『オズの木挽きの馬』




                第六幕  見えない熊

 一行は今は仲良くお昼ご飯を食べていました、メニューはハンバーガーにフライドチキン、フライドポテトにコーラです。そうしたものを食べてです。
 グリンダはにこにことしてこう言いました。
「やっぱりこうしたものはお外で食べるといいわね」
「お家の中で食べるのもいいですが」
「お外で食べるとね」 
 恵梨香に笑顔で言います。
「そうしたらね」
「尚更ですね」
「美味しく感じるわ、宮殿の中で食べると」
 ハンバーガー等をというのです。
「お外の解放感がないわね」
「どうしても」
「お庭で食べてもいいけれど」
「それでもですか」
「旅には旅のね」
「爽快感がああってですね」
「それでね」
 その為にというのです。
「凄くね」
「いいんですね」
「そう、それとね」
 さらに言うグリンダでした。
「ハンバーガーといえば飲みものは」
「コーラですか」
「やっぱりこれね」
「この組み合わせを旅の時に食べると」
「最高よ、宮殿にいると」
 どうしてもというのです。
「ハンバーガーを食べてもね」
「自由さがないですか」
「折角自由を感じさせてくれる食べものなのに」
 それでもというのです。
「そこが残念だわ」
「ううん、グリンダさんといいますと」
 恵梨香はフライドチキンを食べつつ言いました。
「普段は宮殿におられて」
「真面目にしている、かしら」
「そんなイメージがありました」
「普段はそうでもね」
「時にはですか」
「こうして旅に出て」
 そしてというのです。
「自由に過ごしたいのよ」
「そうなるんですね」
「だから今はね」
「凄く楽しいですか」
「そうなの」
「私は何処でも私だけれどね」
 ガラスの猫は身体を舐め回して奇麗にさせつつ言いました。
「グリンダは違うのね」
「貴女は何処でも振る舞いたいまま振る舞うわね」
「それが猫でしょ」
「ええ、そうよ」
「だからね」 
 猫だからだというのです。
「私はいつも自由なのよ。不自由って感じたらね」
「その場を去るわね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「別の場所でね」
「自由に過ごすわね」
「そうするわ、気の赴くままに動くのがね」
 それがというのです。
「猫なのよ」
「確かにそうね」
「猫程いい生きものはいないわよ」
 ガラスの猫はこうも言いました。
「どんなところにも行けてね」
「自由に動けるのね」
「ええ、だからね」
「猫程いい生きものはいないのね」
「確信を持って言うわ」
 このことをというのです。
「私はね」
「そういうことね」
「そうよ、しかも私はガラスの身体だから」
 只の猫ではなく、です。
「食べる必要も飲む必要もなくて」
「休むこともよね」
「一切必要ないから」
 それでというのです。
「本当にね」
「最高なのね」
「これ以上はないまでにね」
 まさにというのです。
「そう思っているわ」
「そういうことね」
「ええ、私はこれ以上はないまでに自由で幸せ者よ」
「幸せ者はオズの国の誰でもだね」
 モジャボロの弟さんは右手にハンバーガーを持っています、それを食べながらそのうえで言ってきました。
「それは」
「この国は幸せに満ちている国だからね」 
 木挽きの馬も言います。
「だからね」
「うん、誰もがそう思うね」
「自分が幸せだってね」
「それも一番ね」
「そうなの、けれどいいわ」
 これがガラスの猫の返事でした。
「私が自分でそう思っているならね」
「他の人がどう思っていてもなんだ」
「いいわ、私が満足しているのなら」
 ガラスの猫は木挽きの馬にも言いました。
「それならよ」
「他の人が最高と思ってもだね」
「いいわ、というかね」
「というか?」
「自分が満足しているなら」
 それならというのです。
「別にね」
「いいんだね」
「そう、いいのよ」
