『オズのキャプテン船長』




                第十一幕  オズの国の境

 バイキングの人達と楽しい時間を過ごしてでした、皆はまた航海の旅に出ました。船長は海に出てすぐに皆に言いました。
「さて、最後はね」
「遂にですね」
「今回の冒険も最後ですね」
「楽しくて長い旅でしたけれど」
「いよいよですね」
「終わりなんですね」
「次に行く場所でね」
 まさにそこでというのです。
「終わりだよ」
「それで次は何処に行くんですか?」
 恵梨香が五人を代表して尋ねました。
「それで」
「境だよ」
「境?」
「そう、オズの国と外の世界のね」
 そこにというのです。
「皆まだそこには行っていないからね」
「あのヨルムンガルドがいる」
「そう、そこだよ」
 まさにそこだとです、船長は恵梨香に答えました。
「今度はね」
「そこに行ってですね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「最後にしようね」
「オズの国と外の世界の境ですか」
「そう、オズの国の周りは全部海で」
 それでというのです。
「外から見たら只の海でそこに入っても」
「そうしてもですか」
「運命によって導かれていない限りはね」
 オズの国に入るべき人でないと、というのです。
「船でも飛行機でもね」
「オズの国に入っても」
「素通りするんだ」
「だから皆オズの国には行けないんですね」
「そうなんだ、そして渦みたいに特別な方法でもないとね」
「オズの国からもですね」
「外の世界に行けないからね」 
 そうなっているというのです。
「だから皆オズの国には行けないんだ」
「この地球にあっても」
「そうだよ、そしてそのオズの国とね」
「外の世界の境にですか」
「今から行こうね」
「そしてそれがですね」
「最後だよ」
 今回の冒険のというのです。
「そうなるよ」
「遂にですね」
「そうなるんだ」
「そこに行けばね」
 今度はモジャボロが五人に言ってきました。
「ヨルムンガルドにも会えるからね」
「その物凄く大きな蛇さんですね」
「うん、その大きさたるやね」
「オズの国を一回りですね」
「それが出来る位だからね」
「とんでもない大きさですね」
「神話だとさらにだよ」
 教授はこちらのヨルムンガルドのお話をしました。
「何しろ世界をね」
「オズの国どころか」
「そう、広大な世界をね」
「一回りしていますか」
「だからね」
 それでというのです。
「遥かに大きいよ」
「神話のヨルムンガルドは」
「相当にね」
「オズの国も広いけれどね」
 ビリーナはこのことを実感しています。
「大陸とその周りの海全部だからね」
「それでヨルムンガルドの大きさもかなりなのに」
 トロットはビリーナのその言葉に頷きました。
「それでもなのね」
「そう、神話のヨルムンガルドはだよ」
 教授はトロットにもお話しました。
「さらにね」
「大きいのね」
「そうなんだよ」
「そして今から」
 船長は皆に言いました。
「ヨルムンガルドのところに行こう」
「オズの国と外の世界の境に」
「そこにね」
 こう言ってです、そのうえで。 
 船長は船を海の方にやりました、するとでした。
 幾つかの島々を横目で見つつ海のある場所に着きました。すると海の中からでした。
 島位はあろうかというとんでもない大きさの真っ黒な蛇の頭が出てきました、そして船に行ってきました。
「ここから先は行けないよ」
「うん、わかっているよ」 
 その蛇にです、船長は答えました。
「そのことはね」
「おや、船長さんじゃないか」
 蛇はここで船を見て応えました。
「トロット王女達もいるね」
「そうだよ」
「じゃあ皆わかってるね」
「ここがオズの国と外の世界の境ということはね」
「しっかりわかってるんだね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「来たんだよ」
「そういえば」
 蛇はここで恵梨香達五人を見て彼等に気付きました、そうしてそのうえで今度はこう言ったのでした。
「はじめて見る子達もいるね」
「この子達にね」
