『オズのファイター大尉』




               第二幕  大尉への任務

 一行は程なくエメラルドの都に着きました、世界はウィンキーの黄色からエメラルドの都の緑に一気に変わりました。
 その緑の世界を進みつつです、神宝は言いました。
「あと少しで首都に着くね」
「うん、順調に進んでいるからね」
「もうちょっとで見えてくる頃だね」
「地図を見てもそうだし」
「あと少しね」
 神宝にジョージ達四人が応えます、皆一緒に黄色い煉瓦の道を進んでいます。
「首都が見えてくるわね」
「そこにオズマ姫もおられるから」
「僕達は姫にお会いして」
「大尉へのお願いが何かを聞くね」
「まずはそこからだね、ここまでも冒険だったけれど」
 それでもと言う神宝でした。
「そこからがだね」
「本格的な冒険だよ」
 まさにとです、大尉が神宝に答えました。
「まさにね」
「そうですよね」
「そしてね」
「お願いを果たされますね」
「任務になるね」
 大尉は神宝にこうも言いました。
「僕の場合は」
「軍人さんだからですね」
「大尉だからね」
 階級がある、即ち軍人だというのです。
「それでだよ」
「任務ですね」
「任務を果たすよ。与えられた任務は果たす」
「それが軍人さんですね」
「それも必ずね、だからね」
 それ故にというのです。
「僕は姫から与えられた任務に向かう」
「忠実に、ですね」
「果たすよ。それが出来れば光栄だよ」
「君はこれまでどんな任務を果たしてきたからね」
 大尉が仕えている樵も言ってきました、その右肩に彼が愛用している斧がいつも通りあってピカピカと光っています。
「今回もだね」
「是非です」
「果たすね」
「そうさせて頂きます」
「その意気だよ。では僕達もね」
「同行して頂いてですね」
「協力させてもらうよ」
 こう大尉に言うのでした。
「一緒に冒険をするだけにね」
「それでは」
「何かあれば皆で力を合わせて」
 かかしも言ってきました、いつも通り軽やかな足取りです。
「そのうえでね」
「何かあれば乗り越えていく」
「冒険でいつもそうしている通りにね」
「ではその時は」
「皆でね」
「力を合わせて」
「乗り越えていこう」
「それでは」
 大尉はまた頷きました、そしてでした。
 ジャックもです。楽しく明るく言ってきました。
「オズの国の冒険は何かあってもね」
「その時にいる人達の力で乗り越えられる」
「そうしたものだからね」
「それもオズの国だね」
 大尉はジャックに笑顔で答えました。
「不思議とね」
「どんな困難でもね」
「そこにいる人達で乗り越えられる」
「そうなんだよね」
「だからだね」
「僕達が今回の冒険のメンバーにいるのならね」
 それならというのです。
「このメンバーで乗り越えられるものが起こっていくよ」
「そうなるね、ではね」
「オズマ姫に言われたら」
 それからはというのです。
「楽しくはじめようね」
「本格的にね」
「さて、見えてきたよ」 
 ここで、でした。樵は道の遥か先を見て言いました。そこに城壁に囲まれたその街を見て言いました。
「首都がね」
「あっ、そうですね」
「いよいよ見えてきましたね」
「首都の壁に塔が」
「いつも通り緑色で奇麗ですね」
「まさに王都ですね」
「うん、あの街こそがね」
 樵は五人の子供達ににこりと笑ってお話しました。
「オズの国の王都だよ」
「オズの国の主であるオズマ姫がおられるので」
 ジョージも言います。
「まさに首都ですね」
「オズマ姫は王女ですが女王でもあるので」 
 この辺りオズマが色々言われていることを恵梨香も知っています。
「王の都、王都ですね」
「その王都にまたですね」
 カルロスも樵の様ににこにことしています。
「入るんですね」
「何度入っても緑色の大理石にエメラルドで飾られていて」
 ナターシャも王都を見ています。
「最高に素敵ですから」
「中に入ること自体がね」
「楽しみですから」
 また言った神宝でした。
「足取りも自然と速まりますね」
「そうだね、けれど焦ることないよ」
 かかしは神宝だけでなく五人全員がそうなっていることを見て言いました。
