『オズのエリカ』




               第十幕  エリカの宣伝

 エリカ達は都に戻りました、ですがそのエリカが都に戻ってすぐに何をしたかをアンから聞いてです、オズマは笑って言いました。
「エリカらしいわね」
「そう言われますか」
「ええ、あの娘はね」
「そうした娘っていうんですね」
「いつも自分のペースでね」
 それでというのです。
「したいことをするから」
「それで寝ることもですか」
「いつものことだから」
「それでもうわかってるんですか」
「だからこう言ったの」
 何でもないという口調でというのです。
「そうだったの」
「そうでしたか」
「ええ、じゃあ皆冒険から帰ってきたし」
 それでとです、アン達にあらためて言うオズマでした。
「まずはゆっくり休んでね」
「とはいってもあまり疲れてないですけれど」
「それでもよ」
「疲れてなくてもですか」
「自分でそう思っていても実はっていうのが旅だから」
 それでというのです。
「今はね」
「じっくりと休んで、ですか」
「そう、英気を養ってね」
「じゃあ僕達も少し寝ようか」
「そうする?」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーは顔を見合わせてお話をしました。
「エリカみたいにね」
「そうしようか」
「私達はどうしようかしら」
 ナターシャは五人に尋ねました。
「一体」
「ううん、朝御飯を食べたばかりで十時はまだ先だし」
 カルロスは食事から考えだしました。
「どうしようかな」
「寝てもいいけれどね」
 神宝はエリカ達が楽しんでいるのでこれをと思いました。
「どうかな」
「何かして遊ばない?」
 恵梨香は子供らしくこう考えました。
「そうしようかしら」
「こんなに早く戻るって思ってなかったしね」
 それでと言うジョージでした。
「これから何をするかってなると考えるね」
「そうね、ここはね」
 オズマが考え込みだした五人に提案しました。
「プールで泳ぐなりしたらどうかしら」
「水泳ですか」
「それですか」
「ええ、今の時間ジュリアが泳ぐし」
 都のメイドでしかも泳ぎ上手の彼女がというのです。
「だから一緒にどうかしら」
「水泳をしてですね」
「それで身体を動かして楽しむ」
「そうしたらどうかっていうんですね」
「ええ、どうかしら」
 あらためて言うオズマでした。
「それではい、じゃあ十時までですね」
「皆で泳いで」
「そうしてですね」
「十時になったら」
「午前のティータイムを楽しんで」
 そしてとも言うオズマでした。
「その頃にはエリカも起きてくるし」
「そのエリカとですね」
「一緒にお話をして」
「そうしてですね」
「宣伝のことも聞けばいいですね」
「そうすればいいですね」
「ええ、あの娘がどういった宣伝を考えているのか知らないけれど」
 それでもと言うオズマでした。
「まずは十時まではね」
「そうして楽しんで」
「そして、ですね」
「十時になったら」
「それからですね」
「エリカのお話を聞きましょう、あとドロシーも今日から都のお仕事に復帰することになっているから」
 今回の冒険で同行出来なかった彼女もというのです。
「あの娘ともお話しましょう」
「わかりました」
 五人はオズマに笑顔で答えました。
「そうさせてもらいます」
「じゃあ今からプール行ってきます」
「そうしてジュリアさんと一緒に泳いできます」
「私もそうさせてもらいます」
 アンもオズマに言ってきました。
「プールで泳がさせてもらいます」
「貴女もなのね」
「今はそうしてです」
 ジョージ達と一緒にというのです。
「楽しませてもらいます」
「わかったわ、じゃあ皆まずはね」
「泳いできます」
 こうしてでした、旅から帰った皆はそれぞれ楽しみました。そして十時になるとエリカも起きてきてです。
 プールからも戻って王宮の中庭でティータイムとなりました、そのティ―タイムにはドロシーもいます。そうしてです。
 皆でお茶を飲みながらエリカから宣伝の方法を聞くことにしました、エリカはテーブルの上にちょこんと座って言うのでした。
「私達だけが聞こえる音で伝えるのよ」
「音で?」
「そう、オズの国中に言うのよ」
 自分の目の前にいるオズマに言うのでした。
「そうするのよ」
「放送するっていうの」
「そうよ、猫の耳は特別で」
「凄くいいことは知っているわ」
「それで私達だけが聞ける音域があって」
