『オズのホボ王子』
第七幕 カエルマンの村で
ボボ王子は地図を観つつ一緒に黄色い煉瓦の道を歩いている皆に言いました。
「今度はカエルマンさんの村に行こう」
「そちらなのね」
アン王女が応えました。
「次に行くのは」
「うん、そしてね」
「カエルマンさんもお誘いするのね」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「クッキーさんもね」
「あの人もなのね」
「お誘いしようと思っているんだ」
カエルマンといつも一緒にいるこの人もというのです。
「僕はね」
「それはいいことね」
王女は王子に笑顔で頷いて賛成しました。
「それじゃあね」
「うん、二人共ね」
「お誘いしましょう」
「そうしようね」
「しかしね」
ここで王女はこうも言いました。
「私達も色々な人のところを巡っているわね」
「そして素敵な旅になっているね」
「そうよね」
「いい旅だよ」
王子はにこにことしてこうも言いました。
「今回の旅は」
「全く以てそうよね」
「素敵な旅だよ」
「オズの国では誰もが旅に出ればそうなるね」
モジャボロがにこにことして言ってきました。
「本当に」
「全くだね」
王子はモジャボロに笑顔で応えました。
「僕はあまり自分から旅に出ないけれど」
「それでもだね」
「旅に出れば」
その時はというのです。
「最高のものになっているよ」
「いつもそうだね」
「だから旅は好きだよ」
「旅をすると色々と楽しい経験が出来るしね」
モジャボロの弟さんも言います。
「こんないいものはないよ」
「そうだよね」
「僕もよく出ているんだ」
その旅にというのです。
「そうね」
「そうしていてだね」
「楽しんでいるよ」
「それはいいことだね」
「うん、いつも楽しんでいるよ」
「旅は素晴らしい本を読むことと同じだけの学問になるんだよ」
ムシノスケ教授はこう言いました。
「多くのものを見て聞くからね」
「だからだね」
「しかも移動で歩くね」
教授はこのことについても言及しました。
「このこともだよ」
「いいんだね」
「運動になるからね」
「つまり旅はスポーツでもあるんだね」
「それも最高のね」
そうなるというのです。
「だからどんどんね」
「すべきだね」
「私もそう考えているよ」
こう言うのでした。
「本当にね」
「まさにその通りだね、では次は」
王子は明るい笑顔で言いました。
「カエルマンさんのいる村にね」
「行くんだね」
「そうしよう」
明るい笑顔のまま言ってでした。
皆でカエルマンの村に向かいます、その途中でお昼の時間になりましたが。
ふとです、ジョージ達五人は目の前に梨林を見て言いました。
「あっ、梨があるから」
「梨が食べられるね」
「そうだね、あそこに行ったら」
「梨を食べられるなら」
「是非行きたいわね」
五人で目を輝かせて言います、そして王子もです。
梨林を見てそれで言いました。
「梨もいいね」
「ええ、私は林檎が大好きだけれど梨も好きだから」
王女も笑顔で応えます。
「いいわね」
「そうだね」
「それじゃあね」
「今からだね」
「丁度お昼だし」
それでというのです。
「あそこに入ってね」
「そうしてだね」
「梨をおやつにして」
「お昼にしよう」
「そうしましょう」
笑顔でお話してでした。
皆で梨林に入りました、そうしてです。
お昼ご飯のお握りに塩ジャケとお味噌汁そしてお漬物という日本のお弁当のメニューを出してからでした。
皆で梨も食べます、その梨を食べてでした。
「美味しいね」
「ええ、本当にね」
王子と王女はそれぞれ梨を食べつつ笑顔でお顔を見合わせました。
「美味しいわ」
「そうだね、梨も洋梨もね」
「どちらも美味しいわ」
「この梨いいですよ」
ジョージはとても大きな梨を食べつつ王子と王女に言いました。
「二十世紀梨ですけれど」
「この梨は私の国の梨なんです」
恵梨香もその梨を食べつつ言います。
「日本の」
「この梨もいいんですよね」
神宝もその梨を食べています、そのうえでの言葉です。
「本当に」
「オズの国でもこの梨あるんですね」
カルロスも二十世紀梨を食べています。
「嬉しいですね」
「日本の梨も柿もあって」
ナターシャも言います。
「オズの国はそうしたことも嬉しいですね」
「オズの国には日系人の人も大勢いるよ」
王子は五人にこのことからお話します。
「それで日本の食べものもだよ」
