『オズのファイター大尉』




                第一幕  ブリキの軍人さん

 神宝達五人はこの日ウィンキーの国のブリキのお城でお城の主にしてウィンキーの皇帝であるブリキの樵そして樵の親友であるかかしそしてカボチャ頭のジャックと一緒に明るく楽しく遊んでいました。
 鬼ごっこや円盤投げ、かくれんぼ等をして遊んで休憩の時にです。樵が五人にこんなことを言いました。
「もう一人いたら最高だったね」
「もう一人っていいますと」
 神宝が答えました。
「ドロシーさんですか?」
「最初の冒険から一緒だからだね」
「はい、そうですよね」
 こう樵に言うのでした、お城の応接間のブリキの席に座ったうえでそのうえで。五人は出してもらった甘いジュースやお菓子を楽しんでいます。ただ食べる必要のない樵やかかし達の前には何も出ていません。
「やっぱり」
「いや、ドロシーもそうだけれど」
 樵は神宝の問いに陽気に答えました。
「ここで言うのは僕と同じ身体の人のことだよ」
「樵さんと同じっていいますと」
「つぎはぎ娘はぬいぐるみですから」
 ジョージは彼女のことを思い出しました。
「かかしさんとですね」
「そうだね」
 そのかかしが答えました。
「彼女の場合は」
「チクタク、違いますね」
 今度はカルロスが言いました。
「ゼンマイがあるから」
「ブリキとは違って銅の身体だし」
 今度はジャックが答えました。
「また違うね」
「じゃああと一人は」
 ここで気付いたのはナターシャでした。
「ファイター大尉かしら」
「あの人になるわね」
 恵梨香はナターシャの言葉に頷きました。
「そうよね」
「確かに。樵さんは僕と同じ身体って言ったし」
 神宝は女の子二人の言葉で完全にわかりました。
「そうなるね」
「うん、彼がいればね」
 樵もその通りだと答えました。
「皆揃ったって感じになったんだけれど」
「そういえば僕達は」
 神宝はさらに気付いて言いました。
「ファイター大尉とはあまり」
「お会いしてないね」
「お話したことも」
「ちょっとね」
「一緒に冒険したことも」
「あまりないね」
 神宝はあらためて思うのでした。
「そういえば」
「それじゃあね」
 樵は皆に言いました。
「大尉と会う機会があれば」
「その時は」
「うん、絶対にね」
「一緒にですね」
「冒険をしようね」
 是非にと言うのでした、そしてです。
 樵はジュースとお菓子を楽しんでいる五人にこうも言いました。
「こう言うとね」
「あっ、そうですよね」
「冒険をしていない時に冒険のことをお話しますと」
「冒険になるんですよね」
「すぐにそうなりますよね」
「この国だと」
「そうなんだよね、僕達の場合はね」
 樵は五人にさらに言いました。
「だから多分ね」
「もうすぐですね」
「冒険に出る機会が来ますね」
「そしてその時にですね」
「大尉と一緒になったら」
「いい機会になりますね」
「そうなるね、じゃあ今からね」
 まさにと言う樵でした。
「その時を楽しみに待とうね」
「今回君達はオズの国に来てすぐにここに来たけれど」
 ウィンキーの国、そして樵のお城にです。
「ここからね」
「あらためてですね」
「そう、冒険に出るかもね」
「そういえば今回こっちに来た時は」
 神宝は樵に笑顔で答えました。
「いつもはエメラルドの都に出るのに」
「ウィンキーの国だったね」
「それはどうしてなんでしょうか」
「そうだね、僕達が君達と会いたいって思っていたからかな」
 ジャックが言ってきました。
「丁度ここで三人でお話をしていたんだ」
「僕達と会いたいって」
「うん、そうお話している時にね」
 まさにその時にです。
「君達はオズの国に来たね」
「学園の時計塔の最上階の渦から」
 いつも五人がオズの国に来ているそこからとです、神宝はジャックにも答えました。それもすぐにです。
「そうしたけれど」
「その時にね」
「丁度三人がそんなことをお話していて」
「僕達の願いをね」
「渦が聞いてくれて」
「案内してくれたのかもね」
「渦にも意志があるんだ」
 神宝はいつもただ通っているだけのその渦についても思いました。
「そうだったんだ」
「そうかもね、オズの国はものも心を持つからね」
