『オズのラゲドー王』
第十一幕 イッソスの国に入って
皆はイッソスの国に入りました、お寿司屋さんがある海に面した国です。ですがまだ海は見えないので前ノーム王は言いました。
「これからだね」
「ええ、海の方に行くのはね」
トロットは前ノーム王に答えました。
「まだね」
「そうなんだね」
「だからね」
トロットはさらにお話しました。
「あと少しね」
「歩いていくことだね」
「お寿司屋さんのある港町まであと少しだから」
「ずっと陸地を歩いてきて」
前ノーム王はこれまでの旅を思い出しながら言いました。
「それでだね」
「そうよ、海に出るから」
「その時までだね」
「歩いていきましょう」
「それじゃあね」
「いや、海を見るのが楽しみだよ」
船乗りであるキャプテンは実際に楽しみにしています。
「本当に」
「キャプテンはそうよね」
「やっぱり海だよ」
ここに進むべきだというのです。
「海を見てそこに乗り出す」
「それが好きよね」
「大好きだよ」
こうトロットに答えました。
「そうなんだよ、だからね」
「今からよね」
「海に行けることが楽しみだよ」
「さて、港町だったら」
カエルマンはにこにことしています。
「お寿司以外も美味しいものがあるね」
「お刺身にカルパッチョにお鍋に」
クッキーも笑顔になっています。
「ブイヤベースもありまして」
「ムニエルなんかもいいね」
「シーフードをふんだんに楽しめますね」
「実に楽しみだよ」
「本当にそうですよね」
「わしはずっと海に縁がなかったんだ」
前ノーム王は地底にいた頃をここでも思い出しました。
「だからだよ」
「海に行きたいのね」
「海を見て」
ビリーナに応えました。
「そしてだよ」
「そのうえで」
「海の幸の料理をふんだんに楽しみたいよ」
「そうなのね」
「特に」
「特に?」
「お寿司だね」
目的のものであるそれだというのです。
「それを食べたいよ」
「やっぱりそうね」
「そして他の海の幸を使ったお料理も」
「楽しみたいのね」
「パエリアや中華料理もで」
そしてというのです。
「イタリア料理もフランス料理も」
「食べたいのね」
「今から楽しみだよ」
見ればです。
前ノーム王は足取りも弾んでいます、もう今にも港町に行きたいみたいです。それでこんなことを言いました。
「羽根があったら」
「すぐに行けるわね」
今度はポリクロームが応えました。
「港町まで」
「そうだね」
「だから羽根が欲しいのね」
「今のわしはそうだよ」
「そうなのね」
「うん、ただ逸る気持ちを抑えて」
そうしてというのです。
「ここはだよ」
「港町まで行く道のりも」
「楽しまないと駄目だね」
「その通りだよ」
まさにとです、カエルマンは答えました。
「旅は目的地に着くまでもだよ」
「旅でだね」
「だからね」
それでというのです。
「これまでもそうだったし」
「これからもだね」
「そう、旅を楽しんでいこう」
「わかったよ、ではそうしていこう」
前ノーム王は笑顔で応えました、そうしてです。
皆でイッソスの国も進んでいきました、海はまだ見えないですが街や村を進んでの旅に入りました。
そこである街に入ってナターシャは言いました。
「ここはロシアの感じがしますね」
「そうなんだね」
「はい、ロシアはこうした感じなんです」
前ノーム王に応えます。
「サンクトペテルブルグは」
「ううむ、運河が多くて」
前ノーム王はその街並みを見つつ言いました。
「白い橋も多くて」
「宮殿みたいな建物が連なっていますね」
「奇麗な街並みだね」
「これがサンクトペテルブルグなんです」
この街だというのです。
「私が大好きな街です」
「奇麗だからだね」
「建物も運河も」
前ノーム王ににこりとして答えます。
「そうなので」
「だからだね、そういえば」
前ノーム王はこんなことも言いました。
「この間行った日本風の街も水が多かったよ」
「そうなんですか」
「知ってるかな、黒と黄色の野球チームがあって」
そしてというのです。
「大きな河豚や蟹の看板があって紅白の服を着たおじさんのものもあって」
「ああ、あそこですか」
