『新オズのつぎはぎ娘』
第六幕 ダンディなコヨーテとイタチ
バイソン達の背中に乗せてもらって楽しく遊んでからでした、ドロシー達は黄色い煉瓦の道に戻って暫く進み。
そうしてです、お食事の時間になるとです。
ドロシーは約束した通りステーキを出しました、ビーフステーキにポークステーキ、チキンステーキにです。
マトンやラムのステーキも出します。そうしてです。
食べられる人達は皆で食べます、食べる必要がない人達はその人達が食べる様子を見てその笑顔を楽しんでいます。
その中で特大のティーボーンステーキを食べTです、腹ペコタイガーはこんなことを言いました。
「やっぱりステーキはね」
「ティーボーンだね」
「これがいいね」
こう臆病ライオンにも言います。
「僕が思うに」
「二つの味を同時に楽しめるからだね」
「そう、だからね」
「君はティーボーンステーキが一番好きだね」
「そうなんだ」
「僕も好きだね」
臆病ライオンもと言います。
「ティーボーンステーキは」
「二つの味が楽しめるから」
「だからね」
それでというのです。
「大好きだよ」
「そうだね」
「ただね」
「ただ?」
「サーロインステーキも捨て難いね」
こちらのステーキもというのです。
「本当に」
「ああ、そっちのステーキもね」
「そうだよね」
「うん、そう言われるとね」
腹ペコタイガーもこう応えます。
「僕もね」
「否定出来ないね」
「実際に美味しいからね、サーロインも」
「そうだね」
「それを否定することはね」
どうしてもというのです。
「僕には出来ないよ」
「君サーロインも好きだしね」
「そうだね」
「実は僕が今食べているのもね」
「あっ、サーロインだね」
「だからね」
それでというのです。
「本当にね」
「否定出来ないね」
「どうしてもね」
「いや、ポークステーキもいいよ」
トトはこちらのステーキを食べつつ言いました。
「こちらも」
「あっ、豚肉もね」
「いいよね」
二匹はトトの言葉にも頷きました。
「確かにね」
「そちらもね」
「ビーフもいいけれど」
それでもと言うトトでした。
「こちらもね」
「そうだね、捨て難いね」
「実際にね」
「甲乙つけ難いというか」
「どちらも美味しいね」
「そうなんだよね」
「そんなこと言ったら」
ドロシーも言ってきます。
「私は今食べているチキンステーキも美味しいでしょ」
「そうだね」
「そちらのステーキもいいね」
「食べているとね」
「とても美味しいよ」
「そうでしょ、さっきは私もビーフステーキ食べたけれど」
それでもと言うドロシーでした。
「今食べているチキンステーキもね」
「美味しくて」
「それでだね」
「こちらもいいと言うわ」
こう言いつつそのチキンステーキを食べるのでした。
「本当に」
「あの、マトンのステーキが」
恵梨香が言ってきました。
「物凄く美味しいんですが」
「ええ、ラムもいいわよ」
ナターシャはこちらのステーキを食べています。
「羊のお肉もいいわよ」
「そう、羊って凄く美味しくてね」
神宝は恵梨香と同じマトンのステーキを食べて言います。
「美っていう言葉のもとにもなったんだよね」
「いや、羊のお肉って柔らかいし」
それでと言うカルロスはラムのステーキを食べています。
「美味しいし最高だね」
「何故か日本ではあまり食べないけれど」
ジョージはマトンのステーキを食べながら言いました。
「羊のステーキもいいですね」
「そうでしょ、ステーキも牛肉だけじゃないわ」
このことを言うドロシーでした。
「色々あるのよ」
「そうですよね」
「あとスパムやベーコンやハンバーグのステーキも出してるから」
見ればそちらのステーキもあります。
「皆で食べてね」
「それとね」
今度はつぎはぎ娘が言ってきました。
「皆ステーキ食べながらサラダやザワークラフトも食べてるわね」
「ええ、そちらも沢山出したわ」
ドロシーはつぎはぎ娘のその言葉に答えました。
「実際にね」
「そうよね」
「お肉ばかり食べてると口飽きするから」
それでというのです。
「お野菜もね」
「出してるの」
「そう、サラダにザワークラフトをね」
「そうしたのを出して」
「一緒に食べているの」
