『オズの木挽きの馬』




                第五幕  牧場に着いて

 一行は牧場、そのレッド牧場に着きました。するとそこは赤い毛の牛や豚、羊や山羊、馬、鶏達が広い牧場の中に沢山いました。
 その生きもの達を見てです、恵梨香達五人は言いました。
「カドリングの国だって思うわね」
「うん、こうした場所に来るとね」
「赤い草原に赤い柵でね」
「赤い生きもの達がいて」
「本当にそう思うね」
「そう、赤はカドリングの色だからね」
 木挽きの馬も言います。
「本当にそう思うね」
「これまでも赤ばかりでカドリングだって思っていたけれど」
「今は余計に思うよ」
「僕達はカドリングにいるって」
「そうね」
「心から思えるよ」
「僕もだよ、しかしね」 
 木挽きの馬はここで、でした。
 牧場全体を広く見回しました、そうしてこう言いました。
「別に問題はね」
「あるとは思わないね」
 モジャボロが応えました。
「見たところ」
「そうだよね」
「平和でね」
「のどかでね」
「皆ゆったりとしていて」
 生きもの達もというのです。
「これといってね」
「何か困ったことがあったとか」
「思わないね」
「どうもね」
「私もそう思うわ」
 ガラスの猫も牧場を見回して言います。
「これといってね」
「一体何があったのかな」
 モジャボロの弟さんは首を傾げさせています。
「ここで」
「何かあったとはね」
「思えないね」
「どうもね」
「けれど何かあったから」 
「オズマ姫もここにって言ったのね」
「そうなるよ」
 弟さんはガラスの猫に答えました。
「やっぱりね」
「そうよね、それじゃあね」
「まずは牧場の人にお話を聞こう」
「それがいいわね」
「それではね」
 グリンダも言いました。
「これからね」
「ええ、お話を聞くのね」
「牧場の人からね」
 こう言ってでした、皆はです。
 牧場をしているお家に向かいました、とても広い牧場の一片に生きもの達の厩があってその隣にでした。
 赤い木で造られた大きなログハウスがありました、そのお家の扉を叩くと一人の若いアフリカ系の人が出て来ました、穏やかなお顔で背は二メートル位あります。黒い短い髪の毛で服は赤いつなぎの作業服です。
 その人はグリンダを見るとすぐに言いました。
「はじめまして、牧場をしているシードといいます」
「マッキリンリーさんね」
「はい、ウィリアム=シードといいます」
 グリンダに笑顔で名乗りました。
「よく来てくれました」
「ええ、それでお話だけれど」
「この牧場のことですね」
「そうです、宜しいでしょうか」
「そのことを聞きたくて来たから」
 それでとです、グリンダはシードさんに答えまいsた。
「それじゃあね」
「今からですね」
「お話を聞かせてくれるかしら」
「是非中に入って下さい、牧場のことは弟達が見ていてくれていますから」
「そういえば」
 ここで、でした。
 恵梨香が牧場を見回すと馬に乗ったアフリカ系の男の人達もいました、皆牧場を見回って生きもの達の世話をしています。それぞれ数匹のコリー犬やブリヤード犬を連れていてそうしてお仕事をしています。
 その人達を見てです、恵梨香は言いました。
「シードさんは弟さん達と一緒にですか」
「うん、こうしてね」
「牧場をしているんですね」
「そうだよ、僕も普段は外に出ているけれどね」
「今日はですか」
「皆が来てくれる日だから」
「お家の中で、ですか」
 恵梨香はシードさんに言いました。
「待っていてくれたんですね」
「そうだよ、それじゃあね」
「今からですね」
「中に入ってね」
 お家のというのです。
「コーヒーを飲んでお菓子を食べながら」
「そうしながらですね」
「牧場のことをお話するよ」
「わかりました、それじゃあ」
「皆入ってね」
 こうお話をしてでした。