ナターシャはここまで聞いてその街のことがわかりました。
「私達もあそこに行ったことがあります」
「また行きたいね」
カルロスはその街についてこう言いました。
「面白い街だからね」
「大阪なのよね」
日本人の恵梨香はその街が何処かすぐにわかったのです。
「あそこは」
「人情豊かでざっくばらんでね」
ジョージもにこにことして言います。
「それでお笑いもあって」
「しかも食べものも美味しいからね」
神宝はこちらのお話もしました。
「本当に」
「あそこで串カツやたこ焼きを食べたけれど」
前ノーム王は言いました。
「どれも美味しかったね」
「あとお好み焼きもいいですよ」
ナターシャはこちらもと勧めました。
「きつねうどんも」
「そうなんだね」
「はい、甘いものはアイスキャンデーか善哉です」
「あの二つ出る善哉だね」
「ご存知ですか」
「ご飯の中に鰻があるうな丼とルーと最初から混ぜられているカレーを食べて」
そうしてというのです。
「その後でだよ」
「善哉もですか」
「食べたよ、美味しかったね」
その善哉がというのです。
「本当に。ただね」
「ただ?」
「どうもあのお店はあれだね」
ここでこうも言うのでした。
「カップルで行って食べるところだね」
「そうなんですよね」
ナターシャもそうだと答えました。
「実は」
「わしはそうした人がいないからね」
「だからですか」
「そこは違ったよ」
そうだったというのです。
「どうもね。しかしね」
「それでもですね」
「楽しませてもらったよ、あの街も」
「面白い街ですね」
「うん、そしてこの街もだね」
「あの街は川でこちらは運河ですが」
その違いはあってもというのです。
「お水が多くて」
「橋も多いね」
「そうです」
こう言うのでした。
「その橋を渡っていくことも」
「いいね」
「風情があって」
「本当に何度観ても奇麗な街ね」
トロットは街の中を歩きつつ思いました。
「こちらは」
「うん、奇麗過ぎてだよ」
キャプテンも街の中を見回して言います。
「街自体が宮殿の様な」
「そうした風にも思えるわね」
「全くだよ」
「ここは美術館もあるのよね」
トロットは笑顔でそちらのお話もしました。
「それじゃあね」
「美術館にもだね」
「行きましょう、イッソスの国の美術品が集められているから」
「それを観にね」
「行きましょう」
「あの」
ナターシャがトロットに尋ねました。
「いいですか?」
「どうしたの?」
「その美術館は何て名前ですか?」
尋ねるのはそちらのことでした。
「一体」
「エルミタージュっていうのよ」
トロットは笑顔で応えました。
「その美術館はね」
「エルミタージュですか」
「ええ、知ってるかしら」
「はい、まさにです」
ナターシャはトロットに答えました。
「サンクトペテルブルグにある美術館です」
「外の世界ではそうなのね」
「昔は皇帝の宮殿だったんですが」
「今は美術館ね」
「そうなっています」
「オズの国では最初からなのよ」
美術館だというのです。
「宮殿じゃないのよ」
「そこは違いますね」
「そうなの。それじゃあね」
「美術館にもですね」
「行きましょう」
トロットはナターシャそして他の皆に笑顔で声をかけました、そうしてでした。
皆でエルミタージュという美術館に行きました、本当に宮殿そのものの壮麗さで素晴らしい庭園まで持っている美術館でした。
その美術館の中に入るとでした。
様々な素晴らしい絵画や彫刻があります、その中には。
オズマやドロシーを描いた絵もあります、前ノーム王はその中の一枚を観てこれはというお顔になりました。
「ああ、これはわしが皆と会った時の旅だね」
「そうね」
ビリーナはオズマとドロシーがはじめて出会った時を描いたその絵を前ノーム王と一緒に観て言いました。それはまるで巨大な宗教画です。
「私もいるしね」
「そういえばだったわね」
ポリクロームも言いました、その絵を観ながら。
「ノームの国に行った時にね」
「そう、その時に私はオズの国に来たのよ」
ビリーナはポリクロームに答えました。
