『オズのハンク』




               第十一幕  ピラミッドのお祭り

 ラー神の祭壇の傍にある寝室でぐっすり寝てです、皆は朝早く起きました。そうして朝の沐浴と朝食の後で。
 ハンクはトロットにこう尋ねました。
「誰だと思うかな、トロットは」
「お祭りに来るオズの国の名士の人達ね」
「うん、本当に誰なのかな」
「それが今日わかるわね」
「お祭りの日にね」
 まさにこの日だからというのです。
「これからね」
「わかるね」
「だからね」
 トロットはハンクに笑顔でお話しました。
「楽しみにしていましょう」
「誰とここで会えるのかをだね」
「オズの名士っていうと」
 このことからです、トロットは言うのでした。
「絶対に私達の知っている人よ」
「そうだね、オズの国で名前のある人だと」
「私達は絶対に知っているでしょ」
「うん、そうだね」
「だからよ、その誰と会えるのか」
「そのことについては」
「楽しみにしていましょう」
「今もだね」
「そうよ、そしてね」
 さらに言うトロットでした。
「今の私達はね」
「何をするかだね」
「お祭りまでは時間があるから」
 だからだというのです。
「別のことをしてね」
「そうしてだね」
「過ごしましょう」
「だったらね」
 ここでメジェド神が皆のところに来て提案してきました。
「遊ぼうよ、何かして」
「遊びね」
「そう、オズの国では皆よくお仕事をしてよく学んでよくスポーツをして」
「よく遊ぶ、ね」
「特に子供はね。見れば子供も多いし」
 一行にはというのです。
「だから遊ぼうよ」
「例えばボタンを探すとかだと」
 カエルマンは笑ってこんなことを言いました。
「ピラミッドの外に出てもおかしくないけれどね」
「僕はちゃんといるから」
 そのボタンが言ってきました。
「それはないね」
「うん、君がいてくれてほっとしてるよ」
 カエルマンは笑ったままボタンにこうも言いました。
「本当にね」
「それってひょっとして僕と一緒にいてるとかな」
「毎朝君がいるかどうかで」
「確認しているんだ」
「そしているとね」
 それならというのです。
「また冒険を一緒に出来るからね」
「いいんだね」
「そう思うんだ」
「成程ね」
「本当にボタンは朝いなくなる時があるから」
 ポリクロームもこのことについてお話します。
「いつもどうなるかって思うのよね」
「朝はなんだ」
「そうなの、私としても」
「ですが今朝もいますので」
 クッキーはにこやかに笑っています。
「よかったです」
「また会えるけれどね」
 それでもと言うカエルマンでした。
「今日も一緒にいられるのはいいことだよ」
「君は何度かピラミッドで見掛けたよ」
 メジェド神がボタンに言ってきました。
「いつも寝てたね」
「わかんなーーい」
「またこの子かと思っていたよ」
 ピラミッドの中にいる度にこう思ったというのです。
「本当にね」
「そうだったんだ」
「そして僕が起きている君と会ったのははじめてだよ」
「成程ね」
「これはいい機会だよ、さて遊びは」
 メジェドはボタンとのお話の後であらためて遊びのお話をしました。
「何かというと」
「何をするのかな」
「うん、しりとりはどうかな」
 こう提案するのでした。
「それは」
「いいですね、じゃあ皆で」 
 カルロスが笑顔で応えました。
「しりとりをしましょう」
「皆で言葉を出していって」
 恵梨香も笑顔でお話します。
「言葉の最後の一文字をつなげていきましょう」
「そういえば最近しりとりをしていなかったですし」
 神宝は自分達の遊びでそれを近頃していなかったことに気付きました。
「それならですね」
「丁度いい機会ですね」
 ナターシャはにこりと笑って述べました。
「しりとりをするには」
「メジェド神が言われたのなら」
 それならと言ったのはジョージでした。
「丁度いい機会ですしね」
「じゃあ皆でしていこう」
