『オズのファイター大尉』




               第九幕  世界樹の葉

 一行は世界樹の木を上に上に進んでいきました、そうして二日程進んででした。ドロシーが皆に言いました。
「あと少しでね」
「あと少しで?」
「枝があるところに行くわよ」
 こう言うのでした。
「その高さになってきたわ」
「そういえば随分上に昇ったわね」
「そうよね」
 ナターシャと恵梨香がドロシーのお話に頷きました。
「この三日でね」
「もうどれ位昇ったかしら」
「大体七百メートル位ね」
 ドロシーは二人の女の子に微笑んで答えました。
「今で」
「七百ですか」
「それ位ですか」
「そうよ、物凄く大きな幹の中を何段も何段も進んでいてね」
 そうしてというのです。
「大体ね」
「七百位ですか」
「三日で」
「そう、それでね」
 これからというのです。
「これから枝のあるところに出るわよ」
「この木はクリスマスツリーに似た形だから」
 大尉も五人にお話します。
「ここから三角になっているんだ」
「だからですか」
「ここからはずっと、ですね」
「枝があるんですね」
 神宝とジョージ、カルロスはクリスマスツリーの形を思い出しながら大尉の言葉に考えるお顔で応えました。
「つまりは」
「三角で続いていて」
「頂上が尖ってるんですね」
「そうだよ、そうした形だってね」
 まさにというのです。
「わかっておいてね」
「はい、大体想像がつきます」
「近付く間にも外観見てましたし」
「中に入ってもどんな感じかは」
「そういうことでね、それとね」 
 さらにお話する大尉でした。
「これからも色々な人達がいるからね」
「これまで通りですね」
「大きな昆虫さんがいたり」
「ホビットさんやフェアリーさん達もいてですね」
「他にも色々な人達がいるからね」
 だからというのです。
「楽しみに昇っていこうね」
「皆いい人達だからね」
 かかしも皆にお話します。
「だから安心して上に行こうね」
「わかりました、しかし三日昇って七百メートルなんて」
 神宝は驚きを隠せないお顔でした。
「凄いですね」
「さっきドロシーが言ったね」
「幹の直径も凄い広さだからですね」
「そう、ただ昇るだけじゃなかったから」
「広い中も歩いてきたので」
「それでだよ」
「三日かかったんですね」
 神宝も納得しました。
「そう思うと凄い場所ですね」
「まさにね」
 文字通りにというのです。
「世界樹だよ、ここは」
「オズの国で一際大きな木だから」
 ここで樵も言います。
「もうそれだけにね」
「上に昇るにもですね」
「かなり時間がかかるから」
「このことはですね」
「焦らないって言われたね」
 樵はにこりと笑って神宝だけでなく他の子達にも言いました。
「そうだね」
「だからですね」
「僕達も焦らない」
「何日かかっても」
「それでもですね」
「焦らないことですね」
「急ぐ用事でもないしね」
 だからだというのです。
「ヘンリーおじさんとエムおばさんがワインを造りはじめるのはまだ少し先だし」
「このまま頂上まで昇ってね」
 ジャックも皆にお話します。
「そうして下まで戻って都まで戻っても」
「時間があるんだね」
「あと何日もあっても」
「それでも」
「まだ時間があるの」
「そうなのね」
「そう、だから焦らないで」
 それでというのです。
「楽しんで行こうね」
「まだ七百じゃなくてあと千三百も楽しめる」
 これが大尉の言葉でした。
「そう思うとわくわくしてこないかな」
「してきます」
「そう考えますと」
「あと千三百メートルあって」
「その間ずっと楽しめる」
「世界樹の中を行くことを」
「そう、だから楽しんでいこうね」
「それで枝に出た時の景色が最高なんだ」
 トトが皆にお話するのはこのことでした。
「もう既にお話されてるけれどね」
「だからだね」
「あと千三百もあるけれど」
「ずっと楽しんでいればいい」
「そうすればいいのね」
「頂上まで」
「あと降りる間も」
 その時もというのです。
「中々楽しいしね」
「精一杯楽しんで」
 そしてと言うドロシーでした。
「進んでいきましょう」
「わかりました」
