『新オズのオジョ』




                第五幕  オジョの決意

 オジョは竹林で皆と詩を創って遊んでからです、ボタンに聞かれました。
「ねえ、オジョのお願いは適ったよね」
「ああ、笹のことはね」
「そうだよね、だったらね」
 それならとです、ボタンはオジョにさらに言いました。
「もうだよね」
「僕の旅はだね」
「目的を果たしたからね」
「これで終わりだね」
「僕達オジョとお別れかな」
 ボタンは少し悲しそうに言いました。
「そうなるのかな」
「そうだね、けれどね」
「けれど?」
「考えてみたらね」
 どうかとです、オジョはボタンに答えました。
「僕最近旅に出ていないから」
「だからなんだ」
「久し振りだから」
 それでというのです。
「これからも続けていこうかな」
「中華街まで行くんだ」
「関羽さんのお家にも行ってね」
 そこにもというのです。
「そうしてからね」
「中華街にもなんだ」
「行こうかな」
「じゃあそうしたら?」
 ボタンはオジョのその言葉を聞いてこう言いました。
「オジョがそうしたいならね」
「それならだね」
「別に今お家を離れてもいいならね」
 それならというのです。
「どうかな」
「今はね」
 これといってとです、オジョはボタンに答えました。
「お家を離れてもね」
「何もないんだ」
「うん」
 そうだというのです。
「今の僕はね」
「じゃあ決まりだね」
 それならとです、ボタンはオジョに微笑んで答えました。
「これからも僕達と一緒にね」
「旅をしていこうね」
「そうしようね」
「じゃあ僕達が留守番をするよ」
「オジョのお家も奇麗にしておくよ」
 タンタンとロンロンがオジョに言ってきました。
「それで待っておくからね」
「竹林でね」
「お願いするよ、じゃあ旅から戻ってきたら」
 その時のことをです、オジョはパンダさん達にお話しました。
「また遊ぼうね」
「そうしようね」
「その時を楽しみにしていようね」
「それで今はね」
「暫しのお別れだね」
「うん、行って来るよ」
 オジョはパンダさん達に笑顔で一時の別れの言葉を告げました、パンダさんもそうしてそれで、でした。
 お互いに手を振り合って少しの間別れることにしてでした、オジョは冒険を再開しました。するとチクタクがオジョに言ってきました。
「旅はーーですーーね」
「うん、最近ね」
 オジョはチクタクにも答えました。
「していなかったから」
「だからーーですーーね」
「これを機会にね」
「旅をーー続けーーられーーますーーか」
「そうするって決めたんだ」
 まさにというのです。
「これはチャンスだって思ったからね」
「そう、チャンスは活かさないとね」
 ビリーナも言ってきました。
「何といってもね」
「そうだよね」
「そのチャンスを掴んで」
 そしてというのです。
「楽しい時を過ごすことよ」
「それがいいことだね」
「あたしだってそうだから」
 ビリーナにしてもというのです。
「チャンスがあればね」
「それを掴むんだね」
「絶対にね」
 まさにというのです。
「そうしてよ」
「楽しい思いをするのね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「オズの国ではそれはないけれど」
 それでもとです、ビリーナはオジョにこうもお話しました。
「それが罠だったとかね」
「そうしたこともあるんだ」
「それで大変なことになったり後でもっと大きなチャンスがあって」
「その大きなチャンスを逃すこともなんだ」
「あるから」
 だからだというのです。
「外の世界ではね」
「チャンスは選ぶべきなんだ」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「外の世界ではね」
「そこは怖いね」
「怖いというかね」
「外の世界はそうした世界なんだね」
「鶏を捕まえようとする悪い子供もいたりするから」
 外の世界にはというのです。
「だからね」
「それでなんだ」
「そう、あたしは外の国では気をつけていたの」
「成程ね」
「けれどオズの国では違うわ」
 この国ではというのです。
「罠がなくて何でもね」