「その音域でなの」
「そう、オズの国中に知らせるの」
 こう言うのでした。
「猫の国が出来たってね」
「オズの国の猫全てに」
「家にいて家族と一緒にいる猫はそのまま留まるかもしれないけれど」
「それでも」
「そうよ、外で生活している猫も多いじゃない」
 外の世界では野良猫と言いますがオズの国では別に野良ではなくそうした生活をしている猫もいるということです。
「そうした猫達にも伝えるのよ」
「猫の国が出来たって」
「そう、その詳しい場所もね」
「伝えるのね」
「十日位一日数回決まった時間に言っていれば」
 それでというのです。
「オズの国中の猫の皆が知ってね」
「貴女の国に来てくれるのね」
「そうなるわ」
 絶対にとです、エリカは断言しました。
「それでよ」
「貴女の国に猫がどんどん来て」
「それで住む様になるわ」
 エリカはまたしても断言しました。
「そして私がその国の女王になるのよ」
「そんなに上手くいくかしら」
 ドロシ―はエリカの考えをここまで聞いて首を傾げさせて言いました。
「果たして」
「あら、私の考えが間違っているっていうの」
「いえ、貴女何かいつもね」
 それこそとです、ドロシーはエリカに言うのでした。
「何でも自分の考え通りにいくって思っているわね」
「それがどうかしたの?」
「世の中。オズの国でも何時何があるかわからないわよ」
 ドロシーはこのことを言うのでした。
「だからね」
「それでなの」
「そう、それでね」
 だからだというのです。
「そんなに上手くいくとは思えないけれど」
「別に何があってもいいわよ」
 エリカはその何が起こるかまでは考えていないですがそれでもこう言ったのでした。
「そんなの私がすぐに知恵を出して解決するから」
「それでなの」
「私の知恵は凄いのよ」
「そう言える根拠は?」
「私が言っているのよ」
 それこそが根拠だというのです。
「だったらね」
「それが根拠なのね」
「そう、まあ何が起こっても」
 それでもというのです。
「大丈夫よ」
「そうだといいけれど」
「まあ僕達もいるからね」
「皆で力を合わせるといいよ」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーはこう言ってきました。
「何があってもね」
「それで乗り切ったらいいよ」
「皆その時は私の知恵に従うのよ」
 エリカは二匹の獣にもこう言うのでした。
「そうすればすぐに解決するわ」
「君がそう言うからだね」
「間違いないんだね」
「そうよ、すぐでそれで確実にね」
 もう一つ言い加えるエリカでした。
「解決するから」
「まあそう言うならね」
「まずは君に従うよ」
 二匹の獣も頷きました、そしてです。
 エリカは早速猫だけが聞こえる音域で王宮の放送室からオズの国全てに伝えることにしました、そして早速です。
 エリカが言った言葉を録音して一日数回ずつ包装することにしました、それで録音して最初の放送をしてからでした。
 エリカは一同に胸を張ってです、こんなことを言いました。
「さて、これで徐々にでもね」
「貴女の国になのね」
「猫が来るわよ」
 アンにも言います、毛づくろいをしながら。
「一匹また一匹とね」
「そうなるのね」
「そうよ、まあオズの国中から皆が来るから」
 それでというのです。
「集まるには少し時間がかかるわね」
「そのことはわかっているの」
「物事には時間がかかる場合もあるでしょ」
 落ち着いた声でアンに言います。
「それでよ」
「だからなの」
「そう、そうした場合は待っていればいいのよ」
「果報は寝て待て?」
「寝ながらね」
 文字通りという感じで今度は欠伸をして言ったエリカでした。
「そうもしていればいいのよ」
「何かそこでそう言うのもね」
「私だっていうのね」
「らしいわね」
「そうでしょ、だったらね」
「今は待つのね」
「そうするわ」
「それで何処で待つのかな」
 このことを尋ねたのはジョージでした。
「それで」
「ここか王宮でよ」
「猫の国の王宮だね」
「そこで待つわ、ただこの都も王宮も行き来して」
「うん、女王になるからね」
「これからはそうしていくわ」
「そうしないとね、やっぱり」
 ジョージもエリカはこれからはそうすべきと答えました。
「君も女王になるんだしね」
「そのことはわかっているよ」
「だといいけれどね」
「もう国への道はわかっているし」
「あの辺りもよく歩いているから」
