『オズのラゲドー王』
第十幕 ドードー鳥とチェシャ猫
一行は氷の原の中を進みそこも越えました、そして。
さらに先を進むと今度はやたらと上に下にと高低が激しい場所に出ました、草原ですが兎角高くなったり低くなったりしています。
その中の黄色い煉瓦の道を進みつつです、ナターシャは言いました。
「何が上ったり下ったりで」
「普通の道の様でね」
トロットが応えました。
「上下があって」
「歩く距離もありますね」
「ここはそうした場所なの」
トロットが答えます。
「平原じゃないの、けれどね」
「それでもですか」
「山道でもないの」
「その中間みたいな場所ですね」
「丘が幾つも連なっている」
そうしたというのです。
「そうした場所なの」
「それがここですね」
「そう、そしてね」
トロットはさらにお話しました。
「ここにも面白い住人がいるのよ」
「そうなんですか」
「オズの国だからね」
それでというのです。
「ここにもね」
「面白い住人がいるんですか」
「だから会う時を楽しみにしていてね」
「わかりました」
「そういえばそうだったね」
キャプテンはトロットのそのお話を聞いて言いました。
「ここにも面白い住人がいたね」
「そうでしょ」
「オズの国ならではのね」
「さて、どんな人達か」
ビリーナも言います。
「楽しみにしていてね」
「オズの国だから」
ナターシャはこのことから考えました。
「人間とは限らないのよね」
「人間でなくても喋るしね」
このことはカルロスが言いました。
「オズの国は」
「犬も猫もで」
恵梨香も言いました。
「それでかかしさんや樵さんみたいな人達もいるし」
「だからね」
ジョージが続きました。
「住人といってもね」
「色々な人がいるし」
神宝も言いました。
「果たして誰かだね」
「ははは、私もその中の一人だしね」
カエルマンが笑って言ってきました。
「人間でない住人のね」
「わしもだよ」
前ノーム王も言ってきました。
「種族は人間でないよ」
「というか人間だけが住人というのは」
クッキーはオズの世界の人として言いました。
「むしろその方が」
「違和感がありますか」
「はい」
こうナターシャに答えました。
「私としては」
「オズの世界にいますと」
「そう思います」
「それが普通ですからね」
「オズの国では。不思議に満ちていて」
そうしてというのです。
「そして」
「そのうえで、ですね」
「色々な住人がいることも」
「普通ですね」
「ですから」
それでというのです。
「むしろ人間しかいないと」
「その方がですね」
「違和感があります」
むしろというのです。
「どうも」
「そうですか」
「まあね、外の世界のことは知らないが」
それでもとです、前ノーム王が言ってきました。
「オズの国はそうした世界だよ」
「そういうことですね」
「うん、じゃあね」
「これからですね」
「その住人とも会おう」
こうしたことを言ってでした。
一行はトロットに案内され先に先にと進んでいきます、そしてそれまで木がなかった場所だったのに一本の木が見えてきて。
その木の上からです、お口を大きく開けて笑っている黒と黄色の縞模様のとても大きな猫が枝の上に寝転がった状態で言ってきました。
「あんた達何処に行くんだい?」
「貴方まさか」
ナターシャはその猫を見て言いました。
「チェシャ猫?」
「わかるね」
「ええ、その外見を見たら」
まさにというのです。
「間違いないとね」
「わかったんだね」
「そうなの」
「そうさ、おいらはチェシャ猫だよ」
自分から名乗りました。
「宜しくな」
「こちらこそね」
「いや、まさかね」
ナターシャは驚きを隠せない顔でこうも言いました。
「貴方までオズの国にいるなんだ」
「何かあるかい?」
「だって貴方は不思議の国にいるでしょ」
「ああ、アリスって娘のだね」
「そこにいたから」
「あら、ここも不思議の国よ」
ナターシャにポリクロームが言って来ました。
「アリスって娘もいるね」
「ここにあの娘がいるの」
「私はそのことは知らないわ」
