『新オズのオジョ』
第七幕 筋斗雲
関羽さんを加えた一行はカドリングの中華街への道を進み続けました、その間神宝達五人はずっと関羽さんとお話をしています。
その立派なお鬚と赤いお顔、切れ長の目に大きなお身体はとにかく目立ちます。緑のその武人の服装も見事です。
その関羽さんに神宝は言いました。
「お話は聞いていましたが」
「それでもだね」
「はい、大きいですね」
そのお身体について言うのでした。
「二メートル以上あって」
「実は外の世界にいた時は困ることもあったのだよ」
「そうなんですか」
「それがしはオズの世界でも人並み外れて大きいが」
関羽さんは今は馬から降りています、赤兎馬の横にいますが本当に大きいです。
「外の世界では他の人達はずっと小さくてね」
「それで、ですか」
「建物や道具は普通の人の大きさに合わせるね」
「はい、そうですね」
「当時の人達は今の人達より小さくて」
「そうだったんですか」
「今のオズの国でもそれがしはかなり大きいが」
それでもというのです。
「外の世界ではもっと大きい感じでね」
「周りの人が小さくて、ですか」
「建物も道具も小さくて」
それでというのです。
「困ることも多かったよ」
「そうだったんですね」
「うむ、何かと」
「関羽さんの大きさなら」
オジョも関羽さんを見上げて言います。
「さもありなんですね」
「というかね」
ボタン=ブライトはこう言いました。
「オズの国も昔は人小さかったね」
「ええ、大人の人でもね」
ビリーナがボタンに応えます。
「百四十位だったわね」
「今はーーです」
チクタクも言います。
「平均ーー一七五−−程ーーですーーね」
「外の世界のアメリカ人と同じ位だったかしら」
オズマはその平均身長について述べました。
「オズの国もそれは」
「やっぱりアメリカが反映されますから」
ジョージがオズマに応えます。
「だからですね」
「それでオズの国の人達の背丈もそうなっているんですね」
カルロスも言います。
「そうですね」
「最初は身長まで反映されていなかったみたいですが」
ナターシャもお話します。
「それが変わったんですね」
「それで皆さん背丈が変わって」
最後に恵梨香が言いました。
「今に至るんですね」
「そうよ、様々な人種の人が入っただけでなくて」
オズマは五人の子供達にもお話しました。
「背丈もね」
「変わったんですね」
「高くなったんですね」
「今のアメリカ人と同じ位になったんですね」
「昔よりもずっと高くなった」
「そういうことですね」
「そうよ、けれどね」
オズマも関羽さんを見つつ言います。
「関羽さんの大きさは本当にフットボーラー並ね」
「バスケの選手の人も大きいですが」
神宝が応えました。
「それでもですね」
「関羽さんは筋肉質で骨太だからね」
「フットボーラーの人に近いですね」
「そう思うわ」
「アメリカンフットボールは得意だよ」
関羽さんもフットボーラーと聞いて言います。
「それにホッケーや野球、レスリングも」
「お好きですか」
「ああしたスポーツは得意でね」
それでというのです。
「好きだよ」
「そうなんですね」
「あとラグビーもするし」
こちらのスポーツもというのです。
「柔道や拳法もするよ」
「中国拳法ですね」
「そう、身体を思い切り動かして」
そうしてというのです。
「学問もしているよ」
「文武両道ですね」
「やはりスポーツだけでは駄目だよ」
「学問もしてですね」
「人は成るのだから」
「日々そうされているんですね」
「文武に励んでいるよ」
そうしているというのです。
「そうしたスポーツは大好きだよ、いい鍛錬になるよ」
「フットボールはーー格闘技ーーです」
チクタクはこう言いました。
「まさーーに」
「その通りだね」
「ラグビーーーもですーーが」
「それがしもそう思う」
「左様ーーですーーね」
「確かにフットボールはそうですね」
オジョも言います。
「もう格闘技ですね」
「身体全体を使って走ってぶつかり合うね」
「そう言っていいですね」
「ラグビーにしてもね」
「だから鍛錬にもいいんですね」
「そうだよ」
まさにとです、関羽さんはオジョに笑顔で答えました。