「そうなのね」
「サラダが奇麗だね」
ジャックはそちらを見て言います。
「レタスにトマトにアスパラガスに胡瓜にラディッシュにパイナップルに苺にって色々入っていて」
「今回のサラダは甘いものも入れてみたの」
「そうなんだ」
「お野菜の中でもね」
「パイナップルとか苺とか」
「そうしたものもお野菜だから」
それでというのです。
「入れてみたの」
「成程ね」
「苺はいいものだよ」
かかしが言ってきました。
「僕は食べないけれど栄誉がかなりあるから」
「そう、しかもとても甘くて美味しいから」
ドロシーはかかしにも笑顔で答えます。
「だからね」
「サラダにも入れたんだね」
「そうしたの」
「成程ね」
「甘さを出す為に」
「そこにドレッシングもかけてるし」
樵もそのサラダを見つつ言います。
「香りもいいね」
「ドレッシングはフレンチでね」
そちらのドレッシングにしてというのです。
「オーソドックスにしてみたの」
「そうなんだ」
「色も奇麗でしょ」
「この色合いを観ているだけで目の栄養になるよ」
樵はドロシーに笑顔で答えました。
「本当に」
「それは何よりね」
「いや、お肉にお野菜もあって」
木挽きの馬車も言います。
「凄くいいね」
「どちらも沢山食べてね」
「そうして楽しむんだね」
「そうよ、私達はね」
「それで飲みものは」
つぎはぎ娘はそちらを見ました。
「アルコールのないワインね」
「子供でも飲めるね」
「そうしたものね」
「そちらを出したの、とても甘いね」
「そういえば」
ここでジョージが言いました。
「ワインって苦いのもありますね」
「種類によってはそうでしょ」
「このワインは凄く甘いですが」
「ワインも種類によって随分と種類が違うの」
「そうなんですか」
「それでね」
ドロシーはジョージにお話しました。
「こちらのワインはね」
「甘いものですか」
「ウィンキーだから黄色いワインよ」
「ワインレッドでなく」
「こちらのワインにしたの」
「そうですか」
「マンチキンのワインは青いわね」
つぎはぎ娘はこの国のワインのお話をしました。
「ギリキンだと紫、カドリングだと赤で」
「エメラルドの都だと緑でね」
「それぞれのお国の色のワインがあるわね」
「そして本来のね」
「ワインレッドのワインもあるわね」
「白もロゼもね」
こちらの色のワイン達もというのです。
「あるわよ」
「そうよね」
「本当にワインの色はね」
それはというのです。
「それぞれの国の色のものがあって」
「そのうえで」
「外の世界と同じ色のものもあるのよ」
「そこはそれぞれってことね」
「そうよ、それでこのウィンキーのワインは」
ドロシーはワイングラスで黄色いワインを飲みます、まるでオパールを溶かした様な色のワインです。透明感もあってとても奇麗です。
「凄く甘いのよ」
「そんなになのね」
「もう一口飲んで大好きになる位に」
「飲んでも酔わないから」
ジョージは飲みつつ言います。
「余計にいいし」
「そうでしょ」
「これは幾らでも飲めますね」
「だからこちらもね」
「沢山飲んでいいんですね」
「ええ、私もそうするし」
言いつつまた飲むドロシーでした、その飲む仕草はとても上品で流石はオズの国の王女といったものです。
ですが飲みつつ言うのでした。
「今日はこれでお休みだけれど」
「またなのね」
「そう、明日になればね」
その時はというのです。
「またね」
「冒険ね」
「そうよ、明日も大草原を進むわ」
「本当に広い平原だから」
「そうなるわ」
こうつぎはぎ娘も答えました。
「そしてまた明日ね」
「大草原の生きもの達と会うのね」
「そうなるわ」
実際にというのです。
「多分ね」
「そうなのね」
「大草原の生きものは数も種類も多いから」
それでというのです。
「バイソンやプレーリードッグや兎以外にもね」
「生きものがいて」
「会えるわ」
「鷹や鷲が飛んでるわね」
つぎはぎ娘はお空を見上げて言いました。
「そういえば」
「そうでしょ」
「ええ、実際にね」
「それで明日もなのね」
「大草原の生きものに出会えるから」
それでというのです。
「明日もね」
「楽しみにしていていいのね」
「そうよ」