 船長はまた蛇にお話しました。
「オズの国と外の世界の境を見せてあげようと思って」
「ここにだね」
「連れて来たんだ」
「境を知ってもらう為に」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「その為だよ」
「境を知ることも大事だしね」
「それでなんだよ」
「わかったよ、じゃあね」
 蛇は船長のお話を聞いて納得しました、そしてです。
 そのお話の後で、でした。蛇は五人にあらためて挨拶をしました。
「はじめまして、僕がヨルムンガルドだよ」
「オズの国と外の世界の境にいる」
「そこにだよ」
 まさにというのです。
「射る蛇だよ」
「そうですね」
「それで君達がだね」
「オズの国の名誉市民にしてもらっています」
 恵梨香が五人を代表して答えました。
「有り難いことに」
「そうなんだね」
「ここから外の世界ですね」
「そうなっているんだ」
 まさにというのです。
「出ることは出来ないよ」
「海からはですね」
「出ようとしてもね」
 例えそうしようとしてもというのです。
「オズの国の逆の方にね」
「出てしまいますか」
「例えばオズの国の南西から出ようとしても」
 それでもというのです。
「オズの国の北東からね」
「オズの国に入るんですね」
「そうなってしまうんだよ」
「そうですか」
「そうなるんだよ」
「だからですか」
「そう、オズの国から外の世界にはね」
 海からはというのです。
「そして空からもね」
「出られないですか」
「本当に特別な方法でないと」
「外の世界にはね」
「じゃあ私達は渦から行き来していますけれど」
「ああしたものでないと」
 そうでないと、というのです。
「無理だよ」
「そうですか」
「じゃあ僕達はいつも」
 神宝は考えるお顔になって言いました。
「特別な方法でオズの国に来てるんだね」
「それで外の世界に帰ってるんだね」
 カルロスはその場合のことをお話しました。
「渦を使うことは」
「そう思うと」
 ジョージも言います。
「凄いね」
「オズの国と外の世界を自由に行き来出来ること自体が凄いし」
 最後にナターシャがお話しました。
「その時に使う渦もなのね」
「そうなんだよ、そのことは覚えておいてね」
 ヨルムンガルドは五人に穏やかな声でお話しました。
「よくね」
「わかりました」
 恵梨香はヨルムンガルドに答えました。
「そのことは」
「オズの国も奇跡だけれどね」
「オズの国と外の世界を行き来する方法もですね」
「どちらもね」
「そうなんですね」
「そうだよ、あと僕は普段はね」
 ヨルムンガルドは自分のお話もしました。
「海の中で寝ているんだ」
「海の中で、ですか」
「底でね、一日中寝ていることもね」
 それもというのです。
「あるよ」
「そうですか」
「何も食べなくていい身体だしね」
「蛇さんでもですか」
「うん、身体は普通の蛇だけれどね」
 大蛇でもというのです。
「海の中にいると身体全体から海の中にある養分を貰えてね」
「食べる必要がないですか」
「そうした身体だからね」
 それでというのです。
「大丈夫だよ」
「そうですか」
「食べなくてもね、そして一日中寝る時もあれば」
 その他にもというのです。
「お日様が見たいと顔を出すこともあるよ」
「海からですか」
「そして君達みたいにここに来る人がいれば」
 その時はといいますと。
「出られないことをね」
「注意するんですね」
「そうしているんだ」
「それでそれ以外の時は」
「いつもね」
「寝ていますか」
「そうだよ、それで君達はこれからどうするのかな」
 ヨルムンガルドは穏やかな声で今度は皆のこれからのことを尋ねました。
「それで」
「もう後はね」
 船長がヨルムンガルドに答えました。
「帰るだけだよ」
「エメラルドの都にだね」
「そうするつもりだよ」
「わかったよ、じゃあね」
「それならだね」
「もう境には来たし」
 それでというのです。
「後はね」
「都に戻るんだね」
「そうするよ」
「それじゃあね」
「うん、またね」
「外の世界との境に来れば」
「その時はね」
 また会おうとです、こうお話してでした。