「まさにね」
「そうですよね」
「関羽さんの体格はそうしたスポーツ向けね」
まさにとです、ビリーナも言います。
「本当に」
「だからそれがしも励んでいるのだよ」
「そうなのね」
「スポーツマンシップは絶対に守って」
「そこも関羽さんね」
「守らねばならないことはね」
まさにというのです。
「絶対に守るものだよ」
「約束にしても」
「そう、破ってはいけないよ」
約束もというのです。
「それがしはそれは絶対だと思うよ」
「だから劉備さんや張飛さんともなのね」
「義兄弟と誓い合ったのだから」
それ故にというのです。
「それがしは義兄上と共にいて」
「張飛さんも大事にしたのね」
「そうなのだよ」
「成程ね」
「張飛、字は益徳とも翼徳ともいうが」
「あの人はよくお酒で失敗するそうね」
「それを怒りもするが」
それでもというのです。
「あの者との約束もだよ」
「守るのね」
「左様、それがしはいつも自分に戒めている」
「守るべきものは守れって」
「オズの国でもだよ」
「流石関羽様ですね」
神宝は関羽さんのそのお言葉に目をきらきらとさせて応えました。
「素晴らしいです」
「いやいや、そう言われると困るな」
「そうなんですか?」
「それがしは悪い癖がある」
「えっ、関羽様にもですか」
「すぐに驕って威張りたがる」
「ですが僕達には」
「昔から身分の低い者や弱い者を大事にしていたが」
それでもというのです。
「身分が高いとな」
「違ったんですか」
「尊大な態度だったのだよ」
「そうだったんですか」
「自分の強さを威張って」
「そういえばそんなお話もありましたね」
神宝も頷きました。
「関羽様には」
「オズの国ではそのことを戒めている」
「気をつけておられるんですね」
「自分自身で」
「そうなんですね」
「またそうしたことをしたら」
本当にというのです。
「よくないからね」
「ご自身で気をつけて、ですか」
「やっていっているよ」
「そうですか」
「だからそれがしは褒められる様な者ではない」
このことは強く言いました。
「オズの国の一住人なのだよ」
「市民ですか」
「それに過ぎない」
「そうなんですか」
「左様、そのことは君達もわかってくれたら嬉しいよ」
「僕達にとって関羽様は関羽様ですが」
「それがしより遥かに素晴らしい人は多くおられて」
そしてというのです。
「オズマ姫も然りだよ」
「私もなの」
「オズの国の国家元首であられます」
関羽さんはオズマに謹んで述べました。
「この国をどの国よりも幸せに治めておられるのですから」
「私は凄いの」
「左様です」
「そうだといいけれど」
「そこでそう言われることこそがです」
自分のことを驕らない、このことがというのです。
「素晴らしいのです」
「そうなのね」
「はい」
「そういうことなのね」
「ご主人の言われることに間違いはないですよ」
赤兎馬も言ってきました。
「本当に」
「だからなのね」
「そして嘘も言われないので」
「関羽さんは絶対に嘘は言わないわね」
「それは信義に反することなので」
だからだというのです。
「決してです」
「だからその言葉をなのね」
「素直に受け取って下さい」
「わかったわ、けれど私も威張りたくないから」
「今の様にですね」
「思わせてもらうわ」
「謙虚さを忘れないことですね」
「そうなるわ」
笑顔で言うオズマでした、そうしたお話をしながら一行は中華街に向かうオズの黄色い煉瓦の道を進んでいってです。
お昼には皆で食べました、そのメニューはといいますと。
ステーキにポテトサラダ、スパゲティカルボナーラ、デザートにフルーツの盛り合わせが出されましたが。
関羽さんの食べる量は相当なものです、ボタンは物凄い量の食べものを勢いよく食べる関羽さんを見て言いました。
「お身体が大きくていつも身体を動かしているからだね」
「そして学問にも励んでいてね」
オジョはボタンのその言葉に応えました。
「そうされているからね」
「だからだね」
「関羽さんは食べる量も凄いんだ」
「そうだよね」
「牛乳だって」
関羽さんは飲みものはそちらですが。
牛乳も凄い勢いで飲んでいます、それでオジョも言います。
