『オズのファイター大尉』
第六幕 見えてきた
一行は世界樹の中を進んでいきます、その中で大尉は神宝達五人に言いました。
「旅は順調だからね」
「このままいけばですね」
「予定通りにですね」
「世界樹に行けるんですね」
「まだ見えないですが」
「それでもですね」
「うん、出来るからね」
それでというのです。
「特に急がなくてもいいよ。もっとも予定はね」
「オズの国ではですよね」
「予定通りにいくとは限らない」
「だから最初からですね」
「かなり余裕を以て計画を立ててますね」
「そうですね」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「多少遅れても大丈夫だから」
「若し予定や計画をギリギリに立てていると」
今度はかかしが言ってきました。
「途中アクシデントがあったら困るからね」
「そうそう、予定が遅れるとかね」
樵はかかしの言葉に頷きました。
「あるからね」
「だからだよ」
「それでオズの国では予定や計画に余裕を持つ」
「そうして考えて立てるからね」
「そうしているから」
だからだというのです。
「我々もね」
「そうしてるね」
「何をするにもね」
「ましてやオズの国だから」
ジャックも言います。
「何時何があるかね」
「わからないからね」
「僕達もこれまでの冒険で色々あったし」
「もうそれだけで物語になってね」
「何かとあったからね」
「そうしたことがあるから」
また言うジャックでした。
「予定や計画はかなり余裕を以てするのがオズの国だよ」
「そう、それに今回は何日もかかる様なトラブルには逢ってないし」
大尉も言います。
「順調だよ」
「それじゃあですね」
「ヘンリーおじさんとエムおばさんのお酒造りにも間に合いますね」
「世界樹の葉とお花を持って行けますね」
「それでお酒に入れられますね」
「お二人の造られるワインの中に」
「絶対に出来るよ、ではね」
それならと言う大尉でした。
「このままね」
「はい、行きましょう」
「このままいつものペースで」
「歩いていって」
「そうしてですね」
「世界樹に行くんですね」
「そうしよう、そしてね」
それでと言った大尉でした。
「世界樹の中でも冒険をしようね」
「世界樹はただ高いだけじゃないの」
ドロシーがお話してきました、その世界樹の具体的なことを。
「枝も多くて広くて」
「幹も巨大でね」
トトもお話します、その世界樹のことを。
「全体的にとてつもなく広いんだ」
「あれかな」
神宝はドロシー達から聞いた世界樹のことを述べました。
「広くて」
「枝が幹から何層も出ていて拡がっている」
「そうよ」
その通りという返事でした、ドロシーのそれは。
「そうなっているの」
「やっぱりそうですか」
「モミの木みたいに枝が途中から木の一番上まであるけれど」
それでもというのです。
「大きさが違うの」
「形はモミの木みたいですか」
「そんな感じよ」
「じゃあクリスマスツリーみたいなんですね」
「ええ、何が近いかっていうと」
「モミの木ですか」
「そうね」
まさにと言うドロシーでした。
「強いて言うなら」
「わかりました、何かです」
「何か?」
「クリスマスツリーって実は世界樹だっていうのを」
「聞いたことがあるのね」
「そうなんですけれど」
「そうね、確かに似てるわね」
世界樹とクリスマスツリーはとです、ドロシーも言いました。
「それはムシノスケ教授も言ってたし」
「あの人もですか」
「ええ、北欧神話の世界樹がね」
まさにそれがというのです。
「キリスト教に入って」
「クリスマスツリーになったんですか」
「クリスマスツリーは色々なもので飾るけれど」
その飾りもというのです。
「世界樹にある色々なものを表してるって」
「そう言われてるんですか」
「そうなの、だからね」
「世界樹がモミの木の形でも」
「それでもね」
まさにというのです。
「不思議じゃないわね」
「そうなんですね」
「そう、そして」
「そして?」
「世界樹の中にはね」
オズの国の世界樹はというです。
「今回よくお話してるけれど」
「色々な実がなって色々な生きものがいて」
「そんなところだから」
それでというのです。
「クリスマスツリーにね」
