『オズのラゲドー王』




                第三幕  プレーリードッグの街

 一行は草原の中を進みそのうえで山麓まで来ました、山は緑の木々に覆われています。
 トロットはその山を見上げつつナターシャ達五人にお話しました。
「この山脈の向こうからギリキンになるの」
「そうなんですね」
「だから木は緑色なんですね」
「それでこの山の向こうはギリキンで」
「全部紫になるんですね」
「そうなるんですね」
「そうなるのよ」 
 こうお話するのでした。
「そのことはわかっておいてね」
「わかりました」
「丁度エメラルドの都とギリキンの境ですね」
「そこにある山なんですね」
「じゃあ街を通ったら」
「そこはギリキンですね」
「そのギリキンの北の端にイッソスの国があるわ」
 目的地のお話もしました。
「皆もそのことは知っているわね」
「はい、知ってます」
「前にもあの国に行きましたし」
「よく知っています」
「それじゃあまずはですね」
「山の中に入りますね」
「そうするわ、そして」
 トロットはさらに言いました。
「街の中を見て回るわよ」
「実は私はここに来たことがないんだ」
 ここでカエルマンが言ってきました。
「プレーリードッグの街の中には」
「そうなのね」
「だから今から入るのが楽しみだよ」
 トロットににこにことしてお話しました。
「とてもね」
「そうなのね」
「すぐに中に入ろう」
「ええ、そうしましょう」
「では入口は何処かな」 
 カエルマンはトロットに周りを見回しながら言いました。
「それで」
「あの穴だね」
 キャプテン=ビルは山の麓にある大きな穴を見て言いました。
「あそこがだよ」
「入口だね」
「そう、プレーリードッグのね」
「草原の終わりにあるね」
「そうだね、ではね」
「あそこからだね」
「中に入るんだ」
 そうなるというのです。
「そうだね」
「そうよ、あそこから中に入るのよ」
 トロットが二人に答えました。
「だからね」
「今からだね」
「中に入るんだね」
「そうよ、そしてね」
 トロットはさらに言いました。
「穴は実は緩やかな下り坂だから」
「落ちるんじゃないのね」
「そうなの。だから安心してね」 
 トロットはクッキーにも答えました。
「安全だから」
「わかったわ。じゃああの穴からね」
「街に入りましょう」 
 こうお話してでした。
 皆は草原の終わりそして山のはじまりにある穴に入りました、穴はトロットの言う通りに穏やかな坂道で。
 中は暗くありませんでした、ビリーナは穏やかな白い光に包まれている自分達を見回して言いました。
「地下なのに明るいわね」
「ヒカリゴケのお陰ね」
 トロットは中のあちこちに生えているそれを見て言いました。
「それで天井にもね」
「灯りがあるわね」
「ええ、蛍光灯がね」 
 見ればそれが定期的に置かれています。
「あるから」
「だからなのね」
「そう、それでね」
「この街は明るいのね」
「そうなの」
「成程ね、地下街みたいなものね」
「そうね」 
 トロットはビリーナの言葉に頷きました。
「言うなら」
「まさに街ね」
「ええ、それじゃあね」
「この街をなのね」
「歩いていきましょう」
 こうお話するとでした。
 人間の子供位の大きさのエメラルドの都の服を着たプレーリードッグ達が皆の周りにいる場所に入りました。
 その彼等を見てナターシャはトロットに尋ねました。
「このプレーリードッグ達がですね」
「そうよ、この街の人達よ」
 トロットはこう答えました。
「この人達がね」
「そうですね」
「あれっ、トロット王女じゃないか」 
 プレーリードッグの一人がトロットを見て言いました。
「来てくれたんだ」
「そうなの。これからイッソスの国に行くけれど」
 トロットはそのプレーリードッグに笑顔で答えました。
「その途中にね」
「この街を通るんだね」
「それでお邪魔したの」
「成程ね、それじゃあね」
