『オズのガラスの猫』
第十二幕 楽しい和解
つぎはぎ娘とチクタクが犬の国から戻ってきました、オズマは二人が帰ってくるとすぐに尋ねました。
「犬の国の人達は何と言ってたの?」
「オズマが言うならならってね」
「答えてーーくれましーーた」
二人でオズマに答えます。
「それでーー明日ーーです」
「こっちに皆で来てくれるそうよ」
「そう、それじゃあね」
オズマは二人の言葉を聞いて笑顔で言いました。
「明日にね」
「いよいよね」
「河豚料理ーーをーーですーーね」
「出すわ」
「河豚ですか」
河豚と聞いてです、オズマ達と一緒にいた猫の国の市長さんはびっくりして言いました。
「あのお魚を出すのですか」
「ええ、あのお魚を出すわ」
「それはまた」
「あれっ、河豚美味しいわよね」
「はい、ただメジャーとはです」
お魚の中ではと言う市長さんでした。
「言えないので」
「オズの国ではそうよね」
「やはり鱈や鮭や鱒等ですね」
よく食べるお魚はというとです。
「我々は」
「全部アメリカのお魚ですね」
ここでこう言ったのはジョージでした。
「アメリカでよく食べるお魚ですね」
「オズの国はアメリカが反映されるから」
神宝も言います。
「猫の国で食べるお魚もアメリカでよく食べるお魚なんだね」
「お寿司とかあっても」
カルロスはお料理をお話に出しました。
「結構アメリカの感じになってるしね」
「私達は日本そのままのお寿司を食べてるけれど」
それでもと言う恵梨香でした。
「あれはあえて出してるから」
「そうだよ、お寿司とかもね」
市長さんも子供達にお話します。
「オズの国ではね」
「アメリカナイズドといいますか」
「日本のものそのままはあまりないんですね」
「どうしても」
「そうなるんですね」
「そうだよ、それと共にアメリカは色々な国から人が来ていて」
さらにお話する市長さんでした。
「色々な食べものが入っていてね、私達も食べていて」
「それで、なんですね」
いささか引いたお顔で尋ねるナターシャでした。
「シュールストレミングも」
「食べるよ、私達の国ではね」
「人気があるんですね」
「あの美味しさを犬の国の人達にも紹介したかったんだがね」
このことを残念そうに言う市長さんでした。
「それがね」
「喧嘩になったんですね」
「全く、酷い匂いだってね」
「凄い匂いするって有名ですよ」
「その匂いがいいんだよ」
好きな人として語る市長さんでした。
「それがだよ」
「犬の国の人達はですか」
「臭いって言ってね」
「喧嘩になって」
「我々も困っているんだよ」
「そういうことなんですね」
「うん、我々にしても喧嘩はしたくないしね」
猫の国を代表して言う市長さんです。
「何とかしたいと思っていたんだけれど」
「だからあたし達が来たのよ」
ガラスの猫は市長さんにまさにと言いました。
「そういうことなのよ」
「うん、ではね」
「明日仲直りしてもらうわよ」
「その為の切り札が河豚なんだね」
「そうなるわよ」
「わかったよ、しかし河豚とはね」
またこのお魚について言う市長さんでした。
「予想していなかったよ」
「けれど河豚は美味しいでしょ」
「はい、ただあまりこの国では食べないです」
市長さんはオズマに答えました。
「あまり」
「アメリカでは河豚はあまり食べないから」
「食べても」
「それでもなのよ」
「ここはですか」
「河豚よ、あのお魚でいくの」
こう市長さんにお話するのでした。
「しかも色々なお料理を出すから」
「河豚のですか」
「お鍋にお刺身、唐揚げにぽん酢あえにカルパッチョにムニエルにアクアパッツァとね」
「色々ありますね」
「そう、色々出してね」
まさにというのです。
「皆に楽しんでもらって」
「そうしてですか」
「そこからお魚の美味しさを知ってもらって」
「仲直りをですか」
「してもらうわ」
是非にというのです。
「こんなもの出すなって怒ったのよね、あちらは」
「はい、シュールストレミングを」
「けれどね、ここはね」
「河豚をですか」
