『オズのファイター大尉』
第五幕 ドロシーが授けられた魔法
一行は世界樹目指して先に進んでいきます、そうしていく中で大尉がドロシーにこんなことを尋ねました。
「姫も魔法が使えるよね」
「いえ、使えるんじゃなくて」
ドロシーは大尉の問いにすぐに答えました。
「オズマに授けてもらったの」
「オズマ姫に?」
「そうなの、魔法を使える道具をね」
それをというのです。
「貰ってね」
「それを使っているから」
「魔法を使えるかっていうと」
「違うんだね」
「魔法が宿っている道具を持っていてね」
そうしてというのです。
「私だけが使えるの」
「そうなんだね」
「ええ、私は魔法は使えないわ」
「魔法を使えるのはオズマ姫とよき魔女グリンダとオズの魔法使い」
「三人だけよ」
オズの国で魔法を使える人はというのです。
「だからね」
「ドロシー王女はだね」
「魔法は使えないわ」
「そのことがわかったよ」
「そう、そしてね」
「そして?」
「今回もそうした道具を幾つか持ってきているから」
ドロシーは大尉にお顔を向けて答えました。
「いざという時はね」
「その魔法を使って」
「ピンチを切り抜けるわ」
「わかったよ、そうじゃない時は」
「ええ、その時はね」
ドロシーは大尉が言う言葉を察して応えました。
「お願いね」
「私達もいるからね」
「魔法の道具がなくても」
「何とかしていこう」
「それじゃあね」
こうしたことをお話しているとです、目の前にあるお池のほとりで一人のマンチキンの服を着た男の子が困ったお顔で立っていました。
その男の子を見てです、ドロシーはすぐに言いました。
「どうしたのかしら」
「うん、困っているみたいだね」
トトがドロシーに答えました。
「どうやら」
「そうね、それじゃあね」
「あの子のところに行って」
「そうしてまずは事情を聞きましょう」
「そうしようね」
こうしてでした、一行は男の子のところに行ってそのうえで男の子に事情を聞きました。するとでした。
男の子は泣きそうなお顔でドロシーに答えました。
「このお池の中におもちゃを落としたんだ」
「どんなおもちゃなのかな」
ジャックが男の子に尋ねました。
「それで」
「うん、兵隊さんのお人形なんだ」
「それをお池の中に落としたんだ」
「とても大事にしててここで遊んでいて」
そうしてというのです。
「落としちゃったんだ」
「そうなんだ」
「事情はわかったわ」
ドロシーはお話をここまで聞いて頷きました。
「それじゃあね」
「うん、今から男の子のおもちゃを取り戻そう」
かかしが言いました。
「そうしよう」
「さて、じゃあここはね」
ジャックが言ってきました。
「僕がお池の中に行くよ」
「貴方が行くのね」
「僕の頭は最近防水対策もしてるし元々ね」
「木の身体で」
「服も濡れても乾けばいいし」
それだけで済むからだというのです、身体も含めて。
「お池の中に自由に入られるし」
「それではだね」
「うん、今からね」
「お池の中に入って」
「おもちゃを探し出してね」
「拾って来るんだね」
「そうしてくるよ」
こう言って実際にでした、ジャックはお池の中に入って暫くしてブリキの兵隊さんの人形を持って来ました、それは青いマンチキンの軍服の兵隊さんのお人形でした。
そのお人形を見てです、男の子は言いました。
「このお人形だよ」
「君がお池に落としたのはだね」
「そうなんだ、けれどね」
「うん、これでね」
まさにと言うのでした。
「戻ってきたね」
「有り難う」
男の子はジャックからお人形を受け取ってお礼を言いました。
「お陰で助かったよ」
「お礼はいいよ、困った時はお互い様だから」
「だからなんだ」
「いいよ、そしてね」
それでと言うジャックでした。
「兵隊さんはもう二度とね」
「お池に落とさない」
「そのことを守ってね」
「そうするよ」
男の子はジャックと約束しました、そうして一行と手を振って別れました、そしてその後でなのでした。
一行はまた黄色い煉瓦の道を歩いていきますが暫くして今度は小さな女の子が巻貝の貝殻を持って困ったお顔になっていました。
その女の子にです、神宝が尋ねました。
