『オズのハンク』
第五幕 猫の玄室
一行は今とても不思議な気持ちになっていました、ピラミッドの中にある美術館に入ったのですが。
そこにある絵や石像を観てです、それでそうした気持ちになっていたのです。
カエルマンはある絵を見てこんなことを言いました。
「なにかね」
「変わった絵ですね」
「そうだね」
クッキーにも応えます、その絵は少し年配の男の人が若い男女を上下に分けています。その絵を皆で観ていますが。
どうしてこうした絵になっているのかわかりません、それで皆この絵はどういったものかと考えて不思議な気持ちになっているのです。
上に瞬く星の服を着た女の人がいて下に若いエジプトの服を着た男の人がいます、間にその年配の人がいて女の人を持ち上げています。
その絵を見てカエルマンは言うのでした。
「意味があるのだろうけれど」
「その意味がですね」
「どうもだよ」
カエルマンはまたクッキーに言いました。
「わからないね」
「そうですね」
「わからないよ、僕にも」
ボタンもでした。
「これ何の絵なの?」
「女の人は星が煌めく服なのはわかるけれど」
ポリクロームも首を傾げさせています。
「男の人は何かしら」
「間にいる人もね」
「随分白いけれど」
「下の男の人は黄土色の服と頭の飾りで」
「これも何かあるの?」
「幾ら観てもわからないね」
ハンクもどうかというお顔になっています。
「この絵が何か」
「そうね、ここはね」
ベッツイがここで言いました。
「美術館の人に聞きましょう」
「ああ、美術館の人ならね」
ハンクはベッツイのその提案に頷きました。
「知ってるよね」
「そう、だからね」
「ここはだね」
「美術館の人を探して」
そしてというのです。
「聞いてみましょう」
「それがいいね」
「そしてね」
それでというのです。
「この絵の意味を知りましょう」
「それじゃあね」
こうお話してです、そのうえで。
ベッツイ達は早速美術館の人を探しました。すると丁度そこに古代エジプトの神官の服を着た人が通りがかりました、ピラミッドの美術館は学芸員の人も神官さんなのです。その人にベッツイが声をかけました。
「あの、いいかしら」
「何でしょうか」
見れば若い人です、その人がベッツイに応えました。
「一体」
「この絵だけれど」
皆が首を傾げさせているその絵を指差して言うのでした。
「何かしら」
「この絵ですか」
「ええ、何がどうなのか」
「意味がわからないと」
「そうだけれど」
「これはシュウ神とです」
それにというのです。
「大地の神ゲブと天空の女神ヌトです」
「神様の絵なのね」
「我々エジプトの神々の」
そうだというのです。
「尚シュウ神は日光の神でゲブ神とヌト女神は夫婦で」
「大地と天空で」
「そして二人の父神がです」
それがというのです。
「シュウ神なのです」
「お父さんが子供さん達の間になのね」
「入って分けています」
「そうなのね」
「この夫婦の神々は非常に仲がいいのですが」
「仲がいいことはいいことでしょ」
ベッツイは仲がいいと聞いてすぐに答えました。
「そのことは」
「はい、そのこと自体はいいのですが」
学芸員の人もこのことはと認めます。
「しかし」
「それでもなの」
「天空と大地はそれぞれ大きいですね」
「とてもね」
「その二つが離れないと」
「あっ、場所がね」
「邪魔されまして、それでです」
間を取る為にというのです。
「世界にいる様々な者達の為に」
「お父さんが子供さん達を分けているのね」
「ご夫婦でもありますが」
「兄妹でなのね」
「古代エジプトの神々とファラオは兄妹、姉弟で結婚出来たので」
それでというのです。
「ゲブ神とヌト女神もです」
「兄妹でなのね」
「ご夫婦でして」
「仲がよ過ぎて」
「天空と大地が離れなくてです」
「仕方なく分けているのね」
「天空と大地は離れていないと」
そうなっていないと、というのです。
「困りますね」
「ええ、本当にね」
「だからシュウ神が間にいるのです」
「そのこともわかったわ」
しみじみとして言うベッツイでした。
「そうした絵だったのね」
「そうなのです」
「この世界を表す絵なのね」
「左様です」
