『オズのファイター大尉』




                第三幕  オズの国の中華街

 一行はマンチキンの国に入りました、そしてそのうえでさらに東に進みつつです。ドロシーは皆に言いました。
「この近くに中華街があるkれど」
「そうだったね」
 ジャックがドロシーに答えました。
「この辺りだったね」
「ええ、マンチキンの中華街があるわ」
「最近あそこに行ってなかったよ、僕」
「私もよ、だったらね」
「それならだね」
「今からね」
 まさにというのでした。
「あそこに行く?」
「それもいいね」
「いいね、行こう」
「僕も賛成だよ」 
 かかしと樵もドロシーに言いました。
「僕達はウィンキーの中華街によく行くけれど」
「マンチキンの方にはないからね」
「だからね」
「是非行こう」
「うん、行くべきだよ」
 大尉も言ってきました。
「折角近くに来たんだし」
「僕も行きたいよ」
 トトもドロシーに言ってきました。
「マンチキンの中華街にね」
「それじゃあね」
「皆で行こうね」
「そうしましょう」
「あっ、オズの国には中国系の人もいるから」
 ドロシー達の会話で、です。神宝も気付きました。
「だから中華街もあるんですね」
「そうよ、アメリカにも中華街があるでしょ」
「オズの国はアメリカが反映されるから」
「だからね」 
「オズの国にも中華街があって」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「私達も行って楽しめるのよ」
「そうなんですね」
「それじゃあね」
「はい、今からですね」
「中華街に行きましょう」
 是非と言うのでした。
「そうしましょう」
「それでは」
 こうお話してです、そしてでした。 
 一行は黄色い煉瓦の道から少し南東に離れてそちらに行きました、そしてそこにおいてなのでした。
 目の前に赤い大きな中華風の門、青い墨汁で中華街と漢字で書かれた門がある中華風の城壁に囲まれた街がありました、その街こそがです。
 中華街でした、神宝達はその門の前に来て言いました。
「こここそがだね」
「うん、中華街だね」
「そうだね」
「門も壁も中華街だし」
「中もよね」
「そう、中もね」
 そこもとです、ドロシーがお話しました。
「中国なのよ」
「やっぱりそうですよね」
「中華街ですからね」
「だから中もですね」
「中国風で」
「中にいる人達も」
「そう、中国系の人達よ」
 つまりアジア系の人達だというのです。
「皆ね、観光客の人達も多いけれどね」
「僕達も観光客ですね」
「そうなんですね」
「これから中華街に入るから」
「だからですね」
「観光客として中に入って」
「楽しみましょう」
 笑顔で言ってでした、ドロシーは神宝達も連れて中華街の中に入りました。するとその中はといいますと。
 中国風の建物にお店が碁盤の目の様に並んでいて中国風の服を着た人達が行き来していてマンチキンだけでなくギリキンやウィンキー、カドリングそしてエメラルドの都のそれぞれの服を着た人達も大勢いました。
 中国のお土産や道具が売られていて街はとても賑わっています、兵隊の人達も槍を手に中国風の鎧と服で鉄砲も背中にあります。
 その人達を見てです、神宝達五人は言いました。
「これがオズの中華街なんだ」
「僕達の世界とは違うね」
「ちょっと昔の感じがするね」
「髪型は私達と同じだけれど」
「服は昔の感じね」
「これがオズの国の中華街なんだ」
 大尉が五人にお話しました。
「これはこれで独特だよね」
「はい、とても」
「本当に僕達の国の中華街と違います」
「中華街は色々な国にありますし」
「私達も知ってますけれど」
「オズの国ではこうなんですね」
「そうなんだ」
 こう言うのでした。
「ここではね」
「アメリカの中華街とまた違って」
 ジョージもこう言いました。