「そうした国だから」
「そんなこともあるかもね」
「そうしたことは君達の世界でもあるね」
 かかしが笑顔で言ってきました。
「そうだね」
「あっ、付喪神ですね」
「日本にいるね」
「はい、中国にもいます」
「そうだね、ものも長く存在していたりしたら」
 それでというのです。
「人間の様に心を持って」
「それで、ですね」
「渦もまた然りなんだろうね」
「特にオズの国にまつわるものだから」
「余計にね」
 まさにというのです。
「そうなるのだろうね」
「それで、ですか」
「君達は僕達の願いを受けてね」
「ウィンキーの国に来たんですね」
「そうじゃないかな、けれど何はともあれね」
「ウィンキーの国に来たからには」
「この国を楽しんでね、そしてね」
 そのうえでと言うのでした。
「若し冒険がはじまってね」
「そしてですね」
「そう、そのうえで」
 まさにというのです。
「大尉と会ったら」
「その時は」
「一緒に楽しもうね」
 大尉と一緒の冒険をというのです、そうしたお話をしながらです。五人は樵達と一緒に今はジュースをお菓子を楽しみました。
 ただ樵達は食べないので神宝は彼等を気遣って言いました。
「皆さんの目の前で美味しそうに食べたことは」
「ああ、別にいいよ」
 ジャックが神宝に笑って言いました。
「僕達は食欲自体がないからね」
「目の前で食べられても」
「食べたいとも飲みたいとも思わないし。それにね」
「それに?」
「皆が食べるのを見て」
 それでというのです。
「心の栄養になっているから」
「いつも言っておられますね、そういえば」
「心でね」
 それぞれの中にあるそれでというのです。
「君達の笑顔を見て楽しんでね」
「そうしてなんだ」
「そう、心が満足しているから」
 だからだというのです。
「いいんだよ」
「笑顔が栄養だね」
「僕達の心のね」
「だからいつもパーティーに参加していて」
「楽しんでいるんだ」
「成程ね」
「そしてね」
 さらに言うジャックでした。
「君達はこれからもね」
「楽しくだね」
「僕達の目の前で飲んで食べてね」
「それじゃあそうさせてもらうね」
「寝ることもだよ」
 こちらもというのです。
「僕達は寝ることもしないけれど」
「僕達が寝ているのを見て」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「見守ってね」
「そしてだね」
「楽しんでいるしね」
「ううん、心が楽しむ」
「このことが一番いいんだ」
「そういえば僕達も」
 神宝も言われて気付いて言いました。
「心がね」
「楽しむとだよね」
「どんな時でもね」
「満足出来るね」
「そういうことなんだね」
「そうだよ、僕達も心があるから」
 それだけにというのです。
「楽しんでね」
「それが最高の栄養になっているんだね」
「そうだよ、それとね」
「それと?」
「神宝はあまり冷たいものというか冷えたものを食べないね」
「ああ、そのことだね」
 神宝も言われてすぐに答えます。
「冷えた御飯とかだね」
「うん、注文することはないね」
「出されたら食べるけれどね」
「そうするけれどね」
「実は中国にいた時は絶対に食べなかったんだ」
 冷えた食べものはというのです。
「冷えた御飯は特にね」
「熱いものをってなっていたね」
「日本に来てから食べる様になったんだ」
 冷えたものもというのです。
「お握りとかもね」
「日本に来て変わったんだ」
「一回お握り勧められて絶対に無理って思ったけれど」
 それでもというのです。
「食べてみたら美味しかったから」
「食べる様になったね」
「けれどね」
 それでもというのです。
「自分からあまりね」
「食べないのね」
「うん、進んではね」
「やっぱり熱いものが好きなんだ」
「そういえばオズの国の中華街でもね」
 ここで樵も言いました。
「出て来る食べものは殆ど全部温かいものだね」
「中国では本当になんです」
「温かいものじゃないと食べないんだね」
「お刺身はあって最近はお寿司や冷たい甘いものも食べますけれど」
 アイスクリーム等もというのです。
「けれどです」
「基本は暖かいものね」
「そうなんです」
「それも文化だね」