「けれどね」
ここでこうも言ったベッツイでした。
「仲がよくて迷惑なのは」
「そのことがですか」
「いいことなのに」
「ですからいつも一緒でもです」
それでもとです、学芸員の人はベッツイにまた答えました。
「それぞれの仕事をないがしろにしてはいけないですし誰かに迷惑をかけてもです」
「駄目なのね」
「そうです、オズの国でもオズマ姫が何もされないと」
「オズの国は成り立たないわ」
すぐにです、ベッツイは学芸員の人に答えました。
「それこそね」
「そうですね」
「だからなのね」
「はい、シュウ神が間に入って」
そしてというのです。
「二人をお仕事にもです」
「向けているのね」
「大地と天空はそれぞれこの世界を担う重要なものですから」
「どっちもちゃんとしないとね」
「世界自体が成り立ちませんから」
「深い意味があるのね」
「左様です」
「じゃあ日光がどうして間にあるのかな」
ハンクはシュウ神のことを尋ねました。
「それはどうしてかな」
「それも理由がありまして」
「そうなんだ」
「はい、日光つまり太陽は大地と天空の間にある様に見えますね」
「うん、そういえばね」
「だからです」
「それを司るシュウ神はだね」
「大地と天空の間にあって」
そしてというのです。
「その二つをを分けているのです」
「そうだったんだ」
「そうです、この絵は世界を表しています」
「親子でそうなっているんだ」
「そしてこの世の摂理のことも」
このこともというのです。
「そうなっています」
「そうだったんだね」
「おわかり頂けたでしょうか」
「よくね」
ハンクが笑顔で頷いてです、そうしてです。
皆でさらにその絵を見てエジプトの他の絵や象形文字それに石像を観ていきました、そうしてです。
ティータイムとなったので美術館の中の喫茶店でお茶を飲むことにしました、今回のセットはといいますと。
ミルクティーにスコーン、フルーツサンド、そしてケーキです。ベッツイは店員さんが勧めてくれたそのセットを見て言いました。
「今回はイギリス風ね」
「完全にそうだね」
ハンクもそうだと頷きます。
「これは」
「そうよね」
「エジプトなのにね」
「イギリス風になることは」
「ちょっとね」
「意外だね」
「多分ですけれど」
恵梨香が言ってきました。
「エジプトはイギリスの人達が沢山いた時期もあったので」
「それでだと思います」
神宝も言ってきました。
「ピラミッドや王家の墓を発掘したのもイギリスの人が多かったですし」
「スエズ運河もでしたね」
ジョージは外の世界のこちらのお話もしました。
「イギリスが長い間持っていましたね」
「そう思うとイギリスとエジプトが縁が深いですね」
ナターシャも言いました。
「だからこうしてティーセットはイギリス風だと思います」
「僕もまさかと思いましたけれど」
最後のカルロスが言いました。
「これはこれで、です」
「エジプトなのね」
「そう思えばいいかと」
「エジプトは古代だけじゃないってことね」
五人の言葉を聞いてベッツイはこう考えました。
「要するに」
「そうだと思います」
「つまりは」
「それでティーセットはイギリス風で」
「そのイギリス風を飲んで」
「そうして楽しめばと思います」
「そうね、そういえば最近ミルクティーを飲んでなかったわ」
ベッツイは自分自身のことに気付きました。
「だったらね」
「今はですね」
「これを機会にね」
カルロスに笑顔で応えてでした、ミルクティーのカップを手にしてです。
そうして飲んでみてこう言いました。
「美味しいわね、こちらのお茶も」
「ベッツイ最近紅茶はね」
「レモンティーが多くて」
「後ストレートだね」
「ミルクティーは」
ハンクにも応えて言います。
「本当に最近はね」
「飲んでいなかったから」
「久し振りに飲むと余計に美味しいわ」
「そうだよね」
「イギリス風のセットもいいわね」
「そうだよね、スコーンやサンドイッチもね」
「それでケーキも」
そのケーキはといいますと。
「バウンドケーキもね」
「いいよね」
「イギリスのこちらもね」
「イギリスの食べものって色々言われてますけれど」
カルロスはそのケーキを美味しく食べつつ応えました。