「どうしたのかな」
「ええ、実は学校で本を読んでいてね」
女の子は神宝に答えました。
「巻貝の貝殻の一番上に穴を空けて」
「そうしてどうするのかな」
「その穴から貝殻の入り口に糸を通す方法があるってあったけれど」
「それがわからないんだ」
「こんなのどうすればいいのかしら」
女の子は神宝に困ったお顔で言いました。
「一体」
「あれっ、これ何処かであったお話だよ」
カルロスはふと気付きました。
「ええと、何であったかな」
「ちょっと思い出せないわね」
恵梨香もそこは、でした。
「何かのお話であったと思うけれど」
「童話だったかな、神話だったかな」
ジョージもこの辺りを思い出せません。
「そんなお話であったよね」
「何か方法があった筈だけれど」
ナターシャも考えるお顔で言います。
「どうしたのかしら」
「あっ、これは簡単だよ」
オズの国一の知恵者と言われるかかしが言ってきました。
「僕にはわかったよ」
「えっ、かかしさんわかったんですか」
「巻貝の貝殻の一番上に空けた穴から入り口まで糸を通す方法が」
「具体的にどうするか」
「わかったんですか?」
「そうなんですか」
「うん、まず糸を蟻に持ってもらって」
そうしてというのです。
「巻貝の一番上に空けた穴に入ってもらって」
「そうしてなの?」
「蟻に貝殻の入り口まで行ってもらうんだ」
そうすればいいというのです。
「これで出来るよ」
「蟻さんになの」
「そう、持ってもらってね」
糸をとです、かかしは女の子にも答えました。
「そうしたらいいから」
「それじゃあ」
「そう、それじゃあだね」
「今から蟻さんを見付けてそうしてもらうわ」
「早速だね」
「そうしてみるわ」
女の子も頷いてです、そしてでした。
早速すぐそこに歩いていた蟻さんにお願いをして糸を口で持ってもらってです、そのうえででした。
巻貝の貝殻の一番上から糸を持って入ってもらって入り口まで行ってもらいました。するとでした。
糸は見事に通りました、女の子もこれにはびっくりでした。
「出来たわ」
「そうだね、こうすればね」
「巻貝の貝殻にも糸を通せるのね」
「うん、自然とすることは難しくても」
「こうすれば」
「通るんだ」
こう言ってです、そしてでした。
女の子は貝殻の中を通った蟻さんにお礼を言ってからかかし達にもお礼を言いました。
「本当に助かったわ」
「いやいや、僕も知識を借りただけだったから」
「そうなの?」
「ギリシア神話のダイダロスの話でね」
神宝達が何のお話だったかと思っているとこちらでした。
「そこからのものでね」
「かかしさんの知恵じゃないの」
「そうなんだ、だからお礼はね」
「いいのね」
「うん、じゃあその糸を通った巻貝をね」
「大事によね」
「持っているんだよ」
こう言ってでした、そのうえで。
皆は女の子と別れました、そしてまた黄色い煉瓦の道を進んでいると今度は三匹のマンチキンの服を着た子豚達がです。
お家を建てようとしていますがそれでもです。
どうしたお家を建てるのか三匹でお話をしています、それでトトが子豚達にどうかしたのかと尋ねました。
「どんなお家を建てたいのかな」
「うん、煉瓦のお家だけれどね」
「それを今から建てようと思ってるけれど」
「煉瓦を集めたんだけれど」
見れば子豚達のすぐ傍に煉瓦の山があります。
「それでもね」
「一体どんな外見のお家にするか」
「それでわからないんだ」
「お家なら僕は樵だからね」
それでと答えたのは樵でした。
「だからね」
「だから?」
「だからっていうと」
「樵さんアイディアがあるの?」
「うん、ここはね」
まさにと言うのでした。
「僕が何軒も建ててきたから」
「じゃあ建ててくれるの?」
「今から」
「そうしてくれるの?」
「うん、じゃあ今から僕の言う通りにね」
樵は子豚達に言いました。
「建ててくれるかな」
「うん、樵さんが言うことならね」
「煉瓦のお家もだね」
「建てられるんだね」
「実は僕の斧で切れないものはなくて」
それでというのです。
「煉瓦だって切れるしね」
「それでなんだ」
「煉瓦のお家も造ってきたんだ」
