『オズのエリカ』




               第七幕  グリンダに言われる前にも

 一行はグリンダのお城に近付いていました、アンはその中でふとエリカに言いました。
「あんた猫の国を建国するのよね」
「その国の女王になるわ」
 エリカはアンに胸を張って答えました。
「ずっと言っている通りにね」
「そうよね、ただもうね」
「オズの国にはもう猫の国があるっていうのね」
「ええ、考えてみたらね」
 一行の先頭を行くエリカに言うのでした。
「そうじゃない」
「あれは猫の人の国でしょ」
 エリカはアンにこう答えました。
「猫は猫でもね」
「あんたが言うのは猫なのね」
「そうよ、猫の人じゃないのよ」
 このことを言うのでした。
「私が言うのはね」
「そういうことなのね」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「私も建国するっていうのよ」
「そういうことなのね」
「ええ、猫よ」
 また言うエリカでした。
「このこと宜しくね」
「わかったわ、オズの国は色々な動物がね」
「そのままだったりね」
「人だったりするから」
「猫も同じでしょ」
 つまりエリカ達もというのです。
「猫の人と猫がいるのよ」
「犬や狐と同じでね」
「だから私はね」
「猫の人の国じゃなくて」
「猫の国を建国したいのよ」
「そういうことね、じゃあそのことを」
「今からグリンダの許可を得に行くのよ」
 彼女の宮殿まで行ってです。
「そうするわよ」
「よくわかったわ」
「そういうことでね」
「それじゃあグリンダのお城に行きましょう」
「あと少しだよ」
「今日中に着くよ」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーも言ってきました。
「グリンダのお城にね」
「夕方位に着くかな」
「お城っていうかあれは」
 ジョージは臆病ライオン達の言うことを聞いて述べました、赤い森や家々が遠くに見えるカドリングの国の中を進みながら。
「宮殿だね」
「うん、街じゃないからね」
 神宝もこのことには同意でした。
「あれは宮殿だね」
「グリンダさんの宮殿ね」
 ナターシャもこう言いました。
「あれは」
「あの人の宮殿って街に囲まれてないからね」
 カルロスはグリンダの宮殿の姿を思い出しています、その中にはあの赤い軍服の奇麗な女の人達ばかりの衛兵さん達もいます。
「街は宮殿の傍にあって」
「城下町でもないのよね」
 恵梨香は日本の街のことをお話しました。
「言うなら門前町に近いかしら」
「前から思っていたけれど日本の街ってお城じゃないわね」
 エリカはここでこのことを指摘しました。
「砦みたいなお城の周りに街があるのね」
「そうね、私もわかったわ」
 アンもエリカに応えて言います。
「日本の街は他の国の、オズの国の街ともね」
「違ってね」
「壁に囲まれてないのよね」
「それ自体がお城じゃないわね」
「そうなのよね」
「日本では」
「そうそう、僕日本に来てあれって思ったんだ」
 ジョージはエリカにも言いました。
「城下町って聞いてね」
「城塞都市じゃなくて」
 ナターシャはジョージに続きました。
「城下町なのって」
「壁に囲まれてなくてお城を囲んでいる街って」
 カルロスも微妙な感じです。
「日本だけじゃないかな」
「グリンダさんの宮殿の傍の街も壁に囲まれてるよ」
 神宝はその街のことをお輪しました。
「今の外の世界は城壁はないけれどね」
「けれど街はそうしたものだっていう考えはあるから」
 ジョージのお国のアメリカでもです。
「日本はそうじゃないんだって聞いてこれも日本なんだって思ったよ」
「日本ってそうしたことからも不思議な国ね」
 アンの口調はしみじみとしたものでした。
「そんな街なんてね」
「けれどそんな街も面白いわね」
 エリカはこう言いました。
「私も猫の国はそうしてみようかしら」
「城下町にするの?」
「どうかしらね、気が向いたらね」 
 その時はとです、ジョージに答えるのでした。
「そうしようかしら」
「城下町にするんだ」
「壁は必要かしら」
 街を囲んで街をお城にしているそれはというのです。
「やっぱり」
「じゃあオズの国でもそうである様に」
