『オズのキャプテン船長』




               第十二幕  最後はお空から

 船長達はリンキティンク王の国に戻ってまずは王様達と楽しく遊びました、そしてその次の日の朝です。 
 船長は朝ご飯を食べつつ皆に言いました。
「さて、今日から」
「ええ、都までね」
「戻ろうか」
「そうね、都に戻ってね」 
 トロットは船長のその提案に頷きました。
「そのうえでね」
「都でもね」
「楽しく遊びましょう」
「そうしようね」
「オズマ達も待ってくれてるしね」
「そうだね、だからね」
「今日からね」
 朝ご飯を食べてというのです。
「都まで歩いて帰ろう」
「そうしましょう」
「うむ、それならじゃ」
 二人のお話を聞いてです、皆と一緒に朝ご飯のオートミールを食べているリンキティンク王が言ってきました。
「お前さん達は船の旅をしてきたのう」
「今回はね」
「それでわしの国に来るまでもな」
 王様は船長にその時のこともお話しました。
「歩いてきたのう」
「海と陸だね」
「なら最後はじゃ」
 オズの国に帰るならというのです。
「お空はどうじゃ」
「それで帰ってはっていうんだね」
「都までな」
「けれど今のわし等は」
 船長は王様の提案を聞いてです、どうかというお顔になってこう返しました。
「空を使っての移動の手段は」
「ないのじゃな」
「だから歩いて帰るけれど」
「ならわしが貸そう」
 王様は船長に笑って提案しました。
「飛行船をな」
「この国にも飛行船があるんだね」
「国民が欲しいと言ってな」
 それでというのです。
「わしが造らせたのじゃ」
「それで持っているんだね」
「あと飛行機やヘリコプターもあるぞ」
 こちらもというのです。
「ちゃんとな」
「そうしたのもあるんだね」
「お空から地上を観ると色々わかるからのう」
「だからだね」
「国民が欲しいと言ってな」
「王様もそれはいいと判断してだね」
「造らせたのじゃ」
 そうしたというのです。
「飛行船に飛行機、ヘリコプターをな」
「全部だね」
「そう、持っておるぞ」
「それで飛行船を使って」
「都に戻るか、わしもじゃ」
 王様はオートミールを食べつつ言うのでした。
「勿論じゃ」
「一緒にだね」
「都まで行くぞ」
「それで帰りはだね」
「うむ、わしが飛行船を動かしてな」 
 そうしてというのです。
「この国まで帰る」
「つまりわし等を都まで送ってくれるんだね」
「そうでもあるしわしも都に行く」
 そうもするというのです。
「そして都でも遊ぶぞ」
「また急に決めるね」
 モジャボロは船長の即決に驚いています。
「王様らしいけれどね」
「ははは、わしは即断即決だからのう」
「それはわかっていてもね」
「急か」
「うん、今お話してだから」
「しかしそれがいいのだからね」
 教授は分厚く切ったベーコンを食べつつ言いました。
「即断即決がね」
「迷わずに決めることがじゃな」
「そう、いざという時は特に」
「わしは迷ったことがないのじゃ」 
 それがリンキティンク王なのです。
「どっちかと言われるとな」
「もうその瞬間にだね」
「決める、それで終わりじゃ」
 どっちかと言われたら片方を選んでしまうのです、まさに瞬時に。
「わしはな」
「それでだね」
「迷ったことがない」
「それはいいことよ、私もだしね」
 ビリーナもでした。
「迷わないわよ」
「お前さんもじゃな」
「私は歩きながら考えてね」
「歩きながら決めるな」
「せっかちだからね」 
 自分で言うビリーナでした。
「もうね」
「迷わずにじゃな」
「決めるわ」
「それで動くのじゃな」
「そうよ、だから王様もそれでいいと思うわ」
「ではのう」
「では僕は留守番しておきますね」
 ボボ王子も言ってきました。
「王様が都に行って帰るまでは」
「お主も来てはどうじゃ」
「僕もですか」
「そうじゃ、留守は首相や侍従長に任せてな」
 王様そしてこの国に絶対の忠誠心を持っていてしかも押し頃が出来るこの人達にというのです。
「そうしてな」
「それで、ですか」
「どうじゃ、それで」
「そうですね、王様はずっとこの国を離れていなくて」
「都にもお邪魔しておらんな」
「オズマ姫とも暫くお会いしていませんね」
「だからな、外交も兼ねてな」
 その意味もあってというのです。