「木のお家だけじゃなくて」
「うん、じゃあ造るよ」
こう言って何と一瞬で、でした。樵は見事な煉瓦のお家を三匹の子豚達のお手伝いを受けて造りました。
中も立派でした、樵はそのお家を見て子豚達に尋ねました。
「これでどうかな」
「うん、最高だよ」
「これで僕達このお家で暮らせるよ」
「安心してね」
「うん、じゃあ三匹で仲良く暮らすんだよ」
樵は子豚達に笑顔で言いました、そうしてでした。
今度は子豚達にお礼はいいと答えてそのうえでまた冒険を再開しました、ですが今度はフェシングの練習をしている青年がいました。
大尉はその青年のフェシングを見て言いました。
「筋はいいけれどね」
「至らないところがありますか」
「うん、もっと振りを意識してね」
そうしてというのです。
「大きく、はっきりとした感じでね」
「振るといいですか」
「君はちょっと速く動かそうって意識しているけれど」
それでもというのです。
「そこをね」
「あえてですか」
「速くじゃなくてね」
「はっきりとしたですか」
「動きにしていけばいいから」
「そうするとどうなるんですか?」
「かえってその方が動きが速くなるから」
そうなるからだというのです。
「だからね」
「もっとですか」
「動きをはっきりと」
そうして振るべきだというのだ。
「いいね」
「はい、じゃあ」
実際にフェシングを振ってみますと。
誰が見ても見違えました、それでドロシ―も言いました。
「大尉の言う通りね」
「フェシングはね」
「大尉の独壇場ね」
「自信があるからね」
「大尉はオズの国でも随一のフェシングの使い手だから」
「特にサーベルはね」
今も手に持っているそれはというのです。
「得意だからね」
「それでよね」
「うん、フェシングについてなら」
「はっきりと言えるのね」
「彼の動きはね」
「剣を速く出そうと思って」
「それがかえって振りを損ねていたから」
だからだというのです。
「そこを変えるべきと思って」
「アドバイスをしたら」
「実際によくなってね」
それでというのです。
「僕もよかったって思ってるよ」
「そういうことなのね」
「じゃあね」
それならと言う大尉でした。
「彼に教授も終わったし」
「また冒険の再開ね」
「そうしようね」
「有り難うございます」
青年はフェシングを教えてくれた大尉に笑顔でお礼を言いました。
「本当に」
「いやいや、お互いに教え合ってこそだよ」
「フェシングだからですか」
「機会が違えば僕も君から教えてもらうことになるし」
それでというのです。
「お礼はいいよ」
「そうですか」
「そう、じゃあまたね」
「はい、またお会いしましょう」
こうお話してでした、そのうえで。
一行はまた冒険に戻りましたが神宝はこの日続けて起こったことについてこんなことを言うのでした。
「何か色々とね」
「起こったね」
「色々な人が困っていて」
「けれど全部ジャック達が解決してくれて」
「よかったわね」
こうお話するのでした、五人で。
「どれもどうなるかって思ってたけれど」
「それがジャック達が無事解決してくれて」
「ことなきを得て」
「かえってよくなったりして」
「本当によかったよ」
「こうしたことがよくあるでしょ」
ドロシーはお話をする五人に笑顔で言いました。
「皆と冒険をしていると」
「はい、本当に」
「何かあっても誰かの知恵や技能で解決して」
「どんな大変なことも乗り越える」
「そうなっていますね」
「いつもそうですよね」
「そうよ、オズの国ではね」
まさにというのです。
「こうしてなのよ」
「誰かが困っていても」
「必ず解決される」
「そこに解決出来る人やものがあって」
「それでなんですね」
「今日みたいなこともあるんですね」
「オズの国はただ魔法や不思議な人達や生きものがあるから不思議の国じゃないの」
ではどうして不思議の国かといいますと。
「こうした不思議な出会いもいつもあるからよ」
「不思議なんですね」
「困っていることが解決される出会いがある」
「それがいつもあるからですね」
「オズの国はそうした意味でも不思議の国ですか」