「入っていますね」
「お握りやお味噌汁もそうですし」
「そして梨もですね」
「日本のものが入っていますね」
「そうなんですね」
「そうなんだ、オズの国はアメリカが反映されるから」
そうした国だからだというのです。
「オズの国に日本が入っていればね」
「それで、ですね」
「梨も柿もあって」
「それでお握りもあるんですね」
「お味噌汁やお漬物も」
「それで塩ジャケも」
「全部あるんだ、しかしお握りは恐ろしいよ」
王子はこの食べものについても言います。
「美味しくて食べやすくて幾らでも食べられるよ」
「サンドイッチもそうだけれど」
王女も言ってきました。
「お握りもよね」
「そうだよね」
「特にお外で食べるとね」
「物凄く美味しいね」
「中の具も合わさってね」
「本当にそうだね」
「私は昆布が好きだね」
教授はお握りの具のお話をしました。
「お握りの中にあるものは」
「おかかもいいね」
弟さんはそちらでした。
「美味しいよ」
「葱味噌なんかもいいね」
モジャボロはこれもと言います。
「ご飯と合っていて」
「そうだね、梅干しもいいよね」
王子はこちらもと言いました。
「何かと」
「ああ、梅干しですね」
ジョージは梅干しと聞いて王子に言いました。
「あれはもう」
「お握りの中にあるとね」
「何ていうか」
「最高に合うね」
「不思議な位に」
「最初食べた時は驚いたよ」
梅干しをとです、王子はジョージに応えました。
「物凄く酸っぱくてね」
「そうですよね」
「こんな食べものあるのかって」
「お漬物の中にあって」
「不思議な食べものだと思ったよ」
「本当に」
「けれどね」
それでもとです、王子はこうも言います。
「食べると不思議な位食欲がそそられるね」
「あの種がいいのかしら」
王女も梅干しについて言います。
「酸っぱさと合わせてね」
「種がかい?」
「ええ、食べて舐めるわよね」
「そうなるね、どうしても」
「そうするとね」
梅干しの種を舐めると、というのです。
「それでね」
「食欲をそそられるんだ」
「尚更ね」
「そういうものかな」
「私はそう思ったわ」
「そうなんだね」
「ええ、私も梅干し好きよ」
王女もというのです。
「だからさっきも食べたわ」
「梅干しが入ったお握りをだね」
「そうしたわ」
「それで楽しんだんだね」
「その通りよ、そして今はね」
「梨をだね」
「食べているのよ」
見れば王女は梨をとても美味しそうに食べています、そうしてです。
その梨を見てです、こうも言いました。
「梨と洋梨でまた味が違うから」
「うん、その両方をね」
「楽しめばいいわね」
「そうだね」
王子もその通りだと頷きます。
「是非ね」
「そうよね」
「うん、それとね」
「それと?」
「お茶もあるからね」
見れば日本のお茶もあります。
「そちらもね」
「飲めばいいわね」
「梨とお茶がまた合うからね」
「そうですよね」
ジョージもその通りだと頷きます。
「日本のお茶って梨に合いますよね」
「そうだね」
「だからですね」
「お握りの時も食べたけれど」
「今もですね」
「それを飲もう」
日本のお茶をというのです。
「そうしよう」
「それじゃあ」
ジョージも笑顔で頷きます、そうしてです。
皆で梨も楽しみました、そのうえで。
お昼ご飯の後で旅を再開します、この日も夜までそうしてでした。晩ご飯も食べて近くの川で身体も洗ってテントの中で寝て。
次の日も歩いて遂に三時のおやつの前にカエルマンとクッキーのいる村に到着しました、そうするとです。
村の入り口に来た皆のところにカエルマンが来て声をかけてきました。
「君達何か用かい?」
「貴方の用があって来たんだ」
王子がカエルマンにお顔を向けて応えました。
「それでなんだ」
「私にかい」
「そう、実はね」
王子はカエルマンにパーティーのお話を聞いて言ってきました。
「それでどうかな」
「私もかい」
「パーティーに来てくれるかな」
「身に余る光栄だよ」
カエルマンは王子に満面の笑顔で応えました。
「それはまた」
「その言葉は」
「是非にということだよ」
「そうだね」
「うん、ではね」
「貴方も」
「参加させてもらうよ」
こう王子に言うのでした。
「本当にね」
「そうしてくれると何よりだよ」
王子も笑顔で応えます。
「ではその日にね」
「リンキティンク王の宮殿でだね」
「また会おうね」
「そうしようね」
「楽しみにしているよ」
