『オズのハンク』




               第四幕  ピラミッドの中

 皆でピラミッドの中に入ります、するとすぐに古代エジプトの服を着て犬に似た生きものの頭の人が入り口にいました。
 そして皆にです、右手の杖を掲げたうえで言ってきました。
「このピラミッドに何の用かね」
「うん、これから中に入ってね」
 ハンクがその犬に似た生きものの頭の人に答えました。
「迷路を楽しむつもりなんだ」
「それで来たのか」
「そうだよ」
 こうその人に答えます。
「僕達はね」
「ふむ。見たところ君は驢馬のハンクか」
 その人はハンクを見てすぐに彼の名前を出しました。
「そうだな」
「そうだよ、それで貴方は誰かな」
「私はアヌビスという」
 こうハンクに名乗りました。
「古代エジプトの神の一柱でジャッカルの頭を持っている」
「あっ、犬じゃないんだ」
「よく間違えられるが」
 それでもというのです。
「これはだ」
「ジャッカルなんだね」
「如何にも」
 ハンクに対してまた答えました。
「この入り口を守っている」
「そうした神様なんだ」
「オズの国では。エジプトでは死者の国にいるが」
「オズの国ではピラミッドにいて」
「その入り口を守っている」
「そうした神様なんだね」
「如何にも。そしてだ」
 アヌビスはハンクにさらにお話しました。
「ハンク君の他はベッツイ王女にカエルマン氏、クッキー嬢に」
「そしてね」
「ボタン=ブライト君とポリクローム嬢にオズの名誉市民の五人の子供達か」
「皆知ってるんだね」
「皆有名だからな」
 オズの国ではというのです、アヌビスはハンクに答えました。
「私も知っているよ」
「そうだったんだね」
「それで今回の目的は」
「僕が今言った通りにね」
 ハンクはまたアヌビスに答えました。
「このピラミッドの中に入ってね」
「冒険の旅を楽しむつもりか」
「そうだよ」
「わかった、ではだ」
「中に入ってだね」
「楽しんでくれ給え」
 アヌビスはハンクに微笑んで答えました。
「思う存分」
「そうしていいんだね」
「このピラミッドは我々を祀る祭壇でもありだ」
 エジプトの神々をというのです。
「そして迷路がありだ」
「その迷路を冒険してだね」
「楽しむ場所でもある」
「だからだね」
「思う存分楽しんでくれ」
 アヌビスは皆にお話しました。
「そして中では毎日沐浴を忘れないでくれ」
「お風呂あるんだ」
「無論、オズの世界のピラミッドは祭壇でもある」
 神々を祀るとです、アヌビスはまたハンクに答えました。
「だからだ」
「ああ、沐浴をしてだね」
「身体を清める必要があるからな」
「それで沐浴の場があるんだ」
「如何にも。ピラミッドは各階に幾つも祭壇がありその前にだ」
「沐浴をするお風呂場があるんだ」
「正確に言うと風呂場ではないが」
 それでもというのです。
「沐浴をする場所はな」
「あるんだね」
「尚私を祀る祭壇もすぐ傍にある」
 アヌビスのそれもというのです。
「そしてそこで早速だ」
「沐浴が出来るんだ」
「むしろ祭壇に入る前は必ずだ」
「沐浴をしないと駄目なんだ」
「そうして身体を清めてだ」
 そうしてというのです。
「祭壇で祈り等を捧げてくれ」
「アヌビスさんにもだね」
「そうしてくれると嬉しい」
 アヌビスにしてもというのです。
「ではだ」
「これからだね」
「存分に楽しんでくれ給え。尚沐浴の場は男女共にある」
 男性用も女性用もというのです。
「どちらの性別でも入られる」
「用意がいいね」
「オズの国では男女同権だからな」
「そういうことだね」
「では入るといい」
 こう言ってでした、そうしてでした。
 一行はピラミッドの中に入ってまずはアヌビスの祭壇で祈りを捧げることにしました。それで皆それぞれ沐浴をしましたが。
 カエルマンは沐浴を済ませや皆を見て目を瞠って言いました。
「皆随分とね」
「奇麗になったよね」
 ボタンがカエルマンに応えました。
「沐浴をして」
「うん、何か身体がね」
「すっかり奇麗になって」
「随分と清潔な感じになったよ」
「そうだよね」
