『新オズのつぎはぎ娘』
第十一幕 お菓子の国
一行は遂にお菓子の国をその目に見ました、つぎはぎ娘はチョコレートやクッキー、ビスケットやラスクで出来た城壁や門、塔や吊り橋を見て言いました。
「あと少しよ」
「ええ、あと少しでね」
ドロシーがつぎはぎ娘に応えます。
「着くわ」
「そうよね」
「もう見えてるから」
そのお菓子の国がというのです。
「だからね」
「本当にあと少しね」
「そうよ、ただね」
ここでドロシーはこうも言いました。
「バニャンさんが見当たらないわね」
「そういえばそうだね」
トトはドロシーの今の言葉に彼女の足元から応えました。
「あの人凄く大きいからね」
「もう見えると思うけれど」
「お姿が見えないね」
「そうよね」
「あれでしょ、寝てるのよ」
つぎはぎ娘が言ってきました。
「だからね」
「お姿が見えないっていうの」
「そうでしょ、もうここに来てる筈よね」
「あの人の動きは凄く速いから」
ただ大きいだけでなくです。
「だからね」
「そうよね、もう着いてる筈だから」
それでというのです。
「それでお姿が見えないのはね」
「寝てるのね」
「そうに決まってるわ」
「じゃあ」
「バニャンさんに会う為にも」
今はお姿が見えないにしてもというのです。
「お菓子の国の中に入りましょう」
「わかったわ」
ドロシーはつぎはぎ娘の言葉に頷きました、そしてです。
皆でお菓子の国の正門の前まで来ました、するとウィンキーの国の黄色い軍服を着て銃を持った兵隊さんがです。
ドロシー達に敬礼してから笑顔で応えました。
「お待ちしていました」
「オズマからお話は聞いたけれど」
「はい、もうです」
兵隊さんはドロシーに答えます。
「国ではです」
「私達を歓迎してくれてなの」
「パーティーの用意が出来ています」
「じゃあ私達が中に入ったら」
「その瞬間にです」
まさにというのです。
「パーティーのはじまりです」
「そうなるのね」
「左様です、では今から」
「国の中になのね」
「お入り下さい」
「わかったわ、ではね」
ドロシーは兵隊さんに応え皆を連れてそのうえで、でした。
下げられた跳ね橋、クッキーで出来たそれの上を通ってお菓子の国の中に入りました、するとその中は。
チョコレートやビスケット、クッキー、ラスク、スコーン、キャンデー等で出来たお家や建物が立ち並び。
甘いミルクやお茶、様々な種類のジュースが出て来る水道や水路、お池や川があってです。木々にはケーキやプティング、アイスクリームが実っています。
畑には桃饅頭や三色団子、マーラーカオや羊羹が出ています。国全体が甘くてとても美味しそうな香りに包まれたその国の至るところにです。
オズの国全ての旗が飾られた万国旗が飾られていてです、そしてです。
ドロシー達を歓迎する言葉が書かれた看板や垂れ幕があります、そこにはドロシー達の可愛い絵もあります。
その国の中を見てです、ドロシーは満面の笑顔になりました。見れば他の皆も彼女と同じお顔になっています。
「こんなに歓迎してもらえるなんて」
「嬉しいわね」
「ええ、凄くね」
ドロシーはつぎはぎ娘に答えました。
「嬉しいわ」
「あたしもね」
「ここまで歓迎してもらって嬉しくないなんて」
「そんな人はいないわね」
「本当にね」
「何か」
ジョージはお菓子の国の中を見回して言いました。
「童話のお菓子の国が大きいみたいな」
「国全体がそうなったみたいだね」
神宝はこう言いました。
「ヘンゼルとグレーテルのあのお家が」
「しかも日本や中国のお菓子もあるから」
ドロシーは杏仁豆腐やきんつばが実っている木を見ています。
「凄いわね」
「ありとあらゆる国のお菓子があって」
カルロスはマカロンやバームクーヘンを見ています。
「凄いね」
「一体何を食べればいいか迷うわね」
普段は落ち着いているナターシャも今は少し驚いています。
「これは」
「だから僕もここに来たらね」
腹ペコタイガーが笑って五人にお話しました。
「もういつも満腹なんだよ」
「そうなるんだね」
「いつも腹ペコの君も」
「食べるものが一杯あるから」
「それでなのね」
「いつもお腹一杯になるのね」
「そうなんだ、じゃあまずはどのお菓子を食べようかな」
もう楽しみで仕方ないといった感じで舌なめずりまでしています。
「一体」
