『オズのファイター大尉』




                第四幕  関羽さん

 皆で関帝廟の方に行きました、そこには沢山の人がいて参拝をしていました。ドロシーはその関帝廟の状況を見てこう言いました。
「今日はいつも以上に人が多いわね」
「うん、やっぱりあれだよね」
 トトが答えました。
「関羽さんが来てるからね」
「関羽さんを見ようってね」
「そうなって」
 そのうえでというのです。
「集まってるんだよ」
「そうだよね、それじゃあ」
「私達もね」
「関羽さんとお会いしよう」
「考えていた通りにね」
 まさにとお話してです、そしてでした。
 皆は関帝廟の奥に行くと赤いお顔に胸まであるとても長い立派な黒いお髭を生やした切れ長の目の人がいました、背の高さと体格の見事さはもうプロレスラー並で昔の中国の鎧と服で身体を包んでいて背中にはマント、右手には青龍偃月刀があります。
 その人を見てです、神宝はすぐに言いました。
「まさにこの人が」
「関羽さんだよ」
「はい、本当におられるんですね」
「オズの国だからね」
 大尉は神宝に笑顔で答えました。
「だからね」
「皆の関羽さんへの想いがだね」
「オズの国に関羽さんを呼んだんだ」
「そうなんだね」
「だから関羽さんもね」
 まさにこの人もというのです。
「オズの国の住人なんだ」
「そうなんだね」
「そう、そしてね」
 そうしてというのです。
「今僕達の前にいるんだ」
「そうなんですね」
「ではね」
「今から」
「関羽さんとお話をしよう」
「それじゃあ」
 二人でお話してです、そしてでした。
 皆で関羽さんのところに行きました、ドロシーが関羽さんに皆を代表して畏まって挨拶をしました。
「お久し振り」
「お久し振り」
 関羽さんはとても太くて大きな声で笑顔で挨拶を返しました。
「ここでお会いするとはね」
「ええ、思わぬ再会ね」
「全くだよ。しかしね」
 関羽さんはドロシーに笑顔で言うのでした。
「オズの国にいるとね」
「思わぬ出会いはいつものことよね」
「外の世界よりも遥かに多いね」
「そうよね、それでだけれど」
「かかしさんと樵さんもいて」
 関羽さんは二人も見ました。
「大尉にジャック君、それに」
「この子達のことは知っているかしら」
「勿論だよ、私もオズの食いの住人だからね」
 関羽さんは神宝達を見つつドロシーに答えました。
「だからね」
「そうなのね」
「うん、オズの国の名誉市民のね」
「五人の子供達よ」
「はじめまして」
 五人は一斉に関羽さんに挨拶をしました。
「僕達のことをもうご存知なんて」
「何て言えばいいか」
「関羽さんがオズの国におられて」
「それで僕達をご存知って」
「信じられないです」
「だから私もオズの国の住人だから」
 それでというのが関羽さんの返事でした。
「君達のことは知っているんだ」
「オズの国の住人だったら」
「君達を知らない人はいないよ」
「だから関羽さんもですか」
「会いたいと思っていたよ」
 関羽さんは神宝達に笑顔のままお話します。
「そして今ね」
「その機会が来たんですね」
「そうだよ」
「それじゃあ」
「お会い出来て光栄だよ」
 オズの名誉市民である神宝達五人にというのです。
「そしてこれからはね」
「何かあればですね」
「宜しくね」
「こちらこそ」
 五人は関羽さんに笑顔で応えました、そしてです。
 五人はそれぞれ関羽さんに自己紹介をしました、それは関羽さんも同じでした。
「私は姓は関、名は羽字は雲長というんだよ」
「それで主の方はですね」
 ジョージが尋ねました。
「劉備さんですね」
「義兄弟でしたね」
 カルロスはこのことを言いました。
「張飛さんと三人で」
「それでずっと三人一緒で」
 ナターシャもこのことを知っていて関羽さんに尋ねます。
「戦ってこられましたよね」
「そうして神様になって」
 最後に恵梨香が言いました。
「今はオズの国にもおられるんですね」
「全部君達の言う通りだよ」
 まさにと答えた関羽さんでした。
「懐かしいね、今となっては」
「そしてオズの国では」
 大尉も礼儀を以て応えます。
「今や」
「うん、こうしてね」
「関帝廟そして中華街に」
「オズの国を巡っているよ」
「そうされていますね」
「実は屋敷もあって」
 お家もあるというのです。
