『新オズのつぎはぎ娘』




                第四幕  困った草木達

 ドロシーは旅を続ける中で皆に言いました。
「ここから少し問題よ」
「どうしたの?」
「少し道を進んだらね」
 つぎはぎ娘に答えます。
「眠り草が密集しているところにあたるのよ」
「前にここに来た時はなかったよ」
 臆病ライオンがドロシーに言います。
「急に出たんだ」
「そう、最近ね」
 ドロシーは臆病ライオンに答えました。
「それでね」
「その眠り草にだね」
「注意しないとね」
 そうしないと、というのです。
「その場で寝ることになってしますわ」
「それは問題だね、寝てしまったらね」
 どうなるかとです、腹ペコタイガーも言います。
「そこからずっと進めないからね」
「ただの冒険なら一気に駆け抜けるけれど」 
 眠ってしまう前にです。
「それじゃあ後に行く人達が困るから」
「ここで草を刈ってね」
 樵が言ってきました。
「なくしておかないとね」
「ええ、後に来る人達の為にね」
「そうしておくべきよ」
「そう、僕達はオズの国の政治を行う立場にあるからね」
 かかしはその立場から言うのでした。
「ここは何とかしないといけないよ」
「後に来る人達の為に眠り草を何とかする」
「それも政治だね」
「ええ、それじゃあ」
「ここは草を刈って根を引っこ抜いてね」
「草をなくすべきね」
「そうしよう」 
 かかしはドロシーに言いました。
「ここはね」
「それじゃあね」
「じゃあね」
 ここで言ったのはジャックでした。
「僕達で引っこ抜いていくよ」
「貴方達でなの」
「そう、ドロシー達眠ってしまうけれど」
「それでもね」
「僕達は寝ない身体だから」
 このことから言うのです。
「眠り草も効かないから」
「それでよね」
「そう、僕達で何とかするよ」
「僕は草を噛んでから引っこ抜くよ」
 身体全体で引っ張ってとです、木挽きの馬もドロシーに言います。
「だからね」
「貴方達がそうしてくれるのね」
「是非ね」
「これだけ寝ないで済む人達が揃ってるから」
 つぎはぎ娘はくるくると踊りつつ言いました。
「すぐに終わるわよ」
「それじゃあ」
「ええ、そこに着いた時はね」
「僕達に任せてね」
 またジャックが言ってきました、そうしてです。
 一行は旅を続けてでした、それから。
 眠り草が見えてきたその時点で樵やかかし達がすっと前に出てです、眠り草、かなり伸びていて蔦みたいになっているそれ等をです。
 片っ端から全力で引っこ抜いていってでした、最後に。
 樵が他の皆を遠くにやってから油とライターを出してでした、集めた草達に火を点けて燃やしてしまいました。
 そして草達が燃えた後でドロシーに言いました。
「これで大丈夫だよ」
「眠り草はなくなったわね」
「無事に全部引っこ抜いて燃やしたよ」
「だからなのね」
「うん、もうね」
「安心ね」
「そうだよ」
 こうドロシーにお話します。
「これでね」
「さて、よく見たらね」 
 かかしが言ってきました。
「周りに色々な生きもの達が寝ているね」
「眠り草に近寄ってね」
「それで寝てしまったね」
「そうよね」
「けれどね」
 それでもとです、かかしはそのムースやバイソンや兎達を見て言いました。
「もうこれでね」
「皆起きるわね」
「そうなるよ」
「眠り草がなくなったから」
「これで大丈夫だよ」
「しかし眠り草も急に生えてね」
 馬が困ったお顔で言います。
「それで生い茂るからね」
「大変よね、その時は」
「見付けたらすぐに伐採してね」
「燃やさないとね」
「周りの生きものや人が寝てしまうから」
「眠らなくて済む人達に動いてもらうか」
「防毒マスクだね」
 ジャックが言ってきました。
「あれを着けてね」
「やるかよね」
「それかオズマ達の魔法でね」
「一気に焼き払うかだけれど」
「火炎放射器もあるしね」
「ええ、けれどね」