「出すから」
「わかりました、こうした場合は鱈や鮭のムニエルかイタリアのアクアパッツァ、若しくはパエリアかと思ったのですが」
「日本も入れていくから」
むしろこの国のお料理をというのです。
「前面にね、それにイタリアも」
「両国のお料理で、ですね」
「河豚を出すからね」
「そうですか」
「というかいきなりそんなの出したら」
ガラスの猫がまた言いました。
「シュール何とかをね」
「それが失敗だったと」
「あたしが聞くに凄い上級者向けのお料理じゃない」
シュールストレミング、それはというのです。
「まあにね、そんなのを出したら」
「喧嘩にもなると」
「あたし達の中でそうしたお話もしたのよ」
まさにというのです。
「いきなりシュール何とかはないって」
「美味しくとも」
「正直に言ってあれは爆弾よ」
オズマも難しいお顔で市長さんにお話します。
「私がこれまでお話した通りね」
「お客さんにお話することもですか」
「絶対によくないわ」
「絶対ですか」
「ええ、そうよ」
まさにというのです。
「だからね」
「今度からはですね」
「お魚料理はね」
どうしてもというのです。
「オーソドックスがいいのよ、主観で美味しいと思うものを出すより」
「オーソドックスにですか」
「そうしたお魚でそうしたお料理で。シュールストレミングはスウェーデンでもメジャーでないのよ」
言うならキワモノだというのです。
「だからね」
「あれは出さない方がいいですか」
「絶対にね」
「そうですか、では」
「ええ、今度からはシュールストレミングは出さないことよ」
お客さんにはというのです。
「あちらからお願いされない限りね」
「そうすべきですか」
「本当にね、それと河豚は日本ではね」
「メジャーですか」
「外の世界では毒があって調理が難しいけれど」
「その様ですね」
「そう、けれどね」
オズの国の河豚はといいますと。
「毒がないから」
「安心して食べられるので」
「思いきりだせるわ」
「そうですか、では」
「河豚で色々なお料理を出しましょう、それとね」
さらに言うオズマでした。
「お寿司も出すわよ」
「お寿司もですね」
「こうした時に出すのも美味しいわよ」
このことも言うオズマでした。
「お寿司は」
「確かに。パーティーの時に出しても」
「お寿司は美味しいわね」
「はい、とても」
「だからね」
それでというのです。
「ここはね」
「お寿司もですね」
「出しましょう」
「わかりました、それではお寿司もふんだんに」
出そうと決まりました、そしてここでまた言うガラスの猫でした。
「というか最初からお寿司出せばよかったのよ」
「そうよね、普通にね」
つぎはぎ娘も言います。
「お寿司なら喧嘩にならなかったわよ」
「シュールストレミングーーはーー危険物ーーです」
食べることのないチクタクもこう認識しています。
「空けるーーことーーさえ」
「その空ける作業も楽しいのですが」
「だからあれは初心者には凄く難しいの」
ここでまた言うガラスの猫でした。
「しっかりわかってね」
「それでは」
「そう、本当に」
まさにというのです。
「今度から出さないことよ」
「そういうことだね」
「そう、それとね」
また言うガラスの猫でした。
「匂いが強烈だとね、ウォッシュチーズよりも凄い匂いって?」
「凄くいい匂いだよ」
「あんた達がそう思っても他人は違うの」
くれぐれもと言うガラスの猫です。
「そこをしっかりとね」
「守って」
「そうしておもてなししないとね」
「例えばフライとかだと」
ナターシャは自分が好きな魚料理の名前を出しました。
「ここまで喧嘩にならなかったわ」
「喧嘩自体にね」
「お寿司でもね」
「そうよね、食べないあたしも思うわ」
ガラスの猫はナターシャに応えました。
「そのことは」
「主観でお料理を出さない、そしてキワモノは出来るだけ避ける」
「その二つは大事よね」
「美味しいものを食べてもらうにも」
「本当にそうね」
「いや、そうなんだね」
市長さんも頷くのでした。