 皆はヨルムンガルドと別れてでした、これまでの航路を曳き返してでした。
 皆で一緒にでした、船旅を楽しみながらリンキティク王の国に向かいます。そうしつつ船長はこんなことを言いました。
「何かリンキティンク王と会うのもね」
「久し振りって感じがするわね」
「そうだね」
 こうトロットに言うのでした、大海原を進みつつ。
「本当に」
「そうよね、あの人は相変わらずでしょうね」
「陽気で賑やかでね」
「いつも笑っているでしょうね」
「さもないとね」 
 それこそというのです。
「あの人じゃないね」
「そんな気がするわね」
「うん、だからね」
「その王様に会うことが」
「今から楽しみだよ」
「そうよね」
「ではまずはね」
「リンキティンク王の国に行こう」
 こう行ってでした。
「そしてね」
「そうしてですね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「そこからね」
「オズの国に入ってね」
「そうしてよね」
「都に戻ろう」
 オズの国の都にというのです。
「そうしようね」
「そしてそれまでの旅は」
「また楽しもう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で一緒に船旅を楽しむことにしました、そこでふとでした。船長は今度はこんなことを言ったのでした。
「今回も楽しい旅だったね」
「ええ、楽しかったわよ」
 ここでビリーナが応えました。
「久し振りの船旅、海の旅だったけれどね」
「ビリーナにとってはそうだったね」
「ええ、私船旅はね」
「久し振りだったね」
「ええ、けれどね」
 それでもというのです。
「色々な場所に行って船旅もね」
「楽しめて」
「そう、本当にね」
「楽しかったんだね」
「こうした旅もいいわね」
「そう言ってくれて何よりだよ」
「またこうした旅をしたいわね」
「じゃあまた行く?」
 トロットはビリーナに笑顔で提案しました。
「今度もね」
「海の旅だったらっていうのね」
「そうしたら?」
「そうね」
 ビリーナはトロットのその提案に頷きました。
「それじゃあね」
「そうするのね」
「今度海の旅に行く機会があったら」 
 その時はというのです。
「是非ね」
「その機会を逃さずに」
「海の旅に出るわ」
「そうするのね」
「今回の旅は本当に楽しかったからね」
 久し振りに海の旅に出てというのです。
「またこうした旅をしたいから」
「だからよね」
「そうさせてもらうわ」
「それじゃあその時私が一緒だったら」
「一緒によね」
「楽しませてもらうわ」
 トロットもというのです。
「是非ね」
「それじゃあね」
「それとね」 
 さらに言うトロットでした。
「貴女のお国だけれど」
「鶏の国ね」
「また数が増えたのよね」
「そうよ、だから国土もね」
 鶏の国のそれもというのです。
「広くしたのよ」
「そうよね」
「それで畑もね」
「玉蜀黍とか麦とかね」
「広くしたわ、あとお米のね」
「田んぼもなのね」
「広くして」 
 そしてというのです。
「そうしていってるわ」
「それは何よりね」
「私の国は最初はね」
「貴女とご主人だけでね」
「二羽だけだったけれど」
 それがというのです。
「今はね」
「沢山の鶏さん達が暮らしてるわね」
「皆私の子供で孫で」
「家族よね」
「そう、皆ね」
 ビリーナはトロットに上機嫌でお話します、船の手すりの方から海を観ながらそのうえでそうしています。
「私から生まれたね」
「家族よ」
「だから余計によね」
「大事に思ってるわ」
「国民一人一人が家族ということもね」
「そうはないでしょ」
「ええ、オズの国でもね」
 色々な国があるこの国でもというのです。
「本当にね」
「私の国だけね」
「そう思うわ、そのことも私の誇りよ」 
 まさにというのです。
「だから今回の旅から帰ったら」
「お国に戻るのね」
「それで政治もするわよ」
「貴女は女王でもあるからね」
「鶏の国のね。だから頑張るわよ」
「そうしてね、そして」
「機会があればね」
 まさにとです、ビリーナはまた答えました。
「その時はね」