 プレーリードッグはそのお話を聞いて頷きました。
「楽しんでいってね」
「そうさせてもらうわ」
「それで他の人達も来てくれたんだ」
 プレーリードッグは一行も見て言いました。
「そうなんだね」
「そうよ、トロットと一緒にイッソスの国に行くのよ」
 今度はビリーナが答えました。
「私達はね」
「そうなんだね」
「ええ、じゃあ私達もこの街を楽しんでいいかしら」
「思う存分ね。今も街には色々な人達が来ているしね」
「ドワーフやノームやダークエルフの人達ね」
「その皆もいるから」
 だからだというのです。
「その人達ともお話をしてね」
「それじゃあね」
 こうしたお話をしてでした。
 皆は街の中を見て回ることにしました、街は通路とそれぞれの区画がつながっていました。そしてその区画はです。
 それぞれ市場やホテル、食堂、休息場になっています。それぞれの場所に多くのプレーリードッグ達がいてです。
 それぞれものを売ったり買ったり食べたり寝ています、その中にはドワーフやノームやダークエルフ達もいて。
 皆それぞれ楽しんでいます、ナターシャはその街を見回って言いました。
「何か迷路みたいね」
「アメリカでもプレーリードッグはこうした街を造っているんだ」 
 アメリカ人のジョージが答えました。
「プレーリーの下でね」
「それぞれの区画が通路とつながっているんだよね」 
 神宝も言います。
「暗いことは違っても」
「それで大勢のプレーリードッグが暮らしているんだね」
 カルロスも言ってきました。
「外の世界のアメリカでも」
「それでオズの国ではこうしたプレーリードッグの街もあるのね」
 恵梨香はその中を見回しています。
「そうなのね」
「そうね。こうした街もある」
 ナターシャはあらためて言いました。
「オズの国にはね」
「そういうことよ」
 トロットもそうだと答えます。
「要するにね」
「そうですね」
「ええ、それとね」
 トロットはさらに言いました。
「他の国とも地下でつながっているから」
「色々な人が来ていますね」
「そうなのよ」
 そこにいるドワーフやノーム、ダークエルフの人達を見てお話しました。
「ここはね、それじゃあご飯もね」
「ここで、ですね」
「頂きましょう」
「そうしますね」
「ちょっと何を食べるかは」
 これはといいますと。
「まだね」
「考えていないですか」
「まだね」
「そうですか」
「何を食べようかしら」
 トロットは首を傾げさせながらさらに言いました。
「お昼は」
「この街の名物でいいでしょ」 
 ビリーナが提案してきました。
「そうしたらいいでしょ」
「そうなのね」
「折角この街に来たから」
 だからだというのです。
「ここはね」
「お店に行って」
「それで食べればいいですね」
「そうしたらどうかしら」
「そうね、じゃあそうしましょう」
 トロットも頷いてでした。
 皆で実際にです、市場の一つ食べものや飲みものの屋台が連なっているそこに入りました。するとです。
 フランクフルトやハンバーガー、チキンナゲット、ホットドッグにスパゲティ、アイスクリームやクレープが売られています。その他にもです。
 お饅頭や唐揚げ、茶卵、焼きそば、たこ焼き、お好み焼き、たい焼き、ケバブもあります。そしてです。
 そのどれにもでした。
「あっ、ナッツ類かチーズが入っているのね」
「僕達もげっ歯類だからね」
 ハンバーガーのお店にいるプレーリードッグが言ってきました。
「だからね」
「それでなのね」
「ナッツ類やチーズはね」
 見ればそうしたものだけを売っているお店もあります。
「欠かせないよ」
「そうなのね」
「だからそうしたものをね」
「食べて」
「そして楽しんでね」
「そうさせてもらうわ」
 トロットは笑顔で応えました、そしてです。
 皆それぞれの屋台のものを食べました、どれにもナッツ類やチーズが入っていて独特の味がします。
 チーズがたっぷり入ったスパゲティボロネーゼを食べてです、ナターシャは言いました。