「実際に似てるんですね」
「そうなの、じゃあね」
「今からですね」
「そこに行って」
そしてというのです。
「葉とお花をね」
「手に入れるんですね」
「そしておじさんとおばさんのところに行きましょう」
「都の方まで戻るんですね」
「そうするわ」
「そういえばヘンリーおじさんとエマおばさんは」
ジョージがここで言いました。
「冒険には出ないですね」
「あっ、確かに」
カルロスもそのことについて言います。
「オズの国に来られてもずっと農家で」
「ドロシーさんみたいに冒険には出なくて」
ナターシャも言いました。
「農業を続けておられるわね」
「オズの国に来た人で冒険に出ないって」
最後に恵梨香が言います。
「珍しいかしら」
「おじさんとおばさんはお歳だから」
それでと答えるドロシーでした。
「だからなの」
「それで、ですか」
「冒険には出られないですか」
「ドロシーさんと違って」
「そうなんですね」
「そうなの、おじさん達は冒険には興味がなくて」
それでというのです。
「オズの国でもね」
「ずっとですね」
「カンサスにいたと同じ様に農業をされてて」
「それで、ですね」
「色々なものを栽培されてて」
「昔と同じ暮らしをされてるんですね」
「同じかというとまた違うの」
カンサスにいた時と、というのです。
「私達がカンサスにいた時と」
「文明が進歩してですか」
「それにここはオズの国ですから」
「だからですね」
「カンサスにいた時とは違う」
「そこは」
「そうなの、トラクターとか使ってワインだってね」
それもというのです。
「カンサスにいた時は造ってなかったけれど」
「それがですね」
「今は造る様になって」
「皆で飲んで楽しむ」
「そうもなったんですね」
「オズの国に来て」
「そうなの、本当に変わったのよ」
ドロシーは五人にお話しました。
「物凄く広い農園で色々なものを栽培して」
「色々なものを造ってですか」
「楽しんでるのよ」
神宝にこうお話します。
「今のおじさんとおばさんはね」
「じゃあお二人は農業にですね」
「満足していて元気にね」
「毎日働いておられるんですね」
「楽しんでね」
そうしてというのです。
「だから冒険はね」
「興味がなくて」
「しないの。それに私もね」
かく言うトロシーもというのです。
「今はオズマの宮殿で暮らしているでしょ」
「別々に住んでおられますね」
「おじさんおばさんとね」
「住む場所も違ってるんですね」
「そうなの」
実際にというのです。
「お二人のお家にはよく行って泊まってもいるけれど」
「それでも一緒にはですね」
「住んでなくて」
それでというのです。
「変わったの」
「その辺りはね」
「おじさん達に宮殿で一緒に住もうって言ったら」
「あっ、断られたんですね」
「二人共宮殿で暮らすよりもね」
「農業をされて」
「暮らしたいって言ったし」
それでというのです。
「私は基本宮殿にいる様になったの」
「おじさんとおばさんはお家を建ててもらって」
「そこでお話した通りにね」
「農業をされて暮らされてるんですね」
「そうよ、けれどね」
それでもと言うドロシーでした。
「お二人のお家には私のお部屋があるの」
「じゃあお二人のお家も」
「私のお家なの。私のお家は宮殿だけれど」
「お二人のお家もドロシーさんのお家なんですね」
「そう。私のお家は二つあるのよ」
ドロシーは新法ににこりと笑って答えました。
「素晴らしいでしょ」
「はい、ドロシーさんのお家が二つあって」
「それでね」
「どちらのお家でも楽しく暮らせるなら」
「本当に幸せよ。じゃあ世界樹でのお仕事を終えたら」
それならというのです。
「私のお家に行きましょう」
「もう一つのお家に」
「そうしましょう」
ドロシーはにこにことしていました、そのうえでさらに進むのでした。黄色い煉瓦の道の周りの景色も楽しみながら。
そしてです、次の日の朝大尉はトーストに野菜スティック、ゆで卵に牛乳を食べている神宝達に言いました。
「明日にはね」
「世界樹に着きますか」
「そうなるんですね」
「いよいよ」
「今日歩いて明日もそうして」
「それで、ですね」
「明日の朝起きて少し歩いて」
そしてというのです。