「この度はじゃ」
「都にですね」
「二人で行かぬか」
「そうですね、たまには都に行って」
 王子もとです、王子は王様の言葉に頷きました。
「お顔を出すことも外交ですし」
「政治は忘れんぞ」
 遊び隙の王様でもです。
「だからな」
「それでは」
「はい、僕もですね」
「一緒に行きましょう」
 こう言ってでした、王子も一緒にオズの国に行くことが決まりました。それで朝ご飯の後ででした。
 皆飛行船に乗りに街のすぐ北にある空港に行きました、するとそこに翼にプロペラが四つある飛行機や丸い形のジャイロが上に一つ尾に小さいのが一つあるヘリコプターにです。
 飛行船があります、王様はその皆をその飛行船のところに案内して言いました。
「では今からな」
「この飛行船に乗ってですね」
 恵梨香が応えました。
「エメラルドの都までね」
「行くとしよう」
「わかりました」
 恵梨香が頷いてナターシャ達四人もでした、そして恵梨香はその飛行船を見ました。
 飛行船は赤くカラーリングされていて船体の真ん中にリンキティンク王のお国の紋章が描かれています、恵梨香はその紋章を見て言いました。
「リンキティンク王のお国の飛行船だからですね」
「うむ、我が国の紋章もじゃ」
「書いているんですね」
「そういうことじゃよ」
「他にも飛行船ありますね」
 ジョージは空港の中を見回して言いました。
「そういえば」
「そうだね、何隻かあるね」
 神宝もその中を見回して言います。
「飛行機もヘリコプターも」
「その中で一番大きいかな」
 カルロスは飛行船だけでなくその他のものも見ました。
「この飛行船が」
「そうね、それに」
 ナターシャもその飛行船を見て言います。
「一番豪華な感じがするわ」
「この飛行船は王様の専用機だからね」
 ボボ王子が五人にお話します。
「それでなんだよ」
「豪華なんですね」
「他の飛行船に比べても」
「大きいだけじゃなくて」
「王様が乗られるから」
「他のものよりもなんですね」
「そうなんだ」
「わしは別によかったのだがのう」 
 王様としてはというのです。
「別にな」
「中で遊べればですね」
「そして景色を楽しめればな」
 それでとです、王様は王子にも答えました。
「よかったのじゃ」
「王様はそう言われますが」
「それはか」
「王様ですから」
 立場があるからだというのです。
「どうしてもです」
「王様だからか」
「はい、そこはしっかりとしないと」
「わしが乗るならか」
「それも専用ですから」
 それだけにというのです。
「皆もそうしたんですよ」
「そうなのじゃな」
「どうも王様は遊べればいいですね」
「贅沢よりもな」
「そうですよね」
「だからだったのじゃが」
 それでもというのです。
「そうもいかんか」
「王様ですからね」
「王様というのも何かとあるのう」
「というかリンキティンク王みたいな王様は」
 ここで言ったのは恵梨香でした。
「オズの国以外にはいないですよ」
「外の世界にはか」
「はい、私のお国の陛下は」
「確か皇帝じゃったな」
「天皇陛下です」
「位としては皇帝じゃよ」
 天皇陛下はそうなるというのです。
「だからわしも皇帝と言ったのじゃよ」
「そうでしたか」
「それで天皇陛下はか」
「物凄く堅苦しい行事が一杯あって毎日お仕事で」
「遊べないのか」
「遊ぶなんてとても」
「何と、そんなお暮らしか」
 王様も聞いてびっくりでした。
「遊べないのか」
「とても。いつも私達国民の為に働いておられます」
「ううむ、遊びなしでか」
「そうなんですよ」
「その様な方だったとは」
 王様は仰天したままでした、頭に被っていた冠が真上に飛ぶかの様な驚き方です。
「恐ろしいのう」
「王様にはとてもですね」
「務まらんわ」
 王子にも言います。
「勤勉そのものか」
「そうなんですよ」
「世の中凄い方がおられるわ」
「外の世界にいた時から聞いていたけれど」
 船長も言いました。
「今もそうだから凄いね」
「確か私達の時は明治帝だったわね」
 トロットがオズの国に来る前のことを思い出しています。
「そうだったわね」
「うむ、そして今の帝もか」
「そうした方なのね」
「アメリカには皇帝がおらんからよくわからんかったが」
「ええ、名乗る人はいたけれど」