「そこで暮らしてもいるよ」
「そのお家は何処に」
「この国にあるのだよ」
「マンチキンにですか」
「そう、そしてね」
「オズの国を巡ってますか」
「赤兎馬に乗ってね」
 愛馬であるこの馬に乗ってというのです。
「そうしているよ」
「あの馬に乗って」
「見事な馬だよ」
 関羽さんは大尉ににこりと藁って赤兎馬のお話もしました。
「まさに一日千里を走る」
「そうした馬ですね」
「この時代で言うと」
 ここで関羽さんは少し考えてから答えました。
「四百キロ位をね」
「一日で、ですね」
「走ってくれるからね」
「そうですね」
「それも日中でだよ」
「馬としては凄いですね」
「木挽きの馬にも負けないかな」
 赤兎馬の速さたるやというのです。
「それ位かな」
「馬で一日四百キロって」
 トトもその距離を聞いて言います。
「相当だよね」
「ええ、ちょっとそれだけ進むことは」
 ドロシーもトトに応えて言いました。
「出来ないわね」
「そうだよね」
「それが出来るのは」
「本当に木挽きの馬か」
「赤兎馬よ」
「特別な馬だってことだね」
「赤兎馬はかなり大きいし見事な体格だから」
 それでとです、関羽さんは二人に答えました。
「出来るんだ」
「そうだよね」
「逆に言うと私は大きいね」
「凄くね」
 その通りだとです、トトは関羽さんに答えました。
「プロレスラーでもアメリカンフットボーラーでも」
「私の様にはだね」
「大きな人はそうそういないから」
「それでだね」
「そう、赤兎馬でないと」
 それこそというのです。
「関羽さんは乗せられないよ」
「私も困っていたんだよ」
「赤兎馬に出会うまではだね」
「この通りの身体だからね」
「他の馬は乗せられないね」
「乗せられても負担が大きいのだよ」
 関羽さんを乗せる馬のです。
「まさに赤兎馬こそだよ」
「関羽さんを乗せられるんだね」
「そうなんだね」
「しかもその青龍偃月刀は」 
 ドロシーは関羽さんが右手に持っている武器を見ました、薙刀にも似ていますが薙刀より遥かに大きいです。
「重いわね」
「確か二十キロ以上あった筈だよ」
 ここでこう言ったのは樵でした。
「だから他の人ではね」
「使えないのね」
「使うどころか持つだけでも大変だよ」
「そうよね、私だったら」
 ドロシーは自分が青龍偃月刀を持てるかどうかから考えて言いました。
「持ったら」
「それだけでだね」
「重さで潰れるかしら」
「そうなるかもね、僕もね」
 樵もというのです。
「斧は持てても」
「青龍偃月刀は」
「流石にね」
 どうにもというのです。
「持つことは出来ても」
「使いこなすことは」
「出来ないよ」
 それはというのです。
「誰もね」
「勿論私もだよ」
 大尉もその青龍偃月刀を見ています。
「これだけの武器はね」
「そうよね、関羽さんのお力がないと」
「使えるものじゃないよ」
「そこも凄いところですよね」
 神宝は関羽さんを誰よりも憧れる目で見つつ大尉達に言いました。
「関羽さんの」
「そうだね、だから関羽さんは凄いんだよね」
「しかも学問も出来て」
 見れば関羽さんの左手には書があります。
「読書家なんですよ」
「いやいや、軍を率いる者は書を読み兵法そして人の道を知らないと」
 関羽さんが言ってきました。
「ただ武器を持って戦うだけだから」
「それでなんですか」
「私は学問もしてきたのだよ」
「色々な書を読まれているんですね」
「今は王立大学にも行って」
 そのうえでというのです。
「書を読んでいるよ、そしてね」
「武芸もですね」
「今も鍛錬は続けているよ」
「その青龍偃月刀を振るって馬に乗られて」
「日々文武の鍛錬は怠っていないよ」
「関羽さんは努力家なんだね」
 トトは今このことを知りました。
「体格が立派なだけでなく」
「我が主の為にと思ってね」
「努力してきて」
「それが今も身についているんだよ」
 文武の鍛錬を欠かさないそのことがというのです。
「そうしてね」
「オズの国でもだね」
「学んでいるんだ」
「成程ね、体格だけじゃないんだね」
「戦は体格だけで出来ないのだよ」
 それでというのです。
「だからだよ」
「今もだね」
「学問をしてね」
「武芸にも励んでいるんだ」
「そうだよ」
「ううん、それじゃあ」
「体格はともかくとして」