「海の旅に出るのね」
「そうするわ」
 このことも決めています。
「是非ね」
「そうよね、貴女は」
「今回の旅も忘れられないものになったから」
 それだけにというのです。
「またね」
「海の旅に出るわね」
「そうするわ、それとね」
「それと?」
「今ふと思ったけれど」
「というと」
「案山子さんや樵さんはどうしてるのかしら」 
 ビリーナはオズの国の名士の中でもとりわけ有名な人達のこの人達のことについて言及するのでした。その有名さたるやドロシーにひってきします。
「一体」
「ああ、あの人達ね」
「何かとよく会うけれど」
「あの人達ならもうあの人達のやるべきことを終えて」
 そしてと言うトロットでした。
「都に帰ってるんじゃないかしら」
「そうかしら」
「案山子さんの知恵と樵さんのハートがあれば」
 それならというのです。
「どんな困難も乗り越えられるからね」
「そうね、あの人達ならね」
「だからね」
「もうお仕事を終えて」
「都に帰っているんじゃないかしら」
「それかよね」
 ここでビリーナはふと思って言いました。
「樵さんのお城にいるか」
「ブリキのね」
「案山子さんのお家で遊んでいるか」
「どちらかかしら」
「そうだね、ひょっとしたらね」
 ここで船長も言ってきました。
「あの人達にも会えるかも知れないよ」
「旅の最後で」
「それか途中でね」
「都に行く途中でもなのね」
「わし等はカドリングから都に戻るけれど」
「リンキティンク王の国からね」
「その時にね」
 その道中でというのです。
「二人がカドリングの国に行くことがあったりして」
「それでなのね」
「会うかもね」
「それで会ったらね」
 それならともお話する船長でした。
「またね」
「楽しめばいいわね」
「二人と遊んだりしてね」
「そういうことね、思えばね」
 こうも言うビリーナでした。
「あの人達とも長いお付き合いだしね」
「すっかり馴染みだね」
「だからね」 
 それでと言うのでした。
「会いたいわね」
「それじゃあね」
「会う時を楽しみにして」
 そしてというのでした。
「今はね」
「リンクティンク王の国にだね」
「戻りましょう」
 こう言ってでした、皆は船長が操る船を動かしてそうしてでした。皆でリンクティンク王の国に向かってです。
 そうしてです、船は遂にでした。
 リンキティンク王の国の港に着きました、するとリンキティンク王は皆が予想していた通り非常に賑やかにでした。
 皆を港まで迎えて来て笑顔で言ってきました。
「冒険はどうだったかな」
「うん、凄くね」
 船長が笑顔で答えます。
「楽しくて面白くてね」
「素敵な旅だったか」
「そうだったよ」
 リンキティンク王にこう言うのでした。
「本当にね」
「それは何より、ではね」
「それではだね」
「これから都に帰るが」
 それでもと言うリンキティンク王でした。
「その前にだよ」
「この国でだね」
「楽しく遊ぶといい」
「そうね、戻って来たけれど」
 それでもとです、トロットもリンキティンク王に応えました。
「急がないしね」
「それならわしと一緒にだよ」
「この国で楽しく遊んで」
「そしてだよ」
「都まで戻ればいいわね」
「そう、丁度今別のお客さん達も来ているしね」
「お客さん?」
 トロットはお客さんと聞いてでした。
 まさかと思ってです、リンキティンク王に尋ねました。
「ひょっとして案山子さんと樵さん?」
「おや、わかったのかい」
「実はここに着く少し前にね」
 その時のこともお話するトロットでした。
「あの人達のお話をしていたのよ」
「おや、そうだったのかい」
「丁度ね」
「噂をすれば何とやら」
 リンキティンク王は楽しそうに言ってきました。
「そう言うし」
「それでね」
「まさかと思ったのだね」
「ええ、そうだったわ」
「そしてその言葉通りにだね」
「ええ、こうしてね」
「案山子さん、樵さんとだね」
「会えるのね」
 笑顔で言うトロットでした。
「そして一緒に遊べるのね」
「それは何より、では」
「ええ、案山子さんと樵さんのところにね」
