『オズのハンク』




               第八幕  夫婦の神様

 一行は先に進んだいきます、その中で食事も摂ります。今日のメニューはカルロスのリクエストでとても分厚いガーリックステーキにです。
 それとレタスにトマト、セロリを沢山入れてオニオンドレッシングをかけたサラダにマッシュポテト。マカロニと鶏肉に玉葱のシチューにパンそうしてケーキをデザートに出しました。そうしたものを食べながら。
 トロットは皆にこんなことを言いました。
「今度はイシス女神の祭壇に行くけれど」
「確かその女神様はね」
 カエルマンはその女神様の名前を聞いて言いました。
「前にお会いしたセト神の妹さんだったね」
「そうよね」
「それじゃあ」
 ここでボタンがサラダを食べつつ言ってきました。
「また動物の頭かな」
「いえ、イシス女神とオシリス神は違うの」
「エジプトの神様でも」
「ええ、絵の神々は人の頭だったでしょ」
「天の女神さまと地の神様だね」
「あの神々と同じ様にね」
「イシス女神は人の頭だね」
 ボタンは自分から言いました。
「そうなんだね」
「ええ、そしてオシリス神もね」
「人の頭なんだね」
「そうなの」
 こうお話するのでした。
「そうなっているの」
「エジプトの神様っていうと」
「イメージとしてよね」
「どうしても生きものの頭って感じがするけれど」
「実際にそうした神様は多いわね」
 トロットはステーキを食べています、そうしつつ言うのでした。
「エジプトの神様には」
「そうだよね」
「けれど完全に人の姿の神様もいるのよ」
「神様っていっても色々なんだね」
「エジプトの神様はね」
「神様はそれぞれの神話で姿が違うけれど」
 ポリクロームはお水を飲みつつ言います、この娘は今はお水を飲んでそれで楽しい食事にしています。
「エジプトは」
「どうしてもよね」
「人の身体で」
 それでというのです。
「生きものの頭だって」
「イメージがあるわね」
「そうだけれど」
「けれどね」
「それぞれなのね」
「そう、完全に人の姿の神様もいることはね」
「覚えておくわね」
 ポリクロームはトロットに頷いて言葉を返しました。
「そうするわね」
「そうしてね」
「そういえば」
 今度はクッキーがシチューの中のマカロニをスプーンですくってそのうえで食べながらトロットに言いました。
「オズの国はギリシアや北欧の神々もおられて」
「お会い出来るね」
 カエルマンがクッキーに答えました。
「そうだね」
「はい、ですが」
 クッキーはカエルマンにこう言うのでした。
「お姿は人のもので」
「大きさもね」
「けれどカエルマンさんのお話だと」
「実は元々はね」
「巨人ですね」
「ケルトの神々もね、巨人と正面から戦っているよね」
「神話ではそうですね、では」
 巨人と正面から戦うならというのです。
「本来のお姿は」
「巨人だよ」
「そこはお姿をですね」
「小さくしているんだ」
「そうなんですね」
「あと中南米の神々は」
 アステカやマヤ、インカの神々はといいますと。
「人の姿の神様もおられれば」
「蛇やジャガーだったりもしますね」
「そこは色々だね」
「そうですよね」
「本当に神様といっても」
 一口です。
「色々な姿に司るものがあるね」
「そうですよね」
「そこも面白くて」
 カエルマンはステーキを食べつつ言いました。
「神々のところを巡るのも楽しいね」
「そうですよね」
「驢馬の頭や姿の神様はいるかな」
 こう言ったのはハンクでした、サラダをもりもりと食べつつの言葉です。
「何処かに」
「馬の神様ならいるよ」
 ここで答えたのは神宝でした。
「十二支にね」
「あっ、十二支も神様だったね」
 ジョージは神宝の言葉で気付きました。
「それぞれ」
「西遊記でも神様として出てるっていうし」
 恵梨香は中国のこの小説を思い出しました。
「それならね」
「馬の神様になるわね」
 ナターシャも言います、五人共楽しく食べてそれぞれ飲みものとして出されている牛乳も飲んでいます。
「そうね」
「そうなるんだね、まあ馬はね」
 ハンクはこの生きものことも言いました。
「驢馬の親戚だしね」
「そうだよね、驢馬と馬はね」
 カルロスが驢馬に応えます、分厚いステーキを美味しく食べながら。
「兄弟みたいなものだね」
「うん、種族的にとても近くてね」
「だからだね」