「どうも沐浴の間に服も洗濯されたらしくて」
「アイロンもあてられてますね」
 クッキーはこのことを確認しました、自分の服を見て。
「どうやら」
「そうだね」
「ちょっとの間と思ったら」
「もうそのちょっとの間に」
「服まで奇麗にしてもらえるなんて」
「凄いですね」
「全てを奇麗にして神に祈りを捧げる」
 祭壇にいる神官さんのお一人が言ってきました、この人も古代エジプトの服を着ています。そして頭には鬘を被っています。
「それがピラミッドの決まりなので」
「それでだね」
「はい、皆様の服もです」
「沐浴をしている間にだね」
「洗濯をさせて頂いて」
 そしてというのです。
「クリーニングもです」
「しているんだね」
「左様です」
 こう答えるのでした。
「我々の手で」
「そうした場所なんだね」
「このピラミッドは」
「成程ね」
「それで貴方は鬘を被っているけれど」
 ポリクロームはこのことについて神官さんに尋ねました。
「どうしてなの?」
「はい、私といいますか古代エジプトではです」
 神官さんはポリクロームの質問に誠実な調子で答えました、
「人は髪の毛を剃ってです」
「鬘をなの」
「被っています」
「そうしてるのね」
「清潔さを意識して」
 それでというのです。
「髪の毛を剃っています」
「そうなのね」
「今はその必要はないですが」
 髪の毛を剃るそれはというのです。
「古代エジプトのならわしに従っています」
「そうなのね」
「昔は髪の毛を伸ばしているとね」
 どうしてもと言うベッツイでした。
「虱がつきやすかったから」
「はい、ですから」
「最初から剃って」
「それで清潔にしていました」 
 そうだったというのです。
「古代エジプトは高温で虱も湧きやすかったので」
「そのことも問題ですね」
「そうです、尚伸ばしてもです」
 そうもしてもというのです。
「構いませんが」
「古代エジプトの習慣になのね」
「皆従っていてです」
「剃ってるのね」
「古代エジプトではそうでしたので」
 そうした習慣だったからというのです。
「私達もそうしています」
「それは何か」
 クッキーがここでこんなことを言いました。
「モンゴルの辮髪や日本のちょん髷とね」
「同じ様なものね」
「そうよね」
「ええ、言われてみればね」
 実際にとです、ベッツイはクッキーに答えました。二人共お友達同士なのでやり取りは砕けたものです。
「そうなるわね」
「髪の毛を剃ることも」
「そのこともね」
「そうよね」
「同じね」
「辮髪やちょん髷と」 
 こうお話します、そしてでした。
 皆で祭壇でお祈りを捧げました、それが終わってから次の場所に向かうことにしましたが迷宮の中を進みながらです。
 ふとです、ハンクは前を進みながらこんなことを言いました。
「複雑な迷路だけれどマップはあるし」
「ええ、全ての階のね」
 ベッツイが応えます、見ればその手に実際にマップがあります。
「だから一階一階ね」
「迷わずにだね」
「進めるしね」
「何処に行くべきかもね」
「わかるわ、それにどの階にも」 
 ベッツイはさらに言いました。
「罠はないから」
「一切ないね」
「安全よね」
「そうした場所だね」
「外の世界のピラミッドは」
 ナターシャが言ってきました。
「お墓でお墓の中の財宝を狙う人がいるから」
「もう罠だらけみたいですよ」
 ジョージも言いました。
「それで中を進むのが大変とか」
「まさに命懸けの迷宮で」
 神宝もお話します。
「調査も大変だったみたいです」
「それがオズの国ではですね」
 恵梨香はピラミッドの中、全てが石造りのその中を観ながら前に進んでいます。中はヒカリゴケのお陰で結構明るいです。
「祭壇だから安全ですね」
「そうね、私も外の世界のピラミッドのことは聞いてるけれど」
 それでもと言うベッツイでした。
「オズの国のピラミッドはね」
「安全ですね」
「普通に進めますね」
「前に前に」
「そうして楽しめますね」
「そうした場所ですね」
「そうね、だからね」
 それでというのです。
