『新オズのオジョ』
第三幕 狐の集落
オズマは壊れている道の前に来るとすぐにでした。
ここでもステッキを出して魔法をかけてでした、壊れている煉瓦の道を元通りにしてそれから言いました。
「これで道もね」
「なおりましたね」
「ええ、そうなったわ」
オズマはオジョに笑顔で答えました。
「そうなったわ」
「これでまた一つお仕事が終わりましたね」
「そうなったわ、本当に無事にね」
まさにというのです。
「そうなったわ」
「いいことですね」
「ええ、それじゃあそのなおった道を通って」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「先にですね」
「進んでね」
そしてというのです。
「貴方のお家に行きましょう」
「それで笹のことをですね」
「パンダさんが助かる様にするわ」
「宜しくお願いします」
「あの、ずっと思っていたけれど」
ボタンがわからないといったお顔で言ってきました。
「竹ってお花が咲くんだね」
「そうよ、何十年に一度だけだけれどね」
ビリーナが言ってきました。
「咲くのよ、あたしも殆ど見たことないけれど」
「そうなんだ」
「それでお花が咲いたらね」
「竹の笹の葉が枯れるんだ」
「そうなのよ」
「中国ではこの時が凄く怖がられているんだ」
神宝もボタンに言います。
「パンダの食べものがなくなるから」
「ああ、パンダさん達は笹を食べるね」
「それで笹が枯れるとなると」
まさにというのです。
「パンダの食べものがなくなるから」
「怖がられているのね」
「その時がね」
「そうなんだね」
「だからその時は皆必死に対策を考えて」
そしてというのです。
「パンダが困らない様にするんだ」
「そうなんだ」
「パンダは中国にとっては象徴の一つだから」
そこまでの生きものだというのです。
「だからなんだ」
「そうなんだね」
「パンダは笹以外のものも食べるけれど」
それでもというのです。
「やっぱりね」
「笹が一番好きなんだね」
「だからなんだ」
それでというのです。
「竹のお花が咲く時は中国では怖がられているんだ」
「そうした事情があるんだ」
「中国にとってパンダって本当に大事なものよね」
恵梨香も言ってきました。
「本当に中国の象徴の一つね」
「そのパンダに何かあると」
その時はとです、カルロスも言います。
「大変なことだからね」
「どの国にもそうした生きものはいるけれど」
ナターシャも言います。
「中国ではパンダね」
「だから笹が枯れることが怖いんだね」
ジョージは頷きながら言いました。
「お花が咲いて」
「うん、お花は好きだけれど」
それでもとです、神宝は四人にもお話しました。
「笹が枯れることは怖いよ」
「枯れてもーーです」
ここで言ったのはチクタクでした。
「すぐにーーですーーね」
「ええ、オズの国だから」
それでとです、オズマはチクタクに答えました。
「枯れてもね」
「植物はーー死なないーーですーーね」
「笹も戻るわ、けれどね」
「それでもーーですーーか」
「戻る間は確かにパンダさんの食べものはなくなるわ」
そうなってしまうというのです。
「それでその間パンダさんは困るわ」
「そのことーーがーー問題ーーですーーね」
「ええ、そのことがね」
どうにもというのです。
「本当にね」
「そうーーなのですーーね」
「だから何とかするわ」
オジョのお家の近くにある笹の方に行ってというのです。
「パンダさん達の為にも」
「それじゃあね」
「それと笹はどれだけあるのかしら」
今度はオジョにこのことを聞いてきました。
「一体」
「はい、広い林位あります」
「笹林ね」
「それ位あります」
「日本や中国の雰囲気みたいなものね」
「そういえば日本や中国の文化の場所は笹林が多いですね」
オジョはオズマに言われてこのことに気付きました。
「どうも」
「ええ、外の世界でそうらしくて」
「オズの国でもね」
「そうなっているの、オズの国は昔は竹の木は少なかったけれど」
それでもというのです。
「それが変わったのよ」
「日本や中国の文化が入ってきてですね」
「それで日系や中国系の市民の人もいる様になったから」