 それならというのです。
「私はね」
「僕も自分が最高に幸せと思っているよ」
「そうなのね」
「馬は足が速くて賢くて優しい生きものでね」
 それでというのです。
「しかも君と同じくね」
「食べることも寝ることもないっていうのね」
「飲むこともね」 
 まさに一切というのです。
「必要がないからね」
「余計にっていうのね」
「最高に幸せで」
 それでというのです。
「満足しているよ」
「それならそれでいいでしょ、私が言うことじゃないわ」
「特にだね」
「ええ、あんたのことだから」
「君は言わないんだね」
「そうよ、別にね」
「成程ね」
「まあここにいる皆もね」
 木挽きの馬以外の面々もというのです。
「本当にね」
「幸せだって思っているね」
「最高にね、そう思っているのならね」
「いいんだ」
「そうよ、私は他の人が幸せでもね」
「特に思わないんだね」
「というか思うことがあるのか」
 そもそもという口調の言葉でした。
「あるのかね」
「不思議なんだね」
「私にとってはね、要は自分がどうかでしょ」
 このことがというのです。
「そうでしょ」
「その通りだと思うよ」
「だったらね」
「君は言わなくて」
「自分で楽しんでいくわ」
「自由にだね」
「幸せにね、それはそうと」
 ここで、でした。ガラスの猫は。
 グリンダが出しているテーブル掛けの上に出ているものを見てでした、こんなことを言ったのでした。
「デザートは今日はパイナップルなの」
「ええ、それを出したわ」
 グリンダが答えました。
「今日はね」
「そうなのね」
「これもいいかしらって思って」
「成程ね」
「いいよね。パイナップルも」  
 モジャボロも笑顔で言ってきました。
「美味しいね」
「あんた林檎以外の果物も好きだしね」
「林檎が一番好きだけれどね、それにね」
「それに?」
「パイナップルは果物じゃないよ」
「ああ、お野菜だったわね」
「そうだよ、西瓜や苺と同じくね」
 こうしたものと、というのです。
「お野菜だよ」
「そうだったわね」
「それで僕はパイナップルもね」
 このお野菜もというのです。
「好きでね」
「これからも食べるのね」
「デザートとしてね」
「そういうことね」
「最後にね」
「よくわかったわ、じゃあ楽しんでね」
「そうさせてもらうよ」
 こう言って今はフライドチキンを食べます、そして。
 恵梨香はコーラを飲んで言いました。
「よく冷えていてね」
「美味しいね」 
 神宝もコーラを飲んでいます、そのうえでの言葉です。
「これがまた」
「しかもハンバーガーとかに合うから」
 ジョージはにこにことしています。
「尚更いいね」
「この炭酸の感覚がいいから」
 ナターシャはストローで飲んでいます、見れば皆そうしています。
「味だけじゃなくてね」
「考えてみれば不思議な飲みものだね」
 カルロスはこう言いました。
「コーラってね」
「そうよね、不思議と時々でも飲みたくなるのよね」
 恵梨香はまた言いました。
「コーラは」
「ええ、宮殿では炭酸飲料はあまり飲まないけれど」
 グリンダも言ってきました。
「旅の時はね」
「こうしてですね」
「楽しんでいるの」
「そうなんですね」
「宮殿の中にいると私としては炭酸飲料を飲む気にはあまりなれなくて」
 それでというのです。
「紅茶やコーヒーをね」
「飲まれていますか」
「よくね、お酒はワインだし」
「そちらですか」
「ビールがあっても」
 それでもというのです。
「あまりね」
「飲まれないんですね」
「そうなの」
 実際にというのです。
「これがね」
「そうですか」
「その辺りがね」
 実際にというのです。
「宮殿の雰囲気ね、そこにいるとね」
「食べるには、ですね」
「私としてはあるのよ」
「そういえばドロシーさんも」
 恵梨香はオズの国でオズマと並ぶ有名人で人気者である彼女のことを思い出しました、五人にとっては頼りになって優しいお姉さんの一人です。