「僕達がいるからね、今回は」
 それでというのです。
「何とかなったね」
「ええ、皆有り難うね」
「お礼を言われることじゃないわ」
 つぎはぎ娘はドロシ―に軽い調子で言いました。
「別にね」
「そうなの?」
「だってここで草を何とかしないとね」
「駄目だから」
「こうした時に何とかするのがオズの国の人でしょ」
 こう言うのでした。
「だからね」
「お礼はいいのね」
「そうよ」
 こうドロシーに言うのでした。
「別にね」
「そうなのね」
「あたしはお礼は人に求めないし」
「貴女はそうね」
「そう、それよりもね」
「踊って歌う」
「あたしがそう出来たらいいから」
 それでというのです。
「いいのよ」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
 さらに言うつぎはぎ娘でした。
「これからだけれど」
「これから?」
「先に進むわね」
「ええ、そうするけれど」
「ちょっと寄り道するのもいいんじゃないかしら」
 こうドロシーに言うのでした。
「今は」
「そうかしら」
「だって今色々な生きものがいるから」
 それでというのです。
「今から皆起きてくるし」
「その生きもの達とお話しようっていうのね」
「そうよ」
 その通りだというのです。
「いいでしょ」
「そうね、言われてみれば」
「それじゃあね」
「いいね」
 ドロシーが頷いてトトもでした。
「それじゃあね」
「皆とお話しましょう」
「バイソンがいてね」
 ジョージは起きだした生きもの達を見て言いました。
「プレーリードッグもいるね」
「ムースもいるよ」
 神宝はその鹿を見てさらに言いました。
「それにクズリも」
「オオヤマネコだね」
 カルロスはその生きものを見ました。
「あそこにがビーバーもいて」
「あれは確かアメリカクロクマね」
 恵梨香は熊を見付けました。
「アメリカアナグマもいるし」
「あら、ピューマね」
 ナターシャも言います。
「そしてあそこにはオポッサムがいるわ」
「全部アメリカの生きものね」
 ドロシーも彼等を見て言います。
「こうして見たらアメリカも色々な生きものがいるわね」
「広いだけあって」
 ジョージが応えます。
「色々な生きものがいますね」
「本当にね」
「アリゲーターやワニガメもいますし」 
 見れば爬虫類達もいます。
「アメリカは自然も豊かですね」
「それでオズの国にもいて」
「会えますね」
「ええ、そうよね」
「嬉しいことに、ただ」
 ここで、でした。ジョージは。
 ある生きもの、大きなお猿さんというかゴリラをさらに大きくした様なその生きものを見てそのうえで言いました。
「あの生きものは」
「ビッグフットよ」
「外の世界ではまだ実在がはっきりしていないですが」
「オズの国ではもうはっきりとよ」
「いることがですね」
「わかっていてね」
 それでというのです。
「会えるのよ」
「そうなんですね」
「オズの国には外の世界にはもういない生きものもまだ実在がはっきりしていない生きものもいるから」
「そうした意味でもお伽の国ですね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「オズの国はね」
「そうしたところも素敵な国ですね」
「そうでしょ」
「あっ、ドロシー王女」
 そのビッグフットが起き上がってドロシーを見て言ってきました。
「それにかかしさんや樵さん達もいるね」
「しかも臆病ライオンさんもいるよ」 
 ピューマは彼を見て言いました。
「そして腹ペコタイガーさんも」
「うん、皆いるね」
 アリゲーターも彼等を見ています。
「ここに」
「あっ、眠り草ないね」 
 プレーリードッグはこのことに気付きました。
「それじゃあ」
「そうよ、あたし達が全部引っこ抜いて燃やしたわ」
 つぎはぎ娘が答えました。
「今ね」
「そうしてくれたんだ」
「そうよ」