「ドロシーがオーストラリアに行く時に乗っている船が大変なことになって」
「それでオズの国に流れ着いたのよね」
「あの娘のオズの国への二度目の到着でね」
「その時貴女も一緒だったわね」
「それでチクタクとも出会って」
「そうしてだったわね」
「この絵にある通りにね」
皆と一緒にいるオズマとドロシーが出会っている絵を観て言うのでした。
「オズマとドロシーが出会ってね」
「貴女はオズの国に来たわね」
「懐かしいわ」
ビリーナは笑ってこうも言いました。
「つい昨日の様でいてね」
「それでいて懐かしいのね」
「そうなのよ」
「そうなのね」
「いや、この時の冒険のことも覚えてるわ」
「あの時はぎゃふんとなったよ」
前ノーム王もその頃のことを思い出して言います。
「あの時のわしは悪人だったよ」
「それで私達と会ってね」
「悪いことをしたね」
「そうだったわね」
「もうあんなことは二度としないよ」
心を入れ替えた今はというのです。
「何があってもね」
「それがいいわね」
ビリーナもその通りだと応えます。
「その方が皆幸せでね」
「わし自身もだね」
「そうだからね」
「うん、しかし他の絵もいいね」
前ノーム王はその絵以外の絵も観て言います、ドロシーが最初にオズの国に来た時の絵やかかしや樵、臆病ライオンと出会った時の絵もあります。
そこに皆がいます、その絵の中に。
ナターシャ達五人もいます、ですが五人は絵の中の自分達を観て思わず笑ってこう言ったのでした。
「私達こんなに奇麗?」
「こんなに恰好いいかな」
「こんなにハンサムかな」
「ここまで美形じゃないよ」
「可愛く描き過ぎよ」
「いや、皆そっくりだよ」
カエルマンが応えました。
「この通りね」
「そうですか?」
「美化してません?」
「こんなに格好よくないですよ」
「とても」
「こんなにじゃないですよ」
「君達はそう思っていてもね」
それでもというのです。
「皆が見たらだよ」
「そうなんですか」
「美形なんですか」
「自分ではそう思っていなくても」
「顔立ち整ってますか」
「そうなんですね」
「うん、この絵を描いた人はありのまま描いているよ」
カエルマンはこう言うのでした。
「だからね」
「それで、ですか」
「この絵についてあれこれ思うことはないですか」
「美化し過ぎとか」
「そうしたことは」
「別にないですか」
「ないよ、だから安心していいよ」
こう五人の子供達に言うのでした。
「その通りの外見だからね」
「皆さん整った顔立ちですよ」
クッキーも笑顔で言います。
「とても」
「そう言われたことはないですが」
「僕達誰も」
「別に悪いと言われてもないですが」
「いいともです」
「言われていません」
「ですが私達から観ますと」
どうかというのです。
「整っています」
「そうなんですね」
「僕達実はですか」
「顔いいですか」
「そう思ったことなくて」
「言われたこともないのに」
「はい、言わなかっただけで」
誰もがというのです。
「そうですよ」
「皆実際顔立ち整っているよ」
キャプテンも言います。
「それぞれね」
「そう言われると」
ナターシャは他の四人の顔を見ました、すると確かに四人共結構以上に整ったお顔立ちをしています。
「確かに」
「勿論君もだよ」
キャプテンはナターシャもと言いました。
「とてもね」
「整っていますか」
「そうしたお顔だよ」
そうだというのです。
「本当にね」
「そうなんですね」
「君はお人形みたいだよ」
ナターシャはそうだというのです。
「そうした感じだよ」
「お人形ですか、私は」
「そうだよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「そうですか」
「だからね」
さらに言うキャプテンでした。
「自分の顔が悪いともね」
「思うことはないですか」
「うん、顔立ちも整っていてそれ以上にね」
さらにというのです。
「いい相をしているよ」
「相ですか」
「人相よ」
トロットが言ってきました。
「皆人相がいいのよ」
「そちらもですか」
「人相が凄くいいから」
だからだというのです。
