『オズのハンク』




               第六幕  ピラミッドの中の庭園

 一行は今度はピラミッドの中にある庭園に向かうことにしました、それで迷宮の中を進んでいきますがその中で。
 あるマミーが迷宮の中でベッツイ達を見てこんなことを言ってきました。
「あれっ、ベッツイ王女かな」
「そうだけれど」
 ベッツイはすぐにマミーに答えました。
「どうかしたの?」
「いや、ここに来てくれたんだね」
 マミーはベッツイの言葉に笑顔で応えました。
「そうなんだね」
「冒険でね」
「はじめてだよね、ここに来るのは」
「今ここにいる皆はね」
 ベッツイだけでなく他の冒険に同行している皆もというのです。
「そうよ」
「そうだよね」
「ええ、だから色々期待しているわ」
「期待に添えられるよ」
「このピラミッドは」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「期待していてね」
「もう三つの祭壇を回ったわ」
「入り口のアヌビス神とだね」
「トト神とバステト女神のね」
「それは何よりだね」
「美術館も行ったわ」
 そちらもというのです。
「そうしたわ」
「そちらにも行ったんだ」
「そうさせてもらったわ」
「もう結構回ってるね、けれどね」
「このピラミッドの中は広いから」
「まだまだ行ける場所はあるから」
 それでとです、マミーはベッツイに答えました。
「楽しんでね」
「是非ね」
「そういうことでね、実は僕もね」
 マミ―自身もというのです。
「今ピラミッドの中を冒険しているんだ」
「そうなのね」
「ずっとピラミッドの中に住んでいるけれど」
 そうしているけれど、というのです。
「何度も何度もね」
「中を冒険しているのね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「外にも出ているよ」
「ピラミッドの外にも出てるの」
「遠くには行かないけれど」
 それでもというのです。
「ピラミッドの外にも出てね」
「冒険しているのね」
「そうなんだ、スフィンクスさんともお話しているしね」
「あの神獣の石像さんとも」
「そうしているんだ」
「そうなのね」
「僕達ピラミッドの住人はね」
 マミーはベッツイにこうもお話しました。
「何時でもね」
「ピラミッドの外にも出られるの」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「自由に歩いて冒険や旅も出来るんだよ」
「ここだけが世界じゃないのね」
「そうなんだ、だからね」
 それでというのです。
「閉じ込められているかというと」
「違うのね」
「お日様も見ているしね」
 こちらもというのです。
「閉鎖されてはいないんだ」
「誰でも外に出られるのね」
「ピラミッドからね」
「そう聞くとね」
「いいよね」
「ええ、とてもね」
 ベッツイはこうマミーに答えました。
「ピラミッドの中にいる人達はずっとこの中かと思っていたけれど」
「出入りはアヌビス神のチェックを受けるけれど」 
 それでもというのです。
「ちゃんとねね」
「出入り出来るのね」
「そうなんだ、出ることも出来て」
「入ることも」
「どっちも出来るよ、あと入り口はアヌビス神が守っておられて」
 ベッツイ達が通ったあの場所です。
「出口もね」
「頂上にあるのよね」
「そちらも神様が守っておられるよ」
「どの神様なの?」
「ホルス神だよ」
 この神様がというです。
「守っておられるんだ、ただどちらからも出入り出来るから」
「入るか出るだけじゃないのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「僕達もどちらからもね」
「出入り出来るのね」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「それで実質ピラミッドの出入り口は二つあるんだ」
「入ることも出ることも出来るから」
「どちらからもね」
「それで貴方達もなのね」
「どちらから出てね」
 そしてというのです。
「どちらからね」
「入るのね」
「そうしてるんだ」
「そのこともわかったわ」
「ピラミッドの中は自由だよ」
 こうも言うのでした。
「出入りもね」
「そう聞くとね」
「ピラミッドのオズの国だよね」
「そう思ったしね」
