『新オズのオジョ』




                第九幕  凄く奇麗なお坊さん

 オズマ達はカドリングの道を進んでいきます、皆楽しい旅を続けています。その中でボタンは川の方を見てです。
 そうしてです、こんなことを言いました。
「何かいるね」
「ああ、あれは」
 オジョは川にいるものを見て言いました。
「鰐だね」
「そうだよね」
「鰐といっても」
 それでもというのです。
「小さいね」
「うん、普通の鰐よりもね」
「大体二メートル位だね」
「鰐にしたら小さいよね」
「そうだね」
「あれはヨウスコウワニね」
 オズマはその鰐を見て言いました。
「中国の鰐よ」
「そういえば中国にも鰐がいますね」
「そう、オズの国に中国系の人がいたら」
「生きものも入って来るからですね」
「当然鰐もいてね」
 それでというのです。
「ああしてね」
「暮らしているんですね」
「そうなのよ」
「そういうことですね、あとですね」 
 オジョは川の方をまだ見ています、そしてです。
 川の方に何かが出たのを見てまた言いました。
「また何かいましたね」
「あれはイルカね」
「いるかですか」
「ヨウスコウカワイルカね」
「あのイルカがいるなんて」
 ここで驚いたのは神宝でした。
「凄いですね」
「外の世界ではもういないかも知れないのよね」
「残念ですが」
 本当にです、神宝は心から言いました。
「そうかも知れないです」
「そうね、けれどね」
「オズの国ではですね」
「ここは外の世界と違うから」
「だからですね」
「色々な生きものがいるから」
 だからだというのです。
「外の世界にはもういない生きものも」
「そうですね」
「ヨウスコウカワイルカもいるしね」
「オオウミガラスやステラーカイギュウもいますね」
「モアもドードー鳥もね」
「そうですよね」
「皆いるのよ、恐竜だっているし」
「あとビッグフットさんもいるわね」 
 ビリーナはこの生きものの名前を出しました。
「外の世界ではいるのかわからない生きものも」
「UMA−−でしたーーね」
 チクタクはビリーナに応えました。
「未確認ーー動物ーーですーーね」
「ええ、いるわね」
「オズの国ーーには」
「そうなのよね」
「これもオズの国がお伽の国だからこそ」
 オジョはまた言いました。
「だからですね」
「海に行っても色々な生きものがいたしね」
 ジョージは皆と一緒に行ったその時のことを思い出しています。
「お空にもね」
「世界樹でもだったね」 
 カルロスはこの場所に行った時のことを思い出しています。
「そうだったね」
「オズの国全体でそうで」
 こう言ったのは恵梨香でした。
「ここもなのね」
「オズの国はそのことも素晴らしいのよね」
 ナターシャも笑顔で言います。
「本当に」
「パンダさんもいたし」
 神宝はこの生きもののことを言います。
「本当にオズの国は色々な生きものがいるね」
「君パンダと会えて凄く嬉しそうだったしね」
 オジョは神宝のそのことを言います。
「誰よりもね」
「やっぱり中国の象徴みたいな生きものですから」
 パンダはというのです。
「皆大好きですから」
「それでだね」
「余計にです」
 まさにというのです。
「会えてお話出来てです」
「嬉しかったんですね」
「とても」
「そう、この国は色々な生きものがいてだ」 
 関羽さんは笑顔で言います。
「まことによい」
「そうですよね」
「ただそれがしは外の世界では」
 どうだったかとです、ここでこうも言う関羽さんでした。
「生きものを詳しく見たことはあまりなかったな」
「そうだったんですか」
「戦に政と忙しくて」
 それでというのです。
「どうも」
「そうですか」
「そう、だから」
 それでというのです。
「今はこうして色々な生きものを落ち着いて見られることもよしだ」
「そうですか」
「まことに」
「そうですか」
「赤兎馬とはいつも一緒だが」
「主殿は立派な方ですぞ」
 赤兎馬も神宝に言います。
「ですから拙者は主殿を敬愛しています」
「そういえば君は外の世界では」
「主殿がいなくなれば」
「一緒にだったね」