「昔、漢代の時は冷たいものも食べたそうですが」
 その頃はというのです。
「お刺身とか」
「そういえばお刺身はね」
「元は中国のお料理だったわ」
 ジョージと恵梨香が言いました。
「元はね」
「そう聞いていたけれど実際になんだね」
「けれどそれがだね」
「衛生的なお話でって聞いたわ」
 カルロスとナターシャも言います。
「火を通したものでないと食べない」
「そうなったってね」
「そうなんだ、火を通した方が安全だから」
 神宝は四人にもお話しました。
「中国では温かいものしか食べなくなったんだ」
「そうなんだね、道理で温かいお料理が多い筈だよ」
 樵も納得して頷きました。
「中華料理はね」
「はい、ですから冷やし中華とかは」
「あの麺もだね」
「本当は中国ではないんですよ」
「そうなんだね」
「それが僕は日本に来てから食べる様になって」
 神宝自身のお話もしました。
「そしてお国でも」
「中国でもだね」
「最近では食べますね」
「そうなったんだね」
「随分変わりましたね」
「時代と技術によってお料理も変わるってことだね」
「お寿司の御飯は温かくないですが」
 ある程度冷やしています。
「中国でも食べる様になりましたし」
「そこも変わったね」
「そうですね、あとです」
「あと?」
「中国は広いですから地域によってお料理が変わって」
 それでというのです。
「使う食材や味付けは色々ですね」
「その地域によってだね」
「中華街でもそうなっていますね」
「うん、北京とか広東とか上海とかあるね」 
 樵もその通りだと答えます。
「あと四川もね」
「四大料理って言われています」
「それでだね」
「それぞれの味が楽しめるんです」
「それもいいんだね、じゃあ今日の夜は何を食べるのかな」
 樵は食べないですが神宝達にこのことを尋ねました。
「それで」
「何を食べるかは」
「それは」
「どうしようかな」
「そう聞かれても」
「考えが」
 五人共どうにもと言うのでした。
「今すぐには」
「思いつかないわね」
「そうだね」
「ううん、何にしようか」
「何を食べようかな」
「そうしたことを考えることも面白いよね」
 かかしが五人の今のお顔を見て言ってきました。
「何かと」
「そうですね」
「じゃあこのままですね」
「何を食べるかお話する」
「そうしてもいいですね」
「今の私達は」
「そうするといいよ。ただ喧嘩はしないでね」
 このことは事前に言っておく樵でした。
「くれぐれもね」
「楽しくお話しても」
「それでもですよね」
「そこから喧嘩にならない様に」
「そこは注意して」
「お話することですね」
「そうしてね、何はともあれ」
 まさにというのです。
「食べる前にお話することも」
「いいですね」
「じゃあ皆で楽しんで」
「それでお話していきます」
「今から」
「そうしてね」
 こうしてでした、五人はお話をしてでした。
 その結果火鍋を食べることになりました、ジャッキは火鍋と聞いてすぐにこんなことを言いました。
「もの凄く辛いんだよね」
「うん、四川料理でね」
 神宝はそのジャックに答えました。
「愚を中に入れて食べるんだけれど」
「そのお鍋の中がだね」
「凄く辛く味付けされていて」
 そしてというのです。
「熱いんだ」
「だから火だね」
「火を吹く位に熱い」
「文字通りに」
「そこまで辛いから」
 だからだというのです。
「その名前になったんだ」
「まさに本物だね」
「うん、ただ僕達はまだ子供だから」
 それでというのです。
「お城の料理人の人達に作ってもらうけれど」
「辛さは控えめだね」
「そうしてもらってね」
「食べるんだね」
「うん、本当に辛い火鍋は」
 それはどういったものかといいますと。
「大人の人でも食べられない人が多いね」
「それだけ辛いんだね」
「だから火だよ」
 そこまで言うべき辛さと熱さだからだというのです。
「だから子供用にね」
「それなりの辛さにしてだね」
「出してもらおうと思ってるけれど」
「よし、じゃあね」
 城の主である樵も頷いて言ってきました。
「料理人の人達に言っておくよ」
「火鍋の辛さはですね」
「子供用にね」
 つまり神宝達に合わせてというのです。
「そうしてね」