「宮殿の中では」
「畏まっているわね」
「はい、紅茶を飲まれて」 
 そしてというのです。
「そのうえで」
「ステーキとかをよく食べるわね」
「ハンバーガーとかは宮殿の中ではあまり」
 フライドポテトを摘みながら言います。
「そうした感じですね」
「そうでしょ、だからね」
 それでというのです。
「ドロシーはよく宮殿を出てね」
「冒険に行かれていますね」
「もうドロシーはね」
 何といってもというのです。
「オズの国きっての冒険家でね」
「宮殿におられるよりもですね」
「冒険に出ている位だから」
 それでというのです。
「それでね」
「お外で、ですね」
「今の私達みたいにね」
「ハンバーガーやコーラを楽しまれていますね」
「よくね」
「今も冒険に出ているからね」
 木挽きの馬も言ってきました。
「ドロシーは」
「そうよね」
「もう本当にね」
「オズの国きっての冒険家よね」
「彼女はね」
「そうした人よね」
「それで君達もね」
 木挽きの馬は恵梨香に笑って言いました。
「ドロシー王女程じゃなくてもね」
「冒険家なのね」
「オズの国に来たらほぼ確実に冒険しているね」
「そう言われるとそうね」
「まず一度は冒険に出ているから」
 五人がオズの国に来た時はというのです。
「だからね」
「それで、なのね」
「もう立派なね」
「冒険家なのね」
「そうだよ、それにね」
「それに?」
「君達は最初からオズの国に詳しくて」
 それでというのです。
「冒険もしてね」
「尚更っていうのね」
「詳しくなったよね」
「そうね、読むことと見ることじゃね」
「また違うね」
「見ると尚更ね」 
 読むことより遥かにというのです。
「知ることになるわね」
「百聞は一見に如かずだね」
「ええ、だからね」
 それでというのです。
「貴方の言う通りにね」
「オズの国に詳しくなったね」
「実際に見て回ってね」
 そうしてというのです。
「そうなったわ」
「そうだね」
「けれどドロシーさんに比べたら」
「まだまだなんだ」
「ええ、他の人達にもね」
「ベッツイやトロット達にもだね」
「そうよ、オズの国の名士の人達はよく冒険に出るから」
 それでというのです。
「最近来た私達なんてね」
「まだまだなんだね」
「そうよ」
「そこで謙遜するのがね」  
 それがとです、木挽きの馬は恵梨香に言いました。
「恵梨香だね、それにね」
「それに?」
「日本人なのかな」
「謙遜することがなの」
「オズの国の日系人もね」
「そうした人が多いの」
「謙遜することが多い人がね」
 実際にというのです。
「多いよ」
「そうなのね」
「だからね」
 それでというのです。
「本当にね」
「私もなのね」
「日本人だなって思ったよ」
「そうなの」
「そして謙遜したら」
 その時はといいますと。
「実は凄いんだよね」
「そうなの」
「日本人って凄いって言われたら凄くないって言うけれど」
 まさに謙遜してです。
「その実はね」
「そうそう、凄いんだよね」
「日本人ってその場合こそね」
「それでも謙虚だから」
「いつも謙遜するんだよね」
 ジョージ達四人も言います。
「そこでね」
「謙遜することないのに思っても」
「それが謙遜するから」
「慣れるまで困ることもあるよ」
「そうだね、知ってることも知らないっていうから」
 この場合もあるとです、木挽きの馬はこうしたお話もしました。
「時々本当はってなるよね」
「知ってることは知ってるって言わないとね」
 ガラスの猫も言います。
「こっちが困ったりするわ」
「実際本当はどうかってなるし」
「慣れるまでね」
「どうなのかってなったね」
「私達もね」
「何か自分がって前に出たり自信を強く見せると」 
 その場合はとです、恵梨香は木挽きの馬とガラスの猫にお話しました。
「日本ではね」
「よく思われない」
「そうなのね」
「だからね」
 それでというのです。
「私もね」