 皆はシードさんにお家の中に入れてもらいました、そして赤いコーヒーと赤いプリンやアイスクリームを出してもらってです。
 皆で食べながらシードさんのお話を聞きました、そうしてです。
 お話を聞くとです、木挽きの馬が言いました。
「この牧場には赤い生きものだけじゃなかったんだ」
「うん、一匹だけね」
 シードさんは木挽きの馬にコーヒーを飲みながらお話しました。
「黄金の毛の羊がいるんだ」
「そうだったんだ」
「あのお羊座の羊さんの親戚でね」
「その羊さんがいてだね」
「皆と仲良くしていたけれど」
 それでもというのです。
「ある日何処かに行くと言ってね」
「それでだね」
「そのまま牧場を出て行って」
 そうしてというのです。
「帰って来ないんだ」
「そうなんだ」
「それでその羊を探して欲しくて」
「オズマ姫にお願いしてだね」
「皆に来てもらったんだ」
「そうだよ」
 シードさんは木挽きの馬に答えました。
「そうした事情だったんだ」
「成程ね」
「僕達もこの辺りを探したけれど」
「見付からないのね」
「それでお願いをしたんだ」
「わかったわ」
 グリンダはシードさんに笑顔で応えました。
「では私達でね」
「羊を探し出してくれますか」
「ええ、約束するわ」
 笑顔のままでの返事でした。
「是非ね」
「それではお願いします」
「すぐに羊を見付けて」
 その黄金の毛の羊をです。
「ここに連れて帰るわ」
「そうしてくれますか」
「ええ、では必ずね」
 グリンダは約束しました、そうしてです。
 牧場からすぐに羊の捜索に向かうことにしました、ぐりんだは牧場を出るとすぐに金と銀で飾られた眩いステッキを出しました。
 そのステッキを出してです、こう言いました。
「このステッキを探しものが何処にあるのかを聞くとね」
「教えてくれるんですか」
「そうなの」
 グリンダは恵梨香に答えました。
「その方角をね」
「魔法のステッキですね」
「だからね」
「今からですね」
「このステッキに聞くわ」
「そうして羊が何処にいるのかをですね」
「確かめるわ、その方角がわかったら」
 羊のいるそれがです。
「そちらに行くわよ」
「わかりました」
「それではね」
 グリンダは恵梨香にお話してでした。
 早速ステッキにレッド牧場を出た黄金の羊が何処に行ってしまったのかを尋ねました、するとでした。
 ステッキは東の方に倒れました、それを見てグリンダは皆に言いました。
「東よ」
「黄金の羊はそこにだね」
「ええ、いるわ」
 木挽きの馬に答えました。
「そちらにね」
「ではちょっとね」 
 馬はグリンダのお話を聞くとこう言いました。
「そちらに行ってね」
「確かめて来るのね」
「僕の足で東の方を見て」
「どういった状況か確かめて」
「そしてね」
「私達に教えてくれるのね」
「だからちょっと待ってね」
 グリンダに威勢よく言いました。
「今から見て来るから」
「ええ、お願いするわね」
「すぐに行って来るよ」
 木挽きの馬はここまで言うとすぐにでした。
 風よりも速く駆けていきました、その速さはもうどんなスーパーカーも敵わない位でした。そうしてでした。
 暫くして皆のところに戻って来てこう言いました。
「おかしなものはなくてね」
「安全だね」
「そしてね」 
 馬はモジャボロに答えました。
「羊はいたよ」
「いたんだ」
「うん、雌の羊と一緒にいたよ」
「ああ、その娘を好きになって」
「それでみたいだよ」 
 馬はさらにお話しました。
「牧場を出てね」
「その娘のところに行ったんだね」
「僕は羊君達とお話していないけれどね」
「そのことはわかったんだ」
「彼等を見てね」
 それでというのです。
「わかったよ」
「そういうことだね」
「だからね」
「これからだね」
「東に行こう、そしてね」
