『新オズのつぎはぎ娘』
第五幕 黄色い大平原
一行は旅を続けます、その間ずっと黄色い煉瓦の道を進んでいますが。
その道を進みつつです、ジョージは道の左右を見て言いました。
「ウィンキーの国だけあって」
「草原もでしょ」
「うん、黄色いね」
草達がとです、つぎはぎ娘に答えました。
「外の世界じゃ草は緑だけれど」
「エメラルドの都の色ね」
「あそこだと緑でもね」
この色はこの色でもというのです。
「物凄く鮮やかな緑だよね」
「そう、奇麗な緑よね」
「眩いばかりのね」
「そうした緑ね」
「そしてウィンキーの草原の黄色も」
「鮮やかな黄色ね」
「奇麗なね」
そうした黄色だというのです。
「だから見ていてね」
「惚れ惚れするわね」
「うん」
ジョージはつぎはぎ娘に微笑んで答えました。
「本当に」
「そうよね」
「面白い場所だね」
「そうでしょ、それにね」
「それに?」
「色々な生きものもいるでしょ」
「うん、ああしてね」
見ればです、草原にはです。
バイソンの群れがあちこちに見えます、そしてです。
プレーリードッグ達もいます、ジョージは彼等を見ても言いました。
「ここにもいるんだね」
「バイソンやプレーリードッグは森にもいたね」
かかしが言ってきました。
「そうだったね」
「はい、そしてですね」
「この大草原にもいるんだ」
「そうですね」
「むしろ彼等はね」
「草原が主な棲み処ですね」
「そうなんだ」
かかしはジョージにこう答えました。
「むしろね」
「森にいるよりもですね」
「あそこの彼等も森でなくね」
「すぐ傍の草原にですね」
「いたしね」
「そうでしたね」
「いや、ここに来たらね」
樵も笑顔で言います。
「彼等を見ないとね」
「そうだよね」
臆病ライオンが樵の言葉に応えます。
「来た気がしないよね」
「ここにね」
「本当にそうだよね」
「だから今僕はね」
「とても幸せだね」
「そんな気持ちだよ」
実際にというのです。
「本当に」
「そうだよね」
「バイソン君やプレーリードッグ君達を見てね」
「それが出来てね」
「そういえば」
ここでジャックが言いました。
「プレーリードッグ君のお家は独特だね」
「うん、彼等は穴を掘ってね」
腹ペコタイガーがジャックに答えます。
「そうしてだよ」
「その中に群れで住んでいるね」
「プレーリードッグの街とか村とか言っていいね」
「そうした棲み処だね」
「そうなんだ」
こうジャックにお話します。
「彼等の棲むところはね」
「そうだよね」
「面白い棲み処だよね」
「本当にね」
「その中には入れないの?」
つぎはぎ娘はここでこう言いました。
「プレーリードッグのお家には」
「あっ、彼等の大きさでないとね」
それはとです、トトが答えました。
「ちょっとね」
「出来ないのね」
「うん、僕の大きさならいいけれど」
それでもというのです。
「他の皆の大きさだとね」
「入られないのね」
「彼等は小さいじゃない」
プレーリードッグ達はというのです。
「それでだよ」
「それは出来ないのね」
「そうなんだ」
「ううん、それは残念ね」
「そうだね」
木挽きの馬も言ってきました。
「それはね」
「中に入りたいでしょ」
「僕もね」
こうつぎはぎ娘に答えます。
「そうした場所があるなら」
「中にお邪魔したいでしょ」
「うん、面白い場所だっていうなら」
それならというのです。
「本当にね」
「そうでしょ」
「君は特にそうだよね」
「勿論よ、あたしは興味を持ったらね」
その時はというのです。
「そこに行きたくて仕方がなくなって」
「行くね」
「そうした人間だからね」
それでというのです。
「行きたくなるけれど」
「それでだね」
「今回もね」
どうしてもというのです。
「行きたいわ」
「どうしたら行けるかな」
「行けるわよ」
ここで、です。ドロシーが言ってきました。
「プレーリードッグの街の中にもね」
「そうなの」
「身体が小さくなるスプレー持ってるから」
「そんなスプレーがあるの」
「ええ、魔法使いさんが作ってくれたね」
「魔法の道具ね」
「それがあるから」
だからだというのです。
「それでね」
「中に入られるの」
