『オズのエリカ』
第二幕 エリカの好物
アンがまとめ役となることが決まったエリカをカドリングの国まで送る一団は朝早く日の出と一緒に起きてです。
お風呂に入ってからすぐに朝御飯を食べました、アンは朝御飯のパンとソーセージやハム、ヨーグルトにフルーツの盛り合わせを食べましたが。
その中で、です。アンはフルーツの中の林檎を食べて言いました。
「この林檎美味しいわね」
「そうでしょ、エメラルドの都の林檎よ」
一緒に食べているオズマがにこりと笑って応えました。
「その林檎はね」
「だから皮が緑色なのね」
見れば奇麗な、宝石みたいなエメラルドグリーンです。
「それで味もなのね」
「凄く美味しいでしょ」
「とてもね。我が国は林檎が名産だけれど」
それでもというのです。
「その林檎に負けない位美味しいわ」
「そう言ってくれて林檎農家の人達も喜んでくれるわ」
「そうよね」
「スクランブルエッグも美味しいですね」
ジョージはそちらを食べています、その横には厚くスライスしてカリカリに焼いたベーコンがあります。
「こちらも」
「そうよね、今日も絶品よ」
ドロシーがジョージのその言葉に応えました。
「シェフの人達のお料理はね」
「そうですよね」
「何ていいますか」
神宝もスクランブルエッグを食べつつ言います。
「朝から素敵な気分になれますね」
「うん、とても美味しいものを沢山食べられて」
カルロスはサラダから他のものを食べています、見れば彼が食べている量は今食堂にいる人の中で一番多いです。
「今日一日楽しく過ごせそうですね」
「まずは朝にしっかり食べること」
ナターシャはパンに苺のジャムをたっぷり付けています。
「それからですしね」
「だから美味しいものを沢山食べて」
恵梨香はオレンジを食べています、その皮はグリーンで中身はライトグリーンのエメラルドの都産です。
「出発ですね」
「うん、そうしようね」
「皆でね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーも一緒です、どちらも山みたいに積まれているソーセージやハムを食べています。
「エメラルドの都を出発して」
「カドリングの国に行こうね」
「本当に私一人でいいのに」
エリカはキャットフードを食べつつ言います。
「皆ご大層ね」
「確かにオズの国では誰も死なないわよ」
ドロシーはそのエリカにどうかというお顔で応えました。
「そのことはね。けれどね」
「それでもなの」
「用心もあるしそれにグリンダはカドリングの国家元首よ」
このことについても言うドロシーでした。
「だからそれなりの使節団でないと駄目だし」
「会いに行くには」
「だからアン王女達も一緒なのよ」
「そうなのね」
「そうよ。そこで気ままに言うのはね」
「駄目なのね」
「何でそう気ままなのかしら」
エリカにこう言ってです、すぐに気付いた様に言ったドロシーでした。
「それも猫だからかしら」
「だったら悪いことじゃないわね」
「本当にエリカは猫の個性が出ている猫ね」
「僕エリカ以上に猫らしい猫知らないよ」
トトはそのエリカの傍で朝御飯を食べていますがここで言いました、トトはドッグフードを食べています。勿論皆の傍には飲みもののミルクもあります。
「気ままなところもね」
「猫は自分が一番って言うけれど」
ジョージは今はベーコンを食べています、そうしながらの言葉です。
「エリカはまたそれが強いね」
「私は私よ、そしてね」
「私が一番なんだ」
「それの何処がおかしいの?」
何もおかしいところは感じないというのです。
「それが普通でしょ」
「そこを普通と言うところがね」
「猫でそれで私はなのね」
「強く出ているね」
このことがというのです。
「本当にね」
「そうなのね」
「うん、昨日から言ってるけれどね」
「何か昨日から皆に言われてるわ」
「それで冒険や建国の話にもなってるしね」