「だって王都には絶対に入られるから」
「だからですね」
「焦らないで、ですね」
「これまでの歩き方で進めばいいですね」
「そして中に入ればその中を見る」
「それでいいですね」
「そうだよ、王都までの道も楽しめばいいよ」
 これまで通り歩いていってというのです。
「ゆっくりとね」
「今は焦る時じゃないよ」
 ジャックも言いました。
「この道の周りの景色も奇麗だしね」
「うん、確かに」
「緑の草原に森、田畑が見えていて」
「お池や川もあって」
「村の家や牧場も整っていて」
「奇麗よね」
「この奇麗な景色も観ればいいから」
 ジャックも実際に観て楽しんでいます。
「このままね」
「よし、それじゃあね」
「エメラルドの都の景色も楽しんで」
「そしてね」
「楽しんで観て」
「王都に行こう」
「そうしようね」
 実際に皆で都の景色も楽しんででした、一行は王都に向かいました。王都の中の立派な街並も楽しみまして。
 宮殿に入ってオズマと会いました、オズマはドロシーと一緒にいてそのうえで一行と会ってから言いました。
「大尉に来てもらったのは理由があってなの」
「ではその理由は」
「実は世界樹に行って欲しいの」
 こう大尉にお話するのでした、謁見が終わって大きな円卓に皆で座ってそのうえでのお話でした。まだお菓子やお茶は出ていません。
「それでそこの葉を持って来て欲しいの」
「世界樹の葉ですか」
「実はおじさんとおばさんがお酒を造ってるの」
 ドロシーもお話します。
「そこで魔法使いさんが世界樹の葉をお酒を入れる中で入れるともの凄く美味しくなってしかも身体が若返るってお話してくれて」
「だからですか」
「私が世界樹に行くと言ったら」
「そこで私が考えたの」
 オズマがというのです。
「ドロシーとトトだけで行くよりはね」
「僕はいつもドロシーと一緒だからね」
 今は席の一つにちょこんと座っているトトの言葉です。
「世界樹にも行くけれど」
「世界樹に行くまでも大変だし世界樹に登ることも」
 そのこともというのです。
「大変だから」
「世界樹の葉だけでなくお花もお酒に入れるとね」
 こうも言うドロシーでした。
「余計にいいっていうから」
「だからだね」
「私はお花も手に入れたいけれど」
「ドロシーさんとトトだけじゃ大変だから」
「私はすぐに出発するつもりだったけれど」
「私が待ってと言って」
 オズマがまた言います。
「ファイター大尉は今は任務がないからと思って」
「声をかけて下さいましたか」
「ええ、そこで皆が一緒になることも読んでいたし」
 樵にかかし、ジャック、五人の子供達がです。
「だからね」
「私に任務を授けて下さったのですね」
「ドロシーも皆がいれば安全だから。丁度他のオズの国の名士の人達はおじさんとおばさんの酒造りのお手伝いをしていて冒険には行けないから」
「私達にですか」
「ドロシーと同行して欲しいの」
「喜んで」
 大尉はオアズマに笑顔で答えました。
「その任務引き受けさせて頂きます」
「お願いするわね」
「これは楽しい任務だね」
「そうだね」
 樵とかかしはお互いに顔を見合わせてお話をしました。
「じゃあね」
「是非引き受けさせてもらおう」
「そうさせてもらわないと駄目だよ」
「僕達も是非だよ」
「ドロシー、宜しくね」
 ジャックはその冒険にトトと一緒に行くつもりだったドロシーに言いました。
「僕達も一緒に行くから」
「ええ、お願いね」
 ドロシーもジャックに笑顔で答えます。
「今回はベッツイもトロットもおじさん達のお手伝いをしてるし」
「つぎはぎ娘もチクタクも」
「ムシノスケ教授もモジャボロさんもなの」
 本当にオズの国の皆がというのです。
「おじさん達のお酒を造ってるから」
「だからだね」
「私とトトでって思ってたのよ」
「世界樹はオズの国で一番大きな木でね」 
 トトはこの木のことを神宝達にお話します。
「樹齢どれだけかわからない」
「そんな木なんだね」
「とても大きくて」
「それで葉やお花もあって」
「そんな木なんだ」
「そうなんだ」
「うん、一番上が雲に届くみたいな」
 そこまでのというのです。
