『新オズのつぎはぎ娘』




               第十幕  甘い果実

 ドロシー達はお菓子の国に向かい続けています、その中で今は晩ご飯を食べています。この時です。
 ドロシーはソーセージを食べながら言いました。
「ソーセージっていいわね」
「はい、普通に焼いても茹でても美味しいですね」
「そうなのよね」
 こうジョージに応えます、他にはポテトサラダに海老とといた卵それに色々なお野菜や茸を入れた中華風のスープ、ジャムにパンがメニューです。飲みものにはミルクがあってデザートにはアイスクリームがあります。
「だから私も好きなの」
「そうなんですね」
「手軽に食べられて美味しいから」 
 それでというのです。
「本当にね」
「お好きで」
「よく食べるわ」
「僕も大好きだよ」
 トトもソーセージを食べつつ言います。
「だから見るだけでね」
「貴方は尻尾をぱたぱたとさせるわね」
「犬がそうする時はね」
「嬉しい証拠よね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「ドロシーが一番わかってることだね」
「ええ、ずっとトトと一緒にいるから」
 だからだとです、ドロシーはトトに答えました。
「もうこのことはね」
「そうだね、僕ドッグフードも好きだけれど」
「ソーセージもよね」
「ハムもスパムもステーキも好きだけれど」
「ソーセージも好きだから」
「今食べられて本当に嬉しいよ」
 こうドロシーに言います。
「本当にね」
「そうよね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「今回のソーセージは随分大きいね」 
 トトはそのソーセージを見て言いました。
「フランクフルト位はあるね」
「ええ、大きな種類のソーセージをね」
 ドロシーはお皿の上のソーセージをフォークとナイフでステーキみたいに切りつつトトに答えます。
「出したの」
「そうなんだね」
「ソーセージといっても種類は色々でしょ」
「うん、そうだね」
「それでなの」
「今回は大きなものにしたんだ」
「ちょっと趣向を変わったソーセージをと思って」
 それでというのです。
「そうしたの」
「成程ね」
「このソーセージも美味しいわね」
「うん、凄くね」 
 トトはドロシーに尻尾をぱたぱたとさせて答えました。
「美味しいよ」
「こうしたソーセージも美味しいのよね」
「そうだね、ただね」
「ただっていうと」
「ソーセージと一口に言っても色々あるわね」
「これが案外種類あるんだよね」
 臆病ライオンもそのソーセージを食べつつ言います。
「中に入れる挽肉の種類も」
「豚肉に牛肉に羊肉に」
「色々でね」
「大きさもね」
「本当に色々だよね」
「そうなのよね」
「僕はどんな種類のソーセージも好きだけれど」
 腹ペコタイガーは誰よりも食べつつ言いました。
「魚肉ソーセージはおや、って思ったよ」
「あのソーセージね」
「あれは蒲鉾に近いかもね」
「実はね」
「日本のソーセージだね」
「あのソーセージも最近オズの国で食べられるけれど」
 ドロシーはそのソーセージについて言いました。
「面白い食べものだね」
「面白いっていうかね」
「中々独特な発想だね」 
 ピーターはソーセージを二つの頭で食べつつ言います。
「あれはね」
「お魚を使うなんて」
「誰でも考えそうで」
「案外考えないね」
「そうよね、コロンブスの卵ね」
 ドロシーはここでこの諺を出しました。
「まさに」
「誰も考えつきそうで案外そうじゃない」
「そうしたものだね」
「そうなの、コロンブスの卵って諺の意味はね」
「世の中案外そうしたものが多いよ」 
 かかしは左手の人差し指を立てて言ってきました。
「これがね」
「そうよね」
「気付けば簡単なことだけれどね」
「その気付くまでが大変で」
「最初にするにはね」
 これがというのです。
「中々難しいんだよ」
「そうよね」
「卵を立てるにしても」
 そのコロンブスの卵の様にです。
「これがわからないんだよね」
「そうよね」
「殻の底を割って中を食べてから立てればいいけれど」
 樵は腕を組んで言います。
「これがね」
「卵って普通に立てようとしても転がるから」
「そうしたものだから」
「だからね」