「外の世界と同じ街になるわね」
「エリカも元々アメリカにいたしね」
「街は壁に囲まれているお城って思ってるわ」
 この認識は強くあります。
「私にしてもね」
「じゃあどうしてもだね」
「街があったら」
 それこそというのです。
「城壁で囲んで」
「国にもしたいんだね」
「そうも思っているけれど」
 それはというのでした。
「どうかしら」
「まあそこはエリカの好きにしたらいいわ」
「私の国になるから」
「そうしたらね」
「じゃあそうするわね、しかしオズの国には日本もあるけれど」
 この国のお話もエリカでした。
「面白い街だったわ」
「あの街は大阪なのよ」
 アンが言ってきました。
「日本のね」
「そのことは聞いてるわ」
「それでああしてね」
「たこ焼きとかお好み焼きがあって」
「通天閣や住吉の大社があってね」
「大阪城もあるのね」
 このお城もというエリカでした。
「随分と恰好いい塔がある」
「そうなのよ」
「あのお城も街に囲まれてるしね」
「昔は違ったそうだけれどね」
「あら、どうだったの?」
「昔はもっともっと大きなお城で」
 それでというのです。
「日本ではそうそうなかったそうだけれど」
「城塞都市だったの」
「そうでもあったらしいけれど」
「今はああなの」
「そう、小さくなってね」
「街に囲まれているのね」
「そうなったのよ、あと多分あんたが言う塔は」
 それはと言うアンでした。
「お城の真ん中にある立派な建物よね」
「あの青緑の屋根のね」
「その青緑は瓦で」
 アンはエリカにさらにお話していきます、赤い世界の中に囲まれている黄色い煉瓦の道を進みながら。
「あの建物は天守閣っていうのよ」
「あっ、そういえば宮殿で一番見事な塔は天主っていうわね」
「日本ではそう呼ぶの」
「天守閣って呼ぶのね」
「ええ、あれは天守閣よ」
 エリカが塔と呼んだそれはというのです。
「大阪城のね」
「そうだったのね」
「私もあの天守閣好きなのよ」
「恰好いいし奇麗よね」
「まさに日本の芸術よね」
「本当にそう思うわ」
 エリカにしてもでした。
「私だってね」
「そうよね」
「ついでに言うと天守閣の一番上に左右にあるお魚ね」
「ああ、あれね」
「あの金色のお魚だね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーがそのお魚について述べました。
「あれ恰好いいよね」
「迫力あるわね」
「私あれも好きだけれどね」
「あれは鯱っていうんだって」
 ジョージは日本人の恵梨香を見つつエリカに答えました。
「空想上のお魚らしいよ」
「実際にはいないの」
「うん、火除けのものだっていうよ」
「ガーゴイルみたいなものね」
「日本で神社の狛犬やシーサーだね」
「そうしたものなの」
「そう、火除けまあ魔除けって言ってもいいかな」
 鯱はというのです。
「あれはね」
「成程ね、何かね」
「何か?」
「あのお魚食べたら」
 こんなことを言ったエリカでした。
「美味しくないって思ってたけれど」
「あれは確かにね」
「美味しくなさそうでしょ」
「そうだね」
 ジョージも同意でした。
「見たところね」
「だから別にいいわ」
「エリカは興味ないんだ」
「どうでもいい感じね」
「火除けになるのに」
「それでも私としてはよ」
 あくまで自分の考えを言うエリカでした。
「あのお魚はね」
「どうでもいいんだ」
「そうよ、お魚は何といってもね」
「美味しいかどうかなんだ」
「何か食べても美味しくないなら」
「興味ないんだ」
「その通りよ」
「あれっ、けれど不格好なお魚こそ美味しいよ」
 腹ペコタイガーはとても食いしん坊なのでこのことがよくわかっています、実際にお魚もかなり食べてきています。
「鮟鱇でも河豚でもね」
「だからなの」
「鯱も美味しいかも知れないよ」
「そうなのね」
「若し鯱を食べる機会があったら」
 その時はというのです。
「エリカも食べてみたらいいよ、一口でもね」
「それで実際に美味しかったら」
「どんどん食べればいいじゃない」
「まあね、食べないうちからまずいって思うのはよくないね」
 臆病ライオンは親友の腹ペコタイガーに近い考えでした。
「やっぱりね」
「それじゃあ私も」
「鯱を食べる時はね」
「まずは食べてみる」