「安心して、私は言ったことは途中で投げ出したりしないわ」
それはしないと言うエリカでした。
「飽きっぽいけれどね」
「一度言ったからにはだね」
「ええ、最後までやるわ」
確かに飽きっぽいけれど、というのです。
「途中飽きたら寝るだけだし」
「それでまたやるのね」
「そうよ」
たまたま目の前を通った虫に右の前足を出してから言います、動くものに反応するのは猫の習性です。
「だからね」
「旅も建国もだね」
「途中で投げ出さないわ」
飽きて寝てもというのです。
「絶対にね」
「そのことはいいことだね」
「そうでしょ、猫は諦めないのよ」
飽きっぽい反面そうだというのです。
「だからこのことは安心してね」
「そのことはね」
「ええ、それで朝御飯食べたら」
「出発よ」
今回の冒険のまとめ役であるアンが言ってきました、実は今回の冒険はこの娘が実質的にリーダーなのですがエリカが自分でリーダーだと思っているので表向きはまとめ役ということになっているのです。
「そうするわよ」
「わかったわ、じゃあ沢山食べて」
「それからよ」
「身支度も整えてね」
「出るけれど貴女は」
「この通りお風呂に入れてもらってね」
エリカは自分の奇麗になっている身体をアンに誇らしげに見せながらお話します。
「ブラッシングもしてもらって」
「奇麗になったのね」
「僕もそうだけどね」
「僕もそうしてもらったよ」
見れば臆病ライオンと腹ペコタイガーもです、お風呂に入って身体を洗ってもらってブラッシングもしてもらってとても奇麗になっています。
「気分よくね」
「そうしてもらったよ」
「だから出発前の毛づくろいもね」
その必要もと言うエリカでした。
「しなくていいわ」
「そうなのね」
「あんた達が歯磨きするだけかしら」
残る身支度はというのです。
「そうよね」
「そうね、もうね」
アンもこうエリカに答えます。
「することはね、旅道具は全部持ってるし」
「何処に入れてあるの?」
「リュックの中よ」
そこに入れてあるというのです。
「私がいつも背負ってるね」
「そういえばあんたリュック好きよね」
「軍服を着てるでしょ」
見れば今もそうです、ウィンキーの将軍の服である黄色い詰襟の軍服とそれと同じ色の乗馬ズボン、それにダークイエローのブーツといった恰好です。肩には飾りがあります。
「ウィンキーの皇帝陛下からのプレゼントよ、この服は」
「樵さんね」
「そうよ、それで軍服を着てるとね」
「リュックを背負うのね」
「それだと両手がフリーになるし動きやすいからよ」
背負っていると、というのです。
「だからね」
「あんたはいつもリュックなのね」
「そうよ、それじゃあね」
「ええ、今もね」
「リュックをを背負って」
そしてというのです。
「そこに旅道具は全部入れたから」
「それで行くのね」
「そうするわ」
まさにというのです。
「食べ終わって歯を磨いたらね」
「それからなのね」
「そうよ、私もお風呂に入ったしね」
見ればアンもすっきりした感じです、お風呂上りのいい香りもします。
「気持ちよくね」
「出発しましょうね」
「そうしましょう」
アンはエリカににこりと笑って答えました、そしてです。
皆は朝御飯を食べてそうしてからでした、歯を磨いてからオズマやドロシー達の見送りを受けて出発しました。
エメラルドの都を出て黄色い煉瓦の道を歩いていくとです、先頭を歩いているエリカが皆に言いました。
「皆遅れたりはぐれないでね」
「うん、わかってるよ」
「後ろにちゃんといるからね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーが応えます。
「皆後ろについているから」
「安心してね」
「そうしてね。カドリングの王宮までの道は頭に入っているから」
既にというのだ。
「道案内は任せなさい」
「うん、じゃあね」
「後はエリカが寄り道しないだけだね」
「絶対に寄り道すると思うけれど」