「羊君達と会ってだね」
「お話を聞こうね」
 こうモジャボロに言いました。
「これからね」
「では今度は羊さん達のところに行きましょう」
 グリンダも言ってきました。
「そうしましょう」
「ううん、魔法の力もあって」
 恵梨香はしみじみとした口調で言いました。
「羊さんはすぐに見付かりそうね」
「うん、ただね」
 モジャボロがここで恵梨香にこう言いました。
「オズの国だからね」
「何が起こるかですね」
「そのことはね」
 どうしてもというのです。
「わからないよ」
「そうでした、オズの国ですから」
「何時何が起こるかね」
「わからないですね」
「悪いことは起こらなくても」
 それでもというのです。
「何時何が起こるかわからない」
「常に何かが起こる国ですね」
「だからね」
「そのことは頭に入れて」
「そのうえでね」
「行くことですね」
「そうしようね」
 こう恵梨香に言うのでした。
「いいね」
「わかりました」
 恵梨香も素直に頷きます、そしてでした。
 皆は東に向かって出発しました、ここでも黄色い煉瓦の道を進んでいってそうしてでした、先に進んでいると。
 不意にです、恵梨香はこんなことを言いました。
「お羊座のお話が出たけれど」
「そうそう、黄金の毛の羊はお羊座の羊さんの親戚だったね」
 神宝はシードさんのお話から言いました。
「そうだったね」
「オズの国でも星座あるんだね」
 カルロスも言います。
「そうなんだね」
「外の世界の星座と同じかな」 
 ジョージはこう思いました。
「そうなのかな」
「星座のことはこれまで考えていなかったけれど」
 ナターシャは考えるお顔になっています。
「どうなのかしら」
「外の世界と同じよ」
 グリンダが笑顔で答えました。
「星座はね」
「同じですか」
「だからお羊座もあって」
「他の星座もあるんですね」
「そこは外の世界と同じで」
「変わらないんですね」
「八十八の星座があって」 
 そしてというのです。
「どの星座も心があるの、特にね」
「特に?」
「特にといいますと」
「まだ何かありますか?」
「星座について」
「あるとしたらどんなことですか?」
「黄道の十二の星座はね」
 この星座達はというのです。
「特別な存在なのよ」
「あっ、外の世界と同じで」
「そう、オズの国でかなり位の高い神様になっているの」
 グリンダは恵梨香に答えました。
「そうなっているの、干支と同じくね」
「干支の生きものも神様で」
「それでね」
「十二宮もなの」
「というと天秤座も」
「天秤が意志を持っていてね」
 そしてというのです。
「神様になっているのよ」
「そうですか」
「あと干支は国によって豹や猫もいるわね」
「ベトナムやモンゴルではそうですね」
「だから豹や猫もね」
 こうした生きもの達もというのです。
「神様になっているのよ、オズの国では」
「そうでしたか」
「そのことも覚えておいてね」
「はい、それで黄金の羊も」
 恵梨香は今から自分は連れて帰る彼のお話もしました。
「お羊座の神様のですね」
「親戚なのよ」
「そうなんですね」
「だから毛が金色なのよ」
「そういうことですか」
「ええ、では夜はね」
「その星座もですね」
「見ましょう」
 こうしたお話をしてでした。
 皆は東に進んでいきました、そしてです。
 やがてある場所に着きました、そこはどういった場所かといいますと。
 広い川で橋はありません、ですが小舟が一艘あってそこに日本の着物に襦袢そして編み笠という恰好の男の人がいました、ここで木挽きの馬は言いました。
「僕は泳いで渡ったから」
「舟のことはなのね」
「見たけれどね」
 それでもというのです。
「使わなかったからね」
「舟のことはなのね」
「意識しなかったよ」 
 こう恵梨香にお話します。
「これといってね」
