『オズのジンジャー将軍』
第九幕 新しい果物の実
もう少ししたら将軍とご主人のご家族が来るという時にでした。
将軍はお家のパソコンを見てご主人に言いました。
「ねえ、面白い果物を見付けたわ」
「面白い?」
「そう、ドラゴンフルーツっていうね」
その果物の名前を言いました。
「その名前のフルーツがあるのよ」
「へえ、そうなんだね」
「それでね」
将軍はご主人にさらに言いました。
「その実もうちに入れて」
「それでだね」
「うちでも作りましょう」
「少し見ていいかな」
ご主人は将軍のお話を受けてでした。
ご自身もそのドラゴンフルーツについて調べてみました、そのうえで奥さんである将軍に笑顔で言いました。
「いいね、それじゃあね」
「ドラゴンフルーツもね」
「うちに入れよう」
「それじゃあ」
「ただね」
ここでご主人はこうも言いました。
「誰が行くか」
「そのことね」
「うん、今は忙しいからね」
だからだというのです。
「誰が行くにしても」
「実がある場所はね」
そこはというのです。
「日帰りで行けるけれど」
「その間だね」
「誰に行ってもらうにしても」
それでもというのです。
「今は皆必要だからね」
「そうね、どうしようかしら」
将軍は腕を組んで言いました、そしてです。
そこでオズマが二人のお話を聞いていたのでこう言いました。
「それじゃあ私が行って来るわ」
「オズマ姫がですか」
「そうしてくれますか」
「ここまで魔法のベルトですぐに来たでしょ」
お二人にこのことを言いました。
「だからね」
「それで、ですか」
「今回もですか」
「すぐに行って来るわ」
そうするというのです。
「今からね」
「そうしてくれますか」
「それでは」
「行って来るわ」
オズマがにこりと笑って言いました、そしてです。
皆にこのことをお話してカルロス達五人に言いました。
「貴方達も一緒に来てくれるかしら」
「僕達もですか」
「ドラゴンフルーツの種を頂きに」
「そうしていいですか」
「オズマ姫のお供に」
「そうしていいですか」
「私一人で行くと」
そうすればというのです。
「色々言われるから」
「当たり前よ、貴女はオズの国の国家元首よ」
このことを指摘したのはドロシーです。
「だから一人でふらりと行くとかね」
「出来ないのよね」
「そう、何処かに行くのなら」
それならというのです。
「絶対によ」
「誰かが一緒でないと駄目ね」
「前に桃の実にされたこともあったわね」
「あの時は大変だったよ」
トトも言ってきました。
「皆で探して」
「僕達はその時旅に出ていたけれど」
「後で聞くとそうだったね」
かかしと樵もその時のことを振り返りました。
「もう皆でオズの国中探して」
「大騒ぎでね」
「流石に今はそんなことはないけれど」
ドロシーはまたオズマに言いました。
「私だって一人での外出は無理でしょ」
「そうそう、少なくとも僕が一緒にいるよ」
トトは今もドロシーの足下にいます、そこから言うのでした。
「いつもね」
「まあ私は好き勝手に色々な場所行ってるけれど」
この辺りはビリーナだと言うべきでしょうか。
「けれどね」
「私はなのね」
「オズの国の主だけあって」
「一人だと駄目ね」
「そう、カルロス達を連れて行くべきよ」
ここはというのです。
「あんたが声をかけたしね」
「それじゃあね」
「では僕達は果樹園でお仕事をしているよ」
臆病ライオンはこう言いました。
「そうしているよ」
「私がいない間は」
「そうしているよ」
「わかったわ、ではすぐに帰るから」
「今からだね」
「行って来るわ、では行きましょう」
こう言ってでした。
オズマはカルロス達を連れてそうしてでした。五人とそれぞれ円になって手をつなぎ合ってオズマが将軍から聞いた場所に行きますと。
そこは市場でした、色々なお野菜や果物にです。
種もあります、五人はそれを見て言いました。
「色々なものがあるね」
「そうだよね」
「お野菜や果物があって」
「種があって」
「農業の道具や機械もあって」
「ええ、ここでね」
まさにとです、オズマは五人に言いました。