「そうすればいいんじゃないから」
「そうなのね」
「まあ鯱は大きいししかも強そうだから」
 ここでこうも言った臆病ライオンでした。
「逆にこっちが食べられるかも知れないけれど」
「食べるつもりでも」
「そうなるかも知れないけれどね」
「海であんなお魚に出会ったら」
 それこそとです、アンは思うのでした。
「ちょっと怖いしね」
「そうね、私だったら食べられるかもね」
「それも一口でね」
「それは遠慮するわ」
 エリカはかなりはっきり言いました。
「絶対に」
「そうよね」
「食べるのは好きでも食べられるのは嫌いよ」
「自分がそうなることはね」
「嫌いよ」
 こうアンに答えました。
「どうしてもね」
「そうよね、それじゃあね」
「食べられるのは御免よ、鯱だけじゃなくて」
「他のお魚にもなのね」
「どんなものにもね」
「ううん、そう言うけれど」
 アンはエリカの今のお話にどうかというお顔になりました、それで彼女にこんなことを言ったのでした。
「それならね」
「何よ」
「貴女昔魔法使いさんの豚食べようって言ったわね」
「本気で食べたかったわ」
「それで騒動も起こしたし」
「そんなこともあったわね」
「あの時のことを思うと」
 どうにもというお顔で言うアンでした。
「随分勝手ね」
「駄目かしら」
「ええ、どうかとは思うわ」
「いいじゃない、私は私でね」
「そう思うならなのね」
「はっきり言うわ」
 実際にというのです。
「こうしてね」
「やれやれね、けれどね」
「けれど?」
「それが貴女ってことね」
「そうよ、私は私でね」
「勝手でもなの」
「私だからいいって思っているわ」
 悪びれずに言うエリカでした、それも全く。
「何も疚しいことなくね」
「やれやれね、けれどね」
「けれど?」
「いや、貴女ね」
 どうにもと言うのでした。
「その性格はちょっと女王向きじゃないわね」
「そうかしら」
「そこまで自分勝手だとね、私よりずっとじゃない」
「あんたも我儘っていうの」
「自覚しているわ、それでお父様やお母様にも注意されるし」
「あんたが我儘だと私は何なのよ」
「だから言うのよ、もっとね」
 アンはエリカに結構真剣に注意しました。
「我儘勝手は抑えないとね」
「そんなこと考えたことないわよ」
「やれやれね」
「それだと女王には向かないっていうのね」
「そうよ、その性格何とかしなさい」
「そんなつもりはないわ」
 これまたはっきりと答えたエリカでした。
「全くね」
「だからそれだとね」
「女王には向かないのね」
「もっとよ」
 それこそとです、また言うアンでした。
「オズマ姫みたいにね」
「オズマね」
「グリンダさんもそうだけれど」
「私は私よ」
 あくまでという返事でした。
「だったらよ」
「そのままでいるのね」
「女王になってもね」
「やれやれね、これじゃあ建国しても」
「やっていけるかどうか?」
「不安よ」
 実際にこう思うエリカでした、そうしたお話もしながらでした。一行はお昼も食べてどんどん先に進んでです。
 遂にグリンダの宮殿に着きました、その立派な宮殿の前には赤い軍服と乗馬ズボンの衛兵さん達がいました。
 エリカその乗馬ズボンの軍服、金モールで飾られ黒いブーツのその彼女達を見てふと首を傾げさせて言いました。
「前は膝までのスカートだったんじゃ」
「今日はこの服なの」
「どうしてズボンになっているの?」
「今日は閲兵式があったからよ」
 兵隊さんの一人がエリカに答えます。
「だからなのよ」
「それでなの」
「馬にも乗ったからなの」
「乗馬ズボンなのよ」
「そうなのね」
「このズボンだとね」
 太腿のところがかなりゆったりしたものになっているズボンならというのです。
「本当にね」
「楽なのね」
「そうなの」
「馬に乗る時はそうなの」
「そうよ。というかスカートだと」
 普段着ているそれではといいますと。
「馬に乗っているとめくれるから」
「ズボンでないと駄目なのね」
「それでいいのがね」
「乗馬ズボンってことね」
「そうよ、それでね」
 エリカにさらにお話するのでした。
「今日はズボンだったのよ」
「そういうことね」
「それで今回は何の御用かしら」 
 兵隊さんはエリカに自分から尋ねました。
「一体」
「ええ、建国の許可を貰いに来たの」
「グリンダ様から」