「独特の趣がありますね」
「何処か昔の趣がありますね」
 カルロスは行き交う人達の服装、特に兵隊さんのそれを見て思いました。
「今よりずっと」
「何か服を着てみたら」
 ナターシャは服を身て言いました。
「着てみたくなりますね」
「あと扇子も持って」
 恵梨香もこう言います。
「着飾ったりとか」
「あと中華料理を食べて」
 神宝は食べるもののお店を見ています。
「楽しみたいですね」
「全部楽しむ為に来たのよ」
 これがドロシーの返事でした。
「まさにね」
「やっぱりそうですか」
「それじゃあですね」
「今からお土産を買って」
「中国の服も着て」
「美味しいものも食べるんですね」
「そうしましょう」
 こう言ってでした、そのうえで。
 一行はまずは中国の服やお土産を買いました、五人共全員服はドロシーの鞄の中に入れました。ドロシーが持っている鞄はどんなものでも幾らでも入ることが出来るのでそれで普通に預けることが出来ました。
 神宝とジョージ、カルロスの三人は中国のカンフー着ですが神宝は青、ジョージは赤、カルロスは黄色と自分達が好きな色で。
 ナターシャと恵梨香、そしてドロシーはチャイナドレスを着ました。ナターシャは黒で恵梨香はピンクそしてドロシーは白で三人共それぞれお花や草の模様で彩られていました。勿論六人共その手には扇子があります。
 その中国の姿になってです、ドロシーは皆に尋ねました。
「似合ってるかしら」
「うん、とても似合ってるよ」
「その恰好の時も可愛いよ」
「ドロシ―も神宝達もね」
「皆似合ってるよ」
「それは何よりね、中国の服はこれまでも着たことがあるけれど」
 ここでこんなことも言ったドロシーでした。
「オズの国に来るまでは着たことがなかったのよね」
「カンサスにいた時はね」
 トトがドロシーに応えました。
「中華街とかね」
「そんなものなかったから」
「だからだよね」
「ええ、中華街なんてね」
「見たこともなかったよね」
「本当にね」
 そうだったのです、カンサスにいた時のドロシーは。
「周りは草原ばかりで」
「何もなくて」
「そんなところで」
「人に会うことすら少なくて」
「中華街なんて」
 本当にと言うのでした。
「あることも知らなかったわ」
「そういえば」
 ジョージがまた言いました。
「ドロシーさんはカンサスでは周りにお家もなかったんですね」
「カンサスの大平原の中に一軒家だけあって」
 カルロスも言います。
「村ですらなくて」
「それで人も本当に滅多に来ない場所で」
 ナターシャもドロシーがかつていた場所のことを思い出しました。
「そうした場所にずっといたから」
「オズの国に来るまで」
 恵梨香も言いました。
「色々な場所に来ることもなかったですね」
「そうした場所にいると」
 最後に神宝が言います。
「中華街も他の場所も知ることが出来ないですね」
「だからオズの国に来て」
 ドロシーはそのカンサスにいた時のことから五人にお話しました、そうしつつそのうえでこんなことを言いました。
「色々なものを観られて食べられて着られて」
「変わったんですね」
「色々なものを知ることが出来て」
「それで、ですね」
「今のドロシーさんになったんですね」
「そしてオズの国一の冒険家にもなったんですね」
「そうなの、中国系の人もアフリカ系の人もね」
 白人以外の人達もというのです。
「見たことも会ったこともなかったのよ」
「そうだったんですね」
「そしてオズの国で、ですか」
「そうした人達にもお会いして」
「お話もして」
「そうした人達も知ることが出来たんですか」
「そうなのよ、というかオズの国にいると」
 ここで今も一緒にいる大尉達を見て五人にお話しました。
「お肌や目や髪の毛の色は何でもないでしょか」
「身体自体が違う人は普通ですからね」
「かかしさんも樵さんもそうですし」