 プレーリードッグに明るく答えます。
「このまま放っておけないしね」
「お陰で助かったよ」
「助かったっていうかね」
 どうかとです、つぎはぎ娘は言いました。
「今言ったけれど」
「放っておけないんだね」
「だからよ」
 それでというのです。
「全部引っこ抜いて燃やしたのよ」
「そういうことだね」
「そうよ、これであんた達も起きたし」
「一件落着だね」
「そういうことよ」
 こう言うのでした。
「だから安心してね」
「それじゃあね」
「急に草が生い茂ったからね」
 それでとです、兎が言いました。アメリカにも兎はいるのです。
「何もないと思ったらね」
「そこにあったから寝てしまったよ」
 クズリもこう言います。
「どれだけ寝たかな」
「そこはそれぞれだけれど」
 それでもと言うムースでした。
「かなり長い間だね」
「これだけ寝たら」
 どうかとです、ビーバーは言いました。
「暫く寝なくていいかな」
「いや、それでも寝るよ」
 トトはビーバーに笑ってお話しました。
「今夜は」
「そうなるかな」
「眠り草で寝るのと普通に寝るのは違うからね」
「僕達も寝るんだ」
「君の場合お池のお家に帰ったらね」
 その時はというのです。
「そうなるよ」
「そうなんだね」
「まあね、寝ることは好きだしね」
 オオヤマネコも言いました。
「それならいいよ」
「そうだよね」
「正直眠り草で寝てしまったことは不覚だったけれど」
「気持ち悪かったかな」
「いや、全然。むしろね」
「気持ちよかったんだ」
「凄くね」
 こうトトに答えます。
「今も絶好調だよ」
「よく寝られて」
「けれどまたね」
「今日だね」
「寝られるよ」
「なら楽しみにしているよ」
 オオヤマネコはトトに笑顔で応えました、そうしてです。
 今度はワニガメが周りを見回してこんなことを言いました。
「ここは何とかなったけれど」
「どうしたの?」
「うん、近くに困った木もあるんだ」
「木というと」
「それがね」
 ワニガメはドロシーにお話しました。
「近くの森に出て来て」
「どんな木なの?」
「自然と歩く木だけれど」
 それでもというのです。
「お酒が好きでね」
「お酒飲むの?」
「うん、いつも飲んでいて」
 そうしてというのです。
「森の中でごろ寝をしているんだ」
「それは困った木ね」
「これまではお酒が好きでも」
 それでもというのです。
「夜だけ飲んでいたのに」
「最近じゃいつもなの」
「朝もお昼もね」
 それこそいつもというのです。
「飲んでね」
「それで森の中でごろ寝していて」
「邪魔になっていてね」
「これがかなり大きな木でね」
 アメリカクロクマも言います。
「高さが百メートルもある」
「それは凄いね」 
 その大きさを聞いてです、ジョージも驚きました。
「千年位の木かな」
「外の世界ではそうだね」
「それ位あるね」
「そこまで大きいと」
「もうね」
 ジョージ達五人でお話します。
「高さ百メートルになると」
「もっと長い間生きてるかも」
「木が一人でに動くのはオズの国でも」
「お酒飲むのもね」
「そのことも凄いね」
「それでね」
 アメリカアナグマも言います。
「皆どうしたものかって思っているんだ」
「というかどうしてなの?」
 つぎはぎ娘がここで首を傾げさせつつ言いました。
「これまでは夜しか飲まなかったのよね」
「そうなんだ」
「ずっとね」
「それで朝はしっかりしていたけれど」
「お昼も」
「それがね」
 動物の皆はつぎはぎ娘に答えました。
「ある日からね」
「急にそうなったんだ」
「理由を聞いていつも泥酔していて寝てるし」
「会話も出来ないから」
「理由もわからないんだ」
「僕達も」
「ううん、それでも聞かないとわからないわよ」
 また言うつぎはぎ娘でした。
「木本人にね」
「そうね、とりあえずその木のところに行きましょう」
 ドロシーも言います。
「今は」
