『オズのファイター大尉』
第十一幕 世界樹の花
一行は上に上にと進んでいきます、その中でポリクロームはひらひらと踊りながらドロシーに尋ねました。
「ここに来た理由は聞いたけれど」
「ええ、どうしたの?」
「ドロシーも世界樹の中詳しいのね」
尋ねるのはこのことでした。
「そうなのね」
「ええ、何度も来てるしね」
「だからよね」
「地図も持ってるけれど」
「大体のことは頭に入ってるのね」
「何処に何があるかね」
何度も入って冒険をしてです。
「そうしてね」
「それでよね」
「結構頭に入ってるわ」
「だからすいすい進んでいけるのね」
「そうなのよ」
「わかったわ、私もね」
ポリクロームもというのです。
「ここには何度か来てるから」
「道を知ってるわよね」
「ええ、下まで降りることも多いわ」
「それで街にも行くのね」
「そうしてるの」
世界樹の麓にあるあの街にです。
「それで遊んでるわ」
「貴女も世界樹に親しんでるわね」
「自分でもそう思ってるわ」
「お空の貴女のお家から来て」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「楽しんでるわ」
「それは何よりね」
「他の場所にもよく行くけれど」
「世界樹もなのね」
「今みたいにね」
「遊びに来てるのね」
「姉妹でね」
そうしているというのです。
「一緒に来てるわ」
「そういえば」
ここでまた言ったドロシーでした。
「昨日の人達は」
「そう、私の姉さんと妹達、あと従姉妹なの」
「皆で来てたのね」
「私一人で来ることもあるけれど」
それでもというのです。
「今回はそうして来てたの」
「そうだったのね」
「そうして貴方達と会ったの」
「そのうえで今一緒にいるわね」
「そうよ、じゃあね」
「それじゃあ」
「そう、今からね」
まさにというのです。
「一緒にね」
「頂上まで行って」
「世界樹のお花を観ましょう」
「ええ、そうして」
ドロシーはポリクロームにこう言いました。
「それからね」
「お花を摘んでよね」
「エメラルドの都に戻るわ」
「そうしておじさんとおばさんに」
ドロシーのと言うポリクロームでした。
「摘んだ葉とお花をあげるのね」
「それでワインに入れてもらうの」
「いいことね、ドロシーって孝行好きよね」
「だってずっと私を育ててくれて」
カンサスにいた時のことからお話するのでした。
「そうしてね」
「今も一緒にオズの国にいて」
「会った時はいつも笑顔で迎えてくれるのよ」
「だからなのね」
「そう、いつもね」
「孝行することを忘れていないのね」
「そうなの」
その通りだというのです。
「いつもね」
「親孝行はいいことですよ」
神宝はドロシーに笑顔でお話しました。
「そのことは」
「ドロシーさんにとってお父さんとお母さんはヘンリーさんとエマさんですね」
恵梨香はドロシーにこう言いました。
「だからですね」
「お二人への孝行を忘れないんですね」
ジョージもこのことがわかりました。
「そうですね」
「だから孝行を忘れないで」
カルロスはドロシーに笑顔でお話しました。
「今回も、ですね」
「だから葉も手に入れて」
そしてと言うナターシャでした。
「お花もなんですね」
「ドロシーは孝行娘だよ」
こう言ったのはかかしでした。
「これ以上はないまでにね」
「僕達もいつも見ているけれど」
樵はドロシーの親友の一人として見守っているのです。
「いつもお二人のことを考えているんだよ」
「オズの国でもかなりの孝行娘だよ」
こう言ったのはジャックでした。
「このことでも有名なんだ」
「僕もいつも一緒だけれど」
トトはカンサスにいた時からドロシーと一緒なのでこのことは他の誰よりもよくわかっていて言うのです。
「ドロシーは本当に孝行娘だよ」
「お父さんとお母さんじゃないけれど」
それでもとです、ドロシー自身も言います。
「私にとってはね」
「お二人はだね」
「お父さんとお母さんよ」
大尉にもこう答えます。
「本当にね」
「そうした人達だね」
「とても優しいね」
「だからいつもプレゼントをしてだね」
「会いにも行くの」
そうしているというのです。