「そうよ、私猫の国を建国したくて」
 それでというのです。
「グリンダに会ってね」
「あの方に許可を戴きたいのね」
「それで来たのよ」
「わかったわ、では今からね」
「グリンダのところに案内してくれるかしら」
「そうさせてもらうわ」
 兵隊さんも頷きました、そうして一行をグリンダのお部屋まで案内しました。グリンダは宮殿の主の間、赤いピカピカに磨かれた大理石とルビーや珊瑚といった赤い宝石で飾られたお部屋でルビーの玉座に座っていました。
 それで一行がお部屋に入ると笑顔で言ってきました。
「待っていたわ」
「私達がお邪魔することはわかっていたわよね」
「ええ、オズマから連絡を受けたし」
「あんた自身魔法で見ていてね」
「わかっていたわ」
 こうエリカに答えます、皆この宮殿の主の前なので畏まっていますがエリカはそれは一瞬ですぐにオズマとお話をはじめたのです。
「もうね」
「そうよね、それでだけれど」
「建国を認めます」
 グリンダはエリカににこりと笑って答えました。
「このカドリングで貴女がこれだと思う場所に建国すればいいわ」
「そうさせてもらうわね」
「ええ、ただ」
 グリンダは考えるお顔になってこうも言ったのでした。
「猫の国はもう」
「あるんじゃないかっていうのよね」
「ええ、オズの国に」
「だからあれは猫の人の国じゃない」
 エリカはグリンダにもこう言いました。
「猫の国ではないでしょ」
「そうした意味での猫ね」
「犬の国も鶏の国もあるのに」
 このオズの国にはというのです。
「けれどね」
「猫の国はないし」
「私も女王様になりたくてね」
「それでなのね」
「建国したくてここまで来たのよ」
 グリンダの許可も貰う為にというのです。
「そういうことなのよ」
「わかったわ、ではね」
「今から場所を選ばせてもらうわ」
「待って、もう夕方よ」
 アンは早速と言うエリカにこう忠告しました。
「だからね」
「それでなの」
「それは明日からにして」
「今日は休めっていうのね」
「ええ、夕食を食べましょう」
「それなら一緒に食べましょう」
 グリンダはアンが夕食と聞いてこう誘いをかけました。
「私もこれからだし」
「宜しいですか?」
「ええ、それとね」
 さらにお話するグリンダでした。
「お風呂も入ったらいいわ、お部屋もあるからベッドで休んで」
「何から何まですいません」
「いいわ。私もおもてなしが好きだから」
 それでと答えたグリンダでした。
「皆で楽しんで」
「そうさせてもらいます」
 アンも応えてでした、一行はグリンダのおもてなしを受けてそうして楽しい一夜を過ごすことになりました。
 夕食はロシア料理でした、ボルシチやピロシキに濃いサラダに鱒のフライそして茸料理にとても脂っこい肉料理です。
 それを前にしてです、グリンダは皆に言いました。
「では楽しんで食べてね」
「はい、ボルシチにはビーズも入っていて」
 ナターシャはそのボルシチを見てにこにことしています。
「本格的ですね」
「何か色々あって」
 カルロスはその沢山のロシア料理を見て言いました。
「どれから食べればいいかわからないですね」
「一度に一杯出ていて」
 神宝もそのお料理達を見ています。
「果たしてどれを食べようか迷います」
「フルコースみたいに一品ずつじゃなくて」
 恵梨香も迷っている感じです。
「こうして一度に出されると」
「本当に迷いますね」
 ジョージも言いました。
「果たして何から食べるべきか」
「迷う必要?ないでしょ」
 エリカは五人にあっさりと答えました。
「別に」
「あれだよね、一番食べたいものをだね」
「食べればいいのよ」
 これがエリカの言葉でした。
「どうせ皆食べるだし」
「それでだね」
「もうその目に入ったものを」
 まさにそれをというのです。
「食べればいいのよ」
「それだけなんだ」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「あんた達は好きなものをね」
「目に入ったものを」
「食べればいいから」
「それじゃあ」
「そう、迷うことはないから」
「好きなもの、目に入ったものを食べて」
「その次を食べればいいのよ。迷うことなんてね」
 それこそというのです。
「一切ないのよ」
「エリカは絶対に迷わないね」