「とてもね」
「いい顔になってますか」
「人のお顔は元の顔立ちだけで奇麗にならないのよ」
「といいますと」
「性格や感情が出てね」
そうしてというのです。
「相が決まるけれど」
「人相ですか」
「その人相がね」
「私達はいいんですね」
「とても心が奇麗だから」
それでというのです。
「人相もいいのよ」
「ほら、見るんだ」
前ノーム王はオズの魔法使いの彫刻を皆に紹介しました、全身のブロンズ像ですが今魔法を使ってシルクハットから子豚達を出しています。
「この通りね」
「あっ、魔法使いさんのお顔も」
「とてもいいですね」
「にこにことしていて」
「優しくて人懐っこい感じで」
「凄く相ですね」
「人相がいいと」
それならというのです。
「人の顔はそれだけでよくなるんだよ」
「いいお顔にするのは自分自身よ」
トロットがまた言います。
「いいことをしていい心でいるなら」
「いいお顔になる」
「それは僕達も同じですね」
「だから忠実に描いてもらったら」
「とてもいいお顔なんですね」
「自分でも驚く位に」
「そういうことなのよ」
こうお話するのでした。
「これでわかったわね」
「わかりました」
「お顔は自分が作るものですね」
「いいことをしていい心でいる」
「そうすればいいんですね」
「いいお顔になるんですね」
「その通りよ」
こう言うのでした。
「お顔はね」
「性格や生活がですね」
「出るのよ」
「それでよくなりますね」
「そうなのよ」
「それなら私達もですね」
「ええ、これからね」
「いいことをして」
そうしてとです、ナターシャは言いました。
「いいことを言っていいことを考えていきます」
「そうしていってね」
「わかりました」
トロットの言葉に頷いてでした。
皆は美術館の中にある様々な芸術品を見てでした。
その中にあるカリダの絵についてです、前ノーム王は言いました。
「何かな、この絵は」
「どうしたの?」
「何か目の位置が左右で違ったりデッサンが崩れているね」
こうトロットに言いました。
「不思議な絵だね」
「それピカソさんの絵よ」
すぐにです、トロットは答えました。
「昔は外の世界におられて今はオズの国におられるね」
「その人の絵なんだ」
「そうなの」
「随分変わった絵だと思ったらね」
「ピカソさんの絵は独特だからね」
それでとです、トロットはまた答えました。
「こうした絵なのよ」
「成程ね、ぱっと観るとわからないけれど」
それでもとです、前ノーム王はピカソさんの絵を観つつ言いました。
「観れば観るとかね」
「どうしたの?」
「味のある絵だね」
こう言うのでした。
「随分とね」
「貴方はそう思うのね」
「いいね、こちらの絵もね」
今度は絵の具を絵から浮き出るまでに使って一気に描いた様なドロシーの絵を観ました、そうして言うのでした。
「いいね」
「そちらはゴッホさんの絵よ」
「その人の絵なんだね」
「ゴッホさんも外の世界におられたけれど」
それでもというのです。
「今はね」
「オズの国におられてだね」
「ずっと絵を描いているのよ」
「そうして生きているんだ」
「もう次から次に描いて」
そうしてというのです。
「楽しんでおられるわ」
「そうなんだね」
「あとこの彫刻もいいね」
カエルマンは自分のそれを観て言いました。
「私を随分と格好よくし過ぎだけれどね」
「それはミケランジェロさんのものよ」
「その人が造ってくれたんだ」
「そうなのよ」
「私にしては恰好よ過ぎだけれど」
それでもと言うカエルマンでした。
「随分とね」
「いいわね」
「こちらもね」
「こちらのオズマ姫はまさに女神ですね」
クッキーはオズマのある絵を観てうっとりとしています。
「本当に」
「そちらはダ=ヴィンチさんの絵ね」
「その人の絵ですか」
「レオナルド=ダ=ヴィンチさんといって」
それでというのです。
「芸術だけじゃなくてね」
「他のことでもですか」
「凄い人なのよ」
「あの、その人までなんですね」
恵梨香はダ=ヴィンチさんと聞いて驚いて言いました。
「オズの国に来られてるんですね」