「ううん、それであたしの幸運は」
ここでこうも言うつぎはぎ娘でした。
「そして皆の幸運は」
「何時かね」
「やって来るのね」
「バイソンの背中に乗って貰ったそれはね」
「そうなのね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「今はね」
「待っていればいいのね」
「そう、別にね」
これといってとです、ドロシーはスパムのステーキを食べつつつぎはぎ娘に答えます。こちらのステーキの味も楽しんでいます。
「焦ることはないわ」
「そう言われるとあたしはね」
「焦らないわね」
「あたし焦るよりもね」
「他の楽しみを楽しんで」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「その幸せが来るのを待っているわ」
「そうよね」
「だから今もそうするわね」
「そうしてね」
つぎはぎ娘はさらに言いました。
「歌も踊りもね」
「今もそうするの」
「あたしステーキは食べないけれど」
それでもというのです。
「皆が食べているのを見て歌いたくなったわ」
「ステーキの歌を?」
「踊りつきでね、そういえば」
こうも言うつぎはぎ娘でした。
「ルースさんも好きね」
「えっ、ルースさんってまさか」
「あのベーブ=ルースさん!?」
「野球の神様って言われた」
「物凄く沢山のホームランを打った」
「あの人のことなの」
「そうよ、野球選手のベーブ=ルースさんよ」
まさにその人だとです、つぎはぎ娘はそのお名前を聞いて驚くジョージ達五人の子供達に対して答えました。
「あの人もオズの国に来ているの」
「そうだったんだ」
ジョージはつぎはぎ娘の返事に驚きつつ応えました。
「あの人も」
「エジソンさんもモーツァルトさんも来ていて」
「そしてだね」
「関羽さんも来ているから」
「凄い人達が揃っているんだ」
「宮沢賢治さんもいるわよ」
この人もというのです。
「オズの国には」
「凄いね」
「だからね」
「ベーブ=ルースさんもいるから」
「機会があれば会いたいでしょ」
「絶対に、あんな凄い人に会えるなら」
それならというのです。
「是非会いたいよ」
「野球場に行けば会えるからね」
「子供達のヒーローは死んだらオズの国に来ることが出来るのよ」
ドロシーがこのことを言ってきました。
「無事にね」
「そういえばボームさんも」
「そうでしょ、あの人もね」
「一度お亡くなりになって」
「そうしてね」
「オズの国に来られましたね」
ジョージも頷きました。
「そういえば」
「そうでしょ、だからね」
「ルースさもですか」
「今はオズの国におられるの」
「そうなんですね」
「私はお会いしたことがあるわ」
そのベーブ=ルースさんとです。
「とても素敵な人よ」
「それで野球選手として」
「そう、いつもとても大きなホームランを打つわ」
「見たいですね、あの人を」
「あとね」
つぎはぎ娘はさらにお話しました。
「ゲーリックさんやヤングさんもいるわよ」
「ルー=ゲーリックにサイ=ヤングも」
「あとサチェル=ペイジやジャッキー=ロビンソンも」
「うわ、伝説の人ばかりだよ」
「皆がいるから」
「野球場に行けば」
「その人達にも会ってね」
つぎはぎ娘はジョージに言いました。
「そうしてね」
「それじゃあ」
「勿論バスケットボールでもアメリカンフットボールでもホッケーでもね」
こうしたスポーツでもというのです。
「オズの国は子供達のヒーローが勢揃いよ」
「そういえばエジソンさんもいるって言ったけれど」
「ええ、それで今もね」
「発明を続けているんだ」
「そうよ、モーツァルトさんもね」
この人もというのです。
「作曲を続けているわ」
「そうしているんだ」
「素敵な曲を沢山作曲しているわ」
「オズの国でもだね」
「そう、プレスリーさんやジャクソンさんもいるし」
「夢みたいだよ」
ジョージは遂に息を飲みました。
「本当に凄い国だよ」
「だからお伽の国なのよ」
笑って言うつぎはぎ娘でした、そうして。
皆でステーキやお野菜、アルコールのないワインを楽しんでそれからデザートにアイスクリームを食べてです。近くの川で身体を洗ってから。