 メジェド神は五人の賛成の言葉を受けて言いました。
「今はね」
「わかりました」
「若し言葉を終わらせてしまった人がいれば」
 その時はといいますと。
「その人は罰ゲームでジュースを飲む様にしよう」
「ジュースを一杯だね」
「そうしたらどうかな」
 こうハンクに言うのでした。
「その時は」
「そうだね、罰ゲームもあると面白いし」
「その罰ゲームもこうしたものならね」
「収まりがいいしね」
「酷い罰ゲームだと何か嫌だよね」
 メジェド神はハンクに尋ねました。
「そうだよね」
「遊びでそういうことはね」
「だから軽くだよ」
「ジュースを一杯だね」
「ジュースはオレンジでも何でもいいね、ハトホル女神だと柘榴だけれどね」
「ジュースはそれぞれが好きなものでいいわね」
 トロットがジュースについてはこう言いました。
「それは」
「もうその時にだね」
「罰ゲームになった人のね、じゃあね」
「今からだね」
「はじめましょう」
 そのしりとりをというのです、こうお話してです。
 皆で楽しくはじめるのでした、そしてその後で。
 皆が十時のティータイムを楽しんでいるとです、そこでラー神の祭壇に誰かが来てでした。ラー神が皆のところに来て言ってきました。
「諸君、お客さんが来たぞ」
「今日のお祭りのだね」
「そう、その人達がね」
 ハンクに答えるのでした。
「いよいよ」
「本当に誰なのかな」
「そのことをね」
 まさにとです、トロットもレモンティーを飲みつつ応えました。
「今遂にわかるのね」
「遂にと思うのかね」
「この時を楽しみにしていたから」
 だからとです、トロットはラー神に笑顔で返しました、そうしつつ神様にティーセットのお菓子であるクッキーとキャラメルそして干したプルーンを差し出しました。
「だからね」
「成程、楽しみに待っていると」
 ラー神もそうしたお菓子達をトロットにお礼を言ってから受け取って食べはじめてそのうえで言いました。
「そうも思えるものだ」
「そうでしょ」
「君の言う通りだ、では」
「それではよね」
「これからお客さん達に会ってくれ」
 こう言ってです、ラー神は一行にお祭りのお客さん達のお迎えに行ってでした。そのうえでなのでした。
 一行のところにお客さん達を案内しました、その人達はといいますと。
「あら、かかしさんに樵さんに」
「魔法使いさんとね」
「グリンダさんだったの」
「これはまた」
 トロットもハンクも言います。
「意外だね」
「誰かとは考えてなかったけれど」
「かかしさんや樵さんとは」
「本当に思っていなかったわ」
「僕達は実はグリンダのお城にいたんだ」
 かかしがトロット達に答えました。
「呼ばれたのはグリンダと魔法使いさんだったけれど」
「僕達もどうかって誘われてね」
 樵もトロット達にお話します。
「それで僕達も来たんだ」
「私はグリンダと一緒に魔法の研究をしていていてね」
 魔法使いもお話します。
「元々お祭りに呼ばれていたんだ」
「魔法は元々外の世界ではエジプトで生まれて」
 グリンダも言ってきました。
「それで魔法のことを学んでいるとなのよ」
「古代エジプトに至るのね」
「そうなの、だからね」
 それでというのです。
「私達はよくピラミッドにお邪魔して」
「魔法を学んでいるのね」
「そうしているわ、そして」
 グリンダはトロットにさらにお話しました。
「今回は魔法使いさんと一緒にね」
「お祭りに呼ばれたのね」
「そうだったの」
「誰かと思っていたけれど」
「私達だったというのね」
「そういうことね、じゃあこれから」 
 トロットはグリンダにあらためて言うのでした。
「皆でね」
「お祭りを楽しみましょう」
「それではね」
「実は僕達もピラミッドのお祭りに参加させてもらったことがあるんだ」
「これまでにね」
 かかしと樵が一行にこのことをお話しました。
「そうだったんだよ」
「何度かね」
