『オズの木挽きの馬』




                第二幕  グリンダのお友達

 一行はグリンダのお城にすぐに着きました、グリンダのお城つまり宮殿の周りに今は街があってです。
 城壁に囲まれています、恵梨香はその城壁と門を見てこんなことを言いました。
「これがお城よね」
「そうだよ、お城は街だよ」
 木挽きの馬が答えました。
「街は城壁で囲まれていてね」
「それでお城よね」
「そうだよ」
「そうなのよね、日本以外の国だと」
 恵梨香はこう言うのでした。
「お城って街なのよね」
「恵梨香は今お城は宮殿のことと考えているね」
「ええ、日本でお城は街じゃないの」
「そうだったね」
「お殿様が住む天守閣のあるお城があって」
「大阪城みたいなだね」
「ええ、あの街にあったわね」
 恵梨香はかつて自分達が行った大阪にとても近い街のお話をしました。
「立派な天守閣があってね」
「周りに堀や石垣や城壁や櫓があるね」
「そうしたお城があって」
 そしてというのです。
「周りをね」
「街が囲んでいるね」
「そして街は城壁で囲まれていないの」
「それが日本だね」
「他の国で言う宮殿がお城ね」
 日本ではそうなるというのです。
「街はお城じゃないの」
「そうだね、けれどね」
「他の国では違っていてね」
「オズの国でもだよ」
 この国でもというのです。
「街はね」
「お城ね」
「それ自体がね」
「だからグリンダさんのお城も」
「街なんだ、ここがカドリングのお城だよ」
「そうよね、ただ」
 ここで恵梨香はこうも言いました。
「ブリキの樵さんのお城は」
「ああ、あの人のお城は周りに街がないね」
「首都から少し離れた場所にあるわね」
「そうだね、けれど首都にもね」
「あの人のお城があるのね」
「宮殿がね」
 それがというのです。
「ちゃんとあるよ、そしてあのお城もね」
 全てがブリキで出来たそのお城もというのです。
「宮殿だよ」
「そうなのね」
「恵梨香の言うお城はね」
 それはといいますと。
「宮殿だね」
「日本の考え方ね」
「そういえばあの街は城壁に囲まれていないよ」
 木挽きの馬もその街について言いました。
「全くね」
「そうでしょ」
「大阪城があるけれど」
「その外にあの街があるね」
「河豚や蟹や紅白の服のおじさんの看板がある」
「あの面白い街がね」
「私達から見るとね」
 ガラスの猫も恵梨香に言ってきました。
「街がお城じゃない方が違う感じがするわ」
「そうよね、やっぱり」
「オズの国でもそうだから」
 街がお城だというのです。
「だからね」
「そうなるわね」
「私あの街最初に見ておかしな場所ねって思ったわ」
「街が城壁に囲まれていなくて」
「お城じゃないから、けれどそれが日本なのね」
「ええ、そうなの。ただ中には街を囲んでいるお城もあるの」
 日本にもというのです。
「広くてね」
「そうなのね」
「ただそうした大きなお城は少なくて」
「大抵はなのね」
「街はお城じゃないわ」
「そういうことね」
「それでよね」
 恵梨香はあらためて言いました。
「これからね」
「ええ、お城の中に入ってね」
 ガラスの猫は恵梨香に答えました。
「グリンダに会うわよ」
「わかったわ」
「そういえば」
 ここでジョージが言いました。
「君達はグリンダさんに伝えることがあってここまで来たんだね」
「オズマ姫の使者だったわね」
 ナターシャも言います。
「今回は」
「何か牧場に何かあってだね」
 カルロスは二匹に尋ねました。
「グリンダさんにそのことを伝えるんだったね」
「それで僕達のところに来て誘いをかけてくれて」
 神宝も言いました。
「ここまで一緒に来たんだね」
「そうだよ、それでね」
 木挽きの馬はジョージ達に答えました。
「来たんだ」
「牧場で何があったのか」
 モジャボロの弟さんが首を傾げさせました。
「そしてそれは何処の牧場か」
「そのこともグリンダさんにお話するから」
 馬は弟さんにも答えました。
「だからね」
「それでだね」
「まずはグリンダさんのところに行こう」
「それじゃあね」
「オズマ姫からのお手紙も預かっているしね」
「まあグリンダさんへのお話なら」
 モジャボロは顎をさすりながら言いました。
「カドリングのお話だね」
「僕もそうだと思うよ」
 木挽きの馬はモジャボロに答えました。
「やっぱりね」