「実際にだよ、あとこのピラミッドの主はラー神だけれど」
「オズの国だからよね」
「オズマ姫が治めておられるね」
 その様なというのです。
「その世界の中にあるよ」
「そうよね、だから」
「このピラミッドは一つの国で」
「ラー神が治めていて」
「オズの国の中にある一国だよ」
「それは他の国と同じね」
「神様が治めていてもね」
 それでもというのです。
「オズの国の中にあるんだ」
「そのことは私もわかっていたけれど」
「あらためて認識してくれたかな」
「よくね、ではこれからもね」
「ピラミッドの中を進んでだね」
「庭園もね」
 そこにもというのです。
「行くわ」
「それじゃあね、僕は僕で冒険を続けるけれど」
「私達は私達でね」
「お互いピラミッドの中をね」
「冒険しましょうね」
 二人で笑顔でお話してでした、そのうえで。
 マミーと別れてそうして冒険の旅を再開しました、そうして皆でピラミッドの中の庭園に着くとこれがでした。
 砂地の所々に草木が生えていてお花が咲いていてお池もあります、そこはまるでオアシスの様です。
 その中に入ってです、カエルマンはこう言いました。
「これはオズの国ではね」
「あまりないね」
「そうした庭園ね」
「うん、オズの国の庭園はね」
 どうかとです、カエルマンはボタンとポリクロームに答えました。
「左右対称の草木が豊かで」
「砂場はないよね」
「芝生とか草が生い茂っているわ」
「そうした場所でね」
「緑が豊かよ」
「日本風の庭園もあるけれど」
 こちらもと言うカエルマンでした。
「こちらも緑が豊かだしね」
「そういえばそうですね」
 カルロスがカエルマンに応えました。
「オズの国にも日本風の庭園がありますけれど」
「緑の草が下にあって」
 神宝も言いました。
「草木が沢山ありますね」
「他の国の庭園みたいに左右対称じゃないですけれど」
 ナターシャはこのことをお話しました。
「緑は豊かですね」
「砂地があっても白いお砂だったりして」
 ジョージはそうした日本風の庭園も知っているのです。
「こうした砂地ではないですね」
「ここはオアシスですね」
 それだとです、恵梨香は今自分達がいる庭園を見て言いました。
「言うなら」
「うん、そしてこの庭園がね」
 カエルマンは五人の子供達にも言いました。
「ピラミッドに相応しいね」
「そうだよね、ピラミッドはね」 
 ハンクがカエルマンに応えました。
「砂漠の中にあるから」
「砂もイメージが強いね」
「オズの国でもね」
「死の砂漠ではないけれど」
 それでもと言うカエルマンでした。
「砂漠は砂漠でね」
「砂だよね」
「そう、だから庭園もね」
「砂漠の中にあるオアシスなんだ」
「それをイメージする様なね」
「そうした場所なんだね」
「そうだと思うよ」
 カエルマンはハンクに答えました。
「私はね、そしてそのオアシスを見て」
「そしてだね」
「私達は楽しむのだろうね」
「そういうことだね、けれど」
「けれど。何かな」
「何か空中庭園を思い出したけれど」
 ハンクはカエルマンに考えるお顔でこうも言ったのでした。
「あれはエジプトじゃないね」
「外の世界のお話だね」
「そうだったね」
「あれはバビロンでしょ」
 ベッツイがハンクに言いました。
「そうでしょ」
「ああ、そうだったね」
「そうよ、同じ様に砂漠に囲まれた場所だけれど」
「エジプトじゃないね」
「また違う場所よ」
 ベッツイはハンクにこのことを強くお話しました。
「私もこのことは知っているから」
「本でも書かれているんだ」
「外の世界について書かれている本でもそうだしボームさんもね」
「教えてくれたんだ」
「そうなの、エジプトとバビロンはね」
「離れてるんだね」
「別の場所よ、川もね」
 こちらもというのです。
「違うわよ、エジプトはナイル川でね」
「バビロンは何川かな」
「チグリス=ユーフラテス川よ」
 この川だというのです。
「だからね」
「違う川だね」
「そうよ、そこも違うから」
 だからだというのです。
「間違えたら駄目よ」
「そのこともわかったよ」
「それでエジプトの庭園というかね」
「ピラミッドの庭園はだね」
「建物の中にあって」
 つまりピラミッドの中にです。
「それでなのよ」
「こうしてだね」
「オアシスみたいなのよ」
「そうなんだね」
「砂漠の中にオアシスがあったらね」