「そうなんですね、そういえばお二人は」
 カルロスも二人のお話を聞いて言いました。
「これまでオズの国のあちこちを冒険されていますね」
「そう、だからね」
「このピラミッドに来たこともあるし」
「お祭りにも呼ばれてね」
「楽しませてもらったこともあるよ」
「そうなんですね、それでドロシーさんも」
 カルロスは彼女の名前も思い出しました。
「あの人もここには」
「そうだよ、何しろドロシーはオズの国一の冒険家だからね」
「オズの国で行っていないところはないしね」
「参加していないお祭りもないから」
「当然ここにも来てるよ」
「そしてお祭りも参加されているんですね、何か」
 こうも言うカルロスでした。
「ドロシーさんならって思えますね」
「ここに来たことがあると聞いてもね」
「それでもだよね」
「ドロシーならってね」
「思えるよね」
「はい、むしろあの人が来られていない場所は」
 そして参加していないお祭りはというのです。
「オズの国にあるんでしょうか」
「ないと思うよ」
「僕達もね」
 かかしと樵はカルロスの返事に答えました。
「ドロシーは本当にオズの国の各地を冒険してね」
「いつもそうしていてね」
「もう巡っていない場所はないから」
「そうした娘だからね」
「そうですよね、まさにオズの国一の冒険家ですね」
 カルロスは二人のお話を聞いてしみじみと思いました。
「あの人は」
「冒険の申し子だね」
 ハンクのドロシーへの評価です。
「ドロシーは」
「そうだよね、本当に」
「僕達も色々冒険してきているけれど」
「ドロシー程じゃないね」
「ドロシー以上の冒険家は」
 それこそというのです。
「僕もいないと思うよ」
「オズの国にはね」
「外の国でもね、最初に来た時も大冒険だったしね」
「というかドロシーが関わっていない大冒険は」
 カルロスが言うにはです。
「そうそうないんじゃないかな」
「一つあったじゃない」
「一つ?ああ、オズマ姫が女の子だったってわかる」
 その一つが何か、カルロスは少し自分の記憶を辿ってからその辿り着くべきものに辿り着いてハンクに答えました。
「あの時だったね」
「あの大冒険にはドロシーは関わっていないね」
「そうだったね」
「もうドロシーは本当にね」
「大冒険については」
「常に関わっていて、そうでない冒険もね」
「数多く経験してきて」
「そうしてきていてね」
 それでというのです。
「オズの国で行っていない場所はね」
「もうないんだね」
「今の時点ではね」
「今の時点っていうと」
「だからオズの国は常に変化する国じゃない」
「アメリカを反映してだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「いつも変わるから」
「そうした国だから」
「そう、ドロシーがまだ行っていない場所はね」
「常に出来ていっていて」
「それでドロシーもね」
 彼女もいうのです。
「そうした場所があるってわかるとね」
「冒険に行くんだね」
「そうしているんだよ」
「成程ね、そこもね」
「ドロシーらしいよね」
「そう思ったよ、僕も」
 実際にというのです。
「本当にね」
「そのドロシ―王女は今回は来ないね」
 ラー神も彼女のことをお話します。
「招待はしていないけれど」
「それでも来たらだね」
「その時はだね」
「喜んで迎えるとも」
 ラー神はかかしと樵に笑顔で答えました。
「このピラミッドもオズの国にあるのだから」
「来る者は拒まず」
「そういうことだね」
「そう、だからだよ」
 それでとです、ラー神はかかしと樵に答えました。
「私もドロシー王女が若し来たら」
「その時はだね」
「お迎えするね」
「是非ね、それで今ドロシ―王女は何処にいるのか」
「今は別の場所に冒険に出ているか」
 トロットが答えました。
「それか宮殿にいるわ」
「エメラルドの都の」
「どちらかよ」
「そうか、まあ縁があったのなら」