「高さなんだ」
「そこまでいくのがオズの国だね」
 神宝もトトのお話にしみじみとして言いました。
「木も不思議だね」
「それで色々な実もなってるよ」
「一種類じゃないんだ」
「色々な果物の実もなっていてそれもいつもね」
「それを食べられるんだね」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「そしてこれがね」
「美味しくてだね」
「いて飽きないよ」
 そうした場所だというのです。
「マンチキンにあるんだ」
「マンチキンなんだ」
「うん、あの国になんだ」
「それがわかるよ」
 神宝は世界樹がマンチキンにあることには納得して言うのでした。
「マンチキンはオズの国の東にあるからね」
「だからだね」
「東は木の方角だからね」
「中国の五行思想だね」
「それだからね」
 だからだというのです。
「そこでね」
「世界樹があることもだね」
「わかるよ、じゃあね」
「マンチキンの国に」
「行こうね」
「ではね」
 また言ったオズマでした。
「準備が出来たらね」
「それならですね」
「そう、出発して」
 そしてというのです。
「世界樹に向かってね」
「準備はもう出来てるわ」
 ドロシーがオズマににこりと笑って言いました。
「皆の分の旅道具もね」
「用意出来ているのね」
「旅道具といっても」
 ドロシーはこうも言いました。
「食べものと飲みものを出すテーブル掛けとテントだけでしょ」
「ええ、それはね」
「実は僕達も持ってるよ」
 かかしも言ってきました。
「そうしたものはね」
「じゃあね」
「うん、今すぐにでも出発しようと思えば」
 それこそというのです。
「出来るね」
「そうよね、けれどね」
「今すぐにはだね」
「この子達は来たばかりだから」
 神宝達も見て言うのでした。
「だからね」
「すぐにはだね」
「行かないで」
 それでというのです。
「今日は休んで」
「それからだね」
「明日出発すべきね」
「それじゃあ今日は、ですね」
 神宝がドロシーとかかしのお話を聞いて言ってきました。
「この宮殿で」
「皆休んでね」
「じゃあそうさせてもらいます」
「それとね」
「それと?」
「ただ休むだけじゃなくて」
 それに加えてというのです」
「美味しいものもね」
「そうしたものもですか」
「楽しんで」
 そうしてというのです。
「休んでね」
「食べものもですね」
「好きなものを食べていいから」
 それこそというのです。
「ゆっくりと身体を休めてね」
「わかりました、じゃあ何を食べるか」
 神宝はドロシーの言葉を受けて言いました。
「今から考えますか」
「そうしましょう、ただ」
「ただ?」
「皆今何を食べたいかしら」
 ドロシーは五人にこのことを尋ねたのでした。
「一体」
「そう言われますと」
「今は考えていませんでした」
「ここに来ることだけ考えていて」
「それで食べることまでは」
「まだ考えていませんでした」
「そうなのね。じゃあ私が考えてみるわね」
 こう言ってです、ドロシーは。
 少し考えてです、五人に言いました。
「ハンバーガーにフライドチキン、あと南瓜のポタージュにポテトサラダかしら」
「あっ、いいですね」
「ハンバーガーですか」
「じゃあそれをお願いします」
「ポタージュにサラダもあるんですね」
「フライドチキンも」
「飲みものはコーラね」
 こちらのお話もするドロシーでした。
「これで完璧ね」
「アメリカですね」
 神宝はドロシーが食べようと提案したメニューに笑顔で言いました。
「いい感じですね」
「全部私が好きなものよ」
「ハンバーガーもフライドチキンも」
「ポタージュもポテトサラダもね。あとデザートは」
 こちらのお話もするドロシーでした。
「プルーンのパイとコーヒーね」
「その組み合わせですか」
「ええ、これでどうかしら」
「それもアメリカで」
「いいかしら」
「ドロシーさんらしいですね」
「神宝達も好きでしょ」
「はい」
 実際にと答えるのでした。
「本当に」
「じゃあね」
「今からですね」
「一緒に食べましょう」
「わかりました」