「そのうえで、ですね」
「美味しく食べられる様にするよ」
「宜しくお願いします」
「是非共ね、それとね」
「それと?」
「デザートも欲しいよね」 
 樵は神宝にこのことも言ってきました。
「そうだよね」
「そうですね、言われてみれば」
「特に辛いものを食べるから」
「後はですね」
「甘いものを食べるといいしね」
 樵は腕を組んだ姿勢で自分が生身の身体であった時の記憶から言いました。今は食欲もないですが記憶はあるのです。
「それじゃあね」
「はい、じゃあデザートは」
「何がいいかな」
「とびきり甘いものといいますと」
 神宝が思うそれは。
「杏仁豆腐でしょうか」
「中華料理のデザートだね」
「これがです」
 本当にというのです。
「やっぱりいいと思います」
「うん、杏仁豆腐いいよね」
「僕も大好きだよ」
「火鍋が辛くても」
「最後が杏仁豆腐ならいいわ」
 ジョージ、カルロス、ナターシャ、恵梨香も賛成でした。
「それじゃあね」
「デザートは杏仁豆腐ね」
「お城の料理人さんにこちらも作ってもらって」
「皆で食べようね」
「僕は何も食べないけれど」
 それでもと言う樵でした。
「お客さん達の為にね」
「料理人の人達もおられるんですね」
「お客さんにご馳走する為に」
「そしてお風呂もおトイレもありますし」
「お客さんのことも考えてるんですね」
「何かと」
「そうだよ、それにこのお城で何も食べなくていいのは僕だけだよ」
 お城の主の樵だけだというのです。
「だからね」
「他の人達もいるから」
「樵さんにお仕えする」
「その人達のことも考えて」
「料理人の人達がいて」
「お風呂もおトイレもあるんですね」
「そうだよ、僕だけじゃないから」
 とにかくこのことを言う樵でした。
「皆の分も考えているんだ」
「流石樵さんですね」
「他の人達のことも考えておられるなんて」
「お見事です」
「それじゃあですね」
「私達にしても」
「うん、火鍋も楽しんでね」
 まさにと言う樵でした、そうしてです。
 皆は晩御飯に火鍋と杏仁豆腐を楽しんでブリキの湯舟というとても変わったこのお城独特のお城にも入ってでした。
 その後でベッド、これはお客さん用のブリキではなく天幕のふかふかのベッドに寝てそうしてでした。
 朝起きるとでした、そこにです。
 ブリキの樵と同じく全身ブリキの身体で頭の部分がケピ帽の様になっている帽子の頭をしていてブリキのサーベルを持っている人がお城に来ていました。その人こそです。
「あっ、ファイター大尉」
「暫く振りだね」
「はい、丁度昨日お話をしてました」
 神宝が答えます。
「大尉のことを」
「そうだったんだ」
「一度一緒に冒険出来たらって」
「そういえば君達と冒険したことはないね」
 大尉もこのことについて言います。
「そうだったね」
「そうですよね」
「君達もオズの国に何度も来ていてね」
「冒険もしていますけれど」
「僕と冒険したことはないね」
「ですから」
 それでというのです。
「一度ってお話していました」
「出来れば何度もしたいね」
「それはそうですね」
「うん、けれどないなら」
 それならと言う大尉でした。
「一度ね」
「大尉と僕達で」
「一緒に冒険したいね」
「そうですよね」
「それで君はどうしてここに来たのかな」
 かかしが大尉に尋ねました。
「それで」
「これからオズマ姫の王宮に行ってね」
 そうしてとです、大尉は樵に答えました。
「オズマ姫から頼みごとをしたいからって言われているから」
「それが何かを聞いて」
「そこに行くつもりなんだ」
「そうだったんだ」
「それで途中ここに寄ったんだ、我が主に会いにね」
「僕にだね」
 ここで樵が言ってきました、樵こそが大尉の主君なのです。そして主君であると共に親友でもあります。
「そうだね」
「左様です、これより重要な任務を受けて果たす前に」
「挨拶に来てくれたんだね」
「そうなのです」
 大尉は樵に敬礼をしつつ答えました。
「この度は」
「ううん、おそらくここからだね」
 樵は腕を組んでこうも言いました。
「冒険になるね」
「じゃあ僕達も同行したら」
 ジョージがふと気付いたお顔になって言ってきました。
「冒険に行けますね」