「一リットルのコップにあるものを三杯目だよ」
「本当に凄いね」
「全くだよ」
こうボタンに言います。
「驚く他ないよ」
「そうだよね」
「関羽さんは食欲も凄いのね」
ビリーナも感心しています。
「そうなのね」
「うむ、やはり身体が大きいと」
関羽さんご自身もこう言います。
「そしていつも運動をしていると」
「飲んで食べるのね」
「これだけの量を」
「そういうことね」
「さもないと」
それこそというのです。
「満足に動けない」
「そういうことね」
「だからだ」
それ故にというのです。
「今も食べている」
「そういうことね」
「お酒も同じだ」
こちらの飲みものもというのです。
「かなり飲むと自分で思う」
「そういえばですね」
ここで神宝が言ってきました。
「張飛さんはお酒が大好きですね」
「うむ、張飛の酒好きはオズの国でもそうで」
「いつも飲まれていますか」
「天空の宮城でな」
「そうなんですね」
「それで時々暴れて」
お酒に酔ってというのです。
「義兄上やそれがしに怒られている」
「そのことは同じですね」
「オズの国でも。ただ宮城には天帝もおられて他の神々もいるので」
だからだというのです。
「張飛が暴れてもすぐに止められる」
「それはいいことですね」
「二郎真君や??太子もいるしな」
「あの方々もおられるんですね」
「だから張飛が暴れてもな」
「止めてくれる人がいるんですね」
「張飛は力はそれがしより強い」
関羽さんはこのこともお話しました。
「武芸ではそれがしより上だ」
「関羽さんーーよりーー強いーーとは」
流石のチクタクもこのことにはびっくりです。
「凄いーーですーーね」
「しかし実際のことだ」
「そうーーですーーか」
「蛇矛の武勇はかなりだ」
「蛇矛が張飛さんの武器でしたね」
オジョもこのことは知っています。
「関羽さんが青龍偃月刀で」
「それぞれ武器が違うのだよ」
「そうでしたね」
「青龍偃月刀はそれがししか使えないが」
「蛇矛もですね」
「縦横に使えるのは張飛だけだ」
こうオジョにお話します。
「凄いものだ」
「関羽さんが凄いって言うからにはですね」
「わかってくれるな」
「はい、よく」
オジョはパンにジャムを塗りつつ関羽さんに答えました、関羽さんはパンも食べていますがパンを食べる量もかなりのものです。
「そのことも」
「あと力では魯智真殿や武松殿もかなりだ」
「お二人は水滸伝の方でしたね」
「梁山泊の好漢のな」
「そうでしたね」
「それがしがよく一番強いと言われるが」
それでもというのです。
「力や武芸ではそれがし以上の者もいる」
「その人達も凄いですね」
「そうなのだ」
「関羽さんより強いとか」
ナターシャも驚きを隠せません。
「どんな人達なのか」
「想像出来ないね」
カルロスも同じ意見でした。
「ちょっと以上に」
「関羽さんの青龍偃月刀って凄く重くて」
恵梨香は関羽さんの武器を持たせてもらったのですがそれがとても自分達では持てないことから言います。
「とても動かせなくて」
「そんなものを自由に使える関羽さんは凄いのに」
ジョージもの口調は唸る様なものでした。
「関羽さん以上に強い人もいるんだね」
「力や武芸ではそうでもね」
神宝が四人にお話します。
「関羽さんは知識も凄いんだ」
「ああ、学問に励んでいるから」
「だからだね」
「それでなのね」
「関羽さんはそちらもおありなのね」
「だからね」
このことがあってというのです。
「総合的に言うと関羽さんが一番だね」
「武人としてはだね」
「軍隊を率いて作戦とかも考える」
「そうしたことも関羽さんは上手だから」
「張飛さん達より凄いのね」
「そうなんだ、だから中国で凄く慕われているんだよ」
ただ強いだけでなく学問もあるからだというのです。
「清廉潔白で約束も守って弱い者いじめも絶対にしないしね」
「武器を持たない者には一切手を出さない」
関羽さんも言います。
「当然のことだ」
「そこでそう言えるから立派なんです」
まさにとです、神宝は関羽さんに応えました。
「本当に」
「そう言ってくれるか」
「実際にそうですから、だから神様にもなって」
そしてというのです。
「僕達大好きなんですよ」
「そうなのだな」