「馬の神様がいるなら」
 それなたというのです。
「僕としてはね」
「驢馬の神様ともだね」
「考えられるよ」 
 そうだというのです。
「僕としてはね」
「そうなるね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「いや、トロットは僕に乗ることもあるけれど」
 ハンクはこんなお話もしました。
「エジプトの人達の絵では馬に乗ってる人いないね」
「あっ、戦車はあってもね」
「馬に曳かせるものはね」
「けれど馬に乗ることはね」
「なかったみたいだね」
「エジプト人は馬に乗らなかったんだ」
 カエルマンがここでまたお話をします。
「そのこともね」
「エジプトのことなんですね」
「そう、だからね」
「そのこともですね」
「覚えておいてね、軍隊でも馬に乗らなかったから」
「戦車に乗っていたんですね」
「そうだったんだ」
 こうお話するのでした。
「エジプトではね」
「よく騎兵がいますけれど」
「それはモンゴルとか遊牧民からでね」
「エジプトの人達はですね」
「乗らなかったんだよ」
「だから絵でもないし」
 ハンクがまた言いました。
「ピラミッドの中で馬や駱駝と一緒の人がいても」
「乗っていないね」
「それにはこうした訳があったんだよ」
「そうなんだね」
「そのことも覚えておいてね」
「そうさせてもらうよ」
「さて、食べ終わったら」
 それからのことはトロットが言います。
「あと少しでイシス女神の祭壇だから」
「あそこにだね」
「行ってね」
 そしてというのです。
「イシス女神にお会いしましょう」
「それじゃあね」
 こうしたお話をしながら一行はステーキやサラダを食べてです、それが終わってからまた冒険を再開してです。
 イシス女神の祭壇に来ました、すると古代エジプトの女の人の服を着た黒髪でとてもはっきりした奇麗な顔立ちの女の女神様がいました。
 女神様は一行と挨拶を交えてからこう言いました。
「ピラミッドの中はどうかしら」
「面白いよ」
 ハンクが答えました。
「とてもね」
「楽しんでると思っていいわね」
「うん、凄くね」
 ハンクは女神様に笑顔で答えました。
「そうさせてもらってるよ」
「それは何よりよ、ただ」
「ただ?」
「メジェド神には会ったかしら」
「実はその神様を探してなんだ」
 ハンクはイシス女神の問いにすぐに答えました。
「ピラミッドの中を冒険しているんだ」
「中々会えないわね」
「ラー神と連絡を取っているって聞いたけれど」
「あの方とだけは親しいしね」
「他の神様とは親しくないの?」
「彼はずっとピラミッドの中を歩き回ってるから」 
 だからだとです、イシス女神はハンクに答えました。
「滅多に会わないのよ。だったらね」
「親しいとかそういうことは」
「ないでしょ」
「そうだね、他の神様もそう言ってるよ」
「そうよね」
「セト神もハトホル神もね」
「私達は基本それぞれの祭壇にいるから」
 ピラミッドの中にいるそこにです。
「お互いに会う機会も少ないけれど」
「メジェド神は特になんだ」
「ピラミッドの中にいることは間違いなくても」
 それでもというのです。
「いつもあちこちを歩き回って」
「それでだね」
「祭壇も持っていないしここに来ても」
 祭壇にというのです。
「すぐに帰ることも多いから」
「すぐになんだ」
「お顔を見せてね」
 そしてというのです。
「挨拶してすぐにね」
「出て行ったりするんだ」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「仲が悪くはないけれど」
「親しくはないんだ」
「そうなの」
 実際にというのです。
「これといってね」
「成程ね」
「メジェド神は変わった神様で」
「それはわかるよ」
 ハンクとしてもです。
「変わったお姿だし祭壇もないし」
「何かと変わってるわね」
「うん、エジプトの神様でなくても」
「他の信仰の神々とも」
「またね」 
 それはというのです。
「違うね」
「そう、それでメジェド神に会うことは」
「運任せってところも多いんだね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「最後の最後はね」
「ラー神のところに行けば」
「会えると思うわ」
「絶対に会えないかってていうと」
「違うから」