こうも言うカエルマンでした。
「心からね」
「ではね」
「それとだが」
カエルマンは上機嫌のまま言いました。
「私も参加させてもらうとなると」
「クッキーさんもだよ」
「やはりそうなるね」
「うん、彼女もお誘いしたくてね」
「村に来てくれたんだね」
「そうだよ」
王子はカエルマンに答えました。
「そうさせてもらうよ」
「それではね」
「そしてね」
王子はさらに言いました。
「クッキーさんは何処からな」
「お家の中でおやつを食べているかな」
「ああ、もう三時なんだ」
「だからね」
「それじゃあ今お邪魔するのはよくないね」
おやつを食べているならとです、王子は考えました。
「それなら」
「私もそう思うよ、だからね」
カエルマンは王子に言いました。
「これから一緒にね」
「おやつをだね」
「食べようか」
自分達もというのです。
「そうしようか」
「そうだね、それじゃあね」
「今からね、今日の私のおやつはドーナツだよ」
こちらだというのです。
「それとコーヒーだよ」
「コーヒーもあるんだね」
「うん、どうかな」
「先程の貴方の言葉をそのまま言っていいかな」
王子はカエルマンに笑ってこう返しました。
「今から」
「是非共」
「そうしてくれると何よりだよ」
王子もこう言いました」
「それならね」
「それではね」
「うん、そうしてね」
「一緒に食べようね」
「そして食べ終わってから」
「クッキーさんのところに行こう」
「そうしよう」
こうお話して皆カエルマンのお家お池の傍にある黄色いそちらに入ってそうしておやつを食べました。
その後で、です。クッキーのお家に行くとです。
クッキーは皆の訪問を受けて驚いて言いました。
「皆またどうして」
「実はね」
王子はクッキーにもパーティーのことをお話しました、そのうえで尋ねました。
「それで貴女もどうかな」
「招待してくれますか」
「是非ね」
「それではその時は予定もないので」
「それではだね」
「お言葉に甘えまして」
それでというのでした。
「お邪魔させてもらいます」
「それではね」
「宜しくお願いします」
「そうしてくれると嬉しいよ」
「はい、それじゃあ」
「待っているよ」
王子は笑顔で言いました。
「リンキティンク王の国でね」
「それでは」
クッキーも笑顔で応えました。
「またその時に」
「会おうね」
「それだけれど」
お話が決まったところで、です。カエルマンは皆に声をかけてきました。
「君達今晩はどうするのかな」
「何処で寝泊まりするかだね」
「多分テントでだね」
「そうだよ」
その通りだとです、王子はカエルマンに答えました。
「そのつもりだよ」
「やっぱりね、それじゃあね」
カエルマンは王子の返事を聞いてこう言いました。
「近くに面白いホテルがあるんだ」
「どういったホテルかな」
「沼地の中にあるホテルでね」
それでというのです。
「個室がその沼の中の大きな空気の中にあってね」
「空気のなんだ」
「空気の中にベッドや生活のものがあって」
「その中で止まるんだね」
「そうしたホテルなんだ、沼地の傍に温泉もあってね」
「そこでくつろぐことも出来るんだ」
「そうなんだ」
こう王子にお話します。
「そうしたホテルがあるんだ」
「それでそのホテルにだね」
「泊まったらどうかな」
こう王子に提案するのでした。
「沼地の中のホテルにね」
「面白そうだね」
「一人一人でも何人かずつでも泊まれるよ」
そのホテルにというのです。
「だからどうかな」
「うん、それじゃあね」
王子はカエルマンの提案に笑顔で頷きました、そうしてそのうえで皆にお顔を向けてそのうえで尋ねました。
「皆もそれでいいかな」
「面白いホテルね、それじゃあね」
「今夜はそこに泊まろう」
「近くに温泉もあるっていうし」
「そこでくつろぎもしてね」
王女とモジャボロに弟さんそれに教授が応えました、皆笑顔です。
「そうしよう」
「晩ご飯はテーブルかけで出して」
「それで食べよう」
「そうそう、食べものはホテルも用意してくれるよ」
カエルマンはここでこのことも思い出してお話しました。
「そちらもね」
「そうなんだ」
「これまた近くの川の幸それにこの村の田畑や牧場のものを使ってね」
そうしてというのです。
「美味しいものを出してくれるよ」
「それでだね」
「そちらも楽しめるからね」
「食事のことも含めて」
「そのホテルに泊まったらどうかな」
こう言うのでした。