「それでオズの国に中国系の人がいるなら」
それならというのです。
「関羽さんもなんですよ」
「おられるのよ」
オズマも言います。
「そうなのよ」
「左様、それがしは中国の神であるので」
「それでよね」
「中国の民達がいるとな」
それでというのだ。
「そこにいられるのだ」
「そのことは他の神々と同じね」
「道教の」
「そして仏教の仏の方々もおられるのよ」
「そうであるな」
「孫悟空さんもおられて」
オズマはオジョにこの人のお話もします。
「お釈迦様もよ」
「本当のオズの国の神様は多いですね」
「色々な人がいるからよ」
「神様も多いんですね」
「仏教は仏だけれど」
神様でなくてです。
「同じ様なものと考えていいわね」
「神様とですね」
「そうね」
「そういうことですね」
「だからエジプトの神々もいて」
ピラミッドにいるこの神々もというのです。
「ギリシアや北欧や中南米の神々もよ」
「おられるんですね」
「ええ、そうよ」
実際にというのです。
「この国にはね」
「アメリカではキリスト教徒が多いですが」
「キリスト教も存在しているけれど」
オズの国にはです。
「キリスト教以外にも色々な宗教と神仏が存在する国よ」
「オズの国に元からいる神々もおられて」
「そうなっているのよ」
「そうですね」
「そして妖精もね」
オズマはにこりと笑ってオジョにこの人達のお話もしました、カルボナーラを上品に食べながらそうします。
「存在しているわね」
「オズマ姫もそうでしたね」
「ええ、私も妖精でしょ」
「そうでしたね」
「色々な人も妖精も神様もね」
「一緒にいる国ですね」
「それがオズの国なのよ」
まさにというのです。
「まさにね」
「そうでありますな」
関羽さんもカルボナーラを食べます、大きなお皿の上にある濃厚な白いスパゲティを豪快ですが礼儀正しく食べています。
「まさに」
「ええ、それで私は関羽さんとお会い出来たけれど」
それでもというのです。
「孫悟空さん達にもね」
「お会いされたいですか」
「今回の冒険ではね」
「いい願いは適う」
関羽さんは微笑んで言いました。
「それがオズの国ですな」
「そうね、それじゃあ」
「必ずお会い出来ます」
「孫悟空さん達にも」
「斉天大聖殿にも」
「斉天大聖が、でしたね」
オジョは関羽さんが出したその呼び名に応えました。
「孫悟空さんの役職でしたね」
「天界でのな」
「凄い名前ですよね」
「それだけ凄いということだよ」
「そうなんですね」
「それがしは斉天大聖殿と一騎打ちをしていつも引き分けてしまう」
関羽さんでもというのです。
「張飛でもだ」
「互角位ですか」
「おおよそ。二郎真君や??太子でも負けはしないが勝てないのだよ」
斉天大聖即ち孫悟空にはというのです。
「これが」
「物凄く強いんですね」
「あの御仁もまた」
「そうなんですね」
「これがまたな」
「ただ性格は全く違うのよね」
オズマは関羽さんと孫悟空の性格の違いもお話しました。
「これが」
「そうですよね、関羽様は謹厳実直で」
神宝が応えます。
「孫悟空さんは陽気で気さくで」
「そうした人ね」
「物凄く悪戯好きでやんちゃでもあって」
「関羽さんは悪戯はしない人ね」
「絶対に」
それこそ何があってもです。
「そうした方です」
「けれど孫悟空さんはね」
「物凄い悪戯好きですね」
「それで食いしん坊でね」
「確かに関羽さんは物凄い量を召し上がられますが」
オジョも言います。
「食いしん坊ではないですね」
「そうね」
「はい、そうした感じはしないです」
「斉天大聖殿は神界の桃を全て召し上がられる位でだ」
関羽さんはこのことは少し困った感じになってお話しました。
「物凄い食欲だ」
「食べると長生きする桃をですね」
「それこそ全て召し上がられたのだ」
こう神宝にもお話します。
「一つ食べると二千年長生きする桃も一つ食べると八千年長生きする桃も」
「そうでしたね」
「そうして途方もなく長生き出来る様になられ」
「あと死ぬ人の名前からでしたね」
「ご自身の名前を消された」
「それで死ななくなりましたね」
「そうなられたのだ」
神宝に神妙なお顔でお話します。
「あの方は」