ポリクロームはナターシャに答えました。
「彼女のことはね」
「そうなの」
「けれど彼はいるわ」
チェシャ猫はというのです。
「普通にね」
「そうなのね」
「そして他の子達もね」
「いるのね」
「おそらく貴女が考えている人達が」
まさにというのです。
「いるわ」
「そうなのね」
「彼もいてね」
チェシェ猫もというのだ。
「他のね」
「私が思う様な人が」
「ああ、そういえば」
「オズの国はドードー鳥もいるし」
「そしてチェシャ猫がいるなら」
「それなら」
ナターシャ達五人も言いました。
「それじゃあね」
「チェシェ猫以外のアリスさんが出会った人達もね」
「皆いて」
「そして何時か出会える」
「そうなのね」
「まあおいらと会って嬉しそうなのはわかるよ」
チェシャ猫は笑って言いました。
「それでおいらも嬉しいよ」
「貴方もなの」
「そうだよ」
こうナターシャに答えました。
「何よりだよ」
「そうなの」
「ああ、それじゃあおいらの友達も知ってるから」
チェシャ猫はこうも言いました。
「ここにいるね」
「貴方のお友達っていうと」
「ここから少し行けばいるさ」
これがチェシャ猫の返事でした。
「そして会えるさ」
「そうなのね」
「風変りだけれど面白い奴だよ」
こうナターシャにお話します。
「だから会って損はしないよ」
「それじゃあ」
「ああ、先に進みな。あとな」
「あと?」
「おいらも随分有名なんだな」
チェシャ猫はこうも言いました。
「オズの国の外でも」
「かなり有名よ」
ナターシャもこう答えました。
「実際にね」
「そうなんだな」
「アリスって娘のお話に出て来るから」
それでというのです。
「あんたはかなり有名よ」
「そうなんだな」
「それこそ世界的にね」
そこまでというのです。
「あんたは知られているわよ」
「そうか、じゃあアリスって娘もか」
チェシャ猫はすぐに彼女もと察しました。
「世界的に有名か」
「ええ、そうよ」
その通りだというのです。
「あの娘もね」
「そうなるなんてな」
「あのお話が面白いからね」
トロットが言ってきました。
「私もあのお話は読んだわ」
「そうなのかい」
「ええ、だからあんたも知ってるし」
そしてというのです。
「アリスもね」
「知ってるんだな」
「他の人達もね」
アリスの物語に出て来る全ての人達をというのです、トロットはチェシャ猫に対してこのことを笑顔で言うのでした。
「知ってるわよ」
「成程な」
「ハンプティダンプティもジャバウォークもね」
「全部かい」
「スナークは食べたいと思わないけれど」
「ああ、あれは止めておきな」
チェシャ猫も言います。
「おいらも食ったことはないけれど聞いてるぜ」
「スナークの味については」
「聞く限りとてもな」
「美味しいものじゃないわね」
「だからな」
それ故にというのです。
「スナークを食うことはな」
「止めた方がいいわね」
「オズマ姫ながら暴れるバンダースナッチを止められるけれどな」
それでもというのです。
「スナークを食うことはな」
「止めた方がいいわね」
「あれ食うならそうだな」
チェシャ猫は考えてから言いました。
「お寿司がいいな」
「貴方もお寿司が好きなの?」
ポリクロームはチェシャ猫の今の言葉に尋ねました。
「そうなの?」
「ああ、好きだぜ」
実際にとです、チェシャ猫は答えました。
「おいらは猫だから元々魚が好きだしな」
「それでなのね」
「お寿司だって好きさ」
「そうなのね」
「実はわし等はそのお寿司を食べに行くんだよ」
前ノーム王がチェシャ猫に笑って言いました。
「これからね」
「へえ、そうなのかい」
「そうなんだよ」
「それはいいな、じゃあな」
「今からだね」
「楽しんでくるといいさ、そしてな」
チェシャ猫は前ノーム王にその笑顔でこうも言いました。
「ハンプティダンプティみたいな身体になればいいさ」
「卵みたいにかい?」
「丸々としたらな」
「ははは、そういえばお寿司には卵焼きもあるね」
卵と聞いて前ノーム王は笑って応えました。