「これからもそうしていくわ」
「そうだね、じゃあね」
「世界樹のお花のところに行きましょう」
「頂上までね」
こうお話してでした、そのうえで。
皆でさらに上に進んでいきます、すると今度はです。
エルフ達にです、ニンフ達に会いました。姿は似ていますがニンフの髪の毛は奇麗な緑で目は青くてお肌も緑がかっています。エルフ達はすっきりとした白い上着にズボンか丈の長いスカートでニンフ達は薄い生地のエメラルドグリーンのひらひらとした身体全体を包むローブを着ています。その彼等がです。
ポリクロームを見てです、彼女に笑顔で言いました。
「ポリクロームじゃない」
「ドロシー王女も一緒だし」
「かかしさん達もいるし」
「どうしたの?」
「ええ、世界樹の頂上まで行って」
そしてとです、ポリクロームが彼等に答えます。
「お花を手に入れるの」
「そうなの、あと少しよ」
「あと少しで頂上よ」
「頑張って頂上まで行ってね」
「そうしてね」
「ええ、皆でね」
そうするとです、ポリクロームはまた答えました。
「そうするわ」
「もう雲の高さだけれどね」
「周りには雲も見えるし」
「かなりの高さに来たし」
「あと少しよ」
「ここまで来たって感じだね」
大尉もこう言います。
「本当にね」
「そうよ、だからね」
「あと少し頑張ってね」
「ここまで来たら少しだから」
「頑張って行ってね」
「そうさせてもらうね」
「それとですけれど」
ここで神宝がニンフ達を見て言いました、緑の髪の毛を持つ彼女達を。
「ニンフの皆さんはこの世界樹の」
「そう、妖精なの」
「世界樹の精なの」
「世界樹から出てきたね」
「妖精なのよ」
「そうですね」
「私達と仲がいいけれど」
エルフの一人も神宝にお話します。
「生まれた経緯は違うの」
「エルフは人間やノームと同じで」
「ニンフは完全な妖精よ」
「私達虹の妖精と同じよ」
ポリクロームも神宝にお話します。
「妖精だからね」
「そうなんですね」
「そこはわかっておいてね」
「エルフの人達と仲がよくて外見が似ていても」
「ニンフの娘達は妖精なの」
「それでここのニンフの人達は」
「世界樹の妖精なの」
そうした人達だというのです。
「世界樹から生まれたね」
「成程、そういえばニンフの人達は」
この人達のことをさらに考える神宝でした。
「オズの国の各地にいますね」
「そうでしょ」
「森のニンフ、河のニンフ、海のニンフ、山のニンフって」
「それぞれの場所でね」
「ニンフがいますね」
「そうなの、オズの国ではね」
そうなっているというのです。
「ニンフの娘達も大勢いるのよ」
「こういうのってね」
ドロシーも言います、その言うことはといいますと。
「オズの国ならではよね」
「妖精も普通にいる国ですね」
「だからね」
それでというのです。
「世界樹にもいるのよ」
「そうなんですね」
「世界樹にいたら」
それでとです、ドロシーは神宝にお話しました。
「絶対に会えるのよ」
「世界樹のニンフさん達に」
「今だってね」
「あとね」
そのニンフの一人が五人にお話しました。
「お花のところには鷲と蛇がいるのよ」
「鷲と蛇がですか」
「そう、いつもいてね」
そうしてというのです。
「お花を見ているのよ」
「そうなんですね」
「蛇さんは元々根っこの方にいたの」
「それが今はですか」
「そう、頂上の方にね」
そちらにというのです。
「移ってね」
「お花を見ているんですね」
「鷲さんと一緒にね」
「そうですか、世界樹には鷲さんと蛇さんもいるんですね」
「あらゆる生きものがいて」
そしてというのです。
「そうした人達もいるの」
「そういうことですね」
「ええと、世界樹の鷲さんと蛇さんって」
ジョージが連想することはといいますと。
「北欧神話じゃないかな」
「あっ、そうね」
恵梨香もジョージの言葉に頷きます。
「蛇さんは最初根っこの方にいたっていうし」
「世界樹自体が北欧神話だし」
カルロスもこのことを知っています。
「そのままだね」
「世界樹はクリスマスツリーの元になったっていうけれど」
ナターシャはこのことから考えるのでした。
「この世界樹はツリーであって北欧の世界樹でもあるのね」