 それでもというのです。
「あまり実感なかったけれど」
「そうした方だとはな」
「それも代々ね」
「いや、わしには絶対に無理じゃ」
 また言う王様でした。
「まことにな」
「僕にもですよ」 
 それは王子もでした。
「遊べないとかは」
「そうじゃな」
「はい、本当に」
「いや、都に行くまでに凄い話を聞いたわ」
 王様はしみじみとして言いました、そしてでした。
 皆を飛行船に乗せてそのうえで出発します、飛行船はお空の旅に入りました。するとオズの国のお空は。
 お魚や鳥が沢山います、そのお空を観ながらです。恵梨香は船長に言いました。
「こうしてお魚までがいるのが」
「オズの国のお空でね」
「見ていますと」
 それがというのです。
「素敵ですね」
「そう、お空にも島があってね」
「私達お城にも行きました」
「天空のお城だね」
「騎士団の人達がおられた」
「あそこもいいね、わしもね」
 船長も言いました。
「あそこには行ったよ」
「そうでしたか」
「何度かね」
 一度でなくというのです。
「行って楽しませてもらったよ」
「それはいいことですね」
「あそこもいいところだね」
「また機会があればお邪魔したいです」
 恵梨香は船長に笑顔でお話しました。
「本当に」
「そうだね、わしもだよ」
「このお空も素敵ですし」
 見ればです、飛行船の窓のすぐ傍を鮫が通りました。とても大きなジンベエザメです。恵梨香はそのジンベエザメも見て言いました。
「鮫もいて」
「それも普通にだね」
「これもオズの国ですね」
「そう、そしてね」 
 それでというのです。
「鳥もいるからね」
「お魚と一緒に」
「オズの国の空はね」
 それもまた、というのです。
「海豚や鯨もいるしね」
「海みたいに」
「そう、ああした生きものもいるよ」
 見ればです、今度はです。
 アンモナイトがいました、恵梨香はそのアンモナイトを見てまた言いました。
「アンモナイトもですか」
「オズの国のお空にはいるんだよ」
「それも凄いことですね」
「オズの国だからね」
 全てはここにありました。
「外の世界では絶対にないことがね」
「普通にあって」
「こうしてだよ」
「アンモナイトもお空を飛んでますね」
「そうなんだ」
 今観ている様にというのです。
「ああしてね」
「アンモナイトもいるっていうと」
「それじゃあね」
「恐竜もだよね」
「同じ時代の生きものだし」
 ナターシャ達四人も言います。
「いるよね」
「お空にも」
「海の生きものがいてね」
「古い生きものもとなると」
「いるよ、あそこに」
 船長は四人に応えるかの様に前を指差すとでした。
 底に確かにです、一匹の首長竜がいました。
「あれはプレシオサウルスだね」
「一番有名な首長竜ですね」
「あの恐竜もいるし」
 それにとです、船長は恵梨香に答えました。
「それにね」
「他の恐竜もですね」
「いるからね」
「オズの国のお空には」
「翼竜もいるしね」
 お空を飛ぶ恐竜もというのです。
「ちゃんとね」
「お空を飛んでるんですね」
「そうなんだ」
「ははは、それが普通じゃよ」
 舵を手にしているリンキティンク王も言います。
「このオズの国ではのう」
「そうしたお空ということですね」
「そうじゃよ、オズの国のお空はな」
「鳥が飛んでいて」
「お魚もでな」
「恐竜もいるんですね」
「そうなのじゃよ、だから釣りもな」
 そちらもというのです。
「楽しめるぞ」
「鳥も釣れるんですね」
「この前わしはペンギンを釣ったぞ」
 笑って言う王様でした。
「お空を飛ぶな」
「実際に今見えるよ」
「あちらにね」
 ここで案山子と樵が言ってきました、見れば実際にです。
 お空をペンギンの群れが泳いでいます、しかも凄い速さです。
「ペンギンはお空を飛べないけれどね」
「けれどオズの国のお空は泳げるからね」
「ああして素早いんだよ」
「物凄い速さだね」
「あの鳥を釣ったんだよ」
 王様は案山子と樵にもお話します。
「わしはな」
「よく釣れたね」
「あの速さだというのに」
「それもコツじゃよ、もっと釣った後で」
 そのペンギンはどうしかかといいますと。
「お魚をやってな」
「それでだね」
「解放したんだね」
「釣ることが好きでのう」
 遊びとしてというのです。