「この辺りの農家の人達は農業に必要なものを貰うのよ」
「そうなんですね」
「それじゃあですね」
「ここでそのドラゴンフルーツの実もですね」
「それも手に入れるんですね」
「そうしますね」
「そうしましょう、これね」
オズマは早速ドラゴンフルーツの種を見付けました、そしてです。
その種を貰って皆に言いました。
「貰ったわ」
「えっ、もうですか!?」
これにはカルロスもびっくりでした。
「早いですね」
「着いてすぐですけれど」
普段はクールなナターシャも驚いたお顔になっています。
「もうですか」
「それはまた凄いですね」
神宝も驚いたお顔になっています。
「殆ど一瞬じゃないですか」
「何ていいますか」
ジョージもオズマに言います。
「あっという間でしたね」
「あの、若しかして」
恵梨香はオズマに尋ねました。
「オズマ姫はこの市場のことご存知でしたか?」
「何度か来てるから」
だからだというのです。
「それでなの」
「何処に何があるかご存知ですか」
「そうなんですか」
「それで、ですか」
「ドラゴンフルーツの種もですね」
「すぐに見付けられたんですね」
「そうよ、それじゃあね」
オズマは五人にどうして種をすぐに見付けられたのかをお話してそのうえであらためて言いました。
「これでね」
「はい、帰って」
「それで、ですね」
「種を将軍とご主人にお渡しして」
「それでまたお仕事ですね」
「果樹園でそうしますね」
「そうしましょう」
こう言ってでした。
オズマは五人と一緒に市場から果樹園に戻りました、するとです。
六人は丁度犬達が休憩でパトロール前の一眠りをしていたお家の傍に出ました、犬達はオズマ達が戻るとすぐに目を覚ましました。
そしてオズマ達を見てです、驚いて言いました。
「えっ、もうですか」
「もう戻ってこられたんですか」
「早いですね」
「今さっき行かれたばかりなのに」
「私達今寝たところですが」
「もうですか」
「種を貰ってこられたんですか」
皆驚いて言います、そしてです。
オズマはその皆にです、にこりと笑ってその種を見せました。すると犬達はオズマにその通りというお顔になって言いました。
「そう、それです」
「その種です」
「僕達もさっき奥様にパソコンの画像で見せてもらいました」
「それがドラゴンフルーツの種です」
「間違いありません」
「ならね、今から将軍のところに行ってね」
そうしてというのです。
「種を渡すわね」
「わかりました」
「それではお願いします」
「奥様にお渡しして下さい」
「そうされて下さい」
「そうさせてもらうわ」
是非にと言ってでした、オズマはすぐにでした。
五人と一緒にパトロールに出た犬達に案内されてそうして将軍のところに行きました、そうするとです。
将軍もでした、オズマに驚いたお顔で言いました。
「速いですね」
「貴女もそう言うのね」
「はい、今行かれたばかりなのに」
それがというのです。
「もうですか」
「ええ、魔法を使ったでしょ」
「一瞬で何処にでも行けるベルトですね」
「あのベルトを使ったからよ」
だからだというのです。
「もうね」
「すぐにですか」
「市場に行けて」
そしてというのです。
「帰るのもね」
「一瞬だったんですね」
「そうだったのよ」
「そうでしたか」
「ええ、それとね」
オズマはさらに言いました。
「種を見付けることもね」
「そのこともですか」
「あの市場には何度か行っていて」
そうしてというのです。
「何処に何があるか知っていたから」
「だからですか」
「種もね」
「すぐに見付けられて」
「貰えたから」
「それで、ですか」
「早かったのよ」
そうだったというのです。
「早いにも理由があるのよ」
「理由なく早くはなれないですね」
「そうよ」
実際にというのです。
「だからね」
「それで、ですね」
「ええ、この種もよね」
「はい、埋めて」
そうしてというのです。
「木にしてそうして」
「実を作って」
「そしてその実を食べます」
「ドラゴンフルーツもね」
「そうします」
「わかったわ、それじゃあね」
「後は私達のお仕事です」