「旅立ちましたな」
「そうだったね」
「前の主殿も敬愛していましたが」 
 それでもというのです。
「やはりです」
「関羽様はだね」
「特別な方なので」
 それでというのです。
「そうしました」
「そうだったね」
「赤兎馬さんの前の主の人は誰だったの?」
 ボタンはこのことを尋ねました。
「一体」
「呂布という方です」
「そうした人だったんだ」
「恐ろしく強い方でした」
 その呂布という人はです。
「まことに」
「そうだったんだね」
「方天戟を手に戦場で暴れました」
 そうだったというのです。
「関羽殿より強かったかも知れません」
「呂布殿、温候の強さは張飛より上だったかも知れぬ」
 関羽さんも言います。
「今思えば」
「どんな強さだったのかな」 
 オジョもそのことが気になります。
「一体」
「恐ろしいまでの強さであった」
 関羽さんはオジョに答えました。
「まことに」
「関羽さんがそう言われるまで、ですか」
「そうであった」
「そこまでとは」
「今は天界にいるが」
 それでもというのです。
「張飛といつも飲んでいる」
「仲いいんですか」
「いや、かつては非常に仲が悪かったのだよ」
「そうだったんですか」
「呂布殿はかつては裏切ってばかりで」
 それでというのです。
「義侠心に満ちた張飛とは反りが全く合わず」
「それで、ですか」
「大層仲が悪かったのだよ」
「そうだったんですね」
「それがだ」
「今は、ですか」
「仲直りして」 
 そしてというのです。
「よく一緒に飲んだり鍛錬をしている」
「そうですか」
「というか関羽さんより強い人って二人もいるんだ」
 ボタンはこのことに驚いています。
「凄いね」
「武芸なら斉天大聖殿より上かも知れぬ」
 こう言うのでした。
「呂布殿は」
「そこまでなんだ」
「おそらく最強は項羽殿であろうが」
「項羽さんよりは強くないんだ」
「項羽殿の強さは違う」
 関羽さんは唸って言いました。
「最早次元が」
「そうね、項羽さんは天帝さんのところでは最強ね」 
 オズマもこう言います。
「あの人は」
「左様ですな」
「二郎真君や??太子よりも強くて」
「さしもの斉天大聖殿も」
「あの人には負けるわ」
 項羽さんにはというのです。
「もうね」
「桁が違いますな」
「幾ら何でもね」
「項羽殿の強さは」
「まさに力は山を抜き気は世を覆う」
「そこまでですな」
「本当にね」
 こう言ってそしてでした。
 オズマは川辺でのんびりとしている鰐達を見てさらに言いました。
「項羽さんなら鰐はおろか恐竜でもドラゴンでもね」
「勝てますな」
「間違いなくね」
「何しろ斉天大聖殿よりもです」
 それこそというのです。
「お強いのですから」
「それならね」
「鰐も問題でないかと」
「中国の歴史は長いですが」
 神宝はその中国人として言います。
「項羽さんは最強だったかも知れないですね」
「そこまで強いんだね」
「はい、もう滅茶苦茶強かったんですよ」
「それがしなぞとても」
 関羽さんですらこう言います。
「足元にも」
「そう言えますよね」
「あの強さには」
「上には上がいるっていうけれど」
 オジョも言います。
「項羽さんは別格ということなんだ」
「全く以て」
 こう言うのでした、そしてです。
 皆は鰐やイルカ達を見つつさらに進んでいきます、そうして夜になるとです。
 皆でご飯を食べることにしました、今回のメニューは中華料理の飲茶で色々なお料理を少しずつ出してです。
 お茶にお酒も出しました、お酒は関羽さんにとなりますが。
 そのお酒を見て関羽さんは目を細めさせて言いました。
「おお、桂花陳酒とは」
「お好きですか、桂花陳酒」
「大好きだよ」
 オジョに笑顔で答えます。
「全く以て」
「そうですか」
「うん、ただね」
「ただ?」
「夜でないと」
「飲まれないですか」
「お酒はね」
 それはというのです。
「飲まないよ」
「そうなんですね」
「このお酒は楊貴妃殿がお好きで」
「楊貴妃さんですか」
「物凄く奇麗な人だよ」
 この人のこともお話するのでした。
「あの人は」
「そうですか」
「あれだけ奇麗な人は見たことがない」
