『オズのホボ王子』
第八幕 山の中にも行って
一行は山の中に入りました。山はどれも岩山で険しく高い山々が連なっています。その山の中に入ってです。
ジョージ達五人ははっとなりました、そのうえで彼等でお話をしました。
「ここはドロシーさん達も来てるね」
「そうそう、魔法使いさんと一緒にね」
「馬車で来てるよ」
「羽根を付けてお空を飛んで」
「馬車で通ったわね」
「その場所だよ」
その通りだとです、王子は五人に答えました。
「まさにね」
「そうですよね」
「その場所ですよね」
「あの時ドロシーさん達大変でしたね」
「危ないところでした」
「あの時の旅自体が危ないものでしたが」
「うん、それで僕が招待するのは」
その人達はといいますと。
「わかるね」
「そのガーゴイルの人達ですか」
「ドロシーさん達を襲った」
「あの怖い人達ですか」
「あの人達をパーティーに呼ぶんですか」
「そうされるんですか」
「そうするよ、もう彼等も大人しいからね」
そうなったからだというのです。
「招待しても大丈夫だよ」
「オズの国は誰もが穏やかになったよ」
笑顔で、です。モジャボロが言ってきました。
「本当にね」
「そうだね」
「うん、昔は狂暴な人や意地悪な人もいたよ」
「それが皆穏やかで優しい人達になったね」
「王子にしてもだしね」
「そう、僕も悪態ばかりついていたのが」
王子はモジャボロににこやかに笑って答えました。
「それがだよ」
「今ではね」
「この通りだし」
「皆変わったね」
「いい方向にね」
「だから彼等もだね」
モジャボロの弟さんも笑顔で言います。
「招待出来るね」
「それも楽しくね」
「そういうことだね」
「では今からね」
「皆を呼ぶんだね」
「そうするよ」
こう言ってでした。
皆で山の中を進んでいきます、するとです。
やがて全身が木で出来ていて翼を持っている木人形に見える身体の一団が飛んできました。全体的に丸い感じの身体です。
その彼等を見てです、ジョージ達はまた言いました。
「ガーゴイルだね」
「うん、オズの国のね」
「やっぱり出て来たね」
「絶対に出て来ると思っていたけれど」
「出て来たね」
「オズの国ではガーゴイルは二種類いるんだ」
ムシノスケ教授が五人にお話しました。
「木のものと石のものがね」
「そうなんですね」
「ガーゴイルって元々石象ですし」
「石のガーゴイルもいるんですね」
「木のガーゴイルだけでなく」
「そちらのガーゴイルも」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「彼等とも会う機会があればね」
「お話すればいいですね」
「石のガーゴイル達とも」
「その機会があれば」
「そうすればいいですね」
「その時は」
「うん、その時を楽しみに待っていようね」
笑顔でこうお話してでした。
教授も皆もガーゴイル達が自分達のところに来るのを待ちました。彼等は一行の正面に舞い降りてきました。そのうえで尋ねてきました。
「あんた達どうしたんだい?」
「ここに何か用かい?」
「旅なら適当に歩いていってくれよ」
「わし等も止めないよ」
「わし等の家に入りたいなら案内するよ」
「ホテルを使いたくてもね」
「実は君達を招待したいんだ」
王子はガーゴイル達に笑顔で自分が主催するパーティーのことをお話しました、そのうえで彼等に尋ねました。
「どうかな」
「へえ、わし等をなんだ」
「そうしてくれるんだ」
「それは有り難いね」
「というか悪い気さえするね」
「呼んでもらうなんて」
「いや、僕が招待したくてだから」
それでとです、王子はガーゴイル達に答えました。
「遠慮はいらないよ」
「そうなんだ」
「そのまま参加していいんだ」
「そうなんだね」
「そう、そしてね」
それでというのです。
「一緒に楽しもう」
「それじゃあね」
「わし等は何も食べないがね」
「参加させてもらうよ」
「そうさせてもらうよ」
「ではね、食べることがなくても楽しめるからね」
そのパーティーはというのです。
「是非来てね」
「そうさせてもらうよ」
「王子がそうまで言うなら」