「それでもですね」
「ええ、オズの国ではね」
「普通に美味しいですね。僕達の学校でもです」
「イギリスの食べものは」
「スコーンとかサンドイッチとか」
「バウンドケーキもよね」
「普通に美味しいです」
そうだというのです。
「寮のおやつでも出ますけれど」
「そうなのね」
「何でもイギリスから来た子から聞きますと」
「どうなの?」
「イギリスで食べるよりもです」
同じメニューであってもというのです。
「ずっと美味しいそうです」
「そうなのね」
「素材や味付けが全然違っていて」
それでというのです。
「凄く美味しいって」
「同じメニューでも素材や味付けが違うと」
「味が全然違うみたいですね」
「そうなのね」
「それで、です」
「私達が今食べているティーセットも」
「凄く美味しいみたいですよ」
こうベッツイにお話するのでした。
「これが」
「そのこともわかったわ。ただね」
「ただ?」
「いえ、考えれみればオズの国のお食事は」
それ全体のことをです、ベッツイはスコーンを食べつつ思うのでした。
「私達が来た時は結構以上にね」
「今みたいに色々なくてね」
「なおざりなね」
「そんなところもあったね」
ハンクが言いました。
「どうも」
「そうだったわね」
「確かにそうだったわね」
ポリクロームも紅茶は飲めます、それで飲みつつ言うのでした。
「長い間。私は今もお露だけだけれど」
「すぐに食べられるとかね」
「そんな風だったわね」
「お食事に時間をかけたり」
「美味しいものを沢山食べるとか」
「今みたいにね」
「そんな風じゃなかったわね」
本当にというのです。
「三食お腹一杯になったらね」
「そんな風だったわね」
「メニューもずっと少なくて」
「粗食だったわね」
「本当に」
「お菓子はふんだんにあったけれどね」
ボタンが言ってきました。
「あの頃から」
「そうよね、私もその頃から作っているし」
クッキーがボタンの今の言葉に応えました。
「お菓子はね」
「ずっと前からね」
「ふんだんにあったわね」
「お菓子が実る木もあるし」
「そちらはあったわね」
「うん、甘いものは昔からある国だったね」
カエルマンもサンドイッチ、中に苺やオレンジを入れて生クリームも入れている凄く甘いそれを食べつつ頷きました。
「それこそ」
「そうだったわね」
「それがね」
どうにもというのです。
「オズの国も変わって」
「色々なものを食べられる様になって」
「食事もよくなったね」
カエルマンはベッツイに笑顔でお話しました。
「有り難いことに」
「そうよね」
「いいことだね」
「そうね、イギリスのティ―セットも美味しいし」
「私はいいと思うよ」
今食べつつ言うカエルマンでした。
「こちらもね」
「そうよね」
「私はドーナツが好きだけれどね」
「私もよ。ドーナツはね」
「本当にいいね」
「全く以てね」
「コーヒーやレモンティーにもいいし」
よく合うというのです。
「ドーナツはいいわね」
「そうだね」
「けれど」
それでもというのです。
「今はこうしてね」
「スコーンとかを食べてね」
「ミルクティーを飲もう」
「それがいいわね」
「古代エジプトでもミルクは」
「飲んでいたでしょうね」
「そうだろうね」
ミルクはというのです。
「こちらはね」
「そうよね」
「ベッツイはミルクも好きだね」
「こちらは毎日飲んでるわね」
「そうだね」
「ミルクティーはともかくして」
牛乳自体はというのです。
「本当に毎日飲んでるわね」
「そうだね、いいことだね」
「牛乳は美味しいしね」
「栄耀の塊と言ってもよくてだよ」
「飲んでも凄く身体にいいし」
「どんどん飲むといいよ」
「僕も大好きだよ」
ボタンもでした。
「牛乳はあれば絶対に飲んでるよ」
「ボタンも毎日飲んでるわね」
「美味しいし飲んだらよく寝られるし」
だからだというのです。
「よく飲んでるよ」
「そういえば牛乳をよく飲んだら」
カルロスも言いました。
「よく寝られるね」
「そうだよね」
「その日は普段以上にね」
「だから僕は毎日ね」
「飲めるならだね」
「沢山飲んでいるんだ」
牛乳をというのです。