「飲みものも一杯あるからね」
臆病ライオンは早速自分の傍の水路を流れるミルクを見ています。
「飲むことにも困らないよ」
「そうだね」
「ミルクもお茶もジュースもあって」
「飲むものにも困らないね」
「一体何を飲もうかしら」
「そのことについても迷うわ」
「パイが実る木もあってね」
ジャックはここで言いました。
「そっちも楽しめるからね」
「アップルパイもあれば」
「苺のパイもあるね」
「他には葡萄もあって」
「チェリーもあるわね」
「桃のものも」
「全部あるんだ」
そのパイもというのです。
「だから楽しみにしていてね」
「ドーナツなんかはね」
木挽きの馬はそれが実る木を見ています。
「何種類もあるよ」
「オールドファッションにね」
「チョコレートがあって」
「ショコラフレンチに」
「エンゼルショコラもあるわね」
「オーソドックスなものも」
「好きなものを食べられるよ」
五人にこう紹介します。
「ドーナツもね」
「日本のお菓子はね」
かかしはこちらのお菓子のお話をしました。
「一通り揃ってるね」
「お饅頭があって」
「お団子もありますね」
「羊羹美味しそうですね」
「それにどら焼きも」
「きんつばなんかも」
「それが全部畑にもあるから」
そして木の実にもなっています。
「食べるといいよ」
「中国のお菓子もね」
樵はそうしたものが実る木や畑を見ています。
「沢山あるからね」
「杏仁豆腐ありますね」
「マンゴープリンも」
「それにマーラーカオも」
「桃饅頭があって」
「ごま団子も」
「これだけあるとね」
それこそというのです。
「見ているだけで楽しいね」
「ケーキはどう?あたしケーキの歌も歌うのよ」
つぎはぎ娘も五人に言います。
「ここはケーキも多いから」
「生クリームのケーキに」
「モンブランに」
「チーズケーキがあって」
「そしてチョコレートも」
「パイナップルのケーキも」
「そう、もうあらゆるケーキがあるから」
それでというのです。
「楽しんでね」
「ううん、じゃあ何を先に食べようかな」
「正直迷うね」
「どうしても」
「どれを最初に食べるか」
「そして飲むか」
「迷うも楽しだね」
トトはあれかこれかとなっている五人に笑ってお話しました。
「これは」
「どうもね」
「どれにしようかな」
「最初は何を食べようか」
「何を飲もうか」
「決めかねるわ」
「けれど決めないとね、こうした時は」
トトは笑って言いました。
「目を閉じて最初に目に入ったものを食べるといいね」
「私はこれにするわ」
ドロシーは最初に見たドーナツを指差しました。
「それをね」
「ではね」
ここで、でした。ドロシーの傍にです。
黒髪をリーゼントにした甘いマスクの男の人が出て来ました、着ている服はとてもみらびやかなものです。
その人を見てです、ジョージは驚いて言いました。
「エルビス=プレスリーさんですか?」
「そうだよ」
その人はジョージに笑顔で答えました。
「今はオズの国にいるんだ」
「そう聞いていましたけれど」
「今はお菓子の国に来ていてね」
「それで、ですか」
「お菓子を楽しんでいるんだ」
「そうですか」
「僕はドーナツが大好きでね」
プレスリーさんはジョージに気さくに笑って答えました。
「今も頂くよ」
「それじゃあ」
「さて、私はブランデーケーキを食べようか」
タキシードを着てサックスを着たアフリカ系の男の人でした。
「これからね」
「貴方はルイ=アームストロングさんですね」
「その通り」
この人もジョージに答えました。
「私もなんだ」
「オズの国におられますか」
「そうなんだ」
「それで今はですね」
「この国にいるんだ」
オズの国にというのです。
「こうしてね」
「そうなんですね」
「皆のことは聞いているよ」
痩せてとてもスタイルのいい魅力的なお顔立ちをしたアフリカ系の人でした。着ている服は白いスーツです。その人がジョージ達に笑顔で言います。
「ようこそ、お菓子の国に」
「貴方はマイケル=ジャクソンさんですね」
「僕がマイケルだよ」
マイケルさんはジョージの質問に笑顔のまま答えます。
「これからも宜しくね」
「こちらこそ」
「やあ、皆来てくれたね」
上から声がしました、するとです。
そこにバニャンさんがいました、そのバニャンさんが言ってきました。