 それならとです、ラー神はトロットの返事を聞いて述べました。
「今日ここに来るだろう」
「だからその時になのね」
「おもてなしをしよう、さてそろそろお祭りがはじまるから」
 それでとです、ラー神はまた言いました。
「ピラミッドの住人達が来たぞ」
「人間やマミーに」
 ハンクも彼等を見て言います。
「スフィンクスに神々もだね」
「そうだ、皆来ている」
「アヌビス神も来られてるけれど」
 ハンクはこの神様を見てこうも思いました。
「入り口の番は」
「大丈夫だよ、あの石のスフィンクスがいるのだから」
「ああ、あのスフィンクスだね」
「そう、彼がいてくれるから」
「入り口の番はだね」
「アヌビス神も入り口に異変があればすぐに察して」
 そしえというのです。
「すぐに戻るからね」
「だからだね」
「心配は無用だよ、アヌビス神はあそこにすぐに戻れるし」
「どうして戻るのかな」
「アヌビス神はジャッカルの頭を持っているね」
 このことから言うのでした。
「だから駆けるとね」
「ジャッカルみたいに速いんだね」
「むしろジャッカルより遥かにだよ」
 それこそというのです。
「駆けられるからね」
「入り口まであっという間になんだ」
「戻れるからね」
 それでというのです。
「心配は無用だよ」
「だからアヌビス神もだね」
「毎年お祭りに参加しているのだよ」
「さて、それでは」
 今度はメジェド神が楽しそうに言ってきました。
「いよいよ踊って飲んで食べようね」
「そういえば貴方どうして踊るの?」
 トロットがメジェド神に尋ねました。
「一体」
「この身体でだね」
「ええ、やっぱり足でだね」
「タップダンスは大の得意でね」
 それでとです、メジェド神はトロットに答えました。
「この身体で自由にね」
「踊るのね」
「手がなくても不自由しないって言ったね」
「ええ、神通力があるから」
「ものは持てなくても」
「自由に使えるから」
「だからね」
 それでというのです。
「手は使わなくてもいいし踊りもね」
「足で出来るから」
「不自由していないよ」
「そうなのね」
「どんな身体でも踊れるじゃないか」
 メジェド神はトロットにこうも言いました。
「そうだね」
「そうね、言われてみれば」
 実際にとです、トロットも頷きました。
「人の手足があってもなくても」
「踊りは出来るよ」
「そうよね」
「だからね」
 それでというのです。
「僕も踊るんだよ、そして飲んだり食べたりもするけれど」
「内臓をよね」
「食べるよ、ホルモンもレバーも」
 そのどれもというのです。
「そしてそれがね」
「楽しみなのね」
「そうだよ、それで君達もね」
「レバーとかをね」
「食べるね」
「そうさせてもらうわ」
「内臓は食べるべきだよ」
 メジェド神は確かな声で言い切りました。
「美味しいしね」
「栄養もあるし」
「食べて損はないよ」
「そうよね」
「そういえばね」
 メジェド神はこんなことも言いました。
「生のレバーはね」
「それね」
「君達は食べるかな」
「それは食べないわ」 
 どうにもとです、トロットは神様に答えました。
「生では。というかお肉自体をね」
「生ではだね」
「滅多に食べないわよ」
「そうなんだね」
「ええ、オズの国で生ものは」
 それはといいますと。
「サラダ、生野菜や果物はともかくとして」
「あまり食べないね」
「実際ね」
「食べるとしたらだよ」
 魔法使いがここでお話しました。
「お刺身かお寿司だね」
「あとカルパッチョよね」
「まあ大体和食だね」
 こう言うのでした。
「他の国のお料理には殆どないから」
「和食以外ではね」
「本当に食べないね」
「生のレバーのお刺身は美味しいけれど」 
 それでもとです、メジェド神は言いました。
「それでもだね」
「生のレバーは日本でも食べられなくなりました」
 恵梨香がメジェド神にお話しました。
「もう」
「そうなんだね」
