『オズのホボ王子』




               第九幕 幕驢馬王子

 王子は黄色い煉瓦の道を進みながら一緒にいる皆にお話しました。
「今度はエブ王家の国にお邪魔するよ」
「ええと、エブ王家っていいますと」
 神宝はその名前を聞いて自分の記憶を辿りつつ言いました。
「ノーム王の魔法で囚われていた」
「あの王家だったわね」
 恵梨香も言います。
「そうだったわね」
「オズマ姫が皆と一緒にノーム王のところに行って救出したね」
 カルロスはこのことを言いました。
「そうだったね」
「あの時はビリーナが大活躍したわね」
 ナターシャは彼女の活躍を思い出しています。
「皆が魔法で色々なものに変えられた状態も打開して」
「あの時からだったね、ノーム王と色々あったのは」 
 ジョージはそれからのことを言いました。
「そのはじまりだったね」
「そう、そのエブ王家の人達もね」
 王子は五人にお話しました。
「僕のパーティーにね」
「招待するんですね」
「それで今から行くんですね」
「エブ王家の国に」
「それでお話をして」
「来てもらうんですね」
「そうだよ、それとね」
 王子はさらにお話しました。
「ラングイデイア姫も招待するよ」
「あの三十の首を持っている」
「あの人もですか」
「そういえばあの人エブ王家の親戚でしたね」
「あの人もですか」
「招待するんですか」
「ドロシー王女が最初に会った時はお世辞にもいい人じゃなかったけれどね」
 そのラングイデイア姫はというのです。
「今は違ってね」
「いい人だから」
「それで、ですか」
「あの人のところにも行って」
「それで招待するんですね」
「そうするんですね」
「うん、そうするよ」
 五人に笑顔でお話します。
「そうしようね」
「そういえばあの時にだったね」 
 モジャボロが言ってきました。
「チクタクもオズの国に入ったんだったね」
「そうだったね」
 王子はモジャボロにも答えました。
「僕もその時のことは聞いているけれど」
「砂の中にいてね」
「ドロシー王女が説明書読んでゼンマイを巻いてだよ」
「そこからだったね」
「彼がオズの国に入ったのは」
「ビリーナも来たし大きな出来事だったよ」 
 教授はしみじみとして言いました。
「今思えば」
「オズの国にとって」
「そうだったよ、ノーム王とも出会ったしね」
「その頃はロークワット氏といったね」
「それがラゲドー氏になってね」
「王様自体が変わって」 
 カリフ王にです。
「そしてだったね」
「ラゲドー氏は今はオズの国で快適に暮らしているよ」
「そのはじまりだったね」
「クルマーにも出会ったしね」
 弟さんはこのことをお話しました。
「そうだったね」
「ドロシー王女と彼等の最初の出会いだったね」
「あの時がね」
「そう思うと凄く大きな出来事だったわね」
 王女もしみじみとして言いました。
「今思うと」
「全くだよ、そしてね」
 王子は王女にもお話しました。
「僕達はね」
「今からよね」
「そう、彼等をね」
 エブ王家の人達それにラングイテイア姫をというのです。
「招待するよ」
「そうするのね」
「是非ね、まずは姫のお城に行くよ」 
 彼女の場所にというのです。
「そうするよ」
「そうするのね」
「今からね」
 こうお話してでした。
 王子は皆を連れてラングテイア姫のお城に向かいました、そのお城は左右対称の黄色い四階建てのフランス風の宮殿でした。
 その宮殿の前に立ってです、ジョージ達五人は首を傾げさせました。
「あれっ、こんなお城だったかな」
「ドロシーさんが入ったお城じゃないよね」
「こんな風じゃなかったと思うけれど」
「随分立派なお城でも」
「宮殿だけれど」
「あれから建て替えたんだ」
 王子が五人にお話します。
「それでなんだ」
「この黄色い宮殿ですか」
「ウィンキーにあるから黄色いんですね」
「それでこの宮殿は王様が住むみたいな感じですね」
「お姫様も王族ですし」
「だからこうしたお城ですか」
「そうなんだ、このお城にね」
 実際にというのです。
「姫がいるよ」
「三十のお顔を持つ」
「そのお姫様がですね」
「首から上を自由に換えられるんですね」
「そうでしたね」
「その人がおられるんですね」
「そうだよ、ではお邪魔しようね」
 こう言ってでした。
 王子がお城の正門の前に立っている黄色い詰襟とズボンの軍服の兵隊さんにお話すると程なくでした。
