『オズの木挽きの馬』
第四幕 真田十勇士
ガラスの猫は黄色い煉瓦の道を進みながら恵梨香に尋ねました。
「あの忍犬さんが真田幸村さんと十勇士のことをお話していたわね」
「ええ、オズの国にもおられるのね」
「忍者の人達よね」
「幸村さんはお侍さんでね」
恵梨香はガラスの猫にこのことからお話しました。
「それで十勇士の人達はね」
「忍者なのね」
「幸村さんにお仕えするね」
「そうなのね」
「武士の身分も持っていたかも知れないけれど」
「基本忍者なのね」
「十人共ね」
こうガラスの猫に説明します。
「そうなのよ」
「それで十人共かなりの腕を持っているの」
「それぞれ忍術を使っていて」
そしてというのです。
「物凄く強いのよ」
「そんな人達なの」
「昔から日本のヒーローでね」
「幸村さんって人と一緒に戦ったりしていたの」
「豊臣家の為にね、徳川家康さんとね」
「そうなのね」
「徳川家康さんは天下を取ったけれど」
それでもというのです。
「まだ豊臣家、前の天下人のお家が残っていて」
「ああ、豊臣家をどうしようか」
「対立もあって」
「家康さんは豊臣家に何かしようともなのね」
「そんなこともあって。実際に戦にもなって」
それでというのです。
「幸村さんは豊臣家にお仕えする様になって」
「それでなのね」
「その前から幸村さんは徳川家と戦もしていたし」
「敵同士で」
「徳川家と戦っていたから」
だからだというのです。
「争っていてね」
「そこで十勇士の人達が活躍したのね」
「幸村さんもね」
「そうした人達なの」
「特に大坂の陣の最後で大活躍して」
そしてというのです。
「私達も知っているのよ」
「そういうことなのね」
「ええ、わかってくれたかしら」
「まあね」
ガラスの猫は恵梨香に答えました。
「ある程度だけれどね」
「わかってくれたの」
「それで幸村さんは最後どうなったの?」
「大坂の陣で死んだの」
「そうなったの」
「そう言われているわ、ただ十勇士の人達はどうなったか」
このことはといいますと。
「わからないの」
「そうなの」
「幸村さんと運命を共にしたともね」
その様にともというのです。
「生き延びたともね」
「言われているの」
「その様にもね、幸村さんも生き延びたとも言われているし」
「実は死んでいなくて」
「そうも言われているの」
「そうなのね」
「私としては生きていて欲しいわ」
恵梨香はこうも言いました。
「幸村さんにはね」
「その大坂の陣で死んでいなくて」
「それでね」
「そうなのね」
「けれど今はオズの国にいるから」
木挽きの馬がこのことを言ってきました。
「だからね」
「ええ、いいわね」
「そうなるね」
「そうね」
恵梨香は木挽きの馬のその言葉には笑顔で頷きました。
「オズの国におられるなら」
「しかも十勇士の人達と一緒にね」
「それならいいわね」
「そうだね」
「ええ、この国におられるなら」
「オズの国はお伽の国だから」
グリンダは恵梨香にこのことをお話しました。
「人に夢を与える人達はね」
「オズの国に来られますね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「幸村さんも来てね」
「十勇士の人達もですね」
「そうなったのよ」
「そうですか」
「オズの国は外の世界では絶対に起こらないことが起こる国よ」
これはお伽の国だからです。
「だからね」
「あの人達もですね」
「そして他の人達もね」
「オズの国に来てくれているんですね」
「ボームさんもでね」
王宮にいるこの人の名前も出ました。
「そしてね」
「幸村さん達もですね」
「そうなのよ、じゃあその幸村さん達にお会いする時も来るって期待しながらね」
そうしてというのです。
「一緒に行きましょう」
「はい、牧場まで」
「今はそうしましょう」
こうお話してでした、皆はです。
煉瓦の道を進んでいきました、そしてです。
森の中に入ったところでモジャボロが言いました。