「そうなんですね」
「そうよ、それがオズの国なのよ」
こう五人にお話するのでした。
「私達もそうだし」
「そうそう、僕達がドロシーの最初の冒険で出会った」
「あのこともそうだしね」
かかしと樵もその通りだと言うのです。
「あの時ドロシーが来た」
「こんな不思議な出会いもないよね」
「それが僕達の友情のはじまりでもあったし」
「オズの国の不思議の一つだよ」
「本当にオズの国は不思議の国よ」
笑顔でこうも言うドロシーでした。
「だからね」
「今日みたいなこともですね」
「オズの国では起こるんですね」
「そうした意味でも不思議の国だから」
「出会いの意味でも」
「そうなんですね」
「そうよ、不思議っていうのはね」
それはというのです。
「外の世界にないものがあるだけじゃないの」
「人と人の出会いも」
「それも不思議なんですね」
「それで人が救われたり変わっていく」
「そうしたことも起こるから」
「だからオズの国は不思議なんですね」
「そうなの。私もずっとこのことに気付いていなかったけれど」
それでもというのです。
「考えてみればね」
「これもまた不思議で」
「その不思議が今日もあって」
「それで皆救われたりよくなって」
「ジャック達のお陰で」
「今日の出会いがあって」
「そう、不思議な出会いがいつもある」
笑顔のまま言うドロシーでした。
「そして皆助かるんだから」
「本当にオズの国は不思議な国だよ」
トトも言います。
「僕も気付いたらオズの国にいるしね」
「そうよね、ずっといる様になったわね」
「最初の冒険だけドロシーと一緒と思ったら」
「私はオズの国にずっといる様になって」
「僕もおじさんもおばさんも」
まさに一家で、です。
「オズの国にいる様になって」
「不思議よね」
「全くだよ、オズの国に一回来られただけでも不思議なのに」
「何回も行き来して」
「今じゃずっといるんだから」
「不思議なことこの上ないわ」
「本当にそうだね」
また言うトトでした。
「オズの国は不思議の塊だよ」
「人と人の出会いの意味でも」
「僕達は本当にいい国に来たよ」
「私もそう思うわ」
「そうだよね」
「そして心から楽しんでいるから」
「最高に幸せだよ」
明るい笑顔で言うトトでした、そうしたお話をしながらさらに先に進んでいく一行でした。そうしてです。
さらに先に進んでいくと今度は。
目の前に一匹の青いドラゴンがいました、物凄く大きなブルードラゴンでその全長は二十メートルはありそうです。
そのドラゴンを見てです、大尉は言いました。
「さて、あのドラゴンはね」
「どうしたのかな」
「動かないけれど」
「寝てるのかな」
ジャックはこう考えました。
「それだと」
「どうかしら」
ドロシーもその大尉を見て言いました。
「一体」
「わからないよね」
「近くに近寄らないとね」
「もっとね、じゃあね」
「丁度通り道だしね」
ドラゴンは黄色い煉瓦の道にいます、そこに横たわっているのです。
「近寄って」
「見てみましょう」
実際にどうなっているかとです、こうお話してでした。
一行はドラゴンのすぐ傍まで来ました、すると。
ドラゴンは実際に寝ていました、しかもその原因もわかりました。何とドラゴンのすぐ傍にネムリグサがありました。
それでドロシ―達もその香りにすぐに眠くなりました、トトも神宝達もです。
「ドラゴンの状況はわかったけれど」
「その原因もね」
ドロシーとトトは眠気に覆われる中で言いました。
「けれどね」
「このままだと私達もね」
「眠くなるから」
「早く何とかしないと」
「じゃあね」
大尉がすぐに言ってきました。
「草を摘み取ろう」
「摘み取っても」
それでもと言うドロシーでした。
「草の香りはそのままだから」
「その香りで眠くなるからなんだ」
「ええ、このままだと私達も」
「これはまずいかも」
神宝も目をこすりながら言います、見れば他の子達も眠そうです。
「早くこの香りを何とかしないと」
「ええ、私達寝てしまうわ」
「それもずっとですね」
「そうなるわ」
「それじゃあ」
かかしが言ってきました、かかし達は寝ることが全く必要のない身体なので今も眠そうな気配は全くありません。
