよ」
臆病ライオンが言ってきました。
「そうするよ」
「ああ、そうしてくれるんだ」
「うん、運ぶのが今回の僕のお仕事だからね」
臆病ライオンはボームさんに笑顔で応えました。
「そうするよ」
「そうなんだね」
「うん、じゃあ背中に置いてある箱にね」
「置くね」
「そしてね」
「そうしてだね」
「コーナーまで運んで」
そのうえで、というのです。
「そうさせてもらうよ」
「ではお願いするね」
「僕も行くよ」
腹ペコタイガーも言ってきました。
「本を背中の箱に入れてね」
「そうして本を運んでくれるね」
「臆病ライオン君と一緒にね」
「それじゃあそうした本をね」
「今から置いていくね」
「そしてコーナーまで行ったら」
腹ペコタイガーはそれからのこともお話しました。
「臆病ライオン君とお互いにね」
「前足を使ってね」
「お互いの箱の背中から本を出して」
「それぞれの本棚に置いてくれるね」
「そうさせてもらうよ」
「ではお願いするね」
「任せてね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーも笑顔で応えました。
そうして背中にボームさんと自分達で本を置いて運んでいきます、彼等が行ってからまたお仕事ですが。
その中で、です。オズマは雑巾で本棚を拭いて笑顔になりました。
「埃を拭いたら」
「ええ、緑の奇麗な本棚が出て来てね」
「凄く奇麗ね」
「そうよね」
「やっぱりね」
一緒に拭き仕事をしているドロシーに言いました。
「お掃除をして」
「何でも奇麗になるわね」
「本棚だってね」
「見違える位にね」
「見ていてうっとりするわ」
「埃だらけだったものが奇麗になって」
「お掃除をしたらね」
「だからどんどんお掃除していきましょう」
トロットは箒を手に言います。
「そうしましょう」
「そうね、それと天井は」
こちらのお話はベッツイがしました、ベッツイもその手に箒があります。
「今はね」
「僕達がしているよ」
「こうしてね」
ジャックと魔法使いが天井を歩きながら言ってきました、二人共その手にはモップがあって天井を拭いています。
「奇麗にしているよ」
「現在進行形でね」
「それは何よりね、皆で手分けしてね」
オズマはその天井の様子も見て笑顔になりました。
「楽しくお掃除して整頓していって」
「うん、奇麗にしようね」
「そうしようね」
「いや、天井まで行けるなんていいよね」
トトは宙に浮かんで壁の高いところを拭いています、壁も拭きますと緑の奇麗な大理石のものが出てきます。
「魔法のお陰だね」
「そうね、羽根がなくても宙に舞えるなんて最高よ」
エリカはトトの隣で拭いています、そのうえでの言葉です。
「お掃除が余計に楽しくなるわ」
「全くだね」
「それでどんどんはかどるわね」
「気持ちよくお仕事が出来てね」
「気持ちよくお掃除出来たら」
ガラスの猫は本棚の一番上を拭きつつ言います。
「それだけで違うわね」
「あれだね、気持ちよくお仕事を出来たら」
ハンクは本を運んでいます、臆病ライオンや腹ペコタイガーと同じお仕事をしています。
「それだけでね」
「能率が上がるものだよ」
教授は奇麗になった本棚に次々に本を入れています。
「この様にね」
「そうだね」
「本当に駄目だとか遅れているとかね」
「そればかり言うとだね」
「いいお仕事なんてね」
それこそというのです。
「出来はしないよ」
「そうだよね」
「聞いてる方が嫌になってね」
「周りの気分を害するね」
「それに打ち勝ってやれとかね」
その嫌な気持ちにです。
「じゃあ自分がどうかとね」
「なるよね」
「そう、周りを楽しくさせる様にしないとね」
モジャボロは本を一冊一冊チェックしています、そして本を魔法のスプレーをかけて修復すべきものはそれをかけて修復しています。
「まずはね」
「プラス思考だよね」
モジャボロの弟さんはお兄さんと同じお仕事をしています。
「何事も」
「最悪の事態を想定してもだよ」
「それを防ぐことを考えてね」
「やっていくものだよ」
「そうだよね」
「読書が遅れているから一気に何十ページも飛ばす」
大尉はこう例えました、かかしや樵と一緒に天井のお掃除をしています。
「それじゃあ本末転倒だね」
「それは読む意味がないね」
「遅れてるとかじゃないよ」
そのかかしと樵も言います。
「読書じゃなくてね」
「本の最後のページまで行きたいだけだよ」
「それじゃあお仕事をしてもだよ」
「杜撰になるよ」
「そんな人はオズの国にいないけれど」
それでもと言う大尉でした。
「マイナス思考も過ぎるとこうなるね」
「そうした人にはなったら駄目ね」
つぎはぎ娘は天井に立ってくるくると踊りながらシャングリラを拭きつつこう言います。シャングリラは拭かれるととても奇麗な緑の水晶になっています。
「本当にね」