「ううん、オズの国の砂漠は死の砂漠でね」
「オアシスはないけれどね」
 それでもと言うベッツィでした。
「旅をしていて泉やお池があったらほっとするわね」
「凄くね」
「だからよ」
「そうした場所をイメージしてだね」
「このお庭はあるのだと思うわ」
「その通りよ」
 庭園でくつろいでいた若い女の人が言ってきました、勿論この人も古代エジプトの服を着ています。とても奇麗な人です。
「ここはピラミッドの中を冒険していて」
「その中で」
「そう、ほっとね」
「一息つく場所なのね」
「だからね」
 それでというのです。
「オアシスなのよ」
「そういうことなの」
「そうなの、だから皆もね」
「ここではくつろいでいいのね」
「充分にね、それとね」
「それと?」
「ここはフルーツもあるから」
 こう言ってでした、女の人はベッツイ達の手にあるものを差し出してくれました。それはみずみずしいオレンジでした。
 そのオレンジを差し出してです、女の人はベッツイ達にこうも言いました。
「他にもあるわよ」
「フルーツがなのね」
「ええ、そうよ」
 こう答えるのでした。
「だからそちらもね」
「食べてそうして」
「楽しんでね」
「そういえばフルーツが豊富ね」
 クッキーが見てもでした、どの木にも色々なフルーツが実っています。
 そしてです、女の人はさらにお話しました。
「バナナもザクロもメロンもあるし」
「ネーブルもあるわね」
「そうよ」
 クッキーにも答えるのでした。
「だからね」
「食べていいのね」
「ここは誰でもふんだんに食べていいから」
 だからというのです。
「どんどんね」
「それじゃあね」
「ふむ。では私はメロンを貰おうかな」
 カエルマンはそちらに注目して言いました。
「そういえば最近食べていないしね」
「メロンですね、そういえば」
 カルロスもそのメロンを見て言いました、凄く大きなメロン達が木にたわわに実っています。どのメロンの実も凄く美味しそうです。
「これは凄いですね」
「実に美味しそうだね」
「はい、とても」
「メロンを一つ取って」
 そしてというのです。
「二つに縦に切ってね」
「そうしてですね」
「中の種を取って」
 これも忘れないのでした。
「食べようね」
「ではそうしましょう」
「そしてね」
 カエルマンはこうも言いました。
「メロンの中にブランデーを入れるとね」
「お酒ですか」
「そう、そのお酒を入れて食べるとね」
「余計に美味しいですか」
「ブランデーがなくてもアイスクリームでもね」
 これを入れてもというのです。
「美味しいのだよ」
「それは確かに美味しそうですね」
 カルロスが聞いてもです。
「確かにね」
「それじゃあ」
「アイスクリームもあるわよ」
 女の人がまた言ってきました。
「ソフトクリームもね」
「そちらもですか」
「甘いものはね」
「フルーツ以外にもですか」
「あるわよ」
 そうだというのです。
「甘いものは何処にもあるから」
「オズの国だからですか」
「そうよ、古代エジプトでもね」
 その雰囲気でもというのです。
「アイスクリームがあって」
「ソフトクリームも」
「そう、あってね」
 そしてというのです。
「どちらも食べられるわよ」
「そうですか」
「だからメロンと一緒にアイスクリームを食べてもね」
「いいんですね」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「貴方達の好きにすればいいわ」
「それじゃあ」
「そしてね」
 さらにと言うのでした。
「私もね」
「その様にですか」
「食べるわ」
 そうすると言ってです、女の人は自分からでした。
 メロンを手に取ってそうして服からナイフを出してそれでメロンを縦に切って今度はスプーンで種を取りました。
 そうして庭園のお店にあるアイスを貰ってメロンの種があった場所にそのアイスを入れて食べてみるとでした。
 女の人は笑顔で言いました。
「物凄く美味しいわ」
「私が言った通りだね」
「ええ、凄くね」
 こうカエルマンに言いました。
「美味しいわ」
「そう、だからね」
 それでというのでした。
「これからね」
「皆でよね」
「こうして食べようね」
「カエルマンさんはブランデーじゃないの?」
 ハンクがカエルマンに尋ねました。
「そこは」
「ああ、それはね」
「それは?」
「今回は止めておくよ」
 こうハンクに答えました。