「そうよね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「これからね」
「ちゃんとよね」
「木にそうした困ったことは止めてもらいましょう」
「そうしないと駄目ね」
「やっぱりお酒はいつも飲むものじゃないわ」
「それでざこ寝したっらね」
「皆の迷惑だから」
 だからだというのです。
「ここはね」
「木のところに行かないとね」
「そう、まずはね」
 こうつぎはぎ娘に応えました。
「行きましょう」
「木のところにね」
「それじゃあね」
 動物達が応えてです、彼等は一行を近くの森の中に案内しました、するとそこにお話通り高さ百メートルがある黄色い葉を持っていてお顔がある木がです。
 幹も根も真っ赤にして大いびきをかいて寝ています、その木を見てです。
 つぎはぎ娘はこれはという声で言いました。
「物凄く飲んでるわね」
「近くにワインのお池がああってね」
 ビッグフットが答えます。
「いつもそこで飲んでるんだ」
「そうなのね」
「もう身体ごと入って」
「飲んでるのね」
「お口からも根からも葉からもね」 
 まさに身体全体からというのです。
「お酒を飲んでね」
「こうして酔ってるのね」
「そうなんだ」
「ううん、だからここまで酔ってるのね」
「お池のワインは尽きないけれど」
 それでもとです、ビッグフットは言いました。
「この大きさだからね」
「ざこ寝されるとね」
「本当に困るから」
 それでというのです。
「どうにかならないかってね」
「あんた達は思ってるのね」
「さっきお話した通りね」
「そうなのね」
「それでね」
 さらに言うビッグフットでした。
「このことだけれど」
「え、まずはね」
「まずは?」
「お酒にはお水ね」
 これだとです、つぎはぎ娘は言いました。
「そうよね」
「お水出しましょう」
 ここでドロシーも言いました。
「テーブル掛けからお水をね」
「あの、お水といいましても」
 ジョージがお水を出そうというドロシーにどうかという顔で言いました。
「ちょっとこの大きさですと」
「コップ一杯どころじゃ駄目ね」
「バケツ一杯でも」
 それだけのお水でもというのです。
「とても、百杯も二百杯でもないと」
「お酒は醒めないわね」
「そうですよね」
「だから普通のお水じゃないの」
「これから出すお水は」
「酔った時にはスポーツドリンクとか経口補給水がいいの」
 こうジョージに言うのでした。
「そうしたものを葉や幹にどんどんかけて」
「吸い込んでもらって」
「そうして酔いを醒ましましょう」
「そうしたやり方があるんですね」
「そう、お酒にはお水は確かにいいけれど」 
 それでもというのです。
「もっといいのはね」
「そうしたものですね」
「だからね」
「これからですね」
「バケツ一杯のそうしたお水を出して」
 そうしてというのです。
「かけていきましょう」
「わかりました」 
 こうしてでした、ドロシーは経口補給水やスポーツドリンクを入れたバケツをどんどん出してです。 
 皆で木のお口に飲ませて葉や根にかけました、すると。
 木は見る見るうちに酔いが醒めて目覚めました、そうしてドロシー達を見てそのうえで言いました。
「ドロシー王女かな」
「そうよ」
 ドロシーは木に答えました。
「貴方に聞きたいことがあって来たの」
「僕に?」
「ええ、貴方は最近いつも飲んでるそうね」
「お酒をね」
「自分で認めたわね」
「事実だからね」
 木がゆっくりと起き上がりつつドロシーに答えました、するとその大きさは実際に百メートル以上あります。
「もう最近飲まずにいられないんだ」
「どうしてそこまで飲んでるの?」
「うん、僕は歩けるけれど」
「そうした木ね、貴方は」
「最近無性にお口の中が痛いんだ」
「その痛さを紛らわす為になの」
「お酒をしこたま飲むと痛覚がなくなるからね」
 それでというのです。