「そうよ、私は迷ったことなんかないし」
 ジョージにもこう言います。
「これからも迷うことはね」
「ないんだね」
「猫は元々決断が早いけれど」
「エリカは特にだね」
「自分でもそう思っているわ」
 決断が早いからだというのです。
「だからね」
「僕達にもこう言うんだね」
「そうよ、じゃあいいわね」
「うん、じゃあ」
 テーブルの上を見てです、ジョージは最初に鱒のフライが目に入りました。それを見てそう言ったのでした。
「これを食べるよ」
「鱒のフライをなのね」
「そうするよ」
「それがいいわ、じゃあね」
「これを食べて」
「それでよね」
「次に目に入ったものを食べるよ」
 こう言って実際に鱒のフライを食べるのでした、そうしてです。 
 他の子達もそれぞれのお料理を食べます、そしてアンはデザートを見て明るい笑顔でこんなことを言いました。
「ロシアのケーキは面白いわね」
「ええ、クッキーみたいに固いわね」
「それが面白いですよね」
 アンはにこりと笑ってそうしてグリンダに応えました。
「他の国のケーキと違って」
「それで甘くて」
「美味しいわね」
「はい、これはこれで」
「私あの柔らかいケーキも好きだけれど」
「ロシアのケーキもですね」
「好きよ」
 それでと言うのでした。
「それでよく食べるわ」
「そうなんですね」
「ええ、じゃあね」
「このケーキもですね」
「食べて楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
 アンはグリンダに応えました、ですが。
 今は食べません、肉料理を食べつつ言うのでした。
「最後に紅茶と一緒に」
「ロシアンティーとよね」
「一緒に食べさせてもらいます」
「そうしてね、私もね」
「最後にですね」
「頂くわ」
 ロシアのケーキをというのです。
「そうさせてもらうわ」
「いや、量も多くてね」
「嬉しいよ」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーも食べています、二匹共山の様なロシア料理をたらふく食べています。
「これならお腹一杯食べられるね」
「そうだね」
「遠慮はしないでね」
 グリンダもこのことを言うのでした。
「いいわね」
「そうさせてもらうね」
「僕達本当に腹ペコだったから」
「だからね」
「どんどん食べさせてもらうね」
 こう言って二匹もでした、楽しく食べるのでした。勿論エリカもそうで自分の席で食べながらこんなことを言いました。
「さて、明日からね」
「ええ、建国ね」
「そのお話ね」
「そうね、ここに来るまでも色々あったけれど」
「これからもよね」
「色々あるわよ」
 まさにというのです、アンはエリカに言いました。
「そのことはわかっていてね」
「ええ、まずは場所を決めて」
「そこから建物を建てたり猫を集めてね」
「そうしないと駄目っていうのね」
「そうよ、本当に色々としないと駄目よ」
「ここはね」
 エリカは少し考えてからアンに言いました。
「ビリーナの国を参考にしようかしら」
「彼女の国をなの」
「そう、あの国をね」
 あの鶏の国をというのです。
「そう考えているわ」
「そうなのね」
「それでいいでしょ」
「ええ、他の国もね」
「犬の国とかね」
「そうした国を参考にすればね」
 それでと言ったアンでした。
「いいと思うわ」
「そうでしょ、じゃあね」
「建国の時は」
「ビリーナの国や犬の国をね」
「参考にして」
「建国していくわ」
 こう言ってでした、またロシア料理を食べるのでした。お料理の後はお風呂に入ってじっくりと休んで。
 翌朝です、エリカは朝食の場で皆に言いました。
「じゃあ御飯の後は」
「早速なのね」
「ええ、建国にかかるわ」
「本当に貴女迷わないわね」
 アンはエリカの言葉にこう返しました。
「何時でも」
「そうよ、また言うけれど」
「迷わないのね」
「まずは国を建てる場所を決めて」
「そうしてよね」
「建国していくわよ」
「何でもお話してね」
 ここでグリンダも言ってきました、朝食の場に彼女もいます。メニューはサンドイッチやソーセージ、ハム、サラダにスープ、フルーツの盛り合わせにヨーグルトと見事なものです。
 そうしたものを食べつつです、エリカに言うのでした。