「ここは香りを何とかしよう」
「香りを何とかすれば」
「ドロシ―達は眠くなくなって」
そしてというのです。
「ドラゴンもね」
「目が覚めるのね」
「そうなるよ」
「それじゃあ」
ドロシーはすぐにでした、自分が持っている鞄からです。
あるものを出しました、それは。
「スプレーだね」
「ええ、必要な時に必要なものが出されるね」
そうしたスプレーだとです、ドロシーは樵に答えました。
「魔法のスプレーなの」
「オズマがドロシーに渡してくれた魔法の道具だね」
「そのうちの一つよ」
まさにそれだというのです。
「だからね」
「ここはだね」
「消臭液を出して」
そのスプレーからというのです。
「そうしてね」
「ネムリソウの匂いを消して」
「それで草を積んで燃やして」
そうしてというのです。
「ことを収めるわ」
「じゃあまずはだね」
「匂いを消しましょう」
こう言ってでした、実際にです。
ドロシーはスプレーから消臭液を出して辺りに吹きかけました、そうしてネムリソウの匂いを消してです。
眠気を消してからネムリソウを摘み取って今度はライターを出しました、何とこのライターもなのです。
「魔法のライターなの」
「どんなライターかな」
ジャックがドロシーに尋ねます。
「一体」
「ええ、お水の中でも火が点いてね」
「それは凄いね」
「どんなものにも火が点けられる」
「そんなライターなんだ」
「だからこのライターでね」
「ネムリソウを燃やすんだ」
「そうするわ」
こう言うのでした。
「そうしてね」
「この眠気の元もだね」
「収めるわ。香りを消しても」
それで今の難を逃れてもというのです。
「ネムリソウがあると同じでしょ」
「また香りが出されてね」
「そう、だからね」
「元を燃やして」
「ここにあらためて来る人達が眠くならない様にするわ」
「今のドロシー達だけじゃないってことね」
「後の人達のことも考えないと」
この黄色い煉瓦の道を行き来する人達がです。
「駄目だから」
「今のうちにだね」
「何とかするわ」
こう言ってです、ドロシーはその摘み取ったネムリソウにライターで火を点けて燃やしました。ネムリソウはあっという間に焼けて灰になって風が吹いて何処かに飛ばされて消えてしまいました。そうなるとです。
ドラゴンもゆっくりと目を開いて言いました。
「あれっ、ここは」
「起きたのね」
「ドロシー王女かな」
「そうよ」
ドロシーはドラゴンににこりと笑って答えました。
「貴方はネムリソウの香りで寝ていたのよ」
「そうだったんだね」
「ええ、それで貴方は何処に行くつもりだったのかしら」
「うん、リンキティンク王の国にいるブラックドラゴンのところに遊びに行こうと思ってね」
それでとです、ドラゴンはドロシーに言いました。
「お空を飛んでいたら」
「ここからネムリソウの香りがして」
「眠くなってね」
「それで寝ていたのね」
「何時の間にか着地していて」
お空を飛んでいたのにです。
「寝ていたんだね」
「そうだったのね」
「それで今何月何日かな」
「今日はね」
ドロシーは今日は何月何日かもお話しました、するとドラゴンはほっとしたお顔になって言いました。
「よかったよ、今日寝たんだ」
「今日のお話なの」
「うん、今日ここを朝に通ってね」
そうしてというのです。
「それでだったんだね」
「そうなのね」
「うん、じゃあ今からね」
「リンキティンク王のお国に行って」
「ブラックドラゴンと遊ぶよ」
「そうしてくるのね」
「今からね」
ドラゴンはドロシーににこりと笑って答えました。
「そうするよ」
「わかったわ、それじゃあね」
「また機会があれば会おうね」
「そうしましょう」
ドロシーはドラゴンににこりと笑って頷きました、ドラゴンは一行にお別れの言葉を言って翼を広げてお空に飛び立ちました。そのままカドリングのリンキティンク王の国の方に飛んで行ってしまいました。
そのドラゴンを見送ってからです、神宝は言いました。
「あのドラゴンは青かったですが」
「どうしたの?」
「ドラゴンにも種類ありますよね」