このこともあってというのです。
「そうなったのよ」
「そうなんですね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「オジョのお家の近くに中国の趣は」
オズマはここで少し考えました、そしてです。
すぐにはっとなってそれで言いました。
「あったわ」
「そうですか」
「ええ、狐の集落がね」
それがというのです。
「あったよ」
「そうでしたか」
「ええ、そういえばね」
まさにというのです。
「あったわ」
「あれですか」
「貴方も知ってるわね」
「はい、言われてみれば」
まさにとです、オジョはオズマに答えました。もう修繕された道を通り過ぎてそうしてさらに先に進んで歩いていっています。
「ありますね」
「あそこの狐さん達は中国の服を着ているわね」
「昔の」
「確か明の頃の服だった筈よ」
「明っていいますと」
「中国は長い歴史を持っている国で」
オズマはこのことからお話しました。
「そうした国の名前だった時もあるの」
「そうだったんですか」
「その辺りは神宝が詳しい筈よ」
「はい、明は十四世紀から十七世紀の頃の中国です」
その神宝がお話しました。
「清の前、元の後です」
「その頃だったんだ」
「はい、その頃の服ですか」
「みたいだね」
オジョは神宝に答えました。
「オズマ姫のお話だと」
「そうですか」
「僕には中国の昔の服としかね」
それ位にというのです。
「思えなかったよ」
「そうでしたか」
「その辺りまだ不勉強でね」
オジョは申し訳なさそうに言いました。
「よくわからないんだ」
「中国の服のことは」
「皆の国のこともだよ」
神宝達五人全員にこの言葉を向けました。
「実はまだ知らないんだ、外の国のこと自体をね」
「じゃあ日本やアメリカのことも」
「他の国のこともね」
どうにもというのです。
「知らないんだ、昔のこともね」
「あの、じゃあ宋とか漢とか」
神宝はオジョに中国のこの頃のことを聞きました。
「ご存知ないですか」
「悪いけれどね」
「そうなんですね」
「やっぱりオズの国にいると」
「オズの国のことにですか」
「詳しくなってね」
それでというのです。
「ついついね」
「やっぱりオズの国にいますと」
「そうなるね」
「それは仕方ないわね。オズの国にいたら」
オズマも言ってきました。
「外の世界のことはね」
「どうしてもですね」
「自由に行き来出来るのは貴方達と私達でもほんの少しの人達だけだから」
「よく知らないんですね」
「それでね」
さらにとです、オズマは神宝にさらに言ってきました。
「オズの国にいるともう満足してね」
「外に世界に行こうともですね」
「思わないでしょ」
「はい、僕達にしましても」
神宝はオズマのその言葉に頷きました。
「オズの国にいますと」
「満足するわね」
「僕達は外の世界に住んでいますから」
「外の世界にも戻るわね」
「そうしてそちらで暮らしています」
五人でオズの国に行きたくなったら行く様にしています、そうしていつもオズの国で楽しく過ごしているのです。
「そうしています」
「そうした人達は別にして」
それでというのです。
「オズの国にもとからいる人達はね」
「外の世界にはですね」
「興味を持っていないのよ」
「そうですか」
「だから行きたいと思うこともなくて」
それでというのです。
「知りたいともね」
「思わないんですね」
「そうなの、それでね」
「それで、ですか」
「オジョも知らないのよ。私もね」
オズマにしてもというのです。
「中国や日本のそれぞれの時代の名称は知っていても」
「それでもですか」
「それ以上はね」
「ご存知ないですか」
「そうなの、ロシアやブラジルについても同じよ」
そうだというのです。
「それぞれの時代の名称位よ」
「ご存知なのは」
「それはこれからの勉強ね」
「そうですか」
「ボームさんにも教えてもらって」
そしてというのです。
「本でもね」
「読んでいかれますか」
「そうしていくわね」
「では宜しくお願いします」
神宝はオズマに実際にお願いしました。
「そうして下さい」
「ではね、それとね」
