『オズのケーキ』




               第八幕  思わぬ来客

 ケーキ達はフェアリーの国である森の中でフェアリーの人達と一緒に女王様のお誕生日のパーティーの準備を進めていました。
 その中で六人の大臣はケーキのお話を聞いて驚きました。
「そんなことがあったんですね」
「オズの国には」
「色々なことがあったとは聞いてましたけれど」
「そうしたこともあって」
「大変なことになりそうだったんですね」
「オズの国全体が」
「そうなの、私もその騒動には関わっていないけれど」
 それでもとです、ケーキは大臣の娘達と一緒にお誕生日に出される林檎やチェリーのパイを作りつつお話します。
「大変だったそうよ」
「ノーム王が妖魔達を利用してオズの国を侵略する」
 マユはそのことを考えただけで真っ青になっています。
「とんでもないですね」
「若しもですよ」
 ミユも暗いお顔になっています。
「オズの国がその時のノーム王のものになっていたら」
「どんなことになっていたか」
 アイリは考えるだけでという感じです。
「わからなかったですね」
「私達もどうなっていたか」
 ナナミも言います、その暗いお顔で。
「怖いですね」
「今は妖魔達ももの静かな人達ですけれど」
 それでもとです、ミナミは言いました。
「昔は違いましたからね」
「そう思うと」
 カヤはケーキに言いました。
「オズの国はピンチだったんですね」
「そうみたいなの、その時のノーム王はね」
 ケーキはこの人ご自身のお話をしました。
「ロークワット、今はラゲドーというけれど」
「悪い心はなくして」
「そうしてですよね」
「オズの国で幸せに過ごされてますね」
「お家もオズの国にあって」
「そうしてですね」
「皆と仲良く」
 六人とも前ノーム王であるラゲドーのことを尋ねました。
「今では」
「そうなってますよね」
「そうじゃないと怖いですよ」
「また悪だくみをしないかって」
「オズの国を脅かすんじゃないかって」
「心配ですよ」
「もうその心配もないから」
 そこは安心して欲しいとです、ケーキは六人にお話しました。
「本当に」
「それならいいですね」
「若しその人がこちらに来ても」
「何もしてこないですから」
「安心ですね」
「他のオズの人達と同じく」
「それなら」
 六人は今は笑顔になっています、ですが。
 ここで、です。ケーキはフェアリーの娘達にこうも言いました。
「苺のパイも作っていいかしら」
「はい、どうぞ」
「何でも作って下さい」
「私達もそうしていますね」
「今は桃のパイを作ってますし」
「苺のパイもです」
「作って下さい」
 六人でケーキに答えます。
「女王様パイもお好きなんですよ」
「ケーキもですけれど」
「それとクッキーもお好きですよ」
「最近はごま団子も杏仁豆腐もお好きです」
「それと羊羹も」
「お菓子は私達皆好きですけれど女王様もです」
 ケーキにお話します、そしてです。
 見れば実際に六人で桃のパイを作っています、ケーキは彼女達の言葉を受けてそうしてなのでした。
 苺のパイも作りはじめます、ケーキも熱心に働いています。
 それは皆も同じです、ですが女王だけはご自身のパーティーということで準備には参加させてもらいません、そのことについてです。
 どうしてもというお顔で言うのでした。
「私も何か動かないと」
「そう言われましても」 
 ナターシャが女王に応えます、今は彼女達五人が女王と一緒にいます。そうして歌ったり踊ったりして遊んでいるのです。
「女王様が主賓ですから」
「だからですね」
「主役が動きますと」
 お誕生日のパーティーのです。
「違いますよ」
「そのことはわかっていますが」
「それでもですか」
「フェアリーの国は皆で汗を流す」
「そうした考えですか」
「それも楽しく」
 そうしてというのです。
「過ごすものですから」
「女王様でもですね」
 恵梨香が女王に言いました。
「それでもですね」
「そうです、私達は皆家族ですから」
 だからだというのです。
「ですから」
「家族ならですか」 
 ジョージは女王、自分達のお顔の高さで羽根を使って浮かんでいる彼女と見てそのうえで言うのでした。
「一緒に汗を流す」
「それがフェアリーの考えですから、それに」
 女王はにこりと笑ってこうも言いました。
「身体を動かして働くことも楽しいですね」
「そうですよね、皆で作業をしてると」
 神宝は女王のその言葉に頷きました。
「中々楽しいですね」
「ですから」
