『オズのエリカ』




               第十一幕  寝て待つだけで

 エリカはアン達を宮殿の地下のフロアに案内しました。そこはとても奇麗な部屋が揃っていました。
 白い大理石できらきらしています、そして黒檀のテーブルも見事でソファーもベッドもふかふかです。
 そこを案内してです、エリカはアンに尋ねました。
「どうかしら」
「ええ、これならね」
 アンはエリカに満足している顔で答えました。
「充分過ぎるわ」
「そうでしょ、お風呂もあるし」
「お風呂凄いね」
 ジョージが言ってきました。
「水風呂もあって」
「サウナもあるわね」
 ナターシャはそちらのお風呂を確認しました。
「ここで思いきり汗もかけるわね」
「湯舟が幾つもあるから」
 神宝はそこに注目しています。
「普通のお湯のお風呂に薬膳湯も入られるね」
「まさかこんなに充実してるなんて」
 カルロスも予想外でした。
「凄いね」
「まさかこんなにいい場所を考えているなんて」
 恵梨香も驚いています。
「凄いわね」
「ええ、凄いでしょ」
 エリカはジョージ達五人に胸を張って応えました。
「これもね」
「全部なんだ」
「そうよ、私が考えたものよ」
 まさにとです、エリカはジョージに答えました。
「まさにね」
「そうなんだね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「ここはね」
 さらに言うエリカでした。
「ちょっと違うのよ」
「違うっていうと」
「そう、よく見るのよ」
 こう言ってです、エリカはジョージ達に今自分達がいるバスルームの中の大理石の像を指し示しました。見ればここにも猫の像があります。
「この像を」
「あれっ、この像って」
「そう、ここには私の像を置いたのよ」
 見ればエリカは座っている像です、そのエリカも胸を張っています。
「つまり私がお風呂に入っている皆を見守っているのよ」
「そうなんだ」
「そう、だから安心して入られるのよ」
「それが違うんだ」
「普通のお風呂とね」
「君が見ているからだね」
「そうよ、凄いでしょ」
 ジョージに胸を張って言うのでした。
「だから安心して入るのよ」
「そうすればいいんだね」
「今日から入られるから」
 このお風呂にというのです。
「安心してね」
「それじゃあね」
「そしてね」 
 さらに言うエリカでした。
「まだシェフは決めていないけれど」
「人のお料理もだね」
「出せる様にするわ」
 今後そうしたこともするというのです。
「ちゃんとね」
「じゃあ今はね」
 アンがエリカの今の言葉に応えて言いました。
「私がテーブル掛けで出すわね」
「これまで通りそうしてくれるのね」
「任せてね。それで貴女は」
「もう猫用の料理を出してくれるシェフは決めたから」
 その猫はというのです。
「だからね」
「そちらのお料理を食べるのね」
「そうするわ、傍のお池でお魚を獲って」
 そしてというのです。
「そのお魚を料理してもらってね」
「それを食べるの」
「そうしていくわ」
「わかったわ、それじゃあね」
「それぞれ食べましょう」
「そうしましょう」
 お互いにお話します、そしてかかしと樵は地下の隅から隅までを見てからエリカに対して言いました。
「うん、問題ないよ」
「いいフロアだね」
「これなら皆快適に過ごせるよ」
「いいおもてなしが出来るよ」
「そうよね、私が考えてそうしたのよ」
 だからだと言うエリカでした、二人にも。
「それならね」
「悪い筈がない」
「そう言うんだ」
「そうよ、一階も二階もね」 
 こちらもというのです。
「ちゃんと出来るのよ」
「そうなんだね」
「そちらもだね」
「そう、何もかもがね」
 まさにというのです。
「順調に出来ていくのよ」
「そう言うんだね、それじゃあ」
「これからこの国に人が来ても」
「私の国に相応しい最高のおもてなしをするわ」
 二人にこうも言ったのでした。
「楽しみにしていてね」
「うん、こちらこそね」
「そうさせてもらうね」
「是非ね、ただ貴方達は食べることと寝ることは」
「気にしなくていいよ」
「いつも通りね」
 このことも言う二人でした。
「そしてお風呂もね」
「実は関係ないんだよね」
「そうね、もうそのことはわかっているから」
 既にというのです。