 五人はドロシーに笑顔で応えてです、そうして彼女についていってそのうえで枝のところに出ました。
 するとトトが言った通りにでした。
「うわ、何か」
「ずっと先まで見渡せて」
「お空も青くて」
「オズの国が一望出来る感じで」
「凄いわね」
「これがだよ」
 トトも景色を見ながら喜んでいます。
「世界樹から見える景色なんだ」
「凄いね」
「ここに来てよかったってね」
「あらためて思えるね」
「これまでも凄く楽しかったけれど」
「今もまた」
「こんなに楽しいことばかりでね」
 こうも言うトトでした。
「いいのかなって思うね」
「いいんだよ、これで」
 笑顔で、です。大尉はトトに応えました。
「オズの国ではね」
「あっ、オズの国では何でも楽しむこと」
「法律で定められているからね」
「だからだね」
「そう、徹底的に楽しんでも」
「それでもだね」
「いいんだよ」
 こう言うのでした。
「僕達も世界樹の中でね」
「そうだったね」
「そうだよ、じゃあね」
「これからもだね」
「楽しんでいこう」
「景色も」
「しかし」
 ここで神宝は足元を見ました、皆今は枝から出て葉の上に出ています。ですがそれでもなのでした。
 皆普通に歩けています、それで言うのでした。
「枝の上も葉の上も普通にあるけるなんて」
「葉の量が桁外れだからだよ」
 大尉が神宝にお話します。
「だからなんだ」
「それで、ですか」
「そう、葉の量が多くて床みたいになってるから」
「僕達もですね」
「普通に歩けるんだ、それにね」
「それに?」
「もうここでね」
 今自分達がいる場所ですぐにというのです。
「葉を取ってもいいよ」
「それじゃあ」
「ええ、もうね」
 ドロシーも言ってきました。
「ここで葉を貰ってもね」
「いいんですね」
「そうよ、だから」
 ドロシーは神宝に応えて言いました。
「ここはで手に入れておきましょう」
「それじゃあ」
「今取るわね」
 ドロシーは足元に屈んで、でした。世界樹の葉を一枚取りました。そうしてから皆に笑顔で言いました。
「これでね」
「今回の冒険の目的は達成されたね」
「ええ、そうなったわ」 
 大尉にも笑顔で応えます。
「無事にね」
「そうだね」
「よかったわ、ただね」
「ただ?」
「これでね」
 さらに言うドロシーでした。
「後は安心してね」
「楽しめるね」
「頂上まで昇って」
「頂上でもだね」
「景色を見て」
 そしてというのです。
「それでね」
「楽しむんだね」
「ええ、あとね」
「色々な人達にも会って」
「世界樹の中に実る」
「色々な果物の実もね」
「食べましょう」
 こちらも楽しもうというのです。
「是非ね」
「楽しみばかりだね」
「本当にね」
 にこりとしてです、ドロシーは大尉に応えました。
「そうした場所よ」
「何度かここに来てるけれど」
「いつもね」
「だから」
 それでというのです。
「これからもね」
「楽しんでいこうね」
「そうしましょう、それで今日のお昼は」
 今度は食べることの楽しみについてでした。
「何を食べるかだけれど」
「さっき果物のお話をしたから」
 それでと言ったトトでした。
「今日のお昼はね」
「世界樹の中で実る」
「果物を食べよう」
「それがいいわね」
「本当に色々な種類が実ってるからね」
「もうこの辺りを探せば」
 大尉が言ってきました。
「それだけでだよ」
「沢山の木の実があるわね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「今からね」
「皆でなのね」
「果物を集めて」
「この場で」
「皆で楽しもう」
「それじゃあ」
 ドロシーは大尉の言葉に頷きました、そうしてでした。
 皆、食べる必要のない大尉達も協力してくれてでした。周りにある果物や木の実を集めました。するとです。
 物凄く沢山の果物や木の実が見付かったので五人も驚きました。
「林檎にバナナに葡萄に」
「梨、無花果、枇杷に」
「オレンジ、ネーブル、グレープフルーツ」
「柿、桃、さくらんぼ」
「メロン、ドラゴンフルーツ、ドリアンって」
 五人でそれぞれ集めたものを見て驚いています。
「トマトもあるし」
「西瓜もあるよ」
「苺だってね」
「パイナップルもあるし」