ドロシーにこのことを言うのでした。
「そうですよね」
「ええ、あのドラゴンはブルードラゴンよ」
「鱗の色が青いからですね」
「ドラゴンは鱗の色と吐く息で種類がわかるのよ」
「そうですよね」
「龍もそうでしょ」
「はい、マンチキンには青龍さんがいますけれど」
四霊獣のうちの一匹としてです、一行は歩くことを再開していますが神宝はその中で彼のこともお話に出しました。
「その他にもです」
「鱗の色でね」
「赤龍や黒龍、白龍、黄龍っています」
「それでなのよ」
「ドラゴンもですね」
「鱗の色が大きいのよ」
吐く息だけでなくというのです。
「それであのドラゴンはね」
「ブルードラゴンですね」
「そういえばブラックドラゴンに会いに行くって言ってたね」
カルロスがドラゴンのこの言葉について言いました。
「そうだったね」
「ブラックっていうと黒いのね」
恵梨香も言います。
「そうよね」
「黒だから」
ジョージも言います。
「そうなるね」
「そうえばドラゴンの色って色々で」
最後にナターシャが言いました。
「それぞれ種類があるわね」
「わかっている限りだと」
ドロシーがそのドラゴンの種類についてお話しました。
「プラチナドラゴン、ゴールドドラゴン、シルバードラゴン、ブロンズドラゴン、ブラスドラゴン、カッパードラゴンと」
「本当に多いですね」
「色々な種類のドラゴンがいますね」
「色だけで、ですか」
「そんなにあるんですね」
「それにまだいますよね」
「そうよ、後はね」
ドロシーは神宝達五人にドラゴンの種類をさらにお話します。
「レッドドラゴン、ブルードラゴン、イエロードラゴン、グリーンドラゴン、パープルドラゴン、ブラックドラゴン、ホワイトドラゴン、グレードラゴンがいるわ」
「全部色ですね」
「本当にそうなってるんですね」
「ブルードラゴンやブラックドラゴンだけじゃなくて」
「色々な色のドラゴンがいて」
「分かれてるんですね」
「それぞれの種類に」
「そうなの、それとね」
さらにお話するドロシーでした。
「龍は龍でね」
「どんな種類ですか?」
「それで」
「龍の方は」
「さっき神宝が言ってましたけれど」
「どんな風ですか?」
「まず青龍がいて」
オズの国の東を守るこの龍がです。
「赤龍、黒龍、白龍、黄龍、金龍、銀龍、銅龍、紫龍、灰龍、虹龍っているの」
「龍も多いですね」
「オズの国には龍もいる様になって」
「種類も多いんですね」
「ドラゴンと同じ様に」
「そうなってるんですね」
「そうよ、それとね」
さらにお話するドロシーでした。
「ヒドラやワイバーン、応龍なんて種類もいるわ」
「応龍っていいますと」
神宝がすぐに言ってきました。
「翼が生えた龍ですね」
「ええ、その龍もいるわ」
「そうなんですね」
「昔オズの国にいたのはドラゴンだけだったけれど」
「アメリカにアジア系の人が入って」
「アジア系の文化も定着してね」
「そちらの世界のそうした生きもののこともアメリカに伝わって」
神宝もその事情のことはわかりました。
「それでオズの国にも反映されて」
「龍もいる様になったのよ」
「そうなったんですね」
「ええ、ドラゴンもいて龍もいる」
「それが今のオズの国ですね」
「色々な場所で暮らしているわ。けれどね」
それでもと言うドロシーでした。
「オズの国のドラゴンや龍は皆温和だから」
「怖くないですね」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「安心してね」
「怖いことは」
「そう、ないから」
だからだというのです。
「安心してね」
「そのことについては」
「本当にね」
「それなら」
神宝も頷きました。
「さっきみたいにドラゴンや龍と出会っても」
「怖がる必要はないのよ」
「ヒドラもですね」
「ヒドラも毒はないから」
オズの国のヒドラはです。
「安心していいわよ」
「毒がなくて大人しくて」
「そう、人間の言葉もちゃんと喋られるし」
このことはオズの国の他の生きもの達と同じです。
「だからね」
「安心してですね」
「お付き合い出来るわよ」