「この森は日本的だね」
「そうだね、木の感じがね」
弟さんはお兄さんの言葉に頷きました。
「そうなっているね」
「そうだよね」
「生きもの達もね」
モジャボロは木々の間や枝の上にいる彼等を見ました、栗鼠や狐に狸、熊、鹿といった生きもの達がいます。
「そうだね」
「うん、モモンガもいるし」
「狼だってね」
「ニホンオオカミですね」
恵梨香はここで自分達の後ろにいる一匹の狼を見ました、見れば普通の狼より小さくて動きもすばしっこいです。
「あの狼は」
「そうだよ、あの狼はね」
「あの狼はずっといなくなったって思われていました」
「外の世界ではだね」
「それがまだいるってです」
「わかったんだね」
「日本の山奥に」
そこにというのです。
「いることがわかりました」
「それはよかったね」
「人が道を歩いていますと」
「こうした森の中をなんだ」
「日本じゃ山が多くて」
「山道になるんだね」
「山道を歩いていますと」
人がです。
「後ろからついて来るって言われています」
「それがニホンオオカミなんだね」
「そうなんです」
「何でついて来るのかな」
木挽きの馬は恵梨香に尋ねました。
「ニホンオオカミは」
「それが習性なの」
「ニホンオオカミの」
「そうなの、だからね」
それでというのです。
「別に何もしてこないわ」
「そうなんだね」
「カリダみたいに襲ってきたりとかはね」
「しないんだね」
「ただ自分達の縄張りに入ってきたから」
ニホンオオカミのそれにというのです。
「そしてね」
「警戒しているんだ」
「縄張りを出るまでああしてね」
「ついてきているんだね」
「そうしているの」
こう木挽きの馬にお話します。
「だから怖がらなくてもいいし」
「何かって思わなくても」
「いいの」
「安心していいんだね」
「そうよ」
「その通りよ」
ニホンオオカミも言ってきました、穏やかな大人の女の人の声です。
「私達は貴方達が縄張りから出ればね」
「もうついて来ないんだ」
「そうよ、習性としてね」
恵梨香の言う通りにというのです。
「そうしているのよ」
「そうなんだ」
「だから気にしないでいいわ」
「後ろからついてきても」
「本当に何もしないから」
「縄張りから出ればだね」
「私達はついて来ないから」
「そうなんだね」
木挽きの馬も納得しました。
「恵梨香の言う通りだね」
「そうよ、それに狼は人を襲わないでしょ」
「元々そうだね」
「あと私達は森にいるから」
それでというのです。
「人里に入ることもね」
「ないんだ」
「そうよ、草原にも出ないのよ」
「狼は草原にもいるけれど」
「ニホンオオカミは森の中が住む場所だから」
「そういうことだね」
「そうなの」
木挽きの馬にこのこともお話します。
「そうした狼ってことはわかっていてね」
「うん、僕もわかったよ」
「そういうことでね」
「それに狼って神様だったのよね」
恵梨香はこのことも言いました。
「日本ではね」
「へえ、そうだったんだ」
「大きな神様だから『おおかみ』なの」
「その呼び名なんだ」
「そうなっているの」
「ふうん、神様だったんだね」
「畑を荒らす獣を食べてくれていたから」
それでというのです。
「そう呼ばれていたのよ」
「成程ね」
「だから怖がられるよりもね」
「有り難く思われていたんだ」
「そうだったの」
「他の国じゃ怖がられたっていうけれど」
木挽きの馬は外の世界のことを言いました。
「日本じゃ違ったんだね」
「ええ、そうなの」
「そのこともわかったよ」
「ちなみに狼がいない国もあるよ」
カルロスはこう言ってきました。
「僕の国がそうだよ」
「狼は沢山の国にいるけれど」
神宝も言います。
「ブラジルとかにはいないね」
「草原にも森にもいてね」
ジョージも狼のことを言います。
「寒い国にも暖かい国にもいるけれど」
「ブラジルにはいないわ」
ナターシャもそうだと言います。
「暑い国にはいないのよね」
「そうみたいね」
ニホンオオカミも言ってきました。