 こうしてです、皆はドロシーがお話したまさにアメリカと言うべき食べものを食べて飲むことになりました。
 そしてその中でオズマは大きなハンバーガーを両手に持って食べながらドロシーに対して言うのでした。
「おじさん達が造っているお酒だけれど」
「ワインよ」
「あのお酒よね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「エメラルドの都のワインは緑色でしょ」
 エメラルドの都の色です。
「けれど今回はね」
「違う色のワインにするのね」
「そう、私達の世界のね」
 本来のというのです。
「赤は赤、白は白、ロゼはロゼで」
「それぞれの色のままのなのね」
「ワインを造りたいってお話してて」
「実際に造られてるのね」
「そうなの」
「そうしたものも造られるから」
 また言うオズマでした。
「オズの国では。だからなのね」
「おじさんとおばさんは今度はね」
「外の世界のワインを造られるのね」
「そうしてるの。オズの国の技術を使って」
 科学と魔法が一緒にあるこの技術をというのです。
「そしてね」
「外の世界のワインを造って」
「皆に食べてもらうの」
「そうなのね、面白そうね」
「おじさんは元々バーボンやウイスキーも飲んでいたけれど」
「ワインもなのね」
「時々だけれど飲んでいて」
 カンサスにいた時のお話です、ヘンリーおじさんはお酒も飲んでいたのです。
「それで今も好きだから」
「飲まれていて」
「造ってもいるの。おばさんもお手伝いをしてね」
「それで今も」
「造っているのよ、そして造りはじめた時に魔法使いさんが言ってくれたのよ」
「世界樹の葉と世界樹の花を入れれば」
「それで味が凄くよくなるって」 
 そうお話してというのです。
「しかも身体が若返るって」
「だからなのね」
「その二つを手に入れる為に」
「貴女は世界樹に行くことになったわね」
「そうよ、じゃあ行ってくるわね」
 ドロシーもハンバーガーを食べつつ言いました。
「明日からね」
「冒険の安全と楽しみを期待しているわ」
「有り難う、言って来るわね」
「是非ね、それとね」
「それと?」
「子供用の酔わないお酒もよね」
「ええ、おじさんとおばさんは造っているから」
 ドロシーはオズマにすぐに答えました。
「そうしたワインもね」
「私達も飲めるわね」
「楽しみにしていて」
「わかったわ。実は私も好きなのよ」
「ワインが」
「だから楽しみだわ」
 勿論酔わないワインをです。
「甘いワインだけだけれど」
「オズマはワインは甘い派よね」
「貴女達と同じくね」
「私もベッツイもトロットも」
「ワインは甘いものが好きよね」
「やっぱり子供だから」
 それでとです、笑って言うドロシーでした。
「好きなのはね」
「甘いものっていうのね」
「ええ。ただオズの国の人達は」
「甘いもの好きな人が多いわね」
「そうよね」
「というかお酒を飲んでも」
 神宝が首を傾げさせて言いました。
「甘いものが嫌いってあります?」
「うちのお父さんワインやブランデーでお菓子食べるよ」
 ジョージはアメリカでのお話をしました。
「普通にね」
「うちのお父さんもだよ」
 カルロスのお家もでした。
「ウイスキ―飲む時チョコレート食べたりするから」
「そうよね。お菓子でお酒を飲むことは」
 ナターシャもロシアのお話をします。
「結構あるわね」
「中国でもそうだしね。中華料理って甘いお酒も合うそうだし」
 神宝も中国のお話をしました。
「お菓子だって」
「あれっ、じゃあ甘いもの好きな人がお酒苦手なのは日本だけ?」
 日本人の恵梨香は皆のお話に少し驚きました。
「そうなの?」
「多分日本酒が甘いものに合わないのよ」
 ドロシーがその恵梨香に答えました。
「ビールだってそうだし」
「だからですか」
「日本ではそうなのよ」
「成程、そうですか」
「けれどワインやブランデーあと中国の杏酒や桂花陳酒は合うのよ」 
 甘いものにもというのです。
「お酒によってそれぞれってことよ」
「そういえばお父さん紹興酒や老酒の時は甘いお菓子食べないです」
 神宝もドロシーに答えました。