 このことはというのです。
「安心してね」
「それじゃあね」
「あと貴方達はこれまで色々な神に会って」
 そしてとです、ここでこうも言ったイシス女神でした。
「色々な場所を巡ったわね」
「うん、ピラミッドの中のね」
「そうね、面白い場所ね」
「そうだね、迷路になっているし」
「オズの国だけあって」
 それだけにというのです。
「楽しい場所なのよ」
「だから女神様もだね」
「ここで楽しく暮らしているわ」
「そうしているんだね」
「今日もね、ではまた機会があったら」
「その時にだね」
「ここに来て」
 そしてというのです。
「お参りをしてね」
「そう、神様のところに来たから」
 トロットも言いました。
「お参りはね」
「しないとね」
「セト神のところでもハトホル女神のところでもしたし」
「だったらね」
「イシス女神のところでもね」
 つまりここでもというのです。
「しっかりとね」
「お参りをして」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「次の場所に行きましょう」
「それじゃあ」
「お参りをしてくれたら」
 またイシス女神が言ってきました。
「私としてもね」
「嬉しいわよね」
「神様だから」
 だからだというのです。
「お参りしてくれたらね」
「やっぱり嬉しいわよね」
「だからそうしてくれるなら」
「それじゃあね」
 トロットは女神様ににこりと笑ってでした、そのうえで実際にお参りをしました。そうしてそのうえで女神様と笑顔でお別れをして。
 迷宮の中を進んでいきます、すると今度は迷宮の中で二人で壁を修理している若い男の人達がいました。
 服は古代エジプトの服です、ハンクはその人達の近くに来て尋ねました。
「壁をなおしているんだ」
「そう、ラー様に言われて」
「そうしているんだよ」
 二人はこうハンクに答えました。
「ラー様はピラミッドの中のことは全てご存知だから」
「何処がどうなtっているかもご存知でね」
「壁が壊われていたらね」
「僕達がこうしてなおしているんだ」
「ちなみに僕の名前はランフィスっていうんだ」
 男の人の中で背の高い人が名乗りました。
「宜しくね」
「僕の名前はメンフィスっていうんだ」
 背の低い人も名乗りました。
「僕の方も宜しくね」
「こちらこそね。ただラー神は」
「ピラミッドのことは全部知ってるのね」 
 トロットも言いました。
「そいなのね」
「そうだよ、全部ね」
「玉座から見ておられるよ」
「何処に誰がいるかもね」
「ピラミッドの中なら全部ご存知だよ」
「だったら」
 そのことを聞いてです、トロットはこうも言いました。
「メジェド神が何処にいるのかも」
「ラー様はご存知だよ」
「あの方が何処におられるかも」
「そうなのね」
「僕達そのメジェド神を探してるけれど」
 ハンクがまた二人にお話しました。
「お会いしたくてね、どんな神様なのか興味があって」
「そうなんだね、まあ不思議な神様だね」
「お姿も消せるしね」
 二人はハンクに言葉にこう答えました。
「お姿もそうでね」
「お力も」
「何を司っているのかな」
「正義だよ」
「それを司っているんだ」
 二人はまたハンクに答えました。
「オズの国ではね」
「そして目から光を放てるんだ」
「言うならビームだね」
「それを使えるんだ」
「正義のビームかな」
「何かそれって」
 カルロスはハンクの横から言ってきました。
「ヒーローみたいだね」
「そうだよね」
「神出鬼没なところも」
「そんな感じだね」
「ああ、ヒーローだね」
「言われてみればそうかな」
 実際にとです、二人も答えました。
「あの神様は」
「そうなるかな」
「そんな風だね」
「そうだね」
 お二人でもお話をします、そのお話を聞いてでした。
 ハンクも納得してです、カルロスにお顔を向けて言いました。
「僕達はヒーローに会いに行くんだね」
「そうなるね」
 カルロスもこう答えました。
「それなら」
「そうだよね」
「まあね、悪い神様じゃないよ」
「ご性格もね」
「変わった神様でも」
「いい神様だからね」
「だったら」 
 カルロスは二人の言葉を聞いてまた言いました。
「安心してね」
「会いに行けばいいね」
 ハンクも応えます。
「そうすればいいね」
「その時は」
「うん、是非ね」
「お会いすればいいよ」