「それならね」
「そうさせてもらうよ」
「それではね」
ガーゴイル達も頷いてでした、こうしてです。
彼等の参加も決まりました、その後は皆は岩山の間にある道を進んでいきました。そこには高山いいる色々な生きもの達がいました。
オオツノヒツジにウンピョウ、ユキヒョウにナキウサギそして鳥達がいます。アン王女はその中でカモシカを見て言いました。
「ここも色々な生きものがいるわね」
「そうですね」
神宝も頷きます、その生きもの達を見ながら。
「ここも」
「岩山にも沢山の生きものがいますね」
恵梨香も彼等を見ています。
「何もない様で」
「それぞれの場所に自然があるんですね」
カルロスの言葉はしみじみとしたものです。
「岩山にも」
「森にも草原にも海にも自然があって」
ナターシャも言います。
「岩山にもですね」
「そしてそれぞれの場所に生きもの達がいる」
こう言ったのはジョージでした。
「オズの国もそうですね」
「ええ、オズの国の自然は豊かでね」
王女は五人に笑顔で応えました。
「それでこうしてね」
「岩山にも自然があって」
「そうしてですね」
「色々な生きもの達がいて」
「それで暮らしているんですね」
「その中で」
「他にもジャングルもサバンナもあるし」
そうした場所もというのです。
「アマゾンもあるのよ」
「本当に色々な場所がありますね、オズの国は」
ジョージもそのお話を聞いて言いました。
「アマゾンまであるなんて」
「アマゾンはジャングルだけれどね」
「他のジャングルとはまた違いますね」
「独特よね」
「大きな川を密林が覆っていて」
「その中に色々な生きものがいるわね」
王女もジョージにお話します、岩山と岩山の間の道を進みながら。
「そうね」
「はい、アマゾンは」
「ジャガーもアナコンダもいて」
「お魚も多いですね」
「イルカまでいるわね」
「そのアマゾンもですね」
「オズの国にはあるのよ」
そうだというのです。
「本当に何でもある国よ」
「色々な人達がいて」
「そうよ」
「場所もですね」
「オズの国はね」
本当にというのです。
「自然も物凄く豊かなのよ」
「それで生きものもですね」
「色々な生きものがいるのよ」
「そうですか」
「そして今はね」
「岩山の自然もですね」
「見てね」
そうしてというのです。
「楽しんでそうしてね」
「岩山の中を進んでいきますね」
「そうしていいきましょう」
こうお話してでした。
皆で岩山と岩山の間にある道を進んでそこにいる生きもの達を見ていきました。そのうえで、でした。
王子はしみじみとした口調でこうも言いました。
「リンキティンク王の国とはね」
「また違った自然だからなのね」
「それを見ていくこともね」
王女にお話しました。
「楽しいね」
「そうよね」
「それも旅の楽しみだよ」
「その一つよね」
「そうだよ、海でもね」
「色々な生きもの達がいるわね」
「リンキティンク王の国は海に面しているから」
それでというのです。
「そちらの自然は僕もよく知っているよ」
「それでそちらはよく見られても」
「後は草原や森の自然は豊かだけれど」
「岩山は知らないのね」
「他の場所もね、だからね」
「今は見て楽しんでいるのね」
「そうなんだ、いいね」
笑顔で、です。オズ時は周りを見て言いました。
「旅は」
「色々な自然を見ることが出来て」
「色々な生きものもね」
「そういうことね」
「さて、ではこの中で」
王子はさらに言いました。
「晩ご飯を食べようか」
「今日は岩山の中を進んでいて」
「今日中には出られないからね」
だからだというのです。
「それでね」
「ここで休むのね」
「そうなるよ、ただ」
王子はふと思い出したことがありました、それでその思い出したことを王女に対して言うのでした。
「ここもホテルがあったよ」
「さっき言ってたわね」
「ガーゴイルの人達がね」
「そうだったわね」
「それじゃあね」
それならというのです。
「今夜はそちらに泊めてもらおうかな」
「そうしてもらうのね」
「そうしようか」
こう言うとでした。
一行のところにガーゴイルの一人が来て尋ねてきました。