「これからは私も覚えておくよ」
「そうしてね、さて明日はね」
「うん、和解の日になるね」
「そうなるわよ」
ガラスの猫は胸を張って言いました、そしてその次の日です。
犬の国の人達が来ました、皆それぞれの種類の犬が人間と合わさった様な身体でウィンキーの服を着ています。ふさふさとした毛で手は犬の前足になっています。
その先頭にです、ゴールデンレットリバーのお顔をした犬の人がいてオズマに挨拶をしてきました。
「この度はどうも」
「ええ、来てくれて有り難う」
笑顔で応えたオズマでした。
「この度はね」
「はい、彼等とですね」
オズマの後ろにいる猫の国の人達を見ました。
「和解を」
「して欲しくて来たの」
「我々にしてもです」
「そうよね、和解したいわよね」
「喧嘩をするなぞ馬鹿馬鹿しいことです」
犬の国の人達もこう考えているのです。
「ですが」
「それでもっていうのね」
「はい、それはです」
まさにというのです。
「あの様なものを出されては」
「それは我々も言われたよ」
猫の国の市長さんが応えました。
「だからこれからはね」
「出さないのだね」
「そうするよ、癖の強いものはね」
「そうしてもらえると助かるよ」
「ではね」
「シュールストレミングやそうしたものは二度と出さない」
「そうさせてもらうよ」
このことは定まりました、そして。
ナターシャはここでガラスの猫に尋ねました。
「あのゴールデンレットリバーの人は」
「そうよ、犬の国の市長さんよ」
「そうなのね」
「あの人がね」
まさにというのです。
「そうなのよ」
「わかったわ」
ナターシャはガラスの猫に頷いて答えました。
「覚えておくわね」
「そうしてね、とにかく今からね」
「ええ、河豚を食べてもらって」
「仲直りね」
「そうしてもらいましょう」
二人でお話をしてです、オズマは実際に両国の人達に言いました。
「では今からね」
「はい、お料理をですね」
「出してくれるのですね」
「そうさせてもらうわ」
両国の市長さんにも言いました。
「これからね」
「そうですか、それでは」
「ええ、私がお料理を考えたからね」
「どういったお料理か」
犬の国の市長さんはオズマに笑顔で応えました。
「期待しています」
「それではね、今からね」
「はい、もうお魚は用意しています」
猫の国の市長さんが応えました。
「そしてですね」
「お料理に使う香辛料はね」
「持って来てくれたんですね」
「そうよ、オズの国一の香辛料作りの人に貰ったから」
このこともお話したオズマでした。
「ジンジャー将軍の従姉妹のね」
「あの人からですか」
「そう、ペッパーさんからね」
それでというのです。
「安心してね」
「そうしてですね」
「作ってね」
「わかりました」
猫の国の市長さんが笑顔で応えてです、そのうえで。
猫の国の人達は皆でお料理にかかりました、オズマ達はお料理が作られる間犬の国の人達とお話をしました。
するとです、ナターシャ達はあることに気付きました。その気付いたことは一体何かといいますと。
「犬の国の人達もね」
「いい人達でしょ」
「ええ」
ガラスの猫に答えました。
「凄くね」
「そうでしょ、猫の国の人達と同じでね」
「犬の気質でね」
「いい人達なのよ」
「犬はいい生きものだよ」
その犬の国の市長さんも言ってきました。
「そして我々もね」
「犬としてなんですね」
「うん、自分を律していてね」
そしてというのです。
「よくありたいと思っていてね」
「それでなんですね」
「そうなる様にしているから」
「それで、ですね」
「犬のいい部分をもっと育てる様にいつも努力しているんだ」
「そうですか」
「僕達はね」
まさにと言う犬の市長さんでした。
「誰かと一緒にいるとその人を笑顔にしたくなるんだ」
「自然とですね」
「そうなんだ」
まさにというのです。
「僕達は」
「そうなんですね」
「そう、普通にね」
まさにというのです。
「だから今もね」
「皆をですね」
「笑顔にしたいと思っているよ」