「だから簡単に行き来出来るわ」
「猫用の車か気球用意しておくわよ」
 オズマがそのエリカに言ってきました。
「そうするけれど」
「あら、そうしてくれるの」
「ええ、ビリーナにもそうしてるし」
「そうだったの」
「だって女王は自分の国にいることも多くなるから」
 その国の主にもなればというのです。
「だからね」
「それでなの」
「そう、だから貴女もね」
「この都から私の国に行くことも多くなるから」
「用意しておくわよ」
「車か気球か」
「どちらかをね」
「それでどちらをなの?」
「どちらでもいいわよ、貴女の好きな方をね」
「じゃあ気球をお願いするわ」
 エリカはオズマにこちらをと言いました。
「空の旅で気楽にね」
「行き来したいのね」
「ええ、そうしたいから」
 だからだというのです。
「それでお願いするわ」
「わかったわ、じゃあ気球の行き先はビリーナが鶏の国とこの都に行き来に限定しているみたいに」
「この都と私の国の行き来だけになの」
「限定しておくわね」
「ええ、他の空の旅は他の気球や飛行船で行くし」
 それでというのです。
「それでいいわ」
「気球で他の場所に行ったりもするから」
「今は空の結界も張っていてオズの国はお空からも出入り出来ないけれど」
 それでもというのです。
「他の場所に行ったら迷うし」
「それじゃあね」
「ええ、ルートは決めておくわね」
「そちらもお願いね」
「さて、後はね」
 さらに言うオズマでした。
「十日位なの」
「そうよ、放送してくれたら」
「それでいいのね」
「これで充分な宣伝よ」 
 エリカはオズマに言い切りました。
「もうどんどん国民が来てくれるわ、それにね」
「それに?」
「後は国の評判が立てば」
 それでというのです。
「それも宣伝になって」
「猫が集まるのね」
「そうなるから」
 それでというのです。
「もう何の心配もいらないわ」
「随分ラフな宣伝ね」
「そう?私はかなり効果的で周到なね」
「宣伝だと思ってるの」
「そうよ、十日宣伝してね」
「後は国の評判が立つと」
「それが最高の宣伝になるわよ」
 まさにそれこそがとです、オズマに言うエリカでした。
「これが私の考えている宣伝なの」
「そうだったの」
「ええ、絶対に素敵な国になるからね」
「そう言うのはあれよね」
 ここでまたドロシーがエリカに言いました。
「貴女が言っているからよね」
「そうよ、私が言っているから」
 それ故にというのです。
「間違いないわよ」
「ううん、私は貴女程楽観的じゃないから」
「貴女自分で楽観的って言ってたじゃない」
「それでも貴女よりはよ」
 まだというのです。
「楽観的じゃないわ」
「そうなの」
「そうよ、貴女は本当に楽観的過ぎるっていうか」
「何があっても何とでもなるわよ」
「そう考えているから」
「オズの国一番の冒険家のあんたに言われるなんてね」
 エリカとしてはでした、ドロシーはその冒険の中で数多くのピンチを乗り越えてきています。それで何があっても大丈夫だとは思っています。
 ですがそのドロシーでもです、エリカよりはというのです。
「心外と言えば心外ね」
「だから貴女のその楽韓はね」
「あんた以上だっていうのね」
「幾ら何でも凄過ぎるわ」
 こうも言うのでした。
「本当に大丈夫かしらって思うわ」
「だからそれがね」
「心配性なの」
「私は何時でも平気で進んでいるじゃない」
「私と一緒に冒険に出ている時も」
「そうよ、そもそもあんたが思うピンチもね」
 ドロシーが思うそれもというのです。
「私にとっては全然違うし」
「ピンチじゃないのね」
「他の人から見てピンチでも」
 エリカにとってはです。
「私にとっては只のイベントよ」
「平気なのね」
「だってあのウィンキーにいた片目の魔女も」
 ドロシーが最初にオズの国に来た時の最大のピンチと言ってもよかったです、本当にこの時はどうなるかでした。
「見ていればすぐにわかるし」
「お水が苦手だって」
「そうよ、傍に何故お水がないか」
 そのことをというのです。
「普通生きていたらお水が絶対に必要なのにね」
「傍にお水がないなら」
「すぐにわかるしカリダだってね」
 この猛獣もというのです。
「あの獣小回り利かないし大き過ぎて木にも登れないから」
「木から木に逃げるの」
「それで平気じゃない。そもそもオズの国は誰も死なないのよ」
「それならなの」
「その時点で心配無用だし」
