『オズのエリカ』
第五幕 不思議なピエロ
一行はこの日も朝起きるとすぐに御飯を食べて出発しました、そうして昨日立ち寄った駒の国の前を横切ってです。
国の方に皆で手や前足を振りました、そのうえでアンは言いました。
「この国も素敵な国だったわね」
「ええ、訪問してよかったわ」
エリカがアンに続きます。
「本当にね」
「そうよね」
「ええ、じゃあまた来る日まではね」
「お別れよ」
「そうね、その時まではね」
見れば城壁の方から駒の兵隊さんが手を振り返してくれています、挨拶はちゃんと伝わっています。
「笑顔でお別れをしてね」
「笑顔で再会よ」
「そうなるわね」
「それじゃあ今からね」
「またグリンダのお城の方に向かうのね」
「そうするわよ」
こうエリカに言うのでした。
「いいわね」
「わかっているわ、じゃあ歩いていきましょう」
「皆でね」
「さて、今日はどうなるかな」
臆病ライオンはここで思いました。
「何が起こるのかな」
「平和に進めるかな」
腹ペコタイガーはこう思いました。
「果たして」
「うん、どうなるかな」
「そこはわからないよね」
「何かが急に起こる国だからね」
オズの国、この国はというのです。
「思わぬところでね」
「そうだよね、それもオズの国だから」
「何が起こってもね」
「不思議じゃないよね」
「そう、今日だってね」
「そうなのよね。何も起こらないかも知れないけれど」
アンも二匹の獣達に応えつつ言いました。
「何か起こるかも知れない」
「そうそう、オズの国は」
「そうした国だからね」
「ええ、けれど何が起こっても何に遭遇してもね」
それでもというのです。
「皆で乗り越えていきましょう」
「私がいるのよ」
ここでも胸を張って言うエリカでした。
「だからね」
「大丈夫っていうのね」
「そう、何が起こってもね」
「その言葉信じさせてもらっていいかしら」
「もらっていいじゃなくてそうするのよ」
最初からというのです。
「いいわね」
「そこでそう言うのは本当に貴女らしいわね」
「例えドラゴンが出て来てもよ」
それでもというのです。
「私は憶することはないしね」
「そうよね」
「ええ、まあ何が出て来てもね」
それでもというのです。
「私は平気だし苦難もね」
「乗り越えていって」
「先に進むわ」
そうするというのです、そしてです。
一行は先に先にとさら進んでいきました、そうして九時半頃にです。
ふとです、前から奇妙な人が来ました。その人はといいますと。
お顔を白塗りにしていて目は隈取をしていて眉をあえて大きく描いて口紅も口の周りに塗りたくっています。オズの五色の色をそれぞれ虹みたいに彩っているとても派手なフリルが一杯付いたブラウスとタイツ、先に白いぽんぽんが付いていて反り返っている靴を履いています。
頭にはぴっしりとしたオズの国の五色模様のフードがあってその左右は角みたいになっていて先にはこちらにもぽんぽんがあります。そうして変わった踊りを踊りながら歩いています。
その人を見てです、エリカは言いました。
「ピエロね」
「ええ、そうね」
アンもエリカの言葉に頷きました。
「あの人はね」
「そうよね」
「オズの国にもピエロっているけれど」
ジョージが言いました。
「旅をするピエロの人もいるんだ」
「何かオズの国のピエロって感じね」
ナターシャはそのピエロを見てこう言いました。
「オズの国の色で彩られているから」
「そうだね、緑に赤、青、緑、黄色でね」
神宝はナターシャのその言葉に頷きました。
「虹みたいにはっきりと分けているから」
「しかも動きが軽やかで」
このことを言うのは恵梨香でした。
「おどけている感じでね」
「うん、ピエロはピエロでもね」
最後にカルロスが言いました。
「オズの国のピエロだね」
「私あの人ははじめて見たわ」
アンもその人を見て言いました。
「オズの国には確かにピエロもいるけれどね」
「そうね、ただピエロってね」
エリカは皆の千頭でこうも言いました。
「どうもね」
「どうもっていうと?」
「いえ、怖いイメージないかしら」
アンに対して言いました。
「何かわからない、剽軽でおどけた中に何かある」
「素顔を隠していて」
「そんな感じがしないかしら」
「そうね、そう言われるとね」
「不気味なものもあるでしょ」
「ええ、確かに怖いものもね」
エリカが言う通りにというのです。