「途中何度もね」
「そんなの当然でしょ」
寄り道はというのです。
「それなくして何が冒険よ」
「寄り道は当然なの」
「興味を持ったところに行かないと」
それこそとアンにも言います。
「駄目でしょ」
「そこも猫らしいわね、自分だけ先に先に行くし」
「ついてこれない子は置いていくわよ」
「そう言って実際にそうすることもね」
それもというのです。
「猫らしいわね」
「何でも猫らしいのね。とにかくね」
「寄り道はなのね」
「していくわ。ほら見て」
言って早速でした、エリカは道の右手にマーガレットを見付けました。そうしてそこに行ってでした。
マーガレット達を見ながらです、お花に近寄るハナアブやカナブン達に手をやります。そうしてちょっかいをかけつつ言うのでした。
「奇麗なお花よ」
「いや、お花はいいけれど」
「自然に前足出してるね」
「もう普通にね」
「それが当然みたいに」
「そうしてるけれど」
「これはもう習性よ」
エリカは前足を出し続けつつジョージ達五人に答えました。
「こうして動くものに手を出すことはね」
「それはだね」
「もう猫の絶対の習性で」
「お花の奇麗さも楽しむけれど」
「普通に虫が動いていると手を出して」
「ちょっかいをかけるのね」
「そうよ。そうしないとね」
それこそというのです。
「猫はいてもたってもいられないのよ」
「これ僕達ライオンもだけれどね」
「虎もそうなんだよね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーも言ってきました。
「ごく自然にね」
「動くものには前足が出るんだよね」
「前足が出るのは」
このことはと言ったアンでした。
「ネコ科の生きもの共通の習性かしら」
「うん、それはね」
「そうみたいだね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーが応えます。
「動くものが見えると」
「もうそれだけで前足が出るのは」
「出さないとね」
「うずうずするんだよね」
前足がというのです。
「だから出さずにいられない」
「エリカと一緒だよ、このことは」
「そうなることは」
本当にとです、アンもマーガレットを見つつ言うのでした。そのマーガレットは白と黄色の奇麗な普通のマーガレットでした。
「ネコ科ってことね」
「うん、豹やピューマもだと思うよ」
「ジャガーやオセロットもね」
「ネコ科の生きものも多いけれど」
「どの子もそうだよ」
「だから私がこうして前足を出すのは」
今もエリカは前足を動かしています、虫達はその前足に困った感じで反応してそうしてお花の周りを飛んでいます。
そしてです、こうも言ったエリカでした。
「至極当然のことなのよ」
「そうなんだね」
「ネコ科だからね」
その生きものだからだとジョージに言います。
「例えば猫じゃらしなんか動かされたら」
「うん、もう無意識にだね」
「前足が出るわ」
「逆に出さない我慢は出来るかな」
「出来る筈ないでしょ」
これがエリカの返事でした。
「それこそ」
「そうだよね、やっぱり」
「猫じゃらしは特にね」
「目の前で動かされると」
「前足が出るわ」
「それも爪も出して」
このことも一緒です、前足を出すには。
「そうしてくるよね」
「それも当然よ」
「爪を出すことも」
「にゅっとね」
その爪を出す勢いも言うのでした。
「そうせずにもいられないわ」
「そうだね、寄り道もして」
「さて、充分楽しんだし」
そでというのでした。
「じゃあね」
「旅の再開だね」
「そうしましょう。それで十時とお昼にはよね」
「ええ、ティ―タイムとお昼よ」
アンがエリカに答えました。
「そのことはね」
「絶対よね」
「この二つがないと」
それこそというのです。
「勿論三時も夕食もね」
「旅は休めないわね」
「休憩も入れないと」
そうしないと、というのです。
「旅は続けられないわ」