「ホテルに泊まりたいのかい?」
「聞いていたんだ」
「わし等は耳がいいからね、たまたま近くを飛んでいたんだが」
「そういえば何かパトロールみたいに飛んでいるわね」
王女はお空を見上げました、するとです。
お空をガーゴイル達が飛んでいます、それを見上げて言いました。
「何か」
「実際にだよ」
「貴方達はパトロールをしているの」
「そうなんだ」
実際にそうしているというのです。
「わし等はね」
「そうなのね」
「お昼も夜もね」
いつもというのです。
「そうしているんだ」
「それで私達のお話も聞いたの」
「そうだよ、この岩山で何かあれば」
その時はというのです。
「すぐに対応が取れるよ」
「それじゃあ私達も」
「うん、ホテルに泊まりたいんだね」
「そうしようかってお話していたけれど」
「泊まりたいなら案内するよ」
「そうしてくれるの」
「それでどうするのかな」
ガーゴイルは一行に尋ねました。
「泊まるのかな」
「そうさせてくれるかな」
王子が一行を代表して答えました。
「今夜は」
「そうするんだね」
「うん、皆もそれでいいかな」
王子は皆にお顔を向けて彼等に問いました。
「それで」
「そうしよう」
「そうしましょう」
皆は賛成とのことでした、こうしてです。
皆はホテルに泊まることになりました、ですが王子はガーゴイルに対してどうかというお顔になって聞くことがありました。
「それで場所は何処かな」
「うん、幸いすぐそこだよ」
「すぐそこなんだ」
「岩山の一つを全部ホテルにしているんだ」
ガーゴイルは王子に笑顔で答えました。
「そうしているんだ」
「そうなんだ」
「うん、そこに案内しるね」
「それじゃあ宜しく頼むよ」
王子はガーゴイルに笑顔で応えてでした。
そうして実際に一行が今いる場所のすぐ傍の岩山に案内してもらいました。麓に入口がありまして。
その中に入ると最高級のホテルの様な奇麗なロビーがあってガーゴイル達が働いていました。床はビロードの絨毯で覆われていて。
床は奇麗に整えられて天井も同じです、全てヒカリゴケで明るく彩られていて。
お部屋の中は天幕付きのベッドに広い大理石のお風呂があっておトイレもとても奇麗です。ジョージ達は紹介された一階のあるお部屋の中に入って驚きました。
「うわ、凄いね」
「ここにこんなホテルがあるなんて」
「思いも寄らなかったよ」
「私達今夜はここに泊まるのね」
「凄くいいわ」
「そうだね、これはいいね」
王子も笑顔で言います。
「では今日はここに泊まろう」
「我々は食べないですがお料理もありますよ」
ボーイのガーゴイルが言ってきました。
「あとフロアの移動は階段もエレバーターもエスカレーターもありますので」
「それで僕達は何階のお部屋を使っていいのかな」
「お好きな階のお好きなお部屋を」
これがガーゴイルの返事でした。
「どうぞ」
「そうしていいんだ」
「はい、他のお客様が泊まっておられるお部屋もありますが」
それだけでなくというのです。
「空いているお部屋ならです」
「何処でもなんだ」
「お使い下さい」
こう言うのでした。
「どうぞ」
「そうなんだ」
「それでどのお部屋にされますか?」
「そうだね」
王子は自分に判断を委ねられたことを受けてでした。
暫く考えていました、するとここでガーゴイルが笑って言ってきました。
「最上階を全部占めているロイヤルスイートが空いていますよ」
「ロイヤルスイートが?」
「はい、使えますけれど」
「そこを使っていいのかな」
「空いているお部屋なら何処でも」
「それでなんだ」
「どうでしょうか」
ガーゴイルは王子ににこりと笑って尋ねました。
「それでは」
「ではそこを使わせてくれるかな、皆でね」
「皆様がですか」
「そうしていいかな」
こう言うのでした。
「それなら」
「では案内させて頂きますね」
「お願いするよ」
「畏まりました」
こうしてです。
皆そのロイヤルスートに泊まりました、そこでお風呂にも入ってそうしてディナーとなりましたが。
何と満漢全席が出てきました、王子もこれには驚いて言いました。
「まさかね」