「そのうえでおもてなしさせてもらうわ」
「それはそれでね」
「期待させてもらうよ」
「じゃあね」
 ジョージがエリカに言いました。
「今日はね」
「ええ、ここでゆっくりしてね」
「そうさせてもらうよ」
「アンが出した好きなものを食べてね」
「さて、今日は」
 ここでアンが言うことはといいますと。
「何を出そうかしら」
「そこはあんたが考えることね」
「そうね、何がいいかしら」
 アンは少し考えてそして言いました。
「沖縄料理って前に恵梨香から聞いたけれど」
「沖縄?」
「そう、日本の沖縄県のお料理ね」
「そうした場所があるの」
「あっ、沖縄っていうと」
 ジョージも沖縄と聞いて言いました。
「アメリカの日系人にはご先祖が沖縄から来た人多いんだよね」
「あら、そうなの」
「だから僕も沖縄料理は知ってるよ」
「美味しいの?」
「うん、アメリカでは食べたことがないけれど」
 それでもというのです。
「日本で食べたことがあるよ」
「それで美味しいの?」
「美味しいよ、だからアン王女が出してくれるなら」
 それならとです、ジョージはエリカに笑顔で言いました。
「是非ね」
「食べて楽しむのね」
「そうさせてもらうよ」
「さて、出すのはね」
 アンが早速言います。
「タコライスにミミガー、ゴーヤチャンプル、ソーキそばに足てびち」
「そうしたものをですね」
「出すわよ」
「そうですか、楽しませてもらいます」
「じゃあ今晩はね」
「沖縄料理尽くしで、ですね」
「いきましょう」
 こうしてでした、アン達は地下のフロアーで皆と一緒に沖縄料理を楽しんでお風呂にも入って柔らかいベッドで寝ました。
 そして翌朝です、朝御飯の後でエリカに会うとです。エリカはこう言ったのでした。
「じゃあ今日はここでずっと寝ているわ」
「寝るだけ?」
「起きている時は遊ぶわ」
 こう言うのでした。
「楽しくね」
「あの、それじゃあ」 
 今朝到着して皆と合流したドロシーはエリカが玉座でこう言うのに首を傾げさせました、勿論トトも一緒にいます。実は今朝までオズマの政治を手伝っていてそれが終わってからオズマの魔法で一瞬でここまで来たのです。
「政治は」
「ああ、それはね」
「それは?」
「今日来た猫のお仕事は夕方にね」
「その時になの」
「決めて」
 そうしてというのです。
「終わりよ」
「それだけなの」
「あと色々決まったことが書類で来たら」
 その時はといいますと。
「サインしてね」
「終わりなのね」
「今日出来た書類は夕方にして」
 サインをというのです。
「そうしてね」
「終わりなの」
「そう、だから今はね」
「寝るのね」
「そうするわ」
「あの、何か」
 ドロシーはどうかというお顔でまたエリカに言いました。
「それじゃあね」
「いい加減でっていうのね」
「大丈夫かしらって思うけれど」
「いいのよ、それで」
「貴女の国のことは」
「そうよ、そもそもまだ猫もまだまだ集まってる最中で」
 それでというのです。
「書類も出来てきてもいないし」
「来た猫のお仕事を決めてなの」
「それでいいのよ」
「そうなの」
「まあ出来た書類をね」
 それをというのです。
「あったらだけれど」
「サインして」
「それで終わりだし」
「何か随分と気楽ね。オズマはね」
「もっと大変だっていうのね」
「そうよ、私も今朝まで手伝って」
 そしてというのです。
「そのうえでここに来てるから」
「それはあれでしょ」
「あれっていうと」
「オズマはオズの国全体の国家元首でしょ」
「ええ、そうよ」
「だからドロシーの助けも借りてね」
 オズマの一番の親友で王女でもある彼女の力もというのです。
「そして他の人達の助けも借りてね」
「そうしていつも政治をしているわ」
「そうしないといけないけれど」
「この国は違うの」
「そう、国の規模が遥かに小さいから」
 それでというのです。
「やることもね」
「ずっと少ないの」
「そうよ」
 まさにというのです。
「この通りね」
「国の大きさが違うと」
「やることも違うでしょ」
「それはね」
「オズの国は何億も人がいるじゃない」
「色々な人がね」
「それに国土だって広いし」
 一つの大陸位普通にあります、オズの国は大陸島と言っていい位に凄く大きいのです。オズマはその国全体を治めているのです。