「それと?」
「外の世界ではどの国も時代によって服が変わるわね」
「ああ、そのことですね」
「これは日本や中国だけじゃなくてアメリカもそうね」
オズの国が反映されるこの国もというのです。
「時代によって変わるわね」
「それはありますね」
「どの国もそうですね」
「時代によって服が変わりますね」
「他の国から影響を受けたりして」
「季節によって変わったりもしますし」
「そう、国や時代季節によって服が変わることは」
こうしたことはというのです。
「オズの国ではあまりないわね」
「そうですね」
「ドロシーさんが最初に来られた時からそうですね」
「色々な人が増えましたけれど」
「服は、ですね」
「変わっていませんね」
「普通の服はこうしたものだね」
オジョが五人に言ってきました。
「僕が今着ているみたいな」
「はい、三角帽子に上着にズボンにブーツですね」
「その服装ですよね」
「国によって色は違いますが」
「男の人はそうですね」
「女の人は女の人で同じ服装ですね」
「うん、人の背丈は変わっても」
昔に比べてかなり高くなっています。
「それでもね」
「服装は変わっていませんね」
「生地は変わったけれど」
これはというのです。
「昔より動きやすくて丈夫になったよ」
「生地は変わっていますか」
「文明の進歩と一緒にね」
それと共にというのです。
「そうなっていってるよ」
「その服の生地は木綿ですね」
「同じ木綿でもね」
それでもというのです。
「変わったよ」
「丈夫になってね」
「それで動きやすくなったんだ」
「オズの国も文明が進歩して」
「そうなったんだ」
まさにというのです。
「いいことだよね、あとポリエステルやウールの生地の服もあるよ」
「木綿のものばかりじゃないんですね」
「そこは色々だよ」
記事によるというのです。
「本当にね」
「そうですか」
「あとね」
「あと?」
「シルクもあるよ、蚕が蛾になって出た後の繭を使ってね」
「オズの国では蛾になって出るんですね」
「そうだよ、あと繭が実る木もあるから」
そうした木もあるというのです。
「そこで採ったりしてね」
「生地を作ってですか」
「そうしてね」
そのうえでというのです。
「服にしているよ」
「同じなのはデザインだけなんですね」
「オズの服はそうだね」
オジョは神宝に微笑んでお話しました、そうしたことをお話しつつです。一行はオジョのお家に近付いていってです。
やがてある場所に着きました、そこは何処かといいますと。
黄色い煉瓦の道から少し離れた場所に昔の中国の趣の小さなお家が集まっている場所が見えました、そこにはです。
中国の昔の神宝が言う明代の頃の服を着た狐達が二本足で動いていました、その狐達を見てでした。
ビリーナは頷いたお顔になって言いました。
「あちらが狐の集落ね」
「そうだよ」
オジョはビリーナに答えました。
「料理店や雑貨屋さんで出て来るものもね」
「中国のものなのね」
「そうなんだ、ただ狐さん達のものだから」
「あんたが使うには小さいわね」
「食べるにもね」
こちらにしてもというのです。
「どうもね」
「そうなのね」
「そう、それでね」
オジョはさらに言いました。
「面白い人達だよ、色々な姿に変身出来るし」
「化けられるのね」
「どろんって感じでね」
「中国や日本では狐は化けられますから」
神宝がここでまた言って来ました。
「ですから」
「それでだね」
「化けられて」
そしてというのです。
「どんな姿にもなれます」
「頭に木の葉を置いてね」
「どろんって化けますね」
「見ていて面白いよ」
「そうですよね」
「ちょっと行ってみましょう」
オズマが言ってきました。
「集落の方にね」
「それじゃあ」
「そう、そしてね」
それでというのです。
「これからね」
「集落の方に入ってですね」
「狐さん達とお話してみましょう」
「訪問されるんですね」
「そうしていきましょう」
こう言ってでした。
オズマは実際に皆と一緒に狐の集落に入りました、するとです。
狐達はすぐにでした、オズマ達を見ると笑顔で挨拶をしてきました。
「あっ、これはオズマ王女」
「いらしたんですか」