「カドリングの図書館に各国の建国の経緯が書かれている本があるから」
「歴史書ね」
「それもあるから」
 だからというのです。
「そうした本も読んでね」
「勉強しながらなのね」
「建国していってね」
「わかったわ、人手も必要だしね」
「それなら魔法で建てられるわ」
 グリンダはエリカにこのことも大丈夫だとお話しました。
「それに頼りになる助っ人も呼べるし」
「助っ人?」
「かかしさんと樵さんよ」
 この二人だというのです。
「実はあの人達と連絡を取っていたの」
「そうだったの」
「それであの人達もね」
「私の建国に協力してくれるの」
「そう言ってるわ」
「あら、頼りになる助っ人ね」
「あの人達と私もいるから」
 グリンダもというのです。
「魔法も使えるわよ」
「そうなのね」
「そう、魔法で建国して」
「後は二人の力も借りて」
「建国してね」
「そうさせてもらうわね、しかしね」
 ここでこうも言ったエリカでした。
「かかしさんと樵さんは本当にね」
「何かとっていうのね」
「関わってくるわね、オズの国のことに」
「ええ、それは当然のことよ」
「オズの国一番の頭脳とオズの国一番の心の持ち主だから」
「皆あの人達の助けが必要な時が多いから」
 それ故にというのです。
「だからなのよ」
「あの人達が関わることが多いのね」
「そうよ」
「オズマやドロシーの次位に関わってるわね」
 オズの国のことなら何でもです。
「本当に」
「そうね、それじゃあ」
「ええ、書も読んでいいしあの人達もいてくれるし」
「それでグリンダの魔法もあるから」
「建国自体は早いわ。ただね」
 ここでこうも言ったグリンダでした。
「猫も集めてもね」
「それでもなの」
「そう、治めることはね」
 このことはといいますと。
「かなり大変よ」
「全然大変じゃないわよ」
 エリカはグリンダの今の言葉には平然として返しました。
「それこそそのことがね」
「一番楽だっていうの」
「だって私が女王になるのよ」
 だからだというのです。
「それでどうしてよ」
「大変かっていうの」
「そうよ、私位女王に相応しい猫はいないわよ」
 猫の中でというのです。
「それでどうして大変なのよ」
「そう言う根拠は何かな」
「そのことが気になるけれど」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーはサンドイッチ、物凄い量のそれを食べながらエリカに尋ねました。
「女王に相応しいって言えるそれは」
「無事に治められるっていうんだよね」
「私自身が言っているのよ」
 それならろ言うエリカでした。
「だったらそれ以上の根拠はないでしょ」
「いや、エリカが言ってもね」
「そうはならないけれど」
 二匹は首を傾げさせます、ですが。
 エリカは平然としています、そう言われても。
「見ていればわかるわ」
「そうかな」
「とてもそうは思えないけれど」
「エリカがそう言っても」
「正直かなり心配よ」
「私達から見ても」
「あんた達私のことがわかっていないのよ」
 ジョージ達五人にもこう言うエリカでした。
「私位立派な猫はいないっていうのに」
「ううん、エリカ自身はそう言っても」
「実際はどうかっていうと」
「やっぱりね」
「不安よ」
「女王様が出来るかどうか」
「やれやれね、まあすぐにわかるわ」
 エリカは五人の不安がる言葉にも平気です、それでです。
 朝御飯のソーセージを美味しそうに食べてミルクも飲んでから言いました。
「私の大活躍、これから見せてあげるわ」
「本当に大丈夫かしら」
 アンも横で不安なお顔になっています。
「エリカが女王で」
「あんたも心配性ね」
「だって本当に根拠なく言ってるから」
「私の能力を疑ってるの?」
「疑っているというか」
 まさにというのです。
「これまでの貴女を見ているし」
「それで不安なの」
「そうよ、我儘で自分勝手で気まぐれでいつも自分が一番で」
「それが悪いの?」
「どの猫よりも猫らしいのに」
 そうした意味でというのです。
「それなのにね」
「そうよ、最も猫らしい猫だからよ」
 まさにそれこそがと言うエリカでした。
「私は猫の女王に相応しいのよ」
「そうなるのかしら」
「なるわ、じゃあいいわね」
「朝御飯を食べたら」