 皆はお城の中に入れてもらってです。 
 今度は黄色い乗馬服とズボンそれにブーツの御者の人に案内されてそうしてお城の姫の部屋に案内されました。そうして。
 黄色くきらきらと輝くドレスを着た赤くて腰まである長い髪の毛と青い目で楚々とした顔立ちの少女と会いました、この少女こそです。
「ラングイデイアよ」
「今日はそのお顔なんだ」
「ええ、最近一ヶ月単位で毎日換えているの」
 姫は王子に笑顔で答えました。
「三十あるから」
「それで一ヶ月でね」
「毎日ね」
「お顔を換えているんだね」
「そうしているの」
 こう王子に言うのでした。
「最近はね」
「そうなんだね」
「そう、そしてね」
 さらに言う姫でした。
「今日来てくれた理由は何かしら」
「うん、実はね」
 王子は姫にパーティーのことをお話しました、そのうえで姫に尋ねました。
「それでどうかな」
「それは有り難いわ、ではね」
「来てくれるんだね」
「そうさせてもらうわ」
 こう答えるのでした。
「是非ね」
「それではね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「旅とパーティーの間のお顔はどうするかがね」
 姫は王子に少し考えるお顔になって言いました。
「問題ね」
「それは簡単でしょ」
 王女が答えました。
「もうお顔は全部ね」
「持って行けばいいのね」
「そうすればいいんじゃないかしら」
「そうね」
 姫は王女のその言葉に頷きました。
「言われてみれば」
「じゃあそうするわね」
「リンキティンク王の国までは馬車で行くつもりだけれど」
「その馬車に載せるのね」
「馬車をもう一台用意してね」
 そうしてというのです。
「一台は私が乗ってね」
「もう一台には頭を載せるのね」
「三十のね、そうするわ」
「ではそのうえでね」
「リンキティンク王の国にお邪魔して」
 そうしてというのです。
「そしてね」
「パーティーに参加するわね」
「そうするわ」
 こう王女に答えました。
「貴女の言う通りにしてね」
「持っていけるのならね」 
 王女も笑顔になっています、そのうえで姫にお話します。
「持って行けるだけよ」
「持って行けばいいわね」
「そうした時があるなら」
 それならというのです。
「そうすればいいわ」
「そういうことね」
「ええ、ではね」
「また会いましょう」
「リンキティンク王の国でね」
 姫は約束しました、こうしてです。
 皆は姫からおもてなしとして昼食をご馳走になりました、薔薇や百合、菖蒲や菫それに水路で彩られたお庭の中の円卓に座って皆でお昼ご飯を食べますが。
 チコリやカモミール、クミンを沢山使ったサラダにキャベツやレタス、玉葱に茄子が入っているシチューにです。
 林檎やバナナ、葡萄に桃にオレンジといった果物が沢山あるデザートそれにパンと様々な種類のジャム、ヨーグルトに牛乳を見てでした。
 王子は唸ってです、姫に尋ねました。
「お野菜や果物がね」
「多いでしょ」
「うん、凄いね」
「それに牛乳もね」
 姫は王子に答えました。
「あるわ」
「チーズもだね」
「今日のお昼はあえてね」 
 こう言うのでした。
「ベジタリアンにしたの」
「サラダにシチューに」
「デザートはフルーツでね」
「そうしたんだね」
「メインディッシュはカボチャのステーキよ」
 そちらだというのです。
「是非召し上がったね」
「そちらも美味しそうだね」
「最近こうしたメニューが好きなの」
「ベジタリアンのだね」
「ええ、ただお肉やお魚もね」
 こうしたものもというのです。
「食べているわ」
「バランスよくだね」
「そうよ、何でも食べないとね」
 そうしないと、というのです。
「かえってよくないから」
「だからチーズもあるんだね」
「ヨーグルトもね」
 乳製品もというのです。
「それで牛乳自体もね」
「そういうことだね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「貴方達がお肉やお魚を食べたいなら」
 そう思うと、というのです。
「そうしたメニューもね」
「出してくれるんだ」
「そうさせえてもらうわ」
「そうなんだね」
「それで皆はどうかしら」 
 姫は皆に尋ねました。
「それで」
「いや、このメニューも美味しそうだし」
「構わないよ」