 大尉も神宝に言いました。
「努力すればね」
「関羽さんみたいな立派な人になれますね」
「そうなるね」
「ははは、私は只の武人でしかないよ」
 関羽さんは立派と言われると謙遜してこう答えました。
「若い頃は乱暴だったしね」
「ですが今は神様じゃないですか」
「そうならせてもらっただけだよ」
「そうなんですか」
「別にね」
 これといってというのです。
「私はね」
「別にですか」
「立派でも何でもないよ」
「そこでそう言うのが凄いと思います」
 神宝の憧れは止まりません、関羽さんを本当に尊敬する眼差しで見ながらこう言うのでした。
「何といいますか」
「やっぱり新法の憧れは凄いわね」
 ドロシーはそんな神宝を見て微笑んでいます。
「中国人だけあって」
「はい、中国に生まれたら」
「関羽さんについてはなのね」
「憧れずにいられないです」
 そこまでの人だというのです。
「ですから本当に」
「お会い出来てなのね」
「こんな光栄なことはないです」
「また機会があればお会い出来るから」
「オズの国にいれば」
「その時も楽しみにしていてね」
「わかりました」
 神宝はその目のままドロシーに頷きました、そしてです。
 皆で関羽さんとさらにお話をして別れました、関羽さんは赤兎馬に乗って何処かへと去っていきました。
 皆は関羽さんを見送りました、神宝はその後でまた言いました。
「僕このことは絶対にね」
「そうだよね、僕もね」
「僕もだよ」
「私も忘れられないわ」
「私だって」
 ジョージ達四人も続きました。
「関羽さんにお会い出来て」
「お話出来たから」
「もう何て言えばいいか」
「忘れられないとしかね」
「感動したよ」 
 実際にそうした目になっている神宝です。
「中国で言われている通りにね」
「素晴らしい人だったね」
「強くて学問があって礼儀正しくて」
「しかも謙虚で」
「奢るところもなくて」
「うん、ただ関羽さんって僕達には凄く優しいけれど」
 神宝達子供達やオズの国の市民の人達にはです。
「身分が高い人には厳しくて偉そうにしていたっていうんだ」
「あっ、そのことはね」
 大尉が言ってきました。
「関羽さんが仕える人が一人だったからだね」
「はい、劉備さんが主で」
「主の人に絶対の忠義を誓っていたね」
「そこも関羽さんの凄いところなんです」
 その忠義の篤さのお話も残っています。
「何があっても劉備さんを立てて守ろうとしていました」
「それが出てね」
「偉い人にはあえてですよね」
「態度が悪かったけれど」
「オズの国では名士はいても」
「偉い人は言うならね」
「オズマ姫だけですね」
 オズの国の主である彼女だけだというのです。
「だからですか」
「そう、関羽さんもオズマ姫の素晴らしさを認めてくれてね」
「そのうえでオズの国におられるから」
「だからだよ」
 それ故にというのです。
「関羽さんは誰に対してもね」
「優しいんですね」
「そうだよ、あの人は守るべき人にはね」
「物凄く優しい人ですよね」
「そして武器を持たない人には」
 そうした人達にはといいますと。
「例え何があってもね」
「あの青龍偃月刀を向けないです」
「そうした人だね」
「そう言われていて」
「その通りの人だったね」
「その関羽さんとお会い出来て」
「君は本当に嬉しいだね」
「この中華街に来て一番です」
 何といってもという感じでの言葉でした。
「嬉しいです」
「そうだよね」
「出来れば関羽さんと握手をするか」
 今ふと思いついた神宝でした。
「後はです」
「サインかな」
「そうしてもらうべきだったかも知れないですね」
「そうね」
 ここでドロシーも言いました。
「今思うとね」
「惜しいことしました」
「私は前に貰ったけれど」
 関羽さんのサインをというのです。
「凄く立派な字で筆でね」
「サインしてくれたんですね」
「ええ、じゃあ神宝も」
「またお会いしたら」
 その時にというのです。
「握手をしてもらって」
「サインもしてもらって」
「そして」
 そうしてというのです。
「もっとお話したいです」
「そうよね、じゃあ」
「また関羽さんとお会いする時を楽しみにしています」
「そうしていてね。さて」
「はい、次はですね」
「中華街を出たら」
 その後はといいますと。
「さらにね」