「皆と一緒にね」
「アイスクリームとなんだ」
「食べるよ」
 そうするというのです。
「そうしたい気分だから」
「気分は大事だね」
「そうだね、甘いものを食べる時も」
「だからね」
 それでというのです。
「今の私はだよ」
「そうして食べて」
「楽しませてもらうよ」
「じゃあメロンを食べて」
 ベッツイも言ってきました。
「他の果物もだね」
「食べるんだね」
「ええ、メインはメロンで」
 それでというのです。
「他の果物もね」
「それじゃあね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「見れば丁度お昼だから」
「それではだね」
「お昼ご飯もね」
 こちらもというのです。
「食べましょう」
「いいね、ではね」
「今日のお昼は」 
 早速そちらのお話をするベッツイでした。
「サンドイッチにしましょう」
「果物とだね」
「そちらにね。そして飲みものは」
 こちらはといいますと。
「牛乳がいいかしら」
「そちらだね」
「ええ、そちらを飲みましょう」
「サンドイッチにも果物にも合うね」
「牛乳はね、だからね」
 それでとです、ベッツイはカエルマンに答えました。
「私もよ」
「いいと思ってだね」
「牛乳をって思ったけれど」
「私もいいと思うよ」
 これがカエルマンの返事でした。
「飲みものはそれでね」
「じゃあ牛乳ね」
「それにしようね」
「では出すわね」
 こう言ってでした、実際に牛乳も出してです。
 それも飲みます、そうしつつベッツイは言いました。
「エジプトの神様は頭が色々な生きものであることが多いわね」
「そうですよね」
「これまでお会いした神様皆そうですね」
「これがエジプトの神様なんですね」
「人の身体で頭が他の生きもの」
「そうした姿ですよね」
「そうよね、ただ完全に人間の神様もいるわね」
 ベッツイは美術家の絵をまた思い出しました。
「そうした神様だけでなくて」
「何かですね」
 ここで言ったのは恵梨香でした。
「頭が他の生きものですとインパクトがあってすぐに記憶に残ります」
「アヌビス神やトト神もそうですし」
 ジョージも言いました。
「バステト女神も」
「インパクトがあって」 
 神宝も一回見て忘れられないと言います。
「他の国の神様と違いますね」
「他の国の神様は大抵人の姿ですね」
 ナターシャはギリシアや北欧の神様を思い出しました。
「巨人であっても」
「変身出来ても基本は人間というのが」
 最後のカルロスが言いました。
「神様の姿ですよね」
「私もそう思っていたけれど」
 それでもとです、ベッツイは五人に答えました。
「それがね」
「エジプトの神様は違いますね」
「頭が色々な生きものですね」
「完全に人間の神様もいますけれど」
「そこが違いますね」
「他の国の神様と」
「インドでもそうした神様いるわね」
 ベッツイはここでこの国の神々を思い出しました。
「象の頭の」
「ガネーシャ神だね」
 カエルマンがすぐに答えました。
「あの神様は有名だね」
「ええ、あとインドの神様はお顔や腕が多いのよね」
「そうした神様が多いね」
「腕が十本あったりするから」
「それが特徴だね」
「あっ、そういえば」
 ボタンが牛乳を飲みつつ言ってきました。
「中南米の神様達も」
「あちらは完全に動物ね」
「そうした姿だよね」
「中南米の神様も人間の姿の神様多いよ」
 カルロスがお話しました。
「ちゃんとね、けれどね」
「ケツアルコアトル神は、だよね」
「そう、緑色の身体の翼を持っている蛇でね」
「あちらのピラミッドでもね」
「そう言われていたね」
「完全に動物の姿の神様も多いね」
「人間だけじゃなくてね、ただ神様の姿も色々で」
 それでと言うカルロスでした。
「完全に人間とは限らないということだね」
「それでエジプトの神様達は」
 ポリクロームもお話に入ってきました。
「ああした姿なのね」
「お顔が別の生きものだね」
「そういうことね」
「ただ。人間とあまり変わらないわね」
 どうもと言うクッキーでした。
「全体的に受けた感じは」
「身体がそうだからね」
 カエルマンはクッキーにこうお話しました。
「だからだね」
「頭だけが違うので」
「しかもその生きものが私達が知っているね」
「そうした生きものなので」
「別にね」
 これといってというのです。
「強い違和感はないのだろうね」