「そうだったね」
「あれも美味いよな」
「全く以て」
「あんた以前は卵嫌いだったが」
「今は好きだよ」
「食えてだな」
「そうなったのだよ」
笑っての言葉でした。
「わしも」
「それは何よりだな」
「それでお寿司をたらふく食べてだね」
前ノーム王はチェシャ猫にあらためて言いました。
「わしは丸々となればいいんだね」
「そこまで食えばいいさ」
「そうさせてもらおうか」
「おいらもお寿司を食うとな」
「その時もというのです。
「お腹がパンパンになるぜ」
「たらふく食べてだね」
「大好物だからな」
それ故にというのです。
「そうなるぜ、全く以てお寿司は最高だぜ」
「お前さんもそう思うんだね」
「ああ、ああしたものをずっと知らなくてな」
こうも言うチェシャ猫でした。
「残念だぜ」
「それはわしも同感だよ」
「そうか、じゃあ今からだな」
「イッソスの国まで行ってね」
「わかった、じゃあ楽しんで来いよ」
「そうさせてもらうよ」
「是非な、あとな」
「あと?」
「いや、アリスはイギリスの娘だろ」
ここでこのことを言うのでした。
「イギリスのお寿司っていうのもオズの国にあるけれどな」
「そうなのか」
「お寿司といえば日本だけれどな」
「その通りだよ」
キャプテンが答えました。
「お寿司といえば日本のお料理だよ」
「日本のお料理の代表の一つだね」
カエルマンも言います。
「お寿司は」
「そうですね」
クッキーもこう言います。
「まさに日本ですね」
「というかお寿司イコール日本でしょ」
ビリーナは言い切りました。
「もうね」
「それがイギリスにも入ってね」
チェシャ猫は皆に言いました。
「それでイギリスで作られたお寿司がオズの国にもあるんだよ」
「ああ、アメリカにはイギリス文化がかなり入っているしね」
そのアメリカ人のジョージの言葉です。
「そもそもイギリスから独立した国だし」
「同じ英語を喋ってるしね」
中国人の神宝も言います。
「やっぱりイギリスの影響は強いね」
「だから今もだね」
ブラジル人のカルロスの言葉はといいますと。
「イギリス文化がアメリカの中にあるんだね」
「それでイギリスのお寿司もアメリカに入ったのね」
日本人の恵梨香はこう考えました。
「そういうことね」
「オズの国はアメリカが反映されるから」
ロシア人のナターシャの言葉はといいますと。
「それでオズの国にイギリスのお寿司があるのね」
「まあああしたお寿司もあるってことでな」
チェシャ猫は笑ってこう言いました。
「あんた達も目にした時は楽しみにしておけよ」
「お寿司といっても色々なのよね」
ナターシャはチェシャ猫に返しました。
「お国によってね」
「日本の料理でもだな」
「オズの国はアメリカが反映されるけれど」
ナターシャはまたこう言いました。
「アメリカのお寿司もあるけれど」
「あれな、日本のお寿司と違うよな」
「そうなのよね」
「ちなみにおいらは日本のお寿司が好きだぜ」
チェシャ猫自身はそうだというのです。
「お寿司の中でもな」
「そうなの」
「ああ、だからな」
それでというのです。
「今度食う時は楽しみだぜ」
「そうなのね」
「それであんた達はどんなお寿司が好きだい?」
「やっぱり日本のお寿司かしら」
ナターシャは少し考えてから答えました、そして皆もそれぞれ考えてから答えました。そうしてでした。
チェシャ猫は皆にあらためて言いました。
「よくわかったよ、お寿司好きでもね」
「色々と好みがあるわね」
トロットが応えました。
「そうね」
「ああ、ネタの話もするとな」
「尚更よね」
「おいらはカツオが好きだけれどな」
「カツオなの」
「ああ、どのネタも好きだけれどな」
それでもというのです。
「一番はどれかっていうとね」
「カツオなのね」
「そうなんだよ」
舌なめずりをしつつ答えました。
「他のも好きだけれどな」
「特にカツオね、ただね」
「ただ?どうしたんだよ」
「いえ、カツオが好きなんて」
トロットは笑ってこのことについて言うのでした。