「世界樹の方にですね」
「行くわよ、その途中もね」
 道中もというのです。
「面白い物事が一杯あるから」
「そのこともですね」
「楽しみにして」
 そうしてというのです。
「進んでいきましょう」
「わかりました」
「じゃあ服はお土産にして」
 今ドロシ―達が着ている中国の服をです。
「そうしてね」
「元の服に着替えて」
「また旅をしましょう」
 これに戻ろうというのです。
「そうしましょう」
「はい、じゃあ」
「まずは着替えて元の服に戻って」
「そうして中華街を出て」
「そうしてですね」
「旅の再開ですね」
「ええ、着替える場所は」
 ドロシーはそこのお話もしました。
「中華街のお店でお部屋を借りて」
「そうしてですね」
「そこで着替えるんですね」
「オズの国にはそうしたお店もありますし」
「じゃあ今から」
「そのお店に入りましょう」
「そうするわよ」
 ドロシーはにこりと笑ってでした、神宝達と一緒にその着替え用のお店に入ってそうしてそこで元の服に着替えてでした。
 中華街を出て黄色い煉瓦の道に戻しました、道に戻ると大尉は前を見ながら皆にこんなことを言いました。
「前から誰か来るよ」
「あっ、そうだね」
 ジャックがその大尉に答えました。
「誰か来るね」
「あれは」
「ううんと、クルマーだね」
「そうだね」
 両手両足が車輪になっている人達です、かつてドロシーと悶着があったこともあるオズの国の住人です。
「何人か来るね」
「うん、じゃあここはね」
「道を譲りましょう」
 ドロシーはにこりと笑って言いました。
「そうしましょう」
「それがいいね」
 大尉もドロシーの言葉に頷きました。
「ここはね」
「ええ、クルマーの人達は進むのが速いし」
 両手両足が車輪だからです、進むことは本当に速いです。
「それによけることが苦手だから」
「だったらね」
「私達が道を空けてあげて」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「進んでもらいましょう」
「それじゃあね」
 こうしてでした、皆はクルマーの人達が近付いてくると道を空けました、するとクルマーの人達は徐々に近付いてきましたが。
 一行のところで一旦ブレーキをかけて言ってきました。
「すいません、道を空けてくれて」
「そうしてくれて」
「気にしないでいいわ」
 にこりと笑ってです、ドロシーはクルマーの人達に答えました。
「このことは」
「そうですか」
「特に」
「ええ、こうした時はね」
 まさにというのです。
「お互い様だから」
「それで、ですか」
「道を空けてくれたんですね」
「貴方達は止まりにくいからね」
 クルマーの人達にこのことも言うのでした。
「だから当然のことよ」
「ですがその当然のことがです」
「嬉しいんですよ」
「ですからお礼を言わせてもらいました」
「その為に止まりました」
 そうだというのです。
「この度は有り難うございます」
「道を空けてくれて」
「それではよい旅を」
 ドロシーに笑顔で言ってでした、クルマー達は進むことを再開して黄色い道を西に進んでいきました。
 そして東を進むドロシ―達はといいますと。
 歩くことを再開しましたがここで神宝がドロシーに言いました。
「クルマーの人達は前も出会いましたが」
「ええ、結構オズの国を冒険しているのよ」
「そうですよね」
「オズの国は旅行が盛んだけど」
 かく言うドロシーがオズの国で一番旅行をしている人です、
「あの人達もよくね」
「旅行しているから」
「よく出会うのよ」
「そういうことですね」
「ええ、けれど今のあの人達はね」
「穏やかだから」
「別にね」
 これといってというのです。
「気をつける必要はないわ」
「何かされるかって」
「ええ、最初は私もね」
「襲われたりしましたよね」
「あの時はびっくりしたわ」
「何か僕が聞く限りだと」
 トトはこの時ドロシーと一緒でなかったのでこう言うのです。
「ドロシ―凄くびっくりしたんだよね」
「あの時は本当にそうだったわ」
「うん、それで必死に逃げたんだよね」
「そうしたわ」
「ビリーナが一緒だったんだよね」
「あの時がビリーナと知り合った時よ」
 まさにその時がというのです。
「あとね」
「その後でだね」
「ノーム王のところに行って」