「大蒜も沢山入っていて」
「その食感もいいわね」
「はい、特にチーズが」
「たっぷり入っていてね」
「物凄く美味しいです」
 トロットに食べながら言いました。
「本当に」
「私は焼きそばを食べているけれど」
 おソースのそれです。
「ほら、もやしが入っているけれど」
「もやしの先がお豆になってますね」
「これがまたね」
「美味しいですね」
「こうしたお豆つまりナッツやチーズが一杯入っていると」
「美味しいですね」
「これはいいわね」
 プレーリードッグのお料理はというのです。
「本当に」
「はい、ここのお料理がこんなに美味しいなんて」
「思わなかったわね」
「そうですね」
「味付けは濃い方かしらね」
「プレーリードッグはいつも動き回ってるからね」 
 焼きそばの屋台の店員のプレーリードッグが言ってきました。
「いつも元気にね」
「だからなのね」
「そう、塩分が欲しくてね」 
 それでというのです。
「味付けは濃いんだ」
「そうなのね」
「この街の料理はね」
「いや、実に美味いよ」
「全くよ」
 ハンバーガーを食べているドワーフの男の人とダークエルフの女の人が笑顔で言ってきました。本当に美味しそうに食べながら。
「ここのお料理は」
「ナッツやチーズが利いていてね」
「とても美味しいわ」
「幾らでも食べられそうよ」
「時に甘いものがよさそうね」
 トロットは屋台を見て思いました。
「これは」
「そうですね」 
 ナターシャもそれはと頷きました。
「見てみますと」
「そうね、じゃあね」
「最後はですね」
「甘いものだけれど」
「そちらも楽しみですね」
「かなりね。甘いものにナッツ類やチーズがあると」
 トロットはにこにことして言いました。
「余計にいいわね」
「はい、そういえばここに来る前のお昼で」
 ナターシャはここでこのことを思い出しました。
「チーズ食べましたね」
「それでチーズのお話したわね」
「そうでしたね」
「そう考えるとチーズはいい食べものね」
「本当にそうですね」
「そしてナッツ類もね」
 こちらもというのです。
「かなりね」
「甘いものに合いますね」
「おはぎやずんだ餅なんて」
 トロットは日本のこのお菓子もお話に出しました。
「そのものでしょ」
「お餅を大豆や枝豆を潰したもので包んでいるので」
「ナッツそのものよね」
「そうですね」
「おっ、そうしたお菓子のお話をするとはいいね」
 ここで職人みたいな感じのプレーリードッグが言ってきました。
「実はそっちの店もあるんだよ」
「そうなのね」
「ここだよ」
 市場の中にそうしたお店がありました。
「おはぎもずんだ餅もあるよ」
「お豆を使っているからなのね」
「当然そうしたお菓子もあってだよ」
 そうしてというのです。
「皆で食べているさ」
「そうなのね」
「そう、そして」
 さらに言うのでした。
「何を食うんだい?」
「そうね」 
 トロットはここでお店の商品を見ました、おはぎにずんだ餅が沢山並べられていてどれも美味しそうです。
「ずんだ餅にしようかしら」
「そちらだね」
「クレープとかアイスも頂くけれど」
「ずんだ餅もだね」
「頂くわ」
「よし、じゃあ食べるといいよ」
「そうさせてもらうわ」
 そのプレーリードッグに笑顔で応えました。
「そちらをね」
「そういうことでね」
 こうしてでした、皆はずんだ餅も食べました、そうしてです。
 クレープやアイスも楽しみました、皆お昼を食べ終わるとすっかり満腹になりました。それでなのでした。
 トロットは皆に笑顔で言いました。
「じゃあお腹一杯になったし」
「引き続いて街の中をだね」
「ええ、見て回りましょう」
 キャプテンにこう返しました。
「そうしましょう」
「食べたからにはね」
「その分楽しく身体を動かす」
「そういうものだね」
「そう、だから」
「引き続いて」
「この街の中を見て回りましょう」
「それじゃあね」