「最近はそうしてね」
「いつも飲んでいるの」
「うん、とにかくお口の中が痛くてね」
「それはわかったけれど」
「いつも飲んで寝そべっているとだね」
「皆が迷惑するわ」
 ドロシーは木にお話しました。
「特に貴方は大きいから」
「それはわかっているけれど」
「それでもよね」
「痛みはどうしようもないから」 
 だからだというのです。
「飲んでいるんだ」
「ううん、ちょっと見せてくれるかな」
 ここでかかしが言ってきました。
「お口の中を」
「そうしていいかな」
「うん、じゃあね」
「それならね」
 かかしは木のお口の中を見ました、そうしてすぐに言いました。
「新しい歯が生えているよ」
「歯がなんだ」
「うん、オズの国の法律では皆歯磨きをすることになっているね」
「それで僕もいつも歯を磨いているよ」
「オズの国で虫歯になることはないけれどね」
「お口の中は奇麗にしないとね」
「だから皆歯を磨いているけれど」
 それでもというのです。
「君もお口の中は奇麗だね」
「どんなに酔っていても歯磨きと水浴びは忘れていないよ」
 歯を奇麗にすることはというのです。
「毎日しているよ」
「どっちもだね」
「うん、けれどどうして歯が痛いのかわからなかったんだ」
「確かにね」
 樵も木のお口の中を見たのでそれで言います。
「新しい歯が生えているね、古い歯が抜けて」
「えっ、古い歯っていうと」 
 臆病ライオンはそのお話を聞いて驚きの声をあげました。
「まさか」
「そう、乳歯だよ」
 樵は臆病ライオンに答えました。
「それが抜けようとしていてね」
「ぐらぐらとして」
「その下から新しい歯が生えてきていてね」
「それで痛いんだ」
「人間でもあるね」
 樵は臆病ライオンにさらにお話しました。
「乳歯が抜けてね」
「うん、永久歯になるんだよね」
「その時歯がぐらぐらしてね」
「次第に抜けていくね」
「そうなるね、そしてそれでね」
「歯が痛くて」
「彼はずっと困っていたんだ」
 そうだったというのです。
「それで痛みから逃れる為にね」
「お酒を飲んでいたんだ」
「そうだったんだ」
「けれどおかしいよ」
 腹ペコタイガーは率直に自分の考えを言いました。
「これは」
「どうしてかな」
「だってね、彼はこんなに大きいし」
 木のその大きさを見て言います。
「お酒を飲んでいるのに」
「うん、僕は確かに大人だけれど」 
 木もこう言います。
「ただ、歯は言われてみるとね」
「生え代わっていなかったんだ」
「どの歯もね、そして全部の歯がね」
「痛いんだ」
「そうなんだ」
「全部の歯が入れ代ろうとしているんだね」 
 トトはこう考えました。
「要するに」
「ここでなんだ」
「うん、彼はたまたま歯の成長が遅かったのかな」
 トトはこう考えました。
「つまりは」
「そんなこともあるかな」
 樵は腕を組んで考える言葉を出しました。
「中には」
「まさかこうなるなんてね」 
 木がまた言いました。
「じゃあ僕は歯が抜けるまで痛いのかな」
「もう全部引っこ抜いたらどう?」
 つぎはぎ娘がこう提案しました。
「どうせ次の歯が生えてきてるのよね」
「そうだよ」
 かかしはつぎはぎ娘に答えました。
「現在進行形でね」
「それじゃあよ」
「もう抜けばいいっていうんだね」
「面倒なことは先に済ませてね」 
 そうしてというのです。
「痛みから解放されればいいでしょ」
「それがいいかも知れないね」 
 木挽きの馬はつぎはぎ娘の言葉に頷きました。
「ここは」
「そうでしょ、次の歯がもうすぐ生えるから」
「そうだね」
「もう全部の歯がここ一ヶ月ぐらぐらして噛んでも力が入らなくて根の方が痛くなってね」
 木は痛みについて具体的にお話しました。
「堪らないんだよ」
「ううん、僕達にはわからないことだけれど」 
 ジャックは歯がない立場から言いました、そのカボチャ頭には実際に歯は一本もありません、このことはかかしや樵、つぎはぎ娘や木挽きの馬も同じです。