「また急ですね」
「どうしてこちらに」
「ええ、この近くの笹の葉がもうすぐ枯れそうだから」
それでとです、オズマは微笑んで答えました。
「戻しに来たの」
「ああ、あそこですね」
「お花が咲いていますね」
「若しあのまま放っておきますと」
「笹が枯れますね」
「そうなればパンダさん達が困るから」
それでというのです。
「あちらに寄るの。あと関羽さんとお会いしてカドリングの中華街にもね」
「行かれますか」
「そうされますか」
「それからも」
「その予定なの」
こう狐達にお話しました。
「これからはね」
「左様ですか」
「それではですね」
「その途中にですね」
「来られたんですね」
「そうなの、邪魔だったかしら」
オズマは皆に尋ねました。
「こちらに来て」
「いえいえ、とんでもない」
「折角来てくれたんですから」
「それならです」
「是非です」
「楽しんで下さい」
「それじゃあね」
オズマは皆に笑顔で応えました、そしてです。
狐達は皆を招待してそうしてでした。
村の真ん中の広場に席にテーブルを出してパーティーをはじめました、そこで。
色々なご馳走を出します、そのご馳走は何かといいますと。
中華料理でした、豚肉に魚介類、お野菜をふんだんに使った色々な種類の中華料理があります。その中で。
オジョは家鴨料理を見てこう言いました。
「これは確か」
「北京ダッグだよ」
狐の中でも一番歳を取っている感じの人が言ってきました。
「そのお料理だよ」
「それも出してくれるんだ」
「わし等は鶏の系列の料理が好きだが」
その中でもというのです。
「家鴨料理はとりわけでね」
「それで、なんだ」
「このお料理も出したんだ」
北京ダッグもというのです。
「勿論お肉の方もね」
「確かスープにするんだよね」
「それも出しているよ」
「あっ、確かに」
見れば湯、中国のスープもあります。
「あるね」
「そちらも楽しんでね」
「それじゃあ」
「それと」
歳老いた狐はさらに言います。
「湯は他にも出しているから」
「あっ、フカヒレスープもあるね」
「こちらもね」
是非にというのです。
「食べてくれるかな」
「是非。卵料理もあるし」
蟹の身を入れたうえで焼いてそこにとろりとした甘いたれをかけたものです。
「色々楽しめるね」
「四川料理に上海料理、北京料理に広東料理とね」
歳老いた狐はオジョにさらにお話しました。
「全部ね」
「中華料理はだね」
「用意したよ」
「それでその用意したものをだね」
「全部ね」
まさにというのです。
「食べてそして」
「そのうえでだね」
「楽しもう」
「それであんたはこの村の何かしら」
「長老だよ」
歳老いた狐はビリーナの問いに答えました、
「そちらだよ」
「そうなのね」
「村のまとめ役といったところだよ」
「その割にはお声が若いわね」
「それでもこの村では一番の年寄りだよ」
「そうなの」
「これでもな」
これがというのです。
「この人達は」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「わし等は中国系の狐だが」
「服とお料理でもわかるわね」
「中国は狐が多いのだよ」
ビリーナにこのことをお話しました。
「実に」
「そうなの」
「左様、アメリカや他の国にも狐はいるが」
「中国は多いの」
「そうなのだよ」
これがというのです。
「お話も多いぞ」
「本当のことだよ」
神宝もビリーナに言ってきました。
「日本やアメリカも狐のお話は多いけれどね」
「中国はもっと多いのね」
「唐の頃に物凄く沢山のお話が出て」
そうしてというのです。
「定着したんだ」
「そうなのね」
「そして今に至るんだ」
「それで狐が多いのね」
「そうなんだ」
「ところでだけれど」
ボタンはお料理を見ました、もう皆いただきますをして食べはじめています、中華料理といえばこれの麺類もありますし水餃子や蒸し餃子もあります。
「揚げはないね」
「油揚げだね」
「うん、狐さん達の大好物だよね」
「あんな美味しいものはない」
狐の長老さんもその通りだと言います。
「まことに」
「それでもないんだ、今は」