こう言って実際にでした。
将軍はご主人と一緒にその種を埋めてお水と肥料をやりました、カルロスはその光景を見ながらこう言いました。
「さて、何年か経ったらね」
「それで、ですね」
シュガーが応えました。
「木になってですね」
「実が実のるよね」
「いえ、オズの国だとすぐなんです」
メイプルはカルロスに笑顔で言いました。
「埋めた種はすぐに木になります」
「すぐになんだ」
「はい、もうです」
今度は杏仁がカルロスにお話しました。
「一ヶ月もすればです」
「それでなんだ」
「木になって実が実ります」
「外の世界では桃栗三年柿八年と言うそうですが」
レモンが出す言葉はといいますと。
「オズの国ではどの木も一ヶ月ですね」
「早いね」
「それでずっと実り続けるんですよ」
ビスケットはこう言いました。
「季節もないですから」
「ああ、じゃあ三百六十五日の間」
「果物の収穫量はその日によって違っても」
桜が言うことはといいますと。
「毎日出来ますよ」
「そのこともいいね」
「そこもオズの国なんです」
ふわりは自分達の国のお話をしました。
「まさに」
「オズの国はお伽の国で」
「はい、そうしたこともですよ」
サフランも言いました。
「オズの国ならではです」
「それじゃあ豆の木を植えたら」
カルロスはここでこうも言いました。
「もうあっという間にお空に」
「あっ、そのお豆あります」
ワインもいて言ってきました。
「オズの国には」
「ジャックと豆の木の」
「ありますよ」
そうだというのです。
「オズの国には」
「そうなんだね」
カルロスが言うとでした、ジョージ達四人も言いました。
「オズの国はお伽の国で」
「そうしたお伽の国のことならだね」
「何でもあるのね」
「そうなのね」
「ええ、確かにね」
将軍も言ってきました。
「そうしたお豆もあって」
「それで、ですか」
「その豆の木を登っていけばね」
「お空の世界に行けますね」
「そうなの。お空の世界には色々な方法で行けるけれど」
「お豆を使ってもですね」
「行けるわ」
そうだというのです。
「これがね」
「本当にお伽の国ならではですね」
「そのお豆はあの市場にもあったわよ」
オズマはカルロスににこりと笑って言いました。
「そしてそれを使うとね」
「お空の世界にですね」
「行けるわ」
「飛行船やドラゴンに乗ってもで」
「気球でも行けるけれど」
それでもというのです。
「そうしてもね」
「そうですか」
「そう、だからね」
「豆の木でお空に行くこともですね」
「やっていったらいいわ」
「わかりました」
「ではね」
オズマはあらためて言いました。
「これからね」
「はい、あらためて」
「果樹園のお仕事を楽しみましょう」
市場から帰って将軍に種を渡してからでした。
オズマもカルロス達も収穫のお仕事に入りました、この日はスウィーティーやネーブルの収穫が多かったです。
その収穫を見てでした、アン王女は言いました。
「柑橘類もいいわね」
「王女はそちらも好きよね」
「ええ、オレンジや蜜柑も好きでね」
お隣にいるドロシーに答えました。
「そしてね」
「柑橘類もよね」
「好きなの」
「やっぱり果物は何でもなのね」
「嫌いな果物なんて」
それこそというのです。
「思い当たらないわ」
「そうよね」
「このスウィーティーも」
手に取ってドロシーに言いました。
「かなりね」
「好きで」
「そう、今日食べるのが楽しみよ」
「そうなのね」
「ただね」
「ただ?」
「ライムをそのまま食べることはね」
この果物はというのです。
「あまりしないわ」
「すっぱいからよね」
「ジュースにして飲むわ」
「そうなのね、そういえばネルソンさんがね」
「ああ、イギリスの提督だった人ね」
「あの人がラム酒にライムを絞ったお汁を入れて」
そうしてというのです。
「飲まれているわ」
「そうなのね」
「あれっ、ネルソンさんもですか」
カルロスはドロシーと王女のお話を聞いて尋ねました。
「オズの国におられるんですか」
「ええ、そうよ」
ドロシーはカルロスに微笑んで答えました。
「あの人もね」