「はい、そうなりました」
「それは残念だね」
「もう日本でも内臓は生では食べないみたいですね」
 ナターシャもこうメジェド神にお話します。
「色々ありますから」
「ホルモンとかモツ鍋とかありますけれど」
 神宝はこうしたお料理を出してお話します。
「それでもですね」
「焼き鳥もですね」
 ジョージはこのお料理を出します。
「やっぱりです」
「ううん、それは残念だね」
 どうにもとです、メジェド神は恵梨香達のお話を聞いて言いました。
「僕は生レバーも好きだけれどね」
「ここでは食べられるんですね」
 カルロスはメジェド神に尋ねました。
「ピラミッドの中では」
「うん、よく食べるよ」
「そうなんですね」
「生のレバーって美味しいの?」
 ボタンは今のお話に首を傾げさせています。
「本当に」
「私はお露だけで充分だけれど」
 ポリクロームはそうした身体なので今も飲むだけです。
「好きな人は好きみたいだね」
「まあオズの国は確かに火を通した肉料理が殆どで」
 それでと言ったのはカエルマンでした。
「特に内臓は生では食べないね」
「だからレバーもですよね」
 クッキーはカエルマンに応えました。
「生では食べないですね」
「そうだね」
「まあ機会があったらね」
 メジェド神は生のレバーについてはどうかと言う一同に答えました。
「食べるといいよ」
「それじゃあね、ただ僕はね」
 ハンクが応えました。
「お野菜とか草とかね」
「驢馬だからだね」
「そちらを食べるよ」
「そうするんだね」
「うん、じゃあ今からね」
「お祭りを楽しもうね」
 内臓のお料理のお話をしてです、そのうえででした。
 皆で楽しく食べて飲んでダンスも楽しみました。その中には神々や人、マミーに獣達といったピラミッドの住人達だけでなくです。
 ハンク達もいます、ダンスではカルロスはメジェド神と一緒に踊りますが。
 神様は軽快なステップと身のこなしで見事なダンスを披露しています、カルロスはその様子を見て言いました。
「ダンスお上手ですね」
「大好きだからね、こちらも」
 それでというのです。
「それでだよ」
「ダンスお好きですか」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「ずっと踊れるんだよ」
「体力もですか」
「そう、あるからね」
 だからだというのです。
「幾らでも踊れるよ」
「それは凄いですね」
「それもどんなダンスでも踊れるからね」
「といいますと」
「だからラップでもツイストでもタンゴでもね」
 そうしたダンスもというのです。
「サンバもね」
「サンバもですか」
「踊れるよ、確かに僕は手はないけれどね」
 それでもというのです。
「足と身体でね」
「その二つで、ですね」
「踊れるからね」
「そういうことですね」
「そうだよ、ではこれからね」
「一緒にですね」
「踊っていこうね」
 こう言って実際に踊っていくメジェド神でした、その中にはかかしと樵もいて彼等も楽しく踊っています。
 そのうえでこんなことを言うのでした。
「いやあ、ずっと踊っていたいね」
「ピラミッドの皆とね」
「僕達は疲れないしね」
「ずっと踊っていられるからね」
「君達何かね」
 ホルス神が二人のところにダンスを踊りながら言ってきました。
「身体の動きが慣れているね」
「うん、ダンスは好きだしね」
「今言った通り僕達は疲れないからね」
「ずっと踊っていられるからね」
「それこそ踊りたいだけね」
「実際にそうして踊ってきたから」
「それだけ上手なんだよ」
 こうホルス神にお話します。
「僕達はね」
「そうなんだよ」
「成程ね、そうした身体も便利だね」
 ホルス神は二人の返答に頷いて言いました。
「疲れないなら」
「食べることもないしね」
「寝ることもないし」
「僕達も有り難いと思っているよ」
「この身体にはね」
「世界にはお昼と夜があるけれど」