「私よりもずっとお仕事が多いのもね」
「当然なのね」
「そうよ、それで今の私はね」
「寝ているの」
「寝てね」
「そうしてなのね」
「皆が来るのを待つのよ」
 こう言ってでした、エリカは。
 その場所に丸くなって寝転がりました、そのうえでまたドロシーに言いました。
「じゃあ何かあるか十時になったら起こしてね」
「十時になったら」
「起きてね」
「ティータイムね」
「それを楽しむわ」
「国を見て回るとかは」
「それは十時まで寝て」
 そしてというのです。
「そうしてね」
「それからなの」
「気が向いたら遊ぶって言ったでしょ」
「じゃあそれも気が向いたら」
「遊びの一つとしてね」
 そうしてというのです。
「楽しむわ」
「そうするの」
「そう、だからあんたはね」
 ドロシーはといいますと。
「ゆっくりとね」
「していればいいっていうの」
「皆と遊んでね」
「ううん、こんなことでいいのかしら」
「何よ、心配なの?」
「ええ、そうよ」
 その通りだとです、ドロシーはエリカに答えました。
「実際にね」
「それは杞憂よ」
 ここでもこの言葉を出したエリカでした。
「何も心配いらないわよ」
「そうだったらいいけれど」
「そう、まあ見ていなさいって」
「この国の政治は上手くいくの」
「ええ、いくわよ」
 実際にと言うのです。
「だから本当にね」
「何の心配もいらないの」
「焦っても何もならないでしょ」
 こうも言ったエリカでした。
「そうでしょ」
「それはそうだけれど」
「だったらね」
「このままなの」
「安心して見ていることよ」
 それが今ドロシーがすべきことだというのです。
「いいわね」
「そうなのね、けれど何かあった時は」
「すぐに言えっていうのね」
「そうしてね」
 このことは強く言うドロシーでした。
「いいわね」
「本当にドロシーは心配性ね」
「それが杞憂っていうのね」
「そう、だからここはね」
「見ていればいいのね」
「そうよ、じゃあ私は今から寝るから」
「十時になれば」
 ドロシーは今もどうかというお顔です、そしてそのお顔でエリカに言うのでした。
「ここに戻ってティータイムにするわね」
「それじゃあね」
「ええ、またね」
 仕方なくといったお顔で、です。ドロシーはエリカに言いました。そうして皆と一緒に一旦宮殿の外に出ました。エリカはその皆に十時にまたねと言って玉座で気持ちよくぽかぽかと眠りだしました。
 皆は猫の国の中を見回って歩きました、お家もお店も道も城壁も全部猫の大きさに合わせたものです。
 そして集まってきている猫達は皆です、それぞれ自由に歩いたり毛づくろいしたり遊んだり寝たりしています。その街の中を見回してです。
 そうしてです、ドロシーは言いました。
「何か皆ね」
「凄くよね」
「マイペースね」
「エリカみたいよね」
 アンがこうドロシーに応えました。
「どの子も」
「猫だけあってね」
「自由に暮らしているわね」
「何かね」
「これだとね」
「エリカに相応しい国かしら」
「そうかも知れないわね」
 アンはドロシーのその言葉に同意して頷きました。
「こうした感じだと」
「これだとね」
「エリカこそがね」
「この国の女王に相応しいかしら」
「この国に合ってるかもね」
「猫の中でも特に猫らしいから」
「だからね」
 それでというのです。
「エリカの言う通りかもね」
「あの娘がね」
 まさにというのです。
「まさにね」
「この国の女王に相応しい?」
「そうかもね」
「いや、いい感じですね」
 ここで猫の一匹が一行に言ってきました、見れば公園でぽかぽかと寝ています。見れば猫のサイズのお家やお店以外にも猫が丸くなったりするのに最適なサイズの屋根があるお家や公園も存在しています。
「この国は」
「いい国なの」
「はい、とても」
 寝ながらドロシ―にお顔を上げて言います。
「昨日来たばかりですがそう思います」
「それは何よりね」
「この国ならです」
 その猫はアメリカンショートヘアでとても整った顔立ちをしています、その猫がこうドロシーに言うのです。
「ずっとです」
「住めるのね」
「はい、私の仕事は魚屋ですが」
「お店はどうしているの?」
「今は女房が仕入れに行ってまして」
 そのお魚をというのです。
「それでお魚がお店に入ったら」
「その時からなの」
「私の仕事です、それまでは」