 こうまで言う関羽さんでした。
「あの人は」
「そこまでなんて」
「楊貴妃さんといいますと」
 また神宝が言います、チャーシュー麺を食べています。
「中国の歴史でも有名ですね」
「美人で」
「そうですよね」
「オズの国でも屈指の美人ではないか」
「そう言っていいですね」
「まことに、ただ」
 ここでこうも言う関羽さんでした。
「男であるが三蔵法師殿も」
「あの人もですか」
「驚く程なのだよ」
「奇麗なんですか」
「まるで女性の様な」
 そこまでというのです。
「整った容姿なのだよ」
「そうなんですね」
「そうなのだ」
 関羽さんはお饅頭を次々と食べながら言います。
「何でも日本のドラマでもそうなったそうだが」
「あっ、女の人が演じられて」
「驚く程美人さんだったそうだが」
「その人よりもですか」
「実際は整っておられて」
「楊貴妃さんにも負けない位にですか」
「美形だよ」
 こう言うのでした。
「まことに」
「そうですか」
「だからお会いした時は」
「そのお顔にですね」
「驚かないことだよ」
「女の人より奇麗な男の人?」
 ボタンは海老蒸し餃子を食べつつ言います。
「どんな人かな」
「興味がありーーますーーね」
 チクタクはボタンに応えて言います。
「どういったーー方ーーか」
「そうだよね」
「ううん、どんな人かな」
 オジョも言います、唐揚げを食べながら思いました。
「お会いしたいね」
「私はお会いしたことがあるけれど」
 オズマは北京ダッグを食べつつお話します、見れば海老のチリソースに蟹焼売、茶卵に豚腹煮込みに鯉を丸ごと揚げてとろりとしたあんをかけたものに卵炒飯、八宝菜、チンジャオロース、フカヒレスープに中華風サラダもあります。
「本当にね」
「美人さんですか」
「男の人だけれどね」
「そうなんですね」
「私よりも遥かにね」
「オズマ姫よりもですか」
「そうなの」
 こうオジョにお話します。
「本当にね」
「そうですか」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「お会いした時にね」
「驚かないことですか」
「そう、だから驚かないでね」
「その時は」
「皆ね」
 オジョだけでなくというのです。
「心構えはしておいてね」
「わかりました」
「それでだけれど」
 オズマは今度は炒飯を食べて言いました。
「今日の中華料理だけれど」
「何かあります?」
「いえ、味付けをね」
 神宝に対してお話します。
「それぞれのお料理にしてみたの」
「広東料理や北京料理にですか」
「そうなの、鯉はね」
 とても大きなそれを揚げてあんをかけたものです。
「開封のものにしたのよ」
「外の世界のですか」
「開封のものにね」
 それにしたというのです」
「あえてね」
「開封は鯉が有名だからですね」
「そちらにしたけれど」
「だからですね」
 その鯉を食べてです、神宝は言いました。
「これだけ美味しいんですね」
「それぞれのお料理が一番美味しい」
「そう考えながらですか」
「出してみたの」
「それで、ですか」
「鯉もね」
「開封の鯉なんですね」
 その鯉を食べつつ言いました。
「そうですね」
「だから凄く美味しいでしょ」
「かなり」
「お刺身でないことは、ですな」
 関羽さんもその鯉を食べつつ言います。
「やはり」
「今の中華料理だから」
「今の中華料理は生ものは殆ど食べないですな」
「一応お刺身もあるけれど」
 それでもです。
「大体そうだからね」
「出していませんな」
「今度リクエストがあれば出すし」
 それにというのです。
「あと和食の時もね」
「出してくれますか」
「ええ、関羽さんお刺身にも抵抗がないみたいだし」
「嫌いな食べものはありませんぞ」
「それじゃあ」
「その時も楽しみにしていますぞ」 
 関羽さんはオズマに笑顔で応えてです、お酒を飲みますが。
 お酒をぐい、と飲みますが一呑みで杯を空けます。それからすぐに飲みます。そうして笑顔で言うのでした。
「やはり桂花陳酒はいいですな」
「じゃあどんどん飲んでね」
「是非」
「それじゃあね、私達はね」