「お酒次第ってことですね」
「そうね、それでおじさん達のワインの為に」
 是非にというのです。
「世界樹の方に行きましょう」
「わかりました」
 五人も頷いてそしてでした。
 一行は次の日に世界樹に向けて出発することにしました、そしてこの日はハンバーガーやフライトチキンを食べるのでした。
 そして翌日実際に出発しました、ドロシーとトトにかかしと樵、ジャック、神宝達五人に何といっても大尉も一緒です。
 オズマは一行を宮殿の正門のところで見送りながら言いました。
「では楽しくて安全な旅を」
「そうしてくるわね」
「世界樹のことはわかってるわね」
「行ったことあるから」
 ドロシーはオズマににこりと笑って答えました。
「あちらにも」
「そうだったわね」
 ドロシーはオズの国で一番の冒険家でもあります、オズの国の隅から隅まで行ったことがあり世界樹にも行ったことがあるのです。
「だからわかっているのね」
「地図も持ってるしね」
 これもというのです。
「油断はしないけれど」
「わかっている場所ね」
「ええ、そこまでの道もね」
「じゃあドロシーがいれば」
「楽しく安全な旅になる様に出来るわ」
「そのことをお願いね」
「この子達の為にも」
 神宝達を見ても言うドロシーでした。
「そうしてくるわ」
「そのこともお願いするわ」
「それにこの人達もいるし」
 トトはドロシーの足元でかかしと樵達を見ました。
「今回の旅も色々あるだろうけれど」
「安心出来るっていうのね」
「かかしさんと樵さん、大尉がいてくれると」
 この三人の人達がというのです。
「心強いよ、ジャックもいるし」
「そうね、オズの国一の知恵者と勇者とね」
「剣士だよ、そしてオズの国一陽気なジャックがいるし」
 暗い雰囲気になっても場を明るくしてくれるというのです。
「オズの国一の冒険家のドロシーもいて」
「顔触れはかなりのものね」
 オズマもこのことを認めます。
「確かに」
「だから安心出来てるよ、確かに油断は駄目だけれど」
「それじゃあね」
「今からね」
「冒険を楽しんできて」
「そうさせてもらうね」
 トトはオズマに明るい声で答えました、そしてです。
 一行は冒険の旅をはじめました、そうして世界樹があるマンキチンの国へ向かう黄色い煉瓦の道を歩きはじめました。
 すぐに王都を出て緑の世界を歩きはじめました、そこで大尉は五人の子供達に対してこんなことを言いました。
「君達は世界樹には行ったことがなかったね」
「はい、そんなものがあることもです」
「今回はじめて聞きました」
「オズの国には色々なものがありますね」
「そんな木もあるんですね」
「雲に届くまでの高さの木が」
「そうだよ、オズの国にはね」
 まさにというのです。
「そうした場所もあるんだ」
「物凄く大きな木も」
「そうしたものもあって」
「そこの葉やお花がワインを美味しくする」
「そうなんですね」
「それもオズの国なんですね」
「そうなんだ、そして世界樹の実は色々な果物で」
 それでというのです。
「中に入れば好きなだけ食べられるよ」
「そのこと聞いて楽しみにしています」
「色々な果物が食べられるなんて」
「一体どんな場所か」
「考えるだけで楽しみですし」
「早く行ってみたいです」
「そうするといいよ。色々な生きものも暮らしているしね」
 世界樹の中にです。
「本当に凄い木だよ」
「そういえば世界樹は」
 ここで神宝が言いました。
「北欧の方の神話で出ますね」
「外の世界の欧州の北の部分だね」
「はい、世界の中心に生えている木で」
「物凄く大きいんだね」
「その木みたいなものですね」
「僕も北欧神話のことはムシノスケ教授から聞いてるよ」
 オズの国きっての学者であるこの人にというのです。
「外の世界のこととしてね」
「そうなんですか」
「うん、根っこに蛇達がいて葉の上に鳥や鹿達がいるんだね」
「神話ではそう言われていますね」
「オズの国の世界樹でもいるよ」
 そうした生きもの達はというのです。
「けれどトネリコの木かというと」
「違いますか」
「具体的にどんな種類の木かはね」