「待っていたよ」
「あんたさっき寝ていたでしょ」
「どうしてわかるのかな」
「だってここに来た時に姿が見えなかったから」
だからとです、つぎはぎ娘はバニャンさんに答えました。
「それでよ」
「わかったんだ」
「あんたみたいな大きな人は立っていたらすぐに見えるわ」
「しかし見えないなら」
「もうね」
それこそというのです。
「寝ているってね」
「察しがつくんだね」
「そして実際にそうだったでしょ」
「わしはさっきまで寝ていたよ」
「ほらね、あたしの思った通りね」
「中々鋭いな、あんたは」
「あたしは頭もくるくる回るのよ」
今は身体をくるくるさせつつ言います。
「じっくり考えたりはしないけれどね」
「頭の回転は速いということだね」
「そういうことよ」
「成程ね」
「それであんたのこともわかったけれど」
つぎはぎ娘はさらに言いました。
「その通りだったわね」
「うん、まさにね」
「当たって嬉しいわ」
つぎはぎ娘は言いつつくるくる踊りはじめました、するとプレスリーさんやマイケルさんはつぎはぎ娘の踊りを見て彼女の歌を一緒に踊ります、そこにです。
痩せた農夫の服を着た男の人が来ました、ドロシーはその人に挨拶をしました。
「お久し振り」
「暫く、ドロシー王女」
その農夫の人はドロシーに会釈をしました。
「お元気そうで」
「アップルシードさんもね」
「この人はジョニー=アップルシードさんですね」
「ええ、そうよ」
ドロシーはジョージに答えました。
「この人がね」
「この人もなんですね」
「今はこの国に来ているのよ」
「そうですか」
「もうオズの国にいるアメリカの名士の人達が揃ってるわね」
「そうですね」
ジョージも頷きます。
「本当にね」
「それは凄いですね」
「私も嬉しいわ」
「僕達を歓迎してくれてるだけじゃなくて」
「これだけの人達が来てくれるなんてね」
「嬉しいですね」
「本当にね」
「ミルクはどうかな、君達」
とても大きくて逞しい身体つきのアフリカ系の人でした、着ている作業服とシャツがとてもよく似合っています。
「たらふく飲むといいよ」
「そう言う貴方は」
ジョージはその人を見上げてまた言いました。
「ジョン=ヘンリーさんですね」
「そうさ、わしがな」
「そうですよね」
「ははは、わしも有名人かな」
「アメリカで知らない子供はいないですよ」
それこそというのです。
「ポール=バニャンさんやジョニー=アップルシードさんも」
「そしてわしも」
「偉大なる労働者として」
「ははは、そうなのかい」
「そうです、貴方もここに来られているなんて」
本当にというのでした。
「信じられないです」
「この調子だと他にも来ているわね」
今まで踊っていたつぎはぎ娘が楽しそうに言いました。
「これは」
「そうかな」
「あたしの勘ではね」
「そして君の勘は当たる」
「だからね」
それでというのです。
「きっとね」
「他の人達もなんだ」
「来ているわよ」
「あれを見て」
ドロシーはお空を見上げました、するとです。
そこに飛行機が飛んでいます、ジョージはその飛行機を見上げて言いました。
「まさか」
「あれはリンドバーグさんの飛行機よ」
「あの人もオズの国におられて」
「それでね」
「今はお菓子の国にですか」
「来られているのね」
「そうなんですね」
ジョージはその飛行機を見て言いました、見ればその飛行機はドロシー達を歓迎する横断幕を後ろにたなびかせています。
「僕達を歓迎してくれて」
「そのうえでね」
「実はあの飛行機が私達が整備したんだよ」
「そうしたんだ」
二十世紀の初期のアメリカの男の人の服を着た人達でした、お一人は頭の禿げた人でもう一人の人は口髭を生やしています。
ジョージはその人達を見て言うのでした。
「貴方達はライト兄弟ですね」
「そうだよ」
「わし等がライト兄弟だよ」
「アメリカにいる時は飛行機を作った」
「そのライト兄弟だよ」
「そうですね、リンドバーグさんに続いてお二人にもお会い出来て」
もう信じられないというお顔で言うドロシーでした。
「夢みたいです」
「オズの国はお伽の国だから」
ここでドロシーが笑って言ってきました。
「だからね」
「こうしたこともですね」
「普通に起こるのよ」
「そうした国ということですね」
「そうなの」
その通りだというのです。