 女王は神宝にも答えました。
「私もそれが好きですが」
「ですがここはです」
 カルロスは残念そうな女王を宥めました。
「待っていましょう」
「そうですね」
 女王も皆に言われてです、そうしてでした。
 どうしても作業に参加したいという気持ちを抑えてそうして言いました。
「待っていますね」
「そうしていましょう、働くことはまた出来ますね」
「はい」
 女王はナターシャに答えました。
「そのことは」
「ならです」
「働くことは次の機会にということで」
「だからですね」
「今は待っていましょう」
 是非にというのです。
「そうしていきましょう」
「では今から」
 ここで、です。女王は。
 自分達の傍にあったピアノを見て言いました。
「このピアノを弾いて」
「演奏ですか」
「はい、演奏をして」
 そしてというのです。
「歌も歌って」
「そうもしてですね」
「楽しみましょう」
「どの曲を弾かれるんですか?」
「そうですね、ジャズでしょうか」
 こちらの曲をとです、女王は言いました。
「今から」
「何かですね」
 ナターシャは女王のそのお話を聞いて言いました。
「フェアリーの人って色々な曲を聴かれていて」
「それで、ですか」
「演奏もされていて」
 それでというのです。
「意外に思っています」
「そういえばそうよね」
「フェアリーの人達がジャズがお好きと聞いていたけれど」
「ジャズとかラップとかポップスとかもお好きで」
「そうしたことは考えてなかったから」
 恵梨香達四人も言います。
「今もジャズって言われて」
「そうしたジャンルの曲がお好きなんだって」
「そう思うとね」
「本当に意外だわ」
「オズの国のフェアリーですから」
 それでとです、女王は子供達に答えました。
「ですから」
「それで、ですか」
「オズの国はアメリカが反映されるので」
「音楽もですね」
「こちらもですね」
「色々あるんですね」
「そうです、それで今も」
 今回もというのです。
「ジャズをと思いまして実際に」
「ジャズですね」
「そちらの曲を演奏されて」
「それで歌われますか」
「そうされますか」
「今から」
「そのつもりです、ですからよかったら皆さんも」
 恵梨香達五人もというのです。
「聴いて下さい」
「一緒に歌ってもいいですか?」
 ナターシャはここで女王に提案しました。
「そうしても」
「私とですか」
「はい、そうしても」
「私達も」
 恵梨香達はナターシャに続きました、そしてです。
 五人は女王と一緒にジャスの歌を歌いました、そうして楽しんでからでした。今度は皆で、でした。
 甘いお茶を飲んで楽しみました、皆がそうして楽しんでいる時に。
 アン王女とリンキティンク王、ボボ王子はフェアリーの国の正門にいました、この国は森自体なのですが。
 正門は森の入り口にあります、その他にも入り口はありますが。
「ここが正門なのね」
「はい、そうです」 
 門番の人、右手に槍を持った男の兵隊さんが答えます。
「他にも入り口はありますが」
「ここが正門で」
「お客様はここから入ってもらいます」
「そうよね」
「森には出入口からです」
 入口が出口になっているのです。
「出入り出来ますが」
「木と木の間からは無理じゃな」
 リンキティンク王は森の表面の木々を見ました、見ればその木々は鬱蒼と茂っていてまるで壁みたいになっています。
「これは」
「そうですね、これだけ繁っていますと」
 王子もその木々を見て言います。
「フェアリーの人達でもです」
「通れぬのう」
「そうですよね」
「そうです、中は色々開けていますが」
 それでもとです、門番の人は二人にもお話しました。
「外側は出入り口以外はです」
「木々が壁になっておってか」
「そこからは入られない様になっています」
「そうなのじゃな」
「そしてです」
 門番の人はさらにお話します。
「出入口、つまり門はです」
「貴方達が見張っているのね」
「そうしています、誰が来ても」
「わかるのね」
「そうです、オズの国は悪人はいないですが」
「用心は必要だしね」
「いつもです」
 そこはというのです。
「見張ってです」
「ちゃんとしているのね」
「そうしています」
 こう王女に答えました。
「しっかりと」
「それは何処の国も同じね」
「そうですよね」
「何もなくてもね」
「チェックや警備はですよね」
「忘れたらいけないから」
「フェアリーの国もそれは同じで」
 それでというのです。
「しっかりとです」
「警備をしているのね」