 こうして皆でプレーリードッグの街をさらに見て回っていきました、街はとても広くて一行は夕方まで歩きましたが。
 一日では周りきれませんでした、それでホテルに泊まったのですが。
 お風呂に入ってその後でディナーとなってです、トロットはナッツとチーズがふんだんに使われたご馳走を食べつつ皆に言いました。
「明日もね」
「街を見て回るんだね」
「そうしましょう、山の中全体を使っていて」
 カエルマンにチーズを上に乗せたハンバーグを食べつつ言いました、溶けたチーズとハンバーグの組み合わせが最高です。
「それで地下にも拡がっているから」
「物凄い広さだからね」
「一日じゃね」
 とてもというのです。
「回れないわ」
「そうだね」
「あの、通路だけれど」
 トロットはこちらのお話をしました。
「全部緩やかな坂道でまっすぐなところも多くて」
「進みやすいわね」
「しかも天井も広くて」
 それでというのです。
「緩やかに進んで行けるわ」
「そうよね」
「けれど不思議ね」
 ビリーナはピーナッツを食べながら言ってきました。
「町全体が天井がかなり高いから」
「プレーリドッグの人達の大きさよりもね」
「遥かに高いでしょ」
「ええ、それはどうしてか」
「それはです」 
 ホテルのボーイをしているプレーリードッグが言ってきました、トロットの為に傍に立って控えていたのです。
「天井が高い、広い方がいざという時に大勢の人が一度に動けるので」
「狭いと詰まるわね」
「そうです、私達は今は二本足ですが」
 それで移動しているけれどというのです。
「四本でも動けます」
「だからなのね」
「はい、ですから」
「いざという時は広い場所を四本で一気に走って」
「移動します、速く進んでしかも足には爪があるので天井を走っても」
 そうしてもというのです。
「進めますから」
「一度に大人数がすぐに移動出来る様に」
「通路も広くて天井が高くて」
「転げたりしない様に急でもないのね」
「そうした造りです」
「そうなのね」
「それで通路に合わせて」
 その広さにです。
「それぞれの区画もです」
「広いのね」
「そうなっています」
「よく考えているのね」
「出来る限り広い造りにして」
 そうしてというのです。
「いざとなるとすぐに皆動けて」
「安全な様にもなのね」
「しています」
「成程ね」
「それがこの街です」
「普通のプレーリードッグの街じゃないわね」
「草原の中でなくて山の中にありますから」 
 だからだというのです。
「そうなっています、それに」
「それに?」
「出入口は一つでなくて」
「そうなの」
「幾つもあって山に出る穴もです」
 出入り口もというのです。
「幾つもあります」
「そうなのね」
「だから行き来は楽ですよ」
 山の方にもというのです。
「これが」
「じゃあ山にも出て」
「私達は基本草原ですが」 
 そこで暮らしているけれど、というのです。
「山に出ることもです」
「あるのね」
「そうなんです」
 トロットに笑顔でお話しました。
「そして美味しいものもです」
「採っているのね」
「そうもしています」
 こうトロットにお話するのでした。
「私達は」
「そのこともわかったわ」
「左様ですか」
「ええ、それとね」
 トロットはハンバーグを食べながら尋ねました。
「お酒もあるのよね」
「ワインが好きです」
「やっぱりそれは」
「私達はナッツ類とチーズが好きなので」
 それでというのです。
「ワインはそうしたものに合いますね」
「かなり」
「ですから」
「飲むお酒はワインが多いのね」
「はい」 
 そうだというのです。
「勿論他のお酒もありますが」
「成程、そうなっているのね」
「それで飲まれますか」   
 一向にこう聞いてきました。
「皆さんは」
「私達は子供が飲める酔えるだけのもので」 
 トロットはまず自分達のことをお話しました、オズの国ではアルコールは入っていませんが飲むと酔うお酒もあるのです。
「キャプテンさん達大人の人にはね」