「含んでいるわね」
「だから私ピエロを見ているとね」
「時々怖さもなの」
「感じるのよ」
「怖いものはないっていう貴女が」
「怖いものを怖いって感じて乗り越えているからね」
その抱いた恐怖心をというのです。
「だから怖いものはないのよ」
「そういうことなのね」
「怖いものを乗り越えたらもう怖くはないでしょ」
「ええ、確かにね」
「そういうことなのよ」
「成程ね」
「それでだけれど」
そのピエロを見つつです、エリカはアンにお話していきます。
「あのピエロの人は何をするのかしら」
「何の芸をするのか」
「ピエロは芸をするものでしょ」
そして人を喜ばせるものだというのです。
「そうでしょ」
「それはね」
「じゃああの人も何かをするわよね」
「そうなるわね」
「じゃあ何をするのかよ」
「それが問題だっていうのね」
「ええ、一体何かしらね」
前から歩いて来るそのピエロの人を見つつ言います、一行も先に進んでいるのでそうしてなのでした。
一行は遂にピエロの人と対しました、するとピエロの方から挨拶をしてきました。
「やあ、はじめまして」
「ええ、こちらこそね」
エリカが応えました。
「はじめまして」
「猫のエリカさんとお見受けしますが」
「そうよ、会ったことはなかったわね」
「だからはじめましてと挨拶しました」
恭しくお辞儀をしての言葉ですがその仕草はどうもおどけています。
「おわかり頂けたでしょうか」
「それはね」
「はい、それでなのですが」
「何かしら」
「私は見ての通りピエロです」
笑っている表情にしているメイクの顔での言葉でした。
「そしてピエロは芸をするものです」
「それを今考えていたのよ」
「私がどういった芸をするのかをですね」
「どういった芸をするピエロなのかをね」
「はい、私は言うのです」
「言うのが芸なの」
「そうです、ピエロは芸を見せておどけて人気を得ますね」
それがピエロというのです。
「そうですね」
「心があると面白いものが好きだからね」
「はい、おどけて惚けてです」
そうしてというのです。
「人気を得ます、そして表情もです」
「それもなのね」
「この通りです」
自分のお顔を指さして言うピエロでした。
「笑っていますね」
「にこりとね」
「そう見えますね」
「ええ、誰がどう見てもね」
「ですが」
「ですが?」
「おどけて惚けてです」
そしてというのです。
「笑って見えていますが実は」
「あっ、わかったわ」
エリカはここでピエロが言わんとしていることを察しました、そしてそのうえでこうピエロに言うのでした。
「それは芸であってね」
「はい、演技なのです」
「そしてその笑顔もね」
「塗っているだけです」
メイク、それをしているだけだというのです。
「果たしてその実は」
「わからないわね」
「そして人気を得れば生きものはその言葉を信じますね」
「そうなるわね」
「それがどんな言葉でも」
「人も私達獣も好きな相手の言葉なら信じるわ」
「そうです、しかしです」
その好きな人の言葉を信じることもというのです。
「その人の本心はどうか」
「ピエロの本心は」
「それはおわかりでしょうか」
「笑顔で言っていても」
「その笑顔は真実か」
エリカに問う様にして言うのでした。
「本心は何か」
「それはわからないのね」
「例えばです」
ここでピエロは旗を出しました、小さなそれぞれの色の旗が二十七枚万国旗の様に上にある糸につるされています。
そのうちの一つを指示してです、こう言うのでした。
「私がこのうちの一枚を集まりから外せばいいと言う」
「私がそうすべきと思うか」
「はい、貴女はどう思いますか?」
「別にいいでしょ」
エリカはピエロにすぐに答えました。
「一つに集まっているなら」
「このまま一緒で、ですね」
「ええ、一枚だけだと寂しいでしょうし束ねていないから」
その糸にです。
「その一枚簡単に失ってしまいかねないわよ」
「そうなってしまいますね」
「だからそこにある旗は一緒にあるべきよ」
「それは私が貴女と初対面だからですね」
「それであんたのことを知らなくて」
「それで私のことをご存知なく」
その為にというのです。
「私への好き嫌いはないですね」
「ええ、全くね」
「私が好きならばどう思われますか?」
「私がその一枚の旗を外す様に言えば」
「信じられますか?」