「オズの国におられるんですね」
「今はね」
「そうなんですね」
「右目と右手もあるわよ」
「そうそう、あの人戦争で右目と右手がなくなったんですよね」
「けれどオズの国ではね」
この国に入ってというのです。
「戻ったのよ」
「そうなんですね」
「それでイギリス海軍ではね」
ネルソンさんのいたこの軍隊ではというのです。
「ラム酒にライムのジュースを入れて」
「そうしてですか」
「飲んでいたのよ」
「そうでしたか」
「だからね」
それでというのです。
「ライムもね」
「そうして口にすることが多いんですね」
「ジュースにしたりね」
「私もそうして口にしているし」
王女がまた言ってきました。
「確かに直接食べることは少なくても」
「そうしてですね」
「口にするわ。レモンもでしょ」
この果物もというのです。
「直接丸かじりはないわね」
「ですね、レモン汁を飲んだり」
「スライスしてよね」
「それを口にしたりします」
「それと一緒でね」
そのレモンと、というのです。
「ライムもなのよ」
「直接食べることはですか」
「あまりしないのよ」
「そうなんですね」
「私はね」
「まあ普通ライムやレモンはそうね」
ドロシーもこう言いました。
「蜜柑やオレンジみたいに食べないわね」
「そうよね」
「あまりにも酸っぱいしね」
「そのこともあるわね」
「だからね」
「そのお汁を絞って飲むかね」
「薄く切ってね」
そうしてというのです。
「紅茶に入れたりするわね」
「そうね」
こうしたお話をしながらライムも楽しみました、そしてです。
かかしはふとお空を見上げて言いました。
「ああ、リョコウバトが飛んでいるね」
「そうだね」
樵もそれを見て言いました。
「多いね」
「オズの国にはあの鳥も多いね」
「有り難いことにね」
「そうだよね、何かね」
トトもその鳥を見上げて言いました。
「外の世界でもまだいるとか言われているそうだね」
「そうみたいだね」
「いなくなったと言われていたけれど」
「アメリカは広いから」
だからだというのです。
「まだいてもおかしくないね」
「そうだね」
「まだいたらいいね」
「そうね、私は今は外の世界には殆ど行かないけれど」
ドロシーも言ってきました。
「まだリョコウバトがいればいいわね」
「そうだよね」
「ええ、私もそう思うわ」
ドロシーはトトに笑顔で応えました。
「本当にね」
「私もリョコウバト好きよ」
アン王女もでした。
「沢山いるのを見ているとね」
「それでなのね」
「嬉しくなるわ」
「そこまで好きなのね」
「ええ、私の国にも多いしね」
そのリョコウバト達がというのです。
「だからね」
「それでなのね」
「面白いわ」
凄くというのです、そしてです。
皆で飲んで食べて楽しんで、でした。一緒にお仕事もして。
この日も楽しく過ごしましたが夜にでした。
外から不思議な鳴き声が聞いてです、カルロスは首を傾げさせました。
「?あの鳴き声何かな」
「鳥かな」
ジョージも首を傾げさせました。
「そうなのかな」
「いや、違うんじゃないかな」
神宝も首を傾げさせています。
「あの声は」
「何かグルグルって言ってるわね」
恵梨香はその声を聞いて言いました。
「そうね」
「ええ、何の声かしら」
ナターシャも言いました。
「かん高い女の子みたいな声で」
「あれはヤモリの声だよ」
ご主人はテレビを観ながら答えました。
「グルヤモリっていうんだ」
「そんなヤモリがいるんですか」
「そうなんですね」
「オズの国には」
「そうなんですか」
「それで今鳴いていますか」
「そうなんだ、オオヤモリっているね」
ご主人はこのヤモリの名前も出しました。
「そうだね」
「ああ、あのトッケイって鳴く」
「トッケイヤモリですね」
「外の世界にもいます」
「私達動物園で見ました」
「実際にそうして鳴きますね」
「オズの国にはそのヤモリの仲間でね」
それでというのです。
「そうしたヤモリもいるんだ」
「別に何もしないわよ」
将軍は笑顔で言いました。
「凄く大きなヤモリだけれどね」
「かなりの大きさ」
ビリーナも言ってきました。