「色々な身体の人達がいて」
「本当そうですね」
「オズの国にいると人種の違いもですね」
「どうでもよくなるのよ、そのこともわかったわ」
 オズの国においてです。
「どうでもないことだって」
「よくそれが言われますけれど」
「外の世界じゃそうですけれど」
「実はですね」
「もうそれは全くどうでもいい」
「そうしたこともですね」
「オズの国でわかったわ、若しもよ」
 ここでこうもです、ドロシーは五人に言いました。
「オズマが昔のラゲド―王や妖魔みたいな性格だとどうかしら」
「ああ、そうですね」
「そうした人だったら」
「もう大変ですよね」
「オズマ姫がどれだけ奇麗な人でも」
「ああした性格なら」
「そうでしょ、やっぱり性格なのよ」
 人間に大事なものはというのです。
「かかしさんや樵さんだってそうでしょ」
「はい、お心がしっかりしているから」
「皆お二人が大好きですし」
「そうでしょ。身体が違っても」
 それでもというのです。
「問題は心なのよ」
「それじゃあ心が駄目だったら」
「もうそれこそ」
「ラゲドー王みたいだったら」
「本当に大変ですよね」
「妖魔達みたいだったりしても」
「そのこともわかったし。だからオズの国に色々な人達がいても」
 お肌や髪の毛、目の色どころか色々な身体の人達がいてもというのです。
「いいのよ」
「だから僕達もいられて」
「楽しく過ごせるんですね」
「オズの国にいたら」
「それだけで」
「皆と仲良くも出来るんですね」
「そうなのよ、けれど皆似合うわね」
 ドロシ―は今度は五人の中国の服を着た姿を見て言いました。
「じゃあこの街にいる間はね」
「この姿でいて、ですね」
「過ごしていいですね」
「あちこち歩いて」
「そしてお店の中に入って」
「美味しいものを食べて」
「そうしましょう、さて何を食べようかしらね」
 このことについても考えるドロシーでした。
「一体」
「ううん、そうだね」
 ここでこう言ったのはトトでした。
「広東料理とかどうかな」
「あれね」
「うん、どうかな」
「そうね、広東料理はね」 
 そのお料理と聞いてこう言ったドロシーでした。
「中華料理の中でも一番バリエーションが豊富で」
「美味しいよね」
「特に魚介類がね」
 それを使ったお料理がというのです。
「いいし」
「勿論お肉を使ったのもいいし」
「お野菜もね」
 こちらを使ったお料理もというのです。
「大好きだし」
「それじゃあね」
「皆もそれでいい?」
 神宝達にも尋ねました。
「広東料理で」
「どうしようかしら」
 ナターシャは五人のリーダー格として四人に尋ねました。
「ここは」
「いいんじゃない?」
 カルロスは広東料理でいいとしました。
「広東料理で」
「魚介類丁度食べたいところだったし」
 ジョージはこのことから賛成しました。
「僕もいいと思うよ」
「麺類と炒飯に点心があるし」
 恵梨香は具体的なお料理の名前を挙げました。
「だったらいいんじゃ」
「うん、皆で食べよう」
 最後に神宝が賛成と言いました。
「だったらね」
「決まりね、じゃあ広東料理のお店に行きましょう」
「ムシノスケ教授に教えてもらったけれど」 
 ここで言ってきたのは大尉でした。
「中国の皇帝も広東料理お好きだったんだね」
「乾隆帝ですね」
 神宝がすぐに答えました。
「清の」
「ああ、その人だったね」
「乾隆帝は美食家でして」
 それでとです、神宝は大尉に答えました。
「それでなんです」
「かなりの美食家でだね」
「都の北京から何度か広東まで行って」
「かなり離れてると聞いたけれど」
「はい、当時は行き来だけでかなりの時間がかかりました」
 実際にというのです。
「ですがそれでも」
「遠い旅をしてまでだね」
「そうしてです」
「広東料理を楽しんでいたんだね」
「そうなんです」
「そこまで好きだったんだね」