「聞く限りだと」
「貴女も聞いているのね」
「ええ、そうね」
実際にというのです。
「私もね」
「そうなのね」
「狼は暑い国にはいなくて」
「ジャングルにもよね」
「いないわよ」
「オズの国にはジャングルもあるけれど」
グリンダも言います。
「確かに狼はいないわね」
「そうですよね」
「そう、そしてね」
それでというのです。
「ヤブイヌとかがいるのよ」
「アマゾンの犬ですね」
「それがいるの」
「そうなんですね」
「イヌ科の生きものはそれ位よ」
そのヤブイヌだというのです。
「オズの国のジャングルにいるのは」
「後はネコ科ですね」
「ジャガーとかオセロットとか」
そうしたというのです。
「それとね」
「豹ですね」
「そうした生きものがいるの」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」
さらに言うグリンダでした。
「色々な生きものがいるのよ」
「ジャングルでも」
「そうなの、それとね」
「それと?」
「オズの国は本当に色々な場所があるから」
恵梨香にこのこともお話しました。
「機会があればね」
「そうした場所をですね」
「巡っていくといいわ」
「わかりました、これからも」
「そうしてね」
「こうして私達にも会えたしね」
ニホンオオカミも言ってきました。
「オズの国は機会があればね」
「色々な場所によね」
「行けばいいわ」
こう言うのでした。
「それに機会も多いでしょ」
「そうね、これまで何度もオズの国に来ているけれど」
恵梨香も頷きました。
「その都度ね」
「機会があったわね」
「ええ」
その通りとです、恵梨香は狼に答えました。
「それはね」
「そうよね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「色々と見て回ってね」
「そうさせてもらうわね」
「これからもね」
「オズの国に来たら」
「そうしてね、それとね」
ここで、でした。狼は。
ぴたりと足を止めてそうしてこう言いました。
「じゃあね」
「あっ、私達は貴女の縄張りを出たの」
「ええ、私達の群れのね」
それのというのです。
「今出たわ」
「だからなのね」
「もう私は後ろからついて来ないわ」
「そうするのね」
「あくまで縄張りを出るまでだから」
後ろからついて来ることはというのです。
「これでね」
「終わりね」
「ええ、機会があったらね」
その時はというのです。
「また会いましょう」
「またね」
こうお話して一行はニホンオオカミと別れました、そしてです。
皆はさらに先に進みました、その中で今度はです。
柿を見付けました、木挽きの馬はその柿を見上げて言いました。
「そういえば柿も」
「そう、日本のね」
恵梨香がまた答えました。
「果物だから」
「日本のものだね」
「そうなの、美味しいわよ」
「恵梨香は柿好きなんだ」
「大好きなの」
にこりと笑っての返事でした。
「実はね」
「そうなの」
「それでね」
恵梨香はさらに言いました。
「これからね」
「柿を食べるんだ」
「そうしたいけれど」
「柿は宮殿でも食べられるけれど」
グリンダが言ってきました。
「それでも」
「何かありますか?」
「こうした木に実っている柿は」
これはといいますと。
「ずっと食べていなかったわ」
「そうなんですか」
「柿も他の果物も切られていて」
「それで、ですか」
「すぐに木からもいでね」
それでというのです。
「食べることはね」
「ないですか」
「そうなの」
こう恵梨香にお話しました。
「だから今からね」
「食べますか」
「そうしたいわ」
「そうですか、それじゃあ」
「今から食べましょう」
その柿をというのです。
「これからね」
「それじゃあ」
「はい、食べましょう」
「今から」
こうお話してです、そしてでした。
グリンダが最初にでした、木から柿をもいで。
そのうえで食べました、するとこう言いました。
「確かにね」