「その後はわしは興味がない」
「魚拓とかもだね」
「そちらも興味がないんだね」
「これといってな」
「僕は結構好きですけれどね」
 魚拓はとです、ボボ王子も言ってきました。
「それでも」
「王子はそうした遊びが好きだね」
「釣りの後の魚拓も」
「はい、ですが王様は」
 この人はといいますと。
「釣ることがお好きで」
「魚拓には興味がなくて」
「それだけだね」
「今はそうじゃ」
 王様はまた二人に答えました。
「これからはわからんが」
「今はだね」
「魚拓には興味がないんだね」
「海や川で釣ってもな」
 こちらの釣りでもというのです。
「そうじゃよ」
「そうなんだね」
「釣ってすぐに解放するんだね」
「わしは釣りは食べる為でもスポーツでもなくじゃ」
「遊びとしてだね」
「楽しむからだね」
「そうじゃ」
 それでというのです。
「ペンギンもそれで終わりじゃ」
「成程ね」
「リンキティンク王の趣味もわかったよ」
「ははは、わしは遊べればな」
 王様は自分の考えを案山子と樵にさらにお話しました。
「それでよいからのう」
「だからだね」
「釣りも遊びであって」
「楽しければいい」
「釣れればだね」
「そうじゃよ、それでじゃが」
 王様は今度はこう言うのでした。
「このままだとエメラルドの都まですぐじゃな」
「速い飛行船だね」
 船長がここで王様に言いました。
「これはまた」
「うむ、実はこの飛行船はな」
「速度が速いんだね」
「どうも国民がわしの性格を見てじゃ」
 そうしてというのです。
「速度を速くしたらしい」
「王様せっかちだしね」
 ビリーナはリンキティンク王の性格のその部分を指摘しました。
「だからよね」
「わしはせっかちか」
「だっていつも待たないでね」
 そうしてというのです。
「何かをはじめるでしょ」
「だからか」
「国民の人達もわかってるのよ」
「わしがせっかちだとか」
「そう、それでね」
 そのせいでというのです。
「飛行船も速くしてもらったのよ」
「そういうことか」
「僕もそう思いますよ」
 リンキティンク王の第一の親友でありいつも一緒にいるボボ王子も言ってきました、その通りだとです。
「王様はとかくです」
「せっかちでか」
「はい、ですから」 
 それでというのです。
「この飛行船もですよ」
「速くなってか」
「どんどん進む様になっています」
「成程のう」
「それで、ですけれど」
「うむ、エメラルドの都までもじゃな」
「すぐに着きますよ」
 そうなるというのです。
「そして都に着けば」
「その時はじゃな」
「皆で」
 まさにというのです。
「楽しめますよ」
「そうなるか」
「はい、それじゃあ」
「どんどんじゃな」
「都に向かいましょう」
「それではな」
「自動操縦にも出来るよね」
 モジャボロがこのことを尋ねました。
「この飛行船は」
「うむ、何時でもな」
「ならね」
「遊びたくなったらじゃな」
「その時には自動操縦にして」
 そしてというのです。
「遊ぼう」
「それではな」
「さて、今は景色を楽しもう」
 教授は実際に窓からの風景を楽しんでいます。
「そうしていよう」
「そうね、こうして観ているだけで」
 トロットは教授のその言葉に頷きました。
「かなり楽しいから」
「オズの国のお空の景色を観ていてね」
「じゃあご飯の時間になればね」
「美味しいものを食べて」
「そうして楽しみましょう」
「勿論寝室もお風呂もあるぞ」
 リンキティンク王はそちらもとお話しました。
「だからな」
「それでよね」
「これからはな」
 まさにというのです。
「エメラルドの都に着くまでじゃ」
「お食事にお風呂に睡眠も楽しんで」
「景色も楽しんでじゃ」
「遊びもよね」
「そうして楽しもう」
「それではな」
 二人でお話してです、そしてでした。
 二人だけでなく皆で飛行船の中からお空の景色を観てでした、そうしてお食事を食べてお風呂にも入って睡眠も楽しむことにしました。
 そうしてその中で、でした。
 晩ご飯はサラダやスープ、ムニエルにステーキ、パンというフルコースを楽しみますがそこで船長が言いました。
「空の船旅もね」
「素敵なものね」
「海の船旅もよかったが」
「お空の船旅もね」
 トロットも笑顔で応えます。
「いいわね」
「本当にね」