「このままでね」 
 モジャボロも教授も弟さんも言います、そしてです。
 王女もジョージ達も頷きます、皆反対するどころか賛成です。王女も皆のその返事を見てそれならと頷いて。 
 飲んで食べはじめます、するととても美味しくて。
 王女はシチューを食べて笑顔で言いました。
「お野菜だけでもね」
「美味しいでしょ」
「これはこれでね」
「サラダもいいでしょ」 
 姫はこちらのお話をしました。
「そうでしょ」
「チコリやクミン、カモミールが入っていてね」
「レタスやセロリもいいわね」
「新鮮でね」
 それでというのです。
「トマトも入っていて」
「それでドレッシングはね」
 姫はこちらのお話をしました。
「フレンチでね」
「これをたっぷりとかけて」
「そしてよ」
 そのうえでというのです。
「食べたらね」
「美味しいのね」
「凄くね、お野菜や果物を沢山食べて」 
 そうしてというのです。
「牛乳を飲んだらね」
「美味しいわね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「気持ちが落ち着くわ」
「野菜や果物を沢山食べて牛乳もよく飲むとね」
「そうなるでしょ」
「そうね」
「そうした気持ちにもなれるから」
 だからだというのです。
「私はね」
「最近こうしたメニューを楽しんでいるんだね」
「そうなの」
 王子にも答えます。
「お昼はね、こうしてお庭でね」
「飲んで食べてだね」
「楽しんでいるのよ」
「いいものだね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「お豆腐もね」
 この食べものもというのです。
「よく食べているわ」
「お豆腐いいですね」
 ジョージは自分達の前に出て来たカボチャのステーキを食べています、そのうえで姫に応えました。
「美味しいですよね」
「癖がないのよね」
「それで幾らでも食べられますね」
「だからね」
 それでというのです。
「最近よく食べるの」
「そうなんですね」
「ステーキにしてもいいし」 
 お豆腐をというのです。
「和食でも中華料理でもね」
「美味しいですよね」
「サラダにしても」
「いいですね」
「だからよく食べるわ。以前はお顔を換えるだけが楽しみだったけれど」
 三十あるそれをです。
「最近はお食事にガーデニングにね」
「そうしたこともですか」
「楽しみになっているわ」
「趣味が増えましたか」
「そうなったわ、だから毎日楽しいわ」
「そうなっているんですね」
「そしてパーティーも」
 こちらもというのです。
「好きよ」
「そうですか、それじゃあ」
「ええ、パーティーもね」
「一緒にですね」
「楽しみましょう、それとね」
 姫は牛乳を飲みました、そしてです。
 そのうえで、です。こうも言いました。
「言い忘れていたけれどお酒もね」
「楽しまれていますか」
「そうなのよ」
「そちらもですか」
「ワインとかね」
「お酒もお好きですか」
「もう楽しいことが増え過ぎて」
 今はというのです。
「退屈なんて忘れてしまったわ」
「それは何よりだね、オズの国で何が一番怖いか」
 王子はチーズを食べながら言いました。
「多くの人が言うけれど」
「退屈ね」
「オズの国にはないけれど」
 それでもというのです。
「ないだけにね」
「尚更怖いわね」
「そして若し経験するとなると」 
 退屈、それをというのです。
「どれだけ怖いか」
「想像も出来ないわね」
「僕も退屈はね」
 これはというのです。
「経験したことはないよ」
「そうよね」
「色々なことをして何もしない時は」
「寝てるわね」
「そうしているからね」
「遊ぶこと、やりたいことはいつも一杯あるわ」
 オズの国ではとです、姫は言いました。
「そしてそうしたことをしていないと」
「それならだね」
「私も寝ているわ」
「そうだね」
「だから私も退屈はね」
「知らないね」
「だからこそ余計にね」
 知らないこそというのです。
「私も退屈はね」
「怖いね」
「ええ」 
 その通りだとです、王子に答えました。
「本当にね」
「僕もだよ」
「退屈がどれだけ怖いか」
「想像も出来ないね」
「じゃあ若しも」
 ここで、です。王女は言いました。
「私達は退屈を経験したらどうなるかしら」
「すぐに退屈から逃れようとするだろうね」
「何かをして」