「大体一メートル位かしら」
「それ位だね、あのヤモリは」
臆病ライオンはビリーナに応えました。
「僕も見たことがあるけれど」
「それ位ね」
「大体ね」
「ヤモリで一メートルなんて」
それこそとです、カルロスも聞いて言いました。
「凄いね」
「まあオズの国ですから」
ワインが言ってきました。
「そうした生きものもいます」
「そうなんだね」
「けれど大きいだけで」
それでとです、サフランもそのヤモリのお話をしました。
「本当に大人しいんですよ」
「鳴き声が独特なだけなんだ」
「はい、あと色が凄く奇麗なんですよ」
ふわりはその色のお話をしました。
「虹色でして」
「そうなんだ」
「もう鱗が七色に輝いていまして」
桜もその姿のお話をします。
「物凄く目立ちますよ」
「夜でもかな」
「はい、夜の中でもです」
このことはビスケットがお話しました。
「凄く目立ちますよ」
「成程ね」
「結構色々な場所を移動するんですが」
レモンもお話します。
「今日はここに来ていますね」
「じゃあ見られるかな」
「はい、この声の大きさだと近いですね」
杏仁は耳を澄ましてカルロスに言いました。
「もうすぐそこですね」
「じゃあ行って見てみようかな」
「いいと思いますよ」
メイプルは賛成しました。
「そうしても」
「それじゃあね」
「その時は私達がご一緒します」
シュガーはにこりと笑って言いました。
「それでどうですか?」
「それじゃあね」
笑顔で、でした。
カルロスも応えてナターシャ達四人もそれならと続きました。
「じゃあ私達もね」
「そのグルヤモリを見に行くわ」
「そうさせてもらうね」
「今から」
「そうね、興味を持ったなら見て確かめる」
オズマがにこりと笑って言いました。
「それもいいことだから」
「それならですね」
「これからですね」
「お外に出て」
「そのグルヤモリを観ればいいですね」
「私達で」
「そうしましょう、ワンちゃん達も一緒だし」
それならというのです。
「安全だしね」
「警護は任せて下さい」
「僕達が一緒ですから」
「カルロスさん達に何があってもです」
「私達がお護りします」
「そうしますので」
「それじゃあお願いするね」
カルロスが応えてです、そのうえで。
五人は犬達と一緒にお家から出てそうして夜の果樹園に入りました、夜の果樹園は静かで月明かりに照らされていて。
ヤモリの鳴き声だけが聞こえます、カルロスはその中で周りを見回してヤモリを探しながら言いました。
「それで何処にいるのかな」
「こっちですね」
「鳴き声はこっちから聞こえてきます」
「匂いもしますし」
「こっちですね」
犬達は一行の左手を見て言いました。
「間違いないです」
「匂いも音もですから」
「それも近いですよ」
「そうなんだね、匂いだね」
それでとです、カルロスは言いました。
「わかるんだね」
「犬ですから」
「犬の鼻は抜群ですから」
「それでわかります」
「もう何よりも」
「そうだね。犬のお鼻は凄いね」
カルロスはつくづくという感じで思いました。
「そんなこともわかるんだから」
「はい、本当にです」
「よくわかります」
「むしろ耳よりもで」
「そして目よりも」
「犬で一番凄い器官かも知れないね」
お鼻はというのです。
「本当に」
「そうだよね」
「犬のお鼻は人間のものなんか比べものにならないから」
「どんな匂いもわかるから」
「そう考えるとね」
神宝達四人も言いました。
「犬のお鼻ときたら」
「あると羨ましいね」
「何処にいるのかまでわかるから」
「今だってね」
「そうだよね、それでだね」
カルロスは犬達が案内してくれる方を見てまた言いました。
「こっちにそのヤモリがいるんだね」
「はい、こっちです」
「こっちにそのヤモリがいます」
「グルヤモリがいます」
「あと少しでいる場所に行けます」
「さあ、どんなヤモリか」
カルロスは期待に胸を膨らませました。
「見ようか」
「そうだね」
「虹色に輝いているっていうけれど」
「どんなヤモリか」
「今から観ましょう」
五人全員で言ってでした。
