『オズのキャプテン船長』




               第九幕  大海獣

 一行は船での旅を続けます、その中で。
 ふとです、ビリーナが官辺の手すりの上に立って海と空の景色を眺めながら船長にこんなことを言ってきました。
「ねえ、一ついいかしら」
「どうしたんだい?」
「オズの国には色々な生きものがいてね」
「この海にもね」
「それで私達も今観ているけれど」
 その生きもの達がというのです。
「リバイアサンとかヨルムンガルドとか」
「ああ、彼等のことだね」
「そう、出て来るのかしら」
 リバイアサンやヨルムンガルド達はというのです。
「この海で」
「うん、まずヨルムンガルドはね」
 その彼等のことを話すのでした。
「オズの国と外の世界の境にいるから」
「そこまで船を進めればなのね」
「会えるよ」
「オズの国の境ね」
「オズの国から出ようとしたら」
 その時はというのです。
「出るのかどうかを聞いてくるよ」
「そうなのね」
「それでわし等みたいにね」
 船長は自分達のこともお話します。
「遭難とかでオズの国に来る人をね」
「私もそうだったわね」
 ビリーナは自分のこともお話しました。
「ドロシーと一緒にだったわね」
「この世界に来たね」
「そうだったわ」
 実際にとです、ビリーナは船長に答えました。
「そして今もいるわ」
「そうした人達を見守って危なかったら」
「助けることもなのね」
「ヨルムンガルドがすることなんだ」
「そうなのね」
「そしてリバイアサンもね」
 この獣もというのです。
「その巨大な身体でいつも海を泳いでいて」
「そうしてなの」
「困っている人がいるかどうか探しているんだ」
「そうして困っている人がいたら」
「助けるんだよ」
「それはオズの国ならではだね」
 教授は甲板の上に出した安楽椅子の上でくつろぎつつ本を読みながらそのうえでビリーナにお話しました。
「リバイアサンはキリスト教では悪魔とされることもあるけれど」
「あら、そうなの」
「神か創られた獣とされながらもね」
「悪魔にもされるの」
「そうした立場だけれど」
「それでもなのね」
「オズの国のリバイアサンはね」
 こちらはどうかといいますと。
「凄く親切で心優しい獣だよ」
「そうなのね」
「それはヨルムンガルドもだね」
 教授の隣の安楽椅子に座っているモジャボロが言ってきました、見ればアップルパイとアップルティーを楽しんでいます。
「元々はね」
「そう、北欧神話ではね」
「そちらではだね」
「世界を滅ぼすとか言われていてね」
「悪い存在とだね」
「思われているけれど」
 それでもというのです。
「オズの国ではね」
「違うね」
「そう、とてもいい蛇だよ」
「それは何よりだね」
「普段は海の底で寝ているけれどね」
 教授はヨルムンガルドの普段のお話もしました。
「とても平和で親切な蛇だよ」
「それはいいことだね」
「全くだね、ただ」
 ここでこうも言った教授でした。
「今回の冒険ではね」
「そこまで行くかどうかは」
「わからないね」
「行こうと思ったら」
 その時はとです、船長は二人にもお話しました。
「行けるよ」
「今回の冒険でもなんだ」
「そう、行けるよ」
 実際にというのです。
「行こうと思ったらね」
「そうなんだね」
「行くのもいいね」
 船長は二人のお話を聞いてそうしてでした。
 意外と乗り気になってそうしてこうも言ったのでした。
「じゃあ行こうか」
「そういえばね」
 恵梨香達と一緒にです、海を観ていたトロットが言ってきました。
「私達はそこまで行ったことがあったけれど」
「それでもだね」
「恵梨香達はね」
 まさにというのです。
「行ったことがないわね」
「はい」
 実際にとです、恵梨香はトロットに答えました。
「そこはまだ」
「そういえばそうだね」
 カルロスも頷きました。
「僕達オズの国の境には行ったことがないね」
「出入りはいつも時計塔の渦からだし」
 神宝は自分達のオズの国の出入りのことも言いました。
「海についてはね」
「海はよく言ってるけれど」
 今もとです、ジョージは思うのでした。
「境まではだったね」
「そう思うと」
 まさにと言ったナターシャでした。
「若し行くことが出来れば」
「そうだね、じゃあね」