「発想を変えないとね」
「無理なことよ」
 卵を立てる、そのことはというのです。
「どうも」
「そうだよね」
「その発想の転換が大事ね」
「それがあるかどうかだよ」
「閃きだね」
 ジャックも言います。
「それがあるかどうかだね」
「そうなのよね」
「それがあるか、あと色々な考えが出来るか」
「本当にそれ次第なのよね」
「簡単なことでも最初からする」
「それが大事で」
 それでというのです。
「それが出来るかどうか」
「本当に大事だね」
「そうなのよね」
「そういえばソーセージの作り方も」
 木挽きの馬は何も食べないですがここでこのことについて思ってそれで今皆に対してこう言いました。
「コロンブスの卵だね」
「そうよね」
「うん、お肉を腸に詰めるとか」
「中々考えないわね」
「お肉以外のものも詰めるけれど」
 それでもというのです。
「それがね」
「中々思わないわね」
「そうなんだよね」
「そう、これがね」
 どうにもというのです。
「実際凄い発想よ」
「ソーセージにしても」
「かなり昔からあったらしいけれど」
 それでもというのです。
「最初に考えた人は凄いわ」
「そうだね」
「つまりソーセージもコロンブスの卵で閃きね」 
 つぎはぎ娘が明るく言ってきました。
「そうね」
「ええ、そうなるわね」
 ドロシーもその通りと答えます。
「言われてみれば」
「その通りね」
「本当にね」
「そういえばエジソンさんも」
 この人もというのです。
「閃きが大事って言ってるわ」
「発明についても」
「九十九パーセントの努力とね」
 これと合わせてというのです。
「一パーセントの閃きがあれば」
「発明が出来るのね」
「もう閃きは何時来るかわからないけれど」 
 それでもというのです。
「その閃きがね」
「発明をさせてくれるのね」
「そして魚肉ソーセージもソーセージ自体も」
「コロンブスの卵で」
「発明もね」 
 こちらもというのです。
「そうなるわね」
「そうなんだね」
「どうもあの人は努力の中で閃いていったみたいだけれど」
「あの独特な考え方もあるかしらね」
「ええ、あの人は閃きが降りやすい人ね」
「それが発明につながってるわね」
「一旦打ち込んだら止まらないし」
 このこともあるというのです。
「これは九十九パーセントの努力ね」
「そうなるわね」
「ええ、あの人はね」
「その努力と閃きね」
「それで発明をしている人よ」
「まさにそうね、じゃあ今から」 
 つぎはぎ娘はここですくっと立ってそのうえで皆に言いました。
「あたしソーセージの歌を歌うわね」
「そうするのね」
「ええ、その閃きの歌を歌うわね」
 そうするというのです。
「味はわからないけれどね」
「その生み出した閃きね」
「腸に入れるね」
 それのというのです。
「今からね」
「それじゃあね」
 ドロシーが応えてでした、そのうえで。
 つぎはぎ娘はソーセージの歌を歌いました、勿論ダンスもです。そうして一曲歌って踊ってから皆に尋ねました。
「どうだったかしら」
「うん、いつも通り素晴らしい出来だったよ」
 カルロスが答えました。
「何かお芝居みたいでね」
「ジングシュピールかな」 
 こう言ったのは神宝です。
「ドイツの歌うお芝居の」
「私達の学園にはドイツから来ている子もいるけれど」 
 ナターシャは自分達が通っている学校のお話をします。
「あの国ではお芝居の間に歌を入れるものがあるのよ」
「ジングシュピールは踊りはあまりないみたいだけれど」 
 それでもとです、恵梨香も言います。
「そこは違うわね」
「ジングシュピールの歌のところにあっちの踊りを入れた」
 ドイツのとです、ジョージはつぎはぎ娘に言いました。
「そんな風だね」
「オズの国にはドイツの音楽もあるの」 
 つぎはぎ娘はジョージ達五人に答えました。
「アメリカにはドイツ系の人も多いから」
「そうそう、アメリカはね」
「本当に色々な国から人が来ているから」
「ドイツ系の人も多いよ」
「それも結構以上にね」
「人口の割合でも多いみたいね」
「だからオズの国でもドイツ系の人も多いの」 
 アメリカが反映されるこの国でもというのです。
「それであたしもドイツの音楽を知ってるのよ」
「ジングシュピールもだね」
「この音楽も」
「それで知っていて」
「ドイツの踊りもそうで」