「柿が美味しいですね」
「ええ」
実際にというのです。
「新鮮でね」
「確かに」
恵梨香もその柿を食べて言います。
「この柿はです」
「美味しいわね」
「しかしね」
モジャボロも言いました。
「採れたての柿は宮殿では食べられないんだ」
「どうしてもね」
「それで一個丸ごともだね」
「私のお城ではね」
「食べられないんだね」
「少なくとも私はね」
「柿でも林檎でも一個丸ごとが一番美味しいと思うけれど」
そうして食べることがというのです。
「それがないんだね」
「そうなの」
どうしてもというのです。
「時々そうしたくても」
「切られて出されるんだね」
「ええ、それがお城の決まりで」
それでというのです。
「そうなっているのよ」
「また変わった決まりだね」
「変えるべきかしら」
「食べたい様に食べたらいいよ」
これがモジャボロの提案でした。
「やっぱりね」
「そうよね」
「だからね」
「お城でも」
「その時にね」
食べる時にというのです。
「お料理をする人に言って」
「そのうえで」
「そう、そのままで食べたい時は食べればいいよ」
「それじゃあそうするわね」
「その様にね、しかし宮殿はそれぞれ何かと決まりがあるね」
このことをです、モジャボロは今実感しました。
「本当に」
「そうですね、オズマ姫の王宮でも決まりがありますし」
「自由な様でね」
「細かい決まりがありますね」
「どうしてもね」
「それも宮殿なんですね」
「うん、法律とは別にね」
モジャボロは恵梨香にお話しました。
「決まりがあるのが世の中だけれど」
「オズマ姫の宮殿もそうで」
「そしてグリンダさんの宮殿でもね」
「そのことは同じなんですね」
「けれど決まりは変えられるから」
「変えるべきものは変えればいいですね」
「そうだよ」
こう恵梨香に言いました。
「そうすればね」
「そうですか」
「そう、だからね」
それでというのです。
「グリンダさんもだよ」
「決まりがどうかってなったら変えるといいんですね」
「そうだよ、自然と決まりが出来ることもあるけれど」
「そうした決まりもですね」
「変えればいいんだ」
「そういうことですね」
「うん、だから柿も」
そして他の果物もというのです。
「切って食べたい時は切ってね」
「そのまま食べたい時はですね」
「そのままでいいんだよ」
「そういうことですね」
「そうだよ、しかしこの柿は美味しいね」
モジャボロは二つ目の柿を食べつつこうも言いました。
「甘くて歯ざわりもよくて」
「そうですよね」
「これは美味しいよ」
「はい、私柿は元々好きですが」
恵梨香もその柿を食べつつ言います。
「この木の柿は特にです」
「美味しいね」
「本当に」
「しかも取ったらそこからまた新しい実が出て来るから」
弟さんも食べながら言います。
「幾らでも食べられるね」
「これもオズの国ですね」
恵梨香は弟さんにも応えました。
「本当に」
「そうですね」
「つまり幾らでも食べられるってことだね」
取った先から新しいものが出るならというのです。
「つまりは」
「そうですよね」
「じゃあ僕達は今はね」
「美味しい柿をですね」
「食べようね」
「そうしましょう」
「いや、日本に来てからはじめて食べた果物だけれど」
カルロスも言います。
「これがまた美味しいんだよね」
「ええ、日本の素敵な食べものの一つよ」
ナターシャもいつものクールな微笑みではなくにこりとしています。
「柿は」
「しかも栄養が凄くあるんだよね」
神宝はこのことを言いました。
「柿って」
「美味しくて栄養があるなんてね」
ジョージも食べて笑顔になっています。
「最高だよね」
「ええ、だから私も柿が好きなの」
恵梨香は四人にも応えました。
「秋になると柿と梨をね」
「いつも食べてるんだね」
「おやつには」
「そうしているんだね」
「秋になると」
「そうなの、果物全般好きだけれど」
その中でもというのです。
「秋は柿ね」
「そうなんだね、そういえばね」