「あれは日本の食べものだな」
「中国にはないんだ」
「豆腐のお料理も多いが」
見れば実際に豆腐料理も多いです。
「中華料理で統一すると」
「揚げはないんだね」
「普通の油揚げも薄揚げも」
どちらもというのです。
「ないんだよ」
「そうなんだね」
「今は他の好物を一杯出しているから」
「だからなんだ」
「わし等は充分に楽しんでいるよ」
まさにというのです。
「本当に」
「そうなんだね」
「揚げがなくても他に好きなものもあって」
「それが一杯出ていたらだね」
「充分だね」
「確かにね」
実際にとです、ここで言ったのはオズマでした。
「美味しいものが沢山あるわね」
「海老に蟹に貝に」
ジョージは水の幸を言いました。
「鯉もあるしね」
「茸にお野菜も沢山あって」
カルロスも言います。
「種類も多いね」
「お肉も豚肉羊肉もあって」
ナターシャはそちらのお話をしました。
「鶏だけじゃなくて家鴨に鳩、鶏肉も色々ね」
「それにフカヒレに海鼠もあって」
恵梨香はこうした珍味を見ています。
「何かとふんだんにあるわね」
「中華風のソーセージやハムもあるし」
神宝は今はそういったものを食べています。
「嬉しいね」
「そう、全部わし等の好きなもので」
それでとです、長老さんは言いました。
「出したんだよ」
「そうなんだ」
「左様、お豆腐にしても」
長老さんは神宝に山椒を利かした豆腐料理を食べつつお話しました。
「好きでね」
「出してくれたんだ」
「そうだよ」
「そうなんだね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「君達のことは知っていたが」
神宝達五人を見ての言葉でした。
「中々オズの国に慣れているね」
「そうかな」
「うん、随分とね」
「そういえば僕達も結構ね」
実際にとです、神宝は長老さんに答えました。
「オズの国に来ていて」
「何度も冒険の旅をしていてだね」
「オズの国を隅から隅まで見て」
そしてというのです。
「慣れてきているかな」
「随分とね」
「そうなんだね」
「外の世界から来てもわし等と普通にお話をしているし」
「一緒に食べていて」
「そうなっているね」
「元々オズの国のことは知っていたし」
ボームさんが教えてくれた本を読んで、です。
「そのこともあるし」
「それでだね」
「どんな国か知っていて」
オズの国に入る前からです。
「それでね」
「今もだね」
「やっぱりオズの国に来たらいつも冒険していて」
それでというのです。
「慣れているかな」
「オズの国がどんな国かよくわかったかな」
「そうだね、狐さんのお国は他にもあるし」
「カドリングの方にだね」
「そちらのお国のことも本で読んでね」
「知っているね」
「あの頃はまだあの国もね」
そちらの狐の国のお話もするのでした。
「今みたいに有名じゃなかったけれど」
「知る人ぞ知るだったね」
「ドロシー王女が冒険の中で入ったね」
「そうそう、そこから知られたよ」
ドロシーがまだ完全にオズの国の住人でなかった時のことです。
「そうだったね」
「あの時のことはよく覚えているわ」
オズマも笑顔で言ってきました。
「最後にドロシーと皆でパーティーをしたわ」
「そうでしたね、都で」
「狐の国の王様も呼んでね」
こう神宝にお話します。
「そうしたわ」
「そうでしたね」
「楽しいパーティーだったわ」
オズマは神宝に笑顔でお話しました。
「本当にね」
「だからよく覚えていますか」
「そうよ、それで狐さんの国は今もあちらにあって」
そしてというのです。
「今じゃオズの国の結構な場所にね」
「狐さんの村や集落があるんですね」
「ここみたいにね」
「狐といっても色々だね」
長老さんはまた言いました。
「わし等みたいな中国系の狐もいればね」
「日系やアメリカ系の狐もいますね」
「ロシア系も他の欧州のルーツの狐もだよ」
彼等もというのです。
「色々いるよ、そしてね」
「そして?」
「ホッキョクギツネもいるよ」
この種類の狐もというのです。
「オズの国には」
「あの夏は青灰色、冬は真っ白の毛になる」
「彼等もね」
「へえ、あの狐もなんだ」
「体色も色々だね」