「チャンスになるからだね」
「あたしはチャンスを見たら」
 その時はというのです。
「すぐにね」
「動く様にしているんだ」
「そしてチャンスと掴む様にしているのよ」
「常にだね」
「積極的にね」
 まさにというのです、そうしてです。
 黄色い煉瓦の道、オジョのお家からカドリングに向かうその道を進みつつそのうえでビリーナはさらに言いました。
「だからあんたもね」
「今回はだね」
「そのチャンスを活かして」
 そしてというのです。
「楽しむのよ」
「それがいいんだね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「あんたお家にいてもね」
「それを選んでもだね」
「それはそれでね」
 どうかというのです。
「楽しめたわよ」
「オズの国だからだね」
「オズの国は不幸がない国だから」
 それでというのです。
「あんたはお家に残ってもね」
「幸せにだね」
「なっていたわ」
「それで楽しめていたね」
「そうなっていたわよ」
 こう言うのでした。
「そのことも言っておくわ」
「どうしても幸せになることがいいことだね」
「オズの国ではね、そして喜んでもいたわ」
「楽しんでもだね」
「そうなっていたわよ」
 こうお話するのでした。
「本当に」
「パンダさん達と楽しく過ごせていたね」
「そして旅に出て」
「こちらの楽しみをだね」
「満喫出来るわよ」
 これからそれが出来るというのです。
「楽しみにしていましょう」
「今から」
「そうして先に進んでいくわよ」
「このまま先に進んでいけば」
 どうかとです、神宝は目を輝かせて言いました。
「関羽様のお屋敷に行けるよ」
「関羽さんにお会い出来ると思うと」
 恵梨香も期待に胸を膨らませている感じです。
「足が自然と速くなるわ」
「強くて賢くて優しくて立派な人だっていうなら」
 ジョージも関羽さんについて言います。
「どんな人か楽しみだよ」
「確かお鬚が凄く立派でお身体も大きくて」
 カルロスは関羽さんの外見のお話をします。
「昔の中国の武将の身なりで赤兎馬に乗っていたね」
「それでいつも青龍偃月刀を持っていて」
 ナターシャは関羽さんの武器について言及しました。
「あと本も持っているのよね」
「持っている本は春秋左氏伝っていう本で」
 神宝は関羽さんのお話を皆にしました。
「関羽さんはそれをずっと読み込んでいるんだ」
「学問もあるっていうけれど」
「読書家でもあるんだね」
「だから関羽さん賢いのね」
「学問も好きだから」
「物凄く強くて学問も好きだから」
 神宝は四人に笑顔で話していきます。
「文武両道の英雄なんだよ」
「しかも約束は絶対に守る」
「嘘は吐かない」
「自分より弱い人を護る」
「そうした人でもあるのね」
「だから凄いんだ、関羽様は中国人のヒーローだよ」 
 そこまでの人だというのです。
「本当にね」
「神宝は本当に関羽さんが好きね」
 笑顔で、です。オズマは関羽さんのことを熱心にお話する神宝に言いました。
「お話を聞いていると」
「はい、中国にも沢山のヒーローがいますけれど」
「その中でもなのね」
「関羽さんは特に有名で素晴らしいヒーローで」
 それでというのです。
「僕が一番好きな英雄の一人なんです」
「それでなのね」
「オズの国におられるなら」
 それならというのです。
「是非です」
「お会いしたいのね」
「そうなんです、おられると聞いた時から」
 まさにその時からというのです。
「お会い出来る時を楽しみにしていて」
「これから会えると思うと」
「期待で胸が膨らんでいます」
「そうなのね」
「とにかく凄く大きな人で」
 神宝は関羽さんのお話をさらにします。
「二メートル十はあるんですよ」
「大きいことは知っていたけれど」
 それでもとです、オジョが驚きの声で言ってきました。
「いや、フットボーラー並だね」
「アメリカンフットボールのですね」
「選手並だね」
「実際にそこまでの大きさで体格もです」
「そこまでなんだね」
「はい」
 実際にというのです。
「そうした体格なんです」
「それは強いね」
 オジョもこう言います。
「そうした体格だと」
「二十キロ以上ある武器を自由自在に操りますし」