「貴方もうイギリスから離れているわね」
「イギリス人カツオ食わないからな」
「食べられることも知らないわね」
「絶対にな」
トロットに笑って応えました。
「あっちの人達は」
「そうよね」
「蛸や烏賊食えることも知らなくてな」
「カツオもね」
「お寿司の他のネタもな」
「大抵のものがね」
「イギリスじゃ食わねえな」
お寿司のネタはというのです。
「鮪もハマチもな」
「そうよね」
「それが日本だとな」
この国ならというのです。
「色々あるしな」
「しらすとかコハダとか秋刀魚もね」
「そうだよ、貝類だって」
「鳥貝とか赤貝とかな」
「ないからね」
「言われてみるとおいらはな」
本当にと言うチェシャ猫でした。
「イギリスからな」
「離れたわね」
「ああ、オズの国に入って」
そうしてというのです。
「楽しく暮らしてるな」
「そうね」
「しかしな」
「しかし?」
「日本人って何でも生で食うよな」
「そうした傾向あるわね」
「そうだよな」
このことを言うのでした。
「お寿司にしろそうでな」
「お刺身だってね」
「日系人いるけれどな、オズの国にも」
「その人達はね」
「お魚好きでな」
「生で食べたがるわね」
「驚いたのはピラルクもだよ」
この巨大なお魚もというのです。
「生でってな」
「あれはね」
「驚いたぜ」
「川魚を生で食べることは外の世界では危ないよ」
神宝が言いました。
「それもかなりね」
「よく火を通して食べないとね」
ジョージも言います。
「川魚は」
「昔は冷凍技術もなかったしね」
カルロスはこのことから言いました。
「外の世界では海沿いでもないと生ものは危なかったね」
「それもうんと新鮮でないと」
恵梨香も言いました。
「危なかったのよね」
「だからお寿司も」
ナターシャはこちらのお話をしました。
「海沿いでないと私達が言うお寿司は食べられなかったのよね」
「そりゃ困るな。おいらの大好物なのに」
チェシャ猫はこう言いました。
「それが海から離れてると食えねえなんてな」
「今は違うしオズの国は元だからから安心してね」
トロットはチェシャ猫に答えました。
「今はね」
「ああ、それじゃあな」
「そういうことでね」
「これからもお寿司楽しませてもらうぜ」
「そうしてね」
「是非な、それとな」
チェシャ猫はさらに言いました。
「ここにはもう一羽皆知ってる奴がいるぜ」
「アリスさんのお話の?」
「ああ、今じゃおいらの友達だぜ」
ナターシャに答えました。
「そいつとも宜しくな」
「君は今一羽と言ったね」
カエルマンはこのことに注目しました。
「そうだね」
「それで誰かわかるかい?」
「アリス嬢の世界で鳥となると」
それならというのです。
「限られるね」
「察しがいいな、あんた」
「二冊とも読んだしね」
カエルマンは笑顔で答えました。
「だからだよ」
「察しがつくんだな」
「不思議の国も鏡の国もね」
アリスにまつわるどちらのお話もというのです。
「知ってるからね」
「それでだな」
「おおよそにしろね」
「そうか、じゃあそいつと会ってもな」
「仲良くだね」
「そうしろよ、おいらはこれから昼寝するからよ」
ここで欠伸をして言うのでした。
「そうするからよ」
「貴方も猫だからお昼寝は好きですね」
「食うことも好きでな」
そうしてとです、今度はクッキーに答えました。
「そしてな」
「寝ることもなんですね」
「そうさ、じゃあな」
「はい、それじゃあ」
「また会おうな」
こう言ってでした。
チェシャ猫はお昼寝に入りました、皆はそのチェシャ猫と別れてそうしてでした。
再び歩きはじめました、暫く歩いていると一行の前にダークブラウンの羽毛で曲がった嘴と丸い目、丸々と太った身体でよちよちと歩く鳥が出てきました。
その鳥を見てです、前ノーム王は言いました。
「あの鳥が」
「そう、さっきチェシャ猫君が言っていたね」
「彼の友達か」
「そうだよ」
キャプテンが答えます。
「ドードー鳥だよ」
「やはりそうか」
「太っていていてね」
そうしてというのです。
「飛べないんだ」