木挽きの馬がここでこう言いました。
「柿は昔オズの国にはなかったね」
「日系人がいなかったからよね」
「そう、だからね」
それでとです、木挽きの馬は恵梨香に答えました。
「なかったんだよ」
「そうよね」
「他にもね」
「色々なかったのね」
「お寿司も天麩羅もおうどんもお好み焼きもなくて」
そしてというのです。
「柿もね」
「なかったのね」
「うん、河豚だってね」
「食べなかったのね」
「そうだよ、すき焼きだってね」
「なかったのよね」
「そうだよ、随分変わったよ」
こう恵梨香にお話しました。
「オズの国もね、中国だって入ったしね」
「日本以外に」
「そう、中華料理も食べられる様になったし」
「中華街もある様になったわね」
「うん、そこもね」
「変わったのね」
「オズの国はどんどん賑やかになって」
そしてというのです。
「これからもね」
「賑やかになっていくわね」
「そうなっていくよ」
まさにというのです。
「この国はね」
「どんどん変わっていく国でもあるわね」
「しかもいい方向にね」
「皆が幸せになれる」
「そうなっていくんだよ」
「お侍もお公家さんも陰陽師もいる様になって」
今度はガラスの猫が言います。
「そして忍者もね」
「同じよね」
「そうよ」
「ドロシーさんがはじめてオズの国に来られた時は」
「そう、本当にね」
それこそというのです。
「今よりずっとあるものが少なかったでしょ」
「ええ、そうだったわ」
「それがね」
「どんどん色々なものが増えて」
「色々な人が出て来てね」
「今に至るわね」
「そうよ、そして死の砂漠は大陸の端に行ってね」
そしてというのです。
「オズの国は大陸全体になったのよ」
「リンキティンク王の国とかもオズの国に入って」
「大陸の国全部がオズの国に入ったのよ」
「そうなったわね」
「大陸の周りの島々もね」
そうした場所もというのです。
「オズの国になったわ」
「そうよね」
「そうなっていったから」
だからだというのです。
「オズの国は変わっていったし」
「これからも変わる」
「そうなるのね」
「ええ、そうよ」
こう恵梨香にお話しました。
「ずっと変わっていく国よ」
「そういえばね」
また木挽きの馬が言ってきました、馬とガラスの猫は食べていませんが他の人達は柿をどんどん食べています。
「服はあまり変わっていないね」
「そうね、オズの国ってね」
恵梨香は木挽きの馬の言葉に頷きました。
「服は変わっていないわね」
「そうだね」
「ええ、人の大きさは変わってもね」
「昔の人達はずっと小さかったよ」
「大体背は大人の男の人で一四五位だったわね」
「今は一七五以上は普通にあるよ」
そうなっているというのです。
「今はね」
「そうよね」
「関羽さんみたいな人もいる様になったし」
「二メートル以上ある人もよね」
「いるよ、ドロシーさん達はあまり変わっていないけれどね」
その背はです。
「けれどね」
「身体は大きくなったわね」
「多分外の世界のアメリカ人と同じ位だよ」
それ位の大きさだというのです。
「今のオズの国の人達はね」
「そうよね」
「人の背も変わるんだね」
木挽きの馬の言葉はしみじみとしたものになっていました。
「オズの国も」
「あらゆるものが変わっていくのね」
「うん、ただこの国では服はね」
「あまり変わらないわね」
「外の世界じゃ違うみたいだけれどね」
「結構色々なファッションがあるわよ」
恵梨香は木挽きの馬に柿を食べながら言いました。
「本当にね」
「ナターシャの服装みたいにだね」
「ナターシャの服はゴスロリね」
「そう言われているものだよね」
「私もロリータファッション多いし」
いつも着ている服はというのです。
「その他にもね」
「色々な服があるね」
「外の世界はね」
「そうだよね」
「そこはね」
本当にというのです。
「違うわね」
「外の世界とオズの国はね」
「服装が色々変わることは」
「本当にね」
まさにというのです。
「そこはね」