「それが青龍偃月刀だね」
「もうそれがです」 
 本当にというのです。
「恐ろしい強さで」
「だからだね」
「関羽さんは強くて」
 それでというのです。
「無敵なんです」
「そこまで強いと」
 ここでオジョはこうも言いました。
「孫悟空さんに匹敵するかな」
「斉天大聖ですね」
「あの人も強いね」
「もう一人で天界を荒らし回った位で」
「それでなんだ」
「物凄く強いですが」 
 それでもとです、ここで。 
 神宝はオジョにこうも言いました。
「ただ」
「ただ?」
「関羽様は神様になられて天帝にもなられたとか」
「そんなお話があるんだ」
「そこまで偉い神様なので」
「孫悟空さんともなんだ」
「互角位は」 
 それ位はというのです。
「お強いかと」
「そこまで強いんだね」
「三国志でも指折りの強さですが」
「神様になってだね」
「尚更」
 人間であった時以上にというのです。
「そうだと思います」
「そうなんだね」
「ええ、どちらの人もかなりの強さだけれど」
 それでもとです、オズマも言ってきました。
「私から見て互角だと思うわ」
「そうですか」
「正直孫悟空さんの強さはね」
 まさにというのです。
「もう縦横無尽の」
「そこまでの強さですよね」
「如意棒を自由自在に操って」
 そしてというのです。
「術も色々使うわね」
「分身の術とか」
「自分の毛を抜いてそうするわね」
「斉天大聖も本当に強いです」
「ええ、けれど関羽さんもね」
 この人もというのです。
「今は術も使えるから」
「あの方もですね」
「だからね」
 それでというのです。
「甲乙つけ難いわ」
「左様ですね」
「あれっ、術っていうけれど」
 ここでボタンが言いました。
「それ魔法じゃないかな」
「そのことね」
「うん、オズの国で魔法が使えるのは」
 オズマに言うのでした。
「オズマ姫とグリンダさんと魔法使いさんだけだね」
「そうよ、私達三人だけよ」
「じゃあ関羽さん達は」
「関羽さん達が使うのは仙術なのよ」
「魔法じゃないんだ」
「そう、だからいいの」
 この人達はというのです。
「それに人じゃなくて神様でしょ」
「魔法を使う人達はなんだ」
「神様になるとね」 
 どうしてもというのです。
「オズの市民でもね」
「そうした決まりはないんだ」
「ええ、魔法を使っていい人で」
 その限定でというのです。
「それは私達三人だけで」
「神様はいいんだね」
「そう、ましてどちらの神様も中国では物凄く偉い神様達だから」
「余計になんだ」
「そこはね」
 まさにというのです。
「いいのよ」
「成程、わかったよ」
「神様はまた別よ」
 魔法のことはというのです。
「仙術も魔法と呼ぶべきかも知れないけれど」
「その違いは曖昧なんだ」
「魔法と錬金術、妖術、超能力、仙術、法力の違いは」
 どうしてもというのです。
「私にもね」
「はっきりとはなんだ」
「区分はね」
 どうにもというのです。
「しにくいわ」
「そうなんだね」
「忍術は出来るけれど」
 こちらの区分はというのです。
「身体や道具を使ったものでね」
「魔法じゃないんだ」
「そう、魔法じゃないの」
 忍術はというのです。
「だからよ」
「僕忍術は物凄い術だと思ってたよ」
 ボタンにしてみればです。
「けれど魔法じゃないんだね」
「そういえば忍者も昔はオズの国にいなかったね」
 オジョは二人のやり取りから述べました。
「そうだったね」
「そこも変わったわね」
「そうですね」
 オジョはオズマの言葉に頷きました。
「昔は」
「ええ、本当にね」
「あんな素敵で面白い人達がいなかったなんてね」
「残念なことよね」
「今思いますと」
「それがね」 
 今ではというのです。
「いてくれていて忍者の里や忍者屋敷もあって」
「オズの国の人気者の一つになっていますね」
「ええ、ただ忍術はね」
 オズマはオジョにも忍術についてお話します。
「魔法とは違うのよ」
「身体や道具を使うものですか」
「その道具も魔法はかかっていないの」
「普通のものですか」
「全部ね」 
 そうだというのです。
「面白い道具ばかりだけれど」
「それでもですか」
「全部魔法とかはなくて」