「そうなんだね」
「だからね」
それでというのです。
「ああして歩いているんだよ」
「ふむ、地下にはいない鳥だよ」
「そうなんだね」
「これまた面白い鳥だよ」
こうも言うのでした。
「好きになったよ」
「それは何よりね」
ビリーナも言いました。
「私もあの鳥好きなのよ」
「そうなのかい」
「同じ飛べない鳥だから」
それでというのです。
「好きなのよ」
「そうなんだね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「鶏よりずっと太ってるから」
ビリーナはこうも言いました。
「跳ぶことも出来ないのよね」
「ああ、鶏は跳べるからね」
「飛べないけれど」
それでもというのです。
「跳ぶことは出来るわよ」
「木の上に上がる位はだね」
「それは出来るのよ」
「そうだったね」
「けれどドードー鳥はね」
この鳥はといいますと。
「跳ぶこともね」
「出来ないんだね」
「そうなのよ」
「確かにそうね」
ポリクロームもドードー鳥を見て言いました。
「あの姿だとね」
「跳べないでしょ」
「そうね」
ビリーナに答えました。
「どうしても」
「それがどうなるか」
「問題なのよ」
「そうよね」
「外の世界だと」
ビリーナはこうも言いました。
「相当安全な場所でないと」
「暮らせないわね」
「そうした鳥よ、ねえあんた」
ビリーナはどのドードー鳥に声をかけました。
「今暇?」
「うん、暇だよ」
ドードー鳥も答えました。
「それでお散歩をしているんだ」
「そうなのね、あと悪いけれど」
「どうしたのかな」
「さっきあんたのお話をしたわ」
ビリーナはドードー鳥にお話しました。
「あんたが太ってて跳べないことをね」
「事実だからいいよ」
ドードー鳥はビリーナに答えました、もう皆の前に来て随分と人懐っこい感じでお話に入っています。
「そのことはね」
「そうなのね」
「僕はそうした身体でね」
「跳べないのね」
「その通りだからね」
「では外の世界では相当安全でないと暮らせないこともかな」
前ノーム王が言ってきました。
「いいのかな」
「全部事実だからね」
「いいんだね」
「うん、聞いても悪いと思わないから」
だからだというのです。
「いいよ」
「そうなんだね」
「それで快適に暮らしているから」
「ここでだね」
「いいよ、お友達もいるしね」
「チェシャ猫氏だね」
「そうだよ、いつも仲良く暮らしているよ」
こう言うのでした。
「美味しいものを沢山食べてね」
「それは何よりね。それでだけれど」
ビリーナはドードー鳥にあらためて言いました。
「ちょっといいかしら」
「どうしたのかな」
「あんた今度私の国に来る?」
ビリーナが女王を務める鶏の国にというのです。
「国賓として」
「僕が国賓!?」
「ええ、同じ飛べない鳥だからね」
だからだというのです。
「私が親しみを感じるからね」
「sろえでなんだ」
「あんたがよかったら」
それならというのです。
「一度ね」
「君の国にだね」
「来たらいいわ、だからね」
それでというのです。
「どうかしら」
「僕が国賓なんて」
「私がいいって言ってるのよ」
ビリーナの声はわらっているものでした。
「だからね」
「それでなんだね」
「あんたがよかったら」
それならというのです。
「来てね」
「そう言うならね」
「ええ、来てね」
「その時はチェシャ猫君もいいかな」
ドードー鳥はお友達の名前も出しました。
「そうしていいかな」
「勿論よ、じゃあその時はね」
「うん、一緒にね」
「私の国に来てね」
「そうさせてもらうね」
「私と旦那、王様で迎えて」
国家元首のご夫婦でというのです。
「子供達や孫達、曾孫達でね」
「迎えてくれるんだ」
「自慢だけれど皆私の家族よ」
ビリーナは胸を張って言いました、鶏なので元々突き出ている胸が普段以上に突き出されています。
「だからね」
「それでだね」
「皆でお迎えするわね」
「賑やかになりそうだね」
「ご馳走も用意するわよ」
こちらもというのです。