「そうなの、この世界樹もね」
まさにというのです。
「北欧神話の影響があるのよ」
「そうなんですね」
「やっぱりそうなんですね」
「世界樹だけあって」
「北欧神話みたいにですね」
「蛇さんも鷲さんもいるんですね」
「そうなの」
実際にというのです。
「とはいっても北欧神話みたいにお互い仲が悪くはないわ」
「北欧神話だとね」
かかしが五人にこの神話のことをお話します。
「蛇と儂はそれぞれいがみ合っているね」
「はい、世界樹の根っこと頂上で」
「お互いにいがみ合ってます」
「離れてますけれど」
「連絡役の栗鼠も仲違いを煽って」
「それで凄く仲が悪いです」
「そうだよ、けれどね」
オズの国ではというのです。
「全く違って仲がいいんだ」
「そこはオズの国だからね」
樵も五人にお話します。
「最初からなんだ」
「仲がいいんですね」
「それで一緒にいてですか」
「お花を見ているんですね」
「世界樹の頂上で」
「そうしているんですね」
「そうだよ、それにどちらも優しいから」
そうした性格だからだというのです。
「安心していいよ」
「怖くないんですね」
「鷲と蛇でも」
「どちらも怖かったりしますが」
「そすいた生きものじゃないんですね」
「安心していいんですね」
「そうだよ、だからお花は簡単に摘めるよ」
そう出来るというのです。
「すぐにね」
「言うならね」
今度はジャックが言います。
「お花の番人かな」
「その鷲さんと蛇さんは」
「そうした生きものなんだ」
「世界樹のお花を守っている」
「そうしているんだ」
「お花の傍にいて」
「そうだよ、世界樹のお花は特別なお花だからね」
それでというのです。
「護衛も必要だしね」
「特別なお花」
「これまで世界樹には沢山のお花が咲いてたけれど」
「果物の実が成るし」
「色々な種類のお花が咲いているけれど」
「世界樹にしかない、それも一輪だけのお花だから」
それでというのです。
「世界樹のお花って呼ばれてるんだ」
「そのお花にね」
これからとです、ポリクロームも言います。
「今から摘みに行くのなら」
「ええ、鷲さんと蛇さんには後でね」
「私達も遊びに行ってね」
「一緒に飲んだり食べたりするわ」
「そうするわ」
エルフとニンフ達もポリクロームに言います。
「だからね」
「先に行ってね」
「先に楽しんできてね」
「世界樹のお花を見てね」
「そうさせてもらうわね」
「あの、摘んだら」
また神宝が言ってきました。
「もうお花はなくなるんじゃ」
「いえ、摘んですぐにね」
ニンフ達が神宝の疑問に答えます。
「また咲くの」
「摘んだすぐ傍からね」
「それが世界樹のお花なの」
「何度でも咲くのよ」
「それもいつも咲いてるのよ」
「何ていいますか」
神宝はニンフ達のお話を聞いてこう思いました。
「世界樹らしいですね」
「世界樹って復活の木だからね」
「その葉は死んだ命を蘇らせるからね」
「それでお花もね」
「死んだ妖精さんを蘇らせて」
四人の子供達も言います。
「そうした木だから」
「だからよね」
「お花も蘇るんだね」
「それも何度も」
「そうだよ、オズの国は誰も死なないけれど」
それでもと言ったのは大尉でした。
「外の世界では世界樹はそうした木なんだね」
「はい、そうなんです」
「世界樹の葉は死者を蘇らせるんです」
「葉を磨り潰して飲ませると」
「それで、です」
「生き返るんです」
「そうだね、けれどね」
それがというのです。
「今言った通りオズの国では誰も死なないから」
「だからですね」
「死なないですから」
「最初からですね」
「その心配はいらないですね」
「葉にしてもお花にしても」
「そう、けれど葉は食べられても摘まれても復活するし」
そうしてというのです。
「お花もそうなんだ」
「だから果物もお野菜もね」
世界樹に実るものもとです、ドロシーはお話します。
「幾らでも出て来るのよ」
「そう考えると」
トトがドロシーに応えます。
「食べるものに尽きない場所だね」
「そうよね、この世界樹はね」
「オズの国の他の場所と同じで」
「素敵な場所よね」
「本当にね」
その通りだとです、トトも頷きます。
「そうした場所よね」
「そうよね」