「そう出来るわよ、私いつも冒険の時は何かあった時に備えて魔法の道具を結構持ってきているけれど」
「そうしたスプレーもなの」
「持ってるわ、あと身体を大きく出来るスプレーもね」
こちらもというのです。
「持っているわ」
「そうなのね」
「他にも色々な魔法の道具をね」
「何ていうか」
そのお話を聞いてです、ナターシャは言いました。
「オズの国の魔法道具って日本のアニメの科学の道具みたいね」
「あれね、猫型ロボットの」
その日本人の恵梨香が応えました。
「あれに似てるっていうのね」
「そういえばそうしたところあるね」
カルロスも否定しませんでした。
「オズの国の魔法の道具って」
「魔法使いさんだけじゃなくてオズマ姫も作ってくれてるけれど」
神宝も言ってきました。
「そうした道具確かに多いね」
「オズの国は魔法も科学も一緒にあるでしょ」
ドロシーが子供達に言ってきました。
「だからよ」
「それで、ですか」
「そうした魔法の道具も多いですか」
「未来の科学の道具みたいなものも」
「魔法も科学も一緒にある国だから」
「それでなのね」
「そう、だからね」
ドロシーはさらに言いました。
「そうした魔法の道具もあって科学の道具もね」
「あるんですね」
「そちらの道具も」
「そうなんですね」
「魔法だけじゃなくて」
「そちらも」
「そうよ、携帯電話やスマートフォンもだし」
こうしたものが科学の道具だというのです。
「あと今お空の上もお水の上も歩ける靴を持ってるけれど」
「その靴は科学の靴ですか」
「そうなの」
こうジョージにお話します。
「そちらはね」
「そうした靴もあるんですね」
「そう、そしてね」
ドロシーはさらにお話しました。
「錬金術もあるから」
「そちらもですか」
「最近は仙術や陰陽道もあるわ」
「アジアのものもですね」
「仙人さんや陰陽師の人もおられるし」
「オズの国はアメリカが反映されて」
「アメリカに中国系の人や日系の人がいて」
そうした国になっていてろいうのです。
「その人達の文化も入ってきていてね」
「それで、ですか」
「仙人さんや陰陽師の人もいてくれて」
そしてというのです。
「そちらの術も入ってきてね」
「使われているんですね」
「そうなの」
「そうですか」
「それがオズの国だから」
それでというのです。
「色々な技術が使われているのよ」
「魔法も科学も他の技術も」
「そうなの」
「それで身体を小さくするスプレーは」
「魔法の道具よ」
こちらのものだというのです。
「そしてそれを使ったらね」
「身体が小さくなって」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「プレーリードッグさん達の街に入られるわよ」
「それじゃあ」
「皆行きたいかしら」
プレーリードッグの巣にとです、ドロシーは皆に尋ねました。
「どうかしら」
「是非」
反対する人はいませんでした、皆賛成でした。
そしてです、そのうえで。
皆で一旦黄色い煉瓦の道を出てでした、周りが少し盛り上がってそこからお顔を出しているプレーリードッグにドロシーが尋ねました。
「あの、いいかしら」
「あっ、ドロシー王女。それに」
プレーリードッグはそのドロシーを見て言いました。
「樵さんもかかしさんも」
「ええ、実はお願いがあるけれど」
「何かな」
「貴方達のお家の中をお邪魔していいかしら」
ドロシーはプレーリードッグに尋ねました、皆でお話していたことを。
「そうしていいかしら」
「えっ、ドロシー王女達がなんだ」
プレーリードッグはドロシーの言葉に驚きの声をあげました。
「嘘じゃないよね」
「オズの国は皆素直でしょ」
「うん、昔のラゲドーさん以外はね」
「そうでしょ、だからね」
それでというのです。
「私はね」
「嘘じゃなくてだね」
「本当にね」
「僕達の街に入りたいんだ」
「そうなの」
実際にというのです。
「これからね」
「そうなんだね」
「それでどうかしら」
プレーリードッグにあらためて尋ねます。
「いいかしら」
「光栄だよ」
これがプレーリードッグの返事でした。
「こう答えない人はオズの国にいないよ」
「それじゃあ」
「うん、是非ね」
これからというのです。
「中に入ってね」