「普通のお酒をですね」
「ええ、出してくれるかしら」
「それでは」
「お酒があって」 
 そしてというのです。
「それに合うものがあるなら」
「それならですね」
「飲ませてもらうわ」
「それでは」
「確かにナッツ類やチーズがあれば」
 トロットは笑顔で言いました。
「ワインが欲しいわね」
「そうなりますね」
「だから」 
 それでというのです。
「是非ね」
「飲まれますか」
「そうさせてもらうわ」
「それでは」
「お願いね」
 こうしてでした、皆はワインも楽しむことになりました。ナッツ類やチーズが入っているお料理にワインは確かに合っていて。
 物凄く美味しかったです、それでカエルマンは飲みながら言いました。
「これこそ最高の幸せだよ」
「全くだよ、美味しいワインを飲んで」
 そしてとです、キャプテンも応えました。
「やはり美味しいナッツやチーズが入った料理を食べる」
「最高の組み合わせだね」
「全くだよ」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「これは幾らでも飲んでね」
「食べられるね」
「胡桃とチーズがありますと」
 ここでこう言ったのはクッキーでした。
「もうそれだけで」
「ワインは飲めるね」
「そうなんだよね」
「そうね、ワインはね」 
 ビリーナも鳥用のお皿からワインを飲んで楽しんでいます。
「最高の飲みものの一つね」
「そう、だからね」
「今夜は楽しもう」
「そうしましょう」
「いい飲み方をされていますね」
 ボーイのプレーリードッグがここで言ってきました。
「上品で飲む量も多くて」
「私は気取り屋だからね」 
 カエルマンが笑ってこう答えました。
「上品かというと」
「いえ、そうですよ」
「そうだといいけれどね」
「はい、それで昨日なのですが」
 ここでボーイはこうも言いました。
「面白いノームの方が来られまして」
「ノームの?」
「そうです、ワインのボトルを十本空けられまして」
「十本は凄いね」
「相当に飲まれて」
 そしてというのです。
「お礼と宝石、大きなアメジストをです」
「置いていったんだ」
「これには驚きましたが何でも宝石でお家を造られているとのことで」
「宝石で、それは凄いね」
 オズの国でもとです、カエルマンもこのお話には驚きました。
「そんなお家なんて」
「そうですね、それでなんです」
「そのノームの人はなんだ」
「気前よくです」
 そうしてというのです。
「置いて行かれました」
「そうなんだね」
「ノームっていうと」
 ここでナターシャが言いました、白いお肌がワインを飲んで真っ赤になっています。このことは他の子達も同じです。アルコールはないですが酔っていてそうなっています。
「ラゲドーさんかしら」
「あの人が有名ね」
 恵梨香が応えました、ワインを飲みながら。
「やっぱり」
「カリフ王もだけれど」
 ジョージはチーズを食べつつ言いました。
「オズの国のノームというと」
「あの人が一番有名だからね」
 神宝は胡桃を食べながら言いました。
「自然と名前が出るね」
「そういえばあの人今はオズの国で陽気に暮らしていて」
 カルロスはソーセージを口にしています、見ればソーセージにサラミ、クラッカーといったものもあります。
「お家もあるね」
「あの人かしら」
 ナターシャは考えながら言いました。
「そうなのかしら」
「可能性はあるわね」
 トロットが答えました、この娘も真っ赤になっています。
「オズの国は旅が盛んだからね」
「好きな人も多いですね」
「だからね」
 それでというのです。
「あの人がここに来ていても」
「有り得ますね」
「そうよ。特にノームは地中で暮らしていて」
「地中が好きですね」
「それでここに旅で来ていても」
 それでもというのです。
「おかしくないわよ」
「有り得ますね」
「そうよ」
 実際にというのです。
「そうしていてもね」
「そうなんですね」