 このことがあるからだというのです。
「何の心配もいらないわよ」
「誰も絶対に死なないなら」
「そうよ、それで何心配が必要なのよ」
「ピンチもなの」
「ピンチじゃないわよ」
 全く、というのです。
「だから私は何があってもね」
「楽観してるの」
「そうよ、じゃあね」
「猫の国のことでも」
「何があっても平気よ、じゃあ明日猫の国に行ってみて」
 それでというのです。
「試しに何匹来ているか見てみるわ」
「そうするのね」
「そうね、十匹来ていればいいわね」
「十匹でなの」
「まあ最初はそんなものでしょ。一匹もいなくてもね」
 例えそうでもというのです。
「気長にね」
「待っていればいいのね」
「そうよ、ゆっくりとね」
 こう言うのでした。
「そうしていればいいのよ」
「本当に焦らないわね」
「焦る時は焦るけれど」
 それでもというのです。
「今はそんな時じゃないから」
「焦らないのね」
「全然ね」
 そう言いつつ丸くなります、明らかに寝る動作です。
「そうよ、じゃあ今からね」
「寝るのね」
「お昼御飯まで少し時間があるから」
「それまで寝るのね」
「ええ、そうしてね」
「お昼になったら食べるのね」
「お昼はオマール海老がいいわ」
 この海老を食べたいというのです。
「茹でたのとフライね」
「その二つをなの」
「食べたいわ」
 こう言うのでした。
「お昼はね」
「そうなのね」
「贅沢にいきましょう」
 是非にとも言うのでした。
「そうしましょう」
「オマール海老はオズの国では贅沢かな」
「別にだよね」
 臆病ライオンも腹ペコタイガーもここで言いました。
「普通に誰でも食べてるよね」
「そうだよね」
「美味しいものは贅沢なのよ」
 これがエリカの考えでした。
「私が思うにはね」
「だから贅沢なんだ」
「そう言うんだね」
「そうよ、色々なオマール海老の料理をね」
 茹でたりフライにしたりしてです。
「食べたいわ」
「わかったよ、じゃあね」
「皆で食べようね」
「そういうことでね」
 エリカはこう言ってこの日はオマール海老の料理となりましたがそのオマール海老についてでした。
 オズマはエリカにです、お食事の時に言いました。
「私もオマール海老好きだけれど」
「それはいいことね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「私が一番好きなのは」
 オマール海老のお料理の中でというのです。
「カルパッチョだけれど」
「あら、そっちなの」
「貴女はどうなの?」
「私は何でもよ」
 エリカの場合はそうだというのです。
「カルパッチョも好きだしアヒージョもパエリアもね」
「そういったものもなの」
「フライだって好きだしスープもね」
「今全部出ているけれど」
「だからこれだと思ったものをね」
 まずはというのです。
「食べているのよ」
「今も迷わないのね」
「そうよ」
 こうオズマに言うのでした。
「本当にね」
「もうすぐに食べるものを決めるのね」
「これだってね」
 そのオマール海老をあっさりと塩茹でにしたものを食べます、あっさりとして非常にいい味加減です。
「もうね」
「迷わないで」
「そう、迷わずに」
 それでというのです。
「即座に食べるのよ」
「成程ね」
「お腹一杯になるまでね」
「食べてからあれ食べればよかったとか思わない?」
 このことを尋ねたのはジョージでした。
「そうは」
「思わないわ」
「それはどうしてかな」
 ジョージはフライを食べつつエリカに尋ねました。
「よくそう思う時があるけれど、僕は」
「だって次に食べればいいじゃない」
 あっさりと答えたエリカでした。
「今食べられなくても」
「次の機会になんだ」
「そう、だったらどうしてね」
「食べればよかったって思うとかないんだ」
「全然ないわよ、私後悔もしないのよ」
 迷うこともなければです。
「また次の機会にね」
「食べればいいんだね」
「それで間違えてもね」
 選択、それをです。
「やり直せばいいしね」
「取り返しのつかないこともあるでしょ」 
 アンはエリカにあえて厳しいことを言いました。
「そうでしょ」
「そうね、そうした時はね」
「どうするの?」
「埋め合わせをするのよ、どうしてそうなったのかそしてどうすればいいのかを冷静に考えてね」
 そうしてというのです。
「決めればいいのよ」
「そうしたものなの」
「ええ、というかね」
「というか?」