 船長は恵梨香達のお話を聞いてそれならと頷きました。それで皆に対して満面の笑顔でこう言ったのでした。
「境も行こうね」
「そうしてくれるんですか」
「いい機会だよ」
「いい、ですか」
「こうした話が出たこともね」
 それもというのです。
「いいことだから」
「それで今回は、ですか」
「オズの国と外の世界の境までね」
「今からですね」
「行って」
 そしてというのです。
「ヨルムンガルドに会いに行こう」
「わかりました」
「さて、それではね」
 早速です、一行はです。
 海の方のオズの国と外の世界の境に行くことも決めました、そしてこのお話が終わってからでした。
 三時のティータイムになりました、そこでトロットが出したものは。
 ロシアンティーに杏仁豆腐、チェリーパイに三色団子でした。そしてお団子の一緒にブラジルのお菓子ゴイアバーダもあります。
 その組み合わせについてです、テーブル掛けに出したトロットが言いました。
「今日は恵梨香達五人をね」
「お茶とお菓子にですか」
「出してくれたんですね」
「そういえば全部ありますし」
「それを皆で楽しむ」
「だから出してくれたんですか」
「そうよ、それでね」
 今からというのです。
「飲んで食べましょう」
「わかりました、ただ」
 ここで、です、恵梨香はロシアンティーを手に取ってからトロットに対してこんなことを言いました。
「普段と違いますね」
「そうね、ロシアンティーを出したらね」
「ロシアのお菓子で統一していますね」
「普段はそうしてるけれど」
「今回は、ですか」
「趣向を変えてね」
 それでというのです。
「五人を出してみたの」
「そうなんですね」
「お茶はナターシャで」
 ロシアンティーでというのです。
「チェリーパイはね」
「ジョージですね」
「そう、杏仁豆腐は神宝で」
「ゴイアバータはカルロスで」
「三色団子は恵梨香よ」
 そうしたというのです。
「五人それぞれよ」
「面白いですね」
 恵梨香やロシアンティーをジャムを舐めつつ飲みながらトロットに応えます、そうして三色団子も食べて言いました。
「ただ」
「あっ、今はロシアンティーはね」
「ジャムを舐めながらよりも」
「そうよ、それよりもね」
「お菓子を食べながら」
 そうしてというのでした。
「飲む方がいいわね」
「そうですね」
「ジャムもいいけれど」
「お菓子があると」
「その方がいいですね」
「そういえばね」
 今度は船長が言ってきました。
「パイや杏仁豆腐やゴイアバータはジャムとも合う感じがするけれど」
「杏仁豆腐も」
「まだね、ただね」
「三色団子は」
「これはね」
 船長もその三色団子を食べつつ言いました。
「ジャムとは合わないね」
「そう、本当にね」
 それでというのです。
「こちらはね」
「元々日本にはジャムはなかったですし」
「うん、しかもジャムはね」
「パンを食べる為のもので」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「日本はまたね」
「パンを食べても」
「主食は何かな」
 日本のそれはというのです。
「一体」
「お米です」
「そうだね」
「それでお菓子も」
 日本のお菓子、和菓子はです。
「お米に合わせた味ですね」
「そして日本のお茶にね」
「日本のお茶も」
「お米に合っているね」
「だからですか」
「もうジャムはね」
 どうしてもというのです。
「日本のお菓子にはね」
「合わないんですね」
「三色団子にもね、だからね」
「今は、ですね」
「ジャムを舐めるよりも」
 そうしつつ食べるよりもというのです。
「三色団子を食べる時はね」
「ロシアンティーを純粋にですね」
「飲むといいだろうね、ロシアンティーでもね」
「はい、和菓子とも合いますね」
「だからね」
 それでというのです。
「三色団子を食べる時は」
「ジャムを舐めないで」
「飲んでいこう」
「わかりました」
 恵梨香は船長の言葉に応えてでした、三色団子を食べる時はジャムを舐めない様にしました。すると三色団子の味がそのまま楽しめてです。
 ロシアンティーも楽しめました、こうしてお茶とお菓子を楽しみつつ海の景色も楽しんでいるとです。
 ふとです、船の近くにでした。
 巨大な濃い青の鱗を持つドラゴンの頭が出てきました、頭の大きさは皆が乗っている船位あります。