「そうよね」
「あんたはしょちゅう休憩しそうだけれど」
「寄り道とかして」
「そうしそうだけれどね」
それでもというのです。
「そうしていってね」
「休憩も取りながら」
「それで進んでいくのよ」
「それは変わらないわね」
「誰の冒険でもそうでしょ」
「ええ、あんたがまとめ役でもね」
「変わらないわ。だからね」
それでというのです。
「ちゃんとお茶やお食事を楽しみながらね」
「進んでいくのね」
「そうするわよ」
アンはエリカに言いました。
「カドリングの国をね」
「そうするのね。赤い国の中を」
「そうしていくわよ」
こう言ってでした、エリカがその気になったので冒険を再開してそうして皆で十時になるとティータイムを楽しんで。
それからお昼には昼食となりますがこの時にエリカが言いました。
「お魚を食べたいわね」
「お魚料理をなの」
「それも日本のね」
この国の、というのです。
「お刺身がいいわね」
「貴女お刺身が好きなの」
「大好きよ」
それこそとです、エリカはアンに答えました。
「お寿司も好きだけれどね」
「お刺身が一番なのね」
「大好物よ、だからね」
「今から出すお昼は」
「お刺身にしてね」
このお料理にというのです。
「是非ね」
「じゃあ何のお魚がいいのかしら」
「そうね、鯛か鯉か」
エリカはアンに尋ねられて答えました。
「今はどちらかという気分ね」
「鯛か鯉なの」
「どちらかよ」
「そうなのね。そういえば私最近」
アンはここで自分のことを思って言いました。
「鯉食べてないわね」
「あら、そうなの」
「じゃあ今日は鯉料理がいいわね」
「お刺身に加えてなのね」
「フライにムニエルにね」
お刺身だけでなく、というのです。
「揚げてあんかけにして」
「中華風ね」
「そうよ、色々とね」
出してというのです。
「楽しみましょう」
「鯉も色々食べられるのね」
「ええ。ただね」
ここでこうも言ったアンでした。
「ジョージ達が言うにはオズの国だから普通にお刺身を食べられるけれど」
「何かあるの?」
「鯉は生だと気をつけないといけないのよ」
「あら、そうなの」
「虫がいるらしいから」
鯉の中にというのです。
「本当はよく火を通したりしないとね」
「駄目なのね」
「ええ、お刺身では食べられないのよ」
「そうなのね。私外の世界にいた時は鯉は食べなかったから」
そうだったからだというのです。
「そうしたことはね」
「よくわからないのね」
「そうなの」
どうにもというのです。
「これがね」
「そうみたいなのよ。私もね」
「聞いただけなのね」
「外の世界には行っていないから」
そうした経験がないからというのです。
「どうもね」
「そういえばアメリカでは」
ジョージはアンとエリカのやり取りを聞いて言いました。
「あまり鯉は」
「食べないのね」
「はい、お魚も食べますけれど」
それでもというのです。
「鯉はあまり」
「物凄く美味しいのに」
神宝はジョージのお話を聞いて以外に思いました。
「食べないのはそれだけで損をしているよ」
「そうよね。鯉って美味しいのよね」
恵梨香も言います。
「鯉こくにしてもいいし」
「川魚も食べるといいよ」
物凄く大きなアマゾン川を持っているブラジル出身のカルロスの言葉です。
「是非ね」
「何かよく海のお魚を食べるけれど」
最後にナターシャが言いました。
「川魚もいいわよね」
「というかアメリカも川が多いでしょ」
アンは伝え聞くお話から言いました。
「だったら川魚も食べるといいわ」
「鯉もですね」
「ええ、だから今日はね」
「鯉をですね」
「食べましょう」
アンはジョージにも言いました、こうしてでした。
テーブル掛けを拡げるとパンだけでなくです、そうした鯉料理を出しました。見ればシチューも鯉が入っています。
エリカはその中の鯉のお刺身を食べて言いました。
「美味しいわね」
「それは何よりね」
「やっぱりお魚はこれよ」