「普通のものなんですね」
「手裏剣も煙玉も何もかもがね」
「そうですか」
「水蜘蛛もね」
 こちらの道具もというのです。
「ちゃんとね」
「使い方があってですか」
「それで使って」
 そしてというのです。
「やっていくものなの」
「何かと思っていますと」
「違うのよ、あと狐さん達が化けるのはね」
「あれはいいんですか」
「化けることは魔法じゃないから」
「変化はですか」
「そう、私も許可を出しているし」
 化けることはいいと、です。
「だからね」
「そのこともですか」
「問題ないのよ、自然と備わる個性だしね」
「狐さん達がですね」
「そうよ、だからそれはいいの」
 狐さん達の変化はというのです。
「別にね」
「そういうことなんですね」
「ええ、それとね」
 さらにお話するのでした。
「化けるのは狐さん達だけじゃないのよ」
「他の生きものもですか」
「そう、狸にアナグマ、獺、猫ってね」
「そうした生きものもですね」
「化けられるのよ」
 そうだというのです。
「オズの国でもね」
「それでなんですね」
「彼等のそれは魔法じゃないから」
「いいんですね」
「ええ、ただ悪戯とかに使うことはね」
「禁じられているんですね」
「そうよ、法律でね」
 オズの国のそれでというのです。
「そうしているの」
「悪いことには使ったら駄目なんですね」
「化けることはね」
「そうですか」
「そういえば」
 ここで神宝が言うことはといいますと。
「日本では狐は化けるのに頭の上に葉っぱを乗せます」
「それはオズの国でも同じよ」
「狐はそうするんですか」
「日系の狐はね」
 こちらの狐はというのです。
「そうして化けるわ、狸もね」
「日系の場合はそうなんですね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「そうしてね」
「化けるんですね」
「そう、中国系の狐は葉っぱを頭に乗せなくても化けられるの」
「同じ化けるにしてもお国が違うと変わるんですね」
「そうよ、そこはね」
「その辺り面白いですね」
「あと最近は狐はアメリカ系でもロシア系でもね」
 彼等もというのです。
「日系や中国系の狐に化け方を教えてもらって」
「化けられる様になったんですか」
「そうなったのよ、狸もね」
 彼等もというのです。
「そうなったから、アナグマにしても」
「アナグマもですか」
「獺もだけれど」
 ここでオズマはこうも言いました。
「アナグマは貉のことでしょ」
「そうなんですよね」
「狸と外見がそっくりだから」
「化けられるんですね」
「日本ではあれよね」
 ビリーナは日本人の恵梨香を見てオズマに言いました。
「同じ穴の貉って言葉があったわね」
「それは狸がアナグマの穴に一緒に住むからよ」
「オズの国でもよく同居しているわね」
「狸は自分で穴を掘れないけれどね」
「穴に住むからなのね」
「それでアナグマが掘った穴に入って」
 そうしてというのだ。
「住むけれど」
「それでその言葉が生まれたのね」
「そう、同じ穴の貉ね」
「この言葉が出たのよね」
「ただ狸とアナグマは仲がいいから」
「一緒に住んで問題ないのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「そうしていてもね」
「そうなのね」
「そう、それでね」 
 そのうえでというのです。
「オズの国ではアナグマも化けられて」
「アメリカのアナグマもよね」
「化けられる様になったの」
「化けられる生きものが多いってことね」
「オズの国はね」
「そしてそれは魔法じゃないのね」
「ええ、化けることはね」
 このこと自体はというのです。
「そうではないのよ」
「その辺り色々ややこしいわね」
「そうかしら」
「あたしはそう思ったわ」
「そうなのね」
「あとね」
「あと?」
「あたしも化けようと思えば化けられるかしら」
 ビリーナはここでこうも言いました。
「鶏も」
「鶏は妖力がないから」
「無理なの」
「魔法を使わないとね」
 そうしないと、というのです。
「無理よ」
「つまりあんたの許可がないとなのね」
「それは無理だから」
「そうなのね」
「ええ、そのことはわかってね」