「そうだね、それじゃあね」
「これからグリンダさんにお会いしよう」
 こうお話してでした、一行はお城の正門のところにいる赤い軍服とズボンの兵隊さんにお話をしてでした。
 そのうえでお城の中に入って街の中を進んでです。宮殿にも入りました。街の全てはカドリングの奇麗な赤です。
 勿論宮殿も赤です、壁も床も絨毯もカーテンもシャングリラもです。
 全て赤のその中を進んで、でした。一行はグリンダのところまで来ました、そうして一礼の後で、です。
 グリンダは皆に笑顔で言いました。
「ここでは堅苦しいわね」
「だからだね」
 馬がグリンダに応えます。
「今からは」
「ええ、私の私室でね」 
 カドリングの主の謁見の間ではなくというのです。
「そこでお茶を飲みながらお話しましょう」
「今からね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「お話をしましょう」
「それではね」 
 こうお話してでした。
 皆はグリンダと一緒に彼女の私室に入りました、そこでくつろいでお茶それにお菓子を出してもらってです。
 あらためてお話となりました、そこででした。
 グリンダは木挽きの馬とガラスの猫に尋ねました。
「貴方達が今回の使者と聞いたけれど」
「うん、それでね」
 馬が応えました。
「手紙を持ってきたんだ」
「オズマ姫のからよね」
「これだよ」
 馬が何処からかお手紙を出しました、そしてそのお手紙をグリンダに差し出してそのうえで彼女に言いました。
「ここに詳しいことが書かれているよ」
「ええ、じゃあ読ませてもらうわ」
「カドリングのレッド牧場でね」 
 そこでというのです。
「騒動が起こっていて」
「それでなのね」
「グリンダさんに行ってもらって」
 その牧場にというのです。
「ことを解決してもらいたいんだ」
「ええ、お手紙にも書いてあるわ」
 グリンダはそのお手紙を読みつつ応えました。
「そうね」
「そうだね、じゃあね」
「今すぐ牧場に向かうわ」
 グリンダは馬に微笑んで答えました。
「そうするわ」
「宜しくね」
「オズマ姫はオズマ姫で忙しいからね」 
 ここで言ったのはガラスの猫でした。
「何かとね」
「ええ、そのことはわかっているわ」
 グリンダはガラスの猫にも応えました。
「オズマ姫はオズの国の国家元首だから」
「オズの国全体を見てね」
「政治をしているわね」
「それで今回はね」
「カドリングのことだから」
「カドリングはあんたが国家元首だから」
 それでというのです。
「あんたがお願いされたのよ」
「そういうことなのはわかっているわ」
「それじゃあ」
「すぐに牧場に行くわ」
「わかったわ、お願いね」
「それでだけれど」
 グリンダはここで、でした。
 皆に対して微笑んでそうして誘いをかけました。
「貴方達も一緒に来てくれるかしら」
「僕達もかい」
 モジャボロはグリンダのお誘いに少し驚いて言いました。
「貴女の牧場までの旅に」
「ええ、牧場までね」
 まさにというのです。
「一緒に行きましょう」
「いいのかな」
「貴方達に予定がなくてね」
「皆これといってないよ」
「それなら貴方達が私と一緒に旅をしたいなら」
「それならだね」
「どうかしら」
「僕は是非ね」
 モジャボロは微笑んで言いました。
「ご一緒させてもらいたいよ」
「それではね」
「兄さんがそうしたいなら」
 弟さんはお兄さんのお話を聞いて言いました。
「僕もね」
「貴方もなのね」
「よかったわ」
「ではね」
 それでというのです。
「僕もね」
「じゃあ私もね」
 猫はこう言いました。
「ちょっとこれからオズマ姫に連絡してね」
「一緒になのね」
「旅に行かせてもらうわ」
「では僕から連絡させてもらうよ」
 モジャボロが言ってでした。
 携帯を出してオズマにガラスの猫もどうかというとでした、すると電話の向こうのオズマは笑顔で言いました。
「ええ、お手紙は渡してくれたから」
「それならだね」
「もう後は都に帰るだけだったし」
 それでというのです。
「グリンダと一緒にね」
「それではね」
「木挽きの馬もね」
 彼もというのです。
「そうしたらいいわ」
「それではね」
「そしてね」
 それでとです、オズマはさらに言いました。
「そこに恵梨香達もいるわね」
「あの子達もだね」
「一緒にね」