「そうね、生きものは好きな人の言葉を信じるからね」
「その時はですね」
エリカに尋ねるのでした。
「私の言う通りにされるかも知れないですね」
「ええ、言われてみればね」
「貴女が当初そうすべきと思っていても」
「貴女が好きならね」
「そして貴女にこうして申し上げるだけでなく」
さらに言うピエロでした。
「テレビ等でも言えばどうなるでしょうか」
「こうして一度聞くだけでなくてよね」
「テレビで何度も言われるとどうでしょうね」
「わからないわね、本当に」
「旗を外しかねませんね」
「そうなるかも知れないわ」
「そこです、人は面白い人を好きになってです」
そしてというのです。
「その人の言葉を信じテレビ等で何度も言われますと」
「余計になのね」
「信じてしまいます、しかし私はピエロです」
今度は自分自身のことを言うピエロでした。
「その素顔や正体は中々わかりません」
「実は、っていうのね」
「全く別のことを考えているかも知れませんよ」
「その旗を外すことも」
「そうです、私がこの旗は特別だから外せばいいと言っていても」
他の旗達とです。
「しかし私は本当にそう思っているか」
「わからないのね」
「私がかつてのノーム王の様にオズの外の世界から来てです」
「そして悪意があれば」
「そうです、かつてのノーム王の様に」
そうした人であればというのです。
「若し外した旗を後で自分が盗みたいとすれば」
「一枚だったら盗みやすいからね」
「そうであればどうでしょうか」
「簡単に盗めるわね」
「そして人と違うことを言って注目されたいなら」
そう考えているのならというのです。
「貴女は私をどう思われますか?」
「とんでもない悪人に思うわ」
エリカはまたしてもすぐに答えました。
「その顔を二度と見たくない位に嫌いになるわ」
「そうなりますね」
「若しあんたの正体がそんな奴ならね」
「はい、しかしです」
「あんたの本心はわからないのね」
「ピエロですから」
おどけた芸とメイクで本心を隠しているからです。
「実はそうした方が貴女の為になると思っていても」
「実はあんただけの為になることもっていうのね」
「ありますね」
「ええ、何か嫌な話ね」
「そうですね、ですがそうしたものなのです」
「ピエロというものは」
「人の本心はよく察することです」
エリカに今も表情は仕草自体はおどけたものでお話します。
「例え人気者で自分が好きな人でも」
「信じている人でも」
「その人をよく見ることです」
「そして果たして信じるに足る人かどうか」
「そうなのです、オズの国でもかつてのノーム王みたいな人が来たりします」
「色々とやってくれたわね、あの人」
「妖魔達と手を組んで攻めたりもしてきましたね」
このことについても言うピエロでした。
「エメラルドの都を地下から攻めんと」
「そうだったわね」
「そうです、ですから」
「あんたが若し外の世界から来た悪意のある人なら」
「特に私はこの通り素顔を隠しているのですから」
ピエロのそのメイクで、です。
「よく考えると信じるのは危険ですね」
「あんたをじっくりと見て。そうしてよね」
「信じて好きになって頂かないと」
さもないと、というのです。
「後で後悔するかも知れないのです」
「騙されたとわかって」
「そうです」
「成程ね、それがなのね」
「私の芸です」
「このことを教えることが」
「そうなのです、オズの国を歩いて回って」
そうしてというのです。
「今の芸を披露しています」
「そうなのね」
「私は迂闊に信じないことです」
「そういうことね」
「ピエロの素顔はわかりません、そして」
「誰でもよね」
「まずは人をよく見て」
その人それぞれをです。
「どういった人か考え」
「そうしてからね」
「見極めてです」
「信じて好きになるべきね」
「さもないとです」
「騙されたりするのね」
「私が人気があっても」
それでもというのです。
「まずは私をよく見て考えてです」
「信じられるかどうかを見極めて」
「信じて好きになってです」
「その言葉もよね」
「その一言を正しいかどうか見極められることです」
「その人が常に正しいとは限らない」
「はい、間違っていることを言う時もあれば」
その人がというのです。
「ひょっとしたらです」
「実は悪いことを考えて言っている」
「その可能性もあるのですから」
「難しいことを言うわね」