「それとね」
また言ったトトでした。
「何度も復活するってね」
「今神宝達が言ったわね」
「その世界樹のお話を聞くと」
「フェニックス思い出したわね」
「そうだね」
「そうした世界樹なのね」
「外の世界だと」
こうお話するのでした、そしてエルフやニンフ達がまた一行に言いました。
「じゃあね」
「今から頂上に行ってきてね」
「私達はここで遊んでいるわ」
「皆で楽しくね」
「そうしておくわ」
「また今度遊びましょう」
ポリクロームはエルフとニンフ達に笑顔で言いました。
「そうしましょう」
「ええ、じゃあね」
「また来てね」
「そしてその時はね」
「一緒に遊びましょう」
「そうしましょうね」
こうお話をしてでした。
一行はエルフやニンフ達と別れてさらに頂上を目指しました、そうして遂にでした。
世界樹の頂上に来ました、するとです。
ピンクのとても奇麗な小さなお花が一つ咲いていてです、その前に。
鷲と蛇がいました、鷲は白い身体で蛇は黒い身体です。その鷲と蛇が一行に尋ねてきました。
「ここに来た理由はわかってるよ」
「お花を摘みに来たんだね」
「ドロシー王女達とは何度も会ってるしね」
「よくわかってるしね」
どんな人達かをというのです。
ですが神宝達五人にはこう言うのでした。
「けれどそちらの子達はね」
「会うのははじめてだからね」
「噂には聞いてたけれど」
「会うのは本当にはじめてだよ」
「そうなんだよね」
神宝も鷲と蛇にその通りだと答えました。
「世界樹に来たのもはじめてだし」
「そうだよね」
「世界樹に来たのがはじめてならね」
「ここに来るのもはじめてだね」
「世界樹の頂上にも」
「そう、それでね」
だからと言う神宝でした。
「僕達も君達と会うのははじめてだよ」
「お互いにね」
「会うのははじめてだね」
「でははじめまして」
「これからもここに来れば宜しくね」
鷲と蛇は五人に友好的に挨拶をしました、そうしてです。
あらためてです、彼等は一行に言いました。
「ではね」
「お花が必要なら摘んでいけばいいよ」
「摘めばすぐに新しいお花が咲くしね」
「そうしていいよ」
「それではね」
笑顔で、です。ドロシーが応えてでした。
すぐに世界樹のお花のところに行きました、鷲と蛇の間を通って。そうしてそのお花を手に取って摘みました。
するとすぐに新しいお花が咲きました、神宝はその状況を見て言いました。
「本当にすぐに新しいお花が咲いたね」
「うん、生まれ変わったみたいにね」
ジョージもその場面を見て言いました。
「すぐに咲いたね」
「本当にそうなるのがね」
摘んでも新しいお花が咲くとです、カルロスも言います。
「オズの国らしいね」
「誰も死なない国だから」
ナターシャの言葉はしみじみとしたものです。
「こうなるのね」
「そうね、新しいお花が咲いて」
そしてと言った恵梨香でした。
「また世界樹にあるのね」
「そうだよ、世界樹の葉と花は決して死なないんだ」
大尉もこう五人に言います。
「摘まれてもね」
「すぐに生まれ変わる」
「新しい葉やお花が出て来るんですね」
「魂はそこにある」
「そういうことですね」
「新しい身体に魂が宿るんですね」
「そうだよ、魂はそこにあるんだ」
そうなるというのです。
「それぞれの葉とお花のね」
「ううん、何ていうか」
神宝は大尉のお話を聞いて頷きました。
「魂は不滅っていいますか」
「オズの国では体がなくなってもね」
「魂はあって」
「身体もすぐに戻ってね」
「死なないってこともあって」
「そう、家畜もだね」
皆が食べている彼等もというのです。
「一度食べられてもすぐに身体が戻るね」
「それで魂もそうですね」
「そうした風な死なない場合もあるんだ」
オズの国ではというのです。
「そうしたこともあるんだ」
「そうなんですね」
「そう、それでね」
「世界樹もそちらなんですね」
「そうしたことで死なないんだ」
そうなるというのです、そしてです。
「身体が何もならないという訳じゃないけれどね」
「オズの国で死なないっていうのはね」
かかしも五人にお話します。
「身体が最初からって場合と身体が何度も復活するって場合があるんだ」