 彼等もというのです。
「どうかしら」
「じゃああの子達にも声をかけてみるよ」
「若しあの子達が行きたくないなら」
 そのつもりがないならというのです。
「そうならね」
「それならだね」
「その街で遊んでもらうし」
「一緒ならね」
「旅を楽しんでもらうわ」
「そういうことだね、じゃああの子達にもお話してみるよ」
「そうしてね。では楽しい旅を」
 オズマは電話の向こうのモジャボロに笑顔で言いました、そうして電話を切りました。モジャボロは彼女とのお話を終えてです。
 恵梨香達にお話をしました。
「オズマ姫から君達も旅にどうかなって言われたけれど」
「私達もですか」
「牧場までの旅にですか」
「一緒にどうか」
「そう言ってくれたんですか」
「オズマ姫が」
「若し別にいいならこの街に止まってね」
 そうしてというのです。
「遊んでもらうよ」
「この街で、ですか」
「カドリングの首都で」
「そうなりますか」
「旅に行かないなら」
「そうなんですね」
「そして一緒に行きたいならね」 
 それならというのです。
「どうかな」
「オズの国の旅なら」
「是非お願いします」
「オズの国の旅はいつも楽しいですから」
「お願いします」
「これから」
 五人は笑顔で言いました、そうしてでした。
 五人も一緒に行くことになりました、こうして旅のメンバーが決まりました。グリンダはその皆に笑顔で言いました。
「ではね」
「これからだね」
「出発しましょう、今回は牧場まで歩いで行くわよ」
 木挽きの馬にこう言いました。
「そうするわよ」
「そうするんだね」
「そしてね」
「そして?」
「旅の道具も持っていくわよ」
 そちらも忘れないというのです。
「それもね」
「何を持って行くのかな」
「どんな食べものも出せるテーブル掛けにね」
 それにというのです。
「他の魔法の道具もね」
「オズマ姫達が持ってる」
「それをね」
 まさにというのです。
「全部持って行くから」
「だからだね」
「少し準備させてね」
「わかったよ、じゃあね」
「準備が終わったら」
 その時はというのです。
「出発しましょう」
「それじゃあね」
「少し待ってね」
 こうお話してでした。
 オズマは旅道具を用意してそれが終わってからあらためて皆に声をかけて出発しました、するとでした。
 オズマはすぐにです、皆に言いました。
「レッド牧場までも色々あるわ」
「そうですか」
「そう、オズの国だから」
 恵梨香に対して答えました。
「だからね」
「それで、ですね」
「けれどそうしたことも楽しんで」
「そうしてですね」
「旅を楽しむわよ」
「わかりました」
「そしてね」
 それでというのです。
「ご飯もね」
「忘れないことですね」
「だからテーブル掛けも持ってきたし」
 グリンダは恵梨香にさらにお話しました。
「オズの国には果物も多いから」
「そちらもですね」
「食べましょう、林檎や梨があって」
 そうした果物がというのです。
「お弁当の木もあるわね」
「お弁当を食べることも出来ますね」
「そうしたものもね」
「食べればいいですね」
「そうよ、では行きましょう」
「はい、楽しい旅に」
「そうしましょう、それとね」
 グリンダは恵梨香に笑顔で言いました。
「恵梨香は日本人だから」
「それで、ですか」
「カドリングにいる日本も見てね」
「そちらもですか」
「ええ、よかったらね」
「やっぱりカドリングにも日系人の人がいるんですね」
「そうよ、だからね」
「日本文化もあって」
「それでね」
 そのうえでというのです。
「旅の途中でも機会があったらね」
「そうさせてもらいます」
「是非ね、忍者の人もいるから」
「忍者の人達もですか」
「そう、あの人達もいるから」
 だからだというのです。
「よかったらね」
「それじゃあ」
「とても素敵な人達ね」
 グリンダは忍者の人達についてにこりと笑って言いました。
「あの人達は」
「そのことをここに来るまでもお話したんだ」
 モジャボロもグリンダに言います。
「忍者のことをね」
「そうだったの」
「オズの世界の忍者のことをね」
 まさにというのです。
「そうしていたんだ」
「そうだったの」
「そしてね」
 さらに言うモジャボロでした。
「僕も楽しかったよ」
「忍者のお話が出来て」
「本当にね」
 そうだったというのです。
「僕も忍者が好きだしね」