「よくわかったわ、ただね」
「ただ?」
「いえ、オズの国の法律というか魔法と化けることも境目がね」
 それがというのです。
「あたしは今一つわからないわ」
「だから魔法を使わないでね」
「自分の力で化けられたらいいのね」
「そういうことよ」
「ああ、それでわかったわ」
 ビリーナもでした。
「自分の力で化けられたらいいのね」
「頭に葉っぱを乗せてもね」
「それならいいのね」
「そういうことよ」
「成程ね」
「僕はわからないよ」
 ボタンはそうなのでした。
「そのお話を聞いてもね」
「貴方はーーですーーか」
「うん、今のお話を聞いてもね」
 チクタクに答えます。
「どうもね」
「そうーーですーーか」
「自分に妖力があれば魔法じゃないの?」
「そうーーなります」
「ああ、そういうことなんだね」
「これでーーおわかりーーですーーね」
「そうなったよ、成程ね」
 ボタンはチクタクの言葉に頷きました。
「よくわかったよ」
「それーーでは」
「まあ僕は変身出来なくてもいいよ」
 ボタンは興味がない感じでした。
「それはね」
「そうーーなのですーーか」
「よく寝られたらね」
 それでというのです。
「満足だからね」
「私が魔法をかけたら」
 魔法を使えるオズマが言います。
「皆化けられるけれどね」
「やっぱりそうなんだね」
「貴方達は何になりたいかしら」
 化けられるならというのです。
「一体」
「そう言われると」
「急にはね」
「別にね」
「これといってね」
「ないわね」
 神宝達五人がお話します。
「今言われても」
「特に思っていなかったから」
「それじゃあ」
「別にね」
「ないね」
「何に変身したいかはその時その場所で変わるわ」 
 オズマは五人にこうお話しました。
「本当にね」
「力仕事がしたいと象になりたいですね」
 ジョージはこの生きものを出しました。
「それか熊か」
「速く行きたいなら馬ですね」 
 カルロスはその場合を考えました。
「チーターもありますね」
「隠れないなら鼠ですね」
 ナターシャも言います。
「昆虫でも悪くないです」
「お空を飛びたいなら鳥です」
 恵梨香はそのお空を見ました。
「それか蝙蝠ですね」
「お水の中ならお魚で」
 神宝はその場合から考えました。
「海豚もありますね」
「そう、その都度違っていて」
 オズマは五人にまた言いました。
「変わるわ」
「そうですよね」
「力仕事、速く行きたい時」
「飛びたい時隠れたい時泳ぎたい時で」
「本当にそれぞれですね」
「変わりますね」
「私は姿を変えられた時もあったわ」
 ドロシーとはじめて会った時の冒険でもそうでしたし桃に変えられた時もそうでした。特に後者は大騒ぎになりました。
「それで変えることもね」
「出来ますね」
「じゃあ鳥になることも出来て」
「馬にもなれますね」
「それで他の生きものにも」
「そうなれますね」
「例えばね」
 ここで、でした。オズマは。 
 何と短い金髪の可愛い男の子の姿になってみせました、皆その姿になったオズマを見てびっくりしました。
「えっ、そのお姿は」
「まさか」
「まさかと思いますが」
「オズマ姫が女の子とわかる前の」
「それまでのお姿ですか」
「そうよ」
 まさにというのです、声はオズマの女の子の声のままです。
「この時の姿にもなれるの」
「噂には聞いていましたけれど」
 オジョはそのオズマを見て言います。
「オズマ姫は男の子だったって」
「そう、それでね」
「オズの国の主になられるまではですね」
「この姿で生きていて」
 それでというのです。
「冒険もして」
「それで、ですね」
「大冒険の果てにね」
「実は女の子ってわかってですね」
「そして」
 そのうえでというのです。
「本来の姿に戻れたの」
「そうなんですね」
「そしてその時の姿にもね」
「なれるんですね」
「こうしてね、それじゃあ」
 ここで、でした。
 オズマは本来の姿に戻ってまた言いました。
「戻ったけれどどうかしら」
「よくわかりました、ただ」
「ただ?」
「オズマ姫は男の子の時のお姿もいいですね」
「実は結構評判がいいのよ」
「男の子の時のお姿もですか」
「そうなの、可愛いってね」