「僕達は前者でね」
そしてと言う樵でした。
「それで家畜や世界樹の葉やお花は後者なんだ」
「だから樵さん達が退けたカリダや烏や狼も死んでいないんだ」
ジャックはドロシーがかかし達と会った最初の冒険のお話を出しました。
「身体がすぐに蘇ってね」
「ううん、そうした世界なんだね」
「オズの国はね」
「身体が死んでもすぐに蘇る」
「魂も死ななくて」
「それもオズの国の死なないってことなの」
「そうなんだ」
まさにと答えたジャックでした。
「オズの国はね」
「死なないっていっても色々ある」
考えるお顔で、です。神宝は言いました。
「そういうことだね」
「そうだよ、オズの国はね」
トトも五人にお話します。
「それもまた不死身なんだよ」
「不死身にも色々ってことだね」
「そうだよ、要するに魂と身体かな」
「魂があってだね」
神宝は五人を代表してトトに応えました。
「身体もあったら」
「そう、自分のね」
「それならだね」
「死なないんだ、身体が死なないかすぐに元に戻るなら」
「死なない」
「そうなるんだ」
こうお話するのでした、そしてです。
そうしたお話をしているとドロシーが戻ってきて皆に言いました。
「ではね」
「これからね」
「ええ、戻りましょう」
こうポリクロームに答えました。
「都までね」
「そうするのね」
「今からね」
「わかったわ、じゃあ私はね」
ポリクロームはドロシーのお話を聞いて言いました。
「世界樹の麓までね」
「そこまでついて来てくれるのね」
「そうさせてもらっていいかしら」
「ええ、いいわ」
ドロシーはポリクロームににこりと笑って答えました。
「貴女がそうしてくれるのならね」
「ではね」
「今からね」
「行きましょう」
二人でお話してでした。
ポリクロームは皆と一緒に世界樹を出るまで一緒に行くことになりました、そうして皆は帰りの道をです。
これまで通ってきた道を逆に進んでいきました、するとです。
今度はです、大尉は皆に言いました。
「行きは僕達男組が先に行ったね」
「はい、女の子がスカートの中を見られない様に」
「そうしたけれど」
それがというのです。
「帰りはね」
「逆ですね」
神宝は大尉に気付いているお顔で答えました。
「女の子が先ですね」
「そう、先に降りてね」
「それからですね」
「僕達がってなるんだ」
「今回はレディーファーストですね」
「これも気遣いだよ」
女の子に対するというのです。
「紳士はやっぱりね」
「女性を大切にしないと駄目ですね」
「勿論男性もでね」
「こうした場合はですね」
「そう、女性のことを気遣ってね」
そうしてというのです。
「先に進んでいこう」
「それじゃあ」
「降りる時はね」
「女の子達から先に行ってもらって」
「進んでいこうね」
「わかりました」
実際にでした、皆は今度は階段については女の子からとしてです。降りていきました。そうしてでした。
順調に降りていきますがここでトトがこんなことを言いました。
「いつも思うんだけれど」
「どうしたの?」
トトにポリクロームが尋ねます。
「何を思ってるの?」
「うん、世界樹にしても山にしても塔にしても」
「昇ったり降りたりするところは」
「何かね」
どうにもというのです。
「降りる時の方が速いんだよね」
「昇る時よりも」
「それもずっとね」
そうだというのです。
「速いんだよね」
「そうね、降りるとね」
「昇るよりもね」
「どんなところでも速いわ」
ポリクロームもその通りだと答えます。
「トトの言う通りにね」
「この世界樹だけじゃなくてね」
「山でも塔でもね」
「昇る時はかなり時間がかかっても」
「降りる時はすぐね」
「あっという間ね」
「うん、これまで僕も世界樹を行き来してきたよ」
トトもそうしてきているのです。
「ドロシーと一緒にね」
「それで世界樹を昇り降りしていて」
「いつもね」
それこそというのです。
「降りる方がずっと速いんだよね」
「歩く速さも」
「そうなるんだね」
「だって行ったばかりの道を戻るから」
ポリクロームはトトにその訳をお話しました。
「だからね」
「それでだね」
「覚えたての道だから」
「そこを戻るからだね」