「カドリングの地図を見て」 
 そうしてというのです。
「いい場所を見付けるわよ」
「それじゃあね」
「もう迷わないですぐに決めていくのよ」
 国を建てる場所もというのです。
「これだって思ったらね」
「その時もなのね」
「そうよ、私は絶対に迷わないのよ」
 それでというのです。
「間違えたらあらためたらいいし」
「その場合はなのね」
「そうよ、すぐにね」
 間違えた時はというのです。
「そうしてね」
「政治も行っていくのね」
「猫のそれをね。というかあんた達は猫もわかっていないわね」
「貴女のことだけじゃなくて」
「そうよ、わかっていないわね」
 オムレツを美味しそうに食べるアンに言うのでした。
「私は猫だけによくわかっているわよ」
「猫のことが」
「その猫の中で一番猫らしいから」
 それ故にというのです。
「まあ見ていなさい、建国してからね」
「貴女の大活躍がはじまるのね」
「そうなるわ、あとね」
「あと?」
「あんた後でフルーツも食べるわね」
「そのつもりだけれど」
「じゃあ林檎食べるわね」
「ええ、食べるわ」
 フルーツの盛り合わせの中には林檎もあります、皮が付いたまま四分の一に切られて芯のところは切り取られています。
「何といってもね」
「あんたは林檎だからね」
「食べるわ」
 そうするというのです。
「そうするわ」
「やっぱりあんたは林檎ね」
「他の果物も食べるけれど」
「林檎は欠かせないわね」
「色々なお菓子にも出来るし干しても美味しいしジュースも素敵だし」
 アンはそうした要素もお話していきます。
「我が国でもよく作ってるしモジャボロさんも大好きでしょ」
「あの人もよく林檎食べるわね」
「それは美味しいからよ」
 何といってもというのです。
「だからね」
「林檎も食べて」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「最高の気分でね」
「私に協力してくれるのね」
「そうさせてもらうわ」
 このことを約束したアンでした、そして実際に最後に林檎に手をやりました。
 そのうえで一口食べてにこりとなりました。
「美味しいわ」
「カドリングの林檎もなのね」
「とてもね」
「ううん、本当に林檎好きね」
「これがあるとね」 
 その林檎がというのです。
「全く違うわ」
「そんなになの」
「デザートにあるのとないのとで」
「それは林檎のお菓子でも同じね」
「ジュースでもね、私は毎食林檎の何かがないと」
 本当にというのです。
「駄目よ」
「そこまで林檎が好きなのね」
「人にはそうしたものがあるでしょ、それぞれ」
「私にとっては寝ることかしら」
 エリカの場合はというのです。
「もう食べたり歩いたりお風呂に入る時以外は寝ているけれど」
「貴女はそうよね」
「猫は寝ることが好きなのよ」
 何といってもというのです。
「食べることと同じ位ね」
「だからこれまでもそうだったのね」
「そう、今回の冒険でもね」
「ずっと寝ているのね」
「そうよ、寝てね」
 そのうえでというのです。
「楽しんでいるのよ」
「そういえば猫は日本語では寝る子だったわ」
 グリンダがこう言ってきました。
「そうだったわ」
「寝る子が縮まってなのね」
「そう、猫になったみたいなの」
「つまり私も寝る子ってことね」
「ええ、ただ貴女は他の猫程寝ないかしら」
「普段は一日の三分の二は寝ているわ」
 これがエリカの返答でした。
「冒険の時は半分位ね」
「そうした感じなのね」
「ええ、冒険の間は歩くことやあちこちを見ることが多くて」
 それでというのです。
「寝るよりもね」
「そちらの方が多くてなのね」
「寝る時間は少ないわ」
 そうなっているというのです。
「どうにもね。けれど辛くないわね」
「それはオズの国にいるからよ。オズの国は極端な寝不足でもないと辛くならないから」 
 それでとお話したオズマでした。
「それでなのよ」
「辛くならないのね、あまり寝なくても」
「そうよ、じゃあこれからは」
「いよいよ建国にかかるわ」
 エリカは笑って言いました、そうしてまずは朝御飯を美味しく食べるのでした。








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