 ホルス神はこうも言いました。
「君達はどの世界にもいられるんだね」
「ずっと起きていられるからね」
「どちらの世界にもいられるよ」
「実際にね」
「それが出来るからね」
「そうだね、僕は基本的にね」
 ホルス神はといいますと。
「昼の世界になるかな」
「夜ではないね」
「そちらの世界ではないね」
「そう、ラー神の補佐役だからね、目の一つは月を示しているけれど」
 それでもというのです。
「基本はそうだね」
「お昼だね」
「貴方の世界は」
「そうなるね、けれどどちらの世界にもいられる」
 お昼も夜もというのです。
「そうした人もオズの国にはいるね」
「そういうことだね」
「僕達みたいにね」
 こう言うのでした、そしてです。 
 かかしと樵は踊っていきます、グリンダはそんな彼等を見ながら敷きものの上に座ってワインを飲んでいますが。
 そこにイシス女神が来てこんなことを言ってきました。
「また新しい魔法を生み出したそうね」
「ええ、この前ね」 
 グリンダはイシス女神にワインが入った杯を差し出しながら応えました。
「魔法使いさんと一緒にね」
「そうよね」
「今度披露していいかしら」
「お願いするわ」
 これがイシス女神の返事でした。
「私もね」
「そうよね」
「そう、そしてね」 
 それでというのです。
「最近魔法使いさんの魔法はマジックの要素が以前より増えているわ」
「手品ね」
「そうなの、今だってね」 
 見れば魔法使いはセト神やトト神、アヌビス神達に手品を披露しています、その腕前は以前より凄くなっています。
「見事でしょ」
「ええ、いい腕前ね」
「見ての通りね」
 まさにというのです。
「あの人は元々手品師だったし」
「最初からマジックは東医だったわね」
「それで最近特にね」
「マジックになってきたのね」
「だから私もね」
 グリンダもというのです。
「マジックでね」
「新しい魔法を身に着けていっているのね」
「そうなの」
 実際にというのです。
「これも面白いわよ」
「じゃあ貴女の新しいマジックも」
「手品よ、手を身体から離してね」
 そうしてというのです。
「自由に動かせるのね」
「そうした魔法なのね」
「そう、私の新しい魔法はね」
「確かにマジックみたいね」
 イシス女神が聞いてもです。
「それだと」
「そうでしょ」
「これからはそうした魔法もね」
「身に着けていくのね」
「そうしていくわ。魔法使いさんと一緒に研究をしていってね」
 それでというのです。
「私もね」
「成程ね」
「それとね」
「それと?」
「外の世界ではね」
 そこはといいますと。
「イリュージョンがあって」
「それも手品だったわね」
「そう、マジックよ」
「そうよね」
「何でも日本で凄く奇麗な女の人が得意で」
 それでというのです。
「その人のイリュージョンもね」
「研究しているのね」
「今はね、恵梨香からお話を聞いて」
 恵梨香はカルロス達と一緒です、オズの国の名誉市民の子達はメジェド神と一緒に楽しく踊った後は内臓のお料理を食べています。
「それでなのよ」
「イリュージョンもなのね」
「しているから、けれど学びはじめたばかりで」
 それでというのです。
「これから身に着けていくわ」
「そうしていくのね」
「私達はね」
「古代エジプトの魔法は」
 その時のことをお話するイシス女神でした。
「そういうのはなかったから」
「面白いのね」
「とてもね」
 実際にというのです。
「私から見ても」
「貴女はよくそう言うわね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「私もどんどんね」
「魔法を学んでいくのね」
「そのつもりよ」
「私からお話を聞いて」
「そうしていくわ」
 こうお話するのでした、ワインを飲みながら。
 ワインはカエルマンも飲んでいます、見れば一緒にスライスして焼いた大蒜やチーズを入れたレタスのサラダも食べています。