「その時は」
「美味しいものもなんだ」
「そうさせてもらうわ」
「ではだね」
「待っているわよ」
「機会を見てそうさせてもらうね」
「宜しくね」
二羽は親しくお話をしました、そしてです。
トロットはドードー鳥を見て言いました。
「貴方もアリスは知ってるわね」
「うん、知ってるよ」
その通りという返事でした。
「彼女のことはね」
「やっぱりそうよね」
「何かいつも走ってお話をしているね」
「物語の中ではそうよね」
「せわしない娘だね」
「あの娘は基本そうよね」
「僕が見る限りね、まあね」
ドードー鳥はこうも言いました。
「僕はマイペースだから」
「そう見えるかも知れないっていうのね」
「それだけかも知れないね」
「そうも思うのね」
「うん、ただ面白い娘だね」
アリスについてもこうも言うのでした。
「純粋で物怖じしないでね」
「それで好奇心旺盛でね」
「面白い娘だね」
「私もそう思うわ」
トロットはドードー鳥に笑って答えました。
「あの娘はね」
「面白い娘だね」
「お伽の国に相応しい娘だわ」
「全くだね」
「あれっ、といいますと」
ナターシャは今のトロットとドードー鳥のやり取りにはっとなってそのうえでトロットに対して尋ねました。
「アリスも」
「そうよ、オズの国にいるのよ」
「そうなんですね」
「ルイス=キャロルさんもね」
この人もというのです。
「今はね」
「オズの国におられるんですね」
「それでいつも数学や物理をして」
そうしてというのです。
「小さな女の子と遊んでいるの」
「私達にアリスを紹介してくれた人も」
「オズの国におられるのよ」
「そうなんですね」
「そしてね」
トロットはさらにお話しました。
「あの人紅茶が大好きなのよ」
「イギリスの方だからですね」
「もういつもね」
「紅茶を飲まれてるんですね」
「そうなのよ」
「そうした人ですか」
「だからキャロルさんとお会いしたら」
その時はというのです。
「一緒に紅茶をね」
「楽しめばいいですね」
「そして小さな子供特に女の子が好きだから」
先程お話した通りにというのです。
「貴女も恵梨香もね」
「仲良くなれますか」
「そうなれるわよ、私達にも親切だから」
それでというのです。
「貴方達ともね」
「仲良くなれますか」
「ええ、ただボタン=ブライトにはよく言うわ」
「何てですか?」
「いつもいきなり出て来るってね」
「あの子の特徴ですね」
「寝ている状態で出て来るから」
それでというのです。
「それが困るって少し苦笑いでね」
「言ってますか」
「ええ、けれど彼ともね」
そのボタン=ブライトともというのです。
「仲がいいのよ」
「そうなんですね」
「子供好きの紳士よ」
それがルイス=キャロルさんだというのです。
「小さな子が好きでね」
「それでウィットに富んでいるよね」
ドードー鳥も言ってきました。
「ユーモアもあって」
「そうなのよね」
トロットはドードー鳥に応えました。
「言葉遊びも好きでね」
「もうそれがね」
その言葉遊びがというのです。
「いつも絶妙なんだよね」
「ええ、本当にね」
「あの言葉遊びもね」
「素敵よね」
「僕も楽しんでいるよ」
「言葉遊びも楽しいわよね」
「そうだよね」
ドードー鳥は笑顔で言いました。
「駄洒落とかね」
「そういえば」
カエルマンはここで言いました。
「キャロルさんはそちらでもだよ」
「有名だね」
「うん、私もね」
カエルマンにしてもというのです。
「あの言葉遊びには唸るよ」
「それで詩なんかも」
「そうそう、ウィットに富んでいてね」
「味わいがあるよね」
「全くだよ」
「そして駄洒落も」
こちらもというのです。
「あの人は凄いんだよね」
「私も思うよ、私も言葉遊びには興味があるしね」
だからだというのです。
「お手本にとね」
「考えているんだ」
「そうなんだよ」
こうドードー鳥に答えました。
「私も」
「言葉遊びか」
前ノーム王はそのことに興味を持ちました。
「詩にしても駄洒落にしても」
「そう、キャロルさんはそちらも上手なんだ」