「そうなのね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「川は別に危ない生きものもいなくて」
「安全なのね」
「そうだよ」
 このこともお話しました。
「だからね」
「安心してなのね」
「渡るといいよ」
 この川をというのです。
「そうしたらいいよ」
「魔法の絨毯や船を出して渡れるけれど」
 それでもとです、グリンダは言いました。
「けれどね」
「それでもですか」
「ここは渡し守の人がいるから」
 グリンダも恵梨香にお話します。
「それでね」
「だからですか」
「乗せてもらいましょう」
「それじゃあ」
「今からお話をしましょう」
 こうお話をしてでした。
 皆は小舟のところに行きました、すると。
 その人のお顔を見てです、恵梨香は言いました。見れば小柄でお猿さんみたいな感じの明るい顔立ちの人です。
「まさか猿飛佐助さんですか」
「おいらだってよくわかったな」
「だってお話でよく聞く様な」
「そうした感じだからかい」
「わかりました」
「水練の修行でここにいたんだがな」
 それでもとです、佐助さんは恵梨香に言いました。
「わかるんだな」
「いや、わかるのはこの娘だけだよ」
 このことは木挽きの馬が答えました。
「君のことを知っているね」
「そうなんだな」
「僕達は君達の名前は知っていても」
「顔まではだな」
「知らなかったんだ」
「そうなんだな」
「私は日本人ですから」
 また恵梨香が言います。
「佐助さんも他の十勇士の皆さんも」
「わかるんだな」
「はい、そして幸村さんのことも」
「殿のこともかい」
「皆さんオズの国に来ておられますね」
「ああ、大阪の陣が終わってな」
 佐助さんはこの時のことからお話しました。
「殿と一緒に秀頼様をお連れして薩摩まで逃れて」
「幸村さんも生きておられたんですか」
「ああ、歴史じゃ死んだことになってるけれどな」 
 その実はというのです。
「皆必死にな」
「秀頼様をお助けしてですか」
「そしてな」 
 そのうえでというのです。
「薩摩まで逃れたんだよ」
「そうでしたか」
「殿もだよ」
「そのお話を聞いてほっとしました」
「それで薩摩でずっと暮らしていて」
 それでというのです。
「神社に祀られていたけれどな」
「オズの国に入られたんですね」
「おいら達は皆に夢を与えるらしくてな」
「そういうことですか」
「ああ、だからな」
「今はオズの国で」
「幸せに暮らしてるぜ、修行もしながらな」
 佐助さんは恵梨香に明るく笑ってお話しました。
「殿の下でな」
「他の皆さんともですね」
「そうさ、十勇士全員がな」
 まさにというのです。
「オズの国で楽しく暮らしてるぜ」
「それはよかったです」
「よかったかい」
「大坂の陣の後どうなったか心配だったんです」
「おいら達が死んだと思っていたのかい」
「幸村さんも」
「そうだよな、歴史じゃ殿はあの戦でお亡くなりになってるからな」 
 佐助さんは腕を組んでしみじみとしたお顔で言いました。
「だからな」
「私達がそう思ってもですね」
「仕方ねえな、けれどな」
「生きていてですね」
「今はここにいるからな」
「安心していいですね」
「喜んでくれていいぜ」
 これが佐助さんの返事でした。
「そうしてくれてな」
「それじゃあ」
「それとだけれどな」
 佐助さんの方から言ってきました。
「あんた達川を渡るんだよな」
「はい、そのつもりです」
「そっちのお馬さんは見たしな」
 木挽きの馬を見て言います。
「川を渡って戻るのをな」
「そうなんですね」
「ああ、というかおいらもあんた達のこと知ってるぜ」
「私達全員のことをですか」
「あんた達はオズの国で有名人だからな」 
 それでというのです。
「もう知ってるぜ」