「当然子供達もね」
「うわ、何か楽しみだね」
「沼の中のお部屋なんて面白そうだね」
「是非泊まってみたいよ」
「そんな場所もオズの国ならではよ」
ジョージ達五人もそれならとなっています。
「それじゃあ」
「是非今夜は」
「お食事も温泉も楽しんで」
「沼地の中でね」
「一泊させてもらおう」
「君達もそう言うなら決まりだね、じゃあ今日はそこに一泊しよう」
王子はここで完全に決めました、そうしてです。
カエルマンに紹介されてまずはホテルが出してくれた川の幸も田畑や牧場のものを使った素敵なディナーを楽しんでです。
そのうえで、です。温泉も満喫してから沼地の中のお部屋に入りました。皆まずはロビーに入りましたが。
ウィンキーの黄色い泥に覆われたロビーは不思議なものでした。上も横も全て黄色く光る泥に照らされていて。
そして席があり沢山のお客さんがくつろいでいます、床はしっかりとした石のもので固まっていて靴を汚さず黄色い絨毯が敷かれています。
そしてホテルマンの人達にそれぞれのお部屋に案内されることになりましたが。
泥に扉が出てそこを潜るとでした。
丸い球体の周りが泥に覆われて下の方に絨毯で敷かれた床とベッドがあります、そのベッドに皆読になってそれぞれのお部屋で休みました。
そして翌朝お部屋からも沼地からも出てその傍の席で朝ご飯のモーニングセットを食べつつ皆でお話しました。
「いや、こんなホテルがあるんだね」
「ええ、思いも寄らなかったわ」
王女は王子にトーストを食べながら応えました。
「本当に」
「全くだね」
「けれどね」
「それでもだね」
「いい経験だったわ」
「こんなホテルもあるんだってね」
「快適だったしね」
王女はこうも言いました。
「お部屋の中は適温で」
「ベッドもいいものだったしね」
「泥が光るから灯りになったし」
このこともあってというのです。
「暗くなかったし」
「よかったよ」
「そうね」
「ううん、こんなホテルがあるのもオズの国ですね」
ジョージはトーストを食べながら言いました。
「本当に」
「そうよね、オズの国だからね」
ナターシャはトマトを食べつつ言います。
「こうしたホテルもあるのね」
「色々な不思議がある国だから」
神宝はソーセージをフォークに突き刺して口に入れています、そのうえでの言葉です。
「こうしたホテルもあるんだね」
「普通沼地にホテルなんてないよ」
カルロスはゆで卵を食べながら言います。
「それがあるのがオズの国だね」
「まさにそうよね」
恵梨香はピクルスを食べながら言いました。
「オズの国だからこそあるのよ」
「僕もそう思うよ、まさかね」
王子はトーストにラム酒を入れたマーガリンをたっぷりと塗りつつ言いました。
「こんなホテルがあるとは思わなかったけれど」
「それでもですね」
「オズの国ならありますね」
「こうしたホテルも」
「そうですね」
「お伽の国ですから」
「そうだよ、不思議なことが次々と生まれるから」
そうした国だからだというのです。
「こうしたホテルもあるんだね」
「そうですよね」
「オズの国だからですね」
「こうしたホテルもあって」
「私達も楽しめるんですね」
「他の何処にもないホテルを」
「そうだよ、こんなホテルもあるんだね」
王子はこうも言いました。
「素敵な経験だったよ」
「ええ、じゃあ素敵な経験をいい思い出にしてね」
そうしてとです、王女は王子に焼いたベーコンを食べながら言いました。
「次の場所に行きましょう」
「そうしようね」
「ええ、しかしこの朝ご飯もね」
「素敵だね」
「全くだよ」
教授はサラダを食べつつ頷きました。
「ディナーもよかったけれどね」
「朝からこんなご馳走を頂けることもいいね」
弟さんはスクランブルエッグを食べながら笑顔で言います。
「このホテルは」
「面白いお部屋で温泉もあってこの食事だと」
モジャボロはフルーツの盛り合わせに舌鼓を打ってこの言葉を出しました。
「お客さんが多いことも当然だよ」
「カエルマンさんにいい場所を紹介してもらったよ」
王子はトーストを食べながら言いました。
「本当にね」
「全くですね」
「それじゃあこのホテルのこともいい思い出にして」
「そうしてですね」
「次の場所に行きますね」
「そうしますね」
「そうしようね」
笑顔でこう言ってでした。
皆はホテルをチェックアウトしたうえで次の場所に向かいました、そして歩きはじめて暫くしてでした。