「辛いことはわかるよ」
「どうしたものかしら」
 ドロシーはここで考え込みました。
「貴方は痛みがなくなったらお酒をいつも飲むことはないわね」
「歯が痛くないとね」
 それならとです、木はドロシーに答えました。
「もうね」
「飲むのは夜だけで」
「普段は寝そべることもないよ」
「それじゃあ」
「確かに歯が生え代わる時って辛いわ」 
 ナターシャが言いました。
「私もこの前やっと全部生え代わったけれど」
「そうそう、歯がぐらぐらしてね」
 木の言う通りにとです、神宝も言います。
「生え代わるまで嫌なんだよね」
「それもそれが全部の歯となると」
 恵梨香は眉を曇らせて言いました。
「確かにかなり辛いわね」
「噛むのにも力が入らなくて歯茎も痛くなって」 
 カルロスは自分のことを思い出しています。
「辛いね」
「ここは早く何とかならないと」
 どうかとです、ジョージも言います。
「駄目だね」
「ええ、私もそう思うわ」
 ドロシーも乳歯から永久歯に生え代わった時のことを思い出しつつ言います。
「辛いことよね」
「そうですよね」
「そう、じゃあね」
「ここはどうするか」
「もう全部の歯を今のうちに抜くのがいいかしら」
 つぎはぎ娘の言う通りにというのです。
「それが」
「やっぱりその方がいいですか」
「そうかしら」
「僕は栄養は食べるだけじゃなくて葉や茎からも採れるからね」 
 ここで木も言ってきました。
「暫くは歯がなくても大丈夫だよ」
「そうなのね」
「だから抜いても」
 歯を全てというのです。
「大丈夫だよ」
「じゃあ決まりね」
 つぎはぎ娘がまた言ってきました。
「全部抜きましょう」
「そうしろっていうのね」
「そう、痛いのは最初だけで」
「後は楽になるから」
「いいでしょ」
「そうなるかな」 
 ジョージもつぎはぎ娘の言葉を聞いて頷きました。
「ここは」
「そうでしょ、だからね」
「今のうちになんだ」
「歯を抜くべきよ」
「全部だね」
「それがいいわ」
「何か君やたら歯を抜きたがるね」
 ジョージはここでつぎはぎ娘の主張にそうも思いました。
「何か」
「そうかしら」
「どうもね」
「あたし歯はあるけれどね」
「ずっとお口にある歯だよね」
「そうよ、そんな歯で痛むこともね」
 今の木の様にというのです。
「ないわよ」
「そうだよね」
「けれどね」
 それでもというのです。
「痛みは一瞬の方がいいでしょ」
「だからそう言うんだね」
「後が楽になるならね」
「じゃあ」 
 木はつぎはぎ娘のその言葉を聞いてでした、彼女の提案に同意しようとしました。ですがここで、でした。
 木はふとこう言いました。
「あれっ」
「どうしたの?」
「今歯が何本か抜け落ちたよ」 
 こうつぎはぎ娘に答えました。
「それでまたね」
「歯が抜けたの」
「今どんどん抜けてるよ」
 こう言ってでした、木はその抜けた歯達をぷっぷと吹き出しはじめました、すると地面にとても大きな幹の色の歯がどすんどすんと落ちて来ました。木が大きいだけに歯も物凄い大きさです。
 そして木は三十本位出してからまた言いました。
「それで今舌でお口の中確かめたら」
「どうなってるの?」
「新しい歯が生えてきてるよ」 
 永久歯がというのです。
「どんどんね」
「そうなの」
「うん、それで今あっという間にね」
「生え揃ったのね」
「そうなったよ」 
 こう言うのでした。
「あっという間にね」
「それじゃあ痛みは」
「もうないよ」 
 そうなったというのです。
「本当にね」
「それはいいことね」
「本当にね」
 実際にと言う木でした。
「いや。本当によかったよ」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「あんた本当にお酒はね」
 つぎはぎ娘は木にあらためて言いました。