 そのサラダをクッキーと一緒に食べていますとそこにセクメト女神が来てこんなことを言ってきました。
「楽しんでいるみたいね」
「この様に」
「そうさせてもらっています」
「それなら嬉しいよ、やっぱりね」
 女神はお酒もサラダも楽しんでいる二人にワインをさらに差し出しつつそのうえでこうも言ったのでした。
「お祭りの時は音楽に踊りに」
「お酒もご馳走も」
「そちらもですね」
「楽しまないとね」
 本当にというのです。
「駄目だよ、だからあたしもね」
「飲まれていますな」
「お酒を」
「さっきはビールを飲んでね」
 そうしてというのです。
「今はワインもだよ」
「飲んでだね」
「楽しまれていますね」
「そうだよ、飲んで飲んで」
 そうしてというのです。
「楽しむよ」
「ちょっと、あんたは飲み過ぎたら駄目よ」
 ここでバステト女神が来て言ってきました。
「暴れたり潰れたりするから」
「今は大丈夫だよ」
「よくそう言うけれどね」
 それでもというのです。
「あまりね」
「飲んでもなのね」
「駄目よ」
 そこはというのです。
「本当にね」
「じゃあ飲み過ぎないといいんだね」
「いや、そう言ってもね」
 それでもと言うバステロ女神でした。
「あんたいつも飲み過ぎて」
 そしえてというのです。
「暴れるか潰れるかだから」
「駄目なのね」
「そうよ」
「やれやれね」
「そう言ってまだ飲むし」
「いいじゃないかい」
「仕方ないわね、じゃあ飲み過ぎた時は」
 バステト女神は奥地をへの字にさせて言いました。
「あんたの祭壇のお風呂に放り込むわね」
「いつも通りそうするのかい?」
「そうして酔いを醒ませてあげるわ」
「水風呂の方にだね」
「そうしてやるわよ」
 こう言いつつバステト女神も飲んでいます、そんなお話をしている横ではボタンはポリクロームと一緒に果物のジュースを飲んでいますが。
 そこにスフィンクスが来て二人に尋ねてきました。
「楽しんでいるかな」
「うん、ジュースを飲んでね」
「そうさせてもらっているわ」
「それは何よりだよ、お菓子もあるからね」
 スフィンクスは二人にこちらもと言いました。
「食べられたら食べてね」
「そういえばお菓子も」
 ボタンは自分達の傍を見ました、そこには木のお皿の上にです。
 様々な種類の果物が置かれていてです、お菓子もです。
 オズの世界に普通にあるチョコレートやクッキー、キャラメルやケーキにシュークリームと色々なものがあります。
 そうしたものも見てです、ボタンはスフィンクスに言いました。
「エジプトのお菓子かな」
「オズの国のお菓子だよ」
 スフィンクスは笑ってそこは断りました。
「このピラミッドはオズの国にあるからね」
「オズの国のお菓子もあるんだ」
「そういうことだよ」
「そうなんだ」
「だからお菓子も果物も」
 そのどちらもというのです。
「好きなだけ食べるといいよ」
「それじゃあね」
「ジュースもあるし」
 スフィンクスは今度はポリクロームにお話しました。
「お茶もコーヒーもだよ」
「どちらもあるのね」
「だから」
 それでというのです。
「思い存分楽しんで欲しいんだ」
「それがこのお祭りなんだ」
「皆で楽しむことが」
「お祭りは楽しむ為にあるね」
 このことから言うスフィンクスでした。
「だからだよ」
「つまりこのお祭りも楽しむ」
「その為のものなんだ」
「如何にも。踊ってもいいし飲んでもいいし食べてもいい」
 そのどれでもというのです。
「いいからね」
「じゃあ僕は食べるね」
「私は飲むわね」
 二人はそれぞれ応えてそうしてでした。
 ボタンはお菓子や果物を食べて楽しんでポリクロームは飲みました。二人もしっかりと楽しんでいます。
 そしてです、トロットはハンクと一緒にいて言うのでした。
「いや、まさかね」
「ピラミッドの中でだね」
「お祭りが出来るなんて」 