「ステーキも美味しいしね」
 トロットはフルコースのメインのそれを食べつつ言います、とても分厚いレアのティーボーンステーキです。
 そのステーキを食べつつです、トロットは言うのです。
「今回の旅も最後の最後までね」
「楽しめているね」
「ええ、それにしても」
 ここでこうも言うトロットでした。
「オズの国の冒険も変わったわね」
「昔はもっと危険が一杯でね」
「ハラハラすることが多かったわね」
「一体どうなるかとかね」
「どうしようかって思うことがね」
「そうしたことばかりで」
 それでというのです。
「大変だったわね」
「そうだったね」
「そうですよね」
 恵梨香も言ってきました。
「オズの国の皆さんの冒険は」
「私達が来た当初はね」
「大変でしたね」
「ノーム王とも色々あって」
 それでというのです。
「何かとね」
「大変な時が多かったですね」
「オズマ姫がおられなくなった時は」
 ナターシャはこの時のお話をしました。
「大騒動でしたね」
「あとノーム王が妖魔と手を結んで攻め込んできたり」 
 カルロスはその時のお話をしました。
「もうどうなるかって」
「ドロシーさんの最初の冒険なんか」
 ジョージは皆がオズの国を知ることになった最初の戦いのことを言います。
「カルダが出たり西の魔女と対決して」
「オズマ姫もでしたね」
 神宝はこの人のことを言います。
「あの人も最初男の子で」
「全く。何から何までだったよ」
 船長も五人にお話します。
「果たしてこれからどうなるか」
「もう大変でしたね」
「いきなりとんでもないことが起こって」
「それから逃れる為に必死になって」
「逃れてもまた次の騒動があって」
「休む暇もなかったですね」
「実際は命の心配はないのよ」 
 オズの国ではとです、トロットはお話します。
「けれどね」
「その時は、ですよね」
「あんまりにも大変で」
「そんなことばかりで」
「それで、ですよね」
「どうなるかって思って」
「もう命もよ」
 オズの国では誰も死なないのにです。
「心配になってしまったわ」
「それがオズの国の冒険でしたね」
「かつての」
「今よりずっとトラブルばかりで」
「ハラハラの連続で」
「心配になってばかりでしたね」
「それが随分ね」
 今ではというのです。
「落ち着いた平和な世界になったわね」
「怖い種族もいなくなりましたし」
 恵梨香はこのことをお話しました。
「そのこともあって」
「ええ、余計にね」
「今はですね」
「平和になったわ。カバキリンもカリダも巨大なヤマアラシもね」
 オズの国の怖い生きもの達もです。
「すっかり穏やかになったしね」
「そうですよね」
「ノーム王もいい人になって」  
 正確に言うと前のノーム王です、最初はロークワットといって今はラゲドーという名前のあの人です。
「妖魔も他の種族もね」
「穏やかになって」
「本当に平和な世界になったわ」
「それが今のオズの国ですね」
「オズマがとてもいい政治をしてるし」
「そのこともあって」
「本当に穏やかな世界になって」
 それでというのです。
「冒険に出ても」
「安全ですね」
「もうドロシーになると一人で出ても」
 オズの国一の冒険家であるこの娘ならというのです。
「オズの国の何処にでも行けて」
「それで安全にですね」
「エメラルドの都に帰られるわ」
「それもずっと楽しんでですね」
「安全にね」
「一人で出てもですね」
「ええ、ドロシーはオズの国のことは隅から隅まで知ってるから」
 オズの国一の冒険家だけあってです。
「それでよ」
「オズの国の何処にでも」
「迷わずに行けるから」
「お一人でも大丈夫なんですね」
「そして誰が出てもね」
「安全ですね」
「それが今のオズの国よ。お空だってね」
 トロットは今自分達がいる場所のお話もしました。
「凄く安全よ」
「確かに。怖い生きものはいないですね」
「誰も飛行船に襲い掛かってこないでしょ」
「はい」
 見れば飛行船の傍に今度はガーゴイル達が来ました、木で出来た身体で翼で空を飛ぶ彼等はかつてドロシー達を追い掛けました。
 しかし今の彼等は、です。飛行船に対して。
「笑顔で手を振ってくれています」
「そうなったから」
「そのことを見てもですね」
「そうよ、どれだけ安全か」
「いいことですね」