狐の毛の色もというのです。
「わし等は俗に言う狐色だったり赤だったりするがね」
「金色の毛の狐はいないの?」
ボタンは長老さんに尋ねました。
「そうした狐さんは」
「それはもう九尾の狐さんだね」
「あの凄い力を持っているっていう」
「オズの国にもいるけれどね」
「あの狐さんだけなんだ」
「そうだよ」
オズの国にいる金色の毛の狐はというのです。
「わし等の間ではいないよ」
「そうなんだね」
ボタンは白菜と帆立貝のクリーム煮を食べつつ応えました。
「金色の毛の狐は」
「そうなんだよ」
長老さんはチンジャオロースを食べつつ答えました。
「オズの国でもね」
「金髪みたいにはいかないんだ」
「うん、ただ化けることは出来るよ」
それは可能だというのです。
「毛の色を変えることもね」
「それは出来るんだ」
「そうだよ」
「そのこともわかったよ」
「というか狐といってもね」
オジョはしみじみとです、豚肉の唐揚げを食べながら言いました。
「本当に色々だね」
「オズの国にしても」
「うん、そのことがわかるよ」
「今こうしてわし等と話をしていると」
「本当にね、そして中国では狐のお話が多いんだね」
「あと中国では狐に試験があるのだよ」
長老さんはオジョにこのお話もしました。
「実は」
「そうなんだ」
「そして試験に合格すれば」
それでというのです。
「狐の階級が上がっていくのだよ」
「階級が?」
「妖力の強さのそれがね」
「科挙ってありまして」
神宝がオジョにお話しました。
「昔の中国には」
「それが試験だね」
「こちらは人の試験で合格すれば偉い人になれたんです」
「それが狐さん達にもあるんだ」
「それで試験に合格していけば」
狐さん達もというのです。
「偉くなっていけるんです」
「そうだったんだね」
「それで一番上の位が天狐です」
「中国の狐にはそんなのがあるんだね」
「人の社会のそれが反映されていまして」
「成程ね、試験で妖力も位も上がるんだね」
「それが昔の中国でした」
こうオジョにお話しました。
「人も狐も同じだったんです」
「そのこと面白いね」
「こちらの世界ではないみたいですが」
「ただし学校はあってね」
長老さんがそれはと言ってきました。
「皆そこで勉強してスポーツもしているよ」
「学校はあるんだね」
「子供達は皆通っているよ」
「そこはオズの国の人達と同じだね」
「わし等もオズの国の市民だから」
それ故にというのです。
「そうなのだよ」
「成程ね」
「あとそうしようと思えば」
長老さんは茶卵を食べながらオジョにそちらを勧めてそうしてさらにお話していきます、それも楽し気に。
「ここを中華街にも出来るよ」
「狐さん達の中華街にだね」
「村だけれどね」
今のこの場所はというのです。
「それでもだよ」
「そうしようと思えばだね」
「出来るさ、わし等は村で田畑を耕したいからこうしているがね」
集落にしているというのです。
「そこはね」
「中華街にしないんだね」
「そうだよ、村もいいものだね」
「そうだね」
オジョは長老さんの言葉に笑顔で答えました。
「僕は村には暮らしていないけれど」
「一人暮らしだね」
「それでもね」
村の暮らしはというのです。
「素晴らしいものだと思うよ」
「そしてわし等はそちらを選んで」
「こうして暮らしているんだ」
「そうだよ、だからこうしてね」
長老さんは小龍包をはふはふと食べつつ言います。
「のどかな中で暮らせるんだよ」
「のどかもいいね」
「まさにだよ、あとデザートは」
食後のそれはといいますと。
「とっておきのものがあるよ」
「それは何かな」
「果物だよ」
「ああ、そちらだね」
「葡萄に桃に」
それにというのです。
「ライチもあるよ」
「ああ、ライチだね」
「中国の果物の代表だね」
「そちらもあるから」
だからだというのです。
「期待していてくれるかな」
「ライチいいよね」
ライチと聞いてです、ボタンは笑顔で言いました。
「素敵な果物だよね」
「そうだね」
「甘くて口ざわりもよくて」
「とても美味しいね」
「僕ライチ大好きだよ」
「そのライチも出るし」
長老さんはさらにお話しました。