「ミケランジェロさんにゴッホさんにピカソさんにで」
神宝も言います。
「ダ=ヴィンチさんもですか」
「他にも大勢の人がおられるのは知ってましたけれど」
ジョージも驚きを隠せない感じです。
「その人もなんて」
「凄いですね」
カルロスも心から言います。
「オズの国はつくづく」
「どうしてそんな人達がオズの国におられるのか」
ナターシャは真剣に言いました。
「わからないんですが」
「だって皆夢を持っているからよ」
トロットは五人に微笑んで答えました。
「だからよ」
「あっ、夢を持っておられるから」
「そう、だからね」
それ故にというのです。
「オズの国にね」
「来られたんですね」
「そうなのよ」
「ダ=ヴィンチさんもピカソさんもですか」
「そうなのよ」
「そうですか」
「だからね」
それでというのです。
「驚くことはないわ」
「夢を持っている人はですね」
「外の世界での一生を終えたら」
それならというのです。
「オズの国に来られるのよ」
「だから私達がこれまで会った人達も」
「エジソンさんもベーブ=ルースさんもプレスリーさんもでね」
「関羽さんも幸村さんもですね」
「皆そうなのよ」
夢を持っているからというのです。
「オズの国に来られているのよ」
「そうですか」
「ボームさんもそうでしょ」
最初にオズの国のことを皆に教えてくれたこの人もというのです。
「そうでしょ」
「そうでしたね、これでオズの国に行けるって」
「外の世界での人生を終えられた時に言われましたね」
「そう、それでね」
「ダ=ヴィンチさん達もですね」
「オズの国におられるのよ。前にお話が出た秀吉さんも」
日本のこの人もというのです。
「夢を持っておられるから」
「オズの国に来られたんですね」
「それで楽しく過ごされているのよ」
「そうなんですね」
「これ秀吉さんがこの美術館に贈ってくれたものよ」
ビリーナはナターシャ達に折り畳み式の金の茶室を見せて言いました。
「この茶室はね」
「あっ、大阪城にある」
「その茶室だね」
「この茶室この世界にもあるんだ」
「それで秀吉さんこの美術館に贈ったんだ」
「そうなのね」
「ええ、あの人物凄く気前がよくてね」
それでというのです。
「二つ持ってるからってね、こっちの世界だと」
「それならなのね」
「一つは贈ったんだね」
「そして残る一つは自分が持っている」
「そうしているんだね」
「こんな凄いものを」
「そうなのよ、こんな凄いものをね」
黄金の折り畳み式の茶室をというのです。
「贈ってくれたのよ」
「いや、ここに入ってね」
前ノーム王も言いました。
「お茶を飲んだらどんな気持ちになるのかな」
「日本のお茶ね」
「うん、お抹茶をね」
ポリクロームに応えました。
「そう思ったよ、今ね」
「こんな茶室があるなんて思わなかったわ」
ポリクリームもその茶室を前にして言います。
「凄いわね」
「わしも宝石や黄金は多く持っているがね」
「こうしたものは持っていないのね」
「うむ、それにね」
さらに言うのでした。
「こうして贈るなんてね」
「余計に凄いわね」
「秀吉さんの度量にも驚くよ」
こうも言うのでした。
「本当にね、これは手本にしないと」
「駄目だっていうのね」
「そうだよ」
「以前の貴方は違ったからなのね」
「こんなことをするなんて」
それこそというのです。
「発想すらなかったよ」
「だからなのね」
「うん、ケチなことはしないで」
そうしてというのです。
「無欲で気前よくね」
「ありたいのね」
「そう思ったよ」
「そうね、オズの国の人達は皆無欲だから」
トロットも言います。
「貴方もね」
「無欲であるべきだね」
「そして気前よくよ」
「あるべきだね」
「そう思うから」
「秀吉さんもお手本にすべきだね」
「いいと思った人や物事は何でもお手本にしないとね」
トロットは笑顔でこうも言いました。
「だからね」
「そうだね、それではね」
「これからは」
「そうしていくよ」
こう言うのでした、そうしてです。
皆で美術館の中にある芸術品を観て回ってお庭も観ました、お庭もとても奇麗でナターシャは言うのでした。