 大尉もしみじみとして言いました。
「そして美味しいんだね」
「そうなんです、中国の料理の中でも」
「広東料理はだね」
「特に有名です」
 そうだというのです。
「ですからお勧めですよ」
「そうなんだね」
「じゃあね」
「それならだね」
「今からね」
「はい、行きましょう」
 こう言ってです、そしてでした。
 皆で広東料理のお店に入りました、そのうえで皆でお料理を注文しましたが海鮮麺や海老やフカヒレの蒸し餃子に蟹焼売、海鮮炒飯に魚介類やお野菜をふんだんに使った炒めものや煮たお料理を見てです。
 トトも唸って言いました。
「いや、本当にね」
「豪勢よね」
「こんなに食べきれるかな」
 量のことからも言うトトでした。
「全部食べたいけれどね」
「そうよね」
「特にね」
 トトは豚バラのお肉をじっくりと煮たものを観て言いました。
「このお料理がいいよね」
「トトの好物だからね」
「豚バラ煮込みをね」
「本当の名前はトンポウロウっていうのよ」
「中国の名前ではだね」
「そうよ、皮と脂肪が付いた豚肉をね」
 まさにそれをというのです。
「お醤油とかでじっくりと味付けして」
「香辛料も入れてね」
「何時間もじっくりと煮込んだ」
「そうしたお料理だね」
「そう、それでね」
「凄く柔らかくて濃い味でね」
 にこにことして言うトトでした。
「美味しいんだよね」
「そうなのよね」
「じゃあ皆で食べようね」
「食べきれないかどうか心配なのよね」
「それでも食べられるだけね」
 それこそそれが出来るだけというのです。
「食べようね」
「そうしましょう、あとね」
「あと?」
「卵もあるから」
 見ればお茶の中で茹でられて味付けされたゆで卵もあります。
「茶卵もね」
「ああ、それだね」
「中国のお料理の定番の一つよね」
「そうなんだよね」
「私もよく食べるわ」
 その茶卵をというのです。
「特に朝にね」
「お粥と一緒にね」
「そうしているわ」
「姫はお粥も好きだよね」
 大尉も言ってきました。
「オートミールも好きで」
「ええ、お米のお粥もね」
「よく食べるよね」
「中国のお粥も日本のお粥もね」
「このまえ雑炊食べていたしね」
「あれも好きよ」
 日本のこのお料理もというのです。
「特に朝食べるのがね」
「好きだよね」
「今は出していないけれど」
 それでもというのです。
「本当にね」
「お粥も好きで」
「よく食べるわよ」
 実際にというのです。
「そうしているわ」
「そうだね」
「それで茶卵もね」
 こちらもというのです。
「好きで」
「茶卵いいですね」
 神宝も茶卵についてはにこりと笑って答えました。
「本当に」
「朝御飯に本当にね」
「いいんですよね」
「お茶の味がよくて」
 ゆで卵を煮ているそれがです。
「食べやすくて」
「軽く食べられて」
「いいのよね」
「お粥もそうなんですよね」
「あとお饅頭ね」
 ドロシーはこちらもと言います、見ればテーブルの上にはお饅頭もあります。中国のお饅頭のあんがお肉のものです。
「それもね」
「朝によく食べますね」
「そうよね」
「中国ではよくなんです」
「茶卵にお粥に」
「お饅頭が朝御飯なのよ」
「僕もよく食べます」
 神宝はドロシーににこりと笑って答えました。
「寮でも」
「そうなのね」
「はい、寮でよく出るんです」
「そうそう、中国の朝御飯もね」
「寮だとよく出るよね」
 ジョージとカルロスが言ってきました。
「色々な国の食事が出るけれど」
「中国の朝御飯も」
「それでなのね」
 ドロシーは二人のお話も聞いて言いました。
「じゃあ二人も中国の朝御飯を食べてきているのね」
「そうしています」
「出た時は」
「僕は中国にいる時から食べています」
 中国人の神宝はそうでした。
「だからもう完全に普通ですね」
「そうよね」
「女の子の寮でもよく出ます」
 ナターシャも言ってきました。
「本当に」