「お昼には見えてくるから」
「あれっ、着かないですか」
「明日はまだですか」
「世界樹は見えても」
「それでもですか」
「着かないんですね」
「到着は少し先だよ」
まだだというのです。
「それは」
「そうですか」
「じゃあもう少しですね」
「歩いていって」
「それで、ですね」
「そうだよ、けれどね」
それでもとです、大尉は五人にお話します。
「見えてはくるから」
「だからですか」
「目的地が見える」
「そのことを楽しみにして欲しい」
「そうなんですね」
「明日は」
「そうしてね」
是非にと言う大尉でした。
「周りの景色も楽しみながらね」
「周りの景色も素敵ですし」
恵梨香が牛乳を飲みながら言いました。
「マンチキンの」
「ええ、青い世界がね」
ナターシャもすっかりマンチキンの青が好きになっています。
「いいわよね」
「オズの国はそれぞれの色があるけれど」
それでもと言うカルロスでした。
「マンチキンに来たら青を見ないとね」
「だからこの青を見て」
それでと言うジョージでした。
「楽しまないとね」
「そうしていってね、それとね」
大尉はさらに言いました。
「今日はマンチキンでも面白い牧場の近くに行くよ」
「牧場ですか」
「うん、牛や豚や羊じゃなくて」
大尉はトーストを食べる神宝に笑顔でお話しました。
「バイソンを飼っているんだ」
「バイソンですか」
「そう、あの生きものをね」
「バイソンっていうと」
そう聞いてこう言った神宝でした。
「アメリカの大平原にいる」
「そうだよ、牛の仲間でね」
「黒くて大きくてむくむくした感じの」
「あの生きものを飼ってるんだ」
「それは珍しいですね」
神宝は大尉の言葉を聞いてあらためて思って言いました。
「それはまた」
「そうだね、普通は牛とかだよね」
「牧場で飼うなら」
「牛の仲間だとね」
「それがなんですね」
「うん、その牧場はバイソンを飼って」
そうしてというのです。
「育ててるんだ、それも沢山ね」
「その牧場にですね」
「今日は行くから」
だからだというのです。
「楽しみにしていてね」
「わかりました」
「バイソンの肉やお乳、チーズとかもあるから」
「バイソンのですか」
「そうだよ、チーズもあるから」
「そういうのも食べられるんですね」
「これもオズの国ならではだね」
「バイソンって普通は牧場にはいないね」
このことはトトも言いました。
「牛がいるのがね」
「普通だね」
「僕も最初あの牧場を見ておやって思ったよ」
トトにしてもです。
「バイソンが牧場にいるんだって」
「君はそう思ったんだね」
「うん、そしてオズの国らしいってね」
「そうも思ったんだね」
「だってね、オズの国だから」
それでというのです。
「不思議なことが一杯ある国だから」
「バイソンの牧場があってもかな」
「そう、不思議じゃないってね」
その様にというのです。
「思えるよ」
「君もオズの国の住人になっているからね」
「そうしたこともね」
「普通にあるってだね」
「思える様になったから」
だからだというのです。
「実際にね」
「そう考えたんだね」
「見てすぐにね」
「成程ね」
「あと僕は外の世界で見るものは白黒だけれど」
つまり色がわからないというのです。
「オズの国ではどの色もわかるよ」
「あっ、犬は実は色がわからないんだよね」
このことに神宝も言いました。
「そうだよね」
「そうみたいだね、エリカもそう言ってたよ」
「猫も色がわからないんだよね」
「外の世界だとね、けれどね」
「オズの国に入ったら」
「僕もエリカもね」
「色がわかる様になるんだね」
神宝はトトのその言葉に頷きました。
「オズの国だと」
「最初ドロシーと一緒に来た時あれって思ったんだ」
色がわかる様になったことについてもです。
「何これってね」
「驚いたんだ」
「そうだよ、色なんて何が何かね」
「わからなかったんだ」
「だって生まれてずっと白黒しかなかったんだよ」
その目に映るものはです。
「それで急に青とか赤とか緑とか見えたんだから」
「驚いたんだ」
「その時はドロシーに何も言わなかったけれどね」
「私もずっと知らなかったの」
ドロシーもというのです。
「トトが色がわからなかったって」
「そうだよね、外の世界では」