「それでなのね」
「今歌ったのよ」
 実際にそうしたというのです。
「ソーセージはドイツのものだし」
「ソーセージはドイツってイメージあるね」
「確かに」
「色々な国で食べられているけれど」
「やっぱりソーセージっていうと」
「ドイツってなるわね」
「それでドイツ風にしたのよ、じゃあ皆どんどん食べてね」
 そのソーセージをというのです。
「あたしはその食べる姿を見てるから」
「それで食べない人は栄養になるからね」
 ジョージがそのつぎはぎ娘に応えました。
「面白いね」
「そうでしょ、食べられる人は美味しいものを食べて笑顔になるでしょ」
「そうなるよ」
「その笑顔があたし達の栄養になるのよ」
「心のだね」
「笑顔は心の糧よ」 
 つぎはぎ娘はこうも言いました。
「だからね」
「そういうことね」
「そうよ、だからどんどん食べてどんどん笑顔になってね」
「そうならせてもらうよ」
「是非ね」
 こうしたお話をしながらでした。
 ジョージ達はソーセージも他のものもお腹一杯食べました、その後で皆でさらに先に進みます。するとです。
 皆は森の中に入りました、するとです。
 真っ黒な毛の大きな熊が森の中を進む煉瓦の道の横にいました、見ればワインを飲んでチーズを食べて酔っぱらっています。
 その熊が一行を見て言ってきました。
「ドロシー王女だね」
「ええ、そうよ」 
 ドロシーは熊に答えました。
「今お菓子の国に向かってるの」
「そうなんだね、わしは魯達っていうんだ」
「魯達さんっていうの」
「そうだよ、実は魯智深さんの弟子でね」
「あの豪傑の」
「この名前を貰ったんだ」
「そうだったのね」 
 ドロシーは魯達の言葉を聞いて頷きました。
「それで中国系の名前なのね」
「オズの国には梁山泊もあるしね」
「百八人の豪傑の人達がいるわね」
「魯智深さんもあそこにいるね」
「豪傑の一人だから」
「その魯智深さんがここに通った時に会って」
 そしてというのです。
「弟子にしてもらったんだ」
「あの人の弟子ってことは」
 ドロシーはこのことから言いました。
「貴方も棒が使えるの」
「錫杖だね」
「あれを使えるの」
「そうなんだ、元々この森の番人で」
 これが魯達のお仕事だというのです。
「ずっとここにいたけれど」
「あの人とお会いして」
「それで棒術もね」
 こちらの技もというのです。
「教えてもらってね」
「それを使うのね」
「そうだよ、ただ僕は魯智深さんには力も棒術も落ちるよ」
「あの人も本当に強いからね」
「関羽さんや孫悟空さんも強いけれど」
「あの人も強いわね」
「梁山泊の人でも一番強いかな」
 こうも言う魯達でした。
「若しかして」
「史進さんや武松さん、あと関勝さんや秦明さんも強いから」
 ジョージが言ってきました。
「水滸伝だと。甲乙つけ難いかな」
「そうだね、まあ関羽さんや孫悟空さんなんかもう神様だから」
 魯達はこの人達のこともお話しました。
「また別格かな」
「神様だからね」
「うん、強さの桁が違うよ」
「そうだね」
「本当にね」
 こうしたお話をしてです、そのうえで。
 魯達はまたワインを飲みます。つぎはぎ娘はその魯達に尋ねました。
「あんたいつも飲んでるの?」
「うん、暇な時はね」
 魯達はつぎはぎ娘に笑顔で答えます。
「そうしているよ」
「そうして楽しんでるのね」
「あと森の果物や蜂蜜を皆と楽しんだりもね」
「しているのね」
「ここは実はラベンダーグマが扱っている森で」
 樵を見てお話します。
「僕はその番人を仰せつかっているんだ」
「それでこの森にいるのね」
「そうだったの」
「僕は普通の熊だけれどね」
「クマセンターの人だったのね」
「元々ね、あちらの伍長さんとは親友だよ」
 こうも言うのでした。
「センターに行った時は仲良くしてもらっているよ」
「そうなのね」
「オズの国らしく平和な森だし」
 魯達は大きな丸いチーズを食べてです。
 そうしてから何リットルも入る木のジョッキに赤ワインをとくとくと入れてそうしてごくごくと飲んで言いました。
「だから暇な時はね」
「そうして飲んでるのね」
「けれどいざという時は」
 その時はといいますと。
「錫杖とこの力で」
「受けて立つのね」
「酔拳も使えるしね」
「ああ、中国拳法の」
「あれは面白いね、大好きだよ」