「そうなのね」
「暖かくて美味しいですね」
「本当にそうよね」
「あれっ、確か皆家族と一緒に住んでるんじゃ」
 恵梨香は四人のこのことに気付きました。
「神戸に」
「そうなんだけれどね」
「時々寮にいたりするんだ」
「留学生の子同士親睦を深める為に」
「何日か泊まったりするの」
 神宝達は恵梨香にすぐに答えました、恵梨香は日本人で学校のある神戸に暮らしているので自宅から学校に通っているのです。
「そうしているの」
「一ヶ月のうちに十日位かな」
「それ位いる時もあるね」
「結構寮にいるよ、僕達」
「寮は寮で楽しいわよ」
「そうなのね。うちの学校留学生の子多いけれど」
 恵梨香達がいる初等部でも学園全体でも半分位が留学生なのです、それが恵梨香達がいる八条学園なのです。
「そうした生活をしてるのね」
「そうだよ」
「そこは恵梨香と違うね」
「恵梨香は日本人で神戸にいて」
「お家から通ってるから」
「そうなの、だからね」
 恵梨香は四人に答えました、海鮮麺を食べながら。海鮮麺はとろりとしたスープの中にあって上に沢山の魚介類やお野菜があります。
「皆のそうした暮らしはね」
「知らななかったんだね」
「僕達留学生の詳しい暮らしは」
「実はそうだったってことを」
「自宅と寮を行き来していることは」
「知らなかったわ。けれどその暮らしも面白いわね」
 心から思う恵梨香でした。
「そういうのも」
「実際に面白いよ」
「寮にいる時もね」
「皆といつも一緒だし」
「あちらはあちらで快適よ」
「寮ねえ」
 寮と聞いてです、大尉はこう言いました。
「何か軍隊の隊舎みたいなのかな」
「ううん、軍隊ですか」
 神宝は軍隊と聞いて考えるお顔になりました。
「僕よく知らないですが」
「そうなんだね」
「隊舎も寮みたいですか」
「そうかもね。皆が一緒に暮らしているから」
 だからだというのです。
「私はそう思っているんだ」
「そうなんですか」
「ウィンキーの国にもあるしね」
 ウィンキーの兵隊さん達の為のそれがです。
「とはいってもオズの国は戦争や災害はないから」
「そうしたお仕事がなくて」
「閲兵とか訓練とか門の警備をしているけれど」
「兵隊さんもいて」
「オズの国の全部にいるね」
 ウィンキーだけでなくです。
「このマンチキンにもカドリングにもギリキンにも」
「そしてエメラルドの都にも」
「全ての国にいるけれど」
「数は少ないですね」
「けれどその人達の住む場所としてね」
「隊舎があって」
「寮ならオズの国の各地の学校にあって」
 そしてというのです。
「王立大学にもあるけれど」
「あそこにもですか」
「あってね」
 それでというのです。
「その寮も見て思ったんだ」
「隊舎に似ていますか」
「何処かね」
「そうだね、確かに」 
 樵は大尉のその言葉に頷きました。
「団体で暮らしている場所だしね」
「それだけにですよね」
「隊舎と寮は似ているね」
「軍隊と学生の違いはあっても」
「人は人だからね」
「似ますね」
「そうだね」
「僕は寮や隊舎に暮らしたことはないけれど」
 かかしも言ってきました。
「見ている限りでは似ているね」
「うん、確かに」
 ジャックは大尉達のお話に頷きました。
「似ているのは確かだね」
「その寮にいても」
 神宝はまた言いました。
「これまた楽しくて」
「そういえば私も寮で暮らしたことはないわね」 
 ドロシーもこのことに気付きました。
「ずっとカンサスのお家にいるか」
「オズの国だと冒険か宮殿か」
「どちらかにいるから」
 トトにも答えます。
「寮に入ったりしたことは」
「なかったね」
「隊舎に入ったことも」
「ドロシー軍隊とは無縁だしね」
「そうなのよね」
「そうした風だから」
「ええ、私がいる場所は」
 それは何処かといいますと。
「エメラルドの都の宮殿か」
「それかね」