お醤油をかけているお刺身を食べつつ言うのでした。
「お刺身が一番よ」
「そう言ってもらって出した介があったわ」
「ただね」
ここでジョージはエリカが食べているお醤油をかけているそのお刺身を見ました、そのうえでエリカに言いました。
「エリカは山葵使わないんだね」
「あのスパイスはなのね」
「うん、お醤油をかけてもね」
それでもというのです。
「山葵は駄目なんだ」
「私は基本スパイス系は駄目よ」
エリカはジョージにこう答えました。
「どうしてもね」
「それでなんだ」
「ええ、今だってね」
「山葵はなんだ」
「使っていないのよ」
そうだというのです。
「お醤油だけで充分よ」
「そうなのね」
「そう、それでね」
「お醤油だけなんだね」
「これで充分よ」
まさにというのです。
「だからね」
「それでなんだ」
「特に山葵は駄目だから」
「あの一気にくる刺激はだね」
「どうしても無理だから」
「そういえば山葵はきついよね」
まさにと言ったカルロスでした。
「お鼻に一気につんと来るから」
「あれはきついよ」
神宝もこう言います。
「日本にはこんなのあるのかってびっくりしたよ」
「お寿司でもよく使われているけれど」
それでもと言ったナターシャでした。
「あの威力は恐ろしいわ」
「私達でもきついものがあるから」
恵梨香はまだ小学生の自分達としてはと言いました。
「だからね」
「それでよ」
エリカも言います。
「私は山葵はいいわ」
「山葵はね」
どうしてもとです、アンも言います。
「沢山使ったら死にそうになるから」
「そうでしょ、あんたも」
「ええ、沢山使うことはね」
どうしてもというのです。
「無理があるわ」
「そうでしょ、胡椒や生姜や唐辛子なら多少はだけれど」
大丈夫だというのです。
「山葵は無理よ」
「あんたにも苦手なものがあるのね」
「意外?」
「いや、あんたは好き嫌いが激しいから」
だからだというのです。
「そうしたこともあるかってね」
「思ったのね」
「そうよ」
「何か私って色々思われてるのね」
「ええ、好き嫌いが激しいともね」
「やっぱりそうなのね」
「ええ、けれどね」
それでもというのです。
「あんた柑橘類も食べるわよね」
「蜜柑とかオレンジも」
「そうよね」
「まだあれはいいのよ、それに食べたら美味しいから」
だからだと答えたエリカでした。
「大丈夫よ」
「そうなのね」
「けれど山葵は刺激が強過ぎるから」
だからだというのです。
「無理なのよ」
「そうなのね」
「確かに私にも苦手なものはあるわ」
エリカもこのことを認めました。
「山葵にしても長い時間起きていることもね」
「そうしたこともなのね」
「苦手よ」
「あっ、そういえばエリカ達ってね」
ここでジョージはあることに気付きました、その気付いたことはといいますと。
「猫にしても犬にしてもね」
「オズの国の生きものはだね」
「皆だね」
「うん、寝る時間短いよね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーに言いました。
「外の世界の生きものに比べたら」
「犬も猫も一日十六時間は寝るね」
神宝がこう言いました。
「けれどエリカも他の皆もそこまでは寝ないね」
「八時間は普通に寝ていても」
カルロスも皆をずっと見てきたので言えます。
「十六時間まではね」
「そこまでは寝ていないわね」
ナターシャは見てもそうです。
「皆は」
「臆病ライオンさんも腹ペコタイガーさんもね」
恵梨香も言います。
「そこまでは寝ていないわね」
「うん、流石にね」
「そこまではね」
「そうだね。オズの国の生きものはそこも違うんだね」
「私外の世界ではもっと寝てたわ」
エリカが言ってきました。
「一日の三分の二位はね」
「そのまま十六時間だね」
一日の三分の二と聞いて言ったジョージでした。
「それだと」
「そこまで寝ていたけれど」
「オズの国に来てからは」