「いい機会ですね」
 恵梨香はこう言いました。
「大尉と一緒に冒険を行う」
「そうだね、じゃあ大尉お願いします」
 カルロスは大尉に申し出ました。
「同行させて下さい」
「大尉がよければ」
 ナターシャも言うのでした。
「私達も」
「断る理由なんてないよ」
 大尉は子供達に笑顔で答えました。
「僕の方から誘うつもりだったよ」
「それじゃあですね」
「今からですね」
「僕達も一緒に都に行って」
「そしてですね」
「そこからですね」
「うん、一緒に冒険に行こうね」
 是非にと言ってでした、そのうえで。
 神宝達五人は大尉と一緒にまずはエメラルドの都に行くこととなりました。ですが行くのは彼等だけではありませんでした。
 ジャックもです、こう言いました。
「僕も一緒に行っていいかな」
「君もだね」
「最近冒険に行ってなかったから」
 だからだというのです。
「丁度いいかなって思ってね」
「そうだね、それじゃあ君もね」
「うん、行こうね」
「最近冒険に行っていないとなると」
「僕達もだね」
 今度はかかしと樵が言いました。
「それじゃあ留守はお城の人達に任せて」
「それでだね」
「お二人も一緒なら」
 それならと言う大尉でした。
「これまた有り難いこと、それでは」
「皆で行こう」
 樵は陽気に言いました。
「今から」
「一体どういったお願いか気になりますし」
 神宝はオズマが大尉に言ったそれのことも考えました。
「それじゃあですね」
「皆で行こうね」
「わかりました」
 大尉の言葉に頷いてでした、皆はエメラルドの都に向かうことになりました。その道中かかしは旅に欠かせないものを持って行きました。
「テントとテーブル掛けも持ってきたよ」
「いつもドロシーさん達が持っておられるものですね」
「この二つがあるとね」
 それこそというのです。
「オズの国の冒険は何の心配もいらないから」
「だからですね」
「そうだよ、持って来たんだ」
 こう神宝に言うのでした。
「君達は食べて寝るからね」
「だからですね」
「そう、そしてね」 
 そのうえでというのでした。
「持って来たよ」
「そうなんですね」
「これで道中安心だね」
「はい、美味しいものを食べて気持ちよく寝て」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「楽しくね」
「都まで、ですね」
「そしてオズマ姫のお話を聞いてね」
「そこからですね」
「大尉のお仕事に同行しよう」
「それが今回の僕達の冒険ですね」
「そうなるね、しかしオズマが大尉に是非にと言うお願いは何かな」
 かかしもオズマが大尉にという要望について思うのでした。
「一体」
「それは私もわからないです」 
 その大尉が言ってきました、皆はもうお城を出て黄色い煉瓦の道を歩いています。皆と黄色い煉瓦道の周りにはウィンキーの黄色い草原と黄色い森、黄色い田畑、黄色い家々がのどかに広がっています。
「スマホにお願いしたいことがあるとです」
「連絡してきてだね」
「それだけなので」
 だからだというのです。
「詳しいことはです」
「まずはだね」
「エメラルドの都に入って」
「そうしてオズマからお話を聞いて」
「それで」
 そのうえでというのです。
「どんな要望でも」
「果たすね」
「そうします」
「大尉は言われたことは絶対に果たすからね」
 樵は大尉のこのことをよく知っています。
「そのこともあってね」
「オズマ姫もですね」
「大尉にって思ったんだろうね」
「光栄です、では」
「是非だね」
「この度のお願い必ずです」
「果たすんだね」
 大尉を見てのお言葉です。
「今回も」
「必ず」
「そして僕達もね」
「同行してくれて」
「大尉に協力させてもらうよ」
「宜しくお願いします」
「それではね、ただオズの国は」
 今度はこの国について思う樵でした。
「色々なものに場所があるからね」
「何処に行くかはですね」
「わからないね」
「そうですね、ですが私はです」
「必ずだね」
「約束は果たしますので」
 だからだというのです。
「それに皆さんもおられるなら」
「余計にだね」
「まさに百人力です」
「けれど僕達がいますから」
 神宝はここで申し訳なさそうに言いました。