「酔拳のことは聞いていたけれど」
 それでもとです、ジョージはここで言いました。
「熊が使うんだ」
「だってここはオズの国よ」
 それはというお顔のジョージにドロシーが答えます。
「だからね」
「こうしたこともですか」
「そうよ、普通よ」
「そうなんですね」
「オズの国はそうした国じゃない」
「生きものも普通に喋りますし」
「お酒を飲んで錫杖も使うから」
 他ならぬ魯達がする様にです。
「普通にね」
「そうした国ということですね」
「そういうことでね」
「頭に入れればいいですね」
「そうよ」
「ちなみに僕は飲み過ぎるとね」
 魯達はさらに言ってきました。
「寝てしまうんだ」
「そうなるのね」
「うん、酔って笑ったり泣いたりはしないけれど」 
 それでもというのです。
「飲んでる間は気持ちよくて」
「そしてさらに飲んで」
「それでね」
「最後は寝てしまうのね」
「後はもうぐっすりだよ」
 そこまで寝てしまうというのです。
「そうなるんだ」
「そうなのね」
「今はワインを飲んでいるけれどビールも蜂蜜酒も飲むよ」
 こちらのお酒もというのです。
「どんなお酒もね」
「飲むのね」
「林檎酒も好きだし杏酒もね」
「杏酒は確か中国のお酒ね」
「こちらも好きで」  
 それでというのです。
「よく飲むんだ」
「そうしているのね」
「それで飲む時は沢山飲んで」
「最後は寝るのね」
「そうなんだ、だから今もね」
「最後は寝るのね」
「そうなるよ、絶対にね」
 魯達はドロシーに笑って答えました。
「いつもだから」
「じゃあね」
 ここでつぎはぎ娘が言ってきました。
「これからあんたの歌を歌うわね」
「そうするんだ」
「いいわよね、そうして」
「いいよ、というかね」
「というか?」
「オズの国でも有名な歌手でダンサーの君にそうしてもらえるなら」
 それならとです、魯達はつぎはぎ娘に言いました。
「僕も嬉しいよ」
「そうなのね」
「じゃあ歌ってくれるかな」
「わかったわ、タイトルは酒好きの熊の歌だよ」
「まさに僕だね」
「歌うわね」
 早速とです、こう言ってでした。
 つぎはぎ娘は森の中でぴょんぴょんと跳ねつつ歌いました、今度は森の中を飛び跳ねるとても元気のいいダンスです。
 歌もポップスのものでとても明るいです、つぎはぎ娘はその曲が終わってから魯達に対して尋ねました。
「どうかしら」
「凄いね、いつも動画で観ているけれど」
「いい曲なのね」
「明るくて派手でね」
「あたしの曲はいつも明るいけれどね」
「今回もだね」
「今回はオーソドックスにね」
 つぎはぎ娘にとってはです。
「やってみようと思ってしたの」
「それでなんだ」
「ポップスでいったけれど」
 つぎはぎ娘がよく歌うジャンルの一つです。
「その中でもね」
「明るいものにしたんだ」
「あんたが明るく飲んでるから」
「だからなんだ」
「そうしたの」
 明るい歌にしたというのです。
「踊りもね」
「派手にしたんだ」
「そうなの」
 こう魯達にお話します。
「それで気に入ってもらえたなら」
「君としてもかな」
「嬉しいわ」
 そうだというのです。
「本当にね」
「歌が褒められると」
「あたしは一番嬉しいわ」
 その時こそがというのです。
「何といってもね」
「君は歌と踊りが好きだから」
「そういったことが褒められると」
 それでというのです。
「一番嬉しいの」
「じゃあ君の曲はいつも評判がいいから」
「いつも嬉しいわ」
「そうだね」
「心からハッピーよ」
 つぎはぎ娘はこうも言いました。
「あたしは歌えたらね」
「そして踊れたら」
「それでね」
「そうだね、じゃあ僕はこのままね」
「飲んでいるのね」
「そうするよ、ではまたね」
「ええ、次にここに来た時にまた会いましょう」
 つぎはぎ娘と熊が暫しのお別れの挨拶をしてでした。
 一行は森を抜けてからです、今度は。
 お空から来た飛竜に乗った郵便局の人にこう言われました。
「ドロシー王女にお手紙です」
「あら、誰からかしら」
「オズマ姫からです」 
 郵便局の人はドロシーに笑顔で答えました。
「お手紙です」
「オズマからなの」
「それを届けに来ました」
「有り難う、じゃあね」
「読まれますね」
「そうさせてもらうわ」
 ドロシーは郵便局の人に笑顔で答えました、そしてです。