「そうしているんだ」
「そうなんだね」
「僕寝ることが大好きで」
とにかく寝ることについては何よりも好きです、ボタン程よく寝る子はオズの国にいないのではとさえ言われています。
「だからね」
「牛乳を飲めたらだね」
「沢山飲む様にしているんだ」
「君らしいね」
「そうだね、ミルクティーも飲んで」
「これにもミルクが入っているから」
「楽しむよ」
こう言ってミルクティーをまた飲むボタンでした、そしてです。
喫茶店の外の景色を観てボタンはこんなことも言いました。
「ピラミッドの中で飲むのもね」
「いいものね」
ポリクロームが応えました。
「こちらも」
「そうだよね」
「特に今は美術館の中にいるし」
「余計にね」
そこにある絵や石像を観てです。
「いいわね」
「大人な雰囲気かな」
「そうも言えるわね」
「少なくとも知的な場所だね」
カエルマンは少し気取った感じで二人に応えました。
「ここは」
「その知的もだね」
「楽しめばいいのね」
「その通りだよ、知性に触れてその知性を受け入れる」
カエルマンはボタンとポリクロームにこうも言いました。
「それもいいことだよ」
「そうなんだ、じゃあね」
「私達もね」
「知的になろう」
「知的な中に入ってね」
二人だけでなく他の皆も喫茶店の中で知的な雰囲気を楽しみました、そして美術館の後はといいますと。
もういい時間なのでピラミッドの中にあった宿屋で休むことにしました、ハンクは宿屋の中の一室で同じお部屋で休むベッツイに言いました。
「中に宿屋まであるなんて」
「いいピラミッドよね」
「そうだよね」
「ポラミッドの中には集落もあってね」
「そこが村になっていてだね」
「そこに住んでいる人達もいて」
そしてというのです。
「宿屋もね」
「あるんだね」
「そう、だからね」
「今日はだね」
「この宿屋の中でね」
「ぐっすりと休んで」
「明日の楽しみましょう」
ベッツイはハンクに笑顔で言いました。
「そうしましょうね」
「それじゃあね」
「それと」
ベッツイはさらに言いました。
「明日はバステト女の祭壇に行くわよ」
「その神様もエジプトの神様だよね」
「そうよ、何でも猫に関わりが深い神様らしいわ」
「猫なんだ」
「そう、エリカやガラスの猫にとってはね」
「有り難い神様だね」
「そうみたいよ」
ベッツイはハンクにお話します。
「この神様はね」
「じゃあ明日は」
「朝起きて朝ご飯食べたらね」
「その神様の祭壇に行くのね」
「そうよ、あと最初に言ったけれど」
ここでベッツイはこうも言いました。
「女神様だから」
「男の神様じゃなくてだね」
「そうよ、エジプトの神様も女神様も多いからね」
「女神様のところにだね」
「明日は行きましょう」
こう笑顔でハンクに言ってでした、そのうえで。
皆は今はぐっすり寝ました、そしてベッツイの言う通りに次の日は起きて宿屋を出てすぐにでした。
朝ご飯を食べてです、それから。
バルテト女神の祭壇に向かいました、まずはそれぞれ沐浴を行ってそうして祭壇に入ったのですが。
そこには色々な種類の猫が一杯いました、クッキーはこのことに驚きました。
「猫が一杯いるわね」
「そうだね」
ハンクも驚いて言います。
「この祭壇には」
「こんな祭壇もあるのね」
「いや、意外だね」
「そうよね」
「それは当然のことよ」
ここで、でした。古代エジプトの女の人の服を着てです。
猫の頭の神様が出て来ました、その神様が皆に言ってきました。
「猫は私の神獣だからね」
「あっ、まさか」
「そう、私がバステトよ」
ハンクにすぐに名乗りました。
「猫そして愛と多産の女神よ」
「貴女がなんだね」
「そうよ、私もこのピラミッドの中にいてね」
そうしてというのです。
「祭壇を持っているのよ」
「それでその祭壇にはだね」
「こうして大勢の猫達もいるのよ」
「そうなんだね」
「いや、色々な種類の猫がいてね」
「可愛いわね」
ジョージとナターシャはもう猫達と遊んでいます。
「どの子も」
「人懐っこいしね」
「ここにいたら和めるね」
「凄くね」
神宝と恵梨香も猫達と遊んでいます。
「可愛いし」
「こんないい場所もピラミッドにはあるんだ」