「そうだったんですか」
「お嬢ちゃん達のこともな」
 恵梨香自身にも言いました。
「もう知ってるぜ」
「そうだったんですね」
「けれど会ったのははじめてだぜ」
 佐助さんはにかっと笑って言いました。
「だから嬉しいぜ」
「そうですか」
「それで川を渡りたいならな」
 その場合はといいますと。
「乗りなよ」
「乗っていいんですか」
「その為の小舟だからな」
 それでというのです。
「乗っていきな、おいらの小舟は誰だって乗っていいんだよ」
「それで向こう岸まで渡してくれますか」
「そうさせてもらうぜ、どうだい?」
「宜しくお願いするわ」
 グリンダが佐助さんに微笑んで言いました。
「それではね」
「ああ、そういうことでな」
「お礼はこれでどうかしら」
 グリンダは佐助さんに宝石を出して言いました。
「渡してくれるね」
「おいおい、そんなのいらねえよ」 
 佐助さんはグリンダに笑って答えました。
「別にな」
「いらないのかしら」
「ああ、おいら等はそういうのには興味ないんだよ」
「宝石とかにはなのね」
「自分達が修行出来て飲んで食えてな」
 そうしてというのです。
「楽しく過ごせたらな」
「それでいいのね」
「殿の下にな、だからな」
「いらないのね」
「その気持ちだけで充分さ」
 感謝のそれでというのです。
「だからな」
「別にいいのね」
「ああ、それはグリンダさんで持って行ってくれよ」
「わかったわ」
「いや、気さくなだけでなく無欲なんだ」
 木挽きの馬は佐助さんのその性格に思わず言いました。
「そうなんだね」
「それがこの人達なの」
 恵梨香がその佐助さんに答えます。
「真田幸村さんと十勇士なの」
「こうした人達なんだ」
「どの人もとても強くて義侠心があって」
 そしてというのです。
「曲がったことはしないでね」
「無欲なんだ」
「そうした人達なの」
「立派な人達なんだね」
「立派じゃねえぜ、おいら達は」
 佐助さんはまた皆に笑って言いました。
「おいらとか青海は結構おっちょこちょいで才蔵や海野の旦那に怒られるしな」
「そうなんだ」
「殿は凄く優しくで怒らない方でもな」
 それでもというのです。
「それぞれ欠点があってな」
「立派じゃないんだ」
「殿以外は皆そうだぜ」
「そう言うんだね」
「けれど殿は本当に立派な方で」
 幸村さんはというのです。
「ずっと一緒にいられて幸せだぜ」
「オズの国でもそうでだね」
「本当にな、おいら達十人は永遠に殿にお仕えして一緒にいるんだ」
「何ていうかね」
 ガラスの猫は佐助さんのお話を聞いて言いました。
「凄い絆ね」
「それを感じるわね」
「ええ、これ以上ないまでにね」
 ガラスの猫は恵梨香に答えました。
「感じるわ」
「それがこの人達なのよ」
「真田十勇士なのね」
「そして幸村さんなの」
「日本のヒーローの人達ね」
「日本もヒーローは多いけれど」
「その中にいる人達なのね」
 ガラスの猫は佐助さんを見つつ頷きました。
「そういうことね」
「ええ、そうよ」
「何ていうかね」 
 ガラスの猫はこうも言いました。
「それぞれのお国でヒーローの感じが違うわね」
「それはあるね」
 モジャボロも頷きました。
「それぞれの国でね」
「オズの国に集まっても」
 木挽きの馬も言います。
「それぞれ違うね」
「アメリカのヒーローだとワイアット=アープさんとかビリー=クロケットさんとかね」
「オズの国にもいる人達だね」
「颯爽としていてね」
「格好良く勝つね」
「弱きを助けて悪を許さない」
「そんな人達でね」
 木挽きの馬はさらにお話しました。
「それで中国のヒーローだとね」
「関羽さんとかね」
「あと尉遅敬徳さん」
「義侠心があって力が強い」
「そんな人達で」
「そして日本のヒーローは」
「技があって物凄く絆を大事にするね」