「お茶をですな」
「頂くわ」
 オズマはこう言いつつ中国茶を飲みます。
「こうしてね」
「お茶もいいですな」
「ええ、本当にね」
「お茶も思えば」
 関羽さんはお茶についてこんなことを言いました。
「それがしが外の世界にいた頃は」
「どうだったの?」
「物凄く高くて」
 それでというのです。
「中々飲めるものではなかった」
「そうだったの」
「だから今こうして普通に飲める」
「そのことがなのね」
「非常に嬉しく思っています」
「そうだったのね」
「だからこそ」
 さらに言うのでした。
「いつも飲んでいます」
「そうなのね」
「お酒もいいですが」
 それだけでなくというのです。
「お茶もまた」
「じゃあお茶もね」
「頂きます」
 こう言ってです、関羽さんはお酒もお茶も楽しみました、そうしてそのうえでこの日は休みました。
 次の日も旅を続けます、その中で。
 一行は森に入りました、カドリングの赤い森の中を黄色い煉瓦の道が通っています。その道を通りつつです。
 オジョは前を見ていました、するとです。
 前にある人がいました、その人はといいますと。
 白い仏教のお坊さんの僧衣を着ていて被りものや袈裟は金色です、白い馬に乗っていますがそのお顔は。
 きらきらとした二重の黒い瞳に細くて見事な形の眉、白い雪の様なお肌に紅の小さな唇です。オジョはその人を見て思わず言いました。
「うわ、凄く奇麗だね」
「美人さんだね」
 ボタンも言います。
「女の人かな」
「仏教の尼僧さんかな」
「そんな感じだね」
「そうーーですーーね」
 チクタクもその人を見て言うのでした。
「凄くーー奇麗なーーお顔ーーですね」
「いや、あんな奇麗な尼さん見たことないわ」
 ビリーナも感嘆の言葉を出します。
「本当にね」
「そうだよね」
「ええ、仏教の人らしいけれど」
 オジョにも応えて言います。
「あんな奇麗な人そうそういないわよ」
「そうだね」
「楊貴妃さんはああした奇麗さだったのかしら」
「いえ、あの人が三蔵法師さんよ」
「玄奘殿だ」
 オズマと関羽さんが皆に言います。
「あの方こそがだ」
「そうなのよ」
「えっ、そうなんですか!?」
 オジョは二人の言葉にも驚いて言いました。
「女の人かって思ったら」
「だから物凄く奇麗な人って言ったでしょ」
 オズマはオジョにこう返しました。
「前に」
「そうでしたけれど」
「女の人みたいにね」
「奇麗なお顔をしておられるんですね」
「そうなのよ」
「まさかあんなにお奇麗だなんて」
「ええ、けれどね」
 ここでオズマは首を少し傾げさせて言いました。
「あの人はどうしてここにいるのかしら」
「お供の孫悟空殿がおられませぬな」
 関羽さんはこのことを不思議に思いました。
「猪八戒殿も沙悟浄殿も」
「そうよね」
「お三方はいつも玄奘殿と一緒の筈ですが」
「何処に行ったのかしら」
 オズマもこのことが気になります、それでです。
 オジョが玄奘さんにこう声をかけました。
「玄奘さんですよね」
「はい」
 その通りだとです、玄奘さんも答えます。
「私が玄奘です」
「三蔵法師さんって呼ばれる」
「そうなのです」
「あの、どうしてこちらに」
「実はカドリングの中華街に呼ばれまして」
 玄奘さんは馬から降りてオジョに礼儀正しくお話しました、そのお声もまるで女の人の声の様に奇麗です。
「それで、です」
「向かっておられますか」
「はい、この道を通って」
「そうでしたか」
「あの、孫悟空さん達は何処ですか?」
 神宝がこのことを尋ねました。
「いつもお供をしているんじゃ」
「悟空達は先に行かせました」
 玄奘さんは神宝に微笑んで答えました。
「そうしました」
「先にですか」
「三人共中華街に行くと聞くと大喜びだったので」
「中華街お好きなんですね」
「彼等は。それで、です」
 玄奘さんはさらにお話します。
「私は玉龍と一緒なのです」
「まあ私はです」
 どろんとです、白馬は姿を変えました。
 何と白い昔の中国の服を着たアジア系の若い男の人になりました、その姿でオズマ達に対して言うのでした。
「別に急がないですから」