 二人はハンク達に笑顔でお話しました。
「折角このピラミッドに来たんだし」
「そうすればね」
「是非そうさせてもらうね」
 これがハンクの二人への返事でした。
「僕達も」
「うん、ではね」
「これからも冒険を続けていくね」
「このピラミッドの中で」
「そうしていくね」
「そうさせてもらうね」
 ハンクは二人にまた返事を返しました、そしてです。
 二人の壁の修理が終わってから別れることにしました、ですが二人は今度は絵文字を描きはじめました。 
それを見てです、ハンクはまた二人に尋ねました。
「君達が描いていたんだ」
「ああ、絵も修理するから」
「僕達はそうしているからね」
 二人はハンクにあっさりとした口調で答えました。
「壁の模様とかもね」
「そうしているからね」
「それでだね、しかし」
「しかし?」
「しかしっていうと」
「随分と上手だね」
 その絵文字の出来を見ての言葉です、見れば実際にとても上手です。
「壁の修理も絵文字も」
「ずっとやっているからだよ」
 背の高い人が答えました。
「だからね」
「慣れていてだね」
「やっぱりいつも、それもずっとやっていたら」
 それでというのです。
「上手になるよ、しかも僕達はこの仕事が好きだから」
「好きでもあるとね」 
 背の低い人も言います。
「尚更ね」
「好きこそもののだね」
「だからね」
「二人共上手なんだね」
「そういうことだよ」
「そのこともわかったよ」
 ハンクは二人のお話に笑顔で頷きました、そしてです。
 一行は二人と別れて冒険を再開しました、そうしててくてくと歩いていってです。今度は目の前に人の顔とライオンの頭をした生きものが出てきました。お顔は立派な男の人のもので顎にはお鬚を覆う様なものが付いていて頭には被りものをしています。
 その生きものを見てカルロス達五人はすぐに言いました。
「あっ、スフィンクスだね」
「そうだね」
「エジプトにあるのそのままだよ」
「あのスフィンクスは石だけれど」
「このスフィンクスは生きているわね」
「ピラミッドはエジプトだから」
 カルロスはそのスフィンクス、ライオン位の大きさの彼を見つつそのうえでこんなことも言いました。
「だからいるんだね」
「ピラミッドの傍にもいたスフィンクスとは別に」
 ジョージもスフィンクスを見ながら言います。
「生きているスフィンクスもいるんだね」
「生身のスフィンクスもいるんだね」
 神宝の口調はしみじみとしたものでした。
「オズの国には」
「いや、流石はオズの国ね」
 ナターシャもスフィンクスを見ています、そのうえでの言葉です。
「生身のスフィンクスもいるなんて」
「それで私達は今そのスフィンクスに会ったのね」
 恵梨香のお顔は微笑んでいます。
「また一つ不思議に出会えたのね」
「ああ、君達は外から来たんだね」
 そのスフィンクスが言ってきました、しっかりとした男の人の声です。
「服装からそうじゃないかって思っていたけれど」
「その通りよ」
 トロットがスフィンクスに答えました。
「私達はエメラルドの都のね」
「そう言う君はトロット王女だね」
「私のことを知ってるのね」
「オズの国で君を知らない人はいないよ」
 スフィンクスは笑顔で答えました。
「それこそね」
「それでなのね」
「初対面だけれどね」
 それでもというのだ。
「君達のことは皆知ってるよ」
「そうなのね」
「ずっと会いたいと思っていたけれど」
 スフィンクスは笑顔でこうも言いました。
「今ここで会えたね、それと」
「それと?」
「いや、君達は謎々は好きかな」
 トロットに対してこんなことも言うのでした。
「それは」
「あっ、スフィンクスだから」 
 それでとです、カルロスもすぐにわかりました。
「謎々が好きなんだね」
「そう、スフィンクスの趣味は謎々だよ」
 まさにそれだというのです。
「だから君達にも尋ねているんだ」
「謎々が好きか」
「そのことをね」
 まさにというのです。
「聞いているんだよ」
「そうだね、じゃあその謎々は」
「手がなくて」
 スフィンクスはその謎々を言いはじめました。
「お口もお鼻もない、目だけあって服は一枚。この神様は誰かな」
「メジェド神だね」
 カルロスは笑って答えました。
「あの神様だね」
「そうだよ、わかるよね」
「僕達は今その神様を探しているからね」
 だからだというのです。
「余計にだよ」