 そうした人達だというのです。
「例え何があっても」
「どんな辛い時でもね」
「そして謙虚でね」
「偉そうでもないし」
「偉そうにしても意味ないしな、まあとにかく乗りな」 
 佐助さんはまた皆に言いました。
「船旅も楽しもうぜ」
「そうだね、じゃあね」
 モジャボロの弟さんが応えました。
「これからね」
「おう、乗りな」
「そうさせてもらうよ」
 皆こうしてでした、佐助さんの小舟に乗りました。小舟は皆が乗り込むと佐助さんが動かしてそうしてでした。
 動いていきました、佐助さんは立ったまたえんやとっと、という具合に船を進ませていますが皆はその中で。
 小舟の中から外をみます、川とその周りの景色を。そうしながら木挽きの馬がこんなことを言ってきました。
「こうして景色を見るのもね」
「いいわよね」
 恵梨香が応えました。
「これもまた」
「そうだね」
「ゆっくりと小舟が進んで」
「その中で自然の景色を見るのもね」
「いいものよね」
「川に野原に山に」
 小舟の中からそうしたものが見えます。
「そうしたものが見えてね」
「素敵よね」
「うん、歩いて進むのもいいけれど」
「こうしてね」
「旅をするのもいいね」
「そうでしょ」
「今思うよ」
「私もよ」
「何か自然とね」
 ナターシャが言ってきました、
「日本にいる感じがするわ」
「昔の日本にね」
 神宝も言います。
「そんな感じがするね」
「戦国時代とか江戸時代とかね」
 ジョージは具体的な時代を挙げました。
「その頃の感じがするね」
「時代劇の中にいるみたいな」
 カルロスはこう言いました。
「そんな風だね」
「ええ、オズの国でこんな感覚が楽しめるなんて」
 恵梨香は四人にも応えました。
「流石オズノ国ね」
「お伽の国だからね」
「昔の日本も楽しめるね」
「いつも何かがあるから」
「それでね」
「そうよね、オズの国にいると」
 それならというのです。
「昔の日本も楽しめるわね」
「勿論他の国のこともね」
「何かと楽しめるね」
「色々な国の昔の時代もね」
「それが出来るね」
「ええ、オズの国は同じ時代のアメリカが反映されて」
 そしてというのです。
「アメリカに色々なものがあるとね」
「それが反映されてね」
「色々なものが出て来るね」
「日本だってそうだね」
「アメリカに日系人の人達がいたら」
「こうして日本もあるのよね」
「だからおいら達もいるのさ」
 小舟を動かす佐助さんも言ってきました。
「こうしてな」
「そうなりますね」
「最初この国に来た時は驚いたけれどな」
「安土桃山時代の日本と全く違うのね」
「おいら達全員何が何だかわからなくてな」
 それでというのです。
「もう十勇士で一番落ち着いてる才蔵でも驚いていたぜ」
「あの人までだったんですね」
「けれど殿はその中でも落ち着いておられて」
 幸村さんがというのです。
「それでな」
「幸村さんに言われてですか」
「皆落ち着いてオズの国の人達と話してな」
「オズの国のことをわかって」
「落ち着けたぜ」
「どんな国かわかって」
「それでな」 
 そのうえでというのです。
「わかったぜ」
「そうだったんですね」
「いや、どんな国かわかったらな」 
 今の様というのです。
「とんでもなく面白い国だな」
「そうですね」
「それで今はな」
「皆さんで修業をされたりしてですね」
「殿と一緒に楽しく過ごしてるさ」
 オズの国でというのです。
「この通りな」
「そういうことですね」
「こうして小舟の船頭やって動かすのもな」
 今していることもというのです。
「楽しいぜ」
「これも修行って言っておられましたし」
「水のこともな、泳ぐことだってな」
 こちらもというのです。
「毎日励んでいるしな」
「忍者は泳ぐことも必須ですからね」
「泳げないとな」
 その場合はといいますと。