今もというのです。
「本当に」
「そうですか、じゃあ」
「今は楽しくお話をしようね」
「わかりました」
「いい匂いもするしね」
こうも言った犬の市長さんでした。
「今は楽しみだよ」
「あっ、犬のお鼻だから」
「わかるよ、色々な香辛料を使っていて」
そうしてというのです。
「随分美味しいお料理が出来そうだね」
「お鼻でもうそこまで、ですね」
「わかるよ」
こうナターシャに答えるのでした。
「全部ね」
「そうなんですね」
「あのシュールストレミングはね」
まさにというのです。
「あんまりだったよ」
「匂いが」
「あんな臭いものはないよ」
こう言うのでした。
「何かと思ったよ」
「食べものですが」
「それはわかったけれどね、僕達の鼻にとっては」
犬の国の人達のそれにとってはです。
「もう耐えられなかったよ」
「それで喧嘩にですね」
「なったんだ」
「そのことは聞いてましたが」
「いや、本当に僕達はね」
「お鼻がいいから余計にですね」
「いい匂いにも敏感でね」
そうしてというのです。
「逆もだから」
「あの食べものは」
「とても耐えられなかったんだ」
「やっぱりシュールストレミングは」
「爆弾みたいだよ、僕達には無理だよ」
犬の国の人達にはというのです。
「今から食べるお料理は大丈夫だろうけれどね」
「そうですか」
「これはお魚だね」
このこともわかる市長さんでした。
「そうだね」
「はい、そうです。ただ」
「どういったお魚でお料理かはだね」
「まだ言えないです」
「ではここはだね」
「楽しみにしてです」
ナターシャは市長さんに笑顔で言いました。
「待っていましょう」
「ではね」
「はい、待っていましょう」
「そうさせてもらうよ」
市長さんも他の犬の人達もです、皆で。
今はお喋りをして匂いを楽しみにしながらお料理が出来るのを待っていました。そうしてやがてです。
皆が来てです、そしてでした。
遂に出てきました、そのお料理が。
犬の国の人はそのお料理を見て皆これはというお顔になって言いました。
「あれっ、このお魚は」
「そうだね、河豚だね」
「へえ、河豚なんだ」
「河豚は食べられるんだね」
「そうよ、河豚は食べられるのよ」
オズマが犬の国の人達にお話します。
「それも凄く美味しいの」
「確かに。この匂いは」
犬の国の市長さんも言います。
「美味しい匂いです」
「そうよね」
「ではこの河豚のお料理は」
「とても美味しいわ」
実際にというのです。
「だから皆で食べましょう」
「わかりました、しかし」
ここで出されているお料理をです、犬の国の市長さんは見回して言いました。
「色々なお料理がありますね」
「ええ、河豚で美味しいと思うお料理を全部出したの」
「そうでしたか」
「どうかしら」
「はい、見事です」
見ただけでと言う市長さんでした、見ればお刺身にお鍋、唐揚げに天婦羅にぽん酢あえにカルパッチョ、フライにアクアパッツァ、ムニエルに揚げてあんをかけたものにと色々なお料理があります。しかもです。
そのお料理ごとに合う香辛料が使われて用意されています、犬の国の人達は香辛料のその香りも嗅いで言うのでした。
「ううん、この香りは」
「いいね」
「凄くいいよ」
「何ていい香りなんだ」
「とても美味しそうな香りだよ」
「この香辛料達であの料理を食べたら」
「うん、どれだけ美味しいだろうね」
こう口々にお話をするのでした、そしてです。
その犬の国の人達にです、オズマは再び言いました。
「では今からね」
「はい、皆でですね」
「この河豚料理を食べるんですね」
「それぞれの香辛料と一緒に」
「そうするんですね」
「ええ、そうしましょう」
こう笑顔で言ってでした、そのうえで。
皆で河豚料理を食べるのでした、その様々なお料理を。
そしてです、お刺身を山葵醤油で食べたりお鍋を生姜や紅葉おろしを入れたぽん酢で食べました。胡椒や香草で味付けされたムニエルや大蒜を使ったアクアパッツァもです。勿論お寿司もあります。