「ええ、満漢全席が出て来るなんてね」
「思わなかったよ」
「私もよ」
王女もこう言います。
「本当に」
「そうだね」
「こんなものが出るとはね」
「流石に思わなかったよ」
「いや、エメラルドの都の王宮では食べたことがあるよ」
こう言ったのは教授でした。
「しかしね」
「それでもだね」
「あとは中華街でも出るけれど」
オズの国のというのです。
「立派なお店でね」
「それでもこうしたホテルで出ることは」
「欧州の感じだからね」
「尚更だね」
「ロイヤルスイートだから相当なものが出るにしても」
このことは間違いなくともというのです。
「けれどね」
「これはだね」
「思いも寄らなかったよ」
こう言うのでした。
「本当に」
「そうなんだね」
「これはね、しかしね」
驚きつつもというのです、教授は言いました。
「満漢全席がいただけるなら」
「それならだね」
「是非頂こう」
「中国のお料理でも最高のものだしね」
「それではね」
こうしたお話をしてでした。
皆でその満漢全席を食べます、そしてです。
ジョージ達五人は満漢全席のその味に唸りました。
「流石だね」
「物凄く美味しいね」
「オズの国のお料理の中でも」
「これはかなり美味しいわ」
「こんなに美味しいのは滅多にないわ」
「そうだね、僕もここまで美味しいものは滅多に食べたことがないよ」
モジャボロは食べながら言いました。
「本当にね」
「モジャボロさんもですね」
「これだけ美味しいものを召し上がられることはそうはないですね」
「王宮におられても」
「王宮は特に美味しいものが出ますけれど」
「それでも」
「うん、そうはね」
本当にというのです。
「ないよ」
「そうですか」
「モジャボロさんでも」
「満漢全席は」
「ここまで美味しいものは」
「そうはですね」
「ないよ、だから余計に嬉しいよ」
五人に食べつつ言います。
「心からね」
「僕も中華料理は好きだけれど」
モジャボロの弟さんも言います。
「満漢全席はそうはなかったしね」
「それがここで食べられて」
「それも思わない場所で」
「それで、ですね」
「やっぱり嬉しいんですね」
「そうなんですね」
「凄くね」
実際にというのです。
「嬉しいよ、ではね」
「はい、皆でですね」
「満漢全席を楽しむんですね」
「この最高のご馳走を」
「ボリュームもかなりですし」
「そうすればいいですね」
「これはです」
控えているボーイの人が言ってきました。
「以前こちらに立ち寄ったお客様に教えてもらったメニューです」
「このホテルに?」
「はい、乾隆帝という方で」
こう王子に答えます。
「その方に」
「乾隆帝っていうと外の世界の中国の皇帝だね」
「はい、あの方も今はオズの国におられるので」
それでというのです。
「ですから」
「このホテルにも来て」
「そうしてです」
そのうえでというのです。
「この料理も教えてくれました」
「そうなんだね」
「凄い人ですよ」
ボーイのガーゴイルは王子に答えました。
「堂々としていて聡明で」
「そんな人なんだ」
「学問もあって」
そうしてというのです。
「お料理についても」
「詳しいんだね」
「美食家で」
それでというのです。
「満漢全席をです」
「このホテルに伝えてくれたんだ」
「それでこうしてです」
「僕達も食べられるんだね」
「左様です」
「成程ね」
「はい、では」
ガーゴイルはあらためて言いました。
「お召し上がり下さい」
「そうさせてもらうよ」
王子も頷いてです。
皆で満漢全席を食べました、そのうえで皆ベッドでじっくりと寝て翌朝は和風の朝ご飯を食べました。
それからホテルをチェックアウトしてまた旅に入りますが。
ここで王子は山を駆け上がるオオツノシカを見て言いました。
「あんな険しい山をね」
「普通にですね」
「駆け上がって」
「それで下りますからね」
「物凄いですね」
「信じられないです」
「ここで暮らしているからだね」
王子は一緒にいるジョージ達五人に応えました。
「だからだね」
「ああしてですね」
「自由自在に動けるんですね」
「あんな険しい山も」
「そうなんですね」