「そうしたところも面白いわね」
グリンダは柿を上品に食べつつ言いました。
「オズの国と外の世界の違いを知ることも」
「そうなんですね」
「ええ、私はそう思うわ。それじゃあ柿をお腹一杯食べたら」
グリンダはそれからのお話もしました。
「またね」
「歩きますね」
「そうしましょう」
「わかりました」
「それじゃあね」
グリンダはにこりと笑ってでした、恵梨香に言いました。食べているうちに一行だけでなく森の他の生きもの達もでした。
柿のところに集まって食べはじめています、そうして一行は森の皆と一緒に柿をお腹一杯楽しんで、でした。
旅を再開しました、そうして夕方になった頃に森を出ることになりました。木挽きの馬は森を出てから言いました。
「いや、この森も面白かったね」
「そうね」
「オズの国は本当にね」
「何処も面白いわね」
「そうだね、じゃあこれからの旅も」
「楽しんでよね」
「行こうね」
こう恵梨香に言いました。
「これからも、それとね」
「それと?」
「恵梨香柿幾つ食べたかな」
「五つ食べたわ」
恵梨香はすぐに答えました。
「それだけね」
「食べたんだね」
「ええ、こんなに柿を食べたことは」
五つもというのです。
「なかったわ」
「おやつで食べたね」
「ええ、けれどそのおやつにしても」
それでもというのです。
「柿を五つ食べたことはね」
「なかったんだね」
「そうだったわ」
実際にというのです。
「これまではね」
「そうだったんだね」
「とても美味しかったから」
それでというのです。
「ついついね」
「五つも食べたんだね」
「そうだったわ、けれどよく歩いたから」
そうしたからというのです。
「もうね」
「お腹が空いてきたとか?」
「そうなってきたわ」
「そうなんだね」
「この調子で夜になったら」
日が落ちるまで歩けばというのです。
「もっとね」
「お腹が空いて」
「そしてね」
「晩ご飯もだね」
「美味しく食べられる様になるわ」
「そうなんだね」
「晩ご飯も楽しみよ」
恵梨香はにこりと笑ってです、木挽きの馬に言いました。
「これからは」
「そのこともいいね、ただね」
「ただ?」
「恵梨香も他の皆もよく食べるね」
五人共というのです。
「それも美味しく」
「そうね、私達は皆ね」
「よく食べているね」
「外の世界でもそうだけれど」
「オズの国でもだね」
「というかオズの国だと余計にね」
外の世界にいる時以上にというのです。
「食べているわね」
「そうなのね」
「そう、本当にね」
そうなっているというのです。
「オズの国の食べものが美味しいものばかりだから」
「それでだね」
「外の世界にいる時以上に食べているわ」
「そうなっているんだね」
「ええ、しかもいつも遊んで歩いてだから」
それでというのです。
「身体を動かしているから」
「余計にだね」
「食べものがね」
「美味しくて」
オズの国の食べものが美味しいものばかりだけでなくというのです。
「余計にね」
「食べているんだ」
「そうなの、そしてね」
「そして?」
「今夜も楽しみだわ」
晩ご飯もというのです。
「何が出るか」
「そうなんだね、僕は食べないけれど」
「それでもなのね」
「皆が美味しいものを食べて笑顔になって」
「その笑顔を見てなのね」
「心の栄養にさせてもらうよ」
こう言うのでした。
「是非ね」
「それが貴方達のお食事ね」
「そうだよ、オズの国には食べる必要のない人達もいるね」
「かかしさんや樵さんもそうだし」
「つぎはぎ娘やチクタクもね」
この人達もというのです。
「そうだよね」
「その人達については」
「皆が食べて笑顔になるのを見て」
そしてというのです。
「栄養にしているんだよ」
「心の栄養ね」
「これが凄く大事ってことはわかるでしょ」
ガラスの猫も言ってきました。
「そうでしょ」
「ええ、身体への栄養が必要なくても」
恵梨香も答えます。
「それでもね」
「心への栄養はね」
「皆が必要だから」
「それでね」