「プチトマトも」
「そう、お野菜も実るの」
 ドロシ―は皆に笑顔でお話しました。
「人参とかもね」
「そういえば」
 神宝は自分達から少し離れたところに馬の群れを観ました、お馬さん達は世界樹の葉だけでなく生えている人参やほうれん草も食べています。
「色々実ってますね」
「そうでしょ、もっとも幹の中でもね」
「そういえば」
「色々実ってて」
「少し手の届くところに小さな枝があって」
「果物が色々実ってて」
「凄かったわね」
「皆時々食べてたでしょ」
 このことも見ているドロシーです。
「そうでしょ」
「はい、美味しかったです」
「それも凄く」
「色々なもの食べてました」
「ここに住んでいる人達がそうしていたみたいに」
「楽しんでいました」
「そうでしょ、幹の中でも実るのが世界樹なの」
 この木だというのです。
「だからね」
「それで、ですね」
「皆食べものに困らないんですね」
「世界樹の中にいたら」
「それで皆暮らしてるんですね」
「それも楽しく」
「そうよ、何処にいてもね」
 世界樹のです。
「楽しく食べられるのよ」
「そうしたところなんですね」
「本当にオズの国ですね」
「外の世界では絶対にないことが普通で」
「ただ巨大な木じゃないんですね」
「何処でも色々な実が実ってるんですね」
「そう、果物だけじゃなくてお野菜も」
 トマトや西瓜もというのです。
「実って凄く食べられるのよ」
「それじゃあですね」
「今からその実ったものを食べますね」
「お昼御飯として」
「林檎やバナナを」
「西瓜も」
「そうしましょう」
 こう言ってでした、そのうえで。
 皆で楽しくお昼となりました、するとです。
 そこに世界樹の中にいる猿や栗鼠やヤマネや熊が来ました、狐や狸や鹿といった生きものもいます。
 その皆がです、それぞれお野菜や果物を持ってきて一行に言ってきました。
「ドロシ―王女お久し振り」
「かかしさんと樵さんもね」
「トトも元気そうね」
「ジャックと大尉も来てるし」
「会いに来たよ」
「ああ、普通に生きものもいるから」
 神宝も皆を見て言いました。
「こうしてだね」
「そうだよ、僕達もこうして世界樹の中にいてね」
「楽しく過ごしているんだ」
「いつも食べて遊んでね」
「そうしているのよ」
「そうなんだね、ここにいるのは本当に」
 あらためて言う神宝でした。
「色々な人や生きものなんだ」
「人間だっているよ」
 マンチキンの服を着た若い男の人もいました。
「村だってあってね」
「えっ、村もですか」
「うん、あるよ」
 世界樹の中にというのです。
「幹の方にはないけれどね」
「葉のところにはですか」
「そう、あってね」
 それでというのです。
「皆世界樹の葉で造った家で暮らしているんだ」
「世界樹の葉で、ですか」
「そうだよ、ここには泉も温泉もあるし」
 それでというのです。
「勿論食べものも豊富にあるしね」
「マンチキンの人達もですか」
「過ごしていてね」
 それでというのです。
「楽しくやってるよ」
「木の中に村が幾つもあるのも」
「オズの国だね」
「この国ならではですね」
「全くだね」
 マンチキンの人も笑顔で応えます。
「けれど皆いつもね」
「楽しくですか」
「こうして他の生きもの達と一緒にね」
「暮らしていますか」
「そうだよ、こうしたのもあるしね」
 マンチキンの人はここで沢山の胡桃の実を出してきました。
「胡桃だってね」
「あっ、胡桃ですか」
「この木で採れたものだよ」
 世界樹でというのです。
「だから皆で食べようね」
「ここの世界樹は物凄く美味しいんだ」
 栗鼠が言ってきました。
「だからどんどん食べようね」
「そういえば胡桃はね」
「僕達採らなかったね」
「あるにはあっても」
「果物やお野菜を採って」
「木の実はついつい」
「それはよくないね」
 熊は栗の殻を取りつつ五人に言います。
「やっぱりね」
「そうしたものも忘れたら駄目」
「ちゃんと採っておく」
「そうして食べる」
「そうしないと駄目ね」
「世界樹の中だと」
「木の実も美味しいね」
 果物とはまた違った美味しさがあるというのです。
「じゃあ採って食べないとね」
「この木の胡桃や栗はすぐに食べられるから」