「安心して進みましょう」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「マップを観て場所を確認しながら」
「そのうえで」
「先に進めんでいきますね」
「ええ。方位磁針もあるし」
 見ればトロットの手にはそれもあります、それで方角を確認しながらしっかりと先に先にと進んでいます。
「安心して進めるわ」
「磁石もあるんだね」
「持って来たの。旅の必需品だから」
 それでというのです。
「私もドロシ―達もいつもね」
「磁石持ってるんだね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「この磁石は魔法の磁石だから」
 そうした方位磁針だからというのです。
「磁気が強い場所でもね」
「影響されないんだ」
「そうなの」 
「そのことも有り難いね」
「そうでしょ、だからね」
「ピラミッドの中で例え磁気が強い場所があっても」
「それで他のどんな場所でもね」
 ベッツイはハンクに笑顔でお話しました。
「普通に使えるから」
「そのことに安心して」
「そしてね」
「先に進んでいけるね」
「ええ、本当に何処でも使える磁石はね」
「何でもない様でね」
「有り難いものよ、冒険の時はね」
 こうも言うベッツイでした。
「本当にね、それとね」
「それと?」
「ええ、お昼になったら」
 ベッツイはこの時のお話もしました。
「ちゃんとね」
「お昼ご飯もだね」
「食べないとね」
「そうだよね。お昼ご飯はね」
「忘れたらね」
 それはというのです。
「駄目だからね」
「ちゃんとだね」
「食べましょう」
 お昼にというのです。
「絶対に」
「そうだよね、本当に忘れない様にしてね」
「行きましょう」
 笑顔で言ってそうしてでした。
 実際にお昼になると食事となりました、尚迷路の中には結構色々な場所にちゃんとおトイレもありました。それで中にはミイラ男や神官さんや古代エジプトの服を着た人達が結構行き交っていました。そうした結構賑やかな場所でもありました。
 一行は今は迷宮の中の玄室に入ってそこで敷きものを敷いてその上に車座で座ってその中にテーブル掛けを出しました、そうしてお昼ご飯を出しますが。
 カルロスはどんと出された巨大なステーキを見て言いました。
「ブラジルというよりアルゼンチンかな」
「ブラジルの南の国だね」
「うん、その国の感じだね」
 こうハンクに答えました。
「このステーキは」
「そうなんだね」
「ブラジルもよく牛肉を食べるけれどね」
「シェラスコとかね」
「こうしたね」
「大きなステーキを食べることは」
「むしろアルゼンチンだね」
 この国だというのです。
「どちらかというと。それでね」
「今からだね」
「その大きなステーキをね」
 見れば分厚いだけでなく幅もかなりのものです、子供であるカルロス達なら一枚でお腹一杯になる位の大きさです。
「食べようね」
「そうだね、じゃあ僕は」
 ハンクはといいますと。
「桶の中にザワークラフトをたっぷり入れたサラダがあるから」
「それをだね」
「食べるよ」
「そのサラダは私達も食べるわよ」
 ベッツイが笑ってお話しました。
「お肉だけじゃなくてね」
「サラダもですね」
「そう、お野菜も食べないとね」 
 こちらも忘れてはいけないというのです。
「だからね」
「サラダも食べて」
「あとデザートはね」
 こちらはといいますと。
「フルーツポンチを出すわ」
「果物を小さく切って」
「そう、甘いシロップの中に入れたね」
「あのデザートをですね」
「出すから」 
 それでというのです。
「皆で楽しみましょう」
「わかりました」
 カルロスは笑顔で応えました、皆はステーキを食べてサラダもフルーツポンチも食べることにしました。
 その時にです、ふとでした。
 ベッツイは思い出したみたいにスープも出しました、それはコーンポタージュでした。そしてパンも出しました。
「そうそう、この二つもね」
「欠かせないですか」
「忘れかけていたわ」
 こうカルロスに答えるベッツイでした。