「そうしています、ですが」
「ですが?」
「平和ですね、今日も」
 門番さんは笑顔でこうも言いました。
「オズの国全体がそうでしょうが」
「そうね、平和が一番よね」
「本当にそうですよね」
「平和だと」
 本当にというのです。
「それだけで幸せよ」
「オズの国は平和なので」
「そのことからもね」
「いい国ですね」
「私もそう思うわ」
「おや、誰か来るぞ」
 リンキティンク王は正門に続いている黄色い煉瓦の道の先を見てそのうえでその場にいる皆に言いました。
「あちらから」
「そうですね、誰でしょうか」
 王子もその人を確認しました。
「一体」
「小さくて太っておるのう」
 つまり小太りだというのです。
「そして長い髭にタイツみたいなズボンにシャツか」
「それにブーツ、あれは」
「土色の顔じゃしな」
「ノーム族の人ですね」
「そうじゃな」
「ラゲドーさんじゃないかしら」
 王女は次第にこちらに来るそのノームの人を見て言いました。
「まさか」
「えっ、ラゲドーさんというと」
 門番さんはその人の名前を聞いて言いました。
「前のノーム王だった」
「そう、あの人よ」
「オズの国に何度も悪いことをしようとした」
「もう悪い気持ちはなくなってるけれど」 
 それでもというのです。
「あの人よ」
「それは大変ですね」
 門番さんはここまで聞いて身構えました。
「そんな人が来るとなると」
「だから悪い気持ちはなくなってるわよ」
「ですが前にそんなことをした人が来るなら」
「それならなの?」
「気をつけないと」
 このことは忘れてはならないというのです。
「昔悪い人だったことは事実で悪いこともですね」
「かなりしてきたわ」
「今はそうでもまた何をするかわからないですから」
「その考えは違うんじゃないかしら」
 王女は警戒する門番さんに言いました。
「あの人は確かに悪い人だったけれど」
「今はですか」
「違うから、そのことがわかっているなら」
 それならというのです。
「もうね」
「警戒することはないですか」
「ええ、むしろ警戒したら」
 昔悪い人だったからというのです。
「そちらの方がね」
「よくないですか」
「人は誰でも間違いを犯すわね」
 王女は残念そうなお顔で言いました。
「人なら」
「間違えない人はいない、ですね」
「そう、そんな人はいないでしょ」
「その通りですね」
「けれど間違いに気付くか間違える気持ちが消えて」
 そうなってというのです。
「行いがあらたまったらね」
「それで、ですか」
「いいんじゃないかしら」
「だからですか」
「そう、それでね」
「今のラゲドーさんもですか」
「警戒することはね」
 かつて何度もオズの国を脅かしたけれど、というのです。
「今のあの人は別人だから」
「警戒せずに」
「この国に来てもね」
「お迎えすべきですか」
「笑顔でね」
「その通りじゃ、わしなぞじゃ」
 リンキティンク王も言いました。
「いつも間違えてな」
「大臣の人に怒られていますよね」
 王子がその王様に言います。
「何かと」
「そうじゃ、王様だって間違えるのじゃ」
「それで、ですね」
「誰もが間違える、しかしな」
「人はその行いをあらためられますね」
「わしも少しはそうなっておるぞ」
 リンキティンク王ご自身が思うにはです。
「だからな」
「過去の間違いを絶対にしないことですね」
「左様じゃ」
 そうあるべきだとです、王様も門番さんにお話します。
「このまま来てもな」
「言われてみますと」
 門番さんもここで頷きました、そしてです。
 落ち着いてです、こう言いました。
「では」
「そうするのう」
「はい、お客さんとして」
 門番さんも頷きました、そうしてです。
 ラゲドーを待っているとでした、遂に門のところに来てそうしてこう言ってきました。
「おや、アン王女ではないか」
「お久し振りね」
 王女はラゲドーに笑顔で応えました。
「お元気そうね」
「この通りな」
「私達は今フェアリーの国に来てるの」
「そうなのか」
「それで貴方は」
「わしは少し旅に出たくなてな」
「それでなのね」
「こうしてな」
 今の様にというのです。
「ここに来たのじゃ」
「目的地は何処かしら」
「ははは、適当にふらりとな」
 そうして出ているだけとです、ラゲドーは洗って答えました。
「出ただけで」
「何処に行くかということはなのね」
「決めてなくてな」
 それでというのです。
「ここに来たのもな」
「このこともなのね」
「ふらりとでな」