 その巨大な頭を見てです、船長は恵梨香達に言いました。
「あのドラゴンがね」
「さっきお話していたリバイアサンよ」
 トロットも恵梨香達に言います。
「オズの国にいる海の獣の一匹よ」
「そうなんですね」
「凄い大きさでしょ」
「はい」
 驚きを隠せない声で、でした。恵梨香は答えました。そしてナターシャ達四人もトロットに口々に言います。
「凄い大きさですね」
「頭だけでこの船位あって」
「身体も凄く大きいですね」
「そうですね」
「ほら、見て」
 ここでトロットは船の甲板や船底を透明にしました、そうして海中にあるリバイアサンの身体を見せましたが。
 その海蛇みたいで鱗に覆わせ背鰭が連なっているそれはです。
 二キロはあります、その大きさに皆驚きました。
「とんでもない大きさですね」
「まさに海の獣ですね」
「モビィーディッグやクラーケンよりも大きいですね」
「物凄いですね」
「これだけ大きいなんて」
「凄いでしょ、私も最初見た時はね」
 トロットは自分のこともお話します。
「あまりもの大きさにびっくりしたわ」
「そうですね、この大きさだと」
 ここでこうも言った恵梨香でした。
「この船も一呑みですね」
「お口も大きいしね」
 トロットは物凄く鋭い牙が連なっているリバイアサンのお口も見ました、お口も凄い大きさで耳まで裂けています。
「あれだとね」
「この船も」
「一呑みよ」
「そうですね」
「そうしたことはしないからね」
 ここで、でした。そのリバイアサンがです。
 船の方にお顔を向けてそうして一行に言ってきました。
「僕は」
「あら、聞こえていたの」
「うん、そうだよ」
 こうトロットにも答えます、物凄く大きな声で雷みたいですがそれでも穏やかで聞きやすい声です。
「さっきからね」
「そうなのね」
「確かに僕は大きいけれど」 
 それでもというのです。
「船を食べるとかはね」
「しないのね」
「絶対にしないよ」 
 そうしたことはというのです。
「何があってもね」
「それでいつも海を泳いで」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「困っている人がいるかどうかね」
「探して」
「そして困っている人がいたら」
 その時はというのです。
「助ける様にしているんだ」
「そういうことなのね」
「だからね」
 さらにお話する海獣でした。
「船を助けることはしても」
「飲み込んだりはね」
「しないよ、だから安心していいよ」
「それはわかってるけれど」
「ああ、彼等にだね」
 リバイアサンは大きな目で恵梨香達を観つつ言いました。
「お話しているんだね」
「そうだよ」
「この子達が」
「ええ、オズの国の名誉市民のね」
「そうだったね」
「お話は聞いてるわね」
「海でも有名だからね」
 それでというのです。
「僕も知ってるよ」
「そうなのね」
「うん、ただね」
 ここでこうも言ったリバイアサンでした。
「はじめて会ったね」
「そうね、恵梨香達にはね」
「それがよかったよ」
「はじめて会えて」
「本当にね、はじめまして」
 リバイアサンは今度は恵梨香達に挨拶をしました、確かに身体は凄く大きいですがそれでも声は穏やかなままです、
「僕がリバイアサンだよ」
「そうなのね」
「オズの国の海をいつも泳いでね」
「そうしてよね」
「海で困っている人達を助けているんだ」
「それが貴方のお仕事なのね」
「そうだよ、あと僕はいつも泳げて」
 そしてというのです。
「寝る時もね」
「泳ぎながら寝るのね」
「そうだよ、鯨君や海豚君達みたいにね」
 そうしているというのです。
「だから海でいつも泳げるんだ」
「そうなのね」
「オズの国が出来てから」
「ずっとなのね」
「そうしているんだ」
 オズの国の海を泳いでいるというのです。
「そして人助けをしているんだ」
「それはいいことね」
「とはいっても昔はね」
「あっ、オズの国の海は」
「そう、オズの国の領海じゃなかったよ」
「そうだったわね」
「オズの国は死の砂漠に囲まれていて」
 そうなっていてというのです。
「海はね」
「オズの国じゃなかったわね」
「リンキティンク王の国もだったね」
「ええ、大陸の周りの国もね」
 実際にというのです。
「だからね」