「あっ、貴方がですね」
「そう、玉龍です」
 こうオジョに名乗ります。
「ご存知ですよね」
「西海龍王さんの三男の」
「そうなんです、悪さをしまして」
「それで三蔵法師の馬になっていますね」
「そうなんですよ」
「それで今もですか」
「お師匠様と一緒です」
 オジョに明るい調子でお話します。
「孫悟空さん達は先に行きましたけれど」
「玉龍さんはですね」
「今もお供をしています」
「そうですか」
「孫悟空さん達はもう中華街で遊んでますけれどね」
「玉龍さんは焦らないで」
「ここにいます」
 玄奘さんと一緒にいるというのです。
「そうしています」
「そういうことですね」
「はい、それとです」
「それと?」
「皆さんはどうしてここにおられるんですか?」
 今度は玉龍から尋ねてきました。
「オズマ姫まで」
「それに関羽殿まで」
 玄奘さんは関羽さんを見て言います。
「何故こちらに」
「はい、僕達もカドリングの中華街に案内されていまして」 
 オジョは玄奘さん達に答えました。
「それでなんです」
「それがしも同行することになりまして」 
 関羽さんは玄奘さんに答えました。
「それでなのです」
「そういう事情ですか」
「はい」
 関羽さんは玄奘さんにまた答えました。
「左様です」
「よくわかりました」
「それでは」
「そしてですね」
 玄奘さんは今度は神宝達五人を見て言いました。
「そちらの子供達が」
「ええ、オズの名誉市民のね」
「その子達ですね」
「そうなのよ」
 オズマがにこりとして答えます。
「この子達がね」
「はじめまして」
 にこりと笑ってです、玄奘さんは五人に答えました。
「三蔵法師、玄奘といいます」
「はじめまして」
 五人も礼儀正しく挨拶を返します、そのうえで言うのでした。
「まさかです」
「こんなところでお会い出来るなんて」
「信じられないです」
「嘘みたいです」
「お会いしたいと思っていましたけれど」
「ここでお会い出来るなんて」
「これも縁ですね」
 玄奘さんは五人ににこりと笑ってこうも言いました。
「お会い出来たことも」
「そうですか」
「こうしてお会いできることもですか」
「縁ですか」
「願いが適うのがオズの国ですが」
「それも縁ですね」
「私はそう考えています」 
 そのとても奇麗なお顔で言います、見れば見る程奇麗で本当に女の人それもかなりの美人さんと見間違うばかりです。
「いつも」
「仏様のお導きですね」
「それで、なんですね」
「僕達は出会えて」
「願いも適う」
「そうなんですね」
「そう思います、ではですね」
 五人にさらに言います。
「中華街まで一緒になりますね」
「そうなりますね」
 恵梨香が応えました。
「これから」
「そうよね、玄奘さんも中華街に行かれるし」
 ナターシャは恵梨香に応えました。
「それならね」
「関羽さんもご一緒で玄奘さんもなんて」 
 カルロスはこう言いました。
「本当に夢みたいなお話だよ」
「お伽の国でもね」
 それでもとです、ジョージも言います。
「これは凄いことだね」
「いや、本当にね」
 最後に神宝が言います。
「オズの国でもそうはないことだよ」
「それがあるのがオズの国ですね」
 玄奘さんはまた言いました。
「まさに」
「ないと思ったことが起こる」
「そうして経験出来る」
「それがオズの国なんですね」
「幾ら何でもと思っても」
「それでもですね」
「はい、では行きましょう」
 こう言ってです、玄奘さんは出発を促します、するとここで玉龍が言いました。
「ではお師匠様変身しますね」
「いえ、貴方もです」
「このままの姿でいいですか」
「はい、私は今日はもう歩きます」 
 玉龍にとても穏やかな声で言います。
「そうします」
「そうですか」
「貴方もいつも私を乗せていると大変ですね」
「いえ、何でもないですよ」
 玉龍は玄奘さんに笑って返しました。
「お師匠様でしたら」
「そうなのですか」
「お師匠様はとても軽いですから」
「よくそう言いますね」
「背はありますけれど」
 見れば一七六センチ位です、すらりとしています。
「それでも軽いですからね」