「オズの国では何でもやり直せるでしょ」
「それはね」
 アンもその通りだと答えました。
「そうした国よ」
「取り返しのつかないことでもね」
「何とかなる国よ」
「お伽の国だからね」
「誰も死なないし」
「そう、生きているならね」
 それならというのです。
「取り返しのつかないことも何とかなって」
「やり直せるわね」
「ええ、生きているならね」
「だからなのね」
「二度とそんなことにならない様にね」
「やり直すのね」
「そう考えて決めて」
 そうしてというのです。
「やり直すのよ」
「そうしていけばいいのね」
「そうよ、私も間違えるわよ」
 このことは自分でもわかっています。
「けれどそれはそれでね」
「やり直すのね」
「それでくよくよしないの」
「後悔もしなくて」
「間違えることもあるってわかっているし」
 最初からこうも考えているからだというのです。
「それでね」
「すぐに動くのね」
「そうよ、本当に別にね」
「後悔したりくよくよしないで」
「それでまた考えて決めて」
 そのうえでというのです。
「動くのよ」
「それだけなのね」
「だってああすればよかったって思ったら」
「それでどうやり直すか」
「そう至るのが当然じゃない」
「その考えは凄いわね」
 アンも感心することでした。
「貴女のそうした考えは立派よ」
「しかも行動に移すでしょ」
「絶対にね」
「それが私なの、だから今の私の国の宣伝もね」
 それもとです、今度はフライを食べて言うエリカでした。
「若しこれで誰も来なかったら」
「その時はなの」
「別の方法を考えてやってみるわ」
 そうするというのです。
「それならそれでね」
「その考えはいいと思うわ、私も」
 ドロシーも頷くことでした、ドロシーはオマール海老のスープを飲んでいます。味付けはトマトが中心でとても美味しいです。
「本当に」
「そうでしょ」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「王国に行った時にどうなってるかよね」
「宣伝が成功しているか」
「そのことが気になるわ」
 ドロシーにしてもです、このことは。
「どうかしらね」
「それなりに集まってきてるわ、それにね」
「来ないならなの」
「十日して来ないなら」
 それならというのです。
「またね」
「別の方法をなのね」
「やるだけよ」
「その辺り本当に前向きね」
「そして後悔もしないのよ」
「そういうことなのね」
「それじゃあね」
 さらに言うエリカでした。
「明日行きましょう」
「それじゃあね」
「明日はね」
 オズマもその明日のお話をします。
「かかしさんと樵さんも到着しているから」
「だからなのね」
「ええ、私は都で政治を執るから皆はね」
「私の国に行くのね」
「飛行船を出すから」
 それでというのです。
「それでね」
「すぐになの」
「そう、あの国に行って」
「見ればいいのね」
「そうすればいいわ、それで貴女一人で行き来する時は」
「これからはね」
「貴女用の車か気球を用意するから」 
 前にお話した様にです。
「それを使ってね」
「ええ、移動するわね」
「そうしてね」
「それじゃあね」
 エリカも頷きました、今度はカルパッチョを食べます。見れば恵梨香もカルパッチョを食べていますが。
 そこで恵梨香はこんなことを言いました。
「伊勢海老に似ているけれど違うのよね」
「オマール海老はね」
「ええ、味も似ているけれど違う海老なのよね」
「鋏があるからね」
 神宝がフライを食べつつ言ってきました。
「だからね」
「そこが違うよね」
 カルロスはパエリアを食べています。
「味は似ていても」
「日本でもオズの国でも伊勢海老を食べたことがあるけれど」
 ナターシャはスープを飲んでいます。
「味は似ていてもそこが違うのよね」
「うん、オマール海老は鋏があるから」
 ジョージは今は塩茹でを食べています。
「そこがやっぱり違うよ」
「何ていうか鋏があると」
 エリカも言いました。
「それで随分変わるのよね」
「そうなんだよね、今回結構オマール海老食べてる気がするけれど」
 ジョージはエリカにあらためて言いました。
「やっぱりね」
「オマール海老は鋏ね」
「それが特徴だね」
「そうなるわね、さてデザートは」
「ケーキよ」
 オズマが答えました。
「チョコレートのケーキがあるから」
「それを楽しめばいいのね」
「ええ、そうしてね」