「最初の頃は」
「僕はこの海にいたけれど」
「オズの国にいるかというと」
「厳密にはね」
 そこはというのです。
「違ったんだ」
「そうなのね」
「それがね」
「オズの国が広がって」
「そうなってね」
 それでというのです。
「僕もオズの国の住人になったんだよ」
「その辺りリンキティンク王と一緒ね」
「ハイランドやローランド、そしてね」
「その他のオズの国々の人達と同じね」
「そうだよ、後で入ったけれど」
 それでもというのです。
「今はね」
「オズの国の住人ね」
「そうなんだ、それとね」
「それと?」
「リンキティンク王は元気かな」
 リバイアサンはこの王様のお話もするのでした。
「最近会ってないけれど」
「あの人ともお知り合いなの」
「友達だよ、愉快な人だからね」
 それでとです、リバイアサンは恵梨香達にお話します。
「よく楽しくお話をしてるよ」
「そうなのね」
「僕の方からお国の海岸の方に行って」
 リンキティンク王の国のというのです。
「あの賑やかな歌も聴いてるよ」
「あの人の歌が好きなのね」
「結構ね」
「あの歌は好き嫌いが分かれるね」
 船長はリバイアサンのお話を聞いてこう言いました。
「あの人の歌らしく賑やかだからね」
「僕の言う通りにね」
「落ち込んでいる時は元気が出るけれど」
 それでもというのです。
「静かにしたい時はね」
「あの音楽については」
「うん、どうにもね」
 静かにしたい時はというのです。
「困るね」
「あの人が静かな時ってないのよね」
 トロットはそもそもと言いました。
「いつもああだからね」
「僕は賑やかな気持ちになりたい時にね」
「その時になの」
「そう、あちらまで行ってね」
 リンキティンク王の国の海岸にというのです。
「聴いているんだ」
「そうなのね」
 今度はトロットがリバイアサンに応えます。
「そのことわかったわ」
「そういうことでね」
「私も。ただね」
「ただ?」
「貴方ともお友達なんて」
 リンキティンク王はというのです。
「あの人もお顔が広いわね」
「そうだね」
「ええ、それもかなりね」
「うん、確かにいつも賑やかな人でね」
 モジャボロもリンキティンク王について言います。
「凄い笑い声を出すけれど」
「悪い人じゃなくて」
「人を楽しい気持ちにさせてくれるから」
 そうした人だからというのです。
「嫌われなくてね」
「お友達も多いのね」
「社交性も備えているし」
「それでよね」
「あの人はお友達も多いんだよ」
「そうよね」
「かく言う僕達もだしね」
 モジャボロは自分達もと言いました。
「あの人達とはお友達だね」
「ええ、そうよ」
 トロットもその通りと答えます。
「私達とあの人はね」
「だからだよ」
「リバイアサンもなのね」
「お友達なんだよ」
「オズの国は誰ともお友達になれる国だけれど」
 それでもと言う教授でした。
「あの王様はかなりだね」
「そうね、まあオズの国で一番お友達が多いのはドロシーだけれど」
 ビリーナは彼女のことをここで思い出しました。
「あの王様もかなりなのは事実ね」
「ああ、ドロシー王女だね」 
 リバイアサンは彼女の名前を聞くと声を弾ませて言いました。
「あの娘とはこの前会ったよ」
「あの娘の前の冒険の時ね」
「うん、それで楽しくお話をしたよ」
「ドロシーはね」
 まさにと言うビリーナでした。
「オズの国一の冒険家で」
「オズの国で最も友達の多い人ね」
 トロットがビリーナに応えました。
「本当に」
「その通りよね」
「僕もそう思うよ、じゃあ今からね」
 リバイアサンは早速言いました。
「海で困っている人がいるならそこに行くけれど」
「それでもなのね」
「今はね」
 まさにというのでした。
「あの人のところに行くよ」
「そうするのね」
「気が向いたからね」
 こう言ってでした、リバイアサンは皆と別れてそのうえでリンキティンク王の国の方に行きました。そしてです。
 一行はまた航海に戻りましたがここで、でした。船長は皆に言いました。
「今度はどの島に行くか」
「そのことをですか」
「今から考えようか」
 こう恵梨香に言うのでした。
「そうしようかな」
「今はまだ決まっていないんですね」
「そうなんだ、けれどね」
「オズの国には他にもですね」
「面白い島が一杯あるからね」