「お会いしたいと思えば」
「オズの国にいる人達なら」
「オズの神々が引き寄せてくれるのよ」
「そうなんですね」
「それもまたオズの国の不思議よ」
こうジョージに言うのでした。
「魔法や色々な人達や生きものだけでなくて」
「出会いもですね」
「そうなのよ」
「そして実はだよ」
白髪頭でスーツの上に白衣を着た男の人です、お顔は少し厳めしい感じですがそこには笑顔があります。
「ライト兄弟は昔私の工場で働いていたんだ」
「そう言う貴方は」
「わかるかな、私が誰か」
「世界でわからない人なんていません」
ジョージも他の四人も言葉を一緒にさせました。
「トーマス=エジソンさんです」
「そう、私がエジソンだよ」
エジソンは笑って答えました。
「アメリカからね」
「今はオズの国におられるんですね」
「そして発明を楽しみ続けているよ」
「そうなんですね」
「いつもね」
こうジョージにお話するのでした。
「そして今は」
「お菓子の国におられて」
「お菓子を食べようと思っているんだ」
「そうなんですね」
「さて、何を食べようかな」
「まずはアイスクリームだよ」
野球のユニフォームを着た分厚い唇にがっしりとした体格の人がここでこうエジソンさんに言ってきました。
「何といっても」
「あっ、ベーブ=ルースさん」
「そうだよ」
その人はジョージに笑顔で応えました。
「僕がベーブ=ルースだよ」
「貴方もお菓子の国に来られているんですね」
「そしてお菓子を楽しんでいるよ」
「今みたいに」
「そうだよ」
ジョージに笑顔で答えます。
「この通りね」
「そうですよね」
「君達のことは聞いているけれど」
それでもとです、ルースさんはジョージに言いました。
「こうした会ったのははじめてだね」
「はい、お会い出来て嬉しいです」
「こちらもだよ、お互いオズの国にいるなら」
それならとです、ルースさんは言うのでした。
「この国を楽しんでいこうね」
「これからずっとですね」
「そうしていこうね」
「わかりました」
「この国には子供達に夢を与えた人も来るんだ」
ルースさんはこうもお話しました。
「それで僕もだよ」
「今この国にいるんですね」
「嬉しいことにね」
「うん、この国にいるとね」
エジソンさんも言ってきます。
「発明も好きなだけ出来るし不可能と思うことでも」
「可能になりますね」
「そうした素晴らしい国なんだよ」
こうジョージにお話するのでした。
「そしてお菓子もね」
「それもですね」
「楽しめるよ」
「そうした国ですね」
「さて、何を食べようか」
エジソンさんは考えるお顔で言いました。
「一体」
「そうした時は目に入ったものを食べればいいのよ」
つぎはぎ娘はトトが言ったことをエジソンさんにお話しました。
「そうすればいいのよ」
「ほう、そうすれば迷わないな」
エジソンさんも言われて頷きました。
「確かに」
「じゃあいいわね」
「そうしようか。ならキャラメルにしよう」
それがエジソンさんの目に入ったものでした。
「それにしよう」
「そうするのね」
「今からね、ではこれを食べよう」
「それじゃあね」
「そして君達はだね」
エジソンさんはつぎはぎ娘に微笑んでお話しました。
「私達が食べて飲むをを見てだね」
「楽しむわ」
「そうするね」
「そう、そうして」
そのうえでというのです。
「喜ばせてもらうわ」
「それではね」
「やあ、皆集まっているね」
昔のパイロットの服を着た美男子の男の人が来ました、ジョージはこの人も見てそれで言うのでした。
「リンドバーグさんですね」
「そうだよ」
リンドバーグさんも笑顔で答えます。
「僕がね」
「そうですね」
「そして君達はオズの名誉市民の子達だね」
こう五人に尋ねました。
「そうだね」
「はい、そうです」
ジョージが五人を代表して答えます。
「僕達は」
「そうだね、お話は聞いていたけれど」
それでもというのです。
「会ったのはね」
「はじめてですね」
「だから嬉しいよ」
会えてというのです。
「僕もね」
「そうなんですか」
「オズの国の名誉市民なんてね」
リンドバーグさんはさらにお話します。
「こんな素晴らしい立場はないから」
「それで、ですね」
「君達と会いたいと思っていたんだ、そしてね」
「ここで、ですね」
「君達と出会えて」