 ドロシーがまた五人に言います。
「だからね」
「こうしたのも食べて」
「そのうえで楽しめばいいね」
「じゃあ今度採る時はね」
「木の実も採りましょう」
「胡桃や栗も」
「そう、後はね」
 さらにお話するドロシーでした。
「皆で食べましょう」
「さて、いただきますだね」
 大尉がとてもうれしそうに言ってきました。
「これからは」
「そうよ、じゃあね」
「皆で食べようね」
「この辺りの皆も来てくれたし」
 ドロシーはこのことにも笑顔になっています。
「それじゃあね」
「皆で食べよう」
「そうしましょう」
 こうお話してでした。
 皆で実際に楽しく食べます、実際に胡桃は大尉と樵が指で軽くパチンと割ってくれてそうして食べますが。
 そのまま食べられてしかもでした。
「美味しい」
「まるで焼いた後みたいで」
「とても香ばしくて」
「幾らでも食べられるわ」
「素敵な味ね」
「そう、これがね」
 まさにとです、ドロシーも言いました。
「世界樹の胡桃なのよ」
「そうですか」
「それで、ですね」
「この胡桃も他の木の実も食べる」
「そうすればいいんですね」
「私達も」
「どんどん食べてね」
 マンチキンの人も言ってきました。
「これから」
「わかりました」
「そうさせてもらいます」
「美味しいですし」
「是非です」
「どんどん食べさせてもらいます」
「うん、実を割るのはね」
 熊が軽く押すと割れます、栗鼠やヤマネはその前歯で奇麗にすぐに割って食べています。狐や狸も軽く噛んで割ります。
「こうしてね」
「動物の皆が割る」
「それも簡単に」
「何か凄いけれど」
「物凄く器用に割って食べてるわね」
「それも器用に」
「僕達はね」
 マンチキンの人は胡桃割り器を出してそれで割って食べています。
「こうしてね」
「あっ、人はですか」
「それを使いますか」
「道具ですね」
「力や歯で難しかったら」
「道具ですね」
「そう、これを使ったらね」
 胡桃をとても簡単に割りながらの言葉です。
「こうしてね」
「簡単にですね」
「簡単に割ることが出来て」
「胡桃を食べられる」
「そういうことですね」
「人には人のやり方があるんだね」
「そうだよ、じゃあ皆でね」
 是非にと言うのでした。
「そうしてね」
「割ってですね」
「そして食べればいいですね」
「樵さんと大尉さんが割ってくれてますし」
「それならですね」
「私達も」
「食べようね」
 こう言って皆で食べます、そしてでした。
 ヤマネは大尉にこんなことを言ってきました。
「いや、大尉さんは久し振りだよね」
「うん、ここに来たのはね」
 実際にとです、大尉はヤマネに答えました。
「結構前だったね」
「そうだったよね」
「けれどね」
「こうして今来てだね」
「楽しんでるよ」
「それならだよ」
 アライグマもいます、それで一行に言ってきました。
「存分に楽しんでね」
「そうさせてもらうね」
「そうしてくれたら僕達も嬉しいしね」
「それではね」
「僕達ここにずっといるけれど」
 世界樹の中にというのです。
「とてもいい場所だよ」
「食べものは一杯あるしね」
「お水もあちこちに樹液が湧いていてね」
「それを飲めて身体も洗えるから」
「快適だね」
「凄くね」
 極めてというのです。
「本当にいい場所だよ」
「私もそう思うよ」
「食べものを洗うことにも困らないよ」
 アライグマは彼の特性についても言います。
「お水も一杯あるから」
「いいことだよね」
「沢山の生きもの達が楽しく暮らせる」
「そうした場所だね」
「そうだよ、本当にね」
 アライグマは無花果を食べつつ言います。
「快適そのものだよ」
「そういえばここには今鳥さん達いないね」
 ふとトトがこのことに気付きました。
「一杯いるのに」
「この近くには今はいないね」
 実際にとです、狐がトトに答えました。
「彼等は飛べるからね」
「だからだね」
「他の層に移動しやすいし階段を使えば」
「移動出来るしね」
「だから今はここにいないかな」
 狸も言ってきました。
「離れたところにいるのかもね」
「同じ層でもだね」
「この層も広いからね」
 幹と葉が幹を中心にかなり拡がっています、円形ですがその縁がかなりの広さになっているのです。