 だからだというのです。
「これからね」
「どの島に行くか」
「そのお話をしようね」
「そうね、ここから少し行ったら」
 トロットが言ってきました。
「バイキングの島があるわね」
「ああ、そうだったね」
「どうかしら」
 トロットは船長に笑顔で提案しました。
「これからね」
「そちらにだね」
「行かない?」
 そのバイキングの島にというのです。
「そうしない?」
「そうだね」
 船長はトロットのその言葉に頷きました。
「じゃあ次はね」
「バイキングの島ね」
「そこに行こう」
「バイキングっていうと」
 ナターシャが彼等のことを聞いて船長に言いました。
「あの欧州中を暴れ回った」
「海賊ですよね」
 神宝も言います。
「物凄く強い」
「あの人達もオズの国にいるんですね」
 ジョージは目を輝かせて船長に言います。
「そうなんですね」
「本当に色々な人がいる国ですね」
 カルロスも凄いと思っていることです。
「バイキングの人達までなんて」
「それでバイキングの人達と」
 最後に恵梨香が言います。
「これから」
「会いに行こう、君達はバイキングとは会っていないね」
「はい、まだ」
「お話は聞いていますけれど」
「お会いしたことはないです」
「一体どんな人達か」
「お会いしてお話したいです」
「それではね」
 五人の子供達がバイキングと会う為にもというのです。
「バイキングの島に行こう」
「それじゃあ」
 五人は船長の言葉に笑顔で頷いてそうしてでした。 
 船は今度はバイキングの島の方に行きました、その中で船長はふとこう言いました。もう夕陽が落ちてきていて海もお空も赤くなっています。赤くなった海に銀色の波が輝いています。
「また夕方になるけれど」
「ええ、じゃあね」
「船は自動操縦にしているし」
「じゃあ晩ご飯を食べて」
「お風呂に入ってだね」
「そうして寝ましょう」
「そうだね、寝られる人はね」
 そうした人はといいますと。
「ゆっくりと寝て」
「身体を休めましょう」
「そうしようね」
「それで明日の朝も」
 トロットはにこにことして言いました。
「お日様が出たら」
「それと共にだね」
「起きましょう」
「そうしようね」
「そういえば」
 ここで恵梨香が言ってきました。
「オズの国の朝は早いですね」
「そうでしょ」
「はい、もうそれこそ」
 まさにというのです。
「今のお話通り」
「お日様が出るとね」
「それと共に起きますね」
「それがオズの国よ」
「オズの国の朝は早いですね」
「朝早く起きて」
 そしてというのです。
「お日様が落ちるまでね」
「楽しむのがオズの国ですね」
「それで寝る必要のない人達以外はね」
「じっくりとですね」
「寝るのよ」
 勿論ご飯を食べてお風呂に入ってからです。
「じっくりとね」
「それがオズの国ですね」
「皆早寝早起きですね」
「そう、本当にね」
「そうですよね」
「ではね、私達もね」
 こう言ってでした、トロットは早速です。 
 晩ご飯を出すテーブル掛けを出しました、そうしつつ言うのでした。
「今から寝る為に」
「晩ご飯を食べて」
「お風呂にも入って」 
 そうしてというのです。
「寝ましょう」
「それじゃあ」
 こうお話してでした、そしてです。
 一行は晩ご飯にこの日はマカロニにトマトとガーリックのソースをかけたものにサラダにジャガイモを茹でたものそして羊肉のソテーを食べました、恵梨香はその茹でられたマカロニを食べて言いました。
「マカロニって美味しいですね」
「ええ、だから私もね」 
 トロットが恵梨香に応えます。
「大好きでね」
「それでなんですね」
「こうしてね」
 実際にというのです。
「よく出してるでしょ」
「はい、マカロニ料理を」
「こうして茹でてソースをかけたもの以外にも」
「グラタンやサラダもですね」
「好きよ、そしてマカロニだけでなくパスタには」 
 ここで、でした。トロットは。
 粉チーズが入っている壺を出してスプーンから中身をすくってでした。マカロニの上にかけてこうも言うのでした。
「大蒜とオリーブオイルとね」
「チーズですよね」
「欠かせないわよね」
「チーズをかけますと」
「これ以上はないまでに美味しくなるわね」
「そうなんですよね」
「だから私チーズもね」
 こちらもというのです。