「思う存分楽しむといいわ」
バステト女神は恵梨香達に笑顔で言いました。
「この祭壇ではね」
「はい、それで女神様は」
カルロスは猫達と遊びつつバステト女神に応えました。
「何の種類の猫かは」
「私の顔のね」
「何か山猫みたいなお顔ですね」
「これは最初と言っていいわ」
「最初ですか」
「そう、最初の頃のね」
こうカルロスにお話するのでした。
「猫よ」
「最初っていいますと」
「猫は古代エジプトではじめて生まれたものよ」
「あっ、家畜になったのは」
「そうよ、山猫みたいな種類の生きものを家畜化して」
そうしてというのです。
「猫になったのよ」
「犬と似てるわね」
そう聞いてです、ベッツイは言いました。
「犬は狼を家畜にしたから」
「そうね、それで古代エジプトではね」
バステト女神はベッツイにさらにお話しました。
「猫は神聖な生きものとされていて」
「大事にもなのね」
「されていたのよ」
「そうだったのね」
「そしてね」
「貴女はなのね」
「その猫の女神でもあるのよ」
ベッツイにその猫のお顔でお話します。
「神獣の守り神なのよ」
「では相当な地位にあるわね」
「ええ、エジプトの神々の中でね」
実際にという返事でした。
「そうなっているわ」
「そうよね、やっぱり」
「若し猫を粗末にしたら」
その時はといいますと。
「その時は容赦しないわ」
「神様とし手許さないのね」
「何があってもね」
実際にというのです。
「そうするわ」
「そうよね」
「古代エジプトでは猫は凄く大事にされていたことは事実だから」
「やっぱりそうよね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「ここでは礼拝と一緒にね」
それにというのです。
「猫と遊ぶこともね」
「楽しんでもらうのね」
「思う存分そうしてね、ただ」
ここでバステト女神は笑ってこうも言いました。
「私が言う前よりもね」
「ええ、皆遊んでるわね」
「それはね、もう猫を見たら」
その時点でとです、ベッツイは笑顔でお話しました。
「遊ばずにいられないわ」
「そうよね」
「そう、それでね」
そのうえでというのです。
「もうね」
「言う前になのね」
「そういうことよ、じゃあ」
「今からね」
「一緒に遊んで」
そしてというのです。
「楽しんでもらうわ」
「ではね」
「私もいつも楽しんでるし、それと」
バステト女神はベッツイ達にこうも言いました。
「私はお魚が好きなの」
「あっ、猫だから」
「そうよ、猫はお魚が好きよね」
「もう猫の定番ね」
「だからね」
それでというのです。
「私はいつも食べているわ」
「そうしているのね」
「最近は特にね」
「特に?」
「お刺身やお寿司がね」
こうした日本の食べものがというのです。
「好きよ」
「そうなっているのね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「今日のお昼はお刺身よ。昔も食べていたけれどね」
「昔?」
「そう、昔もね」
この時もというのです。
「ローマ帝国の頃にね」
「その頃にもお刺身食べていたの」
「そうだったのよ」
「それは初耳ね」
「ローマ帝国の頃も今の日本の様にね」
まさにというのです。
「お刺身を食べていたのよ」
「お魚を切って」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「ナムプラーをかけていたのよ、今で言う」
「あれをなの」
「そうして食べていたのよ」
「ローマでそうした食べ方があったのね」
「お寿司はなかったけれどね」
バステト女神は笑ってこちらのお料理もお話に出しました。
「そうだったのよ」
「ローマでお刺身も食べていたなんて」
「意外でしょ」
「かなりね」
「それで私はね」
「そのお刺身もなのね」
「大好物でね」
それでというのです。
「今日のお昼も食べるわ、お酒も飲むし」
「そちらもなの」
「ビールとかワインとかね」
「そちらはエジプトのままね」
「ええ、お酒はね」
こちらはというのです。
「今もよ。ただ昔とはまた違うわね」
「ビールやワインは」