「大冒険になったね」
「いや、あの時は僕達も一緒だったけれど」
「大変だったよ」
 かかしと樵もこう言います。
「若しビリーナがいなかったら」
「そしてノーム王の魔法を破らなかったら」
「果たしてどうなっていたか」
「考えるだけでも恐ろしいよ」
「そうだったわね、あの時私もね」
 かく言うドロシー自身もです。
「どうなるかって思ったわ」
「オズの国はどんなことでも絶対に乗り越えられる」
 ジョージが言ってきました。
「そんな国ですけれどね」
「ですが難しい困難ってありますから」
 カルロスも言います。
「ですからどうなるかって思いますよね」
「絶対に乗り越えられてもピンチはある」
 こう言ったのはナターシャでした。
「今度こそ駄目かもって思うこともありますよね」
「そうしたものだから」
 それでと言う恵梨香でした。
「ドロシーさん達もその時は駄目かもって思ったんですね」
「そうよ、本当にそうしたピンチの時もあったから」
 実際にと言うドロシーでした。
「あの時だってそうだったし」
「そうした時はどうしようかって思うね」
 大尉も言います。
「果たして大丈夫かって思って」
「そうよね、けれどあの時も乗り越えたし」
 ノーム王、その時のノーム王であったロークワット後にラゲドーと名前を変えた人の魔法に苦しめられてです。
「やっぱりオズの国はね」
「どんな苦難やピンチも」
「絶対に乗り越えられる」
「そうした国だね」
「必死に頑張って知恵を出して」
「そうして動けばね」
「絶対に乗り越えられるのよ」
 どんな苦難やピンチもです。
「それが出来るのよ」
「私達もそうしてきたしね」
「ええ。だから絶対にね」
「諦めないことだね」
「どんな状況になってもね」
「ドロシーさんも色々ありましたしね」
 神宝はドロシーのこれまでの冒険のことを思い出して言いました。
「最初に来た時からそれからも」
「ええ、本当に次から次にね」
「何かが起こって」
「大変だったことも多かったけれど」 
 それでもだったのです。
「全部乗り越えてきましたね」
「私一人では無理な時も」
 その時もというのです、ドロシーはかかし達を見て言いました。
「皆がいてくれたから」
「乗り越えてこれましたね」
「だからね」
 それでというのです。
「その時その時で」
「誰かがいてくれて」
「乗り越えられるのよ」
「ドロシーさん一人で無理な時は」
「ええ、一人の時は一人で何とか出来て」
 そうしてというのです。
「何人かでいる時はね」
「皆の力か誰かの力で」
「乗り越えられるのよ」
「それがオズの国ですね」
「本当にね」
「だから西の魔女もやっつけられたんですね」
「あの時は物凄く偶然が働いたけれど」
 あの魔女は水が大の苦手でドロシーに水を浴びせられてそうして溶けてしまったのです。ドロシーはこのことで難を逃れられました。
「それでもね」
「やっぱりですね」
「ええ、オズの国ではね」
「苦難は乗り越えられますね」
「ピンチも絶対にね」
「そうした国なんですね」
「だから僕達も助かったんだ」
「あの時はね」
 かかしと樵も神宝達に西の魔女との対決の時のお話をしました。
「ドロシーが西の魔女をやっつけてくれて」
「それで助かったしね」
「けれどあの時かかしさん達もだよ」
 トトもその時のことをお話しました。
「頑張ってくれたから」
「難を逃れられたね」
「西の魔女が狼とか烏とか出してきたけれど」
 そうしてドロシ―達を襲おうとしてきたのです。
「かかしさんと樵さん、それにね」
「臆病ライオンもね」
「いてくれたから」
 だからだというのです。
「助かったんだよ、僕達は」
「そのことも大きかったね」
「そういえば僕が意識を持った時も」
 ジャックも言ってきました。
「その後の冒険で色々あったけれど」
「特に王宮をジンジャー将軍が率いる女の子の軍隊に包囲された時だね」
「果たしてどうなるかって思ったよ」
「けれどだね」
「ガンプの力でね」
「空を飛んで脱出してね」
「助かったよ」
 そうなったというのです。
「だからね」
「それでだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「難を逃れられて今思うとね」
「その時のことも」
「いい思い出だよ」