「そうかも知れません。ですが」
「それがなのね」
「人間かも知れませんよ」
こうも言うのでした。
「そして生きものです」
「オズの国では悪意がなくても」
「外から攻めて来る人もいましたし」
「わからないのね」
「ギリキンには悪い巨人もいましたね」
「ええ、かかしさん達の姿を変えたね」
エリカもよく知っているお話です、この時かかしもブリキの樵もポリクロームも大変なことになりました。
「カリダも昔は性格が悪かったし」
「だからですよ」
「気をつけることね」
「その人には。人はじっくりと見て信じて好きになって」
「その人の言葉が常に正しいとは限らない」
「そのことをご承知を」
くれぐれもと言うピエロでした。
「その様に」
「わかったわ、そういうことね」
「それで旗はどうされますか?」
ピエロはまだその手に旗達を持っています、二十七枚の旗達は今も一枚の糸によってつながっています。
「一体」
「そのままでいいわ」
エリカはピエロに答えました。
「その方がなくさないし取られないしね」
「だからですね」
「そうしていくわ、全部揃っていた方が奇麗だしね」
「それでは」
ピエロも頷きました、そして旗は揃ったままでピエロの服のポケットに収められました。そしてです。
ピエロは一行に再び恭しくお辞儀をしてから去りました、一行もそのピエロに挨拶をして別れました。
その後で歩きつつです、アンは言いました。
「それじゃあ丁度十時だから」
「ティータイムね」
「それで少し休みましょう、そしてね」
「さっきのピエロのことをね」
「少しお話しましょう」
こうエリカに言うのでした。
「是非ね」
「そうね、正直ね」
「あの人のお話はっていうのね」
「何かって思ってるわ」
やり取りをしたエリカの言葉です。
「現実にね」
「そうよね」
「難しいこと言ってたわね」
「何かとね」
「ええ、けれどね」
「何と鳴くよね」
「わかるわ」
ピエロの言いたいことはというのです。
「私も」
「私もね」
「けれどじっくりとね」
「お話したし」
それでというのです。
「わかったわ」
「つまり人を迂闊に信じない」
「まずはその人をよく見る」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「好きな人でもその発言はね」
「よく確かめる」
「鵜呑みにしない」
「人気者だからっていい人とは限らない」
「真意ははっきり見極める」
「そういうことよね」
「相手が誰でもね」
こうお話します、そしてです。
ここでエリカはこうも言いました。
「オズマだってドロシーだってね」
「ずっと見ていてね」
「一緒にいてお話もして」
そしてというのです。
「どういう人かわかったし」
「それで信じる様になったわね」
「迂闊に信じなかったわ」
エリカにしてもというのです。
「そしてそれがね」
「よかったのね」
「そう思ったわ」
実際にというのです。
「今ね」
「そうよね、本当にね」
「まずはね」
「人は迂闊にね」
「誰だってね」
「信じるものではないわね」
「そういえば外の世界だと」
ここで言ったのはジョージでした、ティータイムでアンが出してくれたアップルティーを美味しくいただきながら。
「テレビのコメンテーターの人がね」
「変なこと言ってるとかね」
恵梨香が応えました。
「学校の先生言ってたわね」
「うん、アナウンサーの人とかもね」
カルロスも言います。
「そう言ってるとかね」
「スポーツでも変なこと言う解説者の人がいるね」
神宝はこのことを指摘しました。
「間違ってるんじゃないかってことを」
「人気がある人でもそうだし」
最後にナターシャが言いました。
「本当に迂闊に信じたらね」
「駄目だね」
ジョージは四人のお話を聞いてまた言いました。
「そうだね」
「うん、若しもオズマに化けた誰かが変なことを言うよ」
「ドロシーでもね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーはオズの国で最も有名で人気があるこの二人の少女の名前を出して言うのでした。
「そうしたらどうか」
「そこで違うんじゃないかって言わないとね」
「おかしなことになるよね」
「正体も見極められないよ」
「その通りだね」
ジョージも納得して頷きました。
「僕もそう思うよ」