 そう言われてというのです。
「これがね」
「そうなんですね」
「ドロシー達にもね、だから時々ね」
「こうしてですね」
「変身しているのよ」
 魔法を使ってというのです。
「そうしているのよ」
「そうなんですね」
「ただ私の本来の姿はね」
「今のお姿ですね」
「男の子の姿はその時は本当の姿と思っていたけれど」
 それがというのです。
「実は違っていたし」
「本来の姿じゃなかったんですね」
「そうだったのよ」
 これがというのです。
「だから今の姿はね」
「戻ったといっても」
「仮の姿に変身したのよ」
「化けたんですね」
「そうなるわ」
「そうですか」
「けれど私もさっきの姿は気に入っていて」
 それでというのです。
「変身することもまんざらではないわ」
「そうですか」
「ずっとその姿だったしね」
 このこともあってというのです。
「馴染みもあるから」
「それでお好きですね」
「ええ、だからこの時の私を見たい時はまた言ってね」
「わかりました」
「そういえばですね」
 ここで神宝が言うことはといいますと。
「オズの国って中心にいる人は皆女の人ですね」
「私もドロシーもね」
「ベッツイさんもトロットさんも」
「そうね、女の子ばかりね」
「そうですよね」
「そんな国外の世界にはないわね」
「女の人の国家元首はおられても」
 それでもというのです。
「オズマ姫みたいなです」
「女の子はいないわね」
「はい、本当に」
 そのケースはというのです。
「ありません」
「そうなのね」
「そう思うと面白いですね」
「ええ、他にこうした国がないわね」
「そこもオズの国ならではですね」
 この国の特徴の一つだというのです。
「本当に」
「そうね、私が国家元首でね」
「それでドロシーさん達四人で王女ですね」
「そうなっているわ」
「女王ではないんですね」
「王女よ」
 そちらだというのです。
「立場はね」
「王女で国家元首ですね」
「私は女王になるには女の子だから」
「それで、ですか」
「どうかと思ってね」
 それでというのです。
「王女のままでね」
「女王にはですか」
「なっていないの」
 そうしているというのです。
「だから皆オズマ姫と呼んでくれているのよ」
「王女、お姫様だから」
「そうなのよ、外の世界にもお姫様はいるわよね」
「おられることはおられますが」
 神宝はオズマの今の言葉にはこう返しました。
「僕達の国では恵梨香のお国だけです、お姫様がおられる国は」
「アメリカにはおられないです」 
 ジョージはこのことは残念そうに言いました。
「何処にも」
「ロシアもです」 
 ナターシャも残念そうです。
「昔はおられたんですが」
「ブラジルもそうなんですよね」
 カルロスも同じでした。
「王様も女王様も王子様もね」
「そう思うと日本はいいでしょうか」
 最後にその日本人の恵梨香が言いました。
「お姫様がおられて」
「日本は皇室があって」
 オズマもこのことは知っています。
「王様じゃなくて皇帝、天皇陛下よね」
「はい、そうです」
「日本はそうなります」
「王様ではなくて」
「王子様ではなくて皇子様で」
「王女様も正しくは皇女様ですね」
「そうね、けれどお姫様がおられることは」 
 このことはというのです。
「オズの国と同じね、一度日本の天皇陛下にお会いしたいわ」
「日本に行かれてですか」
「ええ、外の世界の陛下にお会いして」
 そしてとです、五人に答えます。
「お話したいわ」
「ブリキの樵さんがウィンキーの皇帝ですが」
 オジョはこの人のことをお話に出しました。
「日本の天皇陛下はまた違うお立場ですね」
「ええ、言うなら私と同じ立場の方よ」
「そうですか」
「だからその方とね」
「一度ですか」
「お話したいわ」
 そう考えているというのです。
「本当にね」
「では日本を訪問されますか」
「機会があればね、それで陛下がそう言われたら」 
 日本の天皇陛下がというのです。
「そうさせて頂きたいわ」
「その時が来ることをですね」
「期待しているわ」
「そうなるといいですね」
「ええ、二千六百年以上の歴史があるお家なんて」
 それこそというのです。
「想像も出来ないから」
「オズの国より遥かに歴史が長いですね」