「そうさせてもらうわね」
「ただね」
ここでプレーリードッグはドロシーに言いました。
「皆大きいから」
「貴方達の巣にはよね」
「入られないんじゃないかな」
「そこは安心して」
ドロシーはにこりと笑って答えました、そうして。
青い缶のスプレーを出してでした、そのうえで。
皆にスプレーをかけました、するとです。
皆みるみるうちに小さくなってプレーリードッグと同じ大きさになりました、ジョージ達五人の子供達はこのことに驚きました。
「本当に小さくなったね」
「そうだね」
「この大きさなら巣の中に入られるね」
「そうよね」
「これから」
「ええ、このスプレーは使う人が思う位に小さくなれるの」
ドロシーは五人に答えました。
「それでなのよ」
「こうしてですか」
「僕達も小さくなったんですね」
「ドロシーさんが思われる大きさに」
「そうなったんですね」
「今こうして」
「そうよ、それじゃあね」
ドロシーはあらためて言いました。
「これからね」
「プレーリードッグさん達の巣にですね」
「今から入りますね」
「街と言われるその中に」
「そうしてですね」
「これから楽しむんですね」
「そうしましょう」
こう言ってでした、一行は。
見張りをしていたプレーリードッグに案内されて巣の中に入りました、そこは穴になっていてです。
道が複雑に入り組んでいて沢山のお部屋があります、そしてです。
沢山のプレーリードッグ達がいて出入り口も何個かあります、それでつぎはぎ娘は中を進みながら言いました。
「思っていたよりずっと広いわ」
「まさに街だね」
「本当にね」
こう案内役のプレーリードッグ、ボブという名前の彼に言いました。
「沢山のプレーリードッグもいるし」
「そうだよね」
「何百匹、いえ千匹はいるかしら」
「この巣はそれだけいるよ」
「本当に多いわね」
「それで皆で仲良く暮らしているんだ」
そうもしているというのです。
「それで食べるものはね」
「草だね」
ジョージが言ってきました。
「そうだね」
「うん、周りの草を食べているよ」
ボブはジョージに答えました。
「実際にね」
「そうだよね」
「草原の芝刈りも兼ねてね」
そのうえでというのです。
「草原の草を食べているんだ」
「芝刈りでもあるんだ」
「バイソンさん達と一緒にね」
「草原で一緒に暮らしている」
「仲良くね、兎さん達もいるしね」
「そうだね、僕アメリカ人だけれど」
ジョージはここで言いました。
「シカゴにいるから」
「シカゴは湖と川の港町だから」
ドロシーがそのシカゴのお話をしました。
「こうした大平原とはね」
「あまり縁がなくて」
「それでよね」
「見たことはありますが」
それでもというのです。
「詳しく、長い間いたことはないです」
「私はカンサスでしょ」
「ずっと大平原の中で住んでおられましたね」
「ええ、おじさんとおばさんとトトとね」
そのトトを見ます、見ればトトも小さくなってそうしてドロシーの足元を皆と一緒にとことこ歩いています。
「暮らしていたわ」
「そうでしたね」
「だからこうした場所のこともね」
「ご存知ですね」
「プレーリードッグもね」
「見てきたんですね」
「そうだったの、ただね」
さらにお話するのでした。
「巣に入ったことはね」
「はじめてでしたか」
「オズの国に来てもね」
「そうだったんですね」
「何時かはと思っていたけれど」
それでもというのです。
「中に入ってね」
「それで、ですね」
「今中をこうして案内してもらって観て」
そうしていてというのです。
「凄く楽しいわ」
「そうなんですね」
「本当にね、これはね」
「凄くいいですね」
「ええ、ではね」
それならとです、また言ってでした。
ドロシーも巣の中を巡りました。その途中沢山のプレーリードッグ達とも会いました。そして中にはです。
兎達も多くいました、その兎達を見てです。
つぎはぎ娘はボブにどうしてかと尋ねました。
「どうして兎もいるの?」
「あっ、この巣は兎さん達の巣ともつながっていてね」
「それでなの」
「実質一緒に暮らしているんだ」
「そうなのね」
「兎さん達も僕達と同じだけいるよ」
ボブは兎達の数のお話もしました。