「そうだよね」
大尉はつぎはぎ娘に応えました。
「遅れてるんじゃなくてね」
「あんた何やってるのよね」
「そうなるね」
「もうお仕事の意味ないってね」
「しかもそのお仕事の進み具合が主観なら」
ビリーナはつぎはぎ娘と一緒にシャングリラを拭きつつ言います。
「どうにもならないわね」
「主観と客観は違う」
「そこもわからないとね」
かかしと樵も言います。
「自分勝手に目標を決めて周りを巻き込むとね」
「いい結果が出るとは思えないね」
「だから私は主観で決めないの」
オズマも言います。
「咄嗟の判断はしてもね」
「オズマ姫は皆とお話するね」
「ええ、大抵の場合はね」
本に本棚を入れているキャプテンに言いました。
「そうしているわ」
「そうだね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「ちゃんとなる様にね」
「しているね」
「そうしているわ、主観ばかりだとね」
「そんな風になりかねないね」
「しかもそれで言われて」
おかしいとです。
「聞く耳持たないとかだと」
「もうどうしようもないね」
「どんどん駄目になって」
そうしてというのです。
「どうしようもなくなるわ」
「そうなるのが落ちだね」
「本当にね」
「そうだね、ただオズマ姫はお仕事は楽しくしても」
キャプテンは本を本棚にせっせと入れつつこうも言いました。
「注意してお仕事をする様に言ってるね」
「ええ、気を抜くとね」
「とんでもないことになるしね」
「油断大敵だから」
こうも言うオズマでした。
「だからよ」
「オズの国は怪我もしないけれど」
木挽きの馬も背中に入れた箱で本を運びつつ言います。
「けれどね」
「そう、例えば本棚が倒れてね」
「その下敷きにもだね」
「なるから」
「それでだよね」
「気をつけることはね」
このことはというのです。
「いつも言っているでしょ」
「そうだね」
「さもないとね」
本当にというのです。
「危ないから」
「だからよね」
「注意しているのよ」
「楽しく注意もして」
「お仕事はするものよ」
「そうだね」
「その二つを忘れると」
そうしてしまうと、というのです。
「いいお仕事は出来ないわ」
「そうだよね」
「だからオズの国ではお仕事の前に準備体操もするんですね」
カルロスが言いました、五人の子供達は宙に浮かんで今は壁を拭いて奇麗にしています。壁もどんどん奇麗になっています。
「スポーツの時と同じで」
「そして身体をほぐして」
ナターシャも言います。
「スポーツの時みたいに気をつけるんですね」
「スポーツも油断すると大変なことになるし」
ジョージも言います。
「身体を動かしますから」
「お仕事も身体を動かしますし」
恵梨香は考えながら言いました。
「そこはスポーツと同じですね」
「だから準備体操もしてそこで身体をほぐして」
神宝も言います。
「そしてその時気を引き締めるんですね」
「そうなの、準備体操は大事なの」
オズマは五人にもお話しました。
「身体をほぐしてね」
「気も引き締める」
「そうしている間に」
「それで注意力も備えて」
「そのうえでお仕事をするんですね」
「スポーツをする時と同じく」
「そうよ、そしてお仕事をする間は」
その間はというのです。
「注意して気を散らさない様にして」
「大変なことにならない」
「そうならない様にしますね」
「オズの国は怪我はしませんが」
「それでもですね」
「そこは気を付けることですね」
「そうよ、だから私達もね」
この場にいる皆がというのです。
「今はね」
「はい、気をつける」
「注意力は失わない」
「気を引き締めてですね」
「そして楽しくですね」
「そうしてやっていくんですね」
「そうしていくの、どんなお仕事もね」
それこそというのです。
「気はちゃんと引き締めないとね」
「そうよね、気を抜いたり油断したら」
ドロシーも言います。
「そうした時こそね」
「大変なことになるわね」
「まさにその時にね」
「気を引き締めていたら対処出来てね」
「何でもなくなることでも」
「気を抜いていたら」
そうであったらというのです。
「大変なことになるわね」
「そんな時もあるわね」
「だからね」
それでというのです。
「本当によ」
「気を引き締めることね」
「注意はすることよ」
「そうしてお仕事をすることね」
「そして休憩の時にね」
「ほっとすることね」
「そうすることよ」
こうドロシーに言うのでした。
「その時にこそね」
「そうね、それで十時になったら」
「今日もよね」
「お茶が出て来るわ」
「今日のお茶はレモンティーです」
ジュリアがにこりと笑って言ってきました。
「その予定です」
「そちらなのね」
「はい、そして」
ジュリアはさらにお話しました。
「お茶菓子は十時なので軽くですが」
「お昼前だしね」