 そうしたことはといいますと。
「なくてね。世界樹は世界樹なんだ」
「だから色々な果物が実るんですね」
「そうなんだ、樹齢は何万年とも何十万年ともね」
「言われていて」
「それで凄く大きくて高くて」
 それこそ雲にまで届く位です。
「面白い木だから行くといいよ」
「そう聞くと余計に楽しみになりました」
「君達はこれまで色々なところを旅してきたけれど」
 ジャックも言ってきました。
「その中でもね」
「うん、世界樹はだね」
「面白い場所の一つだよ」
「お空も行って海も行ってきたけれど」
「そうした場所と同じ位にね」
「いい場所なんだね」
「そうだよ、だから行ったら」 
 それでというのです。
「とてもいい経験になるよ」
「ううん、じゃあ今すぐに行きたいけれど」
「道中長いから。その道中もね」
 そちらもというのです。
「楽しんでね」
「そうしていけばいいんだ」
「うん、焦る必要はないから」
 その心配は全くないというのです。
「ゆっくり行こうね」
「それじゃあ」
 神宝はジャックの言葉にも頷きました、そうして皆で冒険の旅を続けていくのでした。そうしてです。
 お昼になると御飯を食べます、ドロシーがこのお昼に出したお料理はお蕎麦でした。日本のざるそばです。
 そのお蕎麦を食べつつです、ドロシーはこんなことを言いました。
「凄くヘルシーよね、お蕎麦って」
「うん、食べやすいしね」
 トトがドロシーに答えます。
「味もあっさりしていて」
「おつゆに漬けて食べるけれど」
 ドロシーの右手にはお箸、左手にはそのおつゆが入っているお碗があります。湯呑に似た形のそばつゆを入れる為のお碗です。
「つるつるとね」
「どんどん食べられてね」
「とてもいいわね」
「そうだよね」
「最初このお蕎麦を食べた時は」
 ドロシーはこの時のこともお話します。
「とても不思議なヌードルって思ったわ」
「パスタみたいだって思ったら」
「また違って」
「それでも凄く食べやすくて美味しくて」
「すぐに大好きになったわ」
「そうだよね」
「天婦羅とも合いますし」
 ジョージが言ってきました、見ればお蕎麦以外に海老や烏賊、薩摩芋や蓮根等の天婦羅もあります。
「余計に食べやすいんですよね」
「おつゆの中の薬味も」
 カルロスはそばつゆの中の葱や紅葉おろし、生姜を見ています。
「いいですよね」
「山葵を少し入れて」
 ナターシャは実際にそうしています。
「そうすると素敵な辛さになって余計に」
「ざるそばのコシと風味はとてもいいから」
 恵梨香もにこりとして食べています。
「幾らでも食べられそう」
「どんどん食べてね、おかわりもあるから」
 ドロシーは子供達にも言います、見れば大尉達も皆と一緒にお蕎麦や天婦羅を出しているテーブル掛けを囲んで舌鼓を打つ皆の笑顔を見て自分達も笑顔になっています。
「遠慮しないで」
「そうさせてもらいます」
「是非共」
「本当に幾らでも食べられそうですから」
「とても美味しくて」
「お言葉に甘えさせてもらいます」
「そうしてね」
 ドロシーも食べながら笑顔になっています、そのドロシーに神宝が言ってきました。
「このお蕎麦は関西のお蕎麦みたいですね」
「日本の関西なのね」
「はい、日本では関東と関西でまた違いまして」
「特にお料理がなのね」
「関東のそばつゆはおろし大根のお汁にお醤油を入れたもので」
 そうしたものだというのです。
「辛いんです」
「そうなのね」
「このそばつゆよりも」
「辛いなら」
 それならと言うドロシーでした。
「そばつゆに付けても少しね」
「関東、東京じゃそうみたいです」
「そうなのね」
「それで噛まずに喉越しを味わうとか」
「あら、噛まないの」
 ドロシーはお蕎麦は噛んでいます、それはトトも神宝達五人もです。
「お蕎麦を」
「温かいお汁のお蕎麦は噛むみたいですが」
「ざるそばは噛まないの」
「そうみたいです」
「消化によくなさそうね」
「あっちじゃざるそばが主流らしいですが」
 温かいお蕎麦よりもというのです。
「それで、です」
「辛いおつゆで噛まずに飲み込む」
「それも一気に」
「ううん、私はね」