「それ位よ。多くて十時間位かしら」
「随分寝る時間が減ったね」
「そうね、喋られる様になったし」
このことについても言うエリカでした。
「色々変わったわ」
「そうだね」
「そのせいかね」
さらに言うエリカでした。
「色々動く様になったし」
「外の世界にいた時以上にだね」
「そうもなったしね」
「本当に随分変わったんだね」
「ええ、自分でも思うわ」
「まあ動き回って悪戯することは駄目だけれどね」
「それが猫の仕事じゃない」
悪戯もとです、お刺身を美味しく次から次に平らげ奈良が言うエリカでした。
「そうでしょ」
「それはまた勝手な解釈だね」
「そうかしら」
「そうだよ、君の場合いつもだけれど」
それでもというのです。
「勝手な解釈だね」
「まあそこはどうでもいいけれどね」
「どうでもよくないしね」
「この娘は相変わらずね。けれどまたわかったことがあったわ」
アンはエリカの本当にいつも通りの悪びれない態度にはやれやれと思いながらもこのことに喜んでいました。
「オズの国の生きものは外の世界の生きものより寝る時間が短いのね」
「人間と同じみたいですから」
「外の世界の生きものはもっと寝て」
「そこはですね」
「本当に違うのね」
アンはマスタードを程よくかけたフライを食べつつ述べました。
「そのこともわかったわ」
「そうですね、本当に色々と違いますね」
「オズの国と外の世界ではね、あとね」
「あと?」
「最後のデザートは何にしようかしら」
鯉料理尽くしの今の昼食の最後のそれはというのです。
「一体」
「そうですね、それは」
「ちょっと考えますね」
「具体的には何がいいか」
「デザートっていっても色々ですし」
「ちょっとどれかとは言いにくいですね」
五人共アンのその言葉に少し考えました。
「ケーキかアイスクリームか」
「クレープもいいですし」
「パイも悪くないですね」
「ワッフルもありますね」
「ヨーグルトもいいですし」
「そうね。どうしようかしら」
アンも五人と一緒に考えました、ですがここでエリカが言いました。
「そんなのふと閃いてよ」
「それでなの」
「思いついたものでいいのよ」
こうアンに言うのでした。
「迷うことなんてなくね」
「それでいいの」
「そう、何でもいいでしょ」
それこそというのです。
「思いついたらね」
「貴女みたいにすればいいの」
「そうでしょ、これで」
「ううん、じゃあ」
言われてです、アンが思い付いたデザートはといいますと。
「今ふと思い浮かんだのはね」
「何だったの?」
「フルーツを小さく切ってね」
そうしてというのです。
「オレンジや苺やパイナップルや桃やバナナを」
「それなの?」
「その上に甘いヨーグルトをたっぷりかけた」
「そういうものね」
「それを思い付いたけれど」
「じゃあそれでいいじゃない」
「皆もそれでいい?」
エリカに言われてからです、アンはまずは五人に尋ねました。
「それで」
「あっ、美味しそうですね」
「フルーツとヨーグルトですか」
「その組み合わせ凄くいいですね」
「じゃあそれでお願いします」
「私達はそれを」
「貴方達もいいかしら」
アンは次は臆病ライオンと腹ペコタイガーに尋ねました。
「それで」
「うん、美味しそうだからね」
「僕達もそれでいいよ」
二匹もこう答えます、こうしてアンはそのデザートを出して皆で食べました。一緒にミルクも出しました。
そうしてそのデザートも食べてから冒険を再開しますが。
ここで、です。アンは今も先頭を行くエリカに言いました。
「グリンダさんのお城までは先だけれど」
「それまでっていうのね」
「楽しんで行くのね」
「当然でしょ。冒険でも何でもね」
「生きているのなら」
「何でも楽しむものよ」
そうすればいいというのです。
「そうでしょ」
「それもそうね」
「そう、だからね」
「グリンダさんにお会いするまでも」
「楽しんで行くわよ。例え何があってもね」
それでもというのです。