「ビスケットをです」
「少々ね」
「用意しますので」
「それを食べるのね」
「そしてそのビスケットですが」
ジュリアはそちらのお話をさらにしました。
「生クリームを挟んでいます」
「そうしたビスケットね」
「そうです」
「あのビスケット美味しいのよね」
ジュリアはそのビスケットについて笑顔で言いました。
「またね」
「そうですよね」
「生クリームとビスケットがね」
この組み合わせがというのです。
「いいのよね」
「そうですよね」
「外の世界にもありますけれど」
「それで売られていますけれど」
「それがまた美味しくて」
「お茶にも合いますよね」
神宝達五人も言いました、お掃除をしながら。
「普通のビスケットもいいですが」
「そうしたビスケットもいいですよね」
「甘くて生クリームと合って」
「また食感がいいですよね」
「最高のお菓子の一つですよね」
「ええ、だから私も大好きなの」
オズマは五人ににこりとして応えました。
「本当にね」
「そうなんですね」
「じゃあ十時になりましたら」
「その時にですね」
「一緒に食べるんですね」
「皆で」
「レモンティーを飲みながらね、レモンティーもね」
このお茶もというのです。
「いいわよね」
「ミルクティーもいいけれど」
トロットが応えました。
「レモンティーもね」
「またいいわね」
「私はどちらも好きよ」
「アメリカは紅茶はレモンティーでね」
ベッツイはオズの国に影響を与えるこの国の名前を出しました。
「私もよく飲んでいたわ」
「そして今もよね」
「よく飲んでいるわ」
「私もよ」
トロットがまた言ってきました。
「だからそちらも楽しみよ」
「そうよね」
「ではレモンティーとビスケットを楽しみにして」
ドロシーはにこにことして言いました。
「今はお仕事を頑張りましょう」
「ええ、皆でね」
「そうね、気を抜かないで」
「そうしてね」
そのうえでというのです。
「お仕事を楽しんでしていきましょう」
「十時までね」
「気を抜ける時はあるから」
必ずというのです。
「その時まではよ」
「注意しつつね」
「楽しみながらね」
「お仕事をすることね」
「そうよ」
まさにというのです。
「そうすることがね」
「いいことね」
「お仕事はね、私にしても」
オズマもというのです。
「十時のね」
「お茶の時まではよね」
「気を抜かないわ」
その様にしているというのです。
「絶対にね」
「そうよね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「十時はね」
「お茶とビスケットをね」
「楽しみましょう」
「それじゃあね」
「只今」
「本を置いてきたよ」
ここで臆病ライオンと腹ペコタイガーが戻ってきました。
「そうしてきたよ」
「ちゃんとね」
「お帰りなさい」
ドロシーは彼等に笑顔で応えました。
「そしてご苦労様」
「うん、それじゃあね」
「今度はこちらの本を運ぶよ」
「お願いするわね、それでね」
ドロシーは二匹にさらにお話しました。
「今度はこちらをお願いするわね」
「そうさせてもらうね」
「是非ね」
「ええ、それとね」
ドロシーはさらに言いました。
「十時になったらね」
「うん、お茶だね」
「そちらだね」
「レモンティーを飲んでね」
そうしてというのです。
「それでビスケットもね」
「それもだね」
「楽しむんだね」
「皆でね」
こう言うのでした。
「そうしましょう」
「そして一休みして」
「またお昼まで頑張るんだね」
「そうよ、それで十二時になったらね」
それからはといいますと。
「今度はよ」
「うん、お昼ご飯だね」
「それを食べるんだね」
「今日のお昼はスペアリブよ」
ジュリアがメニューを言ってきました、今はお茶の準備にかかっています。
「それとサンドイッチ、フルーツの盛り合わせに牛乳を」
「いいわね、私はサンドイッチも好きなのよね」
オズマはサンドイッチと聞いて嬉しそうに言いました。
「手軽でそれでいてね」
「美味しいわよね」
「色々なものが食べられてね」
「そうよね」
「お昼には最適よね」
「そうよね」
「それでスペアリブもね」
オズマはこちらのお話もしました。
「好きなのよ」
「手軽に食べられるから」
「手で持ってね」
そうしてというのです。
「食べられるからね」
「スペアリブはそうよね」
「それでフルーツね」
「林檎に梨、葡萄にオレンジ、グレープフルーツにネーブルに葡萄に苺よ」
「いいわね」
「そうしたものもね」
そうしたフルーツ達もというのです。
「食べましょう」
「ええ、お昼はね」
「手軽に美味しく」
「食べましょう」
二人でこうお話してでした。
オズマもドロシーもボームさんも他の皆もです。
お茶とお菓子、そして雰囲気を楽しんでまたお仕事をしてお昼もそうしました。楽しい整頓はそのうえで続くのでした。