「よくないわね」
「何かステーキに目がいって」
「忘れていたのかしら」
「僕は」
 そうだったと答えるカルロスでした。
「実は」
「僕もです」
「僕もちょっと」
「私も。ステーキばかり見て」
「私もでした」
 他の四人もでした。
「サラダとフルーツも出ていて」
「ついついでした」
「スープとパンまでは」
「忘れていました」
「そうだったのね、けれど出したから」
 だからだというのです。
「皆食べてね」
「ではね。しかしステーキを食べて」
 カエルマンは赤ワインも飲んでいます、この人は大人なのでお酒を飲んでも大丈夫なのです。
「ワインを飲むとね」
「最高の組み合わせですよね」
「全くだよ」
 自分と同じくワインを飲んでいるクッキーに笑顔で応えました。
「これはね」
「本当にそうですね」
「そういえばワインは」
 ここでこんなことを言ったカエルマンでした。
「古代エジプトでもね」
「飲まれていたんですか」
「そう、ビールも飲まれていて」
 そしてというのです。
「ワインもね」
「飲まれていたんですか」
「当時からね」
「古いお酒なんですね」
「そうなんだ」
「お酒がそんなに古いなんて」
 ポリクロームもお話を聞いて少し驚きました。
「思わなかったわ」
「うん、お酒の歴史はね」
「古いのね」
「本当に古代エジプトからね」
 その頃からというのです。
「飲まれていてね」
「ワインもなの」
「そしてビールもだよ」
「ビールも一緒に飲まれていたのね」
「そうなんだ、そんなことも思うと」
 言いつつです、カエルマンはワインをさらに飲んででした。ステーキも食べてそれでまた言うのでした。
「ピラミッドの中で飲むワインもいいね」
「そうなるのね」
「私としてはね、どちらも古代エジプトだからね」
「エジプトって凄いんだ」
 ボタンは牛乳を飲んでいます、そのうえで言うのでした。
「大昔からあって」
「そうだよ、八千年の歴史があるというね」
「八千年もあるんだ」
「おおよそだけれどね、はっきりわかっているのは四千年位というね」
 外の世界の歴史ではというのです。
「本当に長いよね」
「オズの国の歴史よりずっと長いね」
「遥かにね」
「そういえばオズの国の歴史は」
 カルロスが言ってきました。
「僕達が生まれるずっと前からあるけれど」
「そう、エジプトよりはね」
「新しい国ですか」
「遥かにね、中国や日本より古いかも知れないけれど」
 それでもというのです。
「エジプトよりはね」
「古くないんですね」
「流石にね」
「そうなんですね、多分皆のお国の中では」
 カルロスはオズの国の人達そして恵梨香達四人も見てお話しました。
「ブラジルが一番新しい国ですが」
「そうなんだ」
「うん、十九世紀に独立したからね」
 それでとです、ハンクに答えるのでした。
「国としての歴史はね」
「一番新しいんだ」
「その筈だよ」
「それは意外だね」
「ポルトガルの植民地でそれ以前もアステカとかマヤとかインカみたいな古いインディオの国もこれとなくて」
 それでというのです。
「国の大部分がアマゾンだしね」
「あの物凄く広い密林地帯だね」
「大きな川の流域にあるね」
「だからなんだ」
「そう、国としての歴史はね」
「カルロスの国が一番新しいんだね」
「ブラジルがね」
 そうなっているというのです。
「実はね」
「そうだったんだね」
「今じゃ中南米で一番大きな国だけれど」
 それでもというのです。
「歴史はね」
「新しいんだね」
「そうなんだ」
「それは知らなかったよ」
 ハンクにしてもです。
「中南米って歴史が長いと思っていたら」
「だからそれはね」
「アステカとかインカだね」
「そう、メキシコやペルーのお話で」
 それでというのです。
「ブラジルはね」
「そうじゃないんだね」
「エル=ドラドがあったとも言われてるけれど」
「エル=ドラドってあの」
「そう、無限の黄金があるね」
「楽園みたいな場所だね」
「そこはブラジルにあるっていう伝説があったけれど」
 ブラジルにはというのです。
「伝説でね」
「はっきりしたことはだね」