「その姿をだね」
「頭に入れているよ」
「そういうことだね」
「あの、若しもだよ」 
 ここで言ったのはハンクでした。
「謎々に正解出来なかったらどうなっていたかな」
「別に何もないよ」
 スフィンクスはハンクにすぐに答えました。
「これといってね」
「食べたりしないんだ」
「食べるって君達を?」
「うん、そうしないんだ」
「僕はお肉は好きだけれどね」
 それでもとです、スフィンクスはハンクに今度は笑って答えました。
「生肉は食べないし誰かを襲って食べることもね」
「しないんだ」
「謎々は謎々で」
 それでというのです。
「それ以外のことはね」
「ないんだ」
「そうだよ、別にね」
 これといってというのです。
「本当に」
「そうなんだね」
「スフィンクスは謎々に答えられない人を食べるっていうけれど」
 カルロスもそのお話をしました。
「違うんだね」
「そんなスフィンクスいるんだ」
「僕の知ってるスフィンクスはそうだけれど」
「オズの国ではそんなスフィンクスいないよ」
 それこそというのです。
「そんなことは」
「そうなんだね」
「誰かを食べるとか」
 ここで言ったのはボタンでした。
「そんなのオズの国ではないからね」
「そうよね、カルロスの言うことは外の世界のことで」
 ポリクロームも言いました。
「オズの国は違うわよ」
「オズの国は」
 クッキーも言います。
「そうしたことはないから」
「そのお話はギリシアのお話だね」
 カエルマンはこのことを知っていました、それでカルロスに応えて言うのでした。
「そうだね」
「はい、そうです」
 その通りだとです、カルロスはカエルマンに答えました。
「そちらのスフィンクスですが」
「あのスフィンクスもオズの国にいるけれど」
「それでもですか」
「そんなことはしないよ」
 絶対にというのです。
「オズの国のスフィンクスはね」
「そうですか」
「ましてや僕はピラミッドの神獣だから」
 そのスフィンクスの言葉です。
「尚更だよ」
「そんな物騒なことはなんだ」
「しないよ」
 絶対にというのです。
「本当にね」
「そうなんだね」
「ちゃんとお料理をして」
「そうしてだね」
「それを食べているからね」
「じゃあ謎々に答えられなかったら」
「残念でしたでね」
 それでというのです。
「終わりだよ」
「そうなんだね」
「そう、あとメジェド神だけれど」
「僕達が探しているね」
「あの神様ならさっき会ったよ」
 笑顔で、です。スフィンクスは言うのでした。
「十分位前にね」
「本当についさっきだね」
「そうだったんだ、ただね」
「ただ?」
「あの神様は気まぐれで」
 それでというのです。
「また何処かに行ったから」
「僕達が会えるかっていうと」
「どうだろうね」
 それはというのです。
「難しいよ」
「そうなんだね」
「だからね」
 スフィンクスはカルロスにさらに言いました。
「そこはね」
「割り切ってだね」
「そうしてね」
 それでというのです。
「行くといいよ」
「会う会えないは」
「そう思ってね」
「ラー神にお話すれば会えるんだよね」
 ハンクはスフィンクスにこのことを確認しました。
「そうだよね」
「うん、そうすれば確実にね」
 その通りだとです、スフィンクスもハンクに答えます。
「会えるよ」
「それじゃあ絶対に会えるね」
「そうしないと会える会えないは運だけれど」
 それでもというのです。
「絶対に会う方法はあるからね」
「そこは安心していいんだね」
「君達もね」
「それなら安心だね」
「うん、本当に一目見たら忘れられないお姿だけれどね」
「目だけでね」
「手もないからね」
 そのお姿のお話もするのでした。
「考えれば考えるだけね」
「変わったお姿だね」
「本当にね」
 実際にとお話するのでした。
「不思議だよね」
「あの服の下はどうなっているのかしら」
 トロットはふと思いました。
「一体」
「ああ、何でもね」
「何でも?」
「あの服はお身体の一部で」
「そうなの」
「生地にそのまま目が出ていて」
 それでというのです。
「足もね」
「服から出ているのね」
「あれはスカートでもないから」
 服はというのです。
「足の周りは生地でずっと包まれているんだ」
「スカートみたいに開いていないのね」
「うん、そうだよ」
「てっきり服の下にお身体があると思ったけれど」
「そうじゃないんだ」