「ただそのワインを十本空けた人がラゲドーさんか」 
 このことはといいますと。
「わからないわ」
「まだですね」
「そのことはね」
「ノームの人も多いですし」
「何百万かおられるわよ」
「そう言うと多いですね」
「オズの国には色々な人がおられるわね」
 トロットはチーズを食べてからナターシャにお話しました。
「そうね」
「はい、沢山の国があって」
「人間でもね」」
「色々な人がおられますね」
「オズの国はアメリカが反映されるから」
 そうした国だからだというのです。
「白人の人もアフリカ系の人もラテン系の人もアジア系の人もね」
「おられますね」
「ネイティブの人だってね、そして人間族以外にも」
「そのノームの人に」
「エルフ、ドワーフ、ホビット、ダークエルフ、リザードマンと」
「他にもですね」
「人魚もフェアリーもで」
 人間以外の種族のお話もしました。
「本当に色々な人達がいるから」
「ノームの人達にしても」
「何百万とおられるから」 
 そこまで多いからというのです。
「それでね」
「ラゲドーさんとは限らないですね」
「そうなの」
 こうお話するのでした。
「確かに私達の中では一番の有名人でも」
「あの人以外の人の可能性もありますね」
「ええ、それにノームの人達はお酒も好きだし」
「ワイン十本空ける人もですか」
「おられると思うわ」
「そうですか、じゃあそのノームの人にお会い出来たら」
「その時に確めればいいわ」
 そのノームが誰かです。
「そうすればね」
「そうですか、それでは」
「ええ、今はね」
「ワインを飲んで」
「楽しみましょう」
 言いつつさらに飲むトロットでした、こうしたお話をしつつです。
 皆この夜も楽しんで、でした。朝は起きるとまずは皆それぞれお風呂に入りました。そうしてからでした。
 朝ご飯を食べてからホテルを出ました、それでまた街の中を歩いているとそこで街の人達が噂しちました。
「いや、明るくて陽気で」
「実に気さくなノームさんだったね」
「しかも気前もいいし」
「宝石ぽんと出してくれるし」
「あんないいノームさんいないよ」
「本当にね」
「ホテルにいたノームさんね」
 こうしたお話をしていました、そのお話を聞いてです。
 クッキーは首を傾げさせて言いました。
「ワインを十本空けたっていうノームさんね」
「間違いないわね」
 ビリーナも言いました。
「その人は」
「そうね」
「さて、どんなノームさんかしら」
「お会いしてみたくなったわ」
「尚更ね」
「ええ、本当に誰かしら」
「本当に気になるわ」
 ここで、です。ビリーナは。
 ふと閃いたお顔になってこう言いました。
「このまま歩いていけばね」
「街の中を?」
「そう、目立つ人みたいだから」
 それでというのです。
「街中を歩いていけばね」
「見付かるかしら」
「きっとね」
 こう言うのでした。
「そうなるわ」
「目立つ人は自然と見付かるよ」
 カエルマンは陽気に言いました。
「それは事実だね」
「そうでしょ」
「私にしろそうだしね」
「ええ、あんたも目立つわ」
 ビリーナはカエルマンにお顔を向けて答えました。
「それもかなりね」
「そうだね」
「大きな蛙でその服装だから」
「お洒落かな」
 ここでいつもの気取りを見せるカエルマンでした。
「いつも通り」
「ええ、ただね」
「目立つことはだね」
「事実でしょ」
「自覚しているよ」 
 その黄色のタキシード姿で答えます。
「そのことも考えてのファッションだしね」
「そうよね」
「だからね」
 それでというのです。
「目立つことは何よりだよ」
「それでそのノームさんもね」
「目立つみたいだしね」
「街中を歩いていると」
「自然と見付かるね」
「だから観光を続けて」
 そうしてというのです。
「歩いていればね」
「いいね」
「そう思うわ」
 こうお話してでした、皆はです。
 このまま歩いてそうしてでした、観光を楽しんでいました。観光を楽しみながらそのノームと出会うのを待っていましたが。