「わからないんだ」
 こうハンクにお話しました。
「これがね」
「そうだったんだ」
「とんでもない大自然はあってもね」
「アマゾンだね」
「あとサッカーにカポエラにね」
 スポーツのお話もしました。
「サンボあるし大きな街も幾つもあって産業もあるけれど」
「それでもなんだ」
「五人のお国の中で一番新しいね」
「その次がアメリカだね」
 アメリカ人のジョージの言葉です。
「十八世紀だから」
「一番古いのは僕の国かな」
 中国人の神宝が微笑んで言いました。
「中国かな」
「ロシアは大体千年と少しね」
 ロシア人のナターシャはそれ位だと考えているみたいです。
「おおよそ」
「日本は皇紀っていう暦だと二千六百何十年だけれど」
 日本人の恵梨香が出した年は西暦ではありませんでした。
「本当かしら」
「日本の歴史も古かったわね」
 ベッツイは恵梨香が言った日本の歴史に応えました。
「皇室っていう皇帝いえ天皇陛下のお家がずっとあって」
「凄いですよ、あのお家」
「少なくとも千五百年はありますから」
「今もありますし」
「古い本にも出てきて」
「儀式なんかも色々あって」
 五人共皇室についてはこう言うのでした。
「オズの国にあってもです」
「何か普通に存在出来る位ですよ」
「普通の王家とは違いまして」
「皇帝といいますか権威がそうで」
「本当に物凄いお家ですよ」
「そんなお家が外の世界にあるんだね」
 カエルマンも驚いています。
「エジプトのファラオよりも凄いかもね」
「そうよね、ファラオもまた凄いけれど」
 ベッツイはカエルマンの言葉に応えました。
「日本の皇室もね」
「凄いみたいだね」
「そうね、私外の世界にいた時はよく知らなかったけれど」
「こうして聞くとだね」
「凄いお家ってわかるわ」
「全くだね」
「あの今ファラオのお話が出たけれど」
 ポリクロームはベッツイ達にこのことを聞きました。
「このピラミッドには」
「そう、このピラミッドを治める人よ」
 ベッツイはポリクロームの質問に答えました。
「外の世界ではエジプトの王様だったけれど」
「ピラミッドではなのね」
「そうよ、こちらね」
「ピラミッドを治める人なのね」
「このピラミッドもオズの中の一国だから」
 それでというのです。
「王様がいてね」
「ファラオがなのね」
「ピラミッドを治めているのよ」
「そうなのね」
「今後ファラオともお会いするわね」 
 ベッツイはこうも言いました。
「このことは知っていたけれど」
「ファラオのことは」
「お会いすることは」
 本当にというのです。
「今から楽しみよ」
「そうなのね」
「ううん、何かね」
 ここで言ったのはボタンでした、今もステーキを食べています。
「オズの国って本当に色々な人がいるね」
「生きものもね」
「そうだよね」
「だからピラミッドもあるし」
 それでというのです。
「ファラオもね」
「いてだね」
「お会い出来るわよ」
「じゃあ楽しみにしてるね」
「そうしてね」
「ううん、ここは本当にエジプトだね」
 ハンクはしみじみとして思いました。
「古代の」
「そうね、ピラミッドだけにね」
「入り口のスフィンクスさんといいね」
「本当にエジプトね」
「古代のね、オズの国にはその世界もあるんだね」
「そうよ、不思議なことだけれど」 
「その不思議なことがね」
「オズの国ではね」
 まさにというのです。
「普通でね。アメリカの中にはね」
「エジプトもあるんだ」
「エジプトの研究もされているから」
 現代のアメリカではです。
「だからよ」
「エジプトもあるんだね」
「そうなの、それで私達もね」
「今こうしてだね」
「ピラミッドの中にいるのよ」
「そして冒険をしているね」
「そうよ、あとここの冒険ははじまったばかりだから」
 ピラミッドの中のそれはというのです。
「思う存分楽しみましょう」
「そうだね、けれど」
「けれど?」
「いや、アヌビス神の祭壇で礼拝をしたけれど」
 ピラミッドに入ってすぐのことをお話するのでした。
「他の神々の祭壇もだね」
「そうしていくことになるわ」