「そういえば玄奘さんスタイルもいいですね」
「そうですよね」
 神宝はオジョの今の言葉に頷きました。
「背が高くて」
「そうだよね、モデルさんみたいにね」
「すらりとしてますね」
「そうだよね」
「お師匠様はとても均整が取れたスタイルなので」
 玉龍は二人にもお話しました。
「それでなんですよ」
「軽いんですね」
「乗せても」
「それに私は普通の馬じゃないですから」
 馬になった時はというのです。
「不肖ながらも龍王の息子ですから」
「玄奘さんを乗せてもですか」
「大丈夫ですか」
「はい、何トンのものを乗せても平気でして」
 そこまでの力があってというのです。
「それで、です」
「玄奘さんもですね」
「大丈夫なんですね」
「そうです、全くです」
 明るい笑顔で言います。
「私は平気です」
「そうですか」
「玉龍さん凄いですね」
「まあ色々言われていますけれどね」
 玉龍さんはここでこうも言いました。
「私は」
「色々ですか」
「そうなんですか」
「おっちょこちょいと」
 その様にというのです。
「言われていますので」
「そう言われるとだね」
 赤兎馬が言ってきました。
「貴方は実際に」
「そう言われていますよね」
「その行動が」
「ですから」
 それでというのです。
「自分が凄いとはです」
「思われないのか」
「そうなんです」
 こう赤兎馬に返します。
「どうも」
「まあそこは気にしないで」
 それでというのです。
「明るくいくべきかと」
「そうですか」
「貴方も」
「赤兎馬の言う通りかと」
 関羽さんも実直に言います。
「やはり」
「明るくですか」
「言われることは気にしないで」 
 それでというのです。
「行くべきかと」
「そうですか」
「そうです、関羽殿の言われる通りです」
 ここで玄奘さんも言ってきました。
「やはりです」
「こうしたことはですか」
「気にしないで」
 それでというのだ。
「貴方は貴方で修業をしていけばいいです」
「そうですか」
「はい、ではです」
「今日はですね」
「私は貴方に乗らないので」
「それで、ですか」
「歩いていって下さい」
 玉龍は玉龍でというのです。
「宜しいですね」
「それでは」
 玉龍は玄奘さんの言葉に頷きました、そしてです。
 お二人も加わって旅は尚更楽しくなりました、玄奘さんは皆に言いました。
「いや、思えば天竺まではです」
「大変でしたね」
「帰るまでも」
 その旅はとオジョに答えます。
「何かと」
「沢山の悪い妖怪がいてですか」
「妖怪といいますか」
「仏様の使いの獣がですね」
「なったものが多くて」
 それでというのです。
「他には道教の神々もです」
「いましたね」
「金角、銀角の大王に」
 まずはこの魔王達を挙げました。
「牛魔王もいましたし」
「ああ、物凄く強かった」
「一大王、二大王、三大王とです」
「三人の魔王達ですね」
「もう何かとです」
「あちこちにいて」
「大変な旅でした」
 こう言うのでした。
「私も何度も大変な目に遭いました」
「西遊記の中で」
「はい、若しもです」
 玄奘さんはさらに言いました。
「悟空達がいなかったら」
「その時はですね」
「もうです」
 それこそというのです。
「すぐに命を落としていたでしょう」
「唐を出てですか」
「すぐにです」
「そんな旅でしたか」
「ですが今は」
「平和ですね」
「お寺に住んでいて」
 そうしてというのです。
「時折招いて頂き」
「そちらにですね」
「今の様にお伺いしたり」
 その様にというのです。
「ふらりと旅に出ることもです」
「ありますか」
「そうです、悟空達と共に」
「そうですか」
「何かと楽しい日々を送っています」 
「オズの国で」
「そうしています、ですが」
 ここで、です。玄奘さんはこうも言いました。
「今思うと天竺を行き来した旅もです」
「面白かったですか」
「何度も命を落としそうになりましたが」
 それでもというのです。
「退屈はせず悟空達と共に進み」
「それで、ですか」
「今思うと充実していました」
「そうでしたか」
「ですから」
 それでというのです。