 お空に戻る郵便局の人を見送ってからオズマからのお手紙を読みました、そのうえで皆に言いました。
「朗報だわ」
「朗報?」
「っていうと」
「ええ、私達がお菓子の国に着いたら」
 その時にとです、ドロシ―はかかしと樵に答えました。
「お菓子の国は国を挙げて歓迎してくれるそうよ」
「僕達をそうしてくれるんだ」
「歓迎してくれるんだ」
「ええ、そしてね」
 それでというのです。
「国を挙げてパーティーをしてくれるそうよ」
「それは楽しみだね」
「首を挙げてのパーティーなんてね」
 かかしも樵もそのお話を聞いて笑顔で言います。
「じゃあね」
「是非行かないとね」
「何でもね」 
 ドロシーが笑顔でさらに言いました。
「オズマはお菓子の国の人達に私達が向かっているってお話したら」
「お菓子の国の方でだね」
「そう決めてくれたんだね」
「そうなの」
 ドロシーはジャックと木挽きの馬に答えました。
「これがね」
「いいね、じゃあね」
「自然とあの国に足が進むね」
「そうね、今は少しずつでも」
 それでもというのです。
「足が速くなるわ」
「そうなるね」
「国を挙げて歓迎してくれるなんて」
「皆焦っては駄目だけれど」
 それでもとです、ドロシーはこうも言いました。
「自然と足が速まることは止められないわね」
「というかね」
「飛んでいきたい位だよ」
「僕も。気球呼ぶ?」
「だから焦らないの」
 ドロシーはピーターとトトに笑顔で軽く注意しました。
「ここはね」
「そうだね、焦らないでね」
「そのうえで足を速めるべきだね」
「それがいいね」
「そうよ、パーティーを楽しみにしながら進むのも楽しいでしょ」
 だからだというのです。
「いいわね」
「そうだね、じゃあ」
「ここは焦らずにいこうね」
「そうして進んでいこう」
「そうよ、楽しみは長ければ長い程いいでしょ」
 ドロシーはこうも言いました。
「それでよ」
「焦らずに、足が速くなっても」
 恵梨香もその足取りは自然と速いものになっています。
「それでもですね」
「お菓子の国に向かうこの旅も楽しむ」 
 カルロスは実は焦る気持ちを抑えています、そのうえでの言葉です。
「それがいいですね」
「お菓子の国までまだ歩きますし」
 神宝はドロシーの言葉を聞いて言います。
「その間も楽しめますね」
「楽しむべきものは全部楽しむ」
 ナターシャはこう考えました。
「そうあるべきですね」
「本当に気持ちが逸りますけれど」
 それでもと言うジョージでした。
「それを抑えて今も楽しむべきですね」
「今も楽しんで未来も楽しむ」
 つぎはぎ娘が言ってきました。
「それが一番いいのよ」
「そうだよね」
「そうよ、今すぐお菓子の国に着いたら」
 つぎはぎ娘はピーターとトトの言葉から言いました、今自分達がいるこの場所から一瞬でお菓子の国に着いたらというのです。
「この旅路の楽しみがなくなるのよ」
「そう考えると」
 ジョージはそのお話を聞いて思いました。
「それはね」
「残念でしょ」
「そうだね」
「じゃあね」
「今は」
「楽しく進んでいきましょう」
「そうするべきだね」
 ジョージはつぎはぎ娘の言葉に頷きました。
「本当に」
「その通りよ、それでだけれど」 
 つぎはぎ娘はさらに言いました。
「もうすぐ日が落ちるわね」
「ええ、近くに身体を洗えるお池もあるし」 
 気付けばもう世界は夕刻の赤から夜の濃紫に入ろうとしています。ドロシーは終わろうとしている夕暮れのお空に星を見ながら言いました。
「この近くでね」
「今日はお休みね」
「そうしましょう」
「じゃあここでよね」
「テントを出すわね」
「そうするのね」
「それと」
 ドロシーはさらに言いました。
「テーブル掛けも出して」
「晩ご飯ね」
「そちらも楽しみましょう」
「それじゃあね」
「今から出すわ」
 ドロシーは笑顔で言ってでした、そのうえで。
 テントを出したその後でテーブル掛けも出しました、そうして晩ご飯となりますが今夜のメニューはといいますと。
 ビーフシチューにマトンの肋骨のソテーにザワークラフトに傍にバターが置かれている食パンそしてデザートにさくらんぼのトルテです。
 そうしたものを出して食べはじめますが。
 トトはビーフシチューを食べながら言いました。
「いや、シチューは色々だけれど」