「そう、そこよ」
まさにとです、エリカも言ってきました。
「あのピエロが言っていたことはね」
「そうだよね」
「凄い教訓よ」
「お茶の間の人気者でもすぐに信じるな」
「そうよ」
まさにというのです。
「下手に信じたらね」
「後で後悔することになるね」
「だからね」
「あのピエロさんの言ったことは覚えておくべきね」
「そう思うわ」
まさにというのです。
「確かにね」
「何ていうかね」
ジョージはアップルパイを食べました、他のお菓子は干し林檎に林檎のゼリーと林檎尽くしになっています。
「オズの国でもね」
「そう、確かにあるからね」
「悪い人が悪いことを言うことは」
「そう、ノーム王がそうだったし」
「そのことだね」
「そのことがあるから」
だからだというのです。
「注意しないとね」
「本当にその通りだね」
「けれどね」
ここでこうも言ったエリカでした。
「あの人の言っていた旗のお話だけれど」
「ああ、あのことだね」
「あれは私には妙にわかりにくかったわ」
「そうだったんだ」
「最初見てね。何かと思ったわ」
その旗をというのです。
「最初手品でもするのかと思ったわ」
「手品をするのは手品師だよ」
「魔法使いさんがそうだったね」
あの偉大な魔法使いは最初は手品師でした、手品師の人がオズの国に入って魔法使いと思われていて戻って来てから本物の魔法使いになったのです。
「そういえば」
「ええ、それをするのかと思ったら」
「ああしたお話になったね」
「それが最初ね」
「何かって思ったんだ」
「そうだったわ、けれど旗も一つじゃないとね」
まとまっていないと、というのです。
「確かにね」
「なくしやすいよね」
「そうよね、分けるよりもね」
「その旗だけにしたらね」
「いいことはないわ」
「一旦集まったらね」
「そんなことは好きな人、人気者が言ってても」
それでもというのです、
「例えテレビで言っていても」
「鵜呑みにすることはね」
「かなり危険よ」
「そうだね」
「そうしたお話だったね」
「鵜呑みにしてその通りにしたら」
「後悔もするわよ」
そうなる可能性があるというのです。
「本当にね」
「その通りだね」
「私の言うこともよ」
「エリカの言葉もだね」
「迂闊に信じたら」
そうしたらというのです。
「後悔する場合もあるわよ」
「そうだね、気をつけないとね」
「そうそう、例えば私がキャットフード美味しいと言って」
「僕達が信じて食べたら」
「その場合はどうかしら」
「猫の食べものだからね」
それでと返したジョージでした。
「そんなことをしたらね」
「駄目でしょ」
「うん、キャットフードは人間が食べるものじゃないよ」
「そこよ、猫が食べて美味しくてもね」
「人間が食べて美味しいとは限らないね」
「だからよ」
それでというのです。
「あまりね」
「そうしたことはだね」
「用心しないと」
さもないと、というのです。
「後で食べてまずかったとなるわよ」
「シビアな現実だね」
「そうよ、けれどね」
「その通りだね」
「そうよ、現実は中々怖い一面もあるわ」
「そうだね」
「ええ、自分で見て考えることは本当に大事よ」
「エリカはいつもそうだね」
そういえばと気付いたジョージでした。
「自分で見てね」
「自分で考えてるでしょ」
「他の人の言葉を鵜呑みにしないでね」
「何度も言うけれど私は私よ」
「だからだね」
「そう、自分で見て考えてね」
そうしてというのです。
「動いているのよ」
「選んでもいるんだね」
「そうよ」
その通りだというのです。
「あのピエロさんの言ってることはね」
「既にだね」
「やっているのよ」
胸を張って言うのでした。
「それが私なのよ」
「そういうことだね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「私みたいにいつもそう出来る人は」
それはといいますと。
「そうはいないわね」
「そこで自慢するんだ」
「するわよ」
胸を張って言うエリカでした。
「それも私だからね」
「猫は自慢したがりっていうけれど」
「私は特になのよ」
「そうした面でも猫らしいってことだね」
「そうよ、そしてね」
さらに言うエリカでした。
「あんた達にも他の人と同じ態度よ」
「そこもエリカだね」
「何でもね、しかしね」
「しかし?」
「私はあの人の言葉を忘れないわ」