「そのこともわかりました」
「そうでしょ、ただね」
「ただ?」
「食べる量は凄いから」
このことはというのです。
「見た時にびっくりしないでね」
「身体が大きいですから」
ドラゴンの身体はとても大きいです、だからと頷く神宝でした。
「そのことはわかります」
「そうなのね」
「はい、ドラゴンがどれだけ食べても」
それでもというのです。
「わかります」
「だったらいいわ」
ドロシーもにこりと笑って答えます。
「このことについては」
「そうでしょ、ただ実はね」
「実は?」
「身体の大きさと比べると腹ペコタイガーはもっと食べるみたいよ」
「あっ、哺乳類は」
このことにすぐに気付いた神宝でした。
「身体の大きさに比べてかなり食べるんでしたね」
「ええ、だから若し私達がドラゴンと同じ大きさなら」
それならろいうのです。
「ドラゴンよりもね」
「ずっと食べるんですね」
「そうなるわ、それで腹ペコタイガーは」
彼はといいますと。
「哺乳類の中でもとりわけでしょ」
「食べますよね」
「だからね」
「若し腹ペコタイガーさんがドラゴン位の大きさなら」
「一体どれだけ食べるか」
「わからないんですね」
「そうなのよ、本当にね」
さらに言うドロシーでした。
「一体どれだけ食べるかしら」
「彼の食べる量はね」
大尉も腹ペコタイガーの食事の時を見たことがあるので言えました。
「もうね」
「凄いから」
「本当にドラゴンの大きさになったら」
「どれだけ食べるかしら」
「想像も出来ないね」
「山みたいなお肉を食べて」
そしてというのです。
「パンやオートミールも」
「どれだけ食べるかな」
「山みたいに食べることは間違いなくても」
「それでもね」
「一体どれだけか」
こんなことをお話してです、そしてです。
ティータイムになるとです、急にでした。
神宝はレモンティーを飲みつつ言いました、今回のティーセットはアメリカ風にレモンティーにドーナツ、カラフルなケーキにドライフルーツでした。
そうしたものを食べて飲みつつです、こう言ったのです。
「ドラゴンや龍はお酒好きっていうけれど」
「ああ、そうだね」
大尉がすぐに応えてくれました。
「蛇もそうだけれど」
「そうですよね」
「実際にドラゴンや龍にお酒を贈ると喜ばれるし」
「じゃあ大尉も」
「私は飲まないけれどね」
もっと言えば飲む必要がありません。
「彼等にプレゼントしたらね」
「喜ばれますか」
「凄くね」
「それで喜んで、ですね」
「飲むんだ」
贈りものとして贈ればです。
「そうなるんだ」
「やっぱりお酒好きなんですね」
「彼等はね、あとね」
「あと?」
「彼等は財宝が好きで」
「金銀や宝石も」
財宝と聞いてすぐにこういうものを挙げた神宝でした。
「そうしたものも」
「好きでね」
「集めるんですね」
「そうしているんだ」
「そうですか」
「そう、オズの国ではお金はないけれど」
それでもです。
「財宝は趣味で集めていて」
「ドラゴンや龍は」
「その棲み処に沢山置いているよ」
「外の世界と同じですね」
「外の世界のドラゴンや龍と」
「そうなるね、しかし」
ここでまた言った大尉でした。
「その中には凄い財宝があったりするんだよね」
「他にはない様な」
「ドラゴンによっては持ってるよ」
他にはない様な凄い財宝をです。
「だから面白いよ」
「ドラゴンの棲み処に行くと」
「気前よく見せてくれるよ」
「じゃあその時もですね」
「楽しみにしておいてね」
「わかりました」
神宝は大尉の言葉に頷いてドーナツを食べました、レモンティーに合っていてかなり美味しいです。
「その時のこともそうさせてもらいます」
「そういうことでね」
「はい、また」
「それじゃあね。あとね」
「あと?」
「君は随分とドラゴンや龍が好きだね」
大尉は新法のこのことに気付きました、それで言うのでした。
「そうだよね」
「はい、大好きです」
神宝も否定せずに答えます。
「中国では龍は人気がある生きもので」
「それでなんだ」
「僕も好きなんです」
こう答えるのでした。
「僕も」
「成程ね」
「偉大な動物とされていて皇帝も」