「ビーフシチューはよね」
「一番いいかな、しかもね」
 ドロシーに笑顔で言うのでした。
「今回はシチューのお汁よりも」
「ええ、具をね」
「多くしてるね」
「肉じゃがみたいにね」
「そうだね」
 見ればお肉にジャガイモ、人参に玉葱といったものがシチューの中にあります。確かに肉じゃがみたいに多いです。
「これは」
「日本のお料理の肉じゃががビーフシチューを元にしてるって聞いてね」
「今回は肉じゃがみたいにだね」
「お汁を少なくして」
 そしてというのです。
「具をね」
「うんと多くしたんだね」
「そうなの」 
 実際にというのです。
「そうしてみたの」
「成程ね」
「それでどうかしら」
「美味しいよ」
 トトはジャガイモを食べつつ笑顔で答えました。
「とてもね」
「それは何よりよ」
「ビーフシチューだけじゃないしね」
「ラムも美味しいよ」
「こっちもね」
 ピーターはこちらを食べています、そうして言うのです。
「お塩や胡椒もよく効かせていて」
「いい感じだよ」
「パンもいいしね」
 腹ペコタイガーは今はパンを食べています。
「柔らかくて味もよくて」
「ザワークラフトもだね」
 臆病ライオンはこちらを食べています、オズの国のライオンや虎はこうしたものも美味しく食べるのです。
「いいね」
「何でも美味しいわね、何でも美味しいことも」 
 ドロシーもパンを食べています、バターをたっぷり塗ったそれを食べながらそのうえでにこにことしています。
「幸せよね」
「そうですよね」
「オズの国はもう何でも美味しくて」
「お食事の都度幸せになります」
「逆に言えばまずいもの食べたことがないです」
「一度も」
「私もよ。ただ昔はね」
 ドロシーはジョージ達五人に自分達の過去のことをお話しました。
「オズの国って食べることについてはシンプルだったわ」
「でしたね、昔は」
「本当にそうでしたね」
「言われてみれば」
「そうでしたね」
「錠剤だけっていうこともありましたね」
「ええ、それがかなり変わったわね」
 その頃からというのです。
「本当に」
「そうですよね」
「今は美味しいものが一杯ありますね」
「それを沢山食べますね」
「そうした風になりましたね」
「今のオズの国は」
「しかもメニューが凄く増えたわ」
 ドロシーはラム肉を食べつつ笑顔で言いました。
「本当にね」
「昔は日本や中国のお料理なかったですし」
 ジョージが言ってきました。
「フライドチキンやハンバーガーやドーナツも今程は」
「なかったわね」
「そうでしたね」
「お菓子もね」
 皆が大好きなこちらもです。
「今みたいに色々な種類はね」
「なかったですね」
「ピザも」 
 このお料理もです。
「こんなになかったわね」
「そうでしたね」
「スパゲティはあったけれど」
「昔とは違いましたか」
「今よりも茹で方がいい加減で」
「のびたものばかりで」
「そして種類もね」
 スパゲティのソースのそれもというのです。
「少なかったわ」
「そうでしたね」
「そもそも私カンサスの貧しい農家にいたから」
「あっ、美味しいものは」
「昔は馴染みがなかったの」 
 そうだったというのです。
「これがね」
「そうでしたね」
「けれど今は」
「こうしてですね」
「美味しいものに囲まれているわ」
「本当に変わりましたね」
「そうね、パンだけでなくご飯も沢山食べる様になったし」
 つまりお米もというのです。
「変わったわ」
「そして飲みものも」
「ええ、果物やお野菜のジュースも」
 今出されているジュースは人参のジュースです、ドロシーはそのジュースを飲みつつそうして言うのでした。
「こんなになかったから」
「そうでしたね」
「オズの国は美味しく変わったわ」
「全く、ですね」
「ええ、ただね」
 ここでこうも言ったドロシーでした。
「私納豆には驚いたわ」
「あの日本の食べものですね」
「最初見た時は何かって思ったわ」
 こうジョージにお話します。
「オズマもベッツイもトロットもね」
「皆さん驚かれましたか」
「あれはないわ」
 それこそというのです。
「外見も匂いもね」
「凄いですよね」
「いざ食べてみると美味しいけれど」  
 それでもというのです。
「糸を引いて物凄く臭くて」
「食べられないと思いますよね」
「あれはないと思ったわ」