「謙遜しているんだね」
「そうなのね」
「傲慢であるよりもね」 
 それよりもというのです。
「謙虚の方がいいし」
「それはそうだね」 
 モジャボロは恵梨香の今の言葉に頷きました。
「傲慢とか尊大とかね」
「そうしたことはですね」
「かつてのノーム王がそうだったけれど」
「よくないですね」
「どうしてもね、だからね」
「謙虚なのはですね」
「いいと思うよ、ただね」
 それでもというのです。
「やっぱり知っていることはね」
「ちゃんとですか」
「言わないとね」
 そうしないと、というのです。
「困る場合があるから」
「だからですか」
「言おうね」
「そうしたことはですね」
「出来るだけね」
「それじゃあ」 
 恵梨香も頷きました。
「そうする様にします」
「努力してね」
「そのうえで」
「そういうことでね」
「食べ終わったらだけれど」
 グリンダが言ってきました。
「またね」
「出発ですね」
「ええ、そしてね」
「そして?」
「そこからも楽しい旅をするわよ」 
 こう言ってでした、グリンダは食事の後で皆を某県の旅に戻しました。皆そうしてさらに進んでいきますと。
 目の前にゴブリンの一団がいました、見れば困っている感じです。それでグリンダがどしたものかという顔で彼等に尋ねました。
「どうしたのかしら」
「あっ、グリンダ様」
「どうしてこちらに」
「今は黄金の羊を探しに出ているの」
 グリンダはカドリングの赤い服を着ているゴブリン達に答えました。
「レッド牧場から逃げたね」
「ああ、あそこからですか」
「あそこから逃げたんですか」
「その羊を探してですか」
「今は皆と一緒に旅をしているのよ」 
 こうゴブリン達にお話しました。
「そうしているの」
「そうだったんですね」
「どうしてここにと思いましたが」
「そういうことでしたか」
「ええ、それで貴方達はどうしたのかしら」
 ゴブリン達にあらためて尋ねました。
「ここにいるのかしら」
「はい、実はです」
「私達はここで道の修理をしていたんですが」
「ああ、そういえばさっき通った時は壊れている部分があったね」 
 木挽きの馬がここで言いました。
「そうだったね」
「それで今道をなおしていたんだ」
「それが終わったんだけれど」
「それでもね」
 ゴブリン達は道の傍のお池を見て言うのでした。
「ここにツルハシを一つ落としちゃってね」
「わし等皆泳げなくて」
「ツルハシをどうして取ろうか」
「それで困っていたんだ」
「そういうことだったんだ」 
 木挽きの馬もそう聞いて納得しました。
「そういえば一人ツルハシを持っていないね」
「わしが落としてしまったんだ」
 ツルハシを持っていないゴブリンが言ってきました。
「これがね」
「そうだったんだ、じゃあね」
「じゃあ?」
「僕が今から取って来るよ」
 お池に落ちたツルハシをというのです。
「今からね」
「いいのかい?」
「いいよ、僕はお水の中でも平気で進めるからね」
 それでというのです。
「構うことはによ」
「そうなんだね」
「僕の身体は木でしかも加工されているからね」
「濡れてもいいんだね」
「濡れてもすぐに乾くから」
 だからだというのです。
「問題ないよ」
「だからなんだ」
「僕が行くよ」
「そうしていいんだね」
「他の皆は泳げるけれど」
 木挽きの馬は皆を見てツルハシを落としてしまったゴブリンに言いました。
「それでもね」
「それでもなんだ」
「お水の中に入るから服を脱がないといけないね」
「それはそうだね」
「そこから水着を着てお水に入ってお池から出たら身体を拭くし」
「そのことを考えたら」
「僕が一番手間がかからないからね」
 だからだというのです。
「僕が行くよ」
「私もお水の中でも平気だけれどね」
 ガラスの猫も言ってきました。
「それでもね」
「君はツルハシを持って来るには小さいからね」
「ええ、だからね」
 木挽きの馬に答えました。
「私はね」