「楽しいことをね」
「そうするのね」
「退屈から逃れたいなら何かをすることだよ」
 そうすべきだというのです。
「やっぱりね、リンキティンク王なんかね」
「あの人はまた凄いわね」
 姫から見てもです。
「いつも歌ってはしゃいでね」
「遊んでいるね」
「騒がしい位にね」
 パンに苺のシャムをたっぷりと塗りつつ言います、見ればそのジャムもウィンキー産で黄色いものです。
「何かしているわね」
「それでだよ」
「退屈なんてよね」
「もう退屈の方から逃げていく位にね」
 そこまでというのです。
「何かをしているね」
「そうね」
「自然とすることを見付けて」 
「そうしてよね」
「楽しんでいるからね」 
 だからだというのです。
「あの人はね」
「退屈をしないどころか」
「退屈の方から逃げ出す位にだよ」
 そこまでというのです。
「楽しんでいるよ」
「それはとてもいいことね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「もうあそこまでいくと天才だね」 
 王子はサラダを食べながら笑って言いました。
「あの人は」
「楽しいことをする天才ね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そこまでのね」
「天才となると」
「そうはね、まして自然だから」
 リンキティンク王はというのです。
「尚更だよ」
「真似出来ないわね」
「いつもそう思っているよ」
「王子にしても」
「そうなんだ」
 こうお話しました。
「だから正直に凄いと思ってるよ」
「凄いですね、確かに」
「あの人は」
「いつも楽しく過ごされて」
「退屈なんか無縁ですからね」
「あんな朗らかな人はいないですよ」
「あの朗らかさときたら」
 王子はジョージ達五人にも笑って言いました。
「オズの国でもそうはいないよ」
「そこまでですよね」
「あの人についても」
「オズの国も色々な人がいますけれど」
「その中でも本当に」
「あの人は特別ですね」
「うん、パーティーではあの人にも会えるから」
 そのリンキティンク王にもといのです。
「楽しみにしていてね」
「そうさせてもらうわ」
 ランクイデイア姫も笑顔で応えました。
「その琴もことも楽しみにしてね」
「そうしてだね」
「お邪魔させてもらうわ」
「それではね」
 笑顔でお話をしてでした。
 姫もパーティーに参加することになりました、そうしてです。
 その後は姫のお顔のお話になりました、姫はお食事の後でこんなことを言いました。
「実は私三十のお顔があると言われているけれど」
「もっとあるとか?」
「実はそうなの」
 こう王女に答えました。
「今は何百と持ってるの」
「そうなのね」
「そのうち主なのが三十で」
「それを日帰りでなのね」
「付けているの」
「そうなのね」
「実はね」 
 本当にというのです。
「何百あって」
「じゃあ三十をそれぞれの日のメインにして」
「そしてね」 
 それでというのです。
「その日の気分次第でね」
「お顔を換えてるの」
「そうしてるの」
「そうなのね」
「今日はまだ換えていないけれどね」
「そうしてなのね」
「換えてるのよ、それでね」
 姫はさらにお話しました。
「アジア系やアフリカ系のお顔も持ってるわ」
「そうなの」
「それでお顔を換えたら」
 そうしたらというのです。
「お肌の色も変わるの」
「そうなの」
「アジア系のお肌にもなって」
「アフリカ系のお肌にもなるの」
「そうなの、お肌も色々ね」 
 お顔だけでなくというのです。
「それもまたね」
「それは面白いわね」
「ええ、ただお顔やお肌がどうであっても」
 それがどう変わってもというのです。
「私は私よ」
「そういうことね」
「ええ、そうよ」
 笑顔でこうお話してでした。
 皆は王女と楽しくお話してでした。
 そのうえで皆で次の場所に行くことにしました、そしてです。
 今度はエブ王家の国の人達のところに行くことにしました、一日歩くとエブ王国に着きました。その国は黄色い城壁に囲まれた街で。
 その中に入るとです、奇麗な宮殿に案内されて。
 王家の人達のところに案内されました、すると。
 奇麗なドレスと冠が似合う女王様にです、王家の人達が一行を出迎えてくれました。そうしてパーティーを開いてもらってその場で王子は自分のパーティーのことをお話すると女王が明るく笑って言いました。