「もう川とか湖とか堀とかどうしようもないからな」
「中に入れなくてですね」
「そうなるからな」 
 だからだというのです。
「泳げないとな」
「駄目ですね」
「忍者はな」
「忍者って忍術だけじゃないんだね」
 木挽きの馬はこのことがわかりました。
「そうなんだね」
「ああ、忍術だけじゃなくてな」
「水泳もなんだ」
「後は手裏剣と剣術もな」 
 こうしたものもというのです。
「大事だぜ、おいら達十勇士はそれぞれ特技があるしな」
「凄い技を持っているんだ」
「ああ、例えばおいらは猿みたいに動けてな」
 それだけの身のこなしでというのです。
「木の術が得意だぜ」
「木のなんだ」
「木遁の術な、木の葉隠れとかも出来るぜ」
「木の葉を嵐みたいにさせるんだぜ」
「それが出来るぜ、元々山育ちだしな」
 このこともあってというのです。
「出来るぜ」
「それが佐助さんの術で」
「それぞれ特技があるんだよ」
 十勇士の人達はというのです。
「そうなんだよ」
「成程ね」
「おいらもうすぐここの修業は終わってな」
「戻るんだ」
「殿のところにな、渡し守も元の人に戻るぜ」
「元々ここの渡し守の人はお爺さんだったわね」
 グリンダも言ってきました。
「そうだったのよ」
「その爺さんに話をしてな」
「代わってもらってたのね」
「おいらが水練とかの修行の間は爺さんが渡し守をしてな」
「それ以外の時はなのね」
「おいらがしてたのさ」
 こうグリンダさんいもお話します。
「これまでな、それでもな」
「もうすぐ終わって」
「殿のところに戻るさ」
「そういうことね」
「殿にも会ってくれよ」
 幸村さんにもというのです。
「皆な」
「是非お会いしたいです」
 こう言ったのは恵梨香でした、目が輝いています。
「機会があれば」
「それは何よりだな」
「あの人と織田信長さんと坂本龍馬さんと源義経さんは」
「是非なんだな」
「オズの国におられたら」
 それならというのです。
「機会があれば」
「どの人もいるぜ」
「そうなんですか」
「ああ、日本のヒーローだからな」
「それでなんですね」
「他の人達だってな」
 今恵梨香が言った人達以外もというのです。
「いるからな」
「お会いする機会があれば」
「会ってな」
 そしてというのです。
「お話しろよ」
「わかりました」
「そういうことでな、しかしな」
「しかし?」
「嬢ちゃんみたいに喜んでくれたらな」
 それならというのです。
「おいら達も嬉しいぜ」
「そうですか」
「やっぱり人間笑顔が一番だぜ」
 こうも言う佐助さんでした。
「人に向けていいのは笑顔だけってな」
「そうですか」
「おいらは思うしな、ただ悲しい気持ちになったらな」
「その時はですか」
「おいら達に言えよ」
「十勇士の皆さんにですか」
「そして殿にな」
 幸村さんにというのです。
「絶対に笑顔にしてやるからな」
「どれだけ悲しくてもですか」
「ああ、その時は心から笑わせてやるよ」
 佐助さんは恵梨香に明るい笑顔で約束しました。
「絶対にな」
「そうしてくれますか」
「オズの国では悲しいことは殆どないけれどな」
「苦しいことも困ったことも」
「外の世界よりずっと少ないけれどな」
 それでもというのです」
「その時はな」
「佐助さん達がですか」
「笑顔にしてやるよ」
「じゃあその時も」
「おいら達に言えよ」 
 こう恵梨香に言いつつです、佐助さんは小舟を動かしてです。
 向こう岸に向かいました、そしてでした。
 向こう岸に着くとです、皆は小舟を下りて佐助さんにお礼を言いました。その後で、でした。佐助さんは。
 皆に対して笑顔で言いました。
「じゃあまたな」
「はい、お会いしましょう」
 まずは五人が挨拶を返してでした。
 他の皆も挨拶をして別れました、そうしてまた黄色い煉瓦の道を進んで行きますがその間恵梨香はずっと笑顔でした。