「ここで休んでるのね」
「こうして」
 寝ているというのです。
「そうしています」
「お店にはいないのね」
「仕事があるまではここで寝ています」
 これが猫の返事でした。
「そうしています」
「マイペースね」
「猫ですから」
 だからだというのです。
「そうなんです」
「ううん、まあそれでお店がやっていけるなら」
「やっていけますよ、そして」
「そして?」
「私が働く時は女房がです」
「休むの」
「寝るなりして」
 そうしてというのです。
「交代でやっていきます」
「そうしていくのね」
「はい、もうそれは決めていますから」
「それでいいのね」
「そうです、まあ別に」
 こう言うのでした。
「困っていないので」
「いいのね」
「多分このままです」
 まさにと言うのでした。
「暮らしていけます」
「だからいいのね」
「はい、いい国に来たみたいですから」
「このまま暮らしていくのね」
「そうしていきます」
「そうなのね、まあ建国して猫が集まりだしたところだけれど」
 それでもとです、ドロシーも言いました。
「今のところはね」
「特にね」
「ええ、何もない感じね」
 ドロシーはトトにも応えました。
「別に」
「ただこれからね」
「これから?」
「この国はどうなるか」 
 それはといいますと。
「よくわからないわ」
「うん、まだはじまったばかりで」
「そう、もっとね」
 それこそというのです。
「猫が集まってね」
「国が動いていかないと」
「何も言えないわ」
 これがドロシーの読みでした。
「本当にね」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「もう一つ思うことは」
 それはといいますと。
「エリカなのよね」
「ああ、あの娘だね」
「どうにもね」
「楽天的過ぎるんだね」
「そう、猫らしいけれど」
 それでもというのです。
「あまりにもね」
「楽天的過ぎて」
「それでね」
 まさにというのです。
「かえって心配になるわ」
「けれどエリカにそれを言っても」
「仕方ないわね」
「そう、ああそした娘はね」
 まさにというのです。
「あのままだから」
「変わらないわね」
「うん、それにね」
「それに?」
「エリカはあれで政治はわかっているから」
 それでというのです。
「そして確かに思考も決断も速いからね」
「それでなのね」
「そう、だからね」
「僕も大丈夫だと思うよ」
 トトもというのです。
「その都度決断してそしてね」
「間違っていたらなの」
「間違いをあらためるし」
 それでというのです。
「いいと思うよ」
「そうなのね」
「まあ落ち着いて見ていればいいよ」
 トトはドロシーにこうも言いました。
「それでね、あとね」
「あと?」
「十時になったらエリカを起こして」
「そう、ティータイムよ」
「じゃあそれまではね」
「国を見て回りましょう」
 今の様にとです、ドロシーはトトにあらためて言いました。
「そうしていきましょう」
「それじゃあね」
「うん、この街はいい街だよ」
「いい造りだよ」
 かかしと樵も言いました。
「よく整っていてね」
「行き来しやすいしね」
「清潔にしやすいし」
「これならいいと思うよ」
「そうですね、あっという間に出来たにしても」 
 アンが二人に応えました。
「凄くよく出来ていますね」
「そうした街だね」
「きちんとまとまっているよ」
「エリカってひょっとして」
 こうも言ったアンでした。
「閃きが凄いのかしら」
「絶対にそうだね」
「そのことは間違いないね」
 かかしと樵はまたアンに言いました、その街を見回しつつ。
「閃いてここまで街を築けるから」
「かなりの閃きだと思うよ」
「そうですね、ただ閃きは凄いけれど」
 それでもとも思うエリカでした。
「問題は気まぐれでしかも続かないことですね」
「すぐにあっちこっちに気が向いてね」
「それで集中力もないんだよね」
「本当にそこが問題だね」
「エリカの場合は」
「それ凄く猫らしいですね」
 ジョージも整った街並を見て感心しつつ述べました。
「実際に」
「うん、そうだよね」
 神宝はジョージの言葉に頷きました。
「エリカは猫らしいよね」
「よくも悪くも」
 今度はナターシャが言いました。
「エリカはどの猫よりも猫らしいわ」