「大好きなのよ」
「そうなんですね」
「よく食べるわ、パスタを食べる時以外にもね」
「普段からですね」
「そうしているのよ、マカロニにチーズがあったら」
 それでというのです。
「かなり幸せよ」
「そうなんですね」
「ええ、それでデザートはね」
 トロットはそのお話もしました。
「ティラミスにしましょう」
「ティラミスですか」
「ええ、それを出して」
 そしてというのです。
「最後はね」
「甘くですね」
「楽しみましょう」
「それじゃあ」
「おお、観るんだ」
 ここで船長は船の左手を指差しました、するとです。 
 そちらを海豚達が泳いでいました、しかもです。
 その海豚達は海をトビウオみたいに跳ねています、船長は皆にその光景を見せてそのうえで言うのでした。
「いい光景だね」
「そうですね」
「夕陽に海豚が跳んでいるのが見えて」
「凄く奇麗な景色ですね」
「まるでこの世でないみたいな」
「幻想的な景色ですね」
「あの景色もだよ」
 まさにというのです。
「オズの国なんだよ」
「外の世界でも見られるのかしら」
 トロットはふとこうも思いました。
「こうした景色は」
「うん、見られるけれどね」
「それでもですか」
「オズの国ではね」
「よく観られるのね」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「この国ならではだよ」
「このことについても」
「そうなんだ、それとね」
「それと?」
「オズの国で海面を跳ぶのは彼等だけじゃないね」
「トビウオもよね」
「あのお魚もでね」
 それでというのです。
「そしてイトマキエイもだね」
「マンタね」
「あのお魚も跳ぶからね」
「あのエイもですか」
 イトマキエイと聞いてです、恵梨香が言ってきました。海の中から上まで跳んで出てそうして泳いでいる海豚達を観ながら。
「オズの国にはいるんですね」
「そうだよ、彼等もね」
「それじゃあ」
「今から観られるかな」 
 こうも思うのでした。
「ひょっとして」
「観たいと思えば」 
 ここでビリーナが言ってきました、ビリーナはトロットが出してくれた大好物の玉蜀黍を一粒ずつ食べています。
「観られるのがオズの国よね」
「そう、お伽の国だから」
「だったらね」
 それでというのです。
「思えばいいのよ」
「行きたいって」
「それじゃあね」
「今から願おうか」
「イトマキエイも観たいって」
「海面から出て来るね」
 船長はこう言ってでした、そのうえで。
 実際に願うとでした、船の右手海豚達がいる方から反対側にです。
 そのイトマキエイが出て来ました、イトマキエイは平べったくて大きな姿でお空を華麗に飛ぶ様にです。
 海面から出て跳んでいます、その姿を観てでした。
 恵梨香達五人は茫然となってです、思わず言いました。
「うわ、これは」
「本当に観られるなんて」
「外の世界じゃ滅多に観られないのに」
「オズの国じゃ願えば観られるなんて」
「しかも夕陽の中でなんて」
「そう、これもだよ」
 船長が茫然となっている五人にお話します。
「オズの国なんだよ」
「そうなんですね」
「願えば滅多に観られない光景も観られる」
「どんな美しい光景も」
「今のマンタの姿も」
「こうして」
「そうだよ、いやわしもね」 
 船長もそのイトマキエイを観て言うのでした。
「最近ずっと観ていなかったんだ」
「そうだったんですね」
「海の中から跳ぶイトマキエイは」
「そうだったんですね」
「それで観たいと願われて」
「そうして」
「そうだよ、そうして観られて」
 船長の目はうっとりとしています。
「幸せだよ」
「外の世界にいても」
 それでもと言うモジャボロでした。
「観られる光景にしても」
「本当に滅多にだよ」
 船長はモジャボロにもお話しました。
「観られないからね」
「けれどだね」
「オズの国はね」
 まさにというのです。
「願えばだから」
「このことは素晴らしいね」
「まことにね」
「このことがどれだけ素晴らしいか」
 まさにというのでした。
「お伽の国ならではだよ」
「これは学問的にも素晴らしい光景だよ」
 ここで言ったのは教授でした。
「イトマキエイという生物の生態についてもね」
