『オズのガラスの猫』




               第十一幕  猫の国に着いて

 一行は色々な出来事を全部無事にクリアーしつつ猫の国に向かっていました、そして遂になのでした。
 城壁に囲まれた街の正門の前まで来ました、その門には堂々とこう書かれていました。
『猫の国にようこそ』
 その文章を見てです、ナターシャが言いました。
「遂になのね」
「ええ、ここがなのよ」
 ガラスの猫がナターシャに答えました。
「猫の国よ」
「そうなのね」
「あたし達は目的地に着いたのよ」
 こうも言うガラスの猫でした。
「あんたの言う通り遂にね」
「いや、長かったけれどね」
 ここで言ったのはジョージでした。
「僕達は今回も目的地に到着したんだね」
「色々あったけれどね」
 神宝はこれまでの旅のことを思い出していました。
「到着したんだね」
「ううん、今回も色々あって見て来たね」
 カルロスはそのオズの国の旅のことを思うのでした。
「それでも凄く楽しかったよ」
「色々な人達と出会えて」
 恵梨香も言います。
「素敵だったわ」
「はいーー今回の冒険もーーです」
 チクタクもお顔がにこにことなっています。
「素晴らしいーーものーーでした」
「その旅の目的地に到着よ」
 つぎはぎ娘もいつも以上に明るいです。
「ようやくね」
「そうよ、ではね」
 ここで言ったのはオズマでした。
「今からね」
「はい、猫の国に入ってですね」
「そうよ、猫の国の人と犬の国の人達を仲直りさせましょう」
「わかりました」
 ナターシャはオズマの言葉に頷きました、そしてです。
 門のところにあるチャイムのボタンを押すとすぐにでした。
 黄色いブレザーの軍服と帽子を身に着けている黒い猫の頭をした兵隊さんが門を開けて出てきました、手も猫のもので手には自動小銃があります。
 その猫の兵隊はオズマを見てすぐに言いました。
「オズマ姫じゃないですか」
「ええ、実は貴方達に用があって来たの」
「我々にですか」
「そうなの、詳しいお話は中に入ってからでいいかしら」
 オズの国のというのです。
「そうして」
「はい、ここでお話してもですし」
「それじゃあね」
「どうぞ」
 兵隊さんは笑顔で応えてでした、そのうえで。
 一行は猫の国に入りました、街の中は碁盤状に道と運河で奇麗に整っていてブロックの建物はとても奇麗です。
 その猫の国を見て回ってです、ナターシャはこんなことを言いました。
「何かこの国もね」
「どうしたの?」
「いえ、オズの国のなのねって思ったの」
 ガラスの猫にお話しました、黄色いウィンキーの服を着ている猫の頭と毛、手の人達が街の中を行き来して楽しく暮らしています。
 そうした風景を見てです、ナターシャは言うのです。
「こうした外の世界にないものがあるのがね」
「オズの国だっていうのね」
「ええ、猫の人達なんてね」
「外の国にはいないから」
「ここもオズの国だって思ったわ」
「そうなのね」
「あの、それでなのですが」
 案内役の兵隊さんが一行に行ってきました。
「これからです」
「ええ、猫の国の市長さんによね」
 オズマが兵隊さんに応えました。
「お会いするのね」
「そうしてもらいます、そして」
「私達が来た理由をね」
「お話して下さい」
「そうさせてもらうわ、ただね」
「ただ?」
「一つ思うことは」
 それはといいますと。
「貴方達今は平和かしら」
「平和ですが」
 ここで困ったお顔になって言う兵隊さんでした。
「一つ困ったことがあります」
「犬の国の人達とよね」
「はい、喧嘩したままです」
 兵隊さんもこのことをお話します。
「困ったことに」
「そうよね」
「どうしたものか」
「そうね、実はそのことについてね」
「どうかされる為にですか」
「私達は来たの」
 こう兵隊さんにお話しました。
「実は」
「そうでしたか、そしてそのことをですね」
「市長さんにお話するわ」
「わかりました、では」
「ええ、これからね」
「市長さんのところに案内させて頂きます」