「このお庭もいいですね」
「そうだね」
前ノーム王はナターシャの言葉に頷きました。
「とてもね」
「ずっと観ていたいわ」
「うん、今度わしの家でもね」
「お庭を整えるの」
「そうしようか」
こう言うのでした。
「宮殿のお庭ではないけれどね」
「ガーデニングね」
「それもしてみようか」
「いいと思うわ」
笑顔で、でした。ナターシャは前ノーム王に答えました。
「そちらもね」
「そうだね」
「奇麗なものを観ていると」
「自然に心が奇麗になるね」
「豊かになってね」
そうしてというのです。
「だからね」
「それでだね」
「お庭もね」
「整えるといいね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「どんな植物を植えるか」
考える顔で言う前ノーム王でした。
「それが問題だね」
「そうね、けれどそれを考えることも」
このこともというのです。
「楽しいでしょ」
「そうだね、どんなお庭にして」
「どんな植物を植えるか」
「そうしたことを考えることもね」
「楽しいから」
だからだというのです。
「考えていってね」
「そうさせてもらうよ」
「それではね」
「ええ、それにしてもお庭も奇麗だから」
またこう言うナターシャでした。
「本当に素敵な美術館ね」
「建物も芸術品もよくて」
今度はトロットが応えました。
「そしてね」
「そのうえで」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「お庭もいいっていうね」
「素晴らしい美術館ですね」
「ここはね。だから皆を案内したの」
あまりにも素晴らしい美術館だからです。
「そうしたのよ」
「そうなんですね」
「そう、ではね」
「では?」
「美術館の後は」
それからのこともお話するトロットでした。
「ホテルに入りましょう」
「ホテルですか」
「この街のね、それでね」
今度はというのです。
「ホテルを楽しみましょう」
「そのサービスをですね」
「奇麗で豪華なホテルに入って」
そうしてというのです。
「ご馳走をいただいてお風呂に入ってね」
「素敵なベッドで寝るんですね」
「そうして楽しみましょう。旅でのテントや宮殿で過ごすのもいいけれど」
「ホテルもいいですね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「今夜はですね」
「ホテルに入りましょう」
「わかりました」
ナターシャはトロットの言葉に笑顔で頷きました。
「それじゃあ」
「今夜はね」
「そうさせて頂きます」
「そういうことでね。そのホテルのお風呂にはサウナがあるから」
「サウナですか」
「それも貴女のお国のものよ」
ロシアのサウナだというのです。
「だからそれに入ってね」
「楽しめますね」
「サウナといっても色々だけれど」
「そうなんですよね」
「そのホテルのサウナはそうなの」
「ロシアのものですね」
「そのロシアのサウナに入って」
そうしてというのです。
「楽しみましょう」
「わかりました」
ナターシャはにこりと笑って答えました、クールビューティーな感じのお顔ですが笑顔もとても素敵です。
「それじゃあ」
「今夜はね」
「そうさせてもらいます」
こうお話してでした。
夜は皆でサウナに入ってでした。
ホテルのおもてなしを満喫しました、そして翌朝チェックアウトして街を出てまた旅に入りました、そうしてです。
遂に港町に辿り着きました、港町には潮の香りがして。
漁師の人達が笑顔で働いていて漁船が行き来しています、様々なお店もあります。
潮風を浴びてです、前ノーム王はにこりとして言いました。
「いいね」
「ここがそのね」
「お寿司屋さんがある港町だね」
「そうなの」
トロットは前ノーム王に答えました。
「旅の目的地よ」
「遂に来たんだね」
「これまで楽しい旅だったわね」
「そしてだね」
「そう、いよいよね」
「その目的を果たす時が来たね」
「それでお寿司屋さんもあるけれど」
さらに言うトロットでした。
「ここにはね」