「あの時のことを否定しません、むしろです」
「その時のことがあってですね」
「今の私があります」
 こう言うのでした。
「懐かしくもあります」
「そこまでなんですね」
「左様です」
「いや、大変な旅だったわよね」
 オズマも玄奘さんの旅について言います。
「あの旅は」
「左様でした」
「けれど読んでいるとね」
「面白いですね」
「もうどうなるかハラハラして」
 それでというのです。
「大冒険で活劇もあって」
「まさに手に汗握る」
「そんな風だけれど」
 それでもというのです。
「物凄くね」
「面白くてですね」
「大変な旅だったことがわかるわ」
「そうですか」
「ええ、それでね」
 さらに言うオズマでした。
「私玄奘さんが経典を手に入れられてよかったって思うわ」
「あの時ですね」
「そして無事に帰られてね」
「あの時よく帰ることが出来たと思いました」
「そうよね」
「しかし天竺までの道は」
 玄奘さんはその冒険のことを振り返って言いました。
「もう山あり谷ありどころでなく」
「といううかよくもまあですよね」
 神宝が笑って言ってきました。
「次から次にですね」
「神仏の使いが変わったものがです」
「出て来ましたね」
「それがです」
 どうにもというのです。
「大変でした、ただ」
「それでもですね」
「本当に今振り返ると」
「充実していましたか」
「はい」
 非常にというのです。
「そう思いました、ですがオズの国の冒険も」
「それもですね」
「素敵ですね」
 神宝ににこりとして述べました。
「本当に。ですから時折です」
「ふらりとですか」
「旅に出ることもです」
 それもというのです。
「しています」
「素敵な旅が出来るので」
「ですから」
「そうですか」
「確かにオズの旅はいい」
 関羽さんも言います。
「素敵なものだ」
「じゃあ関羽さんも」
「うむ、旅は好きだ」
 こう神宝に答えます。
「何かと」
「そうですか」
「それで」
 そのうえでというのです。
「それがしもまた機会があれば」
「こうしてですね」
「旅に出て」
「楽しまれていますか」
「そうしているのだよ」
 まさにというのです。
「実際に」
「そうですか」
「武芸の鍛錬も学問も行い」
 そしてというのです。
「こうして時折旅も楽しむ」
「オズの国ではですね」
「そうしている、これがだよ」
 実にというのです。
「いいものだ」
「充実されていますね」
「まことにな、それに」
「それに?」
「実は今は天界に使いに行っているが」
 それでもというのです。
「関平と周倉もいてくれているしな」
「あっ、そういえばです」
 神宝はこの人達の名前を聞いて言いました。
「関羽様の左右にはですね」
「左様、二人がいるな」
「そうでしたね」
「二人はいつもそれがしを助けてくれている」
「心強い人達ですね」
「まことにな、だが今はな」
 そのお二人はというのです。
「天界に使いに行っていてだ」
「おられないですね」
「だからだ」
 それでというのです。
「二人のことはな」
「今は別ということで」
「既にスマートフォンで旅に出て屋敷を後にしたことは話した」
「だから若しお二人が先に屋敷に戻られてもですね」
「私がいないと驚くことはない」
「そのことも大丈夫ですね」
「うむ、安心だ」
 こう神宝にお話しました。
「これでな」
「それは何よりですね」
「全くだ、しかしスマートフォンは便利だ」
 関羽さんはこうも言いました。
「すぐに連絡が出来る」
「それはありますね」
「文を送るよりもだ」
 それよりもというのです。
「遥かにすぐに連絡がいき」
「それで、ですよね」
「話がまとまる、まことにな」
「スマートフォンは素晴らしいものですね」
「携帯電話もな、パソコンもあるし」
 関羽さんはこちらのお話もしました。
「まことに便利な世の中になった」
「本当にそうですね」
 神宝もこのことには笑顔で応えます、そうしたお話をしつつ玄奘さん達を加えた皆はさらに進むのでした。








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