「楽しんで行くわよ」
「わかったわ。ただね」
「ただ?」
「そろそろね」
アンはカドリングの地理、何処にどういった国があるのかを把握したうえで言いました。
「陶器の国やジグゾーパズルの国ね」
「そうした国々に行けるわね」
「他の国にもね」
「そういえばまた国が増えたわよね」
「ええ、オズの国の中には色々な国があってね」
アンの国にしてもそのうちの一つです。
「カドリングの国もね」
「また一つ増えたわね」
「そうよ。そうした国々にもね」
「近くに行ったらね」
それでと言うエリカでした。
「興味を持つでしょうね」
「そうなることを今から言うのね」
「予想出来るから」
自分でというのです。
「だからね」
「そう言うのね」
「言うわ、後ね」
さらに言うエリカでした。
「オズの国でどんな国があってもね」
「そのことはっていうのね」
「不思議じゃないわよね」
「ええ、本当に色々な国があるのがね」
「オズの国よね」
「だからね」
それでというのです。
「その国を見るのもね」
「楽しみにしてるのね」
「今からね。例えばオークの国があっても」
それでもというのです。
「いいわよね」
「あの鳥ね」
「そして別のオークもね」
「ええと、猪か豚の頭を持った種族ね」
「あちらのオークの国があってもね」
「本当に色々な国があるからね」
「どんな国があってもね」
それでもというのです。
「不思議じゃないし面白いし」
「だからなのね」
「楽しんで行くわよ」
「それじゃあね」
こうしたお話をしてどんどん先に行ってカドリングの国に入る時にです、緑の世界が一変しました。
まるで絨毯が変わるみたいに赤い草原の中を進む黄色い煉瓦の道を歩いてです、ジョージは言いました。
「遂にカドリングの国に入ったね」
「うん、これでね」
「カドリングの国に来たよ」
「相変わらず赤い世界ね」
「とても鮮やかな」
「私カドリングに来たの久し振りよ」
アンはジョージ達五人にこう言いました。
「本当にね」
「そうですよね、アン王女のお国はウィンキーにありますから」
「カドリングに来られる機会は」
「そうそうないですよね」
「ウィンキーかすぐ傍のギリキン」
「この二国ですね」
「そうなの。だからカドリングに行く機会も久し振りで」
それにと言うアンでした。
「マンチキンの国にもね」
「行く機会がないんですね」
「だから嬉しいわ」
ジョージに笑顔でお話しました。
「こうしてカドリングの国に来られて」
「そうなんですね」
「ええ、それとね」
さらに言うアンでした。
「今度機会があったらね」
「その時はですね」
「マンチキンの国にも行きたいわ」
この国にもというのです。
「是非ね」
「あの国にもですね」
「そして青い世界を見たいわ」
マンチキンの色は青です、だから目に入るものは全て青なのです。
「だからね」
「是非ですね」
「そう、マンチキンの国にも行きたいわ」
是非にというのです。
「そうしたいわ」
「そして青い世界を見て楽しみたいんですね」
「青いものも食べてね」
こちらもというのです。
「そうしたいわ」
「そうですか」
「ただ。マンチキンは別の機会で今はね」
「カドリングの国をですね」
「楽しませてもらうわ」
「その意気よ。カドリングにいるから」
また言うエリカでした。
「それならね」
「カドリングの国をね」
「楽しむべきよ」
是非にというのです。
「それが筋よ」
「そうよね」
「そしてね」
さらに言うエリカでした。
「色々楽しみましょう」
「グリンダさんのところに行くまでね」
「それからもね」
「建国を許してもらったら」
「それからもよ。しかし本当にね」
「本当にっていうと」
「皆私が女王として務まるか言うわね」
このことについても言うエリカでした。
「グリンダもかしら」
「絶対にそう言うと思うわ」
アンはエリカにすぐに答えました。
「グリンダさんもね」
「私が猫の女王として務まるか」