「何か凄いね」
ボタンもここまで聞いて言います。
「そのことは僕もわかったよ」
「そしてその後天界で大暴れをされたのだ」
「暴れた理由は?」
「半分以上悪戯だ」
「それでだったんだ」
「そうだったのだよ」
「悪戯で大暴れするなんて凄いね」
ボタンはここまで聞いてまた言いました。
「それはまた」
「そうした御仁でな」
「やんちゃするんだね」
「そうなのだ」
「そうした人なんだね」
「悪意はないのだが」
「悪戯とか大好きで」
それでとです、またボタンは言いました。
「やんちゃなんだ」
「そうなのだ、如意棒を手に筋斗雲に乗っておられてな」
「筋斗雲?」
「空を飛ぶ雲だ」
関羽さんはボタンの疑問に答えました。
「斉天大聖殿の乗りものの一つだ」
「それに乗ってお空を飛ぶんだ」
「そうなのだよ」
「何かそのことも凄いね」
「何時どの国にいるか」
それはとです、オズマもボタンにお話します。
「わからないのよ」
「いつもお空を飛び回っているから?」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「一つのところにいる人でもないから」
「だからなんだね」
「お会いすることが難しくもあるのよ」
「王宮に来る時もあるしね」
ビリーナも言います。
「あたしの国にふらりと来たりもするし」
「そうよね」
「かと思えば来ないし」
「そのこともね」
「神出鬼没ね」
「本当に」
「僕も何度かお会いしましたけれど」
オジョも言います。
「いつも突然ですね」
「そうよね」
「ですがお会いしたいですね」
「そうね、だから今は願いましょう」
「わかりました」
オジョはオズマの言葉に笑顔で頷きました、そうしてです。
皆でお昼を食べた後はまた出発しました、黄色い煉瓦の道を進んでいって日が暮れるまで進んでいますと。
もうそろそろ日が暮れるので休もうとするとでした。
お空に物凄い速さで飛ぶ雲が見えました、まるで光の様に速くてあっという間に見えなくなってしまいました。
その雲、カドリングの方に飛んでいったそれを見て神宝は言いました。
「あの雲が」
「筋斗雲だな」
「そうですね」
関羽さんにも応えます。
「孫悟空さんの乗っておられる」
「噂をすればだな」
「早速出て来られましたね」
「そうだな」
「カドリングの方に行ったけれど」
ここで言ったのはオジョでした。
「若しかして」
「僕達もカドリングに行きますし」
「合えるかも知れないね」
「そうですね」
「若しかするとね」
「お会い出来たらいいですね」
神宝は雲、筋斗雲が飛んで行った方を見つつオジョに言います。
「これから」
「全くだね」
「そうですよね」
「じゃあ是非願おうね」
「孫悟空さんにもお会い出来る」
「そのこともね」
まさにというのです。
「そうしましょう」
「是非ね」
「お昼にお話したらでしたね」
「すぐだったね」
「お姿見られましたね」
「うん、言い出したらだよ」
まさにというのです。
「そうなったね」
「筋斗雲はーーです」
チクタクが言うことはといいますと。
「何時ーー見られるかーーわかりまーーせんーーが」
「それでもだね」
「これからーーです」
まさにというのです。
「お会いーー出来たーーら」
「嬉しいよね」
「孫悟空さんーーに」
「筋斗雲見られたし」
「そうーー思いーーますーーね」
「全くだよ」
「私もーー願いーーます」
チクタクもでした。
「孫悟空さんーーとーーお会いーーしたいーーです」
「ではね」
「一緒にーー願いーーましょう」
「そうしようね」
「願いが適うことはよいことだ」
関羽さんは言いました。
「まことに」
「そうですよね」
「うむ、それがしのかつての願いは天下泰平だった」
「三国時代の時は」
「義兄上がそれを果たされ」
そしてというのです。
「義兄上と共に生きて共に死ぬ」
「そのこともですね」
「願っていた」
「そうでしたね」
「今の願いはオズの国に何時までもいたい」
そう願っているというのです。
「義兄上も張飛も他の人達もいるのだから」
「だからですか」
「この国に何時までもいて」
オジョにさらにお話します。
「楽しく過ごしたい」