「すぐに進めるのよ」
そうだというのです。
「それに階段も昇るよりもね」
「降りる方が速くなるから」
「だからよ」
「降りる方が速くなるんだね」
「そうなるのよ」
「成程ね」
「お空だってそうね」
ポリクロームが普段いる世界もというのです。
「昇ると時間がかかるけれど」
「降りると」
「そう、雨とかね」
「あっという間にだね」
「地上に降るから」
オズの国はいつも晴れていますが皆が必要と思えばその時にその場所に必要なだけ降るのです。それもオズの国の不思議の一つです。
「それでね」
「降りる方が」
「そう、昇るよりもね」
「お空でも速いって言えるのね」
「そうよ、じゃあすぐにね」
「世界樹をだね」
「降りていきましょう」
こうお話してでした、一行は世界樹を降りていきました。実際に一行は昇っている時よりもずっと速く世界樹を降りていきました。
そしてです、ドロシーはその中でティータイムの時に言いました、今日の三時のお茶はミルクティーにケーキ、エクレアにクッキーの三段です。
そのお菓子達を食べつつ言うのでした。
「後は通ってきた道を戻るけれど」
「うん、今みたいにだね」
大尉がドロシーに応えました。
「そうしていくね」
「ええ、けれどね」
「もう寄り道はだね」
「何かあれば別だけれど」
そうでなければというのです。
「特にね」
「そうしたことはしないで」
「それでね」
そのうえでというのです。
「急がないけれどね」
「出来るだけ早くだね」
「戻りましょう」
これがドロシーの提案でした。
「もう今回の旅で行きたいところも行ったしね」
「そうですね、もう」
神宝はドロシーにミルクティーを飲みつつ答えました。
「途中面白い場所は」
「全部行ったし」
「だからですね」
「何かあれば別でも」
「後はですね」
「皆がまた寄りたい場所があるなら」
それならというのです。
「別だけれどね」
「そうでないならですね」
「もうね」
「寄り道をしないで」
「帰りましょう」
「それがいいですね」
「まだワイン造りには時間があるけれど」
それでもというのです。
「戻ってね」
「ヘンリーさんとオムさんに葉とお花を渡して」
「お二人の笑顔を見ましょう」
これがドロシーの提案でした。
「そうしましょう」
「わかりました」
神宝だけでなく五人全員が答えました、そして大尉達もそれならと頷きました。ですがポリクロームだけはです。
どうかというお顔になってそれで言うのでした。
「そういえば私お二人に最近お会いしてないわ」
「そういえばそうね」
「ええ、だからね」
それでとドロシーに言うのでした。
「世界樹にいる間だけって思ってたけれど」
「私達と一緒にいるのは」
「それをね」
「お二人のお家までなの」
「そうしていいかしら」
「ええ、貴女がいいならね」
それならとです、ドロシーはポリクロームに返事をしました。
「それでいいわ」
「ではね」
ポリクロームはドロシーに応えてでした、そのうえで。
すぐにスマホを出してお姉さんの一人に連絡をしました、それが終わってからドロシーにあらためて言いました。
「これでね」
「大丈夫なのね」
「皆に連絡したから」
それでというのです。
「もうね」
「おじさん達のお家まで一緒に行けるのね」
「それでお二人の笑顔を見て」
そうしてというのです。
「それからね」
「お空に帰るのね」
「私がまた連絡したら」
その時にというのです。
「姉さんが迎えに来てくれるそうよ」
「そうなのね」
「それじゃあ世界樹を出てもね」
「一緒なのね」
「そうなるわ。あとね」
見ればポリクロームは今は露ではなくミルクティーを飲んでいます、そのうえでドロシーに言うのでした。
「この紅茶は」
「美味しいでしょ」
「実は露以外のものも飲めるけれど」
「それで紅茶もよね」
「飲めてそれもね」
「美味しくね」
「飲めるからね」
だからというのです。
「嬉しいわ」
「この紅茶も美味しくて」
「楽しめるわ、紅茶とミルク、お砂糖の味がね」
その三つの味がというのです。
「見事に一つになっててね」
「美味しくてね」
「楽しめるわ」
「それでいいのよ、じゃあね」
「もう一杯いただいていいかしら」