「何かとそうですね」
「あとね」
 ここでつぎはぎ娘が言うことはといいますと。
「あの缶詰ね」
「シュールストレミングね」
「あれもオズの国に入ってきたけれど」
「臭いでしょ」
「納豆の上をいくわ」
「その臭さでは」
「だから皆あれはお家やお部屋の中では食べないの」
 そうしているというのです。
「さもないと匂いが充満するから」
「あの臭さときたら」 
 犬なのでお鼻が凄くいいトトはとても嫌そうに言います。
「もう気絶しそうになるよ」
「トトはそうよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「僕はあれはいいよ」
「滅多に食べるものじゃないし」
「そうだよね」
「だからなのね」
「盆等にあれはね」
 匂いがあまりにもきついからというのです。
「遠慮するよ」
「じゃあ納豆は」
「あれはまだね」
「いいのね」
「うん、食べても美味しいし」
「ご飯にとても合うし」
「しかも食べたら元気になるし」 
 こうも言うトトでした。
「だからね」
「納豆はいいのね」
「あの缶詰よりはね」
「シュールストレミングね」
「よくあんな食べものあるね」
「かなり特殊な食べものよ」
「何といっても」
「そう言うしかないわ」
 シュールストレミングについてはというのです。
「本当に」
「そうだよね」
「ええ、ただね」
「ただっていうと」
「チーズも匂いがきついわね」
 ドロシーはいつも食べているこの食べもののお話もしました。
「そうね」
「ウォッシュチーズは特にそうだね」
「けれど美味しいわね」
「うん、かなりね」
「逆にあの匂いがね」 
 チーズのそれがというのです。
「食欲をそそるわね」
「僕もね」
「美味しいってわかってると」
「その匂いで食欲がそそられる」
「そうなるのかしら」
 ドロシーは考えるお顔でこうも言いました。
「逆に言えばね」
「美味しくないと」
「そう思わないのかしら」
「いい匂いのものでも」
「食欲をそそられないのかしら」
「それはあるかな」
 トトも考えるお顔になって言いました。
「やっぱり」
「そうよね」
「それでね」
「それで?」
「チーズも出そうかしら」
 今お話に出したそちらの食べものもというのです。
「そうしようかしら」
「いいですね」
「早速出しましょう」
「やっぱりチーズは美味しいですから」
「あるとその分幸せな気持ちになります」
「それじゃあ」
 ジョージ達五人が応えてです、そうして。
 臆病ライオンと腹ペコタイガー、トトにジョージもいいというお顔です。それでドロシーはチーズも出しました。
 そのチーズはカマンベールチーズだったのでジョージは言いました。
「そちらのチーズですか」
「そう、どうかしら」
「いいですね」
 ジョージはにこりとして答えました。
「色々なチーズがありますけれど」
「カマンベールチーズもでしょ」
「はい、とても美味しいです」
「だから出したし」
「これからですね」
「チーズも皆で食べましょう」
 ドロシーは笑顔で皆に言いました。
「そうしましょう」
「そういえばね」
 つぎはぎ娘がここでこんなことを言います。
「あたしチーズの歌も歌ってるわ」
「そうだったんだ」
「そうよ、随分前だけれど」
 それでもというのです。
「歌ったのよ」
「それで踊ったんだ」
「そうしたの」
 こうジョージにお話します。
「それで今もね」
「歌えるんだ」
「そして踊れるの」
 これも可能だというのです。
「完璧にね」
「そういえば君は一度歌った歌はずっと覚えてるね」
「ダンスもね」
 こちらもというのです。
「そうよ」
「全部覚えてるんだね」
「ええ、どんな曲でもね」
 それこそというのです。
「一度歌って踊った曲はね」
「忘れないんだね」
「そう、絶対にね」
 そうしているというのです。
「だからチーズの歌もね」
「今歌えるんだ」
「そして踊れるわ、だからね」
「今からなんだ」
「踊るわね」
 こう言ってでした。
 つぎはぎ娘は皆にチーズの歌と踊りを披露しました、そうして夕食の場を盛り上げることもしました。皆はこの食事の時も心から楽しみました。








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