「随分変わったわよ、冷えてもいるし」
「昔のエジプトだとね」
「冷やすことは無理だったから」
「しかもエジプトは暑いし」
「お酒も冷えていなかったの」
ビールもワインもというのです。
「そうだったけれど」
「今は違うわね」
「冷蔵庫みたいなものがあるから」
だからだというのです。
「それでなのよ」
「よく冷えたビールやワインもなのね」
「よく飲んでいるわ」
「古代エジプトと違うところは違うのね」
「そうよ、ピラミッドの中もね」
「そこはオズの国と同じね」
「ええ、それとね」
ここでこうも言った女神様でした。
「猫も増えたわね」
「古代エジプトと比べたら」
「随分とね」
「そういえばだよ」
ハンクは自分の背中に乗っているスコティッシュフォールドを見ました、白地で所々が黒や灰色になっている毛並みで耳は奇麗に垂れています。
「この子だってね」
「その子の名前はライゾウっていうのよ」
「ふうん、そうした名前なんだ」
「そうよ、奇麗な顔をしてるでしょ」
「美形だね」
「この祭壇の中でもかなり男前の部類なのよ」
「あっ、雄猫なんだ」
ハンクは言われて気付きました。
「この子は」
「そうよ、雄猫なの」
「そうだったんだ」
「顔がいいから女の子に見えるでしょ」
「最初そう思ったけれどね」
「実は男の子なのよ」
「そうなんだね」
「それでその子の種類もね」
スコティッシュフォールドもというのです。
「最近出て来た種類でね」
「昔はいなかったんだね」
「そうよ、古代エジプトでは猫はね」
「どうだったのかな」
「私の顔みたいな感じな子ばかりだったの」
「そうだったんだ」
「それで今の子達よりずっとやんちゃだったわね」
バステト女神は笑ってこうも言いました。
「山猫みたいな感じで」
「山猫から猫になったから」
「そうだったのよ、けれど今はね」
「猫の種類も増えたんだね」
「そうよ、こうした子もいるし」
女神様は自分の足元に来てすりすりとしてきたシャム猫も観ました、そうしてそのうえでハンクにお話するのでした。
「猫も増えたわね」
「それはいいことだよね」
「私にとってはね」
「そうだね、やっぱり」
「虎みたいな猫もいたりしてね」
「寅毛模様ですね」
カルロスが言ってきました。
「日本に特に多いんですよね」
「そうね、ニホンネコにね」
「その模様の子多いですね」
「腹ペコタイガーさんを小さくした様なね」
「あれっ、腹ペコタイガーさんご存知ですか」
「ドロシー王女が何度も来てくれてるのよ」
このピラミッドにというのです。
「それで一緒に来てくれたことがあったのよ」
「そうだったんですね」
「臆病ライオンさんと一緒にね」
「じゃあかかしさん樵さんも」
「一緒だったわ、その時はオジョ君も一緒だったわ」
彼もというのです。
「そうだったわ」
「そうでしたか」
「その時にお会いしたけれど」
「腹ペコタイガーさんそっくりの猫ちゃんもですね」
「ここにはいるわ」
「この子ね」
クッキーは丁度猫じゃらしで遊んでいる子を見て言いました、クッキーがしゃがんで動かしているそれに前足を懸命に出しています。
「寅毛の子は」
「ええ、そうよ」
その通りだとです、女神様も答えます。
「その子がね」
「寅毛のニホンネコですね」
「そうなのよ」
「この子は三毛猫で」
神宝は自分が遊んでいるその子を見ました。
「ニホンネコの代表の一つで」
「白猫もそうだね」
ジョージはエリカとはまた違う感じの猫と遊びつつ続きました。
「ニホンネコには多いね」
「それでトラ猫もね」
ナターシャは茶色の毛の子と遊んでいます。
「その代表なのよね」
「ニホンネコも色々な毛の子がいて」
最後に恵梨香が黒猫と遊びながら言いました。
「トラ毛の子も多いのよね」
「私はあらゆる外見の猫を愛しているし」
女神様はその恵梨香達にも答えました。
「トラ猫の子なのよ」
「そうなんですね」
「そうよ、貴方が今可愛がっている子もね」
カルロスが抱いているサビ猫を見ての返事です。
「皆大好きよ」
「猫の女神様だからですか」
「ええ、そうよ」
まさにその通りだというのです。
「だから全ての猫をね」
「愛されていますか」
「そうなのよ」