「それがオズの国だと」
「人間の言葉を喋ることが出来て」
それにです。
「色もね」
「わかって」
「そのことがどれだけ不思議か」
「トトにとっては」
「本当にね」
まさにというのです。
「素晴らしいことだよ」
「それもまたオズの国の不思議だね」
大尉が腕を組んで頷くお顔で言いました。
「動物も喋れて色がわかる」
「そう、だから世界樹に行っても」
「あの中の色がわかるね」
「よくね」
実際にというのです。
「僕もね」
「そうだよね」
「いや、色なんて」
またこう言うトトでした。
「最初はね」
「わからなかったから」
「どんなものか実感がなかったけれど」
「今ではだね」
「わかるから」
だからだというのです。
「凄く嬉しいよ」
「色の何と素晴らしいことか」
「うん、実際にそう思うよ」
「本当にね、後はね」
「後は?」
「世界樹に行ったら」
その時のことをまたお話するトトでした。
「音楽もあるからね」
「小鳥や虫の鳴き声とか音がね」
「音楽になってね」
「あそこにいる人達も音楽が好きだし」
「そちらも楽しみだよ」
「あれっ、世界樹にも人がいるの」
恵梨香はトトと大尉のお話を聞いて言いました。
「そうなの」
「そういえば色々な生きものがいるって聞いたけれど」
ナターシャも言います。
「住んでいる人達もいるのね」
「そうみたいだね」
ジョージも今そのことを認識しました。
「どうやら」
「何か思ったより凄いところだね」
カルロスも言うことでした。
「住んでいる人達もいるなんて」
「意外と快適なのかな」
そのお話を聞いて神宝も思いました。
「世界樹の中にいると」
「うん、結構快適みたいだよ」
かかしも五人にこうお話します。
「どうやらね」
「そうなんですね」
「だから中に住んでいる人達がいるんですね」
「ただ凄く高いだけじゃなくて」
「色々な果物が実るだけじゃなくて」
「他のことでも快適なんですね」
「僕は住んだことがないから何とも言えないけれど」
それでもとお話するかかしでした。
「結構な数の人が住んでいるし」
「それじゃあ」
神宝がそのお話を聞いてかかしに言いました。
「僕達も住もうと思えば」
「うん、住むこともね」
それもというのです。
「出来るよ」
「そうなんですね」
「だからね」
それでというのです。
「君達もね」
「住もうと思ったら」
「一ヶ月位住むのもいいかもね」
「一ヶ月ですか」
「君達がそうしたいならね」
「またオズの国に来た時に」
樵も神宝達に言いました。
「機会があればね」
「その時にですね」
「世界樹にまた行って」
「そしてそのうえで、ですね」
「一月程住んで」
「実際にどんな風か知ることもいいことですね」
「君達がそう思うならね」
それならというのです。
「いいと思うよ」
「ううん、まだどんなところかわからないですが」
それでもと言った神宝でした。
「いいところで時間があれば」
「それでだね」
「考えさせて下さい」
「それではね」
「あとですけれど」
さらに言う神宝でした。
「凄く高い木なら見えても」
「そうなんだよね、麓に着くのはね」
それこそと言うジャックでした。
「そこからね」
「まだ先だね」
「そうだよ、それであと少しで」
「少しで?」
「バイソンの牧場に着くから」
それでというのです。
「楽しみにしておいてね」
「それじゃあ」
「大人しいから安心してね」
大尉もバイソンのことをお話します。
「突進したりしないから」
「大人しいんですか」
「牧場の牛達と同じだよ」
「基本同じ牛ですしね」
「そうそう、牛の仲間だしね」
それだけにというのです。
「彼等もね」
「牧場の牛と同じですね」
「大人しいんだ」
「そうなんですね」
「それでミルクも採れるから」
「バイソンのミルクも」
「もうお話してるけれどそのミルクも乳製品も楽しみにしておいてね」
バイソンのミルクから造ったそれをというのです。
「そうしておいてね」
「わかりました」
五人で大尉に笑顔で答えました、そうしてです。
一行はバイソンの牧場に着きました、するとその牧場の中にいる黒に近い焦げ茶色の毛で大きな身体に小さな目のバイソンたちがいます。
そのバイソン達を見てです、ドロシーが言いました。