「ちょっと」
「ちょっとっていうと?」
「足手まといにならない様にします」
「君達は別にね」
 かかしが神宝に答え他の子達にも言いました。
「なっていないよ」
「そうだといいですが」
「むしろ僕達だけの冒険だとね」
 どうしてもという口調での言葉でした。
「いかんせん寂しいものがあるよ」
「そうなんですか」
「うん、ドロシ―達もいてくれて」
「僕達もいるとですか」
「凄く賑やかなものになるからね」
「ほら、僕達は食べることも寝ることもしないね」
 ジャックも言ってきます。
「だからずっと歩くことが出来るけれど」
「それだとなんだ」
「冒険もすぐに目的地に着いて終わりだし」
「味気ないんだ」
「どうにもね。だからね」
 それでというのです。
「君達もいるとね」
「その分なんだ」
「食事や睡眠といった要素が加わって旅にメリハリが出来て」
「いいんだ」
「本当に君達がいない冒険は寂しいんだ」
「僕達五人がいないと」
「だから是非ね」
 まさにというのです。
「君達にはいて欲しいんだ」
「そうなんだね」
「じゃあこれからも頼むね」
「一緒にだね」
「冒険をしていこう」
「今回だけじゃなくて」
「これからも機会があればね」
 何時でもというのです、こうお話してでした。
 皆でエメラルドの都の方に進んでいきます、都までの道のりの間も楽しくお喋りをして気持ちよく歩いて美味しいものを食べてです。
 テントの中でぐっすりと寝ます、その中で。
 神宝はお昼御飯の豚肉がたっぷり入った油っ気の多い麺と沢山の点心を食べつつこんなことを言いました。
「ううん、美味しい麺に点心を食べると」
「お茶が飲みたくなるよね」
「中国のお茶が」
「そのお茶も出してるし」
「お茶も飲みましょう」
「是非ね、ただこれが大人だと」
 それならというのでした。
「お酒になるんだよね」
「キャプテン=ビルも魔法使いさんも好きで」
 ここで言ったのはかかしでした。
「よく飲んでるね」
「そうですよね」
「グリンダはワインが好きだしね」
「あの人はそうなんですね」
「うん、それもカドリング産の赤ワインで」
 それがグリンダの好きなワインだというのです。
「よく飲んでいるよ」
「何か似合いますね」
「グリンダとワインはね」
「優雅な感じがして」
「そうだよね、それは中華料理の時も同じだよ」
「このお料理の時もですか」
「グリンダは赤ワインを飲むんだ」
 大好きなこのお酒をというのです。
「そうして楽しんでいるんだ」
「リンキティンク王は甘いお酒が好きだよ」
 樵はこの人のことをお話しました。
「ジュースと割ったカクテルやライチや杏のお酒がね」
「あっ、ライチや杏のお酒は」
「中国のお酒だね」
「そうなんです、甘いお酒も多いんです」
 中国にはとです、神宝は中国人として答えました。
「僕は飲んだことがないですが」
「子供だからだね」
「ですがお父さんも好きで」
「よく飲んでいるんだね」
「紹興酒をよく飲んでますが」 
 このお酒だけでなくというのです。
「そちらのお酒もです」
「よく飲んでいるんだね」
「美味しいって言ってます」
「そうだね、そしてリンキティンク王はね」
「そうした甘いお酒が大好きですか」
「あの人が言うにはジュースみたいに甘くて」
 そうしたお酒はです。
「しっかりと酔うね」
「いいお酒ですか」
「元々甘いものが大好きな人だし」
 このこともついては子供達と同じかそれ以上です、とにかくリンキティンク王の甘いもの好きはかなりのものです。
「だからお酒もね」
「甘いものがお好きで」
「ジュースで割ったカクテルとか」
「あとライチや杏のお酒もお好きで」
「よく飲まれてるんですね」
「あの人は」
「そうだよ、ちなみにキャプテン=ビルはラム酒で」
 この人はこちらのお酒だというのです。
「魔法使いさんはウイスキーやバーボンだよ」
「その人それぞれですね」
「ワインがお好きな人もいれば」
「甘いお酒がお好きな人もいて」
「ラム酒とかウイスキーとかバーボンとか」
「お酒も色々なんですね」
「オズの国のお酒は昔はワインかビールかバーボンだけだったんだよね」