「まるでお庭みたいに」
「そうだね、そこに暮らしていれば」
それならというのです。
「何でもないんだね」
「カモシカもだね」
教授はこの生きものを見て言います。
「この険しい場所をね」
「普通に歩いているね」
「踏み外すことなくて」
足をというのです。
「そうしているね」
「そしてここにしかいない生きものばかりだね」
モジャボロはその種類に言及しました。
「オオツノシカやカモシカだけでなく」
「そうだね」
王子はモジャボロにも応えました。
「他にもね」
「ウンピョウとかユキヒョウとか」
「そうした生きものもいるね」
「僕はこの生きものが好きだよ」
弟さんはナキウサギを見ています。
「小さくて可愛いからね」
「寒い場所にいる生きものでね」
「こうした場所でもいるんだね」
「そうだね」
「岩山も岩山の自然があるから」
王女がこう言いした。
「それでよね」
「そうだね、昨日もお話したけれどね」
「それぞれの場所で自然があるわね」
「そうだね」
「だからこそね」
王女はさらに言いました。
「そこに来たら見るべきね」
「そうだね」
「しかし豹というか大型のネコ科の生きものは色々な場所にいるね」
カルロスはこう言いました。
「ジャガーやピューマもそうなるし」
「そういえばそうね」
ナターシャもそれはと頷きます。
「外の世界だと豹はアジアからアフリカまでいるし」
「寒い場所にも暑い場所にもで」
神宝も言います。
「かなり色々な場所にいるよ」
「日本にはいないけれど」
恵梨香はお国のお話からはじめました。
「そうよね」
「アメリカ大陸だとピューマやジャガーだけれど」
ジョージも言います。
「本当に色々な場所にいるね」
「それだけ色々な場所に適応出来るってことだね」
王子は五人にこう答えました。
「大型のネコ科の生きものは」
「森でも山でもですね」
「それで寒い場所でも暑い場所でも」
「本当に何処でもですね」
「何処でも暮らせるんですね」
「そうなんですね」
「狼もそうだけれどね」
この生きものもというのです。
「色々な場所にいるね」
「確かにそうですね」
「狼もそうですね」
「色々な場所にいますね」
「森でも平原でも」
「それで寒い場所でも暑い場所でも」
「外の世界でもそうらしいしね」
それでというのです。
「オズの国でもね」
「そうですね」
「オズの国でもそうで」
「色々な場所にいますね」
「大型のネコ科の生きものも」
「そして狼も」
「こうした生きものは適応性が高いんだよ」
教授がお話してきました。
「生きものとしてね」
「だからですか」
「色々な場所で暮らせるんですか」
「地形や気候に関わらず」
「適応して」
「暮らせるんですね」
「そうなんだ」
まさにというのです。
「だからこうした生きものはオズの国でもよく見るんだ」
「それでここにも豹がいるんですね」
「そうだよ」
教授はジョージにその通りだと答えました。
「そういうことだよ」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「ウンピョウは豹と近いよ」
そうした生きものだというのです。
「それはわかるね」
「はい、それはもう」
「外見を見ればね」
「すぐにわかりますね」
「イヌ科やネコ科の生きものは適応能力が高いからね」
「色々な場所にいられるんですね」
「そうだよ」
こうお話するのでした。
「こうした生きもの達はね」
「そういえば狐や狸もイヌ科だね」
モジャボロが笑顔で言いました。
「そうだね」
「その通りだよ」
「彼等も分布が広いね」
「そうだね」
「オズの国でも各地にいるね」
「そうだね」
「そう考えると」
「彼等の適応能力の高さがわかるね」
「僕もね」
モジャボロは教授に笑顔で頷きました。
「よくわかるよ」
「そうだね」
「ネコ科の生きものにしてもね」
「臆病ライオン君や腹ペコタイガー君もね」
「そうだね」
彼等もというのです。
「そうだしね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「イヌ科もネコ科もね」