皆でテントの中に入って寝ます、翌朝は日の出と一緒に起きてクロワッサンとオニオンスープとスクランブルエッグ、牛乳の朝ご飯を食べて。
それから出発しましたが少し歩きますと。
前からコヨーテが来ました、見ればそのコヨーテは。
二本足で歩いてです、黒いタキシードにズボン、ぴかぴかに磨いた黒い革靴にステッキ、白のブラウスに赤の蝶ネクタイにです。
黒いシルクハットという恰好です、ジョージはそのコヨーテを見てそのうえで言いました。
「またお洒落なコヨーテだね」
「そうだね」
トトが応えました。
「タキシードにシルクハットでね」
「紳士でね」
「お洒落だよね」
「本当にそうだね」
また言うジョージでした。
「ああした格好も」
「それで隣のクロアシイタチは」
見ればコヨーテは一匹ではありません、その隣にはクロアシイタチもいますが。
このイタチは全身青のスーツです、ネクタイは黄色でブラウスはやっぱり白で黒の革靴はやっぱりピカピカです。帽子は青のボルサリーノです。
そのクロアシイタチも見てです、ジョージは言いました。
「スーツだね」
「彼もお洒落だね」
「そうだね」
「あれっ、君達は」
そのコヨーテが言ってきました。
「ドロシー王女とオズの国の名士の人達じゃないか」
「凄いね、かかしさんに樵さんがいて」
クロアシイタチも言います。
「臆病ライオンさんに腹ペコタイガーさんもいるよ」
「まさか一度にこれだけの人に会えるなんて」
「思わなかったね」
「それに」
コヨーテはジョージ達も見て言いました。
「今話題の」
「うん、オズの名誉市民の子達だね」
クロアシイタチもコヨーテに応えます。
「まさに」
「どんな子達から思っていたけれど」
「こうした子達だったんだ」
「いや、五人共可愛いね」
「そうだね」
「可愛いのかな」
ジョージはコヨーテ達の言葉にどうかという顔で応えました。
「僕達って」
「子供だからだね」
神宝はコヨーテ達の言葉の理由をこのことから考えました。
「それでだね」
「そういえばこの人達大人だね」
カルロスハコヨーテ達を見て言いました。
「大人から見れば子供は可愛いね」
「そうした意味の可愛さね」
恵梨香はこう考えて納得しました。
「そういうことね」
「女の子は可愛いと言われると嬉しいけれど」
それでもと言うナターシャでした。
「子供だからだね」
「そうだよ、可愛い子供達だよ」
まさにとです、コヨーテは五人に答えました。
「僕達から見ればね」
「じゃあ私もかしら」
ドロシーはコヨーテの言葉を聞いて自分もではないかと考えました、そのうえでコヨーテに対して言いました。
「私も子供だから」
「ドロシー王女は子供の可愛さと」
クロアシイタチが答えました。
「それにね」
「もう一つあるの」
「うん、女性の奇麗さもね」
こちらもというのです。
「あるよ」
「そうなのね」
「そうした年齢だね」
「大人と子供の間ね」
「今のドロシーは十三歳の身体だからね」
かかしが言ってきました。
「オズマは十四歳でね」
「そうだね。十三歳になると」
樵も言います。
「もう大人の雰囲気も備わってくるね」
「そうだね。オズの国では自分が願う年齢に成長したり戻ったり出来る様になったけれど」
ジャックもこのことから言います。
「十三歳位だとね」
「そんな風だね」
木挽きの馬も応えました。
「言われてみると」
「まだ子供だけれど大人の雰囲気もある」
臆病ライオンは考えるお顔になって言います。
「いい年齢だね」
「そうだね、そう思うと」
腹ペコタイガーはそのドロシーを見ています。
「十三歳というのは面白いね」
「オズの国に来た時はドロシーはまだ子供だったけれど」
トトはドロシーの足元から言います。
「今はそんな風だね」
「そうなのね、私は可愛くて奇麗なのね」
ドロシー自身も思うのでした。
「面白いわね、両方なんて」
「よかったじゃない、両方で」
つぎはぎ娘は微笑んだドロシーに軽く跳び跳ねつつ言いました。
「可愛くて奇麗で」
「そうね、確かに」
「ちなみにあんた達はお洒落ね」
つぎはぎ娘はコヨーテとクロアシイタチにも言いました。
「随分と」
「そう、お洒落にしてね」
そうしてとです、コヨーテはつぎはぎ娘は答えました。