「ここに来たのは暫くぶりだけれど」
「それでもだね」
トトがドロシーの足元から彼に応えます。
「いい場所だって思うんだね」
「ええ、本当にね」
実際にと答えたドロシーでした。
「何時来てもね」
「そうだよね、やっぱりね」
「牧場のよさが出ていて」
「しかもバイソン達だから」
「独特の野性味もあって」
バイソンが持っているそれがというのです。
「余計にね」
「いいよね」
「だから私ここに来ることも楽しみだったし」
「実際にだね」
「今楽しい気持ちになってるわ」
「それは何よりだよ」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「一つ思うことは」
それはといいますと。
「今牧場の人がいないけれど」
「あっ、そういえばそうだね」
「何処に行ったのかしら」
「じゃあ呼ぼうか」
大尉がドロシ―達に言ってきました。
「今から」
「そうするの?」
「うん、どうかな」
「そこまでしなくていいんじゃないかしら」
別にとです、ドロシーは大尉に考えるお顔で答えました。
「別に」
「いいんだ」
「だって近いうちにね」
「牧場の人も来るから」
「だからね」
それでというのです。
「待っていましょう」
「ここに牧場の人が来ることを」
「そうしましょう」
こう言うのでした。
「ここはね」
「それじゃあ」
「あの、牧場の人っていますと」
神宝がドロシ―達の会話を聞いてドロシーに尋ねました。
「どんな人ですか?」
「バイソンだからネイティブの人かな」
ジョージはバイソンからこう考えました。
「ひょっとして」
「ああ、あの人達バイソンと縁が深いからね」
カルロスも言いました。
「西部劇でも一緒に出ていたし」
「狩りをして肉を食べて毛皮を着けて」
恵梨香も西部劇のお話をします。
「そうしていたし」
「それじゃあネイティブの人達かしら」
恵梨香もこう考えました。
「牧場の人達は」
「そうだよ、カウボーイじゃなくてね」
大尉が実際にと答えます。
「この牧場の人達はネイティブの人達だよ」
「オズの国ではネイティブの人達が普通に暮らしているでしょ」
ドロシーもこうお話します。
「そうでしょ」
「だからこの牧場もですか」
「ネイティブの人達がやっていて」
「それで、ですね」
「ここにも来てくれるんですね」
「暫くしたら」
「そうなると思うわ、ちょっと待っていてね」
ドロシーはにこにことして自分の傍にいるバイソンの頭を撫でながら五人に答えました、そうしてです。
皆でバイソン達を見たり撫でたりしているとそこに頭にバンダナを巻いてそこに羽根を点けた赤っぽいお肌の人が来ました、青い毛皮の上着とズボンを着ていてお顔はアジア系です。馬に颯爽と乗っている若い男の人です。
その人が一行のところに来てです、馬から降りて挨拶をしてきました。
「ドロシー王女お久し振りです」
「ええ、こちらこそね」
「かかしさんや樵さんも一緒で」
ネイティブの人は彼等も見て言いました。
「そして子供達は」
「オズの国の名誉市民のね」
それでと答えたドロシーでした。
「その子達よ」
「噂には聞いていましたが」
「会うのはよね」
「私ははじめてでした、はじめまして」
ネイティブの人は神宝達ににこりと笑って答えました。
「この牧場で働いているオコホだよ」
「オコホさんですか」
「うん、オコホ=ビルっていうんだ。苗字は昔はなかったけれど」
このこともお話するオコホでした。
「今は付けたんだ」
「そうなんですね」
「そしてね」
オコホは神宝達にさらにお話しました。
「僕の父がこの牧場の主なんだ」
「お父さんがですか」
「そうだよ、母と一緒にやっていて」
それでというのです。
「僕達の兄弟姉妹が働いているんだ」
「そうして牧場をやっているんですね」
「うん、二十人の兄弟姉妹でね」
「えっ、二十人って」
その兄弟姉妹の数を聞いてびっくりした神宝達でした。
「多いですね」
「二十人ですか」
「それはまた」
「一体どんなのか」
「想像しにくいです」
「ははは、食事の時とか凄いよ」
オコホは五人に自分の兄弟姉妹のこともお話しました。
「一家全員で同じテーブルに着いて食べるけれど」
「二十人兄弟姉妹がおられて」