「彼等はだね」
「各地にいるんだ」
「オズの国でも」
「そうだよ」
「その中で特に多いのは狼と狐だね」
弟さんはこの生きもの達がと言いました。
「オズの国だと」
「そうだね」
「本当に各地にいるね」
「狐は国さえ持っているしね」
「狼も」
彼等もというのです。
「各地にね」
「群れで暮らしているね」
「そうだね」
「狼はいい生きものね」
王女は笑顔でこう言いました。
「恰好よくて人とも仲がよくて」
「そうだね」
教授もその通りと頷きます。
「彼等は」
「しかも頭がいいしいざという時勇敢で」
「そして悪いこともしないしね」
「あんないい生きものもそうはいないわ」
「全くだね」
「ですが外の世界だとなんですよね」
ジョージはここで王女に言いました。
「七匹の子山羊や赤ずきんちゃん、三匹の子豚とか」
「皆オズの国にいるわね」
「その童話では悪役です」
「オズの国ではそうじゃないけれど」
「そこは違うんですね」
「外の世界とオズの国ではね」
王女はジョージに答えました。
「違うわね、オズの国の方が真実よ」
「狼の姿は」
「外の世界の狼はおかしいわ」
「変に悪く書かれ過ぎですね」
「全然悪くも怖くもないわ」
狼はというのです。
「全くね」
「そうですよね」
「狼は必要なもの以外は食べなくて」
「悪知恵もですね」
「働かせないわ」
「堂々としていますね」
「だから犬にもなったでしょ」
この生きものにもというのです。
「狼は元々は犬よ」
「狼が人と一緒に住んで」
「そうする様になってね」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「犬になりましたね」
「だからね」
それでというのです。
「狼はね」
「怖くも悪くもですね」
「ないわ」
「そうした生きものですね」
「だからね」
「童話の方がですね」
「おかしいわ」
こう王子にお話しました。
「そうなるわ」
「そうですね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「オズの国ではね」
「そんなことはしないですね」
「どの狼も頼りになるね」
そうしたというのです。
「立派な生きもの達よ」
「そうなんですね」
「聡明で誇り高くてね」
「恰好よくて」
「立派よ」
「そうなんですね」
「だからね」
それでというのです。
「ジョージ達もね」
「怖がる必要はないですね」
「何一つとしてね」
「というか狼が怖いならね」
王子は腕を組んで首を少し傾げさせて言いました。
「他の生きもの達の方がね」
「怖いですね」
「そうだよ」
こうジョージにお話しました。
「本当にね」
「何か外の世界の童話ですと」
「狼は怖いね」
「悪くて。それは偏見なんですね」
「それ以外の何でもないよ」
まさにというのです。
「彼等については」
「狼イコール恐怖でも悪でもないですね」
「全くね」
「そうですか」
「悪いものは何か」
王子は深く考える顔でお話しました。
「それはね」
「偏見ですね」
「それだよ、オズの国ではないけれど」
「偏見についてはですね」
「僕も知っているよ」
「そうなんですね」
「一見正義を語って」
そうしてというのです。
「偏見を抱いて何かよからぬことを言う」
「そうした人こそですね」
「悪だと思うよ」
「そうなんですね」
「僕はね」
「ではそうした人こそですね」
「狼でなくね」
むしろというのです。
「そうした人こそね」
まさにというのです。
「悪者だよ」
「そうですね」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「そうした人達こそね」
「注意することですね」
「むしろ童話の狼より悪いわね」
王女はお顔を曇らせて言いました。
「本当に」
「そうですね」
ジョージもそれはと頷きました。
「言われてみれば」
「だからね」
「それで、ですね」
「そうした人達に出会ったら」
「むしろ狼よりもですね」
「注意してね」
そうしてというのです。
「見てね」
「そうします」