「西瓜もだよ」
「出るんだ」
「どれも楽しんでくれるかな」
「それではね」
「あとお酒もあるけれど」
長老さんはそちらのお話もしました。
「皆飲んでいないね」
「僕達皆子供だしね」
「私はーーです」
チクタクも言ってきました。
「最初からーーです」
「あんたは何も食べないからね」
「飲みもーーしまーーせん」
だからだというのです。
「ですーーから」
「そうだね」
長老さんも納得することでした。
「そうした身体なら当然だよ」
「左様ーーですーーね」
「だからあんたは別にして」
「他のーーどなたもーーですーーね」
「飲まないね、お酒は」
「ノンアルコールならいいけれど」
ビリーナが言ってきました。
「今は私もね」
「お酒はいいんだね」
「ええ、お酒よりもね」
葡萄のジュースを飲みながら笑顔で言います。
「こちらがいいわ」
「成程ね」
「ジュースは中国風じゃないのね」
「こちらは別だよ」
長老さんは狐の子供達が色々な種類のジュースをとても美味しそうに飲んでいるのを見ながら言いました。
「ジュースについては」
「中国はお茶よね」
「そうだけれどね」
それでもというのです。
「ジュースは確かにあまり縁がないよ」
「それでジュースはオズの国のものね」
「そうだよ、それでもいいね」
「構わないわ」
一切とです、ビリーナは長老さんに答えました。
「あたしとしてはね」
「ではどんどん飲んでくれるね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「葡萄ジュースの次はね」
さらにというのです。
「ライチのジュースもいいわね」
「そちらもだね」
「飲みたいわ」
「そうね、いいわね」
オズマはビリーナの今の言葉に笑顔で言いました。
「そちらのジュースも」
「そうでしょ、だからね」
「貴女は次はそちらを飲むのね」
「オズマ姫もそうしたら?」
「ええ、そうさせてもらうわ」
オズマはビリーナに笑顔で答えました。
「次はね」
「今は林檎ジュースを飲んでいるけれどね」
「次はそちらよ」
「それじゃあね」
「さて、わしは次は何を飲もうかな」
見れば長老さんはお酒も飲んでいます、桂花陳酒がその手にあります。
「一体」
「紹興酒どうですか?」
「杏酒もありますよ」
「ワインもありますし」
「ビールも」
「色々あるな」
長老さんは他の狐さん達のお話を聞いて言いました。
「そしてどれもいいな」
「ですよね、お酒いいいですよね」
「色々な種類もあります」
「それじゃあですね」
「どれを飲まれますか?」
「さて、一体」
考えつつです、長老さんはさらに言いました。
「どれにしようかな」
「こうした時はくじ引きじゃないかな」
神宝が言ってきました。
「今回は」
「くじ引きでだね」
「くじに当たったお酒をね」
それをというのです。
「飲んだらどうかな」
「そうだね」
長老さんは狐の言葉に頷きました。
「じゃあそれでね」
「選ぶね」
「さて、ではくじを用意して」
「そしてだね」
「選ぶよ」
神宝の言葉に頷きました。
「それではね」
「これから」
「さて、早速くじを作るよ」
こう言ってでした。
長老さんは実際にくじを作って引いてみました、そしてです。
その引いたくじを見て神宝に言いました。
「杏酒になったよ」
「そうなんだ」
「いや、いいお酒になったよ」
こう言うのでした。
「わしはこのお酒が好きでね」
「それでなんだ」
「このくじを引いてよかったよ」
「じゃあ今からだね」
「このお酒を飲むよ」
杏酒をというのです。
「氷を入れてね」
「それでなんだ」
「飲むよ、中華料理には甘いお酒が似合うよ」
「そうなんだ」
「うん、杏酒も甘いし」
それにというのです。
「ライチ酒も桂花陳酒もね」
「甘いんだ」
「だから楽しみだよ」
「中華料理って甘いお酒が合うんだ」
「わしはそう思うよ」
「それは意外だね」
「ははは、では今から飲むよ」
こう言ってでした。
長老さんは杏酒を飲みつつまた食べはじめました、そうしてです。
神宝達も甘いジュースと一緒に中華料理を楽しみました、そうして狐さん達と笑顔で楽しい時間を過ごしました。