「だからね」
「それでなんだね」
「そう、同じ層にいても」
「離れた場所にだね」
「いるのかもね」
「まあすぐに会えるよ」
 ジャックは皆に笑顔で言いました。
「だからね」
「それでだね」
「ここは会えないと思わずに」
「次に会う時を楽しみにしておく」
「それがいいわね」
「次の機会ってことね」
「そう、オズの国だから」
 それでと言うジャックでした。
「今は皆で楽しく食べてね」
「どれも美味しいわよ」 
 ドロシーは今は大尉がそのサーベルで奇麗に切ってくれたメロンを食べています。実によく熟れているメロンです。
「だからね」
「それで、ですね」
「皆でお腹一杯食べて」
「それからですね」
「上の層に行くんですね」
「さらにそうするんですね」
「そうしましょう、まずは食べましょう」
 こう言ってでした、ドロシーが率先して食べてです。
 一行は自分達のところに来てくれた世界樹の気のいい住人達と楽しく食べました、その後で皆と笑顔で別れてです。
 そのうえで上に上にとさらに昇っていきますが三層進んだところで一行はペンギンによく似た鳥を見ました。するとトトはこんなことを言いました。
「あの鳥を見たのは暫く振りだね」
「あれっ、ペンギンだったら」
 カルロスがトトのその言葉に突っ込みを入れました。
「オズの国に多いけれど」
「色々な川や湖にいて」
 ジョージも言います。
「海のところにもいて」
「結構普通に歩いていたりもするから」
 ナターシャもトトに言いました。
「今回の旅でも見たじゃない」
「オズの国じゃ珍しい鳥でもないわよ」
 恵梨香は首を少し傾げさせて言いました。
「暫く振りって言う位前にも会ってないし」
「そうだよね、けれど」
 神宝がその鳥を見て首を少し傾げさせました。
「あの鳥は少しペンギンと違うかな」
「あの鳥はオオウミガラスだよ」
 かかしが五人にその鳥の名前を言いました。
「皆もオズの国で見ているね」
「もう外の世界にはいない鳥ですね」
「その鳥ですか」
「確かにオズの国で前見ました」
「その時のことは覚えてます」
「世界樹にもいるんですね」
「そうだよ、世界樹には鳥も沢山いてね」
 そうしてというのです。
「彼等もいるんだ」
「ほら、見て御覧」
 樵が指差した先にはです。
 ドードー鳥にモアやリョコウバトといった鳥達もいます、勿論孔雀やインコといった奇麗な鳥達もいます。
 そしてです、その鳥達の中にです。
 黄色い羽毛で端が青や緑いろで、です。恐竜みたいな顔の鳥がいます。見ればお口は嘴ではなく歯になっています。
 その鳥を見てです、五人は言いました。
「あれは」
「始祖鳥かな」
「恐竜の時代にいたっていう」
「はじめの鳥よね」
「あの鳥よね」
「そう、始祖鳥だよ」
 樵はその通りだとです、五人に答えました。
「オズの国には始祖鳥もいてね」
「ここにですか」
「この世界樹にいるんですね」
「そして生きてですか」
「私達の前にいるんですね」
「ああして」
「そう、オズの国だからね」
 それだけにというのです。
「ああした生きものもいるしね」
「お話も出来るよ」
 大尉も言ってきました。
「君達もね」
「恐竜さん達の時みたいに」
「そうだよ」
 神宝にもこう答えます。
「君達がそうしたいならね」
「まさか始祖鳥とお話が出来るなんて」
「思わなかったよね」
「はい、世界樹の中でも」
「というか世界樹にだね」
「始祖鳥がいるとは思いませんでした」
「そうだね、けれどね」
 ここでこう言った大尉でした。
「オズの国はあらゆる不思議が起こる国だからね」
「始祖鳥にもですね」
「会えてお話が出来るんだよ」
「それじゃあ」
「君達がそうしたいなら」
「あたしのことを言ってるのかい?」
 その始祖鳥が飛んできてでした、そのうえで。
 一行に声をかけてきました、見れば大きさは鳩位です。
 その始祖鳥がまずはドロシーに挨拶をしました。
「ドロシー王女お久し振りだね」
「お久し振り」
 笑顔で応えたドロシーでした。
「お婆さんもお元気そうね」
「見ての通りね」
 お年寄りの女の人の声と喋り方の始祖鳥でした。
「あたしはいつも元気だよ」