「そうだよね、やっぱり」
「面白い神様が一杯いるから」
 エジプトの神様にはとです、ベッツイはお話しました。
「沢山の神様の祭壇に行くわよ」
「どんな神様がいるか楽しみだね」
「最初のアヌビス神もだったわね」
「そうそう、厳粛な感じがしたけれど」
 それでもとです、ハンクも答えました。
「お話のわかる神様でね」
「威厳もあってね」
「しっかりした神様だったから」
「お話してもよかったわね」
「本当にね」
 こうお話しました、そしてです。
 皆でお話しながらお昼を食べてでした、デザートも食べてです。
 皆は冒険を再開しました、その次はトト神という神様の祭壇のところに来ました。この神様はといいますと。
 朱鷺の頭をしています、それでカルロスは思わず言いました。
「今度は鳥なんですね」
「おや、頭のことを言っているね」
「はい、神様の」
 カルロスはトト神に応えました。
「入り口のアヌビス神はジャッカルで」
「そう、我々の多くはだよ」
 トト神もカルロスに応えてお話します。
「動物の頭を持っているのだよ」
「エジプトの神様は」
「人の頭の神様もいるがね」
「動物の頭の神様もですね」
「いるのだよ、そして私も我が友アヌビスも」
「動物の頭の神様なんですね」
「そうだよ、他にもね」
 他の神様達もというのです。
「そうした神は多いから」
「そういうことですね」
「君達が思う神様の多くは違うと思うけれどね」
「中南米の神様は何か」
 カルロスはトト神の言葉を聞いて言いました。
「生きものの恰好している神様が多いですけれどね」
「神獣の様なだね」
「はい、どうも」
「けれど生きものの頭をして身体が人間の神様は」
 ベッツイが言ってきました。
「確かにね」
「少ないね」
「エジプトの特色かしら」
「大抵は人間の姿そのままだと思うがね」
「ええ、本当にね」
「しかしエジプトではそうなのだよ」
「動物の頭の神様が多いのね」
 ベッツイはまた頷きました。
「そうなのね」
「我々の様にね」
「そうね。ただね」
「ただ?」
「神様って考えてみたら」
 ベッツイは考えるお顔になってこうも言ったのでした。
「巨人であることが多いわね」
「ギリシアや北欧やケルトの神様はそうだね」
 ハンクがベッツイに応えました。
「考えてみれば」
「そうよね」
「うん、神話の本とかよく読むと」
「ゼウス神達もね」
「巨人なんだよね」
「凄く身体が大きいわよね」
「何メートル以上もあるね」
 ハンクは具体的な大きさのお話もしました。
「巨人だよね」
「そうなのよね」
「インドの神様も大きさを自由に変えられるし」
「あそこの神様は変身も出来るわね」
「そうだよね」
「けれど」
 ここでベッツイはあらためてトト神を見て言いました。
「エジプトの神様は」
「人と同じ位の大きさで」
「そこは変わらないわね」
「神話を見てもその様だね」
 トト神も言ってきました。
「我々の神話では人はほぼ出ないがね」
「そうなのね」
「人とあまり変わらない大きさの様だね」
「大きさ自体はそうなのね」
「ギリシアや北欧の神々は巨人達と戦っているが」
「あの神様達の血筋はね」
「元々巨人だね」
 トト神はこのことを指摘しました。
「そこを見ても」
「ええ、ゼウス神だってね」
「両親は元々巨人の神々だよ」
「ティターンね」
「あの神々は巨人であって」
「その子供になると」
「当然巨人となる」
「そうね、北欧の神様もそうだし」
 ベッツイはこちらの神様のお話もしました。
「巨人族と結婚していたり元々は巨人族だったとか」
「多いね」
「北欧神話は」
「そうしてみると彼等も巨人だね」
「そうした神様ね、ケルトの神様も」
 彼等もというのです。
「やっぱりね」
「巨人の神様だね」
「ええ、よく読んでみたら」
 本をと言うベッツイでした。
「ケルト神話の」
「フォモールという巨人と戦っていてね」
「凄く大きな武器も持っているし」
「とんでもない量の牛乳やおかゆを口にしていることからも」
「巨人ね」
「そう、欧州の神々は巨人の神が多いのだよ」