「それでご両親もですよね」
「そうなりますと」
「テーブルも大きいですし」
「食べものの量も」
「相当ですよね」
「いつも沢山出るから取り合いにはならないけれど」
それでもというのです。
「もう豪快だよ、だからお家にはおトイレが幾つもあってお風呂もね」
「広いんですね」
「一家全員が入るから」
「二十人以上の人が」
「だからですね」
「お風呂も広いんですね」
「そうなんだ、男風呂と女風呂に分かれているし」
つまり二つあってというのです。
「それでね」
「お風呂もですね」
「広いんですか」
「凄い生活ですね」
「家族がそれだけ多いと」
「バイソン以上にびっくりします」
「よく言われるよ、それとね」
さらにお話するオコホでした。
「今から御飯だけれど」
「えっ、じゃあ」
「今からですか」
「その大勢の家族で召し上がられるんですか」
「凄く大きなテーブルで」
「そうされるんですか」
「そうだよ、何ならもう一つ出してね」
そのテーブルをというのです。
「君達も食べるかな」
「そうさせてもらっていいの?」
「お客さんは何時でも大歓迎」
オコホはドロシーににこりと笑って答えました。
「我が家の家訓なので」
「だからなのね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「今から」
「私達もお家の中に入って」
「そのうえで」
「食べればいいんですね」
「そうしたらどうでしょうか」
「ううん、図々しい気がするけれど」
立ち寄った人のお家に入ってご馳走になることはとです、謙虚なドロシーはこうも思いました。ですが。
そのドロシーにです、オコホが言うのでした。
「ですから我が家の家訓です」
「お客さんは何時でも大歓迎」
「ですから」
それでというのです。
「遠慮なさらずに」
「そうなのね」
「バイソンのステーキにミルクに乳製品」
お話に出たそうしたものを実際に挙げていきます。
「そういったものをどうぞ」
「それじゃあね、この子達にもね」
ドロシーは神宝達を見つつオコホに答えました。
「ご馳走してあげてね」
「勿論です」
こうしてでした、一行はオコホのお家とても大きなログハウスのそこに入ってでした。そのうえで、です。
皆で用意してもらったテーブルに着いてそのうえでバイソンのステーキやミルクそれに乳製品を食べました。
そのステーキを食べてです、五人は言いました。
「あっ、美味しい」
「ただ大きいだけじゃなくて」
「凄く美味しいね」
「牛肉とはまた違った味で」
「美味しいわ」
「これがバイソンのステーキなんだ」
オコホが五人に答えます、テーブルには彼と同じお肌の色でアジア系の顔立ちの人が合わせて二十二人います。大尉達も食べませんが雰囲気を楽しんで心の栄養にする為に同じテーブルに着いて一緒にいます。
「牛肉とはまた違うよね」
「はい、食べてみますと」
「そのことがわかりました」
「美味しいです」
「こんな味なんですね」
「素敵な味ですね」
「そう言ってくれると嬉しいよ、何枚でも食べられるからね」
その大きなステーキをというのです。
「好きなだけ食べてね」
「そうさせてもらいます」
「いや、ただ美味しいだけじゃないんですね」
「独特の味ですけれど」
「素敵な味だけじゃなくて」
「何枚も食べていいんですね」
「君達が食べられるだけね。僕達家族もね」
自分達もというのです。
「毎日沢山食べているから」
「若し沢山食べないと」
一家の中心にいる初老の男の人が言ってきました、着ている服はオコホと同じです。勿論他の人達も男の人はオコホと同じ服で女の人はマンチキンの青いネイティブの女の人の服を着ています。
「動けないからね」
「牧場で働けない」
「だからですか」
「皆さん召し上がられていますか」
「いつも沢山」
「そうされてるんですね」
「そうだよ、君達も冒険をしているし」
それでというのです。
「沢山食べないと駄目だよ」
「じゃあお言葉に甘えて」
「そうさせてもらいます」
「凄く美味しいですし」
「それならです」
「私達も」
「本当に遠慮は無用だよ、遠慮はオズの国では無用だよ」
それも一切、というのです。
「だからね」
「沢山食べて」
「そうしてですか」