するとです、犬の国の人達ばびっくりして言いました。
「うん、これはね」
「凄く美味しいね」
「お魚はこんなに美味しかったんだ」
「いい匂いだしね」
「これならね」
「幾らでも食べられるよ」
「お魚は美味しいのよ」
ここでこのことをお話するオズマでした。
「だからね」
「はい、これからはですね」
「我々もですね」
「お魚を食べていいですね」
「この河豚も」
「そうよ、というかどんどんね」
これまでは食べていなかったけれどというのです。
「食べてね、お魚も」
「わかりました」
犬の国の人達はズボンから出ている尻尾をぱたぱたとさせてオズマの言葉に答えました、そしてです。
皆で河豚料理を大喜びで食べていきます、猫の国の人達もです。
河豚料理を食べて大喜びです、それでこの人達も言うのでした。
「いや、これはね」
「素敵な味だね」
「これなら幾らでも食べられるよ」
「色々なお料理があるし」
「香辛料にも合うし」
「それぞれの香辛料とね」
「とても合ってるしね」
お魚だけでなく香辛料も楽しんでいます、河豚とそれぞれのお料理に使っている香辛料がとても合っていてとても美味しいのです。
それで猫の国の人達も笑顔で食べて喉を鳴らします、そして。
猫の国の市長さんが犬の国の市長さんに言いました。
「いや、以前はです」
「はい、この前のことですね」
「申し訳ありませんでした」
シュールストレミングを出してというのです。
「今度からはああしたことはしませんので」
「そうですか、それではです」
「それで、ですか」
「我々もいいです」
もう怒らないというのです。
「そちらも好意でのことなのに怒ったので」
「そのことをですか」
「今は反省しています、ですから」
「もうこれで、ですか」
「仲直りをしましょう」
「それでは」
「はい、それにです」
さらに言う犬の国の市長さんでした。
「これだけのお料理を出してくれて」
「これはオズマ姫に紹介してもらったもので」
「そうなのですか」
「はい、我々もこれまで河豚はあまり食べていませんでしたが」
「ここまで美味しいとは」
「思っていませんでした」
そうだったというのです。
「いや、いいことを教えてもらいました」
「そうでしたか」
「はい、実は」
「ここまで美味しいお魚があるとは」
犬の国の市長さんは今も驚きを隠せないのでした。
「思っていませんでした、ですが」
「それでもですね」
「はい、これからは我々もです」
「河豚をですか」
「そして他のお魚もです」
河豚だけでなくというのです。
「食べていきたいです、そしてその魚料理を我々にご馳走してくれた猫の国の皆さんにです」
「オズマ姫が教えてくれたお料理ですが」
「オズマ姫にもです」
オズマを忘れる筈がありませんでした、喧嘩の仲裁をしてくれて河豚料理を教えてくれたこの人のことを。
「勿論です」
「そうですか」
「はい、感謝をさせて頂きます」
「そのうえで、ですね」
「仲直りということで」
「わかりました」
お互いに右手を差し出してでした、そうして。
市長さん同士で握手をして両国の人達は拍手喝采をしました、こうして猫の国と犬の国は和解しました。
その和解が成るとです、両国の人達は河豚料理をお腹一杯食べました。そしてその後でデザートとなるのですが。
ここで、です。出された色々なデザートを見て言うナターシャでした。
「デザートもね」
「うん、いいね」
ジョージも言います、見ればケーキにアイスクリーム、シュークリーム、エクレア、マカロン、プリンにゼリーにとお菓子が沢山あります。
「どれも美味しそうだよ」
「一体何を食べればいいかな」
神宝もにこにことしています。
「迷うよ、これは」
「好きなものを食べればいいにしても」
カルロスは嬉しい悩みに困っています。
「どれがいいかな」
「これは困るわね」
実際にと言う恵梨香でした。
「何を食べればいいのか」
「そんなの簡単じゃない」
ガラスの猫が迷っている五人に言いました。
「目を閉じてぱっと目に入ったものをね」
「それをなの」