「いつも草原を歩いているんだ」
「どうしてお洒落にしているの?」
「僕達は争いが嫌いなんだ」
「オズの国の生きものだから」
「そうだね、そして紳士はね」
「争わないわね」
「だからだよ」
それでというのです。
「僕達はいつもお洒落をしてね」
「紳士になっているの」
「そうなんだ、争わない人達にね」
「成程ね、面白い考えね」
「争って何が得られるか」
クロアシイタチの言葉は少し哲学的なものでした。
「一体」
「何もないわよ」
実際にとです、つぎはぎ娘は答えました。
「オズの国ではね」
「そうだよね」
「それであんた達はその考えに基づいて」
「お洒落をしてね」
「紳士になっているのね」
「そうなんだ、オズの国では争いがなくて」
それでというのだ。
「紳士は争わない」
「二番目の意味でお洒落をしているのね」
「そういうことだよ」
「よくわかったわ」
「しかし君は」
ここで、です。コヨーテはつぎはぎ娘に言いました。
「僕達以上にお洒落だね」
「あら、わかるの」
「うん、君は何度か見てるけれどね」
「その都度思うことなのね」
「そうだよ、とてもお洒落だね」
「身体自体がっていうのね」
「うん、お肌も髪の毛も服もね」
その全てがというのです。
「君はね」
「あたしは服もお肌も身体だけれど」
「そう、色々な色があってね」
「そうでしょ、あたし自身そう思ってるわ」
つぎはぎ娘自身もというのです。
「お洒落だってね」
「実際にそうだしね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「あんた達みたいに服を着てね」
そうしてというのです。
「お洒落をすることはしないわよ」
「君はもう服を着ているからね」
「身体自体が服だから」
もうそうなっているからだというのです。
「踊る時はこの上からその踊りの服を着る時があるけれど」
「普段はだね」
「このままよ」
「そうだね」
「自然とお洒落してるのよ」
「それがまたいいよ」
「そうでしょ、ただあんた達よく見れば」
つぎはぎ娘はコヨーテとクロアシイタチをあらためて見て言いました。
「服だけじゃなく毛もね」
「整えているよ」
「いつもね」
二匹もこう答えます。
「お風呂に入ってブラッシングもして」
「そうして奇麗にしているよ」
「そうね、とてもいい毛並みよ」
そうなっているというのです。
「素敵な感じよ」
「僕も見習わないとね」
トトも彼等の毛並みを見て言います。
「毛並みはね」
「トトはいつもお風呂に入って私がブラッシングしてるから」
ドロシーがそのトトに言います。
「とても奇麗よ」
「うん、それでもね」
「貴方自身でなのね」
「この人達を見習ってね」
そうしてというのです。
「奇麗にしないとね」
「そう思うのね」
「それも強くね」
「うん、そうだね」
「僕達もトトと同じ考えだよ」
臆病ライオンと腹ペコタイガーも言うのでした。
「お風呂に入って」
「毛づくろいもしてね」
「それで奇麗にしないとね」
「いつもね」
「そう言えば臆病ライオン君の鬣はいつも奇麗だね」
ジャックは臆病ライオン自慢のその部分を見て言いました。
「とても」
「手入れしてもらってるんだ」
「そうなんだね」
「王宮ではジュリアにそうしてもらって」
「冒険の時はだね」
「一緒にいる娘にね、いつも感謝しているよ」
笑顔での言葉でした。
「今はドロシーにね」
「とても素敵な鬣だから」
ドロシーも笑顔で言います。
「いつも奇麗にしないとね」
「こう言ってくれるから嬉しいんだ」
「僕のブラッシングもしてくれるからね、ドロシーは」
腹ペコタイガーも言います。
「嬉しいよ」
「貴方もそう言ってくれるのね」
「事実だからね」
「そうだね、皆とても奇麗だよ」
コヨーテはトト達にも言います。
「いつも手入れをしていることがよくわかるよ」
「そう、どんなものでも手入れを怠るとね」
樵もここで言います。
「汚くなるからね」
「だから君はいつも油で身体を磨いているね」
「そうなんだ」
かかしに笑顔で答えます。
「そして君もね」
「身体は洗濯してね」
「中の藁を入れ替えているね」
「いつもね」