「お侍さんも力士さんもお公家さんも面白いけれど」
「陰陽師の人達もね」
「そうね」
 グリンダも頷きました。
「けれどね」
「忍者の人達もそうで」
「それでね」
「そうなのね、だったらね」
「これから忍者の人達に会っても」
「楽しい思いが出来るわ」
「そうだね」
 モジャボロはグリンダの言葉に笑顔で頷きました、そうしたお話をしながら黄色い煉瓦の道を進んでいきますと。
 お昼になるとグリンダは皆に言いました。
「ではお昼だから」
「それで、ですね」
「これから皆で食べましょう」
「はい、それで何を食べますか」
「そうね、お外で食べるから」
 それでというのです。
「ここはラフナものがいいわね」
「ラフなものですか」
「軽食ね」
 そうした食べものがというのです。
「それがいいかしら」
「そういえばグリンダさんは普段は」
「ええ、お城にいることが多いから」
 それでというのです。
「そこで作ってもらったものを食べてね」
「それで、ですか」
 恵梨香も言いました。
「軽食はあまり召し上がられていませんか」
「私は旅に出る機会も皆より少ないから」
「そういえばそうですね」
「貴女達とこうして一緒に旅をすることもね」 
 このこともいうのです。
「あまりなかったわね」
「そうですね、お会いすることも」
「だから軽食を食べる機会があれば」 
 その時はというのです。
「是非にって考えているのよ」
「じゃあ何を召し上がられますか?」
「そうね、ハンバーガーとかね」
 まずはこの食べものを出しました。
「サンドイッチ、パンケーキ、ピザもあるわね」
「ホットドッグは」
「いいわね」
 グリンダは恵梨香に笑顔で応えました。
「勿論お饅頭や焼き鳥やピロシキもね」
「そうしたものもですか」
「確かに中華料理も和食もロシア料理も食べるけれど」
「お城の中で」
「お城の中ではいつも本格的なお料理で」
 それでというのです。
「出店で食べるみたいなものはね」
「召し上がれないですか」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「私としてはね」
「そうしたものがですか」
「外出の時は食べたくなるのよ」 
 そうだというのです。
「私はね」
「普段食べられないからですね」
「そうなのよ、アップルパイもね」
 このお菓子もというのです。
「何か物々しいのよ」
「お城の中では」
「シェフが腕によりをかけて作った」
「そうしたものですね」
「だからね」
 それでというのです。
「皆が食べるみたいに軽くはね」
「召し上がれなくて」
「ええ、だからお外ではね」
 そのアップルパイもというのです。
「軽いアップルパイをね」
「召し上がられたいですか」
「そう考えているわ」
「そうだね、アップルパイもね」
 林檎が砂モジャボロも言ってきました。
「やっぱりね」
「軽いものがよね」
「出店か喫茶店で食べる様な」
「そうしたものがいいわね」
「僕もそちらが好きかな」
「お城、宮殿の中で食べるものよりも」
「林檎も林檎を使ったお菓子も軽く食べるものだよ」
 モジャボロは笑って言いました。
「やっぱりね」
「そうだね、兄さんの言う通りだよ」
 弟さんも言いました。
「そうしたお菓子はね」
「そうだね、軽くだね」
「食べるものでね」
 それでというのです。
「堅苦しく食べるものか」
「違うね」
「アイスクリームだってそうだね」
 弟さんはこのお菓子も出しました。
「やっぱりね」
「軽くだね」
「食べるものだよ」
「そうだね、飲みものもね」
「やっぱり軽く美味しく」
「そうして食べるものだよ」
「僕はものを食べないからわからないけれど」
 それでもとです、木挽きの馬は言いました。
「食べるに軽いも重いもあるんだね」
「あれでしょ、宮殿で食べるとね」 
 ガラスの猫が言ってきました。
「どうしてもね」
「ああ、きちんと座ってね」
「フォークとナイフを何種類も使ってでしょ」
「うん、ワインもね」
 これもというのです。
「何か一杯一杯入れてもらって」
「お付きの人にね」
「柄もわざわざ言って」
「物凄く窮屈でしょ」
「そうだね」
「そうして食べても確かな、腕によりをかけたお料理で美味しいの」
 グリンダは馬と猫にもお話しました。
「ちゃんとね、けれどね」
「堅苦しいからだね」