「そう、食べればいいのよ」
五人を代表して言ってきたナターシャに答えました。
「これでね」
「そうなのね」
「そうよ、それでね」
「ううん、目を閉じてなのね」
「一旦ね、そしてね」
「開いた時に見たお菓子をなのね」
「手に取って食べればいいのよ」
それだけだというのです。
「あたしは食べないけれど何かを決める時はね」
「そうしてるの」
「それかこれだって勘が教える方をね」
「選ぶの」
「そうよ、あたしは迷ったことがないの」
それこそ一度もというのです。
「それこそね」
「それは貴女らしいわね」
「一瞬で考えて一瞬で決めるからね」
「あたしもそうなのよね」
つぎはぎ娘も言います。
「迷うことがないの」
「そうよね、あんたも」
「ええ、もう勘と見た感じに従ってね」
そうしてというのです。
「決めてるの」
「勘に頼るのはあたしと同じね」
「そうよね、けれどでしょ」
「あんたらしいわ」
ガラスの猫はつぎはぎ娘にはっきりと答えました。
「本当にね」
「そうでしょ」
「ええ、まああたしもあんたもね」
「迷うことはないってことでね」
「同じね」
「本当にね」
「私はーー迷いーーます」
チクタクはこう言うのでした。
「どうしようーーかと」
「その時々でなのね」
「はいーー考えーーて」
そうしてというのです。
「ついついーーです」
「考えるタイプなのね、あんたは」
「そうなのーーです」
「あんたもあんたらしいわね」
ガラスの猫はチクタクの言葉を聞いて述べました。
「それはそれで」
「そうーーですーーか」
「ええ、まああたしはあたしだから」
だからだと言うガラスの猫でした。
「これからもね」
「迷うーーことーーなく」
「やっていくわ」
こう言うのでした、そしてです。
ガラスの猫はナターシャ達にあらためて言いました。
「それじゃあね」
「今はなのね」
「そうして決めたらいいのよ」
「一旦目を閉じてなのね」
「そう、開いた時に見たものをね」
まさにというのです。
「食べればいいのよ」
「わかったわ」
ナターシャはガラスの猫の言葉に頷きました、そして他の四人もです。
ナターシャと頷き合ってです、そうして。
五人は一旦目を閉じてそうしてでした、また目を開きました。そうしてそれぞれ目に入ったものをです。
それぞれ食べました、ナターシャはケーキ、ジョージはアイスクリーム、神宝はプリン、カルロスはゼリー、恵梨香はエクレアでした。
そのケーキを食べつつです、ナターシャはこうしたことを言いました。
「いや、こちらのケーキもね」
「美味しいっていうのね」
「ええ」
実際にというのです。
「とてもね」
「そうなのね、しかしね」
「しかし?」
「あんたケーキ食べる時こっちのって言うこと多いわね」
ガラスの猫はナターシャのこのことを指摘しました。
「そうよね」
「ええ、ロシアのケーキは固いの」
「あら、そうなの」
「スポンジじゃなくてクッキーみたいにね」
「へえ、ああした風なの」
「そうなの、固くて小さいのよ」
それがロシアのケーキだというのです。
「ロシアのケーキは」
「だからそう言うのね」
「そう、こうしたケーキを食べる時はね」
「こちらのケーキって言うのね」
「そうなの」
「ケーキはね」
ここでオズマも言ってきました、色々なフルーツを使ったとても豪華な感じのケーキを美味しく食べています。
「私もずっとだったわ」
「こちらのケーキがですね」
「ケーキだって思っていてね」
「ロシアのケーキはですか」
「あるともね」
それこそというのです。
「思っていなかったわ」
「そうだったんですね」
「オズの国でも今でもね」
「ケーキというとですね」
「こちらのケーキよ」
「ロシアのケーキではなくて」
「ええ」
こうナターシャに答えます。
「そう思っていたわ、ケーキが成る木がオズにはあるわね」
「あのケーキも」
「こちらのケーキでしょ」
「はい、確かに」
「本当にね、ケーキはね」
「スポンジのですね」
「こちらのケーキよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「そうなんですね、それじゃあ」
「ええ、このケーキを楽しんでね、今は」
「そうさせてもらいます」
ナターシャはオズマににこりと笑って答えました、そしてです。
ケーキを食べて次のお菓子はエクレアを食べました、それで今度はこうしたことを言ったのでした。
「エクレアも凄く美味しいですね」
「そうよね」
「はい、これなら」
またオズマに応えて言うのでした。
「幾らでも食べられます」
「それは何よりね」
「はい、ですから」
「実際になのね」
「どんどん食べていきたいです。ただ」
「他のお菓子もなのね」
「食べたいですから」
それでとです、にこりとして言うナターシャでした。
「また迷うことになるかも知れないですね」
「何を食べようかって」
「そうなるかも知れないですね」
「その時はまたよ」
ここでナターシャに再び言うガラスの猫でした。
「一旦目を閉じてね」
「そうしてよね」
「開いて見たものをね」
「食べればいいのね」
「そうすればいいのよ」
「もうそれでいいのね」
「食べるのならそれでいいでしょ」
そうして決めればというのです。
「もうね」
「そういうことね、しかしね」
「しかしっていうと?」
「貴女は本当にいつも迷わずに動くのは」
「そうよ、色々あったらそうして決めるかね」
「勘でなのね」
「決めるから、どっちの決め方にするかは」
それはといいますと。
「もうその時の気分でなのよ」
「決めてるのね」
「そうしてるわ」
「何か貴女みたいに決められたら」
「いいでしょ」
「迷わないならね」
「迷ってもどうせ結果は大して変わらないのよ」
ガラスの猫は平然として言いました。
「あれこれ悩んで考えてもそれがいい結果になる?」
「悪い判断が悪い結果にもなるわよ」
「そっちに行ってもあたしは悪い結果にしない自信があるの」
「そうなの」
「そう、あたしならね」
今度は自信を以て言うガラスの猫でした。
「それが出来るのよ」
「そうした自信があるから」
「あたしはそうして決められるの」
「成程、そうなの」
「あたしらしいでしょ、このことも」
「ええ、本当にね」
「それで困ったこともないしね」
それもないというのです。
「ピンチでこそ迷ったら駄目なのよ」
「すぐに決めて」
「すぐに動くべきよ、あんたは雨が降ったらどうするのよ」
「傘をさすか雨宿りをするわ」
「そうよね、迷わないわよね」
「迷ったら濡れるわ」
「だったらよ、迷わないことよ」
ピンチでこそというのです。
「絶対にね」
「そういうことなのね」
「そう、まああたしはそれが出来るけれど」
どんな選択をしても悪い結果にしないことがです。
「あんた達は違うのね」
「ええ、どうしてもね」
「それはもうね」
「もう?」
「あんた達が実力をつけるしかないわね」
「どんな選択をしても困ったことにはならない位の」
「そうした力を備えるしかないわね」
こうナターシャに言うのでした、ここでナターシャはエクレアを食べ終えました。そしてまたでした。
目を閉じて開いてです、今度はマカロンを手に取りました。そうしてからガラスの猫に対して言うのでした。
「努力してなのね」
「そう、力を備えることよ」
「そうなのね」
「あたしは最初から備わっていたけれどね」
「というかあたし達って何時でも何とでもなってるのよね」
つぎはぎ娘がくるくると踊りつつ言ってきました。
「どんなことになっても」
「ええ、そうよね」
「あたし達がいて切り抜けられたピンチもあったりして」
「そう、あたし達がいてこそね」
「そうしたこともあったしね」
「それだけの力が最初から備わっていたのよ」
「そういうことね」
二人で納得してお話をします、そのお話をエクレアを食べつつ聞いてです、ナターシャは思うのでした。
「貴女達みたいになりたいとね」
「思ったのね」
「ええ、確かに貴女達の活躍は大きいから」
「そうでしょ」
「選択次第で困ったことになっても」