 ふとです、テーマパークの中で、でした。ホビットのカップルがアイスクリームを食べながらお話をしているのが聞こえてきました。
「コーヒーカップにいたノームさんは」
「随分楽しんでいたわね」
「明るく笑っていて」
「賑やかだったし」
「見ているこっちもね」
「楽しくなったわ」
 こうしたお話をしていました、そのお話を聞いてでした。
 ビリーナはすぐにトロットに言いました。
「その噂のね」
「ノームさんね」
「間違いないわね」
「ええ、じゃあね」
「コーヒーカップのところに行きましょう」
「それがいいわね」
 プレーリードッグの従業員達のいるそこでお話しました。
「それじゃあね」
「今から行きましょう」
 こうお話してでした。
 すぐにコーヒーカップのところに行きました、ですが。
 ノームは誰もいません、それでキャプテンは言いました。
「別のところに行ったみたいだね」
「ええ、けれどね」
 トロットはキャプテンに応えました。
「まだこの近くにおられるわ」
「そうね、それじゃあ」
「ここはね」 
 是非にというのです。
「近くを探しましょう」
「それがいいわね」
「さて、この近くは」
「ジェットコースターの乗り場があるわね」
 トロットはそれを見ました。
「もうコースターは走ってるから」
「それに乗ったのかしら」
「そうかも知れないわね」
「じゃあどうしようかしら」
「コースターの従業員の人にお話を聞こう」
 こう言ったのはキャプテンでした。
「そのノームさんが来たか」
「そしてコースターに乗られたか」
「そのことをね」
「聞けばいいわね」
「そして若し乗られたなら」 
 その時はというのです。
「コースターが戻って来るのを待てばいいよ」
「そういうことね」
「そう、ぞれじゃあね」
「これからね」
「コースターのところに行こう」
「そうしましょう」
 トロットも頷いてでした。
 それですぐにコースター乗り場に行ってそこで従業員の人にお話を聞くことにしました、するとです。
 スタッフの人は笑顔でこう答えました。勿論この人もプレーリードッグです。テーマパークの制服を着ています。
「はい、物凄く明るいノームさんですね」
「ええ、その人が来られたのね」
「今コースターに乗られてます」
「やっぱりそうなのね」
「わくわくした感じで乗られて」
 そしてというのです。
「そして満面の笑顔で出られました」
「そうなのね」
「あと少しで戻って来られますよ」
 従業員の人は笑顔でお話してくれました。
「そのノームさんは」
「コースターが戻って来るからなのね」
「はい」
 その通りだというのです。
「ですから」
「そういうことね」
「じゃあ待ちましょう」
 ビリーナが言ってきました。
「そうしましょう」
「そうね、じゃああと少し」
「待ちましょう」
 こうお話してでした。
 皆はジェットコースターが戻って来るのを待ちました、そしてそのうえでなのでした。
 コースターが戻ってきました、そこから乗っていた人達が降りてきましたがその中に一人のノームの人がいて。
 そのノームの人を見て最初にビリーナが言いました。
「あら、まさかと思っていたけれど」
「そうね」
 トロットが続きました。
「この人はね」
「ラゲドーさんね」
「間違いないわ」
「本当にね」
「あれ、トロット王女じゃないか」 
 ラゲドー氏は皆を見て言いました。
「久し振りだね」
「ええ、ただね」  
 トロットはラゲドー、前ノーム王に返事を返しました。ですが。
 怪訝なお顔になってそれで言いました。
「貴方も旅に出ていたの」
「いつも通りね」
「いつも通りなのね」
「最近旅に凝っていてね」
 前ノーム王は陽気に笑って答えました。
「オズの国の色々なところを巡っているのだよ」
「そうだったの」
「そう、そして」
 前ノーム王はさらにお話しました。
「今回は」
「この街に来ているのね」 
「そうなんだ」