「それは何よりね」
「ええ、かかしさんと樵さんもいてね」
 それにと言う始祖鳥でした。
「ジャックさんと大尉さん、トトの坊やもいるね」
「お婆さんから見れば僕は坊やだね」
「そうだよ、あたしは何しろはじめの鳥だよ」
 それでと言う始祖鳥でした。
「それだけにね」
「僕も坊やなんだ」
「あたしはオズの国の鳥で一番の年寄りの一人だからね」
「それでなんだね」
「あんたも坊やさ、皆もね」
 ドロシ―達もというのです。
「特にそっちの子達はね」
「僕達のことだよね」
「そうだよ」
 始祖鳥は神宝に笑顔で応えました。
「あんた達のことだよ」
「やっぱりそうなんだ」
「あんた達のことは聞いてたよ」
「それでも会ったのは」
「はじめてだね、いや男の子は皆ハンサムで」
 笑顔で言う始祖鳥でした。
「女の子は別嬪さんばかりだね」
「そうかな」
「僕達そんなに顔いいかな」
「普通だよね」
「私達そんなにね」
「奇麗かしら」
「安心おし、あたしは嘘は言わないよ」 
 また言う始祖鳥でした。
「それでね」
「五人共なんだ」
「顔がいいっていうんだ」
「ううん、そうは思わないけれど」
「けれど本当のことってね」
「始祖鳥のお婆さんが言うのなら」
「ええ、私もそう思うわよ」
 始祖鳥だけでなくドロシーも言ってきました。
「五人共ね」
「そうだよね、五人共美形だよ」
「僕達は前から思っていたけれど言わなかったけれど」
「その通りだよ」
「確かに皆お顔いいから」
「そのことは確かと思っていいよ」
 このことをです、ドロシーだけでなくトトも言ってでした。かかしと樵、ジャックに大尉も五人に言いました。
 そしてです、大尉は五人に特に言いました。
「それぞれ顔立ちが違うけれどね」
「それでもですか」
「それぞれ顔立ちがいいんですか」
「人種が違ったりしてますけれど」
「お肌や髪の毛の色が違ったり」
「目の色も違ったりしますけれど」
「そのそれぞれでね」
 まさにというのです。
「整っているよ」
「白人、黒人、黄色人だったね」
 始祖鳥は人種のお話もしました。
「それぞれの整い方があってね」
「僕達はそれぞれで」
「それぞれの顔立ちで」
「それぞれ整っていて」
「いい感じになってるの」
「そうなのね」
「そうだよ、もてるだろうね」
 こうも言った始祖鳥でした。
「五人共ね」
「そうだといいけれどね」
 神宝が五人を代表して言いました。
「僕達も嬉しいよ、顔立ちがいいと」
「人間それだけじゃないけれどね」
「そのことで嬉しくなるよ」
「そういうことでね、後はね」
 さらにお話する始祖鳥でした。
「あんた達何か欲しいものあるかい?」
「欲しいもの?」
 大尉が始祖鳥に応えました。
「だったらもう手に入れたよ」
「それは何だい?」
「世界樹の葉が欲しかったけれどね」
「手に入れたんだね」
「あと世界樹の花もだけれどね」
「あっ、ちょっと忘れてたわ」
 言われてこのことに気付いたドロシーでした。
「そういえば」
「そうだったんだ」
「ええ、けれどね」
「世界樹の花もだね」
「あのお花も手に入れないとね」
「そうだよね」
「おじさんとおばさんにプレゼントしないとね」
 ワインを造る時に入れる世界樹の葉だけでなくというのです。
「そちらもね」
「それじゃあね」
「それとね」
 さらにお話する大尉でした。
「頂上までね」
「行くわね」
「頂上まで行ったら」
 始祖鳥は二人のやり取りを聞いて言いました。
「もうね」
「それでだね」
「そこに世界樹の花があるから」
「そこで摘めばいいわね」
「今はね、行っておいでよ」
 始祖鳥はドロシーに暖かい声をかけました。
「まだ先だけれどね」
「ええ、世界樹は本当に高いから」
「二千メートルはあるからね」
「本当に高いから」
「だからね」
 頂上まではというのです。
「まだ先だから」
「それでよね」
「どんどん行くんだよ、楽しんでね」
「そうさせてもらうわ」
「あとね」
 さらに言う始祖鳥でした、神宝達を見つつ。
「あの子達は世界樹に来たのははじめてだよね」
「そうよ」
 その通りとです、ドロシーは始祖鳥に答えました。
「あの子達はね」
「そうだね、じゃああの子達は特にね」