「彼等もね」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
そうしてというのです。
「皆で仲良くね」
「暮らしているのね」
「そうなんだ」
「そうなのね」
「種類は違うけれど」
生きもののそれはというのです。
「それでもね」
「仲良くなのね」
「そうしているよ」
「オズの国ってことね」
「そう、同じお部屋で寝ることもあるし」
ボブはさらにお話しました。
「一緒にお外で食べることもね」
「あるのね」
「そうなんだ」
「本当に仲いいのね」
「うん、同じ草食動物で穴の中で暮らしていて」
「同じ場所に住んでいるから」
「だからね」
それでというのです。
「僕達は仲がいいんだ」
「そうなのね」
「そうだよ、だから彼等とも仲良くしてね」
「あたしは誰とでも仲良くするわよ」
つぎはぎ娘はボブに答えました。
「だって喧嘩するとかあたし知らないから」
「そうなんだね」
「そうよ、ただあんた達はダンスは好き?」
「踊ることは踊るよ」
ボブはつぎはぎ娘の今の問いにも答えました。
「歌も聴くし」
「そうなのね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「君みたいな踊りは出来ないよ」
「ぴょんぴょん跳ねたりぐにゃぐにゃ曲がったり」
「それは君だから出来るから」
つぎはぎ娘の身体だからだというのです。
「それでね」
「あたしみたいな踊りはなのね」
「ちょっと出来ないよ」
「兎はぴょんぴょん跳ねるけれど」
「跳ね方が違うから」
ぴょんぴょん跳ねることは同じでもというのです。
「君はね」
「また特別なのね」
「そうだよ、ただ君のダンスを見て」
そうしてというのです。
「僕達が踊れる様にしてね」
「そのうえで」
「そう、アレンジして」
そしてというのです。
「踊ることは出来るし実際にね」
「踊っているのね」
「そうしているよ」
「うん、つぎはぎ娘の踊るままに踊れなくてもね」
ジョージも言ってきます。
「アレンジすることはね」
「出来るね」
「そのことはね」
「だから僕達もね」
「アレンジしてだね」
「踊っているよ」
「そうなんだね」
ジョージも納得しました、そうしてです。
皆はボブに巣の中をじっくり案内してもらってから出口の一つにまで案内してもらいました、そこでプレーリードッグと兎の皆に見送ってもらって手を振り合って別れました。その後で、でした。
ドロシーは皆に今度はこう言いました。
「バイソンのところに行きましょう」
「この草原にも一杯いるしね」
「ええ、草原にいるなら」
それならとです、ドロシーはトトに応えました。
「やっぱりね」
「まずはだね」
「バイソンと会って」
そうしてというのです。
「お話したいわよね」
「そうだね、バイソンを見てるとね」
トトも笑顔で応えます。
「自然とそうなるよね」
「そうでしょ」
「不思議な生きものだね、草原には何時でも何処でも沢山いるけれど」
「見ているとね」
「不思議と心が安らかになるからね」
それでというのです。
「勇気も出る感じがして」
「見たくなるんだよね」
「ええ、草原に入とね」
その時はというのです。
「だからね」
「僕達もね」
「行きましょう」
こうしたお話をしてでした、そのうえで。
皆でバイソン達のところに行きました、するとダークブラウンの毛のとても大きなバイソン達が黄色い草達を食べています。
そこに行ってです、木挽きの馬が彼等に尋ねました。
「ちょっといいかな」
「何かな」
バイソンの中では小さい子供と思われる雄のバイソンが応えました。
「貴方は木挽きの馬さんだよね」
「そうだよ」
「そしてドロシー王女にかかしさんや樵さん達も」
「僕達は今丁度冒険をしていてね」
それでというのです。
「ここに来たんだ」
「いつもの冒険だね」
「いつもって言うんだ」
「ドロシー王女っていうと冒険だからね」
バイソンは馬に笑顔で言いました。
「だからそう言うんだ」
「成程ね」
「しかもかかしさんや樵さんまで一緒だから」
バイソンは彼等も見て言います。
「余計にね」
「そのこともあって」
「いつものって思ったんだ」
「ははは、確かに僕達は一緒に冒険することが多いからね」