 それでというのです。
「また何処かに行く」
「そうなのね」
「それでフェアリーの国にな」
「私達がどうしているか」
「それはどうしてなのじゃ」
「実はフェアリーの女王様のお誕生日があって」
 それでとです、王女は答えました。
「私達は参加することになって」
「それでか」
「ここにいるの」
 こうラゲドーにお話しました。
「そういうことなの」
「ふむ、わかった」
 ラゲドーは闊達な笑顔で応えました。
「よいパーティーになることを願わさせてもらう」
「そうしてくれるのね」
「心から」
 こう王女に答えるのでした。
「そうさせてもらおう」
「では受けさせてもらうわね」
「そうしてくれるか」
「私達もね」
「ではな。それではわしはこれからもな」
「旅を続けるのね」
「気の赴くままな、食べものはな」
「旅の途中で幾らでも手に入るから」
「それでじゃ」
 その為にというのです。
「好きなものを食べておる」
「そのことも何よりね」
「うむ、お弁当の木に果物の木に」
「お菓子の木にね」
「色々あるからのう」
 だからだというのです。
「そうしたものも楽しみながらな」
「旅を続けていくのね」
「そうしていく」
 是非にというのでした。
「これからもな」
「それじゃあね」
「うむ、縁があったらまた会おう」
 最後にこう言ってでした、そのうえで。
 ラゲドーは王女達と別れてそのうえでご自身の旅を再開しました、そのラゲドーを見送ってそうしてでした。
 門番さんは唸ったお顔で言いました。
「いや、まさか」
「驚いたでしょ」
「ええ、本当に」
 こう王女に返します。
「まさかあのラゲドー王が」
「ああしてっていうのね」
「穏やかになっているとは」
「悪いところがないでしょ」
「はい、全く」
 まさにというのです。
「オズの国の人です」
「その通りね」
「あそこまで変わるなんて」
「ラゲドー王、もう王様ではないけれど」
「邪悪さが消えて」
 オズの国を散々脅かしてきたそれがというのです。
「本当に」
「陽気で闊達でね」
「いい人でしたね」
「そうなったことはね」
 本当にというのです。
「あの人も色々あったから」
「そうでしたね、悪い心が消える様なことが」
「獣達と攻めてきた時にね」 
 まさにその時にというのです。
「最後にそれが消えて」
「オズの国の住人になったんですね」
「そう、それでね」
「今はああしてですね」
「オズの国の住人ですか」
「そうなったのよ」
 本当にというのです。
「これからはね」
「そうですか」
「そう、そして」
 それにというのでした。
「ああして時々ね」
「旅をですか」
「していてね」
「我々と会うこともありますか」
「そうよ、それと」
 さらにと言う王女でした。
「お家はオズの国にあるから」
「あの人のお家は」
「そう、そしてね」
 それにというのでした。
「地下にあるのよ」
「オズの国の」
「そう、オズの国のね」
「ノームだからですね」
「地下に住んでいるのよ」
 そうしているというのです。
「お家をそこに置いてね」
「やっぱりそこはノームですね」
「そうよ、楽しく暮らしているわよ」
 そうしているというのです。
「あの人達は」
「それは何よりですね」
「そうでしょ、そしてね」
「そして?」
「ひょっとしたらだけれど」
 王女は明るく笑ってお話しました。
「あの人またここに来るわ」
「この国にですか」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「私達のパーティーに参加するかもね」
「知れないですか」
「オズの国は出会いが多いでしょ」
「そうですね、偶然が重なって」
 そうしてとです、門番さんも応えます。
「不思議な出会いが多くありますね」
「そうした国だから」
 それでとです、王女はお話しました。
「きっとね」
「ひょっとしたらですね」
「あの人もパーティーに来るかも知れないわ」
「そうですか」
「そうなればね」
 その時はといいますと。
「あの人も迎えて」
「パーティーをですね」
「楽しみましょう」
「わかりました」
 二人でこうお話しました、その後で。
 王女達は女王のところに戻りました、そうしてラゲドーのことをお話すると女王は笑顔でこう言いました。
「では若しです」
「ラゲドー王が来ても」
「その時も」
 まさにというのでした。
「喜んで」
「お迎えするのね」
「そうさせてもらいます」
 笑顔での返事でした。
「是非」
「それがオズの国だからね」