それでというのです。
「嬉しいよ」
「そうですか」
「そう、だからね」
さらに言うのでした。
「今日はね」
「これからですね」
「楽しもうね」
「こうしていこう」
こうお話してでした、リンドバーグさんはジョージ達にお菓子を出していきました。そうしてでした。
一行はお菓子の国の中にある宮殿に案内してもらいました、その宮殿もです。
全てがお菓子で出来ています、それで腹ペコタイガーが舌なめずりをしてそのうえでこんなことを言いました。
「チョコレートにクッキーに」
「もう色々なお菓子があってね」
臆病ライオンはお菓子達の匂いにうっとりとしています。
「それでだね」
「今すぐに食べたいよ」
「そんな気持ちだね」
「ここに入ってね」
「そうなったね」
「絨毯は」
腹ペコタイガーは自分達の下にあるそれを見ました、それはです。
「ゼリーだね」
「ワインゼリーだね」
「このゼリーを食べたら」
それこそというのです。
「どれだけ美味しいかな」
「そう思えるね」
「本当にね」
「あっ、絨毯は食べないでね」
マイケルさんが二匹に言ってきました、アメリカからオズの国にいる人達がドロシー達の案内役をしているのです。
「パーティー会場に食べるものは用意しているから」
「だからだね」
「絨毯は食べたら駄目だね」
「それにそもそも絨毯は食べないね」
マイケルさんは笑ってこうも言いました。
「そうだね」
「そうだね、言われてみれば」
「その通りだね」
「それじゃあだね」
「今は我慢だね」
「そうしようね」
こう二匹に言うのでした。
「今は」
「じゃあね」
「ゼリーの絨毯は食べないよ」
「そうしてくれると嬉しいよ」
「いや、しかしね」
「見事な宮殿だね」
かかしと樵は宮殿の中を見回しています、そして飴で出来たシャングリラも見てそれで言うのでした。
「沢山のお菓子職人の人が造った」
「そうした場所なんだね」
「あらゆるお菓子をふんだんに使って」
「そうして作った宮殿なんだ」
「だからついついだよ」
アームストロングさんがかかしと樵にお話します。
「わしもこの宮殿の中にいると」
「食べたくなるんだね」
「宮殿自体を」
「臆病ライオンさんや腹ペコタイガーさんの気持ちもわかるよ」
その二匹を見ての言葉です。
「本当にね」
「僕達は食べないけれどね」
「食べる人はそう思うね」
「それじゃあね」
「ここにいると誘惑に負けそうになるんだね」
「この宮殿自体が食欲をそそるからね」
それ故にというのです。
「困るよ」
「成程ね」
「そうした場所なんだね」
「そう、しかしパーティーが開かれる場所に入って」
そしてというのです。
「そこで皆で食べよう」
「では僕達は皆のその笑顔を見て」
「そして楽しませてもらうよ」
「ううん、お菓子の色もね」
「色々あるね」
ジャックと木挽きの馬はチョコレートの扉を見ました、見れば黒いチョコレートだけでなくホワイトチョコもあります。
「白や黒にね」
「苺のピンクやお抹茶の緑もあるし」
「カラフルだね」
「配色もいいね」
「そう、色も大事にしないと」
プレスリーさんが言ってきました。
「奇麗じゃないからね」
「お菓子は食べるだけじゃない」
「見ても楽しくものだね」
「それでだね」
「色も考えているんだね」
「そうだよ、僕の服もそうだね」
プレスリーさんはその見事な服を見せます、もう誰もが知っているとてもみらびやかなステージ衣装です。
「この服にしてもだよ」
「見て楽しく」
「そうしたものだね」
「そうしたから」
だからだというのです。
「こうしてね」
「宮殿もだね」
「奇麗にしているんだね」
「そう、見ても楽しく」
その様にというのです。
「しないとね」
「ただ美味しいだけじゃなく」
「美味しくだね」
「その考えも入れてこの宮殿は造られたんだ」
そうだったというのです。
「だから観ても奇麗なんだ」
「とても広くて奇麗で」
「しかも全てがお菓子で出来ているなんてね」
ドロシーとトトが言ってきました。
「素敵な宮殿だね」
「そうよね」
「全くだよ、この宮殿を造ろうと思った人は素晴らしいよ」
エジソンさんも感心する言葉を言ってきました。
「お菓子の国ならね」
「お菓子の宮殿ね」
「それがあるべきだね」
「そう、沢山の人が力を合わせて造った」
「そうした場所で」