 このことがというのです。
「まさかね」
「思わなかったね」
「冒険をしに行ってね」
 そしてというのです。
「メジェド神を探す旅になるとも思わなかったし」
「お祭りにもね」
「参加出来るなんて」 
 それこそというのです。
「本当にね」
「思わなかったね」
「そうよ、何が起こるかわからない」
「それがオズの国だね」
「そのことを実感しているわ」
 トロット自身がというのです。
「心からね」
「そうだよね」
「そう、それでね」
「今はだね」
「このお祭りをね」
「楽しんで」
 そしてというのです。
「過ごしましょう」
「それがいいわね」
「私達も踊って音楽を聴いて」
「飲んで食べて」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「楽しみましょう」
「僕達もね」
「私もまた踊るし」
 今は休憩中なのです。
「貴方もね」
「うん、また食べるよ」
「そうするわね」
「レタスをね」
「レタスが本当に多いわよね」
「このピラミッドの中はね」
「セト神の好物のせいか」
 それでというのです。
「随分とね」
「それがね、僕にとってもね」
「嬉しいのね」
「そうだよ、だからね」
「また食べるのね」
「そうさせてもらうよ、あとパンもね」
「古代エジプトのパンね」
 どうしたパンはかトロットもわかりました。
「あのパンね」
「うん、あのパンもね」
 是非にというのです。
「食べようね」
「そうするのね」
「黒いパンだけれど」
「黒パンも美味しいわね」
「これはこれでね」
「だからなのね」
「また食べるよ」
 古代エジプトの黒いパンもというのです。
「是非ね」
「そうするのね、そういえば私もね」
「パンはだね」
「ずっと白いパンしか食べていなかったわ」
 そうだったというのです。
「最近は特にね」
「白いパンばかりで」
「黒糖パンもね」
 白砂糖ではなく黒砂糖を使って焼いたパンです。
「こちらもね」
「食べていなかったんだね」
「ご飯を食べることも多かったし」
 こちらもというのです。
「あとジャガイモもね」
「ジャガイモだね」
「ここではあまり縁がないけれど」
 ピラミッドではというのです。
「それでもね」
「確かに僕達ジャガイモよく食べるね」
「何かっていうとね」
「マッシュポテトにフライドポテトに」
「他にもジャガイモのお料理多いし」
「そのまま茹でてバターを乗せてもいけるし」
「ジャガイモはいいものだ」
 ここでセト神がトロット達のところに来て言ってきました。
「実に美味い」
「あれっ、セト神ジャガイモも好きなんだ」
「基本野菜は何でも好きだ」
「レタスだけじゃないんだ」
「左様、それで私はジャガイモもよく食べるのだよ」
「そうだったんだね」
「ただ古代エジプトにはなかった」
 そのジャガイモはというのです。
「実に新しく珍しい作物であるな」
「その頃新大陸は発見されていなかったから」
「我々はジャガイモを知らなかった」
「影も形もなかったんだったね」
「全くな」
「そうだったんだね」
「だからだよ」
 セト神はさらに言います。
「私も長い間食べるどころか存在すら知らなかったが」
「このオズの国ではだね」
「よく食べている」
「そうなんだね」
「このお祭りでは出ていないが明日にでも食べよう」
「それがいいね、ジャガイモを食べると」
 ハンクは笑顔でセト神に応えて言いました。
「それだけで幸せになれるしね」
「うむ、ではな」
「明日にでもだね」
「ジャガイモを食べるとしよう」
 古代エジプトのお祭りの中で、です。ハンクはセト神とこうしたお話もしました。その後セト神は親友同士であるトト神と仲良くワインを飲んでハンクを踊りに誘いました。それでハンクも踊りを楽しみました。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る