ピエロとのお話をというのです。
「絶対にね」
「最初から自分で見ていて考えていても」
「そうしておくわ」
「自分への戒めにするんだ」
「若し忘れると」
その時はというのです。
「失敗するから」
「だからなんだ」
「自分が最初からそうでもうっかりとかあるでしょ」
「そうならない為に」
「あの言葉を忘れないで」
そしてというのです。
「自分への戒めにするわ」
「しっかりしてるね」
「私が私らしくある為にね」
「自分らしくなんだ」
「そうよ、絶対にね」
まさにと言ったエリカでした。
「自分で見て自分で考えていくわ」
「これからもいつも」
「そうしていくわ」
「成程ね」
「ええ、じゃあ食べ終わったらね」
それからのこともお話したエリカでした。
「私達はまた出発ね」
「そうよ、そうするわよ」
アンが答えました。
「またね」
「それじゃあね」
こうしてでした、十時のティータイムの後で。
皆はまた冒険に入りました、そこでです。
アンは煉瓦の道を進んでいて森を見て言いました。
「今思ったけれど」
「何かな」
「あの森に何かあるのかな」
「ええ、あの森に入ってね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーに言います、カドリング独特の赤い森を見てそうして言うのでした。
「お弁当の木があったら」
「ああ、そのお弁当をだね」
「お昼にしようってだね」
「思ったけれど」
「そうだね、お弁当もいいよね」
「そうだよね」
二匹の獣はアンのその言葉に頷きました。
「それじゃあね」
「今日のお昼はお弁当だね」
「それにするんだね」
「そうしようかしら。丁度時間もね」
それもというのです。
「お昼だしね」
「いい時間だね」
「それじゃあね」
「森に入って」
そうしてというのです。
「皆で食べましょう」
「そういえばお弁当を食べるのって」
エリカがここで言いました。
「今回の旅ではじめてね」
「僕達は久し振りだよ」
ジョージがエリカに言ってきました。
「お弁当を食べるのは」
「冒険の時に」
「いつもアン王女達一緒に来てくれている人達に出してもらっていたからね」
お弁当をというのです。
「だからね」
「それはそれでいいけれどね」
「お弁当はね」
それを食べることはというのです。
「なかったよ」
「そうだよね」
「そう、そしてね」
それにというのでした。
「今のアン王女の提案はね」
「嬉しいのね」
「これはっていう感じだよ」
まさにというのです。
「僕としてはね」
「うん、久し振りだしねお弁当」
「だったらね」
「是非食べたいわ」
「折角の機会だし」
他の四人もジョージと同意でした、そしてです。
皆同じ意見なのでそれで、です。赤いカドリングの森の中に入ってそうしてでした。そのうえでなのでした。
お弁当の木を探しました、すると森の中にでした。
そのお弁当の木がありました、その木の下に行ってでした。
そしてその木からそれぞれお弁当を取ります、ジョージはチキンサンド弁当を手に取りましたが他の皆はといいますと。
神宝は肉饅弁当、カルロスはステーキとパンのお弁当、ナターシャはピロシキと鱒のフライの弁当、恵梨香は幕の内弁当でした。
臆病ライオンと腹ペコタイガーはとりあえず目に入ったものを何でもでそしてアンはハンバーガーでしたが。
エリカはキャットフードでした、そのキャットフードを食べつつこう言いました。
「皆好きなお弁当を取ったわね」
「ええ、それでおかわりをしてもね」
「好きなものを取るのね」
「そうするわ」
アンはハンバーガーを食べつつエリカに答えました。
「私は今度はアメリカンクラブサンドかしら」
「そのお弁当ね」
「ハンバーガーの後はね」
「そうするのね」
「私ハンバーガー好きだし」
「アメリカンクラブサンドもよね」
「好きだから」
それでというのです。
「次はね」
「それにするのね」
「そのつもりよ」
エリカに笑顔でお話しました。
「そう考えているわ」
「それで飲物はね」
「セットになっていたけれどね」
ハンバーガーとです。
「コーラよ」
「それよね」
「やっぱりハンバーガーにはこれじゃないかしら」
「コーラね」
「私はそう思うわ」
「私はコーラは」
エリカは微妙な声で言いました。
「ちょっとね」
「いらないの」
「あまりね」
どうにもというのです。