王子のスマートフォンから音楽がかかりました、王子はそれにすぐに出ました。すると電話をかけてきたのは。
リンキティンク王デシタ、リンキティンク王は王子に言ってきました。
「こっちは終わったぞ」
「誘うべき人はですか」
「皆誘ったぞ」
こう王子に言うのでした。
「もうな」
「有り難うございます」
王子はリンキティンク王に笑顔で応えました。
「それでは後は」
「わしはもう戻る」
「お国に」
「そうしてな」
そのうえでというのです。
「パーティーの用意をしておくぞ」
「そのことも有り難うございます」
「ははは、礼なぞいらん」
「いいですか」
「その気持ちだけで十分じゃ」
「そうですか」
「それでそっちはどうじゃ」
リンキティンク王は王子に聞いてきました。
「それで」
「僕の方はですか」
「どうなのじゃ?」
「かかしさんや樵さんを案内出来まして」
王子はリンキティンク王にこれまでのことを全てお話しました、それで沼地のホテルのこともお話しました。
「いいホテルでしたよ」
「ほう、そんなホテルもあるのか」
「そうなんですよ」
「わしも行ってみたいぞ」
早速こう言うのでした。
「そのホテルにな」
「それはいいですが」
王子は本当に行きたそうなリンキティンク王にこう言いました。
「王もお仕事がありますよ」
「おっと、そうだった」
リンキティンク王も言われて思い出しました。
「暫く旅に出て忘れておった」
「それは忘れたら駄目ですよ」
「王の務めはな」
「今は大臣さんが代わりにやってくれていますが」
王様のお仕事をです。
「ですが」
「仕事は人任せにしてはいかん」
「はい、ですから」
それでというのです。
「もうお誘いのお仕事が終わって」
「国に戻ったらな」
「その後はです」
「パーティーの用意をしてな」
「王様のお仕事もです」
それもというのです。
「ちゃんとしましょう」
「そうせんとな」
「はい、そして」
王子はリンキティンク王にさらに言いました。
「僕もです」
「王子の仕事をじゃな」
「しないといけないです」
「王子も王子で仕事があるからのう」
「王様と一緒に国を治めていますからね」
王子はお国ではいつもリンキティンク王を助けて政治をしています、それでそちらのお仕事があるのです。
「ですから」
「それでじゃな」
「国に帰りますと」
その時はというのです。
「パーティーもして」
「国の仕事もな」
「します」
「そうじゃな」
「ですから王様も」
リンキティンク王もというのだ。
「お仕事をです」
「頑張らんといかんな」
「そうして下さい」
「暫く旅は出来んか」
「王様も僕も」
「いつも旅に出てはいかんな」
「国を治めているとそうですよ」
「そうじゃな、王様も楽ではないか」
「楽ではないですが楽しく過ごせますよ」
王子は少し残念そうに言った王様にこう返しました。
「お国でも」
「仕事をしつつか」
「はい、そうしながら」
「そうじゃな、いつもそうしておるしな」
「旅をしても楽しめますが」
それと共にというのです。
「お国でお仕事をしながらもです」
「楽しめるな」
「それがオズの国です、お仕事自体も」
「楽しめるな」
「そうです、全ての事柄が楽しめますから」
そうした国だからというのです、オズの国は。
「残念に思うことはないです」
「一切じゃな」
「はい、ではお国で会いましょう」
「うむ、また会う時を楽しみにしておるぞ」
「僕もですよ」
笑顔でお話をしてでした。
リンキティンク王が電話を切りますと王子はそのスマートフォンを収めました、そしてそのうえで、です。
王子は皆に笑顔のままこう言いました。
「これでね」
「リンキティンク王の国ではなのね」
「王様が迎えてくれるよ」
王女に笑顔で答えます。
「楽しみにしておいてね」
「ええ、是非ね」
「楽しい旅だけれどね、リンキティンク王に会えないことはね」
「王子としてはなのね」
「寂しいよ」
「そうなのね」
「僕達は無二の親友になったからね」
王子が今の姿に戻ってからです。
「それまでは僕は悪態ばかりだったけれど」
「リンキティンク王はずっと受け入れてくれていたわね」
「そのリンキティンク王と一緒にいると」
それならというのです。
「僕はそれだけで最高に幸せなんだ」
「その人と一緒でないから」
「旅は楽しくても」
それでもというのです。
「どうしてもね」
「その分寂しいわね」
「リンキティンク王もだよ」