 オズマがまだ男の子だったその時の冒険もというのです。
「今ではね」
「そうだよね」
「けれどその時はまだね」
「まだ?」
「ドロシーともトトとも大尉とも知り合っていなくて」
 ジャックはそのはじめての冒険の時のことを思い出しつつ言うのでした。
「神宝達とも知り合っていなかったからね」
「そうだったね、私もね」
「うん、その時はだったね」
「まだね」
 本当にとです、大尉も言います。
「今の友達とはね」
「誰もだったね」
「知り合っていなかったよ」
「さらに楽しくなったけれどね」
 皆と知り合えて、と言うジャックでした。
「それでもね」
「あの時はね」
「まだだったよ」
「そうだったね」
「やっぱり友達は多い方がいいわ」
 ドロシーはにこりと笑ってこうも言いました。
「本当にね」
「その通りだよ」
 大尉はドロシーの言葉にも頷きました。
「一人より二人、二人より三人でね」
「多いければ多いだけね」
「賑やかで楽しくなって」
「楽しくなるわね」
「本当にそうね」
 こうしたことをお話しながらです、一行は先に先に進んでいきます。そして日が暮れる頃になると川が傍にある場所でテントを張ってまずは晩御飯を食べますが。
 その晩御飯のバーベキューを見てです、トトが尻尾をぱたぱたとさせて言いました。
「やっぱり冒険に出たら一度はね」
「バーベキューはね」
 出したドロシーもにこにことして答えます。
「食べたいわよね」
「そうだよね」
「お肉やお野菜を串に刺して」
 そうしてです。
「それをね」
「焼いてね」
「食べるのがね」
「やっぱりいいよね」
「そのお肉やお野菜をソースに漬けてね」
「うん、じゃあ今からね」
「食べましょう」
 食べられる人がとお話してでした。
 ドロシ―達は実際に皆でバーベキュー、牛肉にピーマンや玉葱、カボチャを串に刺したそれを食べはじめました。
 その中で、です。神宝達はバーベキューを食べつつお話をしました。
「ドロシーさんがさっき言ってたけれど」
「うん、冒険に出たらね」
「絶対に一回はバーベキュー食べてるね」
「カレーとお握り、サンドイッチもだけれど」
「食べてるわね」
「ええ、お外だったらね」
 ドロシーも五人に答えます。
「どうしてもね」
「バーベキューですね」
「これが美味しいから」
「だから冒険の時はですね」
「一度は絶対に出すんですね」
「そうしてるんですね」
「そうなの。私も好きだし」
 このこともあってというのです。
「出してるの」
「実際に美味しいしね」
 トトはドロシーの足元でそのバーベキューを食べつつ言いました、尻尾が左右にぱたぱたと動いています。
「バーベキューってね」
「そうよね」
「お外で食べると余計にね」
「しかも冒険の時にね」
「食べると」
 まさにというのです。
「最高だよね」
「本当にね」
「それとだけれど」
 さらに言うトトでした。
「オズマもなんだよね」
「ええ、バーベキュー好きよねあの娘」
「オズマも冒険に出たら」
 ドロシーと同じくです。
「バーベキュー食べるよね」
「そうなのよね、冒険の間一度はね」
「絶対にね」
「一度はバーベキューを出して」
 そうしてというのです。
「食べるのよね」
「ドロシーと一緒でね」
「ですから僕達もオズの国に来た時は」
 神宝も言ってきました。
「その時は」
「バーベキューを一回は、よね」
「絶対に食べてますね」
「貴方達がオズの国に来たら」
「絶対に冒険に出ていますから」
「今のところそうなってるからね」
 だからというのです。
「そうなっているわね」
「本当にそうですから」
「一度はね」
「バーベキューを食べてます」
 神宝はよく焼けたお肉と玉葱、ピーマンを突き刺したそのバーベキューの串に甘いソースを漬けて食べつつ答えました。
「今みたいに」
「本当にお外で食べるといいからね」
「ドロシーさん達も出してくれるわね」
「そうですよね」
「そう、そして」
 そのうえでというのです。
「お腹一杯食べるのよ」
「そうなってますね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「私達は一緒にジュースや炭酸飲料を飲んでるけれど」
「大人の人だと」
「お酒になるのよね」
 一緒に飲むものはというのです。
「自然と」