 ドロシーとしてはでした。
「その食べ方はね」
「出来ないですか」
「食べものは。麺類でもね」
「噛まれますよね」
「噛まない食べものはないわ」
 ドロシーの場合はそうなのです。
「日本のお蕎麦でも色々なのね」
「そうみたいですね」
「オズの国では日本は日本だけれど」
「日系人の人達がいても」
「それぞれのルーツまであまり考えてなかったわ」
「日本って言っても広いですしね」
「そう言われると」
 さらに言うドロシーでした。
「皆そうね。オズの国も大きく分けて五つの国があって」
「その五つの国の中に色々な国があって」
「色々な人達がいてね」
「白人の人も黒人の人もいて」
「ヒスパニックの人達、アジア系の人達がいて」
 それでというのです。
「例えば日系人にしても」
「オズの国では日系人だけですね」
「けれど日本って言っても色々ね」
「そうなんですよね」
「私は私が最初に食べたお蕎麦を出して」
 そうしてというのです。
「今もこうして食べてるけれど」
「関東のお蕎麦はですね」
「食べたことがないわ」
「そうなんですね」
「けれどオズの国には大阪もあるし」
 かつて行ったこの街のことも思いだしての言葉です。
「そしてね」
「東京もですね」
「あるから」
「東京のお蕎麦もですね」
「味わえるわ、そして食べれば」
 その時にというのです。
「私はどう思うかしら」
「同じざるそばを食べても」
 それでもと言ったトトでした。
「違うって思うだろうね」
「そうよね、やっぱり」
「同じソーセージを食べても違うって思ったりもするし」
「ええ、中のお肉や腸の違いでね」
「同じ調理法でも違うからね」
 だからというのです。
「おそばもそうなんだろうね」
「ええ。じゃあ今度ざるそばを食べる時があったら」
 ドロシーはトトに真剣なお顔で答えました。
「関東、東京のお蕎麦を食べましょう」
「そうするんだね」
「そうしてみるわ」
「一ついいかな」
 大尉は皆に言ってきました。
「皆今は天婦羅も食べてるけれど」
「どうしたの?」
「そばつゆに漬けて食べる人と天つゆに漬けて食べる人がいるけれど」
「そういえばそうね」
 ドロシーも言われて気付きました。
「私達は」
「お蕎麦はそばつゆだけれど」
「天婦羅は違うわね」
「そこはどうなのかな」
「やっぱり天婦羅は天つゆだけれど」
 ドロシーは大尉に答えました。
「今私達が食べているのは天ざるで」
「ざるそばと天婦羅を一緒に食べる」
「そうしたもので」
「天つゆに漬けて食べる場合もあれば」
「そばつゆでもね。それでそばつゆに漬けても」
 その天婦羅をです。
「これが美味しいのよ」
「そうなんだね」
「無作法かも知れないけれどね」
 天婦羅をそばつゆに漬けて食べることはです。
「けれどね」
「これがなんだね」
「結構以上にね」
「いけるんだね」
「そうなのよ」
 見ればドロシーはどちらもそばつゆに漬けて食べています、見れば天婦羅を天つゆに漬けて食べているのは恵梨香とナターシャ、トトで他の子達はドロシーと同じ食べ方です。
「これがね」
「それでドロシーはその食べ方なんだね」
「そばつゆの中に衣が少し落ちると」
 天婦羅のそれがです。
「これがまた美味しいのよ」
「お蕎麦と天婦羅が合うから」
「ええ、絶品なの」
 まさにというのです。
「私的にはお勧めよ」
「ドロシー王女としては」
「そうよ。あと私を王女って呼ぶのは」
「何かな」
「大尉位よ。お友達ではね」
「やはりこうしたことは忘れてはいけないから」
 ドロシーはオズの国の王女なので敬称を付けて呼ぶことはというのです。
「軍人として」
「私にずっと敬語だったしね」
「王女がどうしてもと言うので普通の口調にしたけれど」
「本来はなのね」
「私は軍人だから」
 それ故にというのです。
「ちゃんとね」
「口調はしっかりしてるのね」
「そうなる様に気をつけているんだ」
「軍人さんも大変ね」
「いやいや、全然大変じゃないよ」
 大尉はドロシーの今の言葉は笑って否定しました。
「本当にね」
「そうなの?」
「軍人は私にとって天職だから」
 それ故にというのです。