皆で犬達が案内してくれたその場所に行きました、すると果樹園の中のパンの木うちの一本の幹にでした。
とても大きなヤモリがいました、その大きさは一メートル程で。
身体は虹色に輝いていました、月明かりの中でそうしていましたが。
そのヤモリを見てです、カルロス達五人は言いました。
「本当に大きいね」
「そうだね」
「しかも大きいだけじゃなくて」
「とても奇麗ね」
「本当に虹色に輝いていて」
そのグルグルと鳴くヤモリを見て言うのでした。
「これがグルヤモリなのね」
「外の世界のオオヤモリの仲間だっていうけれど」
「オオヤモリとはまた違って」
「凄く珍しいね」
「こんなヤモリがいるんだね」
「いや、私は珍しくないでしょ」
そのヤモリが言ってきました、これまでグルグルと鳴いていましたが今は普通に喋って応えています。
「オズの国だと」
「僕君の種類のヤモリははじめて見たよ」
「いえ、結構な数いるわよ」
「そうなんだ」
「オズの国は広いし」
それでというのです。
「私達は夜行性だからね」
「それでなんだ」
「今まで見ることはなかったのじゃないかしら」
「僕達いつも夜は寝ているしね」
「早寝早起きね」
「もうそろそろ寝て」
実際にとです、カルロスはヤモリに答えました。
「そして日の出と共にね」
「そうよね、オズの国は皆早寝早起きだから」
「それでだね」
「特に子供はそうだし」
つまりカルロス達はというのです。
「だからなのね」
「グルヤモリをはじめて見たのよ」
「君の種類をだね」
「そうよ、オズの国にも夜行性の生きものはいるのよ」
「それが君達だね」
「私達でね」
それでというのです。
「それでね」
「それで?」
「他にも色々とね」
「夜行性の生きものがいるんだ」
「そうよ、蝙蝠だっているし」
この生きものもというのです。
「他にもよ」
「夜行性の生きものがいるんだね」
「そうよ、オズの国では犬や猫は夜行性じゃないけれど」
それでもというのです。
「私達みたいな生きものもいるのよ」
「そうそう、僕達基本はです」
「夜行性なんですよね」
犬達も言ってきました。
「犬は元々狼で」
「狼は夜行性ですからね」
「オズの国では昼に動いてますけれど」
「基本はそうなんですよね」
「だから私達もです」
「実は」
お昼に動くのではなくというのです。
「夜行性です」
「そうなんですよね」
「あと群れを為すのも穴の中が好きなのも」
「元々の習性です」
狼のそれだというのです。
「そうなっています」
「だからです」
「今も夜でもはっきり見えています」
「夜には強いですから」
「暗がりにも強いですよ」
「うん、皆いつもは奇麗な目なのに」
それでもとです、カルロスは犬達の目を見て指摘しました。
「今は凄く光ってるよ」
「そうですよね」
「夜に強くてです」
「はっきりと見えますから」
「それで、です」
「今も光ってます」
「夜の中で」
犬達も答えます。
「この通りです」
「お昼とはまた印象が違いますよね」
「犬の夜の目はそうですよね」
「かなり引かってますよね」
「そうなっているよ、まるで狼の目だよ」
犬ではなくというのです。
「そうなっているよ」
「そうですよね」
「やっぱり元は狼ですし」
「そうなりますね」
「こうした時は」
「猫もでしょ」
ヤモリはこうも言ってきました。
「夜目が光るでしょ」
「うん、猫だってね」
「結構夜行性の生きものは多いのよ」
「そうなんだね」
「そして私もなのよ」
ヤモリ自身もというのです。
「お昼は寝ていてね」
「夜にだね」
「動くの。この果樹園もね」
こちらもというのです。
「私の縄張りの中にあるのよ」
「それで今日はなんだ」
「ここにいるのよ」
「そうなんだね」
「そしてあちこち回ってるのよ」
「幹にも貼り付いているんだ」
「吸盤でね」
足の指にあるそれを使ってというのです。
「そうしてるの。あと私は速くも歩けるから」
「ヤモリでもなんだ」
「そう、出来るから」
それもというのです。
「縄張りもね」
「広いんだ」
「そうなの、あと目もね」
「君の目も光っているね」
「そうでしょ」
「身体は虹色でね」