「そうですよね」
「ワインやビールをね」
「飲んでですね」
「朗らかになるわね」
「そうなりますね」
「けれどジュースもね」
 ドロシーは林檎のジュースを飲んでいます、そうしつつ神宝にお話します。
「いいわよね」
「バーベキューには」
「合うでしょ」
「コーラもいいですし」
「そう、コーラも飲んで」
 そしてというのです。
「楽しんでね」
「コーラいいですよね」
「バーベキューにも合いますよね」
「あの炭酸がいいですよね」
「じゃあ私達も」
「コーラいただきます」
「コーラはね」
 大尉は樵達と一緒に食べて飲んでその美味しさに笑顔になっている皆の笑顔を心の栄養にしつつお話しました。
「私が陛下にお会いした時はまだなかったよ」
「うん、オズの国もなかったね」
 陛下と言われた樵もその通りだと頷きます。
「そうだったね」
「ドロシー姫もベッツイ姫もトロット姫も来て」
「皆揃ってね」
「そうしてカエルマン殿と出会って」
「少し経ったかな」
「その頃位にでしたね」
「出て来たね」 
 そうだったというのです。
「はじめて飲んだドロシ―達の顔は今でも覚えているよ」
「最初飲んだ時はびっくりしたわ」
 ドロシ―は今度はそのコーラを飲みつつ樵に答えました。
「何これって」
「そうなっていたね」
「飲んでこれは飲めないって思ったけれど」
「すぐにだったね」
「不思議と好きになって」
 そうしてというのです。
「今でもね」
「飲んでるね」
「こうしてね」
「そうだね、変わったよね」
「今じゃ他のね」
「炭酸飲料もね」
「飲んでるわ」
 サイダーやそうしたものもというのだ。
「美味しくね」
「そこも変わったね」
「ええ、ただコーラなんてね」
「今はね」
「本当にね」
 まさにというのです。
「何でもないけれど」
「はじめて飲んだ時は」
「何これだったわ」
 ドロシー自身もこう言います。
「変な味と思ったわ」
「確かにそうですね」
「コーラは最初飲むとびっくりしますよね」
「変な味ですね」
「炭酸ですし」
「飲んでびっくりしますよね」
「ええ、けれどね」
 それでもとです、今度は神宝達五人に言うドロシーでした。
「今は貴方達もよね」
「飲んでます」
「それも美味しく」
「今も飲んでますし」
「バーベキューと一緒にです」
「そうしてます」
「私もよ。あの時はバーベキューもあまり食べなかったし」
 今食べているそれもというのです。
「随分食べものと飲みものも変わったわ」
「外の世界じゃ百年以上経ってるしね」
 ここでトトも言ってきます。
「食文化っていうかね」
「それが変わったわね」
「それもかなりね」
「そしてオズの国でもね」
「変わったわね、食文化が」
「朝のコーンフレークだって」
 これもというのです。
「なかったしね」
「ええ、それもね」
「そう思うとね」
「私達の食べものも変わって」
「美味しいものも増えたね」
「というかね」
 むしろと言ったドロシーでした。
「私達が来たてのオズの国って食べることについては」
「あまり関心がない感じだったね」
「凄く簡単に済ませていたわ」
「そんな時が多かったね」
「今みたいに楽しむ感じは」
「ない時が多くて」
「今思うと味気なかったかしら」
 こうトトに言うのでした。
「本当にね」
「そこがまた変わったよね」
「オズの国もね」
「こうしてバーベキューも食べる様になったし」
「本当に随分と変わったわ」
「そうだよね」
「うん、じゃあ今日はバーベキューを食べて」
 そしてと言う大尉でした。
「歯を磨いて身体も洗ったら」
「それで寝るわ」
「そうするんだね、じゃあ私達は」
 大尉はドロシーにさらに言いました。
「皆が寝ている間はね」
「四人でお喋りをして」
「そうして過ごすよ」
「それじゃあね」
「うん、また明日の朝にね」
「会いましょう」
 少し早いですが夜の挨拶もしました、そうしてです。
 ドロシ―達は御飯を食べるとすぐに近くの川で男の子と女の子に分かれて身体を洗って歯も磨いてでした。
 テントの中でパジャマに着替えて寝ました、そのうえでぐっすりと寝て大尉達はテントの外で朝までお喋りをして過ごしました。








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