「それでは」
「来てくれますか」
「ええ」
 王子ににこりと笑って答えました。
「そうさせてもらうわ」
「それでは」
「私達も皆でね」 
 王家の人達皆でというのです。
「行かせてもらうわ」
「ではお待ちしています」
「ええ、それとね」
「それと?」
「私達のパーティーだけれど」 
 今一行を歓迎しているそれはというのです。
「どうかしら」
「素晴らしいですね、食べものも音楽も」
 王子は女王に答えました。
「凄くよくて」
「それは何よりね」
「では僕も」
「パーティーで」
「おもてなしさせてもらいます」
「それではね」
「お待ちしています」
「それではね、今日のパーティーは」
 女王はここで、です。
 テーブルの上のお寿司色々な種類の握り寿司を見つつ言いました。
「日本のものにしたのよ」
「だからお寿司ですね」
「そちらを出させてもらったの」
「それにお蕎麦だね」
 モジャボロはざるそばを食べつつ笑顔で応えました。
「これも美味しいよ」
「うん、ざるそばも最高だよ」 
 弟さんもそのざるそばを食べつつ言います。
「お寿司もいいけれど」
「味もよくてコシもだね」
 弟さんもざるそばについてお話します。
「いいからね」
「何かね」
 王女はトロの握り寿司を食べつつ言いました。
「ざるそばって噛まずに喉ごしを味わうっていうけれど」
「それは外の世界の東京の食べ方ですね」
 日本人の恵梨香はこのことをよく知っています、それで言うのです。とはいっても今食べているのは納豆巻きです。
「私は神戸にいるんでそうして食べないです」
「おつゆの関係でよね」
 ナターシャは鰯の握りを食べつつ言いました。
「そうなのよね」
「東京のそばつゆって辛いっていうね」
 神宝は鮭の握りを食べながら応えます。
「だからそうして食べるんだね」
「けれど関西、神戸のおつゆは辛くないから」
 カルロスははまちの握りを食べています。
「噛むんだね」
「オズの国のそばつゆは辛くないから」
 ジョージは鰻を食べながら言いました。
「噛んで食べてるね」
「そうね、ただオズの国も広いから」
 王女はそのお蕎麦を食べながらお話します。
「辛いおつゆもね」
「あるんですね」
「地域によっては」
「そうなんですね」
「そこは違うんですね」
「その地域によって」
「ええ、同じ食べものでも味が違うわ」
 そうなるとです、王女は五人にお話しました。
「オズの国でもね」
「オズの国でもそうしたことあるんですね」
「同じものでも地域によって味が違う」
「そうしたことがあるんですね」
「やっぱり広いですからね」
「そうしたことがありますね」
「そうよ、それぞれの土地柄があるから」
 だからだというのです。
「そうしたことがあるわ」
「そうですか」
「じゃあそのことも頭に入れておきます」
「オズの国もそうだって」
「そうしておきます」
「これからは」
「林檎だってね」
 王女のお国の名産で王女の大好物でもあるこの果物もというのです。
「やっぱりね」
「味が違いますか」
「作る場所によって」
「オズの国でもそうですか」
「全部同じ林檎じゃないんですね」
「土地柄があって」
「そうよ」
 こう答えました。
「林檎にしても他の食べものもね」
「それでお蕎麦もですね」
「おつゆも場所で味が違うんですね」
「それで食べ方も変わって」
「噛まずに食べる場合もあるんですね」
「喉ごしを味わうことにして」
「確かにおつゆが辛いと噛んでじっくり味わうよりも」 
 王子も言いました。
「噛まずにね」
「喉ごしを味わいますね」
「その方が美味しく食べられますね」
「喉ごしを味わうのも食べ方ですし」
「その方がいいですね」
「だからですね」
「そう言うことだね、僕もわかったよ」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「うん、まあ僕も今は噛んでるけれどね」
 王子は笑ってこうも言いました。
「お蕎麦もね」
「そうですよね」
「そう食べても美味しいですから」
「このお蕎麦おつゆ辛くないですからね」
「普通の辛さですから」
「そうも出来ますね」
「それでは食べていこうね」
 お蕎麦をです、こうお話してでした。
 皆でお寿司やお蕎麦を食べていきます、そうしてその後でまた旅に出ます、すると今度は目の前に川がありますが。