「今みたいに冒険をしていたら」
「テントの中だね」
「暮らす場所はね」
「そうなってるよね」
「軍隊もテントでよく寝泊りするけれど」
 大尉がまたドロシーに言ってきました。
「それでもドロシ―程じゃないかな」
「私はよく冒険に出ているから」
「そうしてオズの国のあちこちを旅しているからね」
「テントで暮らすこともね」
「凄く多いからね」
「だから軍人さん達よりも」
 オズの国にいる、です。
「よくテントで暮らしているかも」
「そうかも知れないね」
「そしてお外でもよく食べるわね」
 ドロシーはにこりと笑ってこちらのお話もしました。
「今みたいにね」
「冒険に出たらいつもですよね」
「ええ、そうよ」
 ドロシーは韮饅頭を食べながら神宝に答えました。
「いつもね」
「今はお店の中ですが」
「お外で食べていて」
「楽しく過ごしているわ」
 実際にというのです。
「お外で食べるのも美味しいでしょ」
「確かにそうですね」
「今みたいにね」
「何かね」
 また大尉が言ってきました。
「皆がお外で食べている時の顔は」
「それはそれでよね」
「うん、晴れやかだね」
「解放感があって」
 お外のそれがとです、ドロシーは大尉に答えました。
「いいわよ」
「そうみたいだね」
「だから冒険の時はね」
「それも楽しみだね」
「一番好きなのは」
 お外で食べる時のお料理はといいますと。
「サンドイッチとバーベキューかしら」
「その二つなんだ」
「ええ、私としてはね」
「うん、どっちもお外で食べると」
 トトも言ってきます。
「凄く美味しいよね」
「そうよね」
「サンドイッチはお部屋の中で食べても美味しいけれど」
「お外で食べると」
「ドロシーがさっき言った通り解放感があって」
「いいわよね」
「凄くね」
「だから好きなの。バーベキューも」
 こちらもというのです。
「いいしね」
「だからだね」
「冒険の時はよく食べるのよ」
「そうだね、じゃあ」
「今回の冒険でもね」
「サンドイッチとバーベキューも食べようね」
 トトは笑顔で言いました、皆そんなお話をしながら食べていってデザートには桃饅頭とても甘いそれを食べてでした。
 その後で中華街の漢字と龍や麒麟の看板がある中を歩いていきます。その中で神宝はまた言いました。
「神戸の中華街にね」
「似てるね」
「言われてみると」
「中華街って感じで」
「中国とはまた違うかしら」
「中国の街とはね」
 神宝はジョージ達四人に街の中を見回しつつ答えました。
「またね」
「違ってるよね」
「中国の街とは」
「中華街はね」
「別の感じなのね」
「ここまで派手で観光を前に出していないんだ」
 中国の街は、です。
「中華街は全体が商店街って言っていいけれど」
「本来の中国の街はね」
「また違うね」
「やっぱり普通の住宅地とかあって」
「港とかもあって」
「そう、そこが違うからね」
 中華街と中国の街はです。
「僕も中華街好きだし馴染めるけれど」
「中国の街そのままか」
「そう言われるとなのね」
「また別の感じで」
「こうした風じゃないのね」
「そうなんだよね、けれど漢字や龍とかを見ていたら」 
 それだけでとです、神宝は笑顔で言いました。
「それだけで嬉しくなるね。特にね」
「特に。どうしたのかな」
「はい、関帝廟を見ますと」
 神宝は今度は大尉に答えました。
「嬉しいですね」
「ああ、関羽さんを祀ってある」
「あれを見ますと」
 本当にというのです。
「嬉しくなります」
「神宝は関羽さんが好きなのかな」
「大好きです、強くて立派で学問が出来て」
「そうした人だからだね」
「恰好いいですよね」
「だから好きなんだね」
「そうなんです、ここにも関帝廟ありますよね」
 神宝はこのことを尋ねました。
「そうですよね」
「うん、中華街ならね」
 この場所ならと答えた大尉でした。
「やっぱりね」
「ありますよね」