「お外ではなのね」
「軽食をね」
 これをというのです。
「頂きたいわ」
「そうなんだね」
「その間はね、久し振りの旅だし」 
 それでというのです。
「たっぷり楽しみたいわ」
「そうなのね」
「ではお昼はね」
「ハンバーガーだね」
「それを食べたいわ、コーラもね」
 飲みもののお話もしました。
「飲みたいわね」
「宮殿の中ではコーラも飲めないの」
「ジュースは飲めるわ」
 こちらはというのです。
「けれど果物を絞ってからの」
「果汁百パーセントのなんだ」
「そうしたジュースなのよ」
「それでコーラもなんだ」
「炭酸飲料は飲めても」 
 飲めることは飲めてもというのです。
「一から作ったものでね」
「お店で売っているものじゃないんだ」
「そうなの」 
 実際にというのです。
「だからドロシーもお外では堅苦しいものを食べないのよ」
「そういえばそうだね」
「オズマもそうだし」
 オズの国の国家元首である彼女もというのです。
「そして私もなのよ」
「お外では軽く美味しいもの」
「そうなるのよ」
 まさにというのです。
「これがね」
「そういうことなんだ」
「だからお昼はハンバーガーにしましょう、あとおでんも食べたいわね」
「おでんって」
 神宝はそのお料理の名前を聞いて言いました。
「日本のあれだね」
「中に蒟蒻とかちくわが入っているね」 
 ジョージも言います。
「それで煮たものだね」
「全部一緒に煮ていて美味しいんだよね」
 カルロスはおでんの味のお話をしました。
「それぞれにおつゆの味が滲み込んでいて」
「食べると身体が温まるわ」
 ナターシャは微笑んでこのことがいいと言いました。
「冬は特にいいわ」
「そのおでんをなの」 
 グリンダは四人にも言いました。
「食べたいの」
「旅に出たから」
「軽食を食べられるからですか」
「おでんもですか」
「そうお考えなんですね」
「そうなの、和食も食べるって言ったけれど」
 宮殿の中で、です。
「けれどね」
「やっぱり堅苦しいですか」
「そうしたものですか」
「宮殿の中では」
「どうしてもそうなるんですね」
「懐石料理とかお膳にしっかり入れたもので」
 グリンダが宮殿の中で食べる和食はです。
「やっぱり物々しいの」
「じゃあお寿司は」
 恵梨香はこのお料理をお話に出しました。
「どうですか?」
「そちらもなのよ」
「堅苦しいですか」
「寿司職人の人が握ってくれるけれど」
 それでもというのです。
「食べたいものは食べられないのよ」
「好きなネタを言ってもですね」
「そうなの」
 グリンダは恵梨香に少し寂しそうに答えました。
「これがね」
「それじゃあ」
「どうも、でしょ」
「お寿司は好きなものを食べられることがいいですが」
「それがないから」
 だからだというのです。
「そのこともね」
「残念ですか」
「私としてもね」
「そうなんですね」
「だからね」
「旅の間はですね」
「お寿司も軽くで」
 そしてというのです。
「好きなネタを食べたいわ」
「そうなんですね」
「私としてはね」
「それじゃあ召し上がられる時は」 
 そのお寿司もというのです。
「軽くですね」
「そうしたいわ」
「そうなんですね」
「ではその軽食もお外をゆっくりと歩いて見て回ることも」
 そうしたこと全てをというのです、グリンダはいつもよりも明るく朗らかな感じで恵梨香達に言いました。
「楽しんでいきましょう」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「今からですね」
「楽しんで、ですね」
「牧場まで行くんですね」
「そうしていきましょう」
 恵梨香達五人に言ってでした。
 グリンダはお昼にはハンバーガーを手に持って食べました、そのハンバーガーを食べつつにこにことしています。
 そしてです、こう言いました。
「ハンバーガーをコーラと一緒に楽しむ」
「それがだね」
「醍醐味ね」
 木挽きの馬にも言います。
「ハンバーガーの」
「軽くだね」
「ええ、それにね」
「それに?」
「もう二つあるわ」
「もう二つ?」
「食べるべきものはね」
 ハンバーガー以外にもというのです。
「あるわ」
「ああ、この二つだね」
 木挽きの馬はその二つを見ました、それは何と何かといいますと。
 チキンナゲットとフライドポテトです、その二つを見てグリンダに言うのでした。