 大尉もお酒のお話をします、この人達は飲むことも食べることもせず五人が楽しくそうしているのを見ています、麺に海老蒸し餃子や蟹焼売、お饅頭、小龍包といったものの他に唐揚げやピータンといったものがあります。
「それが色々増えたね、カクテルが出来て日本や中国やロシアのお酒も出てきて」
「オズの国に色々な人が出てきて」
「そう、現実のアメリカがそうなっていくにつれてね」
「お酒の種類も増えたんだね」
「日本酒なんてね」
 このお酒のお話もしました。
「お米で造るお酒とかなかったよ」
「昔のオズの国には」
「それが増えたんだよ」
「アメリカが変わって」
「うん、それで色々なお酒が飲まれる様になったんだ」
 オズの国の大人の人達の間で、です。
「日本酒も紹興酒も人気があるよ」
「中国のお酒もですね」
「老酒もね」
 このお酒もというのです。
「人気があるんだ」
「中国のお酒も広まってるんですね」
「中華街も沢山あるからね」
 オズの国にはというのです。
「だからだよ」
「それで、ですか」
「中華料理も多いし」
「中国のお酒もですね」
「広まっていて」
 そしてというのです。
「飲まれているんだ」
「お料理が広まるとですね」
「お酒もね」
 当然として、という口調でのお言葉でした。
「広まるよ。お茶と一緒だよ」
「ああ、お茶もそうですよね」
「その国のお料理が広まりますと」
「その国の飲みものも広まりますし」
「お茶だけじゃなくてコーヒーも」
「それでお酒もですか」
「そうだよ、全部飲みものだからね」
 お茶のコーヒーもお酒もというのです。
「広まるんだよ」
「それでお酒もなんだよね」
 ジャックも五人に笑顔でお話します。
「広まるし実際にね」
「オズの国でも広まって」
「皆楽しく飲んでいて」
「それも美味しく」
「お料理路一緒に」
「そうしてるのね」
「そうなんだ、ちなみにジンジャー将軍なんかは」
 この人はといいますと。
「あの人お菓子の畑や果樹園があるね」
「あそこのお菓子で飲むんだ」
「あの人はお酒をそうしてるんだ」
「お菓子を食べてお酒を飲む」
「そう言うと私達みたいだし」
「リンキティンク王と同じかしら」
「あの人はワインやブランデーでご主人と一緒にそうするんだ。あと甘い牛乳にお酒を入れて」
 そうしたこともしてというのです。
「飲んでるよ」
「あっ、そういえば」
 ここで気付いたのは神宝でした。
「馬のお乳からお酒を造ることが出来るし」
「そうだよね」
「モンゴルであるし」 
 中国の北にあるこの国にというのです。
「それで牛乳にもだね」
「お酒を入れてね」
「牛乳割りだよね」
「そうして飲んでるんだ」
「色々飲み方があるんだね」
「そうなんだ、オズの国でもね」
 お菓子がとても多い国ですがお酒もあって飲む人もいてというのです。
「僕達には関係なくても」
「そうしたものもあることは」
「覚えておいてね」
「わかったよ」
 神宝はジャックの言葉に笑顔で頷きました、そうして御飯の時にその牛乳を飲んでまたジャックに言いました。
「牛乳もお酒と一緒に飲むことがある」
「そのことはだね」
「覚えたけれど不思議だね」
「しかも美味しいっていうから」
「だからだね」
「そのことも不思議だよ、けれど僕達の世界でもある飲み方だし」
 それでというのです。
「大人の人達にとっては不思議じゃないね」
「そうだね、普通に飲んでる人いるから」
「それじゃあね、じゃあ今はね」
「牛乳をだね」
「こうして飲むよ、中国では長い間飲んでいなかったけれど」
「そうだったんだ」
「色々なものを食べる国だけれど」
 それでもというのです。
「牛乳そして乳製品は主な食材じゃなかったんだ」
「色々なものを食べてもなんだ」
「西の方の飲みもの食べものでね」
 それでというのです。
「中国では食べる風習なかったんだ」
「それも面白いね」
「今じゃ飲んで食べて僕も好きだけれどね」
 それでもかつては違ったというのです、こうしたことをお話しながらでした。 
 一行はエメラルドの都に向かっていきます、そうしてまずはオズマに会って大尉へのお願いが何かを聞くのでした。








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