「そうだよね」
 カルロスも言います。
「閃きタイプで気まぐれで」
「頭はいいけれど集中力が続かないのよね」
 恵梨香は自分の名前と同じ発音のせいかこのことを残念に思いました。
「どうにも」
「そうした娘だから」
 本当にと言ったジョージでした。
「僕達から見ても猫らしいよ」
「あそこまで猫らしい猫は」
 まさにと言ったドロシーでした。
「オズの国にはいないわ」
「そうですよね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「考えてみればあの娘があれでね」
「あれで?」
「迷ったりあれこれ心配していたら」
 エリカがそうしたことをしたならというのです。
「違和感があるわね」
「確かに。凄い違和感がありますね」
 ジョージもその通りだと頷きました。
「そうしたエリカは」
「どうにもね」
「じゃあエリカはあれでいいんですね」
「結局そうなるわ、見ていていいのかしらって思うけれど」
 心配になるけれど、というのです。
「ああしたエリカでないとね」
「エリカじゃないって思いますね」
「そうなるわ、じゃあね」
「今尾ですね」
「これでいいってことね」
 ドロシーはこう言って納得しました。
「つまりは」
「そうなりますか」
「そうね、じゃあ十時までこの国を見て回って」
「そしてですね」
「十時にはエリカのところに行って」
 そしてというのでした。
「あの娘を起こして」
「そうしてですね」
「ティータイムを楽しみましょう」
「わかりました」
 ジョージはドロシーのその言葉に頷きました、そしてです。
 皆で国を見て回りました、その国はエメラルドの都の様に整った街並でそれでいて猫が暗しやすい様になっていてとても清潔でもありました。
 それで、です。アンも十時のティータイムの時にエリカに言いました。
「いい感じじゃない」
「そうでしょ」
 エリカはアンの言葉に胸を張って応えました。
「私が言った通りでしょ」
「ええ、エメラルドの都に似ていて」
「だから参考にしているの」
「そうよね」
「そしてね」
 さらに言うエリカでした。
「猫が暮らしやすい様にアレンジもしているの」
「そうよね」
「だからなのよ」
「ああした街なのね」
「そう、それでこの王宮もね」
「オズマ姫の宮殿を参考にしているのね」
「そう、ただね」
 それだけでなく、というのです。
「この王宮もアレンジしているのよ」
「猫が暮らしやすい様に」
「全部ね、だってあのままだとね」
 エメラルドの都や王宮をそのまま再現したらというのです。
「全部人間の為のものでしょ」
「猫の為のものじゃないから」
「それで根本からね」
 まさにというのです。
「アレンジしてね」
「ああなっているのね」
「そうよ」
 これがエリカの返事でした。
「ずっと言っている通りにね」
「ひょっとして貴女ずっと考えていたの」
「そうよ、エメラルドの都や王宮が猫に一番暮らしやすい場所にしたらどうなるか」 
 エリカは都にいる間にずっと見て回りながら考えていたのです。
「それでね」
「こうした街になのね」
「したのよ」
 まさにというのです。
「ここはこうすればいい、ああすればいいってずっと考えていたから」
「もう頭の中にあって」
「地図にも描いたし」
「再現したのね」
「そういうことよ、もうこれ以上はないまでに」
 まさにというのです。
「猫の為の国になっているのよ」
「貴女が長年考えていただけあって」
「そうなの、ただね」
「ただ?」
「いや、私が想像していなかった細かいところまで」
 そうしたところまでというのです。
「この国は出来ているわね」
「それは魔法の力ね」
 ドロシーがエリカに言いました、レモンティーを飲みながら。今日のお茶はレモンティーでドーナツとビスケット、そしてチョコレート菓子がセットです。
「グリンダの」
「そうしたところまで補ってくれるのね」
「そう、そうしてね」
「イメージを完全に再現してくれたのね」
「エリカの理想にね」
「そうなのね、凄い魔法ね」
 エリカはここでしみじみと思いました。
「グリンダはそんな魔法を使っているのね」
「そうなの」
「いい魔法ね、流石はグリンダね」 
 エリカは感嘆の言葉すら述べました。
「私の想像を補ってくれてまさに理想の国を築いてくれるなんて」