「オズの国ではよく食べているね、皆」
「どちらもでしょ」
「ハンバーガーと並んでね」
「ええ、けれど宮殿だとね」
「食べられないんだね」
「だからなの」
「お外でだね」
 旅の時にというのです。
「食べたいんだね」
「そうなの」
 まさにというのです。
「本当にね」
「そうなんだね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「そうしたものもコーラと一緒にね」
「楽しむんだね」
「コーラも宮殿では飲めないから」
 だからだというのです。
「ここでね」
「飲むんだね」
「そうするわ」
 言いながらまた飲むのでした。
「私もね」
「グリンダさんも満喫しているね」
「ええ、この通りね」
「僕達は普通にハンバーガーとかを食べているけれど」 
 モジャボロも食べていますし弟さんも恵梨香達もです、食べることが出来る人は皆グリンダと同じものを楽しんでいます。
「それでもね」
「宮殿だと食べられないわね」
「そうしたものはね」
 どうしてもというのです。
「どうしても」
「そうだね、フルコースとかパーティーとかね」
「そういうものはあっても」
「やっぱりこうしたものは食べられないから」
「だからね」
「堅苦しくない出店にある様な軽食を」
「楽しむわ」
 そうするというのです。
「旅の間はね」
「ずっとよね」
「そうしていきたいわ、そしておでんもお寿司もね」
「そうしたものもだね」
「楽しむわ」
「お寿司って軽食なの?」
 ガラスの猫は皆が食べるのを見つつ言います、彼女と馬は食べる必要がないので今も見ているだけです。
「結構なご馳走でしょ」
「いえ、最初はね」
「軽食だったの」
「そうよ、出店で売っているね」
 グリンダはガラスの猫にお話しました。
「そうしたね」
「軽食だったの」
「江戸時代の日本ではそうだったのよ」
「へえ、そうだったのね」
「だからね」
 それでというのです。
「軽くね」
「食べたいのね」
「そう思っているの」
 こうガラスの猫に言いました。
「私は」
「そういうことね」
「そう、お寿司もね」
「その辺りの事情はわかったわ」 
 ガラスの猫もです。
「よくね」
「それは何よりね」
「ええ、じゃあ楽しんでね」
「そうさせてもらうわ」
「それはそうとして牧場で何かあったのかな」
 木挽きの馬はレッド牧場のお話をしました。
「一体」
「そうよね」
 恵梨香が応えました。
「あそこでね」
「あの牧場は僕も知っているよ」
 木挽きの馬は恵梨香にお話しました。
「行ったことがあるし」
「そうなのね」
「牛や馬、羊に豚、山羊がいてね」
「色々いるのね」
「鶏もいてね。犬もいるよ」
 この生きものもというのです。
「何かとね」
「結構な牧場なの」
「広くて色々な生きものが沢山いるんだ」
「そうした牧場なの」
「とても平和でのどかな牧場だけれど」
「そこで何があったのか」
「そのことがね」
 どうしてもというのです。
「気になるよ」
「深刻な事態かしら」
「深刻な事態だからグリンダさんに行ってもらうのかな」
 木挽きの馬はここでグリンダを見ました、今もハンバーガーを食べている彼をです。そうしてまた言うのでした。
「オズの国でも特に凄い人だから」
「ええ、オズマ姫と同じだけ凄い魔法を色々使える」
「その人に行ってもらうのかな」
「そうかしら」
「安心して、とんでもないことではないわ」
 グリンダはお話する二人に微笑んで言いました。
「特にね」
「そうなんだ」
「大丈夫なんですか」
「ええ、これといってね」
 別にというのです。
「大騒ぎになる様なね」
「そんなことじゃない」
「そうなんですね」
「私はそう思っているわ」
 グリンダの言葉は明るいものでした。
「本当にね」
「グリンダがそう言うならね」
 木挽きの馬はグリンダの言葉に頷いて言いました。
「心配ないね」
「そうね、グリンダさんが言われるならね」
 恵梨香も言いました。
「これといってね」
「そうだね」
「ええ、安心していいわね」
「僕もそう思うよ、それはそうとしてね」
 木挽きの馬は今度は恵梨香に言いました。
「恵梨香ってあまり食べないね」
「そうかしら」
「うん、他の四人の子達と比べてね」
 ジョージ達と、というのです。
「そうだね」
「そうかしら」