「子供が好きで数学や物理もで」
「そしてなんだよ」
「言葉遊びもだね」
「いつも紅茶を飲みながら」
そうしつつというのです。
「楽しんでいるんだ」
「成程ね、一度会ってみたいね」
「そうしたらいいよ、想像力も豊かでね」
このこともあってというのです。
「あの人もまたオズの国に来るべくして来た」
「そうした人なんだね」
「そうなんだよ」
「成程、では」
あらためて言う前ノーム王でした。
「キャロル氏にもだよ」
「会うね」
「そうするよ、旅を続ける中で」
「そうしたらいいよ」
「是非ね」
「ううむ、したいこと好きなことがどんどん出て来て」
前ノーム王は両手と両足をまるでダンスを踊る様に動かして言います、気分がよくなってそうしているのです。
「わしは楽しくて仕方ないよ」
「僕もだよ」
ドードー鳥も言ってきました。
「オズの国にいるとね」
「そうなるんだね」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「この国にいてね」
「いいんだね」
「これこそ幸せだよね」
こう前ノーム王に言うのでした。
「本当に」
「確かに」
前ノーム王はドードー鳥の言葉に頷きました。
「わしもそう思うよ」
「そう言う貴方も幸せだね」
「幸せだよ、しかしこれ以上ないと思っても」
その幸せがというのです。
「これがね」
「思ったその傍からだね」
「もっと幸せになるから」
だからだというのです。
「凄いものだ」
「全く以てそうだよね」
「そう思う、お前さんも同じというと」
「何かな」
「どうもわしもお前さんと気が合いそうだな」
ドードー鳥に笑って言いました、それも気さくそうに。
「これは」
「僕もそう思うよ」
「ではわし等は友達になれるな」
「そうだね」
「わしはずっと友達なんていなかった」
王様だった時はです。
「そしていらんとも思っていたが」
「今はどうかな」
「沢山いてしかももっともっとだよ」
「いて欲しいんだ」
「そう思っておる、悪いことを企んでするよりも」
それよりもというのです。
「沢山の友達に囲まれていて」
「幸せに包まれている方がだね」
「遥かにいい」
こう言うのでした。
「今のわしはそう思っておる」
「その通りだよね」
「全くだ、ではわしは今からお前さんと友達になっていいか」
「勿論だよ」
ドードー鳥は前ノーム王に満面の笑顔で答えました。
「それじゃあこれからはね」
「わしとお前さんは友達だ」
「そうなったね」
「これでわしはまた幸せになった」
笑顔での言葉でした。
「何よりだよ」
「貴方はどんどん幸せになっていくわね」
トロットもその前ノーム王に言いました。
「オズの国にいればいるだね」
「全くだ、満足してもさらに満足出来る」
「それがオズの国でね」
「わしはその中にいるんだ」
「そうね、じゃあもっと幸せになる為に」
まさにその為にというのです。
「イッソスの国にね」
「行くとしよう」
「皆でね」
「じゃあまた会おうね」
ドードー鳥は笑顔で応えました。
「機会があれば」
「そうしよう」
前ノーム王が応えました。
「是非」
「それじゃあね」
ドードー鳥ともです、一行は笑顔で応えました。そうしてでした。
一行はさらに先に進んでいきます、そして次の日トロットは皆に言いました。
「あと少しでイッソスの国よ」
「そうなのね」
「ええ、だからね」
ポリクロームに応えます。
「目的地もね」
「近いわね」
「あと少しでお寿司を食べられるわよ、ただ」
「ええ、私はお露だけを頂くから」
ポリクロームは自分のことをお話しました。
「だからね」
「私達が食べているのを見るだけね」
「お茶は飲めるから」
それでというのです。
「そちらをね」
「わかったわ、実はお寿司屋さんはお茶もいいから」
「そのお茶を飲めばいいわね」
「そちらを楽しんでね」
「わかったわ、そうさせてもらうわ」
ポリクロームも楽しむことになりました、そして一行は遂にイッソスの国に入りました。お寿司屋さんのあるその国にです。