 橋がかけられています、見ればその橋は。
「お水で出来てるわね」
「そうだね」
 王子は王女の言葉に頷きました。
「この橋は」
「水で出来た橋っていうのもね」
「面白いね」
「オズの国なら」
 それならというのです。
「こうした橋もね」
「普通にあるね」
「そうね、ただ」
 こうもです、王女は言いました。
「この橋は渡れるかしら」
「そう思うね」
「お水で出来た橋だから」
 見れば透明できらきら輝いています、お水の流れがそのまま止まって橋の形になって川に架けられています。
 その橋を見てです、王女は言うのでした。
「渡れるかしら」
「そうも思うね」
「そうね、けれど」
「オズの国にあるのなら」
「渡れるよ」
「その通りね、じゃあ渡りましょう」
「そうしよう」
 こうお話しました。
 そうして一緒に橋に足を踏み入れました、そうして。
 橋の上を渡ってもでした。
「渡れるわね」
「鉄の橋に負けない頑丈さだね」
「そうね」
 王女は王子に応えました。
「この硬さは」
「そう、鉄に負けない位のね」
「お水も水圧ってあって」
「水圧はかなりのものね」
「それでその水圧がね」
「橋を頑丈な者にさせているのね」
「そういうことだね、ではね」
 王子は王女に橋を渡りつつ言いました。
「この橋を渡っていこう」
「鉄の橋に負けない位頑丈な橋をね」
「こうした橋があるのもオズの国ですね」
 ジョージはしみじみとして言いました。
「外の世界にはない魔法を使ったものがあることが」
「そうだね、オズの国なら」
 王子はジョージにも応えました。
「こうした橋もあるね」
「そうですね」
「ではね」
「この橋を渡って」
「そしてね」
 それでというのです。
「先に行こうね」
「それじゃあ」
「しかし下がよく見えるよ」
 ここでこうも言った王子でした。
「川がね」
「お水ですから透けているので」
「まるでガラスだよ」
「そういえばガラスみたいですね」
「この橋はね」
「そうですよね」
「ガラスの橋もあるけれどね」
 オズの国にはです。
「こうしたね」
「お水の橋もですね」
「あるんだ」
「それはお伽の国だからですね」
「そう、じゃあ今はね」
「普通の橋では見られないものをですね」
「見てね」
 そうしてというのです。
「先に進もうね」
「わかりました」
「そうしよう、あとね」 
 王子はさらに言いました。
「オズの国には氷の橋もあるしね」
「その橋もあるんですか」
「それにエメラルドの橋もね」
「あっ、エメラルドの都にですね」
「あるよ」
「そうなんですね」
「中には物凄く奇麗なお城を築いている王様もおられるから」
 こうした人もおられるというのです。
「オズの国にはね」
「あの、その人ってまさか」
「ルートヴィヒ二世っていう人ですから?」
「ドイツにおられた王様で」
「物凄く奇麗なものと音楽が好きで」
「争うことが嫌いな人でしたね」
「そうなんだ、背が高くて物凄く美形で」
 そうしてとです、王子も答えます。
「穏やかで気品のある人でね」
「その人ならそうですね」
「僕達もその人のことは聞いています」
「とてもお顔が整っていて」
「奇麗なお城が好きで」
「ワーグナーという人の音楽が好きでしたね」
「そして舞台も好きでね」 
 そちらもというのです。
「よく観劇されているよ」
「そうなんですね」
「あの人もオズの国におられるんですね」
「そしてお城を築かれて」
「音楽と観劇を楽しまれて」
「そうして過ごされているんですね」
「お顔はとても男性的な整った顔立ちなんだけどね」 
 モジャボロもこの王様のお話をします。
「とても繊細で女性的な人だよ」
「繊細なんですね」
「そうした人なんですね」
「物凄く男性的な奇麗さですけれど」
「お心はそうですか」
「女性的なんですか」
「そうなんだ、そのこともね」 
 その繊細で女性的なお心もとです、モジャボロは皆と一緒に橋を渡りながらそのうえでお話するのでした。
「注目されているよ」
「そうなんですね」
「じゃあその人ともお会いしたいですね」
「オズの国におられるなら」
「そしてそのお城も観たいですね」
「そうしたいですね」
「是非そうし給え」
 教授も五人に笑顔で言いました。
「あの王様はとても素晴らしい人だからね」
「そうなんですね」
「そんなに素晴らしい人なんですね」