「他の海の幸を使ったお料理のお店があるね」
「沢山ね。和食のお店もあれば」
さらにというのです。
「アメリカ、中国、フランス、イタリア、スペインってね」
「沢山あるね」
「食材も豊富よ」
その魚介類の種類もというのです。
「だからね」
「その全部を楽しめばいいね」
「そうしましょう、まずはね」
トロットはにこりとして言いました。
「アメリカ料理のお店で鱈のムニエルやオマール海老のお料理をね」
「楽しむんだね」
「そうしようかしら」
こう言うのでした。
「まずは」
「いいね、何かね」
前ノーム王はトロットの言葉を受けて言いました。
「海の幸のお話をしていると」
「どうしたの?」
「白ワインも欲しくなったよ」
こちらもというのです。
「どうもね」
「そうなの。それじゃあね」
「ワインもだね」
「楽しみましょう、私達もね」
トロット達もというのです。
「子供でも飲めるね」
「酔うけれどアルコールの入っていないワインをだね」
「楽しむわ」
「そうしてだね」
「海の幸もね」
こちらもというのです。
「楽しむわ」
「それではね」
「それとね」
さらに言うトロットでした。
「ムニエルとかの後は」
「さらにだね」
「ここに何日かいるつもりだから」
それでというのです。
「温泉もあるしそちらも楽しんで」
「色々なお店に行くんだね」
「海の幸を使った点心や海鮮麺もいいし」
中華料理もというのです。
「それでブイヤベースやパエリアやカルパッチョ、パスタもね」
「食べるんだね」
「それでお刺身や天麩羅、お鍋も食べて」
そしてというのです。
「最後にね」
「お寿司だね」
「そうしましょう」
「お寿司は最後だね」
「だって目的地でね」
「それならだね」
「最後の楽しみに置くべきでしょ」
こう前ノーム王に言うのでした。
「だからね」
「ここはだね」
「お寿司は最後よ」
そうしたいというのです。
「海の幸を満喫して」
「それからだね」
「その最後にだよ」
「楽しむんだね」
「それでホタテ貝も牡蠣もクルマエビもオマール海老もあって」
今度は海の幸の種類のお話みしました。
「蛸に烏賊に蟹に若芽にで」
「海草もあるんだね」
「ええ、それでお魚は鱈にね」
先程言ったこのお魚にというのです。
「鮭に鯛、ハマチに鯖に鰻に穴子、鰯、秋刀魚、平目、鰈、鰹、鮪、河豚に鱒、色々あるのよ」
「凄い港町なんだね」
「そうなの、色々獲れるね」
「素晴らしい場所で」
「だから色々な海の幸をね」
「楽しめる場所だね」
「だから」
それでというのです。
「お寿司の前にね」
「色々楽しむんだね」
「そうしましょう」
「平目と鰈両方食べられますか」
クッキーはこのことから言いました。
「そのことも面白いですね」
「そうよね」
「はい、左右対称でいて」
「同じ様な形でね」
「どちらも美味しいんですよね」
「そうなのよね。お刺身にしてもよくて」
平目も鰈もというのです。
「他のお料理にしてもね」
「いいですよね」
「そちらも楽しんで」
そしてというのです。
「ワインもね」
「楽しむんですね」
「そうしましょう、じゃあ今から」
トロットは皆に目をキラキラとさせて言いました。
「海の幸を満喫しましょう」
「そして最後にですね」
「お寿司よ」
それを食べようというのです。
「そうしましょうね」
「是非共」
クッキーも笑顔で応えました。
「ここまで来ましたから」
「それではね」
「皆で」
「何日もかけて」
そうしてというのです。
「楽しみましょう」
「それでは」
「海に出るのもいいし」
クッキーは青い海も見て言いました。
「もうね」
「ここはですね」
「何日も楽しみましょう」
「うむ、そうさせてもらおう」
前ノーム王も喜びながら言います。
「これから」
「貴方もそうしたいのね」
「その為に来たのだ」
それならというのです。
「是非共だよ」
「じっくりと楽しむのね」
「そうしたい、では」
「皆で堪能しましょう」
トロットは前ノーム王にも笑顔で応えました、そうしてです。
皆で海の幸を楽しみはじめました、お寿司を食べる前にまずは他のお料理からでした。