「冒険を続けるんですね」
「そうしないといけないんですね」
「私達も」
「そうだよ、頑張るんだよ」
まさにと言うのでした、そしてドロシーもです。
ステーキを食べてミルクを飲みながらこう言ったのでした。
「やっぱりバイソンのステーキもまたね」
「美味しいね」
トトが応えました、ドロシーの足元で食べています。
「本当に」
「ええ、食べていると」
それでというのです。
「幸せな気分になれるわ」
「これもオズの国ならではの料理だね」
「アメリカでも食べられると思うけれど」
現代、二十一世紀のアメリカでもです。
「牧場で飼っているとなると」
「いないし」
「だからね」
それでというのです。
「素敵な味よね」
「本当にそうだよね」
「だからね」
「ドロシーもおかわりするんだね、ステーキ」
「そうさせてもらうわ、それで二枚目は」
そのステーキはといいますと。
「あれよ。上にチーズを乗せて」
「そのチーズがゆっくりと溶けて」
「肉汁と混ざるのをね」
「食べるんだね」
「そうさせてもらうわ」
是非にというのです。
「二枚目については」
「それもいいね、しかしね」
「しかし?」
「ドロシーってステーキも好きだよね」
「ええ、大好物の一つよ」
ドロシーも否定せずに答えます。
「実際にね」
「そうだよね」
「だから牛肉のステーキも好きだし」
「どの部分でもね」
「豚や羊のステーキも好きで」
「今のバイソンのステーキもね」
「好きよ、ステーキを食べると」
どうなるかといいますと。
「元気が出るし」
「だからだね」
「余計に好きよ」
そうだというのです。
「本当にね」
「だから昔からよく食べるんだね」
「お菓子も果物もサラダも好きだけれど」
「ステーキも好きで」
「本当によく食べるわ」
トトに食べながら答えます、そのステーキを。
「いつもね」
「うん、宮殿にいてね」
「食べてるでしょ」
「数日に一回の割合かな」
「一週間かしら」
自分ではこう言うドロシーでした。
「大体」
「そうかな」
「ええ、けれどね」
「よく食べることはね」
「事実だね」
「何か聞いたお話だと」
こうも言ったドロシーでした。
「アルゼンチンはね」
「もっと食べるんだね、ステーキ」
「そうみたいよ」
「っていうと」
「一週間に何回も食べる人もいるそうよ」
「ドロシーよりずっと凄いね」
これにはトトもびっくりでした。
「そこまで食べるって」
「そうよね」
「全くだよ、けれどドロシーがよくステーキを食べることはね」
「事実よね」
「そのことは否定出来ないね」
事実だからと言うトトでした。
「そのことはね」
「そうだよね」
「だから今も美味しく食べてるし」
「食べた後はね」
「またね」
まさにというのです。
「冒険の再開よ」
「そうするよね」
「そうだね、世界樹を目指して」
大尉も言ってきました。
「また冒険をしよう」
「世界樹に行けば」
オコホは神宝達に言いました。
「あそこも面白いからね」
「だからですね」
「僕達はまだ行ったことがないですけれど」
「これをいい機会にして」
「中に入って」
「そうして楽しんでくればいいですね」
「うん、僕も行ったことがあるけれど」
こう五人にお話するのでした。
「素敵な場所だからね」
「そう聞いてますけれど」
「行くのを楽しみにしています」
「まさにその時を」
「あと少しですし」
「行ってきます」
「ではね」
こうお話してでした、そのうえで。
一行は今はステーキを食べてそうしてオコホのお家と牧場を後にしてまた世界樹の方に向かいました。
そしてです、遂にでした。
「世界樹が見えてきたよ」
「あっ、遂に」
「遂に見えてきましたね」
「大きいですね」
「本当に雲にまで届いてますね」
「物凄い高さですね」
「そう、オズの国で最も高い木だから」
それ故にというのです。
「世界樹と呼ばれているけれど」
「物凄い高さですね」
「こうして遠くから見ても」
「信じられない位ですね」
「あんな高い木はじめて見ました」
「オズの国でも」
「そうだね、じゃあ行こうね」
その世界樹にというのです、こう言ってでした。
大尉は皆の先頭に立って世界樹の方に向かいます、世界樹はまだ先にありますがその姿が遂に見えてきました。