「そう思ってだね」
「今回は出しゃばらなかったのよ」
「最初からだね」
「そうしたのよ」 
 こう木挽きの馬に言うのでした。
「私はね」
「そうだね、じゃあ今からね」
「行って来るのね」
「そうするよ」
 こう言って実際にでした。
 木挽きの馬はお池の中に入りました、そうしてすぐにお口に一本のツルハシを咥えて戻ってきました。そのツルハシを見てでした。
 ツルハシを落としたゴブリンは大喜びで言いました。
「有り難う、これでね」
「ツルハシが戻ったね」
「うん、無事にね」
「それは何よりだよ」
「それじゃあね」
 ゴブリンは木挽きの馬に何かを出しました、それは何かといいますと。
 お饅頭でした、日本のお饅頭で栗の色と形をしています。どうやら栗饅頭みたいです。それを出して言うのでした。
「よかったら食べてよ」
「僕は何も食べる必要がないけれど」
「これはグリンダさん達にでね」
「食べてってことだね」
「君の身体を拭かせてもらうよ」
 今度はタオルを出して言いました。
「僕の為にお池に入ってくれたしね」
「すぐに乾くよ」
「それでもすぐに水気がなくなった方がいいね」
「そう言われるとね」
「だからね」
 それでというのです。
「これからね」
「僕の身体を拭いてくれるんだ」
「そうしていいかな」
「そう言ってくれるならね」
 木挽きの馬も頷きました、そしてです。
 ゴブリンは彼の身体をタオルで念入りに拭きました、そのうえで彼に言いました。
「これでいいかな」
「うん、すっきりしたよ」
 木挽きの馬は笑顔で答えました。
「お陰でね」
「それは何よりだね」
「うん、それで君達はこれからもだね」
「また何処かで修理のお仕事があるならね」
「そちらに行くんだね」
「それが僕達の仕事だからね」
 それでというのです。
「そうするよ」
「そうなんだね」
「うん、じゃあね」
「また会おうね」
 こうお話してでした。
 一行はゴブリンと別れました、そうして旅を再開するとでした。ふとモジャボロがこんなことを言いました。
「木挽きの馬のお陰でね」
「さっきはだね」
「無事に終わったね」
 こう弟さんに言うのでした。
「そうなったね」
「そうだね、さっきは彼がMVPだね」
 弟さんは木挽きの馬に笑顔で答えました。
「そうなったね」
「そうだね、だからね」 
 それでというのです。
「今回は彼の為にね」
「何かだね」
「しないと駄目だね」
「そうだね」
「別に何もないよ」
 木挽きの馬は二人に答えました。
「お礼とかはね」
「いいんだね」
「うん、だからね」 
 それでというのです。
「気にしなくていいよ」
「けれどそうもいかないよ」
 モジャボロは木挽きの馬に言いました。
「いいことをしたらいいことが返って来る」
「だからだね」
「そう、僕達に出来ることがあれば」
「してくれるんだ」
「何かね」
 こう言ってでした、モジャボロは少し考えましたが。
 木挽きの馬の身体を見てこう言いました。
「磨いていいかな」
「僕の身体をだね」
「油を塗ってね」
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「身体を磨いてくれるんだ」
「そうしていいかな」
「うん、それならね」 
 木挽きの馬も頷きました。
「お願いするよ」
「そういうことでね」
「いいことをしたからいいことをさせてもらうよ」
「そういうことだね」
「あの、何か」
 二人のやり取りを見てでした、恵梨香はどうかというお顔になってそのうえでこうしたことを言いました。
「木挽きの馬も」
「謙虚だよね」
 神宝が恵梨香に応えました。
「彼も」
「うん、お礼とかいつもいいって言うしね」
 ジョージも言います。
「それを見ているとね」
「恵梨香に謙虚って言うけれど」
 ナターシャはこう指摘しました。
「木挽きの馬もよね」
「二人共遠慮し過ぎだね」
 カルロスは笑って言いました。