「そうでしょ、それで私達が見て回っている間にも」
「猫が来たでしょ」
「ええ、来ているわ」
「そうなのね、今日はね」
 エリカはお茶を飲みつつ考える顔になって言いました。
「五百人位になればね」
「いいと思っているのね」
「ええ、それで宣伝して十日後にはね」
 その頃にはというのです。
「三千人位になればね」
「いいのね」
「ええ、そう思っているわ」
 こうドロシーに答えました。
「私はね」
「そうなのね」
「それからも増えて」 
 そしてというのです。
「順調に国が発展出来ればね」
「いいのね」
「そうよ、どんな場所でも一日で成らないでしょ」
 ここでこの言葉を出したエリカでした。
「そうでしょ」
「ローマは一日にして成らずだね」 
 ジョージが言ってきました、ドーナツを食べながら。
「そういうことだね」
「ローマ?」
「外の世界にある古い街なんだ」
 ジョージはこうエリカに説明しました。
「長い歴史を経て造られていったから」
「私の国も同じってことね」
「何かが出来るまでにはね」
 まさにというのです。
「本当にね」
「時間がかかるってことね」
「そうだよ、だからエリカの国もだね」
「そうよ、すぐにはね」
「出来ないから」
「焦らないのよ」
 エリカはジョージにこうも言いました。
「絶対にね」
「そういうことだね」
「十日経ってもそしてね」
「それからもだね」
「私はじっくりとね」
「この国を治めていくんだね」
「その通りよ」
 王宮の一室で、です。エリカはジョージだけでなく皆に対して胸を張ってそのうえで答えたのでした。
「これからもね」
「そうなんだね」
「だからゆっくりと寝たりもするし」
「さっきまで寝ていたしね」
「これからもそうしていくわ」
「そこがどうかって思ったけれど」
「そうよね」
 ドロシーもアンも言います。
「それでもね」
「今はそれはエリカだって思ったから」
「それでいいってなったわ」
「逆にそうじゃないと貴女でもないし」
「そうでしょ、私は私で」
 そしてとです、エリカは二人の王女にもお話しました。
「じっくりと治めていくの」
「決断と思考はすぐで」
「間違ったら訂正していって」
「そしてよね」
「この国を治めていくのね」
「そうよ、だからね」
 さらに言うエリカでした。
「杞憂って言ったのよ」
「心配しても」
「そうだっていうのね」
「そうよ、あれこれ悩んでも」
 それでもというのです。
「物事は解決しないし進みもしないわ」
「そうだね、まあ君の場合はそれでいいね」
「それが君の持ち味だからね」
 かかしと樵はエリカを強く肯定していました、二人共飲んでも食べてもいませんが場にいてその雰囲気を楽しんでいるのです。
「即断即決でね」
「やっていったらいいよ」
「これからもね、それじゃあ気が向いたから」
 エリカは二人の言葉を受けてこうも言いました。
「お茶を飲んだらね」
「この国を見て回るんだね」
「そうするんだね」
「ええ、そうするわ」
 実際にと言うのでした。
「楽しくね」
「うん、じゃあね」
「そちらも楽しんでね」
「そうさせてもらうわ、そして何かあれば」
 その時はというのです。
「あらためるわ」
「やることはやるのも君だね」
 トトはエリカに陽気な感じで声をかけました。
「怠けないでね」
「そうよ、やることはすぐにやって」
「そしてだね」
「考えるもとをなくして」
 そしてというのです。
「気を楽にするのよ」
「そうしていくんだね」
「やることはもうすぐにやって」
「気楽になって」
「楽しく過ごすのよ」
 後に残すことはありません、それもエリカです。
「だからね」
「飲んで食べ終わったら」
「見て回るわ、それで皆はどうするのかしら」
「そうね、私達もね」
 ドロシーが応えました。
「その時はね」
「一緒になのね」
「もう一度見て回らせてもらうわ」
「わかったわ、じゃあね」
「一緒にね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆はエリカと一緒にです、もう一度猫の国を見て回りました。そうしつつです、トトは自分の足元を見て言いました。
「ううん、何かね」
「道もでしょ」
「うん、猫に合わせているね」
「そうよ、靴で歩くよりもね」
 それよりもとです、エリカもトトに答えます。