「まだ嬉しいんだ」
「ええ、凄くね」 
 恵梨香は木挽きの馬の問いに答えました。
「佐助さんにお会い出来て」
「本当に好きなんだね」
「だってヒーローなのよ」
「日本人にとってだね」
「真田幸村さんと十勇士の人達はね」
「だからだね」
「敵の徳川家康さんも凄い人だけれど」
 それでもというのです。
「その家康さんを最後まで苦しめたから」
「強くて格好良くてだね」
「曲がったことが嫌いでね」
「忠誠心もあってだね」
「まさに義に生きた人達だったから」
 それでというのです。
「日本人にとってはヒーローだから」
「そのヒーローの人達にお会い出来て」
「よかったって思うから」  
 それ故にというのです。
「私もね」
「今も上機嫌なんだね」
「そうなの」
「成程ね。けれど恵梨香もヒーロー好きなんだね」
「それはね」
 恵梨香も否定しませんでした。
「そうね」
「うん、歴史も好きなんだね」
「そうなの。あとね」
「あと?」
「さっき佐助さんにもお話したけれど」
 こう前置きして木挽きの馬に言いました。
「私織田信長さんや坂本龍馬さんもね」
「好きなんだ」
「特に龍馬さんがね」
「その人が好きなんだ」
「そうなの、お会い出来たら」
 その時はといいますと。
「サインも貰いたいわ」
「何かタレントさんみたいだね」
「実際にそこまで好きよ」
「ううん、凄い人だったんだね」
「器が大きくて頭がよくてね」
「そうした人だったんだ」
「それにね」
 恵梨香はさらに言いました。
「剣術も出来たのよ」
「強くもあったんだ」
「そうした人だったから」
「お会いしたいんだね」
「オズの国におられるなら」
 佐助さんにそのお話を聞いてというのです。
「お会いしたいわ」
「そうなんだね」
「ええ、是非ね」
「そういえばだけれど」
 ここでモジャボロが言うことはといいますと。
「真田十勇士の人達は大坂の陣でも皆生き残ったんだね」
「そうみたいですね」
「それも凄いね」
「幸村さんも生きていて」
「それで主の人をお連れしてだね」
「生き延びていたんですね」
「激しい戦だったんだよね」
 その大坂の陣はです。
「そうだったんだね」
「ですが」
「それでもだね」
「幸村さん達は果たしたんですね」
「主の人を連れて皆生き延びれたんだね」
「そう言われていましたね」
「そのことも凄いよ」
 モジャボロはしみじみとした口調で言いました。
「本当にね」
「そうですよね」
「まさにヒーローだね」
「はい、ですから私は大好きなんです」
 十勇士の人達がというのだ。
「お会い出来て何よりです、それじゃあ」
「これからもだね」
「先に進みましょう」
「そうだね、もう羊の居場所はわかっているし」
 モジャボロは笑顔で応えました。
「それならね」
「このままですね」
「先に進んでね」
「羊のところに行けばいいですね」
「木挽きの馬の案内を受けてね」
 羊がいる場所を知っている彼のというのです。
「そうしてね」
「行けばいいですね」
「途中何があっても」
 それでもというのです。
「先に進んで行こうね」
「わかりました」
「それとね」
 さらに言うモジャボロでした。
「途中何があってもね」
「それでもですよね」
「落ち着いて乗り越えていこう」
「そうすれば問題ないですね」
「焦らなかったら」
 それならというのです。
「どんな困ったことがあってもね」
「何とかなりますね」
「そう、だからね」
「これからですね」
「先に進んでいこう」
 こうお話しながら先に進むのでした、一行は黄金の毛の羊がいるその場所に皆で仲良く向かって行きました。








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