かかしはバイソンの言葉に笑って応えました。
「この顔触れで」
「ドロシーとね」
樵はかかしに続きました。
「僕達二人にね」
「臆病ライオン君でね」
「この四人での旅は多いね」
臆病ライオンは笑顔で言いました。
「そういえば」
「そうだね、思えば」
「この顔触れが揃うとね」
「いつもと言われるのも当然かな」
「実際に多いからね」
臆病ライオンは樵にお話します、そしてかかりがまた言いました。
「そしていつもの旅をね」
「楽しんでいるね」
「現在進行形でね」
「ただ、僕ジャックさんを見たのは暫くぶりだよ」
バイソンはジャックについてはこう言いました。
「ちょっとね」
「あっ、そうだったかな」
「うん、最近こっちの方には来ていなかったね」
「そういえばそうだね」
「だからね」
それでというのです。
「暫くぶりに会えて嬉しいよ」
「そう言ってくれて僕も嬉しいよ」
ジャックの方もです。
「本当にね」
「そうなんだ」
「僕とはこの前会ったね」
腹ペコタイガーは楽しそうに言いました。
「そうだね」
「貴方とはね」
「そうだったね」
「今もお腹空いてるのかな」
「僕はいつもお腹がペコペコだよ」
これが腹ペコタイガーの返事でした。
「だからね」
「それでなんだね」
「今もだよ」
「そうなんだね」
「だからご飯の時間が待ち遠しいよ」
「それは少し待ってね」
ドロシーは腹ペコタイガーにこう返しました。
「時間はまだだから」
「それじゃあね」
「それとね」
ドロシーはさらに言いました。
「今日のお昼はステーキにするわ」
「ステーキなんだ」
「急にそれを食べたくなったから」
それでというのです。
「ステーキを出すわよ」
「いいね、僕ステーキ大好きだしね」
「それじゃあね」
「あの、どうしてステーキを食べたくなったんですか?」
ジョージはドロシーにその理由を尋ねました。
「一体」
「ええ、最近食べていないと思って」
「それで、ですか」
「間違ってもバイソンを見てじゃないわよ」
ドロシーはこのことは断りました。
「そのことは安心してね」
「流石にそれはよくないですね」
「ええ、そこは違うから」
「それじゃあ」
「そういえばステーキは」
ここでナターシャも言いました。
「最近食べていないわ」
「そうよね、オズの国に来てから」
恵梨香はナターシャの言葉に頷きました。
「最近は食べてないわね」
「オズの国に来たら結構ステーキ食べるけれど」
カルロスもそういえばとなっています。
「最近ないね」
「そう思うと食べたくなったね」
神宝は自分の気持ちを素直に言いました。
「不意に」
「あの、そのステーキってね」
どうかというお顔で、です。バイソンは言ってきました。
「僕達じゃないよね」
「ビーフステーキでもね」
ドロシーはバイソンに答えました。
「貴方達じゃないわよ」
「バイソンじゃないんだね」
「同じ牛の仲間でも」
それでもというのです。
「牛とバイソンは違うから」
「それでなんだね」
「そこは安心してね」
「それじゃあね」
「それに今回はビーフステーキ以外も出すわよ」
ドロシーはこうも言いました。
「ポークもチキンもラムもね」
「羊もですか」
「ええ、マトンもね」
こちらのお肉もというのです。
「出すわよ」
「いいですね」
「何かマトンの匂いにも慣れました」
ここで恵梨香が言ってきました。
「最近は」
「そういえばあんたマトンの匂い最初苦手だったわね」
つぎはぎ娘が恵梨香に聞きました。
「そういえば」
「ええ、日本ではあまり羊を食べないから」
それでというのです。
「あまりね」
「マトンの匂いにもなのね」
「慣れていなかったの」
「そうなの、けれどね」
「今はなのね」
「慣れて普通に食べられるわ」
マトンもというのです。
「そうなったわ」
「それは何よりね」
「だからマトンのステーキもあるなら」
それならというのです。
「食べたいわ」
「そうなのね」
「そちらも出すから」
ドロシーは恵梨香ににこりと笑って答えました。
「楽しんでね」
「わかりました」
「そういえば僕達は別にね」
ここでまた言ったバイソンでした。
「ご飯の時間決まってないよ」
「いつも食べてるわね、そういえば」