実際にというのです。
「私はね、そして守護もしているわ」
こちらもというのです。
「いつもね」
「それが猫の女神様ですか」
「愛と多産も司っていてね」
「昔は確か戦いも」
ここでカエルマンが言ってきました。
「司っていたね」
「ええ、けれど今はね」
「戦いはだね」
「主にセト神とトト神の役目で」
それでというのです。
「私はね」
「今はだね」
「その三つを司っているのよ」
猫と愛、そして多産をというのです。
「本当に戦いはセト神とトト神がいるから」
「だからだね」
「私がすることではなくなっているのよ」
「そうなんだね」
「この二柱の神々がいてくれたら」
それでというのです。
「偉大なるラーの御身も安心だから」
「太陽の神様だね」
「そうよ、我等の主神でもあられるわ」
「その神様の日々の船に乗っての世界の行き来をだね」
「それをちゃんとね」
「守っているのがだね」
「セト神とトト神で」
それでというのです。
「私はもう戦うことはしないわ、ただ戦うことになったら」
「自信はあるんだね」
「ええ、ただオズの国では」
「戦うことはないね」
「セト神とトト神にしても」
この神々にしてもというのです。
「別にね」
「戦うことはだね」
「しないわよ」
「セト神もだね」
「セト神も今は守護のお仕事に専念してね」
そしてというのです。
「平和にしているわ」
「物騒な神様とも聞いているけれど」
「古代エジプトではそうだったけれど」
「オズの国では」
「そう、普通にね」
「平和なんだね」
「そうよ」
こう言うのでした。
「別にね」
「やっぱりオズの国だからだね」
「平和なのよ」
乱暴と言われるセト神でもというのです。
「普通にね」
「それはやっぱりね」
「オズの国だからだよ」
まさにそのせいでというのです。
「何といってもね」
「そういうことね」
「オズの国では誰もが平和になるね」
「元々私達は結構荒々しいところがあったけれど」
それがというのです。
「それがすっかりなくなってね」
「平和になっているね」
「穏やかにね、だからね」
「貴女にしても」
「例えば動くものを見ると」
そうなると、というのです。
「それが目の前に来たら」
「自然となんだ」
「手を出してしまうわ」
「猫の習性だね」
「それが自然に出て」
そしてというのです。
「寝ることがね」
「大好きなんだね」
「そうした生活が好きになったわ」
「それはまさにね」
「猫ね」
「その習性だね」
カエルマンもその通りだと言いました。
「平和なね」
「そうね、ここにいる子達と一緒にね」
「ずっとだね」
「そう、ずっと平和にね」
その様にというのです。
「暮らしていきたいわ」
「美味しいお刺身やお寿司を食べて」
「寝ることも忘れないでね」
「お酒もいいけれど」
「やっぱりこの二つね」
「猫の様に」
「のどかに暮らしていきたいわ」
こう言うのでした、そしてです。
皆はバステト女神の祭壇で礼拝もしました、そのうえで次の場所に向かいましたがその途中にでした。
ここで、です。ハンクはベッツイに言いました。
「猫の皆とも一緒にいられて」
「よかったわね」
「うん、まさかピラミッドの中でね」
「あれだけの猫ちゃん達と一緒にいられてね」
「遊べるなんてね」
「思わなかったわ」
ベッツイにしてもでした。
「本当にね。けれどね」
「可愛かったね」
「どの子もね、そのことにも満足したし」
「それならだね」
「ええ、またね」
「次の場所に行くね」
「そうしましょう、次の場所は」
ベッツイはピラミッドのマップを開いてそれを観つつハンクに答えました。
「今度は庭園よ」
「ピラミッドの中のだね」
「ええ、そこに行くわ」
「ピラミッドの庭園っていうと」
「空中庭園とか外の庭園ではないけれど」
「言うなら室内庭園だね」
「そうよ、ピラミッドの中にあるからね」
だからだというのです。
「そうなるわ」
「そうだよね」
「それでね」
「その庭園にだね」
「今から行くから」
「じゃあね」
「皆で向かいましょう」
ハンクにも他の皆にも言ってでした、そのうえで。
皆は次の場所に向かうのでした、ピラミッドの中の冒険はまだ続くのでした。