「おもてなしをさせてもらいます」
「おもてなしというと」
 ここで言ったのはケーキでした。
「日本ですね」
「恵梨香のお国ね」
「そうですね」
「日本の文化よね」
「はい、オズの国も日本の要素が増えてきて」
 そうなってきてというのです。
「私達もです」
「おもてなしを知る様になったわね」
「素敵な文化ですよね」
 ケーキは笑顔でお話しました。
「本当に」
「そうよね」
「和菓子を作っていても」
 ケーキが苦手と思っているこれのこともというのです。
「それを感じます」
「どうしてもよね」
「それだけに」
 本当にというのでした。
「難しいです」
「和菓子を作ることは」
「繊細なので」
 和菓子はというのです。
「ですから」
「それでパーティーでは作ってくれるのかのう」
 ここで尋ねたのはリンキティンク王でした。
「和菓子は」
「そのつもりですが」
「難しいのじゃな」
「はい、何をどう作るのか」
 それがというのです。
「必死に考えていますが」
「そうなのか」
「宝石みたいに奇麗で味も」
「ただ甘いだけでなくか」
「物凄く繊細なので」
 そうした味だからというのです。
「いつも作るのに苦労していて」
「それでじゃな」
「今回もです」
「成程のう、しかしな」
 リンキティンク王は今から苦難を見ているケーキにお話します。
「安心するのじゃ」
「安心していいんですか」
「うむ」
 是非にという返事でした。
「落ち着いて作ればな」
「それで、ですか」
「ケーキ嬢なら作られる」
「美味しい和菓子をですか」
「そうじゃ、落ち着いてしっかりと作れば」
 それでというのです。
「問題ない」
「そうですか」
「わしは安心しておるぞ」
 そのことがお顔にも出ています。
「そのうえで楽しみにしておる」
「では期待に添えます」
「是非のう」
 リンキティンク王は笑顔で応えました、そしてです。
 ケーキは和菓子の準備もしました、ナターシャはその準備を見ながらそのうえで目を瞠って言いました。
「和菓子は仕込みも大事っていうけれど」
「大事っていうか」
 アイリは唸ってです、ナターシャに応えました。
「あれだけ準備するお菓子ないです」
「そうよね、お菓子には準備もあるけれど」
 ミユも言います。
「あれだけ準備がいるお菓子はね」
「他にないわよ」
 カヤも同じ考えでした。
「本当に」
「しかも準備は何かとあって」
 その準備のことはナナミが見ています。
「大変ね」
「本当に宝石みたいなお菓子を作るには」 
 マユはケーキのテキパキとした動きを見ています。
「下ごしらえからはじまっているというけれど」
「あんなに準備するなんて」
 ミナミは目を丸くしています。
「和菓子は奥が深いわ」
「職人芸って言うけれど」
 その日本人の恵梨香の言葉です。
「凄いわね」
「つまりケーキさんも職人さんだね」
 神宝はケーキを見ています。
「和菓子の」
「ケーキさんはお菓子は何でも得意だけれど」
 それでもと言ったジョージでした。
「和菓子にもそうなったのかな」
「少なくとも手際はいいね」
 カルロスが見てもです。
「慣れていて努力してきた感じがするね」
「お料理も努力」
 まさにと言ったナターシャでした。
「そう言われるわね」
「そうそう、何でもね」
「努力が大事だっていうよね」
「幾ら才能があっても努力しないと駄目だって」
「そう言うしね」
 恵梨香達もナターシャの言葉に頷きます。
「それじゃあね」
「ケーキさんも努力家なのね」
「そういえばあの人はそうした人だよ」
「穏やかだけれどいつもお菓子を作っているからね」
「それでお料理、特にお菓子の本もよく読まれていて」
 それでと言ったナターシャでした。
「いつも努力しているから」
「お菓子作りに努力していて」
「腕を磨いているから」
「和菓子にしても」
「もう身に着けているのかしら」
 五人でお話します、そしてです。
 六人のフェアリーの大臣達もお話しました。
「上手になりたければ練習」
「そして本を読んで勉強する」
「そうしていけば上手になる」
「歌も踊りもそうだけれど」
「お料理もっていうし」
「ケーキさんもということね」
 こう六人でお話するのでした。
「ケーキさんは努力の人ね」
「本当にそうなのね」
「それを努力と思わないかも知れないけれど」
「ご本人はね」
「そうした人でも」
「努力していることは事実ね」
 まさにとお話するのでした、ですが。