「そしてね」
 さらにお話する大尉でした。
「実は関羽さんご自身もいるよ」
「えっ、そうなんですか」
「だって関羽さんは中華街の人気者だよ」
「だからですか」
「皆が関羽さんを好きだから」
 それ故にというのです。
「その想いがね」
「関羽さんを呼んでくれたんですか」
「そうして赤兎馬に乗って中華街を行き来してるけれど」
 オズの国の中のです。
「今はここにいるよ」
「この中華街にですか」
「そうだよ。会いたいかな」
「お願いします」
 熱い声で、です。神宝はスマホを見つつオズの国にいる関羽の情報を確認しつつお話してくれる大尉に答えました。
「一度お会いしたいと思っていました」
「お願いします」
「僕達も関羽さんにお会いしたいです」
「本当にお会い出来るなら」
「是非」
 ジョージ達四人も同じ意見でした。
「一体どんな方なのか」
「凄く強くて立派で学問がある人とは知ってますけれど」
「実際にどんな人か」
「お会い出来るなら」
「あれっ、皆も関羽さんを知ってるんだね」
 大尉は五人全員の言葉を聞いて言いました。
「そうなんだね」
「三国志は日本でも人気がありますし」
 神宝が大尉に答えました。
「それでアメリカにも中華街が多くて」
「関帝廟があるからだね」
「有名だと思います、それに皆日本にいて」
「三国志は知っているから」
「関羽さんのことは」
 本当にというのです。
「ご存知だと思います」
「成程ね」
「それでなんです」
 さらにお話する神宝でした。
「やっぱり見事なお髭に青龍偃月刀を持っていて」
「うん、その通りだよ」
「赤いお顔で切れ長の目なんですね」
「そして凄く大きいんだ」
「もう私なんてね」
 ドロシーも関羽さんについて笑顔でお話します、中華街の中を楽しく皆と一緒に歩きながらそうします。
「関羽さんの何分の一位の大きさかしら」
「そこまで違いますか」
「体重なんて」
 それこそというのです。
「背も違うし体格もね」
「もう体重になると」
「関羽さんの何分の一かしらね」
 そこまで違うというのです。
「本当にね」
「確かに関羽さんは大きいですしね」
「そうでしょ、あんな大きい人はオズの国でも滅多にいないから」
「人間としては」
 それこそと言ったのはトトでした。
「オズの国でもそうそういないよね」
「そこまで大きな人よね」
「プロレスラーとかアメリカンフットボーラーとか」
「それ位の大きさよね」
「関羽さんこうした人達よりも強いし」
「圧倒的な位にね」
 ただ大きいだけでないのが関羽さんなのです。
「そんな人だから」
「私なんて何分の一よ」
「僕なんか何十分の一かな」 
 トトは笑って自分のこともお話しました。
「一体」
「わかったものじゃないわね」
「本当にね」
「関羽さんの大きさは」
 ジャックも言います。
「凄いんだよね、しかも大きいのはね」
「身体だけじゃないからね」
 かかしがジャックに応えました。
「お心もね」
「うん、凄く大きくてね」
「子供達にも凄く優しい」
「立派な人だよ」
「まさに真の豪傑、武人だよ」
 樵もこう言って関羽さんを誉めます。
「神様になっているだけはあるよ」
「そう、関羽さんは神様なんですよ」
 実際にとです、神宝はかかし達にも熱い声でお話します。
「強くて立派ですから。中国では岳飛さんと同じだけ人気があります」
「岳飛さんだね」
「はい、あの人のことは」
「うん、中華街のトランプでも出ているよ」
「そうなんですか」
「最強のカード、ジョーカーとしてね」
 このカードで、というのです。
「出ているよ」
「ああ、ジョーカーですか」
「ババ抜きだったら厄介者になるけれど」
「いえ、その場合はもう特別に」
 岳飛さんがジョーカーならと言う神宝でした。
「最後まで岳飛さんを持っていたから」
「逆にだね」
「いいじゃないですか」
「そうなるんだね」