この人もというのです。
「だからだよ」
「今電話をしてきたのね」
「そうだよ、僕達はやっぱりね」
「無二の親友だから」
「長い間別々だとね」
「寂しくなるのね」
「どうしてもね」
「絆は強いのね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「早くあの人に会いたいとも思うよ」
「そうも思うのね」
「楽しい旅をしながらね」
「その先にある楽しみについても思うのね」
「そうなんだ、あの賑やかさが懐かしいよ」
リンキティンク王のそれがというのです。
「本当にね」
「リンキティンク王の賑やかさは別格ですからね」
「いつも陽気で朗らかで」
「太陽みたいですよね」
「あんな明るい人もそうそういないですね」
「オズの国でも」
ジョージ達五人も言います。
「私達もあの人のお話を聞きますと」
「お会いしたくなります」
「もう自然に」
「そう思うと早く行きたいですね」
「リンキティンク王の国に」
「そうだね、けれど焦らないでね」
それは禁物だとです、王子は五人に言いました。
「絶対に」
「そうですよね」
「オズの国は焦ってはいけないですね」
「今の楽しみを充分楽しむ」
「そうすることが決まりですから」
「だからですね」
「そうだよ、落ち着いてね」
そうしてというのです。
「行こうね」
「はい、焦らないで」
「それでですね」
「皆一緒に」
「ゆっくり楽しんで」
「それで行きましょう」
「そう、僕も焦っていないよ」
王子自身もというのです。
「今の旅を楽しんでいるからね」
「焦っても何にもならないものだよ」
モジャボロは笑って言いました。
「何事もね」
「そうだね」
「学問もコツコツやるものでね」
「焦らずにだね」
「一つ一つ確実にね」
そうしてというのです。
「ことを進めるものでね」
「それでだね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「今はね」
「焦らないでいこう、絶対に会えるんだ」
モジャボロの言葉はまるでスキップしている様に明るいものでした。
「だったらだよ」
「焦る必要がないよ」
「そうだからね」
「焦って失敗することも多しね」
「周りが見えなくなってね」
「絶対に焦らない」
「それが大事だよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「だからオズの国では皆焦らないね」
モジャボロの弟さんの言葉には余裕がありました。
「何があっても」
「その通りだね」
「焦って物事が解決するか」
「むしろ失敗するね」
「急ぐ時はあっても」
それでもというのです。
「焦ることはだよ」
「いらないよ」
「そうしたものだから」
「僕達もね」
「焦らないでね」
そのうえでというのです。
「旅をしていこう」
「このままね」
「じゃあ行きましょう、次の場所にね」
王女は前を見て笑顔で言いました。
「そうしましょう」
「そうだね」
王子は王女の言葉にも頷きました。
「もう次に行く場所は決めているしね」
「だからよね」
「そこに行って」
「それが終わったら」
「もうお誘いする人は今度が最後だから」
「じゃあその人のところに行ったら」
「後はね」
その次はというのです。
「リンキティンク王の国にだよ」
「戻るのね」
「そうなるよ」
「じゃあ尚更よ」
「あと少しだから」
「焦ることはないわ」
一切、そうした言葉でした。
「本当にね」
「そういうことだね」
「是非行こうね」
「それならね」
笑顔で言いました、それから。
王子は前を見てその先にあるものについて言いました。
「次は山の中を進むよ」
「山の中ですか」
「これまでは平原でしたが」
「今度は山ですか」
「山の中を進んで」
「そこにいる人達をですね」
「招待するよ」
そうするというのです。
「今度はね」
「山というと」
王女は考えるお顔で言いました。
「大体わかったわ」
「そうなんだね」
「大体だけれどね」
完全でなくともというのです。
「それでもね」
「多分その大体は正解だよ」
「そうなのね」
「僕はそう思うよ」
こう言うのでした。
「ではね」
「その正解に向かって」
「今からね」
「一緒に行こうね」
笑顔でこう言ってでした。
王子は今度は皆を山の中に案内していきました、そうして今度の招待する人達のところに行くのでした。