 その通りという返事でした。
「実に楽しんでいるよ」
「あんたのこと評判になってるわよ」
 ビリーナは前ノーム王にこうも言いました。
「とてもね」
「それはいい評判かな悪い評判かな」
「勿論いい評判よ」
 ビリーナはにこりとして答えました。
「決まってるでしょ」
「そうなのかい?」
「オズの国よ」
 だからだというのです。
「いい評判がね」
「立つ国で」
「悪い評判は出ない国でしょ」
「皆いい人だからね」
「あんたも今はいい人だから」
 それ故にというのです。
「勿論ね」
「いい評判なんだね」
「そうよ、少なくとも今のあんたはね」 
 かつてと違ってというのです。
「いい人だから」
「それでだね」
「いい評判でね」
 まさにそれでというのです。
「注目されているのよ」
「それは何よりだよ」
「そうでしょ、そして具体的にはね」
 ビリーナは前ノーム王にさらに言いました。
「あんたの明るさと気前の良さがね」
「評判なんだ」
「そうなのよ」
「そうだったんだ、旅を楽しむのに夢中で」 
 それでというのです。
「そんなに評判になっているなんてね」
「思わなかったのね」
「そうだったよ」
 実にというのです。
「本当にね」
「いや、しかしね」
「しかし?」
「わしは別に何も評判になることはしていないよ」
「あんたがそう思っていてもよ」 
 それでもというのです。
「皆は違うのよ、目立ってるからね」
「それでなんだね」
「さっきから言っている通りにね」
「明るくて気前がいいんだね」
「そうよ、とてもね」
 こう前ノーム王にお話します。
「ここの街で話題になってるのよ」
「ワイン十本飲んだね」
 カエルマンがこのことを尋ねました。
「そうだね」
「ああ、ホテルでだね」
 前ノーム王もそれはと頷いて応えました。
「あそこでだね」
「やっぱり飲んだね」
「わしはワインが好きで」
 それでというのです。
「あまりにも美味しくて」
「それだけ飲んだんだね」
「あのホテルではね」
「やっぱりそうだったんだね」
「ナッツとチーズもよくて」
 おつまみのこういったものもというのです。
「それだけ飲んでしまったよ」
「相当に好きなんだね」
「そして飲めるんだ」
 そうだというのです。
「わしは」
「そのこともわかったよ」
「わかってくれて何よりだよ」
「それでだけれど」
 今度はキャプテンが言ってきました。
「君はこれからどうするのかな」
「暫くはここにいてね」
「プレーリードッグの街でかな」
「このテーマパークにもね」 
 ここにもというのです。
「いてね」
「そしてだね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「楽しませてもらうよ」
「そうするんだね」
「そう、そして」
 前ノーム王はさらに言いました。
「君達は何処に行くのかな」
「イッソスの国に行くの」 
 トロットが答えました。
「あちらにね」
「ああ、あの国になんだ」
「そうするの」
「あの国はわしも行ったことがあるよ」
「貴方もなの」
「いい国だね」
 こうトロットに答えました。
「あの国も」
「それで知っているのね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「ハイランドやローランドにもね」
「行ったことがあるの」
「そうなんだ、それでイッソスの国の何処に行くのかな」
 こうもです、前ノーム王は尋ねました。
「一体」
「お寿司を食べに行くの」
 トロットはこのこともお話しました。
「そうするの」
「お寿司なんだ」
「ええ、それで私達の旅のことを詳しくお話していいかしら」
「是非頼むよ」
 前ノーム王はトロットに笑顔で答えました、そうしてそのうえでジェットコースター乗り場から他の場所に向かうのでした。








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