 下ごしらえを終えたケーキは皆のところに戻ると照れ臭そうに笑ってそのうえで皆にお話するのでした。
「皆私を凄い風に言うけれど」
「違うんですか」
「そのことは」
「そう言われますか」
「ケーキさんは」
「ええ、別にね」
 これといってというのです。
「凄くないわよ」
「そうですか?」
「充分凄いと思いますけれど」
「そこは違いますか」
「そうですか」
「ただお料理、お菓子作りが好きで」
 それでというのです。
「いつも作って本を読んでいるだけだから」
「あの」
 ここでナターシャがケーキにお話しました。
「オズの国にモーツァルトさん来ておられますよね」
「あの音楽家さんね」
「あの人も来られてるんですよね」
「そうよ、それで今もね」
 オズの国に来てからもというのです。
「音楽を作っておられるわ」
「あの人はいつも作曲されてますね」
「もう作曲していないとね」
 そうしていないと、というのです。
「苦しいって言っておられるわ」
「それだけ作曲して」
 そしてというのです。
「音楽に触れているから」
「天才かしら」
「あの人は元々凄い才能がありますけれど」
 音楽、それのというのです。
「それに加えて」
「いつも作曲しているから」
「本当に凄いと思います」
「ただ才能があるだけじゃなくて」
「いつも音楽に触れていて」
「それで作曲をしているから」
 だからだというのです。
「凄いんですよ」
「本当の意味の天才なのね」
「そうなんですよ」
「そういえば」
 今度はフェアリーの六人の大臣達が声をあげました。
「エジソンさんも」
「そうよね」
「あの人もね」
「いつも発明しているけれど」
「研究して考えて」
「発明に触れているわね」
 この人もオズの国に来ていてそうしてというのです。
「天才とは何か」
「まず努力する人ね」
「そこからよね」
「幾ら才能があっても何もしないと」
「それでどうかなるか」
「そんな筈ないわね」
 こう六人でお話するのでした。
「その何かを知って」
「勉強するなりやってみる」
「音楽も演奏して」
「それをずっとするとね」
「それも努力になるし」
「いいよね」
 こうしたお話をしてでした、ケーキを見るのでした。
 ケーキは今は休んでいます、ですが笑顔で皆にお話しました。
「仕込みは終わったし後はね」
「後はっていいますと」
「今日は杏仁豆腐の用意をするわ」
「今日まだするんですか」
「そうよ、そうしてね」
 そのうえでというのです、ケーキはナターシャに答えました。
「他にもすることがあるわ」
「何でいいますか」
「何か?」
「ケーキさんはやっぱり努力家ですね」
 ナターシャはそのケーキを見て言いました。
「本当に」
「そうかしら」
「はい、その努力あってですね」
「私はお菓子作りが上手だっていうのね」
「天才かと」
「つまり天才は」
「はい、努力して」
 そしてというのです。
「そうなるものですね」
「何度も言うけれど私はね」
 自分ではこう言うケーキでした。
「天才じゃないわよ」
「そう言われるんですね」
「私はね」
「天才は九十九パーセントの努力と」
 それにというのです。
「一パーセントの閃きですね」
「その一パーセントの閃きは」
「九十九パーセントの努力があっても」
 ナターシャはそのお話を頷きました。
「それでもです」
「一パーセントの閃きがないと」
「そう言われますけれど」 
「そもそも九十九パーセントの努力ね」
「それがないと本当に」
「何もならないのね」
「まずは」
 こうケーキにお話するのでした。
「一パーセントの閃きよりも」
「努力ね」
「もう閃きは」
 それはといいますと。
「正直何時来るかわからないものですね」
「そういえばそうよね」
「ふとした時に来たりね」
「努力の中で閃いたり」
「寝ている時の夢とか」
 恵梨香達四人も言います。
「そんな時に来るもので」
「本当に何時来るかわからないね」
「神様が授けてくれるもので」
「最初からあったりもするし」
「閃きは神様のもので」
 まさにそれでというのです。
「もう人があれこれ言ってもね」
「仕方ないわね」
「このことについては」
「閃きについては」
「もうそれこそ」
 どうしてもというのです。
「神様が授けてくれるから」
「そうね、閃きは」
 一パーセントのそれはとです、ケーキもナターシャに応えます。
「どうしようもないわね」
「人では、ただ」
「ただ?」
「努力している人には」
 九十九パーセントのそれをというのです。
「神様は見ておられて」
「それで授けてくれるのね」