「猫の足で歩くことをね」
「念頭に置いてだね」
「道を考えているのよ」
「そうなんだね」
「そう、猫にとってはね」
「アスファルトよりも石なんだ」
「煉瓦よりもね」
 黄色い煉瓦の道よりもというのです。
「こっちの方がいい感じなのよ」
「それは僕も同じだね」
「そうでしょ、靴だとどうかわからないけれど」
 人間が履くそれは別として、というのです。
「猫の足ではこっちなのよね」
「そうだね、僕も今凄く歩きやすい感じだよ」
「山とか歩くよりもいいね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーもエリカに言ってきました。
「快適だよ」
「幾ら歩いても疲れない感じだよ」
「このことも思っていたのよ」
 道についてもというのです。
「こっちの方がいいってね」
「そうだったんだね」
「道も考えていたんだね」
「猫に相応しい道は何か」
「そこまでなんだ」
「そう、あとおトイレもね」
 これもというのです。
「考えているでしょ」
「うん、砂のね」
「あのおトイレだね」
「したらすぐに砂の中に消える様になっているね」
「魔法の砂でね」
「ああしたおトイレならいいってね」 
 その様にというのです。
「考えていてなのよ」
「ああしたトイレにしたんだね」
「そうだったんだ」
「そうよ、猫がどれだけ快適に暮らせるか」
 まさにというのです。
「そう考えていくとね」
「こうした道にもなって」
「おトイレもだね」
「人間の為のものじゃなくて」
「猫のものを考えたら」
「ああなっていったの、猫の国は猫が暮らすから」
 それだけにとです、エリカはさらに言いました。
「そこまで考えていたのよ」
「ううん、何ていうかね」
「猫が猫が暮らしやすい様に考えた猫の国だね」
「それがこの国で」
「道も当然として猫の為の道なんだね」
「木も考えたけれどどうもね」
 こちらの道はというのです。
「道にはあまりないかしらって思って」
「それで止めてなんだ」
「石の道にしたんだ」
「そうなの、石ならね」
 煉瓦やアスファルトよりもというのです。
「一番いいかしらって思っただったの。土もいいけれど」
「跡が残るからね、土は」
「皆が歩くとどうもね」
「そう、お水でぬかるみになるし」
 このことも考えてだったのです。
「それでなのよ」
「止めたんだ」
「そうだったんだ」
「そうよ」
 まさにと言うのでした。
「それで石にしたのよ」
「ううん、そこまで考えていてとは」
「エリカはやっぱり凄いね」
「これは本当に女王様かな」
「この国の主に相応しいかもね」
「私だったらこうしたい、私だったらこうする」
 こんなことも言ったエリカでした。
「ずっと考えていっての建国だから」
「それが実現してだね」
「こうなったんだね」
「そうなるわね」
 こう二匹に答えました。
「まさに」
「色々と考えていって実現した」
「そうした国ってことだね」
「そうね、それじゃあね」
 あらためて言うエリカでした。
「このまま私の国を見て回りましょう」
「そうしたいからだね」
「そうしていくんだね」
「そうよ、それが終わったらお昼だから」
 それでとも言うエリカでした。
「お昼になったらね」
「御飯だね」
「今度はそちらを楽しむんだね」
「そうするわ、それとね」
 さらに言うエリカでした。
「今日のお昼は鶏肉がいいわね」
「鶏肉なんだ」
「それを食べたいんだ」
「ええ、そちらのお料理をね」
 こう言うのでした。
「何かね」
「じゃあチキンステーキか」
 鶏肉と聞いてドロシーが言ってきました。
「チキンバーグかグリルか」
「そういったものね」
「煮たものもいいわね」
「鶏肉も色々なお料理があるから」
「だからね」
 それでというのです。
「今から色々考えているわ」
「そしてそれを考えるのもよね」
「ええ、面白いわ」
 実際にというのです。
「私もね」
「そうよね、じゃあそちらも楽しみながら」
「国を見ていきましょう」
「それじゃあね」
 お昼のお話もしつつです、皆で国の中を見ていくのでした。お国の状況はエリカにとって満足のいくものでした。








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