「程々にした方がいいわよ」
「いつも飲むことはだね」
「例え痛くてそれを忘れる為でもね」
「いつも飲むことはだね」
「止めないとね」
 こう言うのでした。
「またこんな騒ぎになるわよ」
「そうだよね」
「そこはわかってね、というかね」
「というか?」
「痛いところ、困ったところがあったら」
 その場合はというのです。
「お医者さんのところに行けばいいのよ」
「木でもだね」
「そうよ、オズの国のお医者さんはどんな生きものでも診察出来るのよ」
 ドロシーも言ってきました。
「だからね」
「また何処か痛くなったら」
「その時はね」
「お医者さんのところに行って」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「診てもらってね」
「それじゃあね」
「そういうことでね、けれどこれでね」
「うん、一件落着だね」
 トトが言ってきました。
「無事に」
「そうよね」
「よかったね」
「ええ、じゃあね」
「それじゃあ?」
「もう晩ご飯の時間だから」
 それでというのです。
「皆でご飯にしましょう」
「もうそんな時間なんだ」
「今日は周りに大勢いるから」
 見れば動物の皆も一緒にいます、皆ドロシー達が木のことをどうしてくれるのか見守っていたのです。
「だからね」
「それで、だね」
「そう、だからね」
「今日は一敗出すんだ」
「そうしましょう、パエリアを出してね」
「沢山のだね」
「あとはスパゲティやピザもね」
 こうしたものもというのです。
「出しましょう」
「皆が食べられるものをなんだ」
「ええ、どんな生きものもね」
 それこそというのです。
「食べられるからね」
「パエリアやスパゲティはそうだね」
「ピザもね」
 肉食動物も草食動物もです、オズの国ではそうなのです。
「だからね」
「そうしたものを出して」
「それでね」
「ここにいる皆で食べるんだね」
「そうしましょう、パエリアはシーフードやお野菜だけのを出して」
「ピザもだね」
「ええ、そしてスパゲティは」 
 こちらはといいますと。
「イカ墨やペスカトーレを出しましょう」
「いいね」
「じゃあね」
「僕ペスカトーレがいいですね」
 ここでジョージが言ってきました。
「スパゲティは」
「そちらなのね」
「はい、タダシーフードが多いのは」
「ここは陸地でしょ」
「海から遠いからですか」
「オズの国ではお池でも外の世界の海にいる魚介類いるけれど」
 それでもというのです。
「動物の皆あまり食べてないでしょ」
「だからですか」
「珍しいものをご馳走したくてね」
 それでというのです。
「出すのよ」
「そういうことですか」
「ええ、そうなの」
「成程、そうですか」
「じゃあ今から出すわね」
「魚介類を使ったパエリアやスパゲティをですね」
「それにピザもね」
 こちらもというのです。
「出すわ」
「これからですね」
「そうするわね」
「わかりました」
「さて、僕はお水を沢山飲んだからね」
 木は起きた時のお話をしました、もうすっかり酔いは醒めていてしかも満腹した様なお顔になっています。
「だからね」
「もうよね」
「うん、いいよ」
 お食事はというのです。
「さっきのでね」
「それじゃあね」
「いや、しかし歯が生え揃ったら」
「気持ちいいのね」
「さっきの痛さが嘘みたいに消えてね」
 それでというのです。
「ちゃんと噛めるしね」
「気分爽快ね」
「そうだよ」
 木はドロシーに笑顔で答えました。
「本当にね」
「それは何よりね」
「それにね」
「それに?」
「後はね」
 ドロシーにさらに言いました。
「寝る前にいつも飲んでいたけれど」
「今日はなのね」
「飲まないよ」
 そうするというのです。
「そうするよ」
「今日も飲んでいたからなのね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「今日はね」