「それが関羽さんの今の願いですか」
「そうなのだよ」
「オズの国もお好きですね」
「この国の全てが好きだ」
まさにというのです。
「嫌いなものはない」
「そうですか」
「だから」
それ故にというのです。
「永遠にいたい」
「そう願われているのなら」
「適うな」
「オズの国ですから」
この国がお伽の国だからだというのです。
「絶対に」
「そうだったな」
「はい、ですから」
「そうだな」
「むしろ関羽さんがおられないと」
こうも言うオジョでした。
「寂しいですよ」
「関羽様はヒーローですから」
神宝はオジョに続きました。
「ですから」
「だからだよね」
「ずっとオズの国にいて欲しいです」
「全くだね」
「僕もお願いします」
関羽さんがオズの国にずっといられる様にというのです。
「その様に」
「そうだね」
「孫悟空さんもですし」
この人もというのです。
「絶対にです」
「オズの国にいて欲しいですね」
「オズの国に来ればお会い出来ますし」
このこともあるからだというのです。
「是非」
「そういうことだね」
「そう願います」
こうお話してでした、神宝はお空筋斗雲が飛んだその方を見てそうしてこう言ったのでした。そのうえで、です。
神宝はこんなことも言いました。
「もう少し先に行きたいですが」
「それでもね」
「もうすぐ夜だから」
だからだというのです。
「ここはね」
「晩ご飯を食べて」
「後は近くの川かお池で身体を奇麗にして」
そしてというのです。
「そのうえでね」
「今日もお休みですね」
「そうしようね」
「そうしないと駄目ですね」
「ええ、寝ることも大事よ」
旅のリーダーであるオズマも言います。
「夜は寝る時間でしょ」
「そうですね」
「だからね」
それでというのです。
「もうね」
「歩くことは終わりですね」
「今日はね」
そうするというのです。
「いいわね」
「わかりました」
「それとね」
「それと?」
「今日の晩ご飯はね」
そちらのお話もするのでした。
「何がいいかしら」
「ああ、晩ご飯ですね」
「それはね」
「それならですね」
ここで言ったのはオジョでした。
「いいものがありますよ」
「何かしら」
「はい、バーベキューをしましょう」
これがいいというのです。
「羊肉の」
「ラムやマトンのなの」
「勿論お野菜も沢山出して」
そうしてというのです。
「食べましょう」
「羊ね、いいわね」
「そうですよね」
「羊は昔の中国では一番いいものとされていたしね」
「最高級のお肉ですね」
「そうされていたしね」
このこともあってというのです。
「関羽さんもお好きでしょうし」
「好物ですぞ」
実際にとです、関羽さんはオズマにも答えました。
「羊料理は」
「それならね」
「羊のバーべーキューですか」
「それにしましょう」
「それじゃあね」
「それがし豚もよく食べますが」
ここで関羽さんはこう言いました。
「羊もです」
「好物でなのね」
「よく食べます」
「そうなのね」
「色々食べますが」
「そういえば」
ここでオジョは関羽さんに尋ねました。
「関羽さんは何でも生ものもお好きだとか」
「お刺身等かな」
「はい、生野菜も召し上がられていましたね」
「サラダも好きだよ」
「つい中華料理は火を通したお料理が多いですが」
「それだけではなくだよ」
関羽さんからもお話します。
「それがしはお刺身等生ものも最初から抵抗なくだよ」
「召し上がられるんですか」
「後世、どうも最近まで中国ではお料理には必ず火を通していたが」
「そうしたお料理ばかりですね、中華街でも」
「そう、けれどね」
それだけでなくというのです。
「それがしの時代は生ものも普通に食べていたのだよ」
「そうだったんですね」
「中国でも、当時は漢という国名であったが」
「そうでしたか」
「だからそれがしもだよ」
「お刺身でもですね」
「普通に食べられるのだよ」
最初から抵抗がなかったというのです。
「そうなのだよ」
「そうでしたか」
「左様、そして今からは」
「羊のべーべキューをですね」
「楽しもう」
笑顔でこう言ってでした。
皆はバーベキューを楽しみました、そのうえで身体を奇麗にしてからテントの中でぐっすりと眠りました。