「学問的にもなんだ」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「素晴らしいものだよ」
「では教授としても」
「奇麗だよ、そしてね」
「学問的にも」
「素晴らしいものを観ているよ」
 実際にというのです。
「だから私も満足だよ」
「わしはそうした意味でもいいことを願ったんだね」
「そう、一つのいいことはね」
「一つだけいいとは限らない」
「二つも三つもいい場合があるんだよ」 
 今の様に奇麗な景色を観られただけでなく学問的にも大事な場面を観られてです。そうしてだというのです。
「時として」
「そういうことだね」
「しかし、オズの国の海は」
 教授はその学問の話をさらにしました。
「本当に様々な生きものがいるね」
「わしもそう思うよ」
「外の世界にいる生きものがいれば」
「いない生きものもね」
 その両方がというのです。
「凄くいるね」
「それが素晴らしいよ」
「全くだね」
「お伽の国の海ですね」
 こう言ってきたのは恵梨香でした。
「つまりは」
「そう、だからね」
「とても素敵な場所なんですね」
「そうなんだよ」
「夜もね」
 トロットがここで言うことはといいますと。
「周りを照らしてね」
「そうしてですか」
「寝るまでね」
「夜の海の中を観られるんですね」
「それが出来るわよ」
「そうなんですね」
「夜の海は暗いけれど」
 夜は海の上だけではありません、海の中にも及ぶのです。だから海の中も夜になると暗くなるのです。
 ですがそれでもとです、トロットは言うのです。
「光を浴びせてね」
「そうしてですね」
「中を観られるから」
「それじゃあ」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「楽しみましょう」
「そうさせてもらいます」
「夜の海も面白いから」
 観ていてというのです。
「楽しみにしてね、そしてね」
「夜の海の中を観ながらですね」
「お風呂に入って」 
 そうしてというのです。
「寝ましょう、皆寝たらね」
「その時にですか」
「灯りが消えて」
 海を照らすそれがというのです。
「船が透明になることも終わる様になるから」
「だからですね」
「寝るまでね」
「観て楽しめばいいですね」
「素敵な光景を観ながら」
「そのうえで」
 寝ようとです、トロットは恵梨香にお話してです。
 海豚とイトマキエイを交互に観つつご飯を食べて言うのでした。
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「ではね」
 恵梨香にも言ってでした、皆で夕陽を受けつつ海の上を跳ぶ海豚やイトマキエイ達を観てでした。それからです。
 晩ご飯を食べてから夜の海の中を観てでした、それから皆で楽しく寝ようとしましたがその時にです。
 ベッドから海の中を観つつです、船長は同じお部屋にいるビリーナに言いました。
「こうして寝られるなんてね」
「最高の気持ちね」
「そうだよ」
 こう答えるのでした。
「本当にね」
「そうよね、船長はね」
 まさにと言うのでした。
「海の人だからね」
「だからね」
 それでというのでした。
「海の中を観ながら寝られるなら」
「最高ね」
「これ以上いいことはないとさえね」
「今思ってるのね」
「今日もね」
 その最高の気持ちに中で寝られるからというのです。
「夢の世界に入って」
「その夢の世界がね」
「最高の世界だろうね」
「そういえば夢の世界ってね」
「何かな」
「オズの国は夢がね」
「うん、実現出来るね」
「そうだね、だからね」
 それでというのです。
「わしは今日もね」
「幸せな夢を見て」
「その夢の通りにね」
「これからもね」
「やっていけるよ」
「観たいい夢が幸せに実現する」
 それはまさにと言うのでした。
「最高よね」
「オズの国の素晴らしいところの一つだね」
「それじゃあ私もね」
「いい夢を見るんだね」
「そしてそれを実現させるから」
「今はね」
「寝ましょう」
 最高の気持ちのまま最高の夢の世界に入ってそれを実現しようとです、こうお話してでした。船長もビリーナもその目が自然に閉じられました。








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