「安全で楽しかったら」
 それでというのです。
「それに越したことはないでしょ」
「そうですよね」
「だから私達も今はね」
「エメラルドの都までですね」
「楽しく向かいましょう」
「ホッホッホ、旅は楽しくじゃよ」
 ステーキをおかわりしつつです、リンキティンク王は言います。
「旅も遊びじゃよ」
「リンキティンク王にとってはそうだね」
「うむ、だからじゃ」
 赤ワインを飲む船長にお話します。
「こうしてじゃ」
「ステーキも食べて」
「安全にな」
 まさにというのです。
「そうして行こうぞ」
「それではね」
「それでじゃが」
 リンキティンク王はステーキを食べながらさらに言いました。
「デザートは何かのう」
「今日のデザートはパイよ」
「それか」
「ええ、桃のパイよ」
 テーブル掛けから今日の晩ご飯も出しているトロットが答えます。
「それだから」
「デザートもじゃな」
「楽しんでね」
「わかった、やはりじゃ」
「王様はお菓子がよね」
「それがないとな」
 どうしてもとです、王様は答えました。
「駄目じゃ」
「何時でもね」
「甘いものは大好きじゃ」
 実際にというのです。
「だからじゃ」
「今日の晩ご飯でもね」
「ステーキもよいが」
 勿論これまでのサラダやスープやムニエルもです。
「やはりな」
「デザートがね」
「甘いものがないとはじまらんわ」
「ですね、王様はまさに永遠の子供です」
 ボボ王子も笑顔で言います。
「何時までもその心を忘れない」
「そうじゃ、わしは王様であるがな」
「それと共にですね」
「ずっと子供の心を忘れないな」
「そうした人ですね」
「だからじゃ、甘いものもじゃ」
 子供なら皆大好きなこちらもというのです。
「大好きでな」
「それで今日の晩ご飯も」
「その桃のパイもじゃ」
「召し上がられますね」
「思う存分な、しかし甘いものを食べた後は」
 王様はそれからのこともお話します。
「どうしてもじゃな」
「はい、歯磨きはですよ」
「絶対にせねばならんな」
「オズの国では虫歯にもなりませんが」
 それでもとです、ボボ王子はリンキティンク王にお話します。
「やっぱりお口は臭くなりますし」
「それでじゃな」
「甘いものを食べた後は特に」
 例え虫歯にならなくてもというのです。
「しっかりと磨かないと駄目ですよ」
「そうじゃな」
「ですから」
 それでと言うのでした。
「今日もですよ」
「後でじゃな」
「しっかりと磨いて」
「そうしてな」
「お風呂に入って」
「寝ることじゃな」
「そういうことです」
 王子は王様にしっかりとした声でお話しました。
「皆もそうしていますし」
「ここで歯を磨かない人といったら」
 ここで案山子が言ってきました、樵と一緒に飲むことも食べることもしませんが皆が飲んで食べて楽しむ笑顔を見て心の栄養にしています。
「僕とね」
「そして僕とだよ」
 案山子と同じく皆の笑顔を心の栄養にしている樵の言葉です、その皆を見て彼等も笑顔になっています。
「そうしてね」
「私よ」
 最後にビリーナが言いました。
「私は歯がないからね」
「うん、鳥だからね」
「鳥は大抵歯がないわね」
 それでというのです。
「だから歯を磨かないのよ」
「ないからね」
「そうよ、けれどお口はゆすいでね」
「奇麗にしているね」
「そうしてるわ」
 こう言うのでした、そしてです。
 皆は飛行船に乗ってエメラルドの都に向かってでした、そうして。
 数日間飛行船の旅を続けてでした、エメラルドの都に着きました。皆都の南門の前で降り立ってです。
 王宮まで戻りました、するとオズマ達が出迎えてくれて。
 笑顔で船長達に尋ねてきました。
「楽しい旅だったかしら」
「うん、今回もね」
 船長が笑顔で答えます。
「素敵な旅だったよ」
「それは何よりね」
「恵梨香達に色々なものを見せられたしね」
 このこともあってというのです。
「本当にだよ」
「いい冒険の旅で」
「心から満足しているよ」
「それは何よりね。それじゃあね」
 オズマは皆のお話を聞いてさらに言いました。
「王宮でもね」
「楽しむんだね」
「これからパーティーをするの」
 そうするというのです。
「皆も参加してくれるわね」
「一体どういったパーティーかな」
「ダンスパーティーよ」