「そういうことですか」
「いやいや、それがね」
 ここでさっきの若い女の人が言ってきました。
「そうとも限らないのよ」
「それはどういうことなの?」
「メジェドっていう神様がいるけれど」 
 女の人はベッツイ達に笑ってお話しました。
「この神様のお姿は他のどの神様とも違うわよ」
「一体どんな姿かな」
「ちょっと説明しにくいわね」 
 女の人はハンクに笑ってこう返しました。
「あの神様は」
「そんなに変わった神様なんだ」
「目だけあって服は一枚だけすっぽりで」
「すっぽり?」
「手がないのよ」
「?どんな姿かな」
「わからないわね」
 ハンクが首を傾げさせています、そしてベッツイもどうかというお顔になってそれで彼に応えました。
「本当に」
「うん、猫やジャッカルの頭じゃなくて」
「それで身体が人とかね」
「そういうのじゃないね」
「手がないのね」
「それで目だけ?」
「服は一枚っていうと」
 それはというのです。
「一体ね」
「どんな姿か」
「わからないわね」
「お話を聞いてもね」
「メジェド神もピラミッドの中におられるから」 
 女の人は笑ってお話しました。
「ただ。祭壇は持っておられないわ」
「そうなんだ」
「他の神様と違ってね」
「じゃあ何処にいるのかな」
「ピラミッドの中を歩き回っているの」
「そうしているんだ」
「そうなの、自由にね」
 そうしているというのです。
「だから簡単には見付からないわ」
「そうなんだ」
「けれど貴方達がお会いしたいと思うなら」
 それならというのです。
「探してみることもね」
「面白いっていうんだね」
「ええ、そこは貴方達で決めてね」
「わかったわ」
 女の人にベッツイが答えました。
「じゃあ実際にね」
「メジェド神を探すのね」
「そうしてみるわ、興味を持ったから」
 だからだというのです。
「どんなお姿か気になるし」
「本当に他のどんな神様ともね」
「違うお姿なのね」
「ええ、だからね」
 それでというのです。
「貴方達もね」
「探してね」
「お会いしてみてね」
「それじゃあね」
 ベッツイが頷いてでした。
 皆でメジェド神を探してどんな神様なのかお会いして確かめようと決めました、そのうえで庭園を出てまた歩きはじめますが。
 皆若い女の人が言ったそのお姿に首を傾げさせました。
「服が一枚なのはいいとして」
「身体にすっぽり着ているだけだね」
「それはわかるけれど」
「目だけ?」
「手がない?」
 カルロス達五人はどんな神様なのかわかりかねています。
「どんなお姿?」
「足はあるのよね」
「けれど手がないって」
「一体どんなお姿か」
「さっぱりわからないよ」
「私もだよ、ちょっとね」
 カエルマンも腕を組んでどうかというお顔になっています。
「目だけで手がないっていうのは」
「一体どんな風か」
「わからないですよね」
「服は着てるみたいですね」
「それじゃあ人の身体でしょうか」
「エジプトの他の神様と同じで」
「そうなんでしょうか」
「そうみたいだけれどね」
 それでもというのでした、カエルマンも。
「私にも想像が出来ないね」
「目だけってどういうことでしょうか」
 クッキーはそのカエルマンと同じ表情になっています。
「お顔はあるみたいだね」
「それはわかりますが」
「目だけっていうと」
「お鼻やお口はないんですね」
「耳もね」
「どんなお顔でしょうか」
「考えれば考える程わからないよ」
 本当にそうなっているカエルマンです。
「私にもね」
「本当にそうですよね」
「うん、どんな姿なのかな」
「インパクトのあるお姿なのはわかるわ」
 ポリクロームがわかるのはここまでです。
「あの人のお話を聞いてもね」
「それはわかるよね」
「ええ」
 その通りだとです、カエルマンに答えました。
「そのことはね」
「そうだね、けれどね」
「本当にわからないわね」
「どんなお姿かね」
「このピラミッドの中にいるのなら」
 それならと言うハンクでした。
「探していれば会えるかな」
「そうね、ただね」
 ベッツイはハンクの言葉に答えました。
「祭壇を持っていないそうだから」
「それでいつもピラミッドの中を歩いていてだね」
「それじゃあね」
「見付けることは」
「かなり難しいわね」
 このことを言うのでした。
「残念だけれど」
「運がよかったらかな」
「そうだと思うわ、それに色々な神様の祭壇も巡って」 