 兵隊さんはこう言ってでした、国の大通りをどんどん進んで一行を案内していきました。見れば沢山のお店もあって街は大変賑わっています。
 そしてです、猫の人達もです。
 本当に色々な人達がいます、三毛猫に白猫に茶色い猫にさび猫にです。
 それにでした、種類もです。
 マンチカンにスコティッシュフォールド、アメリカンショートヘアに日本猫にマンクス猫と様々な種類の猫の人達がいます。そして。
 その猫の人達はオズマ達を見て言うのでした。
「あっ、オズマ姫につぎはぎ娘」
「チクタクもいるじゃない」
「オズの国の名士の人達が来るのも久しぶりよね」
「そうよね」
「ガラスの猫もいるし」
 この猫も見て言うのでした。
「それにあの子達はね」
「オズの国の名誉市民の子達だね」
「あの子達ははじめて来たわね」
「オズの国にね」
「そうよね」
 オズマ達を見てこんなお話をしていてです、そして。
 一行は市庁舎に入りました、その入り口には大きな猫の人の像がありました。タキシードを着たその猫の像を見てです、兵隊さんは一行にお話しました。
「この方がこの国の初代市長さんなんです」
「この人がなの」
「はい、今は引退されていますが」
 こうナターシャ達にもお話します。
「この猫の国の基礎を固めてくれた人です」
「そうなのね」
「樵さんやかかしさんの協力を得て。その時は」
「その時は?」
「犬の国とも力を合わせていたんですが」
 それがとです、兵隊さんは困ったお顔になって言うのでした。
「今は」
「そうなのね」
「はい、困ったことです」
 こう言うのでした、困ったお顔で。そうしたお話もしつつです。
 一行は市庁舎の中の市長室に入りました、するとです。
 市長室には立派なスーツを着た銀色の毛並みのペルシャ猫の人がいました。その猫の人がいてなのでした。
 そしてです、その猫の人がオズマ達を立って迎えて言ってきました。
「ようこそ、猫の国へ」
「ええ、こんにちは」
 オズマはその猫の人に笑顔で応えました。そしてナターシャ達にこの人の紹介をしました。
「猫の国の市長さんよ」
「はじめまして、イブン=キャットです」
 市長さんは五人ににこりと笑って名乗りました。
「猫の国の二代目市長です」
「はじめまして」
 五人も笑顔で応えました。
 そしてです、五人もそれぞれ名乗ってお互いのことを覚えました。そのうえでオズマは市長さんに自分達がこの国に来た理由をお話しました。
 その理由を聞いてです、市長さんは言いました。
「実は我々もです」
「犬の国の人達とはなのね」
「はい、和解したいとです」
「思っているのね」
「そうなのです」
 オズマに真剣なお顔でお話します。
「実は。ですが」
「和解しようにもね」
「お互いに顔を見合わせればそっぽを向き合うので」
 そうした間柄になってしまっていてというのです。
「どうにもです」
「和解する手立てがないのね」
「はい」 
 こうオズマにお話しました。
「これが」
「そうよね、そうだと思っていたわ」
「では」
「私達が来たのはそうした状況でもね」
「和解をですか」
「してもらう為に来たのよ、オズの国は皆が仲良くする国だから」
 そうした国だからというのです。
「それでね」
「わざわざ来て頂いたのですか」
「わざわざじゃないわ、当然よ」
 この猫の国に来たのはと言うオズマでした。
「ここまで来たのは」
「オズの国の主として」
「そうよ、だから当然だから」 
 それでというのです。
「わざわざとは言わないで」
「わかりました、それでは」
「喧嘩になった理由はもうわかっているし」
 このこともお話したオズマでした。
「魚料理出したらよね」
「あちらの人達が起こってしまいました」
「あれよね、シュール何とか出したのよね」
 ガラスの猫が市長さんに言ってきました。
「そうよね」
「シュールストレミングだよ」
 市長さんはガラスの猫に笑って答えました。
「その缶詰を出したんだ」
「そうしたらよね」
「うん、あちらにお魚料理をご馳走してお魚の美味しさを知ってもらおうと思って」