「うん、草原の生きものはね」
バイソンはつぎはぎ娘の言葉に応えました。
「食べられる時間にね」
「いつも食べてるわね」
「それで僕達もね」
「いつも食べてるのね」
「そうなんだ、いつも沢山食べないと」
「満足しないのね」
「元気が出ないんだ」
そうだというのです。
「これがね」
「そうなのね」
「だから今も食べているんだ」
見れば周りのバイソン達は皆草を食べています、その様子はのどかで見ていて微笑ましいまでです。
「こうしてね」
「沢山食べて」
「そう、そして」
そのうえでというのです。
「僕はいつもお腹一杯だよ」
「それで元気があるのね」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「僕達はここでのどかに暮らしているから」
それっでというのです。
「全力を出すことはね」
「ないのね」
「そう、それでね」
そのうえでというのです。
「全速で走ったり突進とか」
「そうしたことはしないの」
「全くね」
「そこはオズの国ね」
「ここでずっとのどかにご飯を食べて皆と遊んで寝て」
そうして暮らしてというのです。
「不自由していないよ」
「それは何よりね、ただね」
こうも言うつぎはぎ娘でした。
「あんた達を見ていると背中に乗りたくなったわ」
「不意にだね」
「そう、あたしは気まぐれでしょ」
自分から言います。
「それでね」
「僕達の背中になんだ」
「そこに乗ってね」
そうしてというのです。
「楽しみたいけれど」
「それならそうしていいよ」
バイソンはつぎはぎ娘の問いにあっさりと答えました。
「それならね」
「そうなのね」
「ええ、じゃあね」
「これからだね」
「乗ってみるわ、ただね」
「ただ?」
「あんたは小さいわね」
こうそのバイソンに言いました。
「あたしが乗るには」
「重さはともかくだね」
「ちょっとね」
「そうだね、じゃあお父さんかお母さんの背中に乗る?」
「そうさせてもらうわ」
「君達なら丁度いいかな」
バイソンはジョージ達を見て言いました。
「僕に乗るには」
「いいの?乗っても」
「私達がそうしても」
「貴方から言ってきたけれど」
「そうしてもいいんだ」
「僕達が乗っても」
「うん、いいよ」
バイソンの返事は何でもないというものでした。
「別にね」
「君がそう言うなら」
それならとです、ジョージも応えました。
「それならね」
「それじゃあね」
「それで誰が乗るのかな、いや」
ここでバイソンはこう言いました。
「皆順番で乗る?」
「僕達全員がだね」
「そうする?」
こう提案するのでした。
「これから」
「そうしていいんだ」
「うん、順番でね」
「それじゃあ」
「君達が順番で一人ずつね」
そうしてというのです。
「乗ればいいよ」
「それじゃあ」
「そうしてね」
こう言ってでした、そのうえで。
五人はジャンケンをしてそうして順番にそのまだ若いバイソンの背中に乗りました。つぎはぎ娘も他の皆もそれぞれバイソンの背中に乗っています。
その中で、です。ドロシーは雌のバイソンの背に乗って言いました。
「こうしてバイソンに乗ると」
「どうかしら」
「ええ、お馬さんに乗る時とはね」
「また違ってなのね」
「面白いわ」
「そうでしょ、それにオズの国では」
こうも言う雌バイソンでした。
「バイソンの背中に乗るとね」
「幸運が訪れるっていうわね」
「ええ、そして乗せたバイソンもね」
「幸運が訪れるわね」
「そう言われているから」
だからだというのです。
「私達もね」
「背中に乗ってもらいたいのね」
「そうなの」
自分達にしてもというのです。
「そこはね」
「お互いってことね」
「お互いが幸せになればこんないいことはないでしょ」
「ええ、それはね」
実際にとです、ドロシーも答えます。
「そのことはね」
「オズの国は幸せに満ちているけれど」
「今以上に幸せになればね」
「尚更いいわね」
「幸せに限りはない」
「何処までも幸せになれるわね」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「私達もなのね」
「お互い幸せになる為に」
「私が乗ってね」
「私が乗せるの」