かつて中国を治めていた人達もというのです。
「自分を龍と言ったりもしていました」
「龍が人気があるからだね」
「偉大とされているので」
そうした生きものとされていたからだというのです。
「それでなんです」
「成程ね」
「それで今も龍は人気があって」
「神宝も好きなんだね」
「ドラゴンも」
こちらもというのです。
「好きです」
「中国ではそんなに人気があるんだね」
「あとパンダもです」
この生きものもというのです。
「人気がありますよ」
「中国っていうと」
恵梨香も言ってきました。
「パンダよね」
「うん、中国の生きものっていったら」
ジョージも笑顔で言います。
「やっぱりパンダよね」
「あの白黒の色がいいよね」
カルロスもパンダについて言いました。
「可愛いね」
「小さいパンダも可愛いわね」
ナターシャはこちらのパンダのお話をしました。
「茶色の毛で尻尾とかが白と黒のストライブになってる」
「ジャイアントパンダとレッサーパンダがいて」
神宝もそうしたパンダのお話をします。
「ジャイアントパンダが有名だけれど」
「レッサーパンダもね」
「そちらも可愛いよね」
「それで人気があって」
「注目されてるわね」
「そうなんだよね、中国でもね」
そのパンダのいる国でもです。
「大人気だよ」
「パンダなら私も知ってるわ」
ドロシーも笑顔で言ってきました。
「オズの国にもいるし」
「そういえばいますね」
「笹を食べたりしているわね」
「パンダっていうと笹ですしね」
「よく食べてるわ」
「僕この生きものも大好きなんです」
パンダもというのです。
「本当に」
「パンダは欠かせないというか」
「はい、中国では龍と同じ位重要な生きもので」
「外の世界にいるだけあって」
「皆大事にしています」
「そうなんだね」
大尉も頷きます。
「それで神宝も大好きで」
「オズの国にもいるので」
だからだというのです。
「嬉しいですね」
「成程ね」
「また機会があれば」
オズの国にいる時にというのです。
「会いたいですね」
「そうだね、動物園や笹林に行けばいるから」
「その時はです」
「会うんだね」
「そうさせてもらいます」
笑顔で頷く神宝でした、そしてこうも言いました。
「オズの国は色々な生きものがいていいですしね」
「そういえばだよ」
神宝にトトが言ってきました。
「アメリカにはライオンや虎はいないよ」
「そうだよね」
「けれどオズの国にはいるね」
「そうだよね」
「もうアメリカにはいないっていうリョコウバトもいるし」
この日も一行はリョコウバトを見ています、つがいでお空を飛んでいました。
「ドードーもモアもいてドラゴンもいて」
「色々な生きものが本当に多いね」
「それでパンダもいて」
それでというのです。
「神宝達も会えるんだね」
「そうだね」
「そこがオズの国ならではで」
「面白いね」
「本当にね、そして世界樹に行けば」
目的地であるそこにです。
「葉とお花を手に入れる時にまた出会えるよ」
「新たな生きもの達に」
「そのことを言っておくよ、本当にね」
「世界樹にも色々な生きものがいるんだね」
「君達の世界で言うゲームのダンジョンみたいにね」
「ダンジョン、RPGに出て来る」
神宝はトトの言葉を聞いてすぐにどういったゲームかわかりました。
「モンスターや財宝が一杯いて存在している場所だね」
「そんな感じだから」
それでというのです。
「襲って来るモンスターはいないけれど」
「面白い場所なんだね」
「世界樹の中の地図も持ってるから」
また大尉が言ってきました。
「ちゃんとね」
「中に入ってもですね」
「行き来には困らないから」
「安心して中に入って」
「中を進めるからね」
「それに私達はもう中に入ったことがあるから」
それでと言ってきたのはドロシーです。
「中のことはね」
「安心してですね」
「私達が道案内をするから」
「ドロシーさん達についていって」
「中を進んでね」
「そうさせてもらいます」
笑顔で頷いてでした、そのうえで。
一行は世界樹の方に進んでいきました、オズの国で一番高く雲にまで届く高さのその木の方にそうしていきました。