「それを出したのね」
「シュールストレミングをね、あれは我々の好物の一つなんだ」
「美味しいの」
「だから出したんだけれど」
 これがというのです。
「犬の国の人達はこんな臭いのないって怒ってしまったんだ」
「噂に聞くけれど爆弾だっていうじゃない」
 こう言ったのはつぎはぎ娘でした。
「そんなの出したらそりゃ怒るわよ」
「爆弾じゃないよ、珍味だよ」
 市長さんはつぎはぎ娘に真剣なお顔で答えます。
「我々は気まぐれだけれど嘘は言わないよ」
「猫だからよね」
「そう、猫は確かに悪戯好きだけれどね」
 それでもというのです。
「嘘は言わないよ、シュールストレミングはね」
「美味しいの」
「そう、珍味でね」
「あんた達の好物なのね」
「それで出したんだけれど」
 美味しいものを食べてもらって喜んでもらおうと思ってです。
「そうしたら怒っちゃったんだ」
「というかーーです」
 ここでチクタクが言うことはといいますと。
「匂いはーー気をーーつけないとーーいけまーーせん」
「いい匂いだと思うんだがね」
「だからそれは味を知ってるからじゃ」
 ナターシャは市長さんのお話を聞いて思いました。
「それでじゃないかしら」
「あれ凄く有名だからね、シュールストレミングは」
 神宝もこう言います。
「臭豆腐より臭いっていうから」
「世界屈指の臭い食べものだよね」
 ジョージも言いました。
「外の世界でもね」
「こっちの世界でもあることに僕びっくりしてるよ」
 カルロスはこのことにでした。
「スウェーデンからの人や猫もアメリカに来ているからあるんだね」
「そうね、日本でもいきなりクサヤとか出さないわ」
 恵梨香はお国の食べものをお話に出しました。
「流石に」
「ううん、それじゃあ我々は失敗したのかな」
「そうだと思うわ」
 オズマは市長さんに難しいお顔でお話しました。
「だからね」
「だから、ですか」
「私達が解決案を持ってきたから」
「和解のですね」
「そして犬の国の人達にお魚の美味しさを知ってもらう為にも」
「解決案をですか」
「持って来たから」
 こうお話しました。
「楽しみにしておいてね」
「はい、それでは」
「今から犬の国の人達を呼んで」
 そしてというのです。
「両方の国の人達に解決案を出すわ」
「そうしてくれますか」
「是非ね」
 こう答えたオズマでした。
「楽しみにしておいてね」
「わかりました、それでは」
 市長さんも頷きました、こうしてです。
 犬の国の人達の方につぎはぎ娘とチクタクが言ってお話をすることになりました。そうしてでした。
 他の面々はこの日は猫の国ので一番上等なホテルに泊めてもらうことになりました、そのホテルで晩御飯を見てです。
 五人は納得したお顔になってお話をしました。
「猫の国だから」
「そうだよね」
「それでだね」
「この献立なんだね」
「そうよね」
「お魚と鶏肉がメインね」
 ナターシャが言いました。
「そうなったのね」
「はい、猫ですから」
 ホテルの支配人さん、白毛のスコティッシュフォールドで奇麗なスーツを着た人が五人にお話しました。
「こうしたメニューになっています」
「そうなんですね」
「はい、猫の好物といえば」
「お魚と鳥ですね」
「そうです、ですから」
 それでというのです。
「鳥料理と魚料理です」
「この二つなんですね」
「そうです、では」
「はい、これからですね」
「この二つをお楽しみ下さい、あとですが」
 ここで笑ってこうも言った支配人さんでした。
「今日はパンではなく御飯をお出ししますが」
「お米ですか」
「猫の国特別メニューです」
「といいますと」
「猫まんまです」
 にこりと笑って言う支配人さんでした。
「それをお出しします」
「あの、猫まんまといいますと」
「白い御飯にお味噌汁と鰹節をかけたものです」
「日本の御飯ですよね」
 日本人の恵梨香が支配人さんに尋ねました。
「確か」
「はい、オズの国に日本文化も入り」
「その中で、ですか」
「猫の食事の中にです」
「猫まんまも入ったんですか」