「何杯でもいいわ」
飲むことはというのです、そうしてでした。
実際にポリクロームは紅茶を飲んでいきます、そしてです。
神宝達五人もケーキとエクレア、そしてクッキーを紅茶と一緒に楽しみつつこうしたことを言うのでした。
「今日の三時もね」
「最高だよね」
「お菓子も紅茶も美味しくて」
「世界樹の香りの中にもいるし」
「景色も奇麗だし」
「世界樹の中ではティータイムも素敵なのよ」
ドロシーは五人にもお話しました。
「緑の中に囲まれているから」
「だからですよね」
「この素敵さなんですね」
「お茶やお菓子の味と香りも楽しめて」
「そしてですね」
「世界樹の香りや景色も楽しめるんですね」
「そうなの。皆また世界樹に来たら」
その時はというのです。
「いいわね」
「はい、その時は」
「またこうしてですね」
「ティータイムも楽しめばいいんですね」
「今みたいに」
「そうなんですね」
「そうしてね、私もいつもそうしているし」
世界樹に来た時はというのです。
「だからね」
「そうですね、また世界樹に来たら」
その時はとです、神宝はドロシーに応えました。
「そうさせてもらいます」
「是非ね、ただね」
「ただ?」
「オズの国は色々な場所があるでしょ」
「はい、本当に」
「だから貴方達が今度この世界樹に来る機会は何時か」
「それはですね」
神宝もどうかというお顔で応えます。
「何時になるかは」
「わからないわ」
「今度世界樹に来る時は」
「貴方達が次にオズの国に来た時かも知れないし」
「ずっと後かも知れないですね」
「そこはわからないわ、どうも貴方達はね」
神宝のこれまでの冒険のことを思い出して言うドロシ―でした。
「いつもそれぞれの場所に行くでしょ」
「はい、来る度に」
「だからね」
それでというのです。
「そこはね」
「今度はまた違う場所に行くことがですか」
「そうなる可能性が高いわね」
神宝達の場合はというのです。
「貴方達本当に色々な場所に行ってるから」
「オズの国にいるとね」
大尉も神宝に言います。
「どうしてもだよ」
「色々な場所があるから」
「だからね」
「そうして冒険の度に色々な場所に行くことも」
「あってね」
それでというのです。
「君達みたいな色々な場所に行く冒険もね」
「あるんですね」
「思えばドロシーもそうだね」
「ええ、私もね」
「オズの色々な場所にだね」
「同じ場所に続けて行くことは」
そうしたことはというのです。
「ないわ」
「そうだよね」
「ええ、本当にね」
「前に行った場所はね」
「暫く行かないわ」
「最低でも何回かの冒険を経てから」
「それから行ってるわ」
そうなっているというのです。
「自然とね」
「そうだね」
「私はね」
まさにというのです。
「そうなっているわ」
「そうだね」
実際にと応えた大尉でした。
「ドロシーの冒険も」
「あちこちを回っていて」
「前に行った場所はね」
「暫く行かないわ」
「これもオズの国の神々にね」
「そうしてもらっているのでしょうね」
「そうだと思うよ、そしてね」
「この子達もね」
「そうだと思うよ」
大尉は神宝達五人を見ながら微笑んでです、ドロシーにお話しました。
「やっぱりね」
「そうよね」
「だからね」
「この子達は次は他の楽しい場所に行って」
「世界樹はまた暫く先にね」
「そうなるね」
「じゃあ次に行く場所はわからないけれど」
それでもと言うドロシーでした。
「またその場所もね」
「楽しもうね」
「そうするわ」
「そういうことでね、じゃあこれから」
「都に戻るけれど」
「その道中もね」
「安全には気をつけて楽しく」
そうしてというのです。
「進んでいきましょう」
「そういうことだね」
「ええ、それとね」
さらに言うドロシーでした。
「おじさんとおばさんだけれど」
「うん、エメラルドの都に帰ったらね」
「その時はだね」
「すぐにね」
宮殿には帰らないでというのです。
「そうしてね」
「そのうえでだね」
「そうよ、お二人のお家に行くわ」
「そうするね」
「ええ、まずはね」
何といってもというのです、こうお話してでした。
一行は世界樹を降りていきます、そうして帰りの旅を楽しむのでした。