 オズマは船長にすぐに答えました。
「色々なダンスを踊って歌うね」
「そのパーティーをするんだね」
「私もドロシーもいるし」
 それにというのです。
「オズの国の名士の皆もね」
「来ているんだ」
「ええ、つぎはぎ娘も戻ってきてくれたし」
 オズの国きっての踊り好きの彼女もというのです。
「ベッツィもアン王女も来てね」
「他の皆もだね」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「これからね」
「わし等も参加して」
「楽しんでね」
 是非にというのでした。
「それじゃあね」
「今からだね」
「楽しんでね」
 そうしてとお話してでした、皆は都に帰ってすぐにダンスパーティーに参加しました。そこでです。
 船長は恵梨香とダンスを踊って笑顔で言うのでした。
「どうかな、わしのダンスは」
「あの、実は」
 恵梨香は船長に驚きを隠せない顔で答えました。
「船長さんは足が」
「片足が義足だからだね」
「大丈夫かって思いましたけれど」
「それがだね」
「はい、まさか」
「うん、わしは確かに片足は義足だけれど」
 それでもというのです。
「こうしてだよ」
「ダンスもですね」
「出来るんだよ」
「そうなんですね」
「この義足も今では」
 木の棒のそれもというのです。
「わしの足だよ」
「普通の足と変わらないんですね」
「そう、だから心配は無用だよ」
「そうですか」
「そう、そしてね」 
 それでというのです。
「今も楽しく過ごせるんだよ」
「それじゃあ」
「わしと一緒に楽しく踊ってくれるね」
「これからも」
 恵梨香は笑顔で応えました、そうして。
 恵梨香は船長とダンスを踊って他の人達とも踊ってでした、その後でオードブルのテリーヌやサンドイッチを食べましたが。
 リンキティンク王が舞台に出て歌います、そこでリンキティンク王は一曲終わってそうしてからでした。
 その場からです、船長に声をかけました。
「船長、よかったらな」
「二人でだね」
「一緒に歌うか」 
 こうお誘いをかけるのでした。
「そうするか」
「わしでいいのかな」
「勿論じゃよ」
 王様は船長に笑顔で言うのでした。
「船長と歌いたいからじゃ」
「誘いをかけてくれたね」
「それで返事はどうじゃ」
「わしでよかったら」
 これが船長の返事でした。
「喜んで」
「よし、それではな」
「これからね」
「二人で歌おうぞ」
「それで何の歌を歌うのかな」
 船長は王様のところに来てこのことを尋ねました。
「一体」
「オズの国の国歌じゃ」
 リンキティンク王の歌いたい歌はこの曲でした。
「これをじゃ」
「ああ、オズの国のだね」
「わしの国の国歌でなくな」
「オズの国のじゃ」
 大陸全体を治めるこの国のだというのだ。
「歌を歌うぞ」
「王様もオズの国の人だからね」
「それでじゃ」
「今から」
「オズの国歌を歌うのじゃ」
「それならね」
 ここでドロシーが言いました。
「皆で歌わない?」
「皆でだね」
「ええ、歌って」
 それでというのです。
「楽しい気持ちになりましょう」
「それはいいね」
「そうじゃな」
 船長も王様もドロシーのその提案に笑顔で頷きました。
「オズの国の国歌じゃ」
「それを歌うならね」
「それならじゃ」
「皆で歌ってもいいね」
「よし、それならな」
「今からね」
「皆で歌いましょう」 
 オズマもこう言います。
「私達の国歌をね」
「国歌は高らかに歌うべきですよね」 
 恵梨香も言います。
「皆で」
「そうよ、その国の人ならね」
「その国の顔とも言っていい歌だから」
「歌う時は」
「オズの国でもですね」
「高らかに歌いましょう」
 それも皆でというのです。
「そして貴女達もね」
「オズの国の名誉市民だから」
「オズの国の人だからね」
「じゃあ今から」
「ええ、歌いましょう」
「わかりました」
 恵梨香はオズマの言葉ににこりと笑って頷きました、そうして皆でオズの国の国歌を歌いました。その上は高らかにオズの国に響き渡りました。


オズのキャプテン=ビル   完


                    2019・3・11








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