 そうしてというのです。
「ピラミッドの中をよく見て回りたいし」
「そうだよね」
「メジェド神は探すけれど」
「それと一緒にだね」
「ピラミッドの中を見て回りましょう」
「それじゃあね」
「運がよかったら会えるなら」
 ボタンが言う言葉はといいますと。
「会えるんじゃない?」
「ああ、君は運がいいからね」
 ハンクはボタンの今の言葉に応えました。
「だからだね」
「うん、僕不思議とね」
「運がいいよね」
「そうみたいだからね」
「多分オズの国で一番運がいいよ」
 幸運に満ちているオズの国の中でもです、ボタンはとにかく運がよくてそのせいで一緒にいるとその人達にもいいことが一杯あるのです。
「だったらだね」
「お会い出来ると思うよ」
「メジェド神にも」
「それでね。お会いしてね」
 そうしてというのです。
「どんなお姿かね」
「この目でだね」
「見ればいいと思うよ」
「そうだね」
 ハンクは今度はボタンの言葉に頷きました。
「どんなお姿か気になるけれど」
「それはね」
「実際にお会いして」
「それで確かめようね」
「それじゃあね」
 ハンクはあらためて頷きました。
「そうしようね」
「じゃあね」
「しかしね」
「しかし?」
「いや、ボタンのそうした考えはいいね」
 ボタンのそのあどけないお顔を見ての言葉です。
「あれこれ考えるよりもね」
「運がよければっていうのは?」
「こうした場合はね」
「いいんだね」
「僕はそう思ったよ、じゃあ運にね」
 今回はというのです。
「全てを委ねようね」
「それじゃあね」
「いや、エジプトの神様も」
 またベッツイが言いました。
「色々みたいね」
「そのこともわかったね」
「ええ、完全な人の姿とかね」
「頭が別の生きものとか」
「そうしたお姿の神様だけじゃないのね」
「そうだね、そんなね」
「想像も出来ない様なお姿の神様もいるのね」
 ベッツイの今の考えはこうしたものでした。
「エジプトには」
「中南米の神様も姿も独特だけれど」
「その神様もね」
「独特だね」
「インドの神様や仏教の仏様は腕が何本もあることがあるけれど」
 ベッツイはまたインドの神様そして仏教のお話をしました。
「それでも」
「手がないことはね」
「これまたね」
「独特ね」
「そうだね」
「二本足みたいなのは」
 このことはというのです。
「あの人のお話だと」
「まあおおよそね」
「わかるけれど」
「足もないとなると」
 その場合はというのです。
「ちゃんとね」
「手足がないってね」
「お話するね」
「ええ、蛇みたいな身体なら」
 手足がない生きものということからです、ベッツイは蛇もお話に出しました。
「ちゃんとね」
「それはそれでインパクトがあるから」
「お話するでしょうけれど」
「あの人手だけと言ったから」
「まず足はあるわね」
「それはわかるね」
「本当にね、じゃあここはね」
 あらためて言うベッツイでした。
「皆でね」
「ピラミッドの中を冒険しながら」
「探していきましょう」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、皆でピラミッドの迷宮を歩いていきます。途中である男の人にムジェト神のことを尋ねますと。
 この人はこうベッツイに言うのでした。
「手はないけれど足はあるよ」
「足はなんだ」
「そう、二本の人の足がね」
 それはというのです。
「あるよ」
「そうなんだ」
「ただ、手はなくて」
 この日ともこう言うのでした。
「そしてね」
「それでなんだ」
「そう、そしてね」
 そのうえでとです、ハンクにお話します。
「目だけなんだ」
「その目だけっていうのがね」
「気になるかな」
「服は一枚でだね」
「そうだよ、本当にね」
「足があることはわかったけれど」
 それでもと言うハンクでした。
「それでもね」
「わからないかな」
「どうもね」
 こう男の人に答えました。
「僕としては」
「まあね、本当に最初見たら驚く人も多いし」
「そうしたお姿で」
「君達も驚くと思うよ」
 メジェド神のその姿にというのです。
「お化けみたいだしね」
「お化け?」
「ほら、あの白い布を被った」
 ここで男の人はハンクにこんな風にお話しました。
「幽霊でもそうだね」
「ああ、アメリカ風の」
「そうそう、ああしらね」
「あんな感じなんだ」
「似ているのはそれかな」
「ううん、ああした幽霊になんだ」