「僕やジャック君は身体を油で拭いて」
木挽きの馬も自分のお話をします。
「奇麗にしているしね」
「僕はカボチャを替えたり服を洗ったりもしているよ」
ジャックも自分のお話をします。
「そうしているよ」
「そうしていつも奇麗だね」
「僕自身への手入れをしているからね」
「そう、この服もね」
コヨーテは今自分が着ているタキシードのお話をしました。
「いつも奇麗にしているんだ」
「そうね、埃一つないわね」
つぎはぎ娘もそのタキシードを見て言います。
「アイロンもかけてるし」
「ぴしっとしてるね」
「凄くね」
「クリーニングをしてね」
それでというのです。
「洗濯をしてね」
「アイロンがけもなの」
「しているからね」
「だからそんなに奇麗なのね」
「そうなんだ、ステッキも磨いてるし」
「靴もだよ」
クロアシイタチはそちらのお話もしました。
「いつもね」
「奇麗にしているのね」
「そうなんだ」
実際にというのです。
「磨いてね」
「手間もかけてるのね」
「お洒落にね」
「紳士として」
「そう、争わない人としてね」
そうしているというのです。
「そうしているんだ」
「お洒落をするにも争わないことをするには手間暇かかるのね」
「そうだね、けれど僕達はね」
「それでもいいのね」
「そう考えているんだ」
こうつぎはぎ娘にお話しました。
「そしていつもだよ」
「お洒落をしているのね」
「そうなんだ」
「凄いわね、あたしなんてね」
つぎはぎ娘も自分のことを言います。
「もう洗濯したらね」
「それでなんだ」
「奇麗になるから」
それでというのです。
「あまり手間暇かけてないわね」
「君は洗濯機に入って」
「ええ、それでね」
「洗濯機の中で洗われてだね」
「すぐに奇麗になるから」
だからだというのです。
「楽よ」
「ぬいぐるみの身体は」
「いいわよ、ただあたしはぬいぐるみだから」
それでと言うのでした。
「中のお水を抜く必要があるわよ」
「脱水だね」
ジョージが言ってきました。
「洗濯の後で」
「そう、いつもそっちもしているわ」
「それで後は乾燥だね」
「もうそれは動いているうちに乾くから」
「いいんだ」
「ええ、別にね」
こちらのことはというのです。
「いいのよ」
「そうなんだ」
「とにかくね」
ここでまたコヨーテが言ってきました。
「お洒落も争わないこともね」
「手間暇がかかるのね」
「そうしたものだよ」
こうつぎはぎ娘に言います。
「これがね」
「そうなのね」
「けれどやろうって決めたらね」
「その手間暇もなのね」
「厭わないよ」
「そうしてやっていくのね」
「そのつもりだしこれからもね」
さらにというのです。
「やっていくよ」
「覚悟は決めているのね」
「覚悟と言うものかは知らないけれど」
それでもという返事でした。
「決心はしているよ」
「これからもなのね」
「そうだよ、お洒落は大好きだしね」
「そういうことね、そういえば」
ここでこうも言ったつぎはぎ娘でした。
「あたしも凄いお洒落することあるわよ」
「どんなお洒落かな」
「身体中に色々な宝石付けてね」
そうしてというのです。
「キラキラになるの」
「ああ、そうしてなんだ」
「凄く奇麗になるのよ」
「それはいいね」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「宝石を身体中に付けると凄く重いから」
だからだというのです。
「それはあまりしないの」
「うん、確かにそのお洒落はかなり重いね」
コヨーテもそれはと返します。
「君は軽やかだからね」
「それでよね」
「そう、それはね」
本当にというのです。
「あまりしないの」
「そうしたお洒落なんだ」
「踊りにくくなるから」
このこともあってというのです。
「あまりしないわ」
「奇麗になってもだね」
「そうなの」
「けれどね」
ここでドロシーが言ってきました。
「その時のつぎはぎ娘はとても奇麗よ」
「キラキラして」
「それも色々な色でね」
それぞれの宝石の輝きでというのです。
「奇麗なのよ」
「そうした時のつぎはぎ娘さんも見てみたいね」
「機会があれば」
「そうしたいね」
コヨーテはドロシーに答えました。