「見ていて思ったよ」
「そう言われると」
 恵梨香としてもでした。
「そうかしら」
「ハンバーガーを食べるにしてもね」
「どうも日本人は小食だね」
 弟さんも言ってきました、見れば大きなダブルチーズバーガーを両手に持ってそのうえでお口を大きく開けて食べています。
「オズの国でも」
「そうなんですね」
「体格が同じでもね」
 そうした人でもというのです。
「日系人の人はね」
「小食ですか」
「そう思うよ、僕も」
「そうですか」
「そしてね」
「そして?」
「飲む量もね」
 お酒もというのです。
「そちらもね」
「あまり飲まないですか」
「うん、けれど働くとなると」
 こちらはといいますと。
「物凄く働くね」
「そうなんですね」
「思いきり働いて思いきり勉強するね」
「オズの国の日系人の人達は」
「もう働くことがエネルギーの補給じゃないかって」
「そこまで、ですか」
「働くね、あまり食べて飲んでいないのに」
 それでもというのです。
「あれだけ働くから」
「凄いとですか」
「思うよ、日系人は働いたり勉強することが好きな人が多いね」
「というかね」
 ガラスの猫は自分の身体を舐めて毛づくろいの様にしつつ奇麗にしながら言いました。
「恵梨香もお勉強好きよね」
「そうかしら」
「時間があったら本読んだりしてるでしょ」
「それが普通でしょ」
「普通じゃないわ、学校の成績もいいみたいだし」
「私はそんなに」
 恵梨香はこう言いますが。
 ジョージ達四人はこう言いました。
「神宝が一番成績いいけれど」
「恵梨香はその次かな」
「学年で十番位で」
「ナターシャが十一番で」
 それでというのです。
「ジョージが十五番かな」
「カルロスは普通?」
「そうだったね」
「大体」
「そうね、あんた如何にも頭よさそうだから」
 ガラスの猫は恵梨香自身に言いました。
「万事控えめで目立たないだけで」
「それでなの」
「実はいつもお勉強してる娘よ」
「そう言ってくれるのね」
「実際にそうよ」
 ガラスの猫の見るところです。
「あんたはね」
「そうなの」
「ええ、そしてね」
 ガラスの猫はさらに言いました。
「あんたもその日本人なのよ」
「お勉強が好きな」
「私はそう思うわ。というか日本人って何かしていないと」
 それこそというのです。
「我慢出来ないのかしら」
「ああ、日系人もいつも働いているし」
 木挽きの馬はガラスの猫の言葉に頷きました。
「そうした感じだね」
「そうよね」
「遊ぶにしても熱心にやって」
「そしてね」
 それでというのです。
「全力を尽くすね」
「そして恵梨香もで」
「熱心だね」
「何をするにしても」
 まさにというのです。
「日系人、つまり日本人ってね」
「真面目だね」
「そうした人が多いわね」
「それで私もなのね」
 恵梨香も言ってきました。
「真面目で熱心だっていうのね」
「うん、そう思うよ」
「そうなのね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「何か日系人っていつも何かしていないと苦しいのかなってね」 
 木挽きの馬は恵梨香にこうも言いました。
「思う時あるよ」
「そうなの」
「寝る時以外いつも何かしている人が多いからね」
「休んだりぼーーっとしたりとか」
「すること少ない人多いね」
「そうかしら」
「僕もそう思うよ、日本人は寝る時がオフでね」
 モジャボロも言ってきました。
「それでね」
「その時以外はですか」
「オフはないね」
「そうなんですね」
「君もだね」
 恵梨香もというのです。
「そうだよ」
「寝る時はオフでもですか」
「そう、普段はね」
 どうしてもというのです。
「いつも何かしているね」
「自覚なかったです」
 そう言われるまではとです、恵梨香は言いました。
「ですがそうなんですね」
「うん、けれどそこがいいのかもね」
「いつも何かをしていて」
「それがね」
 まさにというのです。
「努力になっていてね」
「いいんですね」
「そう思うよ、そこは君のしたい様にね」
「すればいいですか」
「悪いことじゃないからね」 
 笑顔で言うモジャボロでした、そうしたお話をしつつそのうえで今はハンバーガーもコーラも楽しみました。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る