「正直言ってね」
「そうよね、私に言うけれど」
 恵梨香はまた言いました。
「木挽きの馬もね」
「謙虚でね」
「すぐにいいって言うよね」
「お礼とかには」
「何かをあげようって言っても」
「だってね」
 その木挽きの馬も言ってきました。
「僕本当にいらないから」
「それでなのね」
「いつもそう言うんだ」
「いらないとか別にいいとか」
「そう言うんだ」
「そうなのね」
「うん、本当にね」
 五人にこう答えました。
「僕はね」
「私も別にいいけれどね」
 ガラスの猫も言いました。
「食べものも飲みものも宝石もね」
「貴女もいらないのね」
「私自身が最高に奇麗なのよ」
「だからなの」
「しかもガラスの身体を持っている猫なんて私だけね」
「オズの国でもね」
「そんな私がどうして何かを欲しがるの?」
 オズの国でも唯一の存在でしかもとても奇麗なのにというのです。
「そうでしょ」
「貴女はそういう考えだからなの」
「何かを欲しいと思わないし」
 それにというのです。
「誰かに何かをしてもね」
「貴女もよく誰かを助けるわね」
「オズの国の法律にあるでしょ」
「何かあれば助けるね」
「困った人はね、それに私は自分がしたいことをしているから」
 それだけだからだというのです。
「だからね」
「お礼もいいのね」
「自分がしたいことをしてね」
 それでというのです。
「何でお礼がいるのよ」
「そういうことね」
「そうよ、実際にね」
 それ故にというのです。
「私はお礼も何かしてもらうこともね」
「必要ないのね」
「そう考えているわ、あとね」
「あと?」
「褒める言葉ならどんどん聞くわ」
 こちらはというのです。
「喜んでね」
「それはいいのね」
「こんなに奇麗でオズの国で唯一のガラスの身体を持つ猫だから」
 それ故にというのです。
「もうね」
「幾ら褒めてもいいのね」
「そうよ、ただけなしてもね」
 褒めることとは逆にというのです。
「私は聞かないだけだから」
「いいのね」
「下らない言葉を聞く趣味はないわ」
 これがガラスの猫の考えです。
「だからよ」
「それで聞かないのね」
「そうよ、だから幾ら言ってもね」
 それでもというのです。
「いいのよ」
「そうなのね」
「そう、別にね」
「まあ悪いことを言う人っていないけれどね」
 木挽きの馬も言ってきました。
「オズの国だと」
「そうした人いないからね」
「君を悪く言う人もいないよ」
「最初からね」
「うん、けれど君はいつも身体奇麗にしているね」
 このことを言うのでした。
「そうだね」
「それは当然よ」
 当たり前のことだというのでした。
「私は猫だからね」
「猫はいつも自分の身体を奇麗にしているから」
「自分の身体を舐めてね」
 そのうえでというのです。
「そうしているわね」
「それで君もだね」
「いつも身体を舐めてなのよ」
「奇麗にしているんだね」
「それも他の猫よりも念入りにね」
「しているんだね」
「この身体だから」
 ガラスの身体だからだというのです。
「そうしているのよ」
「そういうことだね」
「ええ、奇麗な身体をね」
「いつも奇麗にしているんだね」
「尚更ね」
「磨くみたいだね」
「実際に磨いているつもりよ」
 そうだというのです。
「私はね」
「自分の身体をだね」
「いつも奇麗にしているのよ、奇麗でもね」
「それに満足しないで」
「そしてね」
「そのうえでだね」
「奇麗にしているのよ」
 そうだというのです。
「私はね」
「若し君がいつも身体を念入りに舐めていないと」
「汚くなるわよ」
「逆にだね」
「最初奇麗でも奇麗にしないと」
「汚くなるね」
「ガラスの身体だってそうでしょ」
 つまり自分の身体もというのです。
「汚れが付いたり曇ったり」
「そうなるね」
「だからいつも舐めて奇麗にしないと」
「いけないね」
「そうよ、その私を褒めるなら」
 それならというのです。
「もうね」
「幾らでもだね」