「一体どうしたお家かも知りたいわ」
 こうお話するのでした、そしてです。
 皆はマンチキンからカドリングに進んでいきます、その途中で十時と三時のティータイムは欠かさないですが。
 三時に今はイギリス風のティーセットにホットミルクティーを飲んでです、オジョはこう言いました。
「紅茶を飲みますと」
「ほっとするね」
「そうだよね、三時の楽しみだよ」
 一緒に飲んでいるボタンにも言います。
「セットもね」
「今日のセットもいいね」
「うん、上段はスコーンで」
 三段のそれはです。
「中段はシュークリームでね」
「下段はバウンドケーキだね」
「このセットがいいね」
「そうだよね」
「僕紅茶はレモンティーをよく飲むけれど」
「ミルクティーもだね」
「結構好きでね」 
 それでというのです。
「今もね」
「楽しんでいるね」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「こうしてね」
「僕と一緒だね」
「ボタンもミルクティー好きだね」
「中にお砂糖を沢山入れて」
 そうしてというのです。
「飲むのが好きだよ」
「甘いからだね」
「僕甘いもの大好きだから」
 だからだというのです。
「ミルクティーもね」
「お砂糖を沢山入れてだね」
「飲むのが好きだよ、ミルクもね」
 こちらもというのです。
「甘いからね」
「好きだね」
「ミルクとお砂糖でうんと甘くして」
 そのうえでというのです。
「そのうえでね」
「飲むんだね」
「今みたいにね、そしてね」
「ティーセットもだね」
「甘いものがね」 
 そうしたものがというのです。
「好きだよ」
「それも大好きだね」
「そうだよ」
 このことを否定しませんでした。
「だから僕も三時が楽しみだよ」
「十時もだね」
「うん、甘いものが食べられるから」
 大好きなそれがというのです。
「本当にね」
「それでだね」
「そうだよ」
「甘いものは何でもかな」
「好きだよ、果物もね」
 こちらもというのです。
「好きだから」
「それでだね」
「それを食べられるなら本当に幸せだよ」
「その中でも特に好きなのは何かな」
「わかんなーーい」
 ここでこう返したボタンでした。
「だって甘いものは何でもね」
「大好きだからなんだ」
「だからね」
 まさにそれでというのです。
「そう聞かれてもね」
「わからないんだ」
「そうだよ」 
 こうオジョに答えるのでした。
「その質問にはね」
「そうなんだ」
「そうだよ、今食べているものも」 
「これから食べるものも」
「甘いものならね」 
 それならというのです。
「何でもだよ」
「つまり甘いものならだね」
「全部好きだよ」
「じゃあもう甘いもの全般が大好きだってね」
 その様にとです、オジョはボタンに微笑んで答えました。
「言ってもね」
「いいんだ」
「僕はそう思うよ」
「じゃあそうするね」
 まさにとです、ボタンはオジョに答えました。
「これから」
「それじゃあね」
「さて、じゃあね」
 オジョは紅茶を飲みつつこうも言いました。
「もう一杯頂こうかな」
「紅茶をだね」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「楽しむよ」
「じゃあ僕もそうするね」
「本当にミルクティーもいいね」
「ミルクティーが紅茶で一番甘いでしょうか」
 神宝もミルクティーを飲みつつ言います。
「ストレートティーやレモンティーよりも」
「ストレートティーは紅茶そのままの味だしね」 
 オジョは神宝にも答えました。
「レモンティーはレモンの酸味が入るから」
「けれどミルクティーはミルクの甘さもあって」
「優しいそれがね」
「それで、ですね」
「他の紅茶よりもですね」
「甘いですね」
「そうだね、じゃあ今はその他の紅茶よりも甘い甘さをね」
 ミルクティーのそれをというのです。
「楽しもうね」
「そうさせてもらいます」
 神宝は笑顔で応えました、そうしてでした。
 彼も紅茶をもう一杯飲みました、とても甘い紅茶を。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る