「それはまたね」
 トロットはスフィンクスのお話を聞いて思いました。
「意外だわ」
「最初このお話を聞いて驚かない人はいないよ」
「実際私も驚いてるわ」
「そうだよね、まあそういうことで」
 それでというのです。
「覚えておいてね」
「そのこともそうさせてもらうわ」
「それじゃあね」
「いや、凄いことがわかったよ」
 ハンクはメジェド神のお身体のことがわかってしみじみとした口調で言いました、それでこうも言ったのでした。
「そんなお身体の神様もいるんだね」
「というかね」 
 カルロスがハンクに応えました。
「服が身体になってるって」
「ちょっとないよね」
「そうだよね」
「いやいや、僕達だってね」
 スフィンクスがハンクに言いました。
「毛皮がそのまま服じゃないか」
「ああ、そう言われるとね」
「それと同じだね」
「言われてみればね」
「着替える必要のない服だよ」
 毛皮はというのです。
「そうしたものだよ」
「そうだね、僕達はもう服を着てるね」
「人と違ってね」
「それは面白い考えだね」
 カエルマンもそのお話を聞いて興味深そうなお顔になっています、そしてそのお顔でこうも言うのでした。
「君達がもう服を着ているというのは」
「君はその上に着ているけれどね」
「人やそれに近い身体の仕組みだとね」
「お肌の上からだね」
「服を着ないとね」
 そうしないと、というのです。
「寒いし恥ずかしいしね」
「裸だからだね」
「だからだよ、それにね」
「それに?」
「ファッションでもあるからね」
 カエルマンはスフィンクスに笑ってこうも言いました。
「だからね」
「しっかりとなんだ」
「服を着ているんだ」
「そう言えば君は随分お洒落だね」
「お洒落は大好きだからね」
 それでというのです。
「いつも凝っているよ」
「黄色いタキシードなんだね」
「そうだよ、そうして」
 そのうえでというのです。
「ハンカチにもね」
「気を使っているんだね」
「シルクハットにもね」
 服と同じ色のそれを大事そうに持っています、確かにカエルマンは相当なお洒落です。見れば靴はピカピカです。
「そうしているしね」
「それはそれで楽しそうだね」
「実にね、しかし私も思ったよ」
「僕達はもう毛皮という服を着ている」
「だからメジェド神の服が身体と一緒でも」
 それでもというのです。
「面白い考えだとね」
「思うんだね」
「とてもね、そうした身体の構造でいられるのも」
「どうかっていうんだね」
「オズの国ならではだね」
 こう言うのでした。
「まさに」
「それを言うとそうだね」
 スフィンクスも納得して頷くことでした。
「本当にね」
「身体の構造は、だね」
「神様によってもそれぞれで」
「オズの国では人でも有り得るしね」
「そうそう、オズの国だと」
 ハンクはカエルマンとスフィンクスのやり取りの中でこうも言いました。
「かかしさんや樵さんみたいにね」
「寝なくても食べなくても平気な人達がいてね」
「クルマーみたいな人達もいるし」
「手足が車輪になっているね」
「ジグゾーパズルや瀬戸物の人達もいるし」
「そこは本当にね」
 カエルマンはハンクにもお話しました。
「オズの国ならではだね」
「この国だから」
「色々な身体の人達がいて」
「神様もだね」
「いられるんだよ」
「そうだよね」
「さて、僕はこれからアヌビス様のところに行くけれど」
 スフィンクスはここで自分が行く場所のお話をしました。
「君達はどうするのかな」
「今度はオシリス神の祭壇に行くつもりなの」
 トロットがスフィンクスの質問に答えました。
「次はね」
「あの方のところにだね」
「そのつもりなの」
「そう、じゃあね」
 そのお話を聞いてです、スフィンクスは一行に絵外で告げました。
「これからの冒険も楽しんでね」
「そうさせてもらうわ」
 トロットも笑顔で応えました、そうしてです。
 笑顔で別れてそれからです、トロット達は冒険の旅を再開しましたがここでハンクが彼女に言ってきました。
「あとどれ位かな」
「オシリス神のところまでね」
「うん、どれ位かな」
「マップを見たら」
 それを見てチェックしますと。
「あと少しよ」
「そうなんだね」
「そう言ってる間に」
 祭壇の入り口が見えてきました。
「着いたわね」
「早いね」
「そうね、何かピラミッドの迷路にもね」
「慣れてきたかな」