「一緒に行こう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆はリンキティンク王の案内で案山子と樵がいるところに案内しました、するとまずはボボ王子がです。
 湊を出たところで出て来てこう言ってきました。
「王、今です」
「今?どうしたのじゃ」
「案山子さんと樵さんが王宮に入りましたよ」
「アスレチックからか」
「はい、移動しましたよ」
「そうなのか」
「ですから案山子さん達にお会いしたいなら」
 そうならというのです。
「あちらにね」
「行けばいいか」
「丁度皆も戻ってきたし」
 ボボ王子はこのことからも言うのでした。
「いいタイミングでは」
「そうじゃな」
 リンキティンク王はボボ王子のその言葉に頷きました。
「それではな」
「今からね」
「あの国に行ってな」
 そしてと言ってです、そのうえで。
 皆は王宮に入りました、するとそこに案山子と樵がいてそれで皆に笑顔で挨拶をして迎えてくれました。
「いや、元気そうだね」
「楽しい旅をしてきたみたいだね」
「うん、とても楽しかったよ」 
 モジャボロが二人に満面の笑顔で応えます。
「オズの国の海の色々な島を巡ってね」
「色々な生きものにも会ってお話をしてね」
 教授もにこにことして言います。
「何かとね」
「楽しかった」
「そうなのだね」
「本当にね、そして」
 それにと言う教授でした。
「恵梨香達もオズの国の境を見たしね」
「それはいい経験だったね」
「いいものを見られたね」
 案山子と樵は教授の今のお話に笑顔になりました、そのうえで言うのでした。
「境を知ることも大事だからね」
「その国のね」
「オズの国の境にはヨルムンガルドがいてね」
「そして出ようとするとオズの国の逆の方角に出てしまうのだよ」
「そうした不思議な結界が張られていてね」
「オズの国から出られないのだよ」
「そして入るにしてもですね」
 恵梨香も言ってきました。
「入る運命の人でないと」
「オズの国には入られないんですね」
 ジョージもこう言ってきました。
「そう聞きました」
「今はそうなってるんですね」
 神宝の口調はしみじみとしたものです。
「そうなんですね」
「特別な方法じゃ出入り出来ないんですね」
 カルロスは自分達が出入りしている渦のことを思うのでした。
「このオズの国には」
「それで外の世界からはオズの国は見えない」
 ナターシャはこのことをお話しました。
「そうしたお国ですか」
「そうなんだ」
 案山子が五人に答えました。
「だから君達が出入り出来ることもね」
「運命ですね」
「そうだよ、だからこそね」
「今もですね」
「オズの国にいて」
 そしてというのです。
「楽しんでいるんだ」
「そうですか」
「そしてね」 
 それでというのです。
「僕達とも会えているんだ」
「そう、オズの国に行き来出来ることは」
 樵も皆にお話します。
「運命だよ、入ってね」
「そしてですね」
「暮らせることも」
「そのことも運命ですね」
「船長さん達みたいに出来ることも」
「それもまた」
「そうだよ、そして若し出入りしたり暮らせる運命でないとしても」
 そうであってもというのです。
「運命は変わって変えられるからね」
「出入りしたり暮らせる運命になれば」
「その時はですね」
「今の僕達や船長さん達みたいになれる」
「そうなるんですね」
「例えそうでなくても」
「そうだよ、そしてオズの国を心から愛していれば」 
 そうした人はといいますと。
「外の世界での命が終わればね」
「その時にですね」
「オズの国に行けますね」
「外の世界からさよならをして」
「そしてそのうえで」
「船長さんみたいに」
「そうなんだ、だからボームさんもね」
 この人もというのです。
「今オズの国にいるんだ」
「ボームさんがおられたから」
 それでとです、恵梨香は言いました。
「皆オズの国を知ることが出来ましたし」
「そうだね」
「そうだね、だからね」
「それで、ですね」
「オズの国を心から愛している人は」
「絶対にオズの国に行けるんですね」
「だからオズの国の人口もね」
 こちらのこともというのです。
「増えているんだよ」
「オズの国を愛している人達が来てくれるから」