「言っていいわ」
「そういうことだね」
 木挽きの馬も納得しました、そしてです。
 一行はさらに道を進んでいきました、そうして三時になるとおやつを食べました、そのおやつはといいますと。
 ゴブリン達から貰ったお饅頭です、それにきんつばに羊羹です。そうしたものを食べて緑茶を飲みます。
 そうしながらグリンダは言いました。
「このお饅頭美味しいわね」
「はい、栗饅頭ですね」 
 恵梨香も食べながら応えます。
「これは」
「そうよね」
「栗饅頭って素敵な味よね」
「はい、栗ってお菓子によく合いますね」
「それを使って作るとね」
 それならというのです。
「もうね」
「どれだけ美味しいか」
「だからね」
 それでとです、グリンダは。
 お茶を飲んでこうも言いました。
「色々とお菓子に使われるのよ」
「ケーキにも使われますし」
「そうそう、モンブランのケーキもいいわね」
「あと栗きんとんも」
「日本の食べものね」
「お正月とかに食べますが」
「あれも美味しいわね」
 グリンダはにこりとして言いました。
「本当に」
「そうですよね」
「栗はそうした果物ね」
「お菓子を作る材料にいいですね」
「そうね」
「普通に食べても美味しいですよね」
 栗自体もとです、恵梨香は言いました。
「そうしても」
「ええ、焼いてもね」
「栗ご飯にしても」
「そうですよね」
「あと天津甘栗も」
「あれも美味しいですね」
「凄くね」  
 実際にというのです。
「美味しいわね」
「私あれも大好きですから」
「食べているのね」
「よく」
「そうよね、私もね」
 グリンダもというのです。
「天津甘栗はね」
「お好きですね」
「宮殿でも結構食べているの」
「そちらは食べてもいいんですね」
「そうなの、おやつでね」
 食べているというのです。
「もう宮殿の人が剥いてくれていて」
「それを食べられていますか」
「そうしているわ、普段からね」
 つまり宮殿にいる時からというのです。
「そうしているわ、そして栗のお菓子は全体的にね」
「よく召し上がられていますか」
「特にケーキをね」
 モンブランのケーキをというのです。
「そうしているわ」
「ケーキですか」
「宮殿で一番よく出るお菓子がね」
「ケーキだからですか」
「だから栗を使ったお菓子もね」
 こちらもというのです。
「そうなのよ」
「ケーキですか」
「そうなっているわ、私もケーキが好きだから」
「丁度いいですか」
「そう思っているわ」
 こう恵梨香にお話するのでした。
「私もね、あとお菓子全体で言うとタルトもね」
「よく出ますか」
「中華だと杏仁豆腐でね」 
 こちらのスイーツでというのです。
「和菓子もね、上品なものがね」
「あの奇麗な」
「それがね」
「よく出ますか」
「そうなの」
 実際にというのです。
「宮殿ではね」
「やっぱり宮殿ですと上品なんですね」
「お料理全体がね」
「そうなるんですね」
「いつもコースだしね」
「一度に沢山のお料理が出ることはありますか?」
 恵梨香はこのことを尋ねました。
「宮殿では」
「あまりないわね」
「やっぱりそうですか」
「ええ、やっぱりコースでね」
 それでというのです。
「出るわ」
「懐石料理やフルコースみたいに」
「まさにああした感じでね」
「そうなんですね」
「だから堅苦しいの」 
 どうしてもそうなるというのです。
「宮殿のお料理はね」
「エメラルドの都もそうですし」
「いつもそうだと」
「困るんですね」
「飽きないけれど」
 それでもというのだ。
「他のラフなね」
「そうしたものが食べたくなりますね」
「そうなの、だからね」
「今はですね」
「こうしたラフなものがいいわ」
 こう言ってでした。
 オズマは栗饅頭を食べます、それは彼女にとってとても美味しいものでした。








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