 オズマは笑顔で言いました、そして皆でそちらも楽しみました。そうして次の日かかしも樵も来てでした。
 皆で飛行船でエリカの猫の国まで行きました、オズマは言った通りに王宮でオズの国全体の政治を見ました。
 そしてです、エリカの国はといいますと。
 もう二百匹位の猫が来ています、エリカはそれを見て言いました。
「結構来てるわね」
「二百匹はいるわね」
 アンもその猫達を見て言います。
「それ位ね」
「そうね、上々よ」
「一日で二百匹だと」
「ええ、いい感じよ」
 アンに満足している調子で答えます。
「それに今も来てるし」
「今二匹来たわね」
「この調子でね」
「十日の宣伝を行って」
「それが終わった時に三千位いたら」
 それ位いたらというのです。
「まずは成功よ」
「三千なの」
「今日で三百匹来て」
「それで宣伝が終わってなの」
「暫く経って三千匹いれば」
 それならというのです。
「もうね」
「満足すべきなのね」
「そうよ」
 こう言うのでした。
「それでね」
「貴女はそう考えているのね」
「オズの国の猫ってどれだけいるか知らないけれど」
 それでもというのです。
「そこからまず三千匹来たら」
「それでなの」
「いいと思うわ」
 こうも言ったエリカでした。
「本当にね」
「のんびりした考えね」
「だから焦ってもね」
 それでもというのです。
「仕方ないでしょ」
「だから焦らないの」
「そうよ、じゃあ今からね」
 エリカは一行の前にすたすたと出ました、そうしてです。
 その猫達の前に出て言いました。
「皆よく来てくれたわね」
「あっ、エリカさんお話は聞きました」
「今からここに猫の国を築かれるんですよね」
「そうですよね」
「そうよ、それで皆に宣伝したのよ」
 こう猫達に言うのでした、見ればシャム猫にスコティッシュフォールドにペルシャ猫と色々な種類の猫がいます。勿論日本の猫もいます。
「ここに国が出来たから来てってね」
「はい、そうですね」
「それでこちらに来ました」
「それではですね」
「これからここに住んでいいんですね」
「そうよ、国の一切は私が治めるから」
 女王である彼女がというのです。
「そうしてね」
「はい、それじゃあ」
「これから宜しくお願いします」
「この国を治めて下さい」
「そうさせてもらいます」
「さて、あんたはお魚売って」
 白いマンチカンを見て決めました。
「市場で頑張ってね」
「わかりました」
「お魚屋さん向いてそうだから」
 エリカの見たところです。
「そうしてね」
「そうさせてもらいます」
「あんたは役場にいて」
 綺麗な毛並みのアメリカンショートヘアにも声をかけました。
「それで役人として働いてね」
「では」
「それでね」
 エリカは猫達にそれぞれその場で何をすればいいのか告げました、それが終わってから各自にお部屋やお店をアレンジする魔法のステッキを配ってです。
 自分は王宮に入ってそのステッキを使いました、すると猫の絵や大理石の像で飾られ爪とぎの板や遊ぶ場所がふんだんにある王宮というよりはアスレチックの場所みたいなものになりました。
 その宮殿を見てです、ジョージは言いました。
「あの、何かね」
「素敵な宮殿でしょ」
「何かアスレチックのコーナーみたいだけれど」
「だってこうだったらね」
「遊べるからなんだ」
「こうしたのよ」
 エリカはジョージに答えました。
「そうなのよ」
「猫が遊べる様になんだ」
「そうよ、よく寝てよく遊ぶ」
 エリカはジョージにこうも言いました。
「そしてよく食べる」
「それが猫だからだね」
「そう、猫だからよ」
 それでというのです。
「宮殿もこうしたのよ」
「そうなんだ」
「それで色はね」
 その色はといいますと。
「この通りよ」
「赤と白、青が多いね」
 宮殿のあらゆるものがその三色で飾られています」
「そうなってるね」
「これはね」
「うん、どうしてこの三色なのかな」
「それはあれよ、私が前にいたアメリカの色よ」
「あっ、そういえば」
 ここでその三色に気付いたジョージでした。
「これ星条旗の色だね」
「それがいいって思ったのよ」
「アメリカを思い出して」
「そう、それでね」
 そのうえでというのです。
「この配色にしたのよ」
「アメリカを思い出して」
「そうなの、最初はエメラルドの都みたいにね」
「緑にしようと思ったんだ」
「けれどそれだと芸がないと思って」
 それでというのです。
「アメリカの配色にしたのよ」