「そうだと思います、そしてエジソンさんにも」
「神様がその努力を見てなのね」
「授けてくれているんですよ」
 今オズの国にいるこの人についてもというのです。
「そうなんですよ」
「そういうことなのね」
「それが天才かと」
「それじゃあモーツァルトさんも」
「あの人は最初からです」
 それこそというのです。
「閃きを授けられていて」
「それで後は九十九パーセントの努力ね」
「そう、そして」
「あの音楽なのね」
「そうだと思います」
「成程ね、そういえば」
 ケーキはナターシャとここまでお話して思いました、その思うことは一体何かといいますと。
「私もお料理をしていて」
「閃きがありますね」
「ええ、色々な時にね」
「本当にそれです」
 まさにというのです。
「閃きはです」
「努力している人に神様が与えてくれる」
「それで私はお菓子作りの天才かしら」
「そうだと思いますよ」
「わかってきたわ、それを言うと」
 ケーキは笑顔で言いました。
「誰でも努力すれば」
「天才になれますね」
「そうなるわね」
「本当にそうですね」
「天才は神様がそうさせてくれる」
 こうも言ったケーキでした。
「そういうことね」
「そうですね、つまりは」
「成程ね、努力をする人は神様が天才にしてくれる」
「最初から才能がある人がいても」
「何につけても努力ね」
「誰でも」
「本当にね、じゃあ私はこれからもね」
 笑顔のままでの言葉でした。
「努力をしていくわ」
「お菓子作りに対して」
「そしてね」
 それにというのでした。
「他のお料理についてもね」
「作って勉強されて」
「そうしていってね」 
 そのうえでというのです。
「やっていくわね」
「ずっとですね」
「有り難いことにオズの国は誰も死なないでしょ」
「そして老いることもないですね」
「自分が年齢を重ねたいと思わない限りね」
 あくまで本人の意志次第だというのです。
「そうならないわね」
「そうですよね」
「だからね」
「これからもですね」
「私はお料理を作っていくわ」
 こうナターシャに答えました。
「今もね」
「そして今回のパーティーでも」
「作られますね」
「色々なお菓子をね」
「そして和菓子もですね」
「作らせてもらうわ」
 そちらもというのです。
「喜んでね、そしてね」
「そして?」
「貴女達に食べてもらうわ」
 こうも言うのでした。
「是非ね」
「そうですか、それじゃあ」
「パーティーの日にはね」
「皆で、ですね」
「食べましょう」
「わかりました」
 ナターシャはケーキの言葉に笑顔で応えました、そしてここでこんなことも言いました。
「ロシアのケーキも食べられますね」
「あのケーキね」
「焼いたそちらも」
「勿論よ」
 ケーキはナターシャににこりと笑って答えました。
「クッキーも焼くし」
「その時にですね」
「ロシアのケーキも焼くから」
「そちらも食べられますね」
「ええ、出来るわ」
「そうですね、スポンジのケーキも美味しいですが」
 ロシア以外の国のケーキもというのです。
「あのケーキも好きですから」
「貴女のお国のケーキだから」
「よく食べます、ただ日本では」
 ナターシャが今いるお国ではといいますと。
「実はロシアにいる時より甘いものは食べないです」
「それはどうしてなの?」
「ロシアは物凄く寒いので」
 もうこのことは恵梨香達もよく知っています、ロシアという国はとにかく寒くてこのことが特徴の一つなのです。
「甘いもの、つまりカロリーのあるものを食べないといけないので」
「だからなのね」
「皆そうしたものを食べていますけれど」
「それでもなのね」
「日本はロシア程寒くないので」 
 だからだというのです。
「それで、です」
「ロシアにいる時よりは甘いものを食べないの」
「オズの国では太らないのでよく食べますが」
「あっ、スタイルに気をつけてるのね」
「はい」 
 まさにというのです。
「ですから」
「ナターシャは太るのが嫌なの」
「それはお母さんになってからにしたいです」
「それはどうしてなの?」
「ロシアではお母さんは太っている方がいいからです」
 そうした考えだからだというのです。
「ですから」
「そうした考えもあるのね」
「そうなんですよ」 
 ケーキに笑顔でお話しました、そうしてフェアリーの国での日々をさらに楽しむのでした。








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