 まさにと言うトトでした。
「しかし我々は」
「巨人ではないのね」
「少なくともオズの国にいるとだよ」
「人の大きさなのね」
「そして今君達の前にいるのだよ」
「成程ね」
「さて、沐浴を済ませたら」
 そうしてと言うトト神でした。
「私の祭壇にだね」
「お祈りをさせてもらっていいかしら」
「是非共」
 これがトト神の返事でした。
「そうして欲しいよ」
「ではね」
「尚私は学問の神であると共に」
「あら、学問なのね」
「そして神々の書記であり」
 そしてというのです。
「同時に戦いの神でもあるのだよ」
「戦いもするの」
「オズの国では戦いはないがね」
 それでもというのです。
「古代エジプトではだよ」
「戦いの神でもあったの」
「偉大なるラーを我が友セトと共に守護する」
「それで戦っているの」
「ラーが乗る世界を旅する船に乗り船を襲う蛇アビスと戦っていたのだよ」
「セトって神様と一緒に」
「そうしていたのだよ」
 古代ギリシアではというのです。
「そうしていたのだよ」
「そうなのね」
「だから戦いの神でもあるのだよ」
「正直それは意外ね」
「そうだね、尚我が友セトもこのピラミッドにいるから」
 エジプトの神様としてというのです。
「彼の祭壇に行くといいよ」
「それではね」
「気のいい神だよ」
「あれっ、セトって」
 この神様についてです、カルロスは言いました。
「悪い神様だったんじゃ」
「そのお話だね」
 トト神はカルロスの言葉にすぐに応えました。
「彼はエジプトでは二面性があってね」
「それでなんですか」
「そう、それでね」
「悪い神様ともですか」
「言われていたんだよ」
 そうだったというのです。
「これがね」
「そうだったんですか」
「勇敢で人を砂嵐からも守ってくれるんだ」
「そこはいいところなんですね」
「オズの国ではそのいい面ばかりだから」
「悪い神様じゃないんですね」
「むしろいい神だよ」
 そう言っていいというのです。
「だから君達も安心するといいから」
「そう言われてほっとしました」
「むしろレタスが好きな気のいい神だよ」
「あっ、レタスですか」
「古代エジプトではもう食べていたのだよ」
 既にというのです。
「これがね」
「レタスの歴史も古いんですね」
「大蒜も食べていたしね」 
 こちらのお野菜もというのです。
「麦を栽培してパンも食べていたよ」
「パンのことは聞いていましたけれど」
「レタスや大蒜もだよ」
「食べていたんですね」
「そうだよ、尚このピラミッドは」
 トト神はピラミッドのお話もしました。
「ファラオが農業が出来ない民衆に用意した仕事でもあったのだよ」
「あっ、建設してですね」
「ファラオが人に家や食べものも出す」
「そうして働いてもらっていたんですね」
「そうだったのだよ」
「そうした意味もあったんですね」
「オズの国では急に出て来たがね」
 エメラルドの都の中にというのです。
「そうだったのだよ」
「古代エジプトでは」
「そこも面白いね」
「うん、何ていうか」
 ハンクもトト神のお話をここまで聞いて言いました。
「凄く勉強になったよ」
「我々のことやエジプトのことでだね」
「何かとね、僕達は」
 こうも言うハンクでした。
「エジプトのこと何も知らなかったよ」
「そうだったのだね」
「けれど今トト神のお話を聞いて」
 そしてというのです。
「勉強になったよ」
「それは私も嬉しいよ」
「学問の神様として」
「知ってもらうとね」
 それでというのです。
「本当にね」
「嬉しいんだね」
「そうだよ、じゃあ」
「沐浴をしてね」
「礼拝をさせてもらうよ」
「ではね」
 こうしてでした、皆は今度はトト神の祭壇に沐浴の後で礼拝をしました。そしてその後で再びなのでした。
 迷宮の中を歩いていきます、すると。
 ハンクはベッツイに迷宮の中を歩きながらこんなことを言いました。
「この階段は一階だね」
「そうよ、それでこの一階からね」
「どんどん上がっていくんだね」
「そうなっていくわ、そして上に向かうにつれて」
 その都度というのです。