「そうなんだね」
「黄色にしたらウィンキーだったね」
 そのウィンキーの皇帝である樵が言ってきました。
「そうだったね」
「ええ、けれどそれもね」
「同じになるからだね」
「独創的でいきたいから」
 エリカとしてはです。
「その色にしたの」
「成程ね」
「うん、大きさも猫に合わせているしね」
 かかしは宮殿のサイズについて述べました。
「エリカにとっては住みやすいね」
「そうした宮殿でしょ」
「かなりね」
「それでここにいてよ」
 皆を王の間に案内するとそこには玉座があります、黄金で飾られたその玉座にちょこんと座って言ったエリカでした。
「私は政治を行うのよ」
「人みたいにどっしりと座らないね」
 このことを言ったのはジョージでした。
「オズマ姫みたいにレディーの座り方もしないし」
「この通り猫座りよ」
「そうだね」
 四本の足で座っています、玉座の席の上に。
「そうしているね」
「それでこうもするわ」 
 寝転がりもしました。
「そうしてね」
「政治をするんだね」
「そうするわ、それで今日はね」
「今日は?」
「とりあえず今来ている猫達の役割を決めたから」
「それでなんだ」
「終わったわ」
 まさにというのでした。
「今日の政治はね」
「じゃあどうするのかな」
「やることが終わったらね」
 それならというのです。
「寝るわ」
「そうするんだね」
「何かあったら起こしてね」
 今度は玉座の上で丸くなって言うのでした。
「そうしてね」
「それでまた明日なんだ」
「政治をするわ」
「のんびりしているわね」
 アンはそのエリカに言うのでした。
「随分と」
「だから別にね」
「焦る必要がないから」
「それでよ」
 だからだというのです。
「焦らないのよ」
「いつも通りってことね」
「私にとってのね」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
 さらに言うのエリカでした。
「皆はどうするのかしら」
「そうね、今日はここに留まろうかしら」
 アンは少し考えてからエリカに答えました。
「そうしてね」
「そのうえでなの」
「ええ、この国を見て回るわ」
 そうするというのです。
「これからね」
「じゃあそうしてね」
「じっくりと見て回って」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「楽しむのね」
「猫の国がどういった国か見させてもらうわ」
「まだ出来たばかりだけれどね」
「それでも見させてもらうわ」
 アンはエリカに答えました。
「これからね」
「そうなのね、じゃあね」
「ええ、今から皆で見て回るわ」
「それで何処で寝るのかしら」
 エリカはアンにこのことも尋ねました。
「王宮でかしら」
「ううん、全部猫のサイズでしょ」
「猫の宮殿だからね」
「だったらね」
 それならというのです。
「人間には合わないから」
「止めるのね」
「国の外でテントを出して」
 そしてとです、アンはエリカに言いました。
「休むわ」
「そうするのね」
「だってここのベッドもね」
「ええ、私が出したのはね」
 王宮の中にあるそれはといいますと。
「やっぱりね」
「猫用よね」
「その大きさよ」
「だったらね」
「いや、ちょっと待って」
 アンがまた言おうとしたところでエリカが逆に言いました。
「私が出すわ」
「出すの」
「ええ、人間用の客室と寝室もね」
「そうしてくれるの」
「ここには人が来ることも多いわね」
 アンとのお話でこのことに気付いたからです。
「だったらね」
「人用の客室や寝室もなのね」
「用意するわ、こうしてね」
 ステッキを一振りしました、そのうえでまたアンに言いました。
「三十人分位用意したわ」
「それじゃあね」
「ええ、皆そこで休んで。完全に人用のフロアを用意したから」
 それでというのです。
「そうしたから」
「人間用の?」
「そう、宮殿の地下にね」
「そうしてくれたの」
「地下でもいいかしら」
「ええ、私としてはね」
 特にと答えたアンでした。
「宮殿なら」
「ちゃんと内装も考えてあるから安心してね」
「それで人は地下になのね」
「宮殿に来た時はいてもらうわね」
 こう言ってでした、アン達をその宮殿の地下にも案内するのでした。








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