実際にとです、ジョージはまた頷きました。そして。
「僕達も気をつけます」
「偏見の強い人達には」
「そうしていきます」
「それで気をつけます」
「そうしてね、オズの国にいなくても」
それでもというのです。
「いないイコール大丈夫でもないのよ」
「そういえば王子が人間に戻った時もでしたね」
「悪人がいてでしたね」
「その人達が問題を起こして」
「それからでしたね」
「冒険がはじまって、でしたね」
「そうそう、あの時はね」
王子自身も言いました。
「本当にそれからだったね」
「悪人達は報いを受けましたが」
「そうでしたね」
「そこからはじまって」
「それで大冒険になって」
「王子も人間に戻れましたね」
「そうなった旅だけれど悪人はね」
本当にというのです。
「オズの国にはいなくても」
「注意しないといけないですね」
「かつてのノーム王やカリダや妖魔達もですし」
「巨人の夫婦もかつてはで」
「クルマーの人達もでしたね」
「いい人達でなくて」
「うん、いい人か悪い人か」
それはというのです。
「やっぱり違うよ、それで狼は悪くないけれど」
「悪い人はいる」
「偏見を持っていてですね」
「一見正義を語る人」
「そうした人がいますね」
「本当に」
「そうだよ、悪くない人や生きものは怖がらないで」
そうしてというのです。
「悪い人や生きものはね」
「見抜いて」
「そうしてですね」
「注意して」
「それで、ですね」
「気をつけることですね」
「そうすることだよ」
こう言うのでした、王子も。
そうしたお話をしながら先に進んでいってです。
そのうえで皆で岩山を出ました、すると草原に出ましたが草原にはバイソンの群れがいてそうしてです。
狼達もいました、彼等は草原を自由に歩いていますが。
別に何もしません、それで王子は言いました。
「本当にね」
「平和ね」
「うん、バイソン達もでね」
こう王女に答えます。
「そしてね」
「狼もね」
「群れでいて」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「平和でね」
「それでよね」
「そう、それで」
そのうえでというのです。
「僕達が今お話した通りにね」
「悪い生きものではないわね」
「それどころか」
むしろというのです。
「彼等はね」
「恰好いいわね」
「そうだよ」
「おや、僕達のことを話しているのかな」
ここで狼の一匹が言葉を出しました。
「ひょっとして」
「うん、そうだよ」
王子はその狼に微笑んで答えました。
「君達が恰好いいってね」
「褒めてくれていたんだ」
「そしてね」
王子はさらにお話しました。
「聡明で誇り高いともね」
「そうもなんだ」
「岩山でお話していたよ」
「そうなんだね」
「君達は外の世界では悪役だけれど」
「それがちょっとね」
狼もこのことについてはこう言います。
「どうもね」
「嫌だね」
「心外だよ」
こう言うのでした。
「僕達は悪いことしないし」
「悪知恵もだね」
「働かせないからね」
だからだというのです。
「そうしたこともしないよ」
「普通にいい方向に使うね」
「頭はね」
それはというのです。
「普通に使うよ」
「そうだね」
「童話じゃ色々あるけれど」
それでもというのです。
「あんなことはね」
「全くしないね」
「する筈がないよ」
それこそというのです。
「僕達は」
「一切しないね」
「する筈がないよ」
こう言うのでした。
「何一つとして」
「というか狼って欲が深いか」
「そう思われることも」
「心外だね」
「本当にね」
「悪い噂は」
それはといいますと。
「信じないことだよ」
「その通りだね」
「だから僕達もね」
「僕達のことはだね」
「事実を知っているから」
それでというのです。
「悪い生きものとはね」
「思わないんだね」
「全くだよ」
「それは何よりだよ、じゃあこの草原をだね」
「通っていくよ」
「そうするんだね、ではご機嫌よう」
狼は王子に笑顔でこう言って見送りました、そうしてです。
王子は皆と一緒に黄色い煉瓦の道を進んでいきます、そのうえで次に行く場所に向かっていくのでした。