「飲みたくないわ」
「そういえば貴女炭酸飲料はね」
「飲みにくいのよ」
猫としてはというのです。
「どうもね」
「あのシュワシュワしたのが」
「ほら、人間はごくごく飲めるわね」
「けれど猫はね」
「舐めて飲むでしょ」
「だからなのね」
「飲みにくいのよ」
炭酸飲料はというのです。
「だからね」
「あまり、なのね」
「ええ、ハンバーガーを食べるならね」
その時はといいますと。
「コーラじゃなくてね」
「他のものよね」
「ミルクがいいわね」
コーラの時はというのです。
「やっぱりね」
「そうなるのね」
「ええ、コーラにはミルクよ」
キャットフードを食べつつアンにお話します。
「私としてはね」
「成程ね、それもいいわね」
「コーラにはミルクもいいでしょ」
「ええ、あとドーナツも好きだけれど」
「ドーナツにコーラはどうかしら」
「あまりね」
アンとしてはというのです。
「好きじゃないわ」
「その組み合わせは」
「ええ」
そうだというのです。
「私はね」
「そこはそれぞれね」
「そうでしょ、猫にはね」
「ライオンもだよ」
「虎もだよ」
二匹の獣達もエリカと同じでした。
「ちょっとね」
「炭酸飲料はね」
「飲みにくいよ」
「舌ではね」
「じゃあ犬も同じね」
アンはここでトトを思い出しました、いつもドロシーと一緒にいる彼のことを。
「トトにしても」
「ええ、絶対にそうよ」
エリカもこう答えます。
「やっぱりね」
「猫にしても犬にしてもね」
「炭酸飲料はね」
こちらはというのです。
「苦手よ」
「そうよね」
「飲むにはね」
どうにもというのです。
「辛いものがあるわ」
「そうなのね」
「飲むならね」
「ミルクね」
「ハンバーガーだとね」
「僕も今ミルク飲んでるよ」
「僕もだよ」
臆病ライオンと腹ペコタイガーも同じでした。
「お肉やお魚一杯食べてるけれど」
「パンもね」
「それで飲むものはね」
「そちらだよ」
「そうよね、やっぱりね」
まさにと言うアンでした。
「炭酸飲料は向き不向きがあるのね」
「この前オズマがサイダー飲んでたのよ」
「そうだったのね」
「私をそれを見てもね」
「美味しそうに飲んでいても」
「全然よ」
「飲みたくなかったのね」
「そうだったわ」
実際にというのです。
「私としてはね」
「そうだったのね」
「それでその時はミルクを飲んだわ」
「貴女そこでもミルクだったの」
「そうだったの」
実際にというのです。
「そちらを飲んだわ」
「成程ね」
「それでね」
さらに言うエリカでした。
「ハンバーガーを食べたの」
「そのハンバーガーを」
「そうしたのよ」
「そうだったのね」
「今は食べないけれどね」
そのハンバーガーをというのです。
「そうしていたのよ」
「そのこともわかったわ」
「ええ、あと今思ったけれど」
「今度は何かしら」
「恵梨香さっきは幕の内弁当を食べて」
そしてというのです。
「今は蟹飯を食べているわね」
「あっ、御飯ね」
「恵梨香は御飯好きよね」
「ええ、食べるならね」
恵梨香も言ってきました。
「やっぱりね」
「御飯なのね」
「私はね、パンも好きだけれど」
それでもというのです。
「やっぱりね」
「第一は御飯なのね」
「そうなの」
恵梨香の場合はというのです。
「だからね」
「今も御飯なのね」
「食べていくわ」
こう言ってでした、実際に御飯をにこにことして食べる恵梨香でした。エリカはその彼女を見て言いました。
「これからもオズの国でもね」
「外の世界でも食べてるのね」
「そうなの、それで一番好きなのはね」
それはといいますと。
「お握りよ」
「お握りなの」
「そう、その次にお寿司よ」
「ああ、あれ私大好きよ」
エリカもお寿司についてはこう言いました。
「あれは最高ね」
「そうでしょ、だからお握りの次に好きなの」
「そうなのね」
「またお握り食べたいわね」
「そこでお寿司って言わないの」
「だってお握り好きだから」
そこは外せない恵梨香でした、そうしたお話をしながらそうしてでした。そのお話を聞いたアンが思いました。
「今度のお食事はお寿司かお握りにしましょう」
「恵梨香のさっきのお話を聞いて」
「そうしてなのね」
「食べましょう」
こうお話してでした、そのうえで。
皆は今は楽しくお弁当を食べました、ですが次はお握りかお寿司になることが決まったのでした。