「とても素晴らしい場所だね」
「私もそう思うよ、しかし」
ここでこうも言ったエジソンさんでした。
「こうし場所を見ていると私もだよ」
「閃きが下りるのね」
「発明も」
「色々なものを見て聞いてね」
そうしてというのです。
「そこから閃くからね」
「だからなのね」
「エジソンさんはオズの国で色々な場所に行ってるんだ」
「そうしているんだよ」
実際にというのです。
「そして発明を続けているんだ」
「色々なものを見て聞いて、ですね」
神宝はエジソンさんのお話を聞いて言いました。
「閃くんですね」
「閃きは何もしていないと下りない」
こう言ったのはカルロスでした。
「色々なものを見て聞いてですね」
「そして閃く」
恵梨香は考えるお顔で言いました。
「そういうものですね」
「それでお菓子の国にも来て」
ナターシャも言います。
「閃きが下りる様にしていますか」
「九十九パーセントの努力と一パーセントの閃き」
今言ったのはジョージでした。
「それが発明の源ですね」
「そうだよ、考えてみれば」
エジソンさんは五人にお話しました。
「一パーセントの閃きは九十九パーセントの努力の中で出ることが多いね」
「色々なものを見たり聞いたりも努力ですか」
「それになるんですか」
「だからですか」
「まずは努力ですか」
「閃きの前に」
「この二つがないとどうしようもないけれど」
それでもというのです。
「やはりだよ」
「努力が先ですか」
「九十九パーセントの」
「最初にそれを行って」
「そこから一パーセントの閃きですか」
「その順番ですか」
「そもそも努力をしないと」
さもないと、というのです。
「何もならないからね」
「そして諦めないことだね」
こう言ったのはリンドバーグさんでした。
「果たすまで」
「貴方もそうだったね」
「最後まで諦めなかったね」
ピーターがそのリンドバーグさんに笑顔で尋ねます。
「そうしてだね」
「物凄く長い距離を飛んだんだね」
「そう、あの時は出来ないと言われた距離をね」
「飛んだんだね」
「最後まで諦めずに」
「そうしたよ、外の世界でのお話だけれど」
そちらのお話をするのでした。
「広い大西洋を横断したんだ」
「そうしたんだね」
「無理だって言われたことを果たしたんだね」
「だからこそ果たした時は」
その大西洋横断をです。
「とても嬉しかったよ」
「だから最後まで諦めない」
「そのことが大事だね」
「本当にね」
実際にというのです、こうお話してです。
リンドバーグさんはピーターにこうも言いました。
「だからオズの国も縦断や横断をね」
「飛行機でしたんだ」
「そうしたんだね」
「その時も嬉しかったね」
「そしてその飛行機を生み出したのがね」
つぎはぎ娘はここで、でした。
ライト兄弟を見てそうしてお二人に言いました。
「あんた達よね」
「その通り、もうあれこれ考えてね」
「それで何度も失敗したけれど」
「それでもだよ」
「僕達は飛行機を生み出すことが出来たんだよ」
「そうよね、本当に諦めないことなのね」
つぎはぎ娘はライト兄弟の言葉に感心しました。
「よくわかったわ」
「そうだよ、だから皆もね」
「それがいいことだと思ってやろうと決意したら」
「出来るまで諦めないことだよ」
「何度失敗してもね」
「そうよね」
「失敗はどんなことでもあるんだ」
ルースさんのお言葉です。
「僕も何度失敗したか」
「野球をしていてですか」
「そうだよ、三振もエラーもしたし」
ルースさんはジョージにお話しました。
「盗塁を刺されたこともあったよ」
「そういえばルースさんは」
「足は遅いね」
「そうでしたね」
「この体格だからね」
「盗塁については」
「そう、盗塁も苦手で」
それでというのです。
「アウトになったこともあるよ」
「そうでしたね」
「けれど失敗から学びもして」
そしてというのです。
「やっていくことなんだ」
「それがいいことですね」
「そうだよ」
「じゃあ僕達も」
「何かをしようと思ったらね」
「努力して諦めないで」
「失敗にも挫けないことだよ」
何といってもというのです。
「いいね」
「わかりました」
「そうしていきます」
「絶対に」
「それじゃあですね」
「私達も」
「頑張っていこう、君達の笑顔がね」
ルースさんは五人に笑顔で言いました。