「貴女みたいな性格だったら」
それこそというのです。
「多くの人がそう思うと思うわ」
「やれやれね。それはやってみたらね」
「わかることっていうのね」
「わかるわ」
胸をぴんと張って言うエリカでした。
「絶対にね」
「どうかしらね」
「あら、まだ言うの」
「言うわよ、今だって何かとね」
「猫のよし悪しが出ているから」
「その貴女が女王となるとね」
アンはお話しているうちに自然と眉を顰めさせました、そしてそのうえでエリカにさらに言うのでした。
「大丈夫かしらって思うわ」
「自然となの」
「そう思うわ。あとね」
「あと?」
「貴女今尻尾ぴんと立ってるわね」
このことに気付いたアンでした、エリカのこのことに。
「しっかりと」
「それはあれよ」
「機嫌がいいから」
「そう、だからよ」
まさにというのです。
「尻尾が立っているのよ」
「そうなのね」
「機嫌がいいわ、本当に」
「冒険が出来て」
「あとさっきのお刺身も美味しかったし」
先程の鯉のお刺身もというのです。
「だからね」
「上機嫌なのね」
「かなりいい気分よ」
実際にと答えたエリカでした。
「もううきうきとしてるわ」
「そんなに気分がいいのね」
「そうよ、後ね」
「後?」
「この最高の気持ちがずっと続く祈るわ」
「建国もして」
「そう、それからもね」
まさにというのです。
「そうなってもらいたいものね」
「それは難しいけれど」
「それでもなのね」
「そうなればいいわね」
アンはエリカに微笑んで答えました。
「私も」
「そうでしょ、最高の気持ちが続けばね」
「それが一番いいわね」
「ええ、だからね」
それでと言うのでした。
「そう願うわ」
「そういうことよ。さて地図あるわよね」
「持って来てるわ」
アンはリュックを自分の前に持って来ました、そしてその中から一枚の地図を出してそのうえで言いました。
「ここにね」
「カドリングの地図ね」
「魔法の地図よ、魔法使いさんから貰った」
そうした地図だというのです。
「オズの国の見たい場所を見せてくれるの」
「そうした地図なの」
「ええ、いい地図でしょ」
「オズの国ならではの地図ね」
「海図にも使えるっていうわ」
見せてくれるのは陸地だけではないというのです。
「だからね」
「それでなのね」
「ええ、いい地図でね」
「この辺りのこともなのね」
「ちゃんとね」
それこそというのです。
「見せてくれるわ」
「有り難いわね、じゃあね」
「今からね」
「この辺りの地理を確かめるわ」
その地図でというのです。
「そうするわ」
「お願いするわね」
「さて、それでね」
さらに言うアンでした、地図を見ながら。
「明日辺りになると思うけれど」
「そこになのね」
「この煉瓦の道を少し東に行ったらね」
そうすればというのです。
「様々な元素の妖精達の国があるわ」
「妖精達の国があるの」
「ええ、地水火風木金のね」
そうした元素のというのです。
「妖精達の国があるわ」
「そうなのね、それじゃあね」
「その国になのね」
「行きましょう」
是非にと言うのでした。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
アンも応えました、そしてでした。
アンはここでこうも言いました。
「まあ急がない旅だから」
「特によね」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「その国にも行きましょう」
「それじゃあね」
「美味しいものも食べてね」
「テーブル掛けで出して」
「木の実もあるし」
オズの国にある様々な木の実が成る木のこともお話します。
「だからね」
「そうしたものも楽しみにしながら」
「旅をしていきましょうね」
「わかったわ」
エリカも頷きました、そうしてです。
皆はカドリングの国も先に進んでいきました、旅はまだはじまったばかりですがもう楽しいものになっています。