「貴方達は私達の笑顔を見ているのね」
「そうよ、笑顔を見ることはね」
このことはというのです。
「その人の最大の栄養よ」
「心のそれなのね」
「そうなのよ」
「そうよね、このことがわかったわ」
恵梨香はガラスの猫ににこりと笑って答えました。
「私もね」
「そうよね」
「オズの国に来てからね」
「それは何よりよ」
「それとね」
「それと?」
さらにと言うのでした。
「寝ることだけれど」
「ああ、そのことね」
「貴方達は夜のお星様やお月様を見てよね」
「それもね」
そちらもというのです。
「心の栄養になっているのよ」
「お星様やお月様も」
「そうなのよ、あんた達は寝て」
「貴方達はそうしたものを見ておしゃべりをして」
「私達だけで遊んだりもしてね」
そうしたこともしてというのです。
「楽しんでね」
「心の栄養にしているわね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「私達はいつも心の栄養が満たされているのよ」
「それもいいことね」
「最高よ」
これがガラスの猫の返事でした。
「それは」
「そうよね」
「それとね」
「それと?」
「あんた達のオズの国についての詳しさは」
このことはといいますと。
「最初からかなりのものだったわね」
「そのことね」
「やっぱりボームさんのお陰ね」
「あの人がずっとね」
「オズの国のことを本に書いていたからよね」
「それで私達も知っていたの」
そうだったというのです。
「オズの国のことをね」
「細かくよね」
「そうだったのよ」
こうガラスの猫に言います。
「だから私達もこの国に来ても」
「詳しかったのね」
「貴女のことも知っていたのよ」
「私のことは知っていて当然よ」
「それはどうしてなの?」
「だってこんなに奇麗なのよ」
自慢のその身体を見せて言います、ガラスの透き通ったそれを。
「それならね」
「知っていて当然なの」
「そうよ、私のことはね」
「そうなのね」
「あとドロシー達のこともね」
「あの人達のことを知らなかったら」
それこそというのです。
「もうオズの国を知らないとしかね」
「ああ、言えないわね」
「もうドロシーさんなくてオズの国は知られなかったわ」
皆にというのです。
「だからね」
「それでなの」
「あの人達を知らないと」
「オズの国もなの」
「知らないと言っていいわ」
「何か私より有名人みたいね」
「それはね」
本当にというのだ。
「やっぱりね」
「私よりドロシーの方が有名ね」
「そのことはね」
「まあドロシーなら仕方ないわ」
「あら、そこで私の方がって言うと思ったのに」
「オズの国でドロシーはオズマ姫と並ぶ有名人よ」
だからだというのです。
「もうね」
「貴女より有名でもなの」
「そのことは当然のことだから」
それでというのです。
「いいのよ」
「そうなの」
「そう、だからいいのよ」
「そうなのね」
「ええ、いいわ」
本当にというのです。
「私もね」
「ドロシーさんとオズマ姫はなのね」
「別格だって思っているから」
「それでそう言うのね」
「そうよ、だからね」
「お二人にはそう言うのね」
「そういうことよ」
こう恵梨香に返しました。
「私もね」
「そうなのね」
「ええ、あとグリンダいいかしら」
「どうしたの?」
グリンダもガラスの猫に応えました。
「若しかして牧場まであとどれ位か、かしら」
「ええ、どれ位かしら」
「明日には着くわ」
グリンダはガラスの猫ににこりと笑って答えました。
「そうなるわ」
「そうなの」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「明日は牧場に入って」
「何があったのかを聞くのね」
「そうしましょう、いいわね」
「わかったわ、明日ね」
ガラスの猫はグリンダの言葉に頷きました、そうしてでした。
一行は夜になると休みました、晩ご飯はバーベキューをお腹一杯食べて楽しんでそうしてテントの中で寝ました。