「徐々に狭くなっていくのよ」
「ああ、ピラミッドの形がそうだから」
「上がるにつれて尖っていってるわね」
「正面から見たら三角形だからね」
「それでね」
 そのうえでというのです。
「先にね」
「じゃあ頂上辺りは」
「かなり狭くなっているわ」
「そうだよね、やっぱり」
「そうした形だから」
 ピラミッドはというのです。
「わかっておいてね」
「うん、それじゃあね」
「それとね」
「それと?」
「このピラミッドには地下もあるのよ」
「あっ、そうなんだ」
「地下に行くことも出来るわよ」
 こうハンクにお話するのでした。
「そちらにもね」
「じゃあ地下に行くのかな」
「行くつもりよ」
 ベッツイは一行のリーダーとしてハンクの今の質問に微笑んで答えました。
「全部の階の隅から隅まで行きたいから」
「だからだね」
「そちらにもね」
 地下にもというのです。
「行きましょう」
「それではね」
「あとここの人達にマミーの人達もいるけれど」
 所謂ミイラ男の人達です、全身に包帯を巻いているミイラの身体の人達です。
「この人達もピラミッドの住人よ」
「そうだよね」
「怖くないでしょ」
「ううん、映画だと怖いけれど」
 ハンクはベッツイの今の言葉にこう返しました。
「けれどね」
「それでもよね」
「うん、オズの国だとね」
「悪い人はいないしね」
「妖怪やモンスターも普通にいる世界でしょ」
「妖精さん達と一緒にね」
「だからね」
 オズの国にいる人達だからというのです、マミーの人達も。
「怖がることもないのよ」
「そういうことだね」
「狼男やフランケンシュタインや」
「ドラキュラ伯爵もいるね」
「キョンシーもね」
「けれどその人達も」
 外の世界では怖いモンスター達ですが。
「怖くないね」
「オズの国だから。それにモンスターでも」
 そう呼ばれる存在でもというのです。
「問題は心よ」
「性格がどうかだね」
「性格がいいモンスターはね」
「いい人達だね」
「姿形がどうであっても心が人なら」
 それならというのです。
「人なのよ」
「そうなるんだね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「あの人達もそうでね」
「マミーの人達もだね」
「この中に普通にいて」
「生活もしていて」
「悪い人達でもないのよ」
「モンスターがそのまま悪いかっていうと」
「それは違うから」
 ベッツイはハンクにお話しました。
「覚えておきましょう」
「僕達もだね」
「善悪は外見や種族でわからないわよ」
「問題は心だね」
「そういうことよ、外の世界でもそうだし」
「オズの国だと尚更だね」
「オズの国は色々な人がいるから」
 人間と言われる種族つまりベッツイ達だけではないのです、ノームもエルフもドワーフもいれば妖精もいます。
 そしてです、モンスターもいてなのです。
「本当に尚更よ」
「人は外見や種族ではないね」
「心よ、心が悪いと」 
 それでというのです。
「悪人になるのよ」
「そうなるね」
「かつてのノーム王もそうだったわね」
 ラゲドー、かつてはロークワットといったあの王様です。
「今のノームの人達は違うでしょ」
「そしてあの人もね」
「心が替わってね」
 悪い心が一変してです。
「いい人になったでしょ」
「そのことを見ても」
「そうよ、大事なのはね」
「心だね」
「心が大事だから」
 それでというのです。
「マミーもいい人達でね」
「僕達に親しく挨拶をしてくれるんだね」
「ここで会ったらね」
 その時はというのです、実際にそうしています。
「そういうことよ」
「そうだね、じゃあ」
「これからもね」
「種族に関わらずいい人達とね」 
 つまりオズの国の人達と、というのです。
「楽しくお付き合いしていきましょう」
「それじゃあね」
 ハンクはベッツイの言葉に笑顔で頷きました、そうしてそのうえでさらに進んでいきました。ピラミッドのその中を。








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