「そうなんだ」
「それでわしの国もじゃ」
 リンキティンク王も賑やかに言ってきます。
「国民が増えておるわ」
「そうなってるんですね」
「うむ、ボームさんに会ったこともあるしな」
 この人にもというのです。
「中々楽しいぞ」
「それは何よりですね」
「それでじゃが」
 さらに言うリンキティンク王でした。
「これからな」
「はい、案山子さん樵さんともですね」
「一緒に遊ぼう」
 こう言うのでした。
「よいな」
「それじゃあ」
「僕達はリンキティンク王の国から都に行くよ」
「そしてオズマと会うんだ」
 案山子と樵は皆にお話しました。
「お仕事を終えて都に行ってたけれどね」
「こっちに来てリンキティンク王とお話したんだ」
「そしてね」
「お話も終わってね」
「アスレチックで二人で遊んでね」
「今王宮に来ていたんだ」
「そうだったんだね、じゃあ王宮では」 
 船長が言ってきました。
「何をして遊ぼうか」
「丁度観劇の時間ですよ」
 ここで言ってきたのはボボ王子でした。
「これから」
「おお、そういえばな」
 リンキティンク王も言われて思い出しました。
「そうじゃったな」
「そうでしたね」
「ではな」
「はい、これからの遊びは」
「観劇じゃな」
「そうして」
 そしてというのです。
「楽しみましょう」
「それではな」
「お菓子も用意します」
「勿論じゃ」
 リンキティンク王の返事は言うまでもないといったものでした。
「お菓子を食べてジュースや甘いお茶を飲んでな」
「そしてですね」
「楽しむのじゃ」
 その時にというのです。
「そのうえでな」
「そうですよね」
「では皆観劇しながらな」
「お菓子を食べてジュースを飲んで」
「甘いお茶もある」
「では」
「楽しく飲もうぞ」
 こう御話してでした、そのうえで。
 皆で一緒にです、王宮の中にある劇場に入ってです。
 そうして観劇に入りますが案山子と樵は何も食べないのでお菓子やジュースは他の皆で食べて飲んで楽しむことにしました。
 そしてここで恵梨香はリンキティンク王に尋ねました。
「あの、お芝居は何を」
「上演する作品じゃな」
「一体何ですか?」
 こちらのことを尋ねるのでした。
「それで」
「喜劇じゃよ」
「喜劇ですか」
「わしは喜劇が大好きでな」 
 それでというのです。
「いつもじゃ」
「観劇される作品はですか」
「喜劇じゃ」
 そちらのジャンルだというのです。
「喜劇は全く駄目でな」
「それで、ですか」
「うむ、それでじゃ」
 それでというのです。
「これから観るのも喜劇じゃ」
「それでどんな喜劇でしょうか」
「さて、わしも今から観劇というのも忘れておったし」
 だからだとです、リンキティンク王は恵梨香に答えました。
「それでな」
「どの作品が上演されることも」
「忘れておる」
 そうだというのです。
「今そのことを残念に思っておる」
「どの作品が上演されるか知らないので」
「残念なことにな」
 まことにとです、リンキティンク王は落胆して恵梨香達にお話しました。
「これから上演される作品を知っておればよかったが」
「真夏の夜の夢ですよ」
 ボボ王子がリンキティンク王を助けて言ってきました。
「あの作品です」
「おお、あの作品か」
「王様のお好きな作品の一つですね」
「うむ、賑やかでな」
「それでハッピーエンドなので」
「大好きじゃ」
 王様は王子ににこにことして答えました。
「シェークスピアは悲劇が多いがのう」
「喜劇もあって」
「悲劇は観たことがない」
 一度もという言葉でした。
「シェークスピア以外もな」
「そうですよね」
「あらすじをちらりと聞いただけでな」
 悲劇はというのです。
「わしは駄目じゃ」
「そして喜劇は」
「大好きじゃ」
「シェークスピアにしても」
「観ていて笑えてな、結末もな」
「ハッピーエンドで」
「そうした作品が大好きでじゃ」
 それでというのです。
「今も楽しみじゃ」
「では笑顔で観ましょう」
「そして笑顔で観終わるぞ」
 もう腹を抱えて楽しそうに言う王様でした。
「まことにな」
「それでは」