「岳飛さんは関羽さんと同じだけ立派な人ですよ」
「同じだけだね」
「どちらがよりかといいますと」
 このことはというのです。
「難しいです」
「そうなんだね」
「あと秦淑宝さんも人気がありますけれど」
「中国は人気のある武人さんが多いんだね」
「実際にそうですね」
 神宝は大尉にその通りだと答えました。
「やっぱり」
「そうだよね」
「はい、そしてその中でも関羽さんは人気がありますから」
「お会い出来るなら」
「是非です」
 本当にと言ってです、そしてでした。
 一行は今度はその関帝廟に向かうことになりました、ですがその途中に。
 ふとです、ジャックがこんなことを言いました。
「そういえば日本はちょん髷で」
「どうしたのかな」
「中国は髪の毛を後ろだけ残して剃ってその後ろを編んでいる」
「辮髪だね」
「あの髪型が有名だけれど」
「もうあの髪型はね」
 神宝はジャックに笑って答えました。
「百年以上前からね」
「しなくなっているんだね」
「そこは日本と同じだよ」
「日本でもちょん髷をしなくなって」
「中国でもね」
「辮髪はしなくなったんだね」
「そうなんだ、だからね」
 神宝は今丁度擦れ違った中国系と思われる人を見て言いました。
「リーゼントの人だってね」
「いるんだね」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「中国だって今はね」
「リーゼントの人がいるんだね」
「それと人民服の人も」 
 神宝は服のお話もしました。
「もういないよ」
「そうなんだね」
「中華街でもいないよね」
「うん、その服の人もね」
「やっぱり時代が変わってね」
「オズの国にも反映されているんだね」
「僕のお父さんは子供の頃に人民服を着たことがあったらしいけれど」
 それでもというのです。
「僕はね」
「ないんだね」
「うん、辮髪になると」
 この髪型はといいますと。
「お父さんもその目では見たことがないそうだよ」
「そうなんだ」
「本当にちょん髷みたいなものだよ」
 日本で言うと、というのです。
「辮髪はね」
「完全に昔の髪型なんだね」
「そうだよ」
 そうなっているというのです。
「もうね」
「だからオズの国でもいないんだね」
「うん、そもそもね」
「そもそも?」
「辮髪は清って時代だけだよ」
「その時代だけの髪型なんだ」
「元々は満州にいた人達の髪型で」
 それでというのです。
「清の頃の偉い人達は満州の人達だったから」
「その人達が辮髪だったから」
「皆もそうさせられて」
 そしてというのです。
「定着したからね」
「だからだね」
「そう、あくまでその頃の髪型であって」
「今はだね」
「している人いないよ」
「そうだったんだ」
「元々はあれだったね」
 かかしが言ってきました。
「ちょん髷と同じで兜を被る時に熱くならない様に」
「剃ってまとめていて」
「それで、だったね」
「ああした髪型になりました」
「そうだったね」
「はい、ですから」
 神宝はかかしにも答えました。
「もう本当に」
「今はだね」
「誰もしないです」
「日本でちょん髷を結っている人がいなくなったのと同じだね」
 かかしも自分で言って頷きました。
「そういうことだね」
「はい、この中華街は今の中華街ですね」
「そうだね」
「神戸の中華街を思わせますがやっぱり」
「アメリカだね」
「英語も多いですし」
 見ればその文字も街にあります。
「アメリカの中華街ですね」
「そうだね、じゃあ今からね」
「はい、関羽さんのところに」
「一緒に行きましょう」
 こうお話してです、そのうえででした。
 一行は関帝廟の方に向かいました、そうして関羽さんのところに向かうのでした。








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