その色で光っていてというのです。
「目は金色だね」
「いい色でしょ」
「それで夜にだね」
「動いてね、そして朝になると」
「寝るんだね」
「そうしているわ」
「お家に帰ってかな」
「果樹園の外にある大きな木の上がそれよ」
お家だというのです。
「そこに入ってね」
「寝ているんだ」
「朝もお昼もね」
「それで夜はなんだ」
「そういうことよ」
「そのこともわかったよ」
「ええ、オズの国には夜もあって」
そしてというのです。
「その中で動く生きものもね」
「いるんだね」
「それも結構ね」
ただいるだけでなくというのです。
「多いから」
「そのこともだね」
「覚えておいてね」
「わかったよ、僕達は夜はいつも寝ているけれど」
「夜は夜でね」
「動く生きものもいるんだね」
「そういうことよ」
ヤモリはカルロスに笑ってお話しました、そして。
夜の中でムササビやモモンガが飛んでリス達が動き回ってでした。
梟のホーホーという鳴き声も聞いてカルロス達五人はわかりました。
「そうだね」
「オズの国も同じだね」
「夜の世界があって」
「夜の生きもの達も暮らしている」
「そうなのね」
「私は外の世界のことはよく知らないけれど」
それでもとです、ヤモリは五人の子供達にこうもお話しました。
「オズの国でもよ」
「お昼と同じく」
「ちゃんと世界があって」
「その中で沢山の命が暮らしていて」
「そこに世界があるね」
「それも同じ場所で」
「そうよ、同じ場所だけれどね」
それでもというのです。
「世界はね」
「違うね」
「お昼と夜でね」
「別の世界で」
「同じ場所でも時間が違うだけで」
「また違う世界になるね」
「そうよ、まあ私は夜の世界が好きで」
それでというのです。
「お昼の世界には興味はないけれどね」
「そうなんだ」
「この世界はとても楽しいから」
カルロスに答えました。
「夜の世界がね」
「それでなんだ」
「そう、だからね」
それが為にというのです。
「お昼はいつも寝ているのよ」
「夜の時の僕達みたいに」
「そうよ、夜の世界は楽しいわよ」
ヤモリは実際に嬉しそうに言いました。
「本当に」
「成程ね」
「それに寝ることもね」
このこともというのです。
「大好きだし」
「それは僕達もだよ」
「寝ることが大好きでよく寝られるなら」
ヤモリは笑ってお話しました。
「それは幸せなことでしょ」
「凄くね」
「私はそちらも出来ているからね」
「楽しくてなんだ」
「満足しているから」
お昼にそうしていてというのです。
「お昼に起きることはね」
「しないんだね」
「そうよ」
実際にというのです。
「そうしているわ」
「君がそれでいいんだね」
「満足しているわ」
今言った通りにというのです。
「それでね」
「夜は夜でいいんだね」
「そうよ、オズの国はね」
「成程ね」
「まあ機会があったらね」
その時はとです、ヤモリは言いました。
「夜の世界も楽しむといいわ」
「それじゃあね」
カルロスも頷きました。
「覚えておくよ」
「そうしてね、それじゃあ私別の木に移るけれど」
「ああ、それじゃあ僕達もそろそろ戻って寝るし」
「それじゃあね」
「またね」
「ええ、またね」
笑顔でお別れしてでした。
カルロス達はヤモリと別れてそうして帰りました、そしてです。
いよいよ寝ることになりましたがここで、です。カルロスは皆に対して眠そうなお顔で言いました。
「ヤモリさんはああ言っていたけれどね」
「夜の世界も楽しいって」
「満足しているってね」
「言っていたわね」
「凄く楽しそうに」
「けれどね」
ヤモリはそう言っていたけれど、というのです。
「僕達はね」
「もう眠いよ」
「早く寝たいよ」
「夜になると自然と眠くなるし」
「それでね」
「そうだよね、僕達は寝る時間だから」
夜はというのです。
「どうしてもね」
「うん、そうだよね」
「僕達にとって夜はそうした時間だよ」
「寝る時間だから」
「それじゃあね」
「夜は気持ちよく寝ようね」
こうお話してでした、五人の子供達は他の皆と一緒に寝ました。そうして日の出と共に起きてまた一日を楽しむのでした。