「じゃあ一度お会いしたいです」
「本やテレビでどういった人か聴いてますけれど」
「その人ご自身にも興味がありますので」
「あのお城は芸術的にも素晴らしいからね」
 その為にというのです。
「君達も観るべきだよ、しかも幾つもあるしね」
「幾つも?」
「幾つもあるんですか」
「あの王様のお城は」
「それは知らなかったです」
「奇麗なお城を築かれたと聞いただけで」
「とてもロマンチックな人でね」
 それでというのです。
「オズマ姫の許しを得て幾つも造っているよ」
「そうなんですね」
「それは知らなかったです」
「一つだと思っていました」
「それが幾つもですか」
「幾つも築かれているんですね」
「そしてどのお城も行くことが出来るんだ」
 弟さんも言ってきました。
「だからね」
「それで、ですね」
「僕達も行くといいですね」
「機会があれば」
「そうしていいんですね」
「その奇麗なお城達に」
「そうだよ、とても奇麗だけれど」
 それだけではないとです、弟さんは言うのでした。
「けれど戦い向けじゃないんだよ」
「そうなんですか」
「お城って戦いに対してですが」
「外の世界ではそうですが」
「あの王様のお城は違うんですね」
「戦いは考えておられないんですね」
「お城というより宮殿で」
 そうしたものでというのです。
「芸術や科学があるんだ」
「そして魔法もですよね」
「オズの国ですから」
「魔法もありますよね」
「そちらの技術もですよね」
「オズの国だからそうですね」
「そうだよ、魔法使いさんやグリンダさんが協力してね」
 そうしてというのです。
「築いてくれたんだ」
「この橋も魔法の技術なのよね」
 王女は橋を見つつ言いました、その水の橋を。
「そうよね」
「そうだよ、オズマ姫がね」
「架けた橋ね」
「そうなんだ」 
 王子が答えました。
「この橋は、そしてあの王様のお城も」
「同じね」
「そうだよ、科学にね」
「魔法の技術も入っていて」
「芸術と」 
 それと共にというのです。
「科学と魔法もね」
「入っているのね」
「あの王様は科学も好きで」
 それでというのです。
「科学の技術でお空を飛べないかと考えていて」
「気球とか飛行機とか」
「鉄道も好んでいてね」
「そうだったの」
「途中からお城から出ないで夜に活動する様になったけれど」
 それでもというのです。
「そちらも好きで火薬は花火にね」
「使っていたの」
「そうした人だったんだ」
「そうだったのね」
「戦争は嫌いで」
 そしてというのです。
「平和と芸術が好きで」
「科学もなのね」
「そうしたことに使うことが好きだったんだ」
「オズの国に相応しい人ね」
「そうだね、繊細でロマンチックでね」
 そうしてというのです。
「それでね」
「今はなのね」
「オズの国におられて」
「お城を築いて」
「その中で住んでいるよ、そして観劇とお食事をね」
「楽しまれているのね」
「音楽とね」
 そうしたものをというのです。
「楽しんでいるよ」
「素敵な人みたいね」
「かなりね」
「やっぱりそうなのね」
「ただね」
「ただ?」
「この王様は女性的で」
 そうした人でというのです。
「どうも女性はね」
「お嫌いかしら」
「紳士的だけれど」
 それでもというのです。
「恋愛の相手にはね」
「見ていないの」
「だから独身なんだ」
 そうだというのです。
「あの人は」
「そうなのね」
「王様は大抵お后様がおられるけれど」
「あの人はおられないのね」
「そうなんだ」
「そうした人なのね」
「むしろ男性が好きだよ」
 その王様はというのです。
「だからね」
「わかったわ、それで女の人とはなのね」
「恋愛はないよ」
「そうした方ね」
「とても男性的な奇麗さのあるお顔でも」
 それを持っていてもというのです。
「お心はね」
「女性的なのね」
「とてもね、そんな人もね」
「オズの国にはおられるのね」
「そのことも覚えておこうね」
「わかったわ」
 王女は確かな声で頷きました。
「そしてその人とお会い出来たら」
「その人もお城もね」
「見ることね」
「とても素敵な人だからね」
 こう王女にお話するのでした、そうしてです。
 皆は水の橋を渡りました、そのうえで先に進むのでした。








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