「そうかも知れないわね」
「どうもね」
 ハンクも頷いてでした、そうして皆で祭壇の中に入りますと立派なお顔立ちに緑色の肌の古代エジプトの服の中でもかなり豪奢な服を着た神様がいました、傍に鰐みたいな頭をした犬の身体の獣もいます。
 その神様が自分から名乗りました。
「私がオシリス神だよ」
「イシス女神のご主人の」
「そうだよ」
 こうハンクに答えました。
「私がね」
「あの、その緑のお肌は」
「これは植物を表しているんだ」
「それで緑色なんですか」
「私は冥界の神でしかも植物のことも司っていて」
 それでというのです。
「それでだよ」
「お肌が緑色ですね」
「植物の色なのだよ」 
 まさにというのです。
「私の肌はね」
「植物ということは」
 ボタンがそう聞いて言うことはといいますと。
「麦とかお米も」
「そう、作物もだよ」
 オシリス神はボタンにも答えました。
「私は育てているのだよ」
「そうだよね」
「だから私の仕事は重要で」
 ボタンにさらに言うのでした。
「気が抜けないのだよ」
「大変だね」
「しかしやりがいがあるから」
「楽しそうだけれど」
「実際私の仕事を楽しんでいるよ」
 オシリス神自身がというのです。
「毎日ね」
「若し麦やお米が育たないと」
 どうなるかとです、クッキーが言いました。
「もうどうなるか」
「考えるだけでも怖いわ」
 トロットはクッキーに応えました。
「本当に」
「そうですよね」
「だから私もだよ」
「頑張ってるのね」
「そうなのだよ」
 オシリス神はトロットにも答えました。
「日々ね」
「そういうことね」
「他の神々と共にね」
「そのこともわかったわ」
「そして日々」
 ここでオシリス神は盃を出しました、その中にあるワインを飲みながらそうしてこんなことを言ったのでした。
「飲んでもいるしね」
「ワイン好きなのね」
「ビールも好きで」
 それでというのです。
「ワインも好きでね」
「お酒ももなのね」
「大好きで」
 それでというのです。
「毎日飲んでいるよ」
「お酒が好きなんて」
「いやいや、これはね」
 実際に飲みながらドロットに答えます。
「もう私の最大の楽しみなんだよ」
「それで毎日飲んでいるの」
「作物を育てて」
「お酒も造って」
「そうして飲むの」
「そうだよ、そして何杯も飲んで」
 そうしてというのです。
「楽しい夜を過ごしているよ」
「そういえばもう夜ね」
 トロットが言われて気付きました。
「いい時間ね」
「そうだ、だからだ」 
 それでというのです。
「君達は今夜はだ」
「ここで、なのね」
「休むといい」
 こう言うのでした。
「朝までな」
「そう言ってくれるなら」
 トロットはオシリス神に笑顔で応えました。
「有り難くね」
「ここで眠るね」
「そうさせてもらうわ」
「お風呂もあるから」
 こちらもというのです。
「入るといい」
「沐浴ね」
「その通り、沐浴はしているな」
「どの祭壇に行っても」
 その時はというのです。
「しっかりとね」
「入っているね」
「絶対に入るものよね」
「このピラミッドでは」
 ここではというのです。
「決まっているしね」
「神様の祭壇に入る前は」
「そう、沐浴をして」
 そうしてというのです。
「それから神に会い」
「お参りもするわね」
「沐浴は欠かせないのだよ」
 それこそというのです。
「ここではね」
「だからもう入らせてもらってけれど」
 オシリス神の祭壇でもちいうのです。
「また入っていいのね」
「沐浴に過ぎるということはない」
 オシリス神はトロットに確かな顔で答えました。
「だからだよ」
「それではね」
「そして朝にもよかったら」
 この時もというのです。
「入るといい」
「その時もなの」
「何度も言うが沐浴に過ぎるということはない」
 それはというのです。
「だからだ」
「そうなの、じゃあね」
「寝る前にだな」
「入らせてもらって」
 そしてとです、またトロットは答えました。
「休ませてもらうわ」
「それではその様に」
 オシリス神も応えてくれました、そうしてでした。
 一行は寝る前にお風呂に入ってそれからゆっくりと寝ました。石のピラミッドの中ですがベッドはとても寝心地がいいものでした。








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