「僕を励ましてくれるから」
「あんたのその考え凄く好きよ」
つぎはみ娘はルースさんの今の言葉にこう返しました。
「あたしはね」
「そう言ってくれるんだ」
「だから今あんたの歌を閃いたよ」
「そのタイトルは」
「文字通りベーブ=ルースの歌よ」
それだというのです。
「聴いてくれるかしら」
「まだ会場に着いていないからね」
アップルシードさんが言ってきました。
「だからね」
「会場に着いてからなのね」
「披露してくれるかな」
「わかったわ」
つぎはぎ娘はアップルシードさんにすぐに答えました。
「それじゃあね」
「うん、じゃあね」
「そういうことでね」
「歌とダンスは覚えていて」
ヘンリーさんはこう言いました。
「後でね」
「歌って踊ればいいわね」
「そうしたものだね」
「ええ、それじゃあね」
「皆で楽しむ場でね」
「ベーブ=ルースさんの歌を披露するわね」
「しかし広い宮殿ですね」
ジョージはしみじみとなって言いました。
「ここは」
「そうね、エネラルドの都の宮殿程じゃないけれど」
それでもとです、ドロシーはジョージに応えました。
「この宮殿も広いわね」
「そうですよね」
「オズの国で一番大きな宮殿は私達が住んでいる」
「エメラルドの都の宮殿ですね」
「ええ、そうだけれど」
それでもというのです。
「この宮殿もね」
「かなりの大きさですね」
「そうね、会場のお部屋は」
「舞踏の間でね」
エジソンさんが答えます。
「そこでね」
「皆で、ですね」
「お菓子を食べて甘い飲みものを飲んで」
そしてというのです。
「歌も踊りもね」
「楽しむんですね」
「そうしようね」
「色々なお菓子があって」
ジョージはそう思うだけで夢の様な気持ちになりました。
「食べられるなんて」
「嬉しいね」
「はい」
エジソンさんに満面の笑顔で答えました。
「本当に」
「私もだよ」
「エジソンさんもですか」
「私も甘いものが好きだからね」
だからだというのです。
「今からね」
「楽しみですね」
「本当にね」
「甘いものを食べると」
そうすればというのです。
「頭にもいいしね」
「そうなんですか」
「甘いものは脳の栄養になるんだ」
「だから発明にもですか」
「いいんだ、だからね」
それでというのです。
「甘いものはね」
「エジソンさんもお好きですか」
「そうなんだ」
「それじゃあ甘いものも食べて」
「努力をしてね」
「閃きが下りて」
「そしていつも発明をしているんだ」
エジソンさんはジョージに笑顔でお話しました。
「私もね」
「甘いものの力って凄いんですね」
「そう、かなりね」
「発明の力になる程」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「外の世界では食べ過ぎると太るし」
それにというのです。
「虫歯にもね」
「なりますね」
「だから食べる量は程々にして」
そしてというのです。
「食べた後はね」
「歯を磨くこともですね」
「忘れたら駄目よ」
「歯磨きなんてしたことがないわ」
つぎはぎ娘は自分のお話をしました。
「だってあたしのお口はね」
「喋る為のものでだね」
「そうよ、飲んだり食べたりとかはね」
「しないね」
「そうしたお口だから」
その為にというのです。
「歯磨きもね」
「君はしないね」
「洗濯機で身体を洗う時に」
つぎはぎ娘にとってはこれが身体を奇麗にする方法です、洗濯がそれなのです。
「その時にね」
「歯もだね」
「洗ってるの」
「そうなっているね」
「だからね」
それでというのです。
「あたし歯磨きはね」
「したことがないね」
「一度もね」
「そうだね、それはそれでいい身体だね」
「本当にそう思うわ」
自分でもというのです。
「あたしこの身体大好きよ」
「君を見てもね」
エジソンさんはつぎはぎ娘に笑顔でお話しました。
「発明の閃きが下りるかもね」
「あら、そうなの」
「だからね」
それでというのです。
「君とこの国にいる間ね」
「一緒にいたいのね」
「そうしていいかな」
「いいわよ、じゃあ素晴らしいものを発明してね」
「そうさせてもらうわ」
こうしたお話をしながらでした、一行はエジソンさん達に案内してもらってそうして宮殿の間の舞踏の間に向かうのでした。素晴らしいパーティ―が用意されているその場所に。