 ボボ王子も応えてでした、皆でお菓子を食べてジュースを飲んででした。楽しく過ごしはじめました。そのうえで。
 そしてです、劇を観ながらでした。恵梨香は今自分達が食べているお菓子についてこんなことを言いました。
「ケーキもクッキーもシュークリームも」
「どれもじゃな」
「美味しいですね」
「お菓子の牧場で採れたものでな」
「あそこで、ですね」
「今日も美味いわ」
 笑顔で言う王様でした。
「この通りな」
「あそこのお菓子は本当に美味しいですね」
「そうであろう、ではな」
「これからですね」
「楽しく食べてじゃ」
 そしてというのです。
「ジュースやお茶も飲んでな」
「紅茶も素敵な味ですね」
 恵梨香はストレートティーも飲んで言いました。
「こちらも」
「それは紅茶の井戸からな」
「汲んだものですか」
「そうじゃ、それこそ汲めばな」
「美味しい紅茶がですね」
「どれだけでも湧き出て来てな」
 そしてというのです。
「飲めるのじゃよ」
「素敵な井戸ですね」
「他にオレンジや林檎のジュースもあってな」
 王様はさらにお話します。
「葡萄や桃な。コーヒーやココアもあるぞ」
「本当に色々ですね」
「それでわしは今はな」
 にこりとして言う王様でした。
「こうしてじゃ」
「ココアを飲まれていますね」
「ココアの井戸から汲んだな」
 まさにそれをというのです。
「飲んでおる。あとわしの国の水道はな」
「何かありますか?」
「自然と甘い水が出る」
 そうだというのです。
「とても飲みやすいな」
「甘いお水ですか」
「そうじゃ、だからそちらを飲んでもな」
「いいんですね」
「ちょっと炭酸を入れるとな」
 その水道水にというのです。
「サイダーになる位じゃ」
「それはいいですね」
「だからサイダーもな」
「飲みたい時はですね」
「好きなだけ飲めるぞ」
「コーラもよね」
 トロットは今は珈琲を飲んでいますがそれでもと言うのでした。
「幾らでも飲めるわね」
「コーラの池があってな」
「そこで汲んでね」
「幾らでも飲めるぞ」
 こちらもというのです。
「飲みたい時にな」
「そうよね」
「お菓子はあってじゃ」 
 チーズケーキを食べつつです、リンキティンク王は言うのでした。
「そしてじゃ」
「飲みものもね」
「幾らでもあるのがな」
「リンキティンク王の国ね」
「そういうことじゃ、もっともこのことはな」
「オズの国ならね」
「何処でもだしのう」
「お菓子以外の食べものもあるし」
「こんないい国はないわ、そしてお芝居もな」
 舞台を観ればです、楽しく演じられています」
「あの通りじゃ」
「素敵な舞台ね」
「お菓子やジュースと一緒に観る喜劇は最高じゃ」
 満面の笑顔でです。リンキティンク王は言うのでした。
「わしの大好きなことの一つじゃ」
「一つなの」
「他に大好きなものもあるからのう」
 それでというのです。
「一つじゃよ」
「そういうことね」
「そうなのじゃよ」
 トロットにも笑顔で答えます。
「わしはな」
「そうなのね」
「それでじゃが」 
 王様はさらに言いました。
「お芝居の後はじゃ」
「その後もなのね」
「遊ぶが」
 その遊びはといいますと。
「次の遊びは何をするかじゃが」
「ええ、何をするの?」
「トランプをするか」
 こちらの遊びをというのです。
「ポーカーでもな」
「あら、ポーカーなの」
「それをしようかのう」
「あの、王様は」
 どうかというお顔で、です。ボボ王子がリンキティンク王に言いました。
「ポーカーは」
「弱いというのじゃな」
「はい、すぐにお顔に出るので」
「うむ、しかしじゃ」
 それでもとです、王様は王子に答えました。
「わしは好きだからな」
「だからですか」
「やるぞ」
 そのポーカーをというのです。
「これからもな」
「それで今からもですか」
「するぞ、皆でな」
「まあ好きなら」
 それならとです、王子は王様の言葉に頷きました。そうしてでした。
 皆は観劇の後でトランプもしました、海から戻ってきた皆は今度はとても賑やかな王様と一緒に遊ぶのでした。








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