「本当にね」
「大変じゃないのね」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「だから心配は無用だと」
「だといいけれど」
「だからこれからもね」
「私を王女と呼ぶのね」
「そうさせてもらうよ」
「僕は普通にドロシーって呼んでるけれど」
 ここで言ったのはかかしでした。
「大尉はまた違うんだよね」
「それが大尉なんだよ」
 大尉が仕えている樵も言います。
「彼は真面目だからね」
「真面目でそれでいて陽気」
 こう言ったのはジャックでした。
「それがファイター大尉なんだよね」
「これまで大尉と冒険したことがなくて」
「どんな人かは聞いてても」
「それでもお話してみると」
「凄くいい人で」
「好きになりました」 
 神宝達五人も言ってきました。
「お話は聞いてました」
「本でもご活躍聞いてましたし」
「それでも冒険したことはなくて」
「どんな方か実際には知らなかったですから」
「少しお話した位だったので」
「皆にとっていい機会ね」
 ここでドロシーもこう言いました。
「大尉をよく知ることが出来る」
「本当にそうですね」
「だったらね」
「この機会をですね」
「上手に使ってね」
 そうしてというのです。
「大尉とね」
「これまで以上にですね」
「仲良くなってね」
 是非にと言うのでした。
「そうなってね」
「わかりました」
 神宝が五人を代表して答えました。
「そうならせてもらいます」
「そうしてね」
「これもいい機会だね」
 トトもこう言います。
「オズの世界の神々の配剤だよ」
「その通りよね」
「うん、じゃあね」
「この冒険ではね」
「神宝達はもっともっと大尉を知って」
「大尉もね」
 この人もというのです。
「神宝達を知るのよ」
「そうすべきだね」
「お互いにね」
「いいことだね」
 ドロシーとトトのお話にです、大尉も笑顔で応えました。
「私としてもね」
「そうすべきって思うわね」
「まさに名案だよ」
 ドロシーにこう答えました。
「私もそう思うよ」
「じゃあ決まりね」
「うん、今回の冒険はね」
「世界樹に行くだけじゃなくて」
「僕達がお互いを知って仲良くなる」
「そのことも目的ね」
「そう思うと」
 大尉は笑顔で言いました。
「余計にね」
「楽しくなってきたのね」
「そうなんだ、果たしてどんな旅になるのかと思って」
「私達は神宝達も大尉も知ってるけれど」
「僕は違うし」
「僕達もですからね」
 神宝も言ってきました。
「そう言われるとです」
「そうなるよね」
「はい、今回の旅はそのことも楽しみです」
 神宝は大尉に笑顔で答えました。
「そうしています」
「じゃあこれからどんどんね」
「お互いを知って仲良くなる様に」
「していこう」
「この旅では」
「いいことよね、やっぱりね」
 ドロシーは大尉達のやり取りを見てにこにことして述べました。
「旅は人と人がするものだから」
「だからだね」
「うん、そうしてね」
 そのうえでというのです。
「親睦を深めていくこともね」
「大事だね」
「そうなのよ、それも旅のよさの一つよ」
 トトにもこう言うのでした。
「だからね」
「大尉達が仲良くなると」
「いいことよ。私達だってそうでしょ」
「そうだね、僕達もね」
「かかしさんや樵さん達と出会って」
 ドロシーは今一緒にいる二人にお顔を向けました、最初にオズの国に来た時から臆病ライオンと一緒にいてとてもよく知り合っている友人達です。
「オズマやベッツィ、トロットもそうで」
「他の人達も」
「そう、旅つまり冒険を通じて」
「知り合っていったね」
「私達だってそうだったから」
「大尉と神宝達も」
「そうなるといいのよ」
 こうトトに言うのでした。
「今回の旅では」
「そうなんだね、じゃあね」
「世界樹に行きましょう」
「皆でね」
 こうお話してでした、そのうえで。 
 一行は先に先にと進んでいきます、今回の旅はまだはじまったばかりでした。








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