「それを乗り越えるだけの力を備えることよ」
「そのことも大事ってことね」
ナターシャは納得した顔で頷きました。
「そうね」
「その通りよ」
ガラスの猫も頷いて答えます、そうしたお話をしつつです。
皆はデザートも楽しみました、そしてでした。
楽しいお食事の後は今度は夜まで踊って歌って演奏をしてのパーティーでした。両国のそれぞれの人達が歌やダンスや演奏を披露します。それが終わったら皆ぐっすりと寝てです。
翌朝オズマは両国の人達に笑顔で言いました。
「では仲直りも出来たし」
「これで、ですね」
「姫様は都に帰られるんですね」
「そうさせてもらうわ」
こう言うのでした。
「また機会があればね」
「はい、いらして下さい」
「もう喧嘩はしないですから」
「是非楽しくです」
「遊びましょう」
「そうしましょうね、じゃあまた」
オズマ達も両国の人達も笑顔で挨拶をしてでした、そのうえでお別れをしてです。
一行は都への帰路につきました、もう都までは黄色い煉瓦の道を歩いていくだけでした。
一行はウィンキーの国を横断して都に着きました、するとドロシーが皆を笑顔で迎えてそのうえでこう言ってきました。
「仲直り出来たのね、両国は」
「ええ、最高の形でね」
オズマはドロシーににこりと笑って答えました。
「出来たわ」
「それは何よりよ、都はね」
「どうだったのかしら」
「平和だったわ」
こうオズマに答えるのでした。
「最高にね」
「そう、それは何よりね」
「皆も助けてくれたお陰で政治もね」
こちらもとうのです。
「無事にね」
「出来たのね」
「ええ、そうよ」
こうオズマに言うのでした。
「よかったわ」
「それは何よりね、もっとも貴女だけでもね」
「私だけでも?」
「充分だったと思うけれど」
ドロシーならというのです。
「私の代わりが充分に出来た筈よ」
「そうかしら」
「ええ、貴女ならね」
「私はそうは思わないけれど」
「それは謙遜よ、貴女ならね」
「出来たのね」
「一人でね、それでだけれど」
ここでお話を変えたオズマでした。
「旅のことをお話したいけれど」
「ええ、これからね」
「もう王室の歴史には書かれている筈だけれど」
ボームさんが忘れないで書いています、このことは。
「それでもね」
「ええ、歴史とお話はね」
「また違うから」
それでというのです。
「お話したいけれど」
「ええ、聞かせて」
笑顔で応えたドロシーでした。
「これからね」
「それじゃあね」
「今からね、ただね」
「ただ?」
「皆集めましょう」
「王宮にいる皆をね」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「美味しいものを食べて飲んでね」
「そうしながらよね」
「お話をしましょう、楽しくね」
「わかったわ、じゃあ食べるものは何を出すの?」
「お寿司にしましょう」
オズマはドロシーににこりと笑って提案しました。
「こちらをね」
「あら、お寿司なの」
「今回はずっと魚介類のお話だったからね」
「最後もなのね」
「ええ、魚介類で締めたいけれどどうかしら」
「面白そうね、じゃあお寿司を出してね」
ドロシーも笑顔で応えました。
「そうしてね」
「食べて飲んでね」
「お話をしましょう」
「皆でね」
「今回は最初から最後までお魚だったしそれではじまった騒動だったけれど」
二人のお姫様のお話が終わったところでガラスの猫が言いました。
「最後もね」
「ええ、お魚ね」
「そうね、お寿司だから」
ナターシャに応えて言うのでした。
「そうなるわね」
「そうね、けれど美味しいからね」
「あんたも他の子達もいいのね」
「そうよ、じゃあこれからお寿司を食べながら」
「そうしてよね」
「皆に旅のことをお話しましょう」
ナターシャはガラスの猫に笑顔で言いました、そうして皆で王宮の中でお寿司を出してです。今回の旅のことを楽しくお話しました。様々な魚介類をネタにした美味しいお寿司を食べながら。
オズのガラスの猫 完
2018・3・11