まさにお互いにというのです。
「そうしたのよ」
「そういうことね」
「ここで踊っていいかしら」
つぎはぎ娘はこんなことを言いました、見ればトトはドロシーが抱いていて臆病ライオンと腹ペコタイガー、木挽きの馬以外の皆がバイソン達に乗っています。
「そうしても」
「ここでも踊るんだ」
「駄目かしら」
「いや、踊れるの?」
つぎはぎ娘を乗せているバイソンが彼女に聞きました。
「僕に乗って」
「あたしは何時でも何処でも踊れるから」
それでというのです。
「出来るわよ」
「そうなの」
「そう、そしてね」
「そして?」
「このままね」
まさにというのです。
「踊っていいかしら」
「いいけれど流石だね」
「流石なの」
「うん、何処でも踊れるんだね」
「何時でもね」
「オズの国一のダンサーだけあるよ」
こうつぎはぎ娘に言うのでした。
「じゃあ今からだね」
「踊るわね、皆あたしの踊り見てね」
こう言ってです、つぎはぎ娘はバイソンの背中に乗っている喜びを歌ってその歌に合わせてでした。
踊ります、バイソンの背中に立ってぴょんぴょんと飛び跳ねてくるくる回って踊ります、その踊りの中で。
つぎはぎ娘はバイソンの背中の上を飛び跳ねても落ちることはありません、そうして踊り終わってです。
周りに一礼をしてからこう言いました。
「どうかしら」
「噂には聞いていたけれど」
それでもとです、若いバイソンが言ってきました。その背中には今はカルロスがいます。
「凄いダンスだったね」
「そうでしょ」
「身体は柔らかくて」
「跳ねるのもでしょ」
「うん、そして音感もね」
これもというのです。
「抜群でね」
「いいのね」
「うん、凄かったよ」
「あたしも踊れてよかったわ」
「踊れてだね」
「そう、本当にね」
つぎはぎ娘の言葉は満足しているものです。
「楽しかったわ」
「踊りが好きだから」
「そう、踊れてね」
それでというのです。
「楽しかったからね」
「それは何よりだね」
「ここに来てよかったわ」
「今の踊りを踊れて」
「歌も歌えてね」
こちらも出来てというのです。
「よかったわ」
「そう言ってくれて何よりよ」
ドロシーもこう言います。
「貴女がそう言ってくれるなら」
「あたしは早速幸せが訪れたわね」
「踊れて歌って」
「そうよ、そのことがね」
「そう思うのね」
「違うかしら」
「貴女が踊って歌うのはいつもでしょ」
こうつぎはぎ娘に言うのでした。
「だからね」
「このことはなの」
「だから幸せとはね」
「また違うのね」
「そう思うわ」
「じゃああたしの幸せは」
「また来ると思うわ」
ドロシーはにこりと笑ってお話しました。
「だからその時までね」
「楽しみにしてね」
「待っていればいいのね」
「そう思うわ」
「じゃあ実際にね」
「楽しみになのね」
「待っているわ」
こうお話しました。
「じっくりとね」
「そうしてね」
「いや、大平原も楽しいわね」
またぴょんぴょんと飛び跳ねてです、つぎはぎ娘は言いました。
「プレーリードッグも兎もバイソンもいて」
「いい自然よね」
「ええ、ただどの生きものもどれだけいるかわからないけれど」
「ここにはバイソンもプレーリードッグも何十万匹もいるよ」
かかしが答えました。
「兎もね」
「それだけいるの」
「うん、この大平原だけでね」
「そしてね」
今度は樵が言います。
「ウィンキー全体では何百万かな」
「多いわね」
「バイソンもプレーリードッグも多いから」
それでというのです。
「オズの国にね、勿論他の生きもの達もね」
「まあこの国はね」
ジャックも言います。
「自然も凄く豊かだからね」
「生きものも多いわね」
「本当に」
「そうよね」
「だからここも何十万匹のバイソンやプレーリードッグがいるんだ」
また言うジャックでした。
「凄いものだね」
「もう数えられないわね」
つぎはぎ娘は陽気に言いました。
「それだけ多いと」
「簡単にはね」
「けれど数えたオズのお役人の人達は凄いわ」
「全くだね」
「その人達に素直に尊敬に言葉を贈るわ」
こう言って今度はでした。
つぎはぎ娘はオズの国のお役人つまり公務員の人達を讃える歌を歌って踊りました、そうして大草原で楽しい時間を過ごしました。