「頂上までの道のりをね」
「楽しんでね」
 それでというのです。
「行く様にね」
「よく、よね」
「言っておくんだよと言いたいけれど」
「もうお話してるわ」
「そこは流石だね」 
 始祖鳥はドロシーのその返事に関心しました。
「オズの国一の冒険家だけあるよ」
「有り難う、そう言ってくれて」
「あたしは嘘は言わないからね」
 自分が思ったことを言っているというのです。
「お礼には及ばないよ、まあわかってるなら」
「このままね」
「先に行くんだよ、あとあんた達ひょっとしたら」
「ひょっとしたら?」
「思わぬ再会があるかもね」
「オズの国に相応しい」
「そう、そうした出会いがあるかもね」
 再会、それがというのです。
「ひょっとしてね」
「予感かしら」
「そう、予感だよ」
 その通りという返事でした。
「あたしのね」
「じゃあひょっとしたら」
「その時を期待しておくんだよ」
「それじゃあね、またね」
「ええ、またね」
 始祖鳥とドロシ―達は別れました、ですがこの時神宝は世界樹の上を普通に暮らしているオオウミガラス達を見て言いました。
「本当に普通に」
「うん、暮らしているね」
「世界樹の中で」
「これもまたね」
「オズの国ということですね」
「そうだよ、本来は北の寒い場所にいたけれどね」
 もう外の世界では絶滅していないです。
「ムシノスケ教授が言うには」
「海沿いの、ですね」
「オズの国だとね」
「こうしたところにもですね」
「いたりするんだ」
「そうなんですね」
「世界樹の中にはね」
 つまりこの場所ではというのです。
「こうしてね」
「他の鳥さん達と一緒に」
「暮らしているんだ、それとね」
「それと、ですか」
「これまで見た通りね」
「色々な住人がいるんですね」
「世界樹もね」
 他のオズの国の場所と同じくというのです。
 そうしたお話をしてです、一行は上の層に向かいました。そこでは一行はその場にいたエルフにこんなことを言われました。
「この上の層は蔦が沢山出てね」
「絡まってるのかな」
「そうなの」
 エルフは大尉に答えました。
「そうなっていてね」
「進みにくくなっているんだね」
「皆困ってるの。それで私達や人間の人達が斧や鋸や鎌で切ろうと思ってるけれど」
「ああ、それなら心配無用だよ」
 すぐに樵がエルフに言いました。
「私の斧でね」
「蔦をですか」
「全部切るからね」
「いえ、ここは私にお任せよ」
 大尉は謹んでご自身の主に申し出ました。
「是非」
「君のサーベルでだね」
「はい、蔦を全て切って御覧にいれます」
「君がそう言うのなら」
 樵は大尉の言葉を聞いて笑顔で応えました。
「この度はね」
「私にですね」
「全て任せるよ」
「それでは」
「うん、上の層ではね」
「この度の任務果たさせて頂きます」
「宜しく頼むよ」
「この度の旅ではサーベルを振るう機会がなかったですが」
 大尉の自慢の武器であるブリキのそれがです。
「遂にです」
「そう思うとだね」
「自然と意気が上がります」
 実に陽気な笑顔で言う大尉でした。
「まことに」
「それならだね」
「是非です」
 まさにというのです。
「上の層はです」
「頼んだよ」
「その様に」 
 確かな声で応えた大尉でした、そうしてでした。
 一行は上の層に向かいますがここでドロシーが神宝達五人に言いました。
「蔦がどれだけあってもね」
「はい、大尉がおられるからですね」
「この方が」
「だからですよね」
「心配無用ですね」
「どれだけ蔦が茂っていても」
「大尉のサーベルは凄いから」
 大尉の自慢のこの武器はというのです。
「もう切れないものはないから」
「その鋭さは樵さんの斧並なんだ」
 トトも大尉のサーベルについて五人にお話します。
「幾ら切っても切れ味が落ちないしね」
「ブリキのサーベルはね」
 大尉のそれはというドロシーでした。
「まさに魔法の剣なのよ」
「だから安心してね」
「蔦のことは心配無用よ」
 トトと一緒に五人にお話してでした。
 一行は上の層に向かいました、困難が待ち受けていようとも。








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