「似て入いると言えばね」
 まさにと言うのでした。
「似ているかな」
「そうなんだ」
「まあとにかくね」
「そうした姿で」
「そして手がなくて」
 そうしてというのです。
「お顔は目だけなんだ、あと身体と頭が一緒になっている」
「身体と頭が?」
「そんな感じかな」
「ううん、余計にね」
「わからなくなったかな」
「わからないというか想像がつかなくなったよ」
 そうなったとです、ハンクは男の人に答えました。
「僕には」
「そうなんだね」
「どうもね」
「まあね、ピラミッドには絶対におられるから」
「ここから出ることはないんだ」
「他の神様は出られても」
 それでというのです。
「あの神様は出られても」
「それでもなんだ」
「そう、ピラミッドが随分お好きらしくて」
「出ることはしないんだ」
「だからね、この中を歩いていれば」
 ピラミッドの中をというのです。
「それでね」
「会えるんだ」
「ひょっとしたらね」
「つまり運がよかったらだね」
「そうだよ、まあここは色々な場所と神様を祀る祭壇があるから」
 だからとです、男の人はハンクにこうもお話しました。
「そうした場所も巡るとね」
「いいよね」
「そうてもいいよ」
 こう言ってそしてでした。
 男の人はその人の道を進んでいきました、そうして皆はまた先に進むのですがカルロスはその中でこんなことを言いました。
「エジプトっていうとクレオパトラだったけれど」
「ああ、あの絶世の美女だったっていう」
「その人とピラミッド位しかイメージなかったけれど」
 ハンクに対してお話します。
「それがね」
「変わったんだ」
「うん、このピラミッドに入ってね」
「エジプトの色々な神様ともお会いしてるし」
「それで今もお話した」
「メジェド神だね」
「その神様のこともあるから」
 だからだというのです。
「何かとね」
「イメージ変わったんだ」
「クレオパトラとピラミッドだけじゃなくなったよ」
「増えたんだね」
「うん、オズの国ならではだね」
「この国では色々なことを知ることも出来るのよ」
 ベッツイがお話しました。
「色々なものがあるから」
「だからですね」
「古代エジプトのこともね」
「何かとですね」
「知ることが出来るのよ」
「そうなんですね」
「そうした場所でもあるの」
 オズの国はというのです。
「そのことも覚えておいてね」
「はい、それじゃあ」
「私もね、エジプトのことはあまり知らなかったけれど」
「今回の冒険で、ですね」
「凄く勉強になってるわ」
「そうですか」
「ええ、ただメジェド神のことは」
 ベッツイもこの神様のお話をします。
「予想外の中の予想外で」
「それで、ですか」
「驚いてもいるわ」
「そうした神様がいるとですね」
「エジプトにね、他の国の神様にも」
「いないですよね」
「そう思うから」
 尚更という言葉でした。
「驚いているわ、そして」
「必ずですね」
「ピラミッドの中を巡りながら」
「そのうえで」
「メジェド神を探しましょう」
「そして会おうね」
「是非共ね」
 こうハンクに言いました、そしてです。
 皆でさらにピラミッドの中での冒険を続けることにしました、その中でハンクはベッツイにこんなことも言いました。
「今度のティータイムは何を飲もうかな」
「そうね、レモンティーにね」
 それにとです、ベッツイはハンクに答えました。
「ドーナツにキャラメル、チョコレートね」
「その三つだね」
「ドーナツだけでもね」
 それだけでもというのです。
「いいけれどね」
「それだけでもね」
「いいでしょ、ドーナツは」
「うん、ドーナツだけあれば」
 実際にとです、ハンクはベッツイに答えました。
「充分なところがあるね」
「けれどティータイムでね」
「ティーセットだから」
 それを食べる時だからだというのです。
「三つ出すから」
「それでキャラメルとチョコレートもだね」
「出してね」
 そうしてというのです。
「アメリカ風のね」
「ティーセットにするんだね」
「そうしましょう、じゃあ」
「これからもね」
「先に進んでいきましょう」
 こう言ってそうしてでした。
 一行はお茶のことも考えながら迷宮を進んでいきます、一行のピラミッドの中での冒険はさらに続くのでした。








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