「もう飲まないで」
「それでね」 
 そのうえでというのです。
「そのまま寝るよ」
「ええ、そうした方がいいわね」
「今日はね」
「さっきまで酔っていたから」
「そのことを考えるとね」
「そうしてね、それじゃあ今から」 
 ドロシーはまだ開いたままのテーブル掛けからでした、パエリアやスパゲティ、ピザに色々な飲みものをどんどんと出してでした。
 旅の仲間達だけでなく動物の皆にも出しました、そうして皆で晩ご飯を楽しみますが。
 ここでジョージがこんなことを言いました。
「そういえば近くにワインのお池があるって聞いたけれど」
「行きたいの?」
 踊っているつぎはぎ娘が尋ねました、見れば食べない人達はいつも通り飲んで食べる人達の笑顔を見て心の栄養にしています。
「そこに」
「いや、ワインのお風呂を連想してね」
「ああ、ワイン風呂ね」
「今度入る機会があったらね」
「そのワイン風呂になのね」
「入りたいって思ったんだ」
 こうつぎはぎ娘にお話しました。
「それだけだよ」
「そうなのね」
「あくまで機会があればだけれど」
「今すぐにじゃないの」
「うん、そうだよ」
「思い立ったらじゃないのね、あんたは」
 つぎはぎ娘はジョージに言いました。
「あたしはそうだけれど」
「君は特にそうだよね」
「そう、思ったらね」
 まさにその時にというのです。
「動くわ」
「そうしたタイプだね」
「だから若し何かしたいと思ったら」
「ワイン風呂に入りたいと思ったら」
「すぐに入るわ」
「傍になかったら?」
「そこに行ってね」
 そのうえでというのです。
「入るわ」
「そうするんだね」
「そうよ、ただ行く途中にね」
 その中でというのです。
「気が変わることもあるわ」
「移り気なんだ」
「あたしはね」
「それでその時はだね」
「そっちに行くわ」
 こう言うのでした、スパゲティペスカトーレを食べているジョージに対して。
「すぐにね」
「それが君の生き方なんだ」
「そうよ、自由でしょ」
「うん、風来坊とでもいうのかな」
「そうよ、あたしは風来坊よ」
 くるくると踊りながら言いました。
「だからね」
「気の赴くままにだね」
「動いてね」
 そうしてというのです。
「生きてるの」
「そうだよね」
「それがまた楽しいのよ」
「そうだね、本当に」
「だからよ」
「気が向けばそうして」
「他のところに興味を持てば」 
 その時はとです、また言うのでした。
「そっちに行ってね」
「楽しむんだね」
「それがあたしだから」
「これからもだね」
「そうしていくわ」
「今日はこの森にテントを出して寝てね」
 ドロシーが言ってきました。
「そうしてね」
「そのうえで、ですね」
「明日出発するわよ」
 こうジョージ達に言いました。
「いいわね」
「わかりました」
「それとね」
 さらに言うドロシーでした。
「ここからさらにね」
「お菓子の国にですね」
「そうよ」
 そこにというのです。
「行くわよ」
「そうしますね」
「ええ、そしてね」
 そのうえでというのです。
「冒険の旅を続けるわよ」
「そうですね、ただ」
「ただ?」
「お菓子の国に着くまでも色々あるわよ」
 ジョージに笑顔でお話しました。
「そのことは楽しみにしていてね」
「はい、それじゃあ」
「色々なものがあることは」
 本当にというのです。
「オズの国の特徴の一つだから」
「それで、ですね」
「そのことも楽しんでいてね」
「そうさせてもらいますね」 
 笑顔で言ってでした、そのうえで。
 皆はそれが出来る人達は晩ご飯を食べて身体を奇麗にしてです、テントの中で朝まで寝て朝ご飯を食べてから動物の皆そして木とお別れの挨拶をして冒険の旅を再開しました、楽しい旅はまだ続きます。








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