「是非」
「まあ特別な式典に参加した時はそうなるから」
だからと言うつぎはぎ娘でした。
「そうした時にね」
「君と会えばいいね」
「そうしたらいいわ」
「ではね」
「ええ、機会があればね」
「そういえば」
今度はジョージが言います。
「僕達も式典の時は立派な服を着るね」
「そうそう、タキシードとかドレスとか」
「そうした服を着るね」
「それぞれの好きな色のね」
「そうした服を着るわね」
「あんた達の色って決まってるわね」
つぎはぎ娘は五人に指摘しました。
「そういえば」
「僕は赤だね」
まずはジョージが答えました。
「元気な色だね」
「そして僕は青」
次は神宝が答えました。
「知的な色だね」
「僕が黄色なのはね」
カルロスが言うには。
「僕自身が明るいからこの色にしているんだ」
「私のピンクは」
恵梨香がこの色である理由はといいますと。
「桜が好きで桜がこの色だから」
「私は黒だけれど」
最後はナターシャが言います。
「シックな感じが好きだから」
「それでそれぞれの色ね、面白いわね」
つぎはぎ娘は五人の言葉を聞いて言いました。
「オズの国みたいよ」
「うん、僕もそう思うよ」
クロアシイタチも応えます。
「それぞれの色でオズの国みたいだよ」
「実は外の世界じゃ特撮みたいって言われるんだ」
「あの派手なドラマだね」
「うん、僕達がそれぞれの色でいつも一緒にいるからね」
「言われてみればそうだね」
クロアシイタチも否定しませんでした。
「君達がそれぞれの色でいると」
「オズの国みたいで」
「特撮みたいだよ」
こちらの赴きもあるというのです。
「実際にね」
「そうだよね」
「五人共最初からそれぞれの色だったわね」
ドロシーがここで言ってきました。
「そうだったわね」
「はい、その頃からそれぞれの色が好きで」
「服もそうしていました」
「それで今もです」
「それぞれの色の服を着ています」
「そうして楽しんでいます」
「そうね、それで式典の時も」
五人も名誉市民として参加することがあるのです。
「それぞれの色にしているわね」
「礼装になっていても」
ジョージが応えます。
「やっぱりです」
「貴方達それぞれの色の礼装ね」
「そうしています」
「そうね、そういえば私は」
ここでドロシ―は自分のことも言いました。
「礼装の時は白が多いわね」
「うん、ドロシーは白のドレスだね」
トトも言います。
「多いのは」
「その服を着ることが多いわね」
「それぞれの国の色のドレスを着ることもあるけれど」
「一番多いのはね」
「白だね」
「その白も輝いていて」
そうなっていてというのです。
「銀色と言ってもね」
「いいね」
トトもこう応えます。
「その色は」
「そうよね、そして私が銀だとオズマはね」
「金色だね」
「逆の場合もあるけれど」
「そうなっていることが多いね」
「どうもね」
「金と銀で対比されていて」
つぎはぎ娘も言います。
「いいのよね」
「同じ色の場合もあれば」
「そうして対象的になる場合もあるわね」
「その時でね」
「これもお洒落かしら」
「そうだと思うわ」
「そう、それもまたお洒落」
コヨーテもそうだと言います。
「ドロシー王女はオズの国でかなりのお洒落かと」
「そうなのね」
「僕はそう思うよ」
「そしてオズマ姫もね」
クロアシイタチは彼女の名前を出しました。
「そうだよ」
「オズマはわかるけれど」
「お洒落は自覚していない場合もあるんだ」
コヨーテは今度はこうも言いました。
「そしてドロシー王女は」
「自覚していないお洒落なの」
「僕はそう思うよ」
「そうだったのね」
「そう、それで王女達は何処に行くのかな」
「お菓子の国を目指しているの」
そこをとです、ドロシーは答えた。
「実は」
「そうなんだ、では我々はこのまま草原の散歩を楽しむけれど」
「私達はそちらに向かうから」
「これでお別れだね」
「ええ、じゃあまた会う時までね」
「さよならだね」
コヨーテから言ってきました。
「暫しの間」
「じゃあね」
クロアシイタチもお別れの言葉を言ってです、そうしてでした。
一行はお洒落な生きもの達を手を振り合って別れました、そのうえで旅を続けるのでした。