「それを食べてみますと」
 支配人さんは恵梨香にもお話しました。
「これが実に美味しく」
「それでなんですか」
「今ではこの国のソウルフードになっています」
「そこまでなんですね」
「そうです、まさあそこまで美味しいものがあるとは」
「猫まんまっていいますと」
 恵梨香は戸惑いつつ支配人さんにお話しました。
「特に贅沢ではなくて」
「日本ではですか」
「はい、もうおかずがない時とかにです」
「召し上がるものですか」
「そうなんですが。猫ちゃんの御飯にもなってますが」
「日本では本来はですか」
「そうしたものです」
 本当におかずがない時に食べるものだと言う恵梨香でした。
「お味噌汁がないと鰹節だけかけて食べます」
「それって何かね」
「ふりかけだよね」
「そうだよね」
 ジョージと神宝、カルロスは恵梨香のお話を聞いて思いました。
「それだとね」
「ふりかけと同じだよ」
「それはそれで美味しそうだけれど」
「鰹節の上にお醤油をかけるんですが」
「そうした猫まんまもあります」
 支配人さんは恵梨香に答えました。
「ですが当ホテルの猫まんまはです」
「お味噌汁と鰹節をかけたものですか」
「当店の看板メニューの一つです」
 そこまでのものだというのです。
「ですからどうかです」
「猫まんまもですね」
「お召し上がり下さい」
 和漢洋の様々な鳥料理、魚料理と共にというのです。こうしてでした。
 鶏のから揚げやお刺身、ムニエルにお鍋等を楽しんだ一行の前にその御飯にお味噌汁と鰹節をかけた猫まんまが出されました、その猫まんまを見てです。
 食べることのないガラスの猫がこんなことを言いました。
「ああ、このお料理は」
「どうかしたの?」
「ええ、凄くいい匂いがするわね」
 こうナターシャに言うのでした。
「食べたいとは思わないけれど」
「その貴女でも思うのね」
「ええ、これは美味しいわ」
「凄くなのね」
「断言出来るわ、美味しいとかいう感覚は知らないけれど」
 もっと言えばわからないのです、そうした身体の仕組みではないので。
「その美味しいという感覚はね」
「この猫まんまを食べるとなのね」
「感じられるみたいね」
「はい、猫ならばです」
 支配人さんはガラスの猫に礼儀正しく答えました。
「まさにです」
「この猫まんまはなのね」
「最高のご馳走なのです」
「そうしたものなのね」
「ですから皆様にもお出ししました」
「そうなのね、それじゃあ」
「これもお召し上がり下さい」
「わかったわ」
 ガラスの猫の代わりに食べることの出来るオズマが応えてでした、そのうえでオズマと五人の子供達は猫まんまも食べました。
 するとです、オズマはこう言いました。
「あっ、これは」
「如何でしょうか」
「和風のリゾットみたいね」
 こう支配人さんに言うのでした。
「猫まんまは」
「左様ですね」
「美味しいわ」
「そう言って頂いて何よりです」
「素敵なお料理よ」
「そう言われますけれど」
 恵梨香がここでオズマにも支配人さんにも言いました。
「日本ではもう」
「ありふれたお料理なのね」
「いえ、それどころか」
 恵梨香も猫まんまを食べつつ言います。
「粗食っていいますか猫の御飯の」
「人た食べるものでもなのね」
「ないとも言われています」
「そうなの」
「はい、もう質素なんてものじゃないです」
 それこそというのです。
「猫まんまは」
「そうなのね」
「はい、本当に猫の御飯なんです」
「いえいえ、とんでもないことです」
 支配人さんは恵梨香に畏まって述べました。
「この猫まんまはです」
「ご馳走なのね」
「私達にとってはです」
 まさにというのです。
「キャビア以上の」
「そこまでなの」
「美味しいお料理です」
「そうなのね」
「よくこうしたお料理があるものだとです」
「そこまで思ってるの」
「左様です、お味噌汁もいいですが」
 それよりもというのです。
「鰹節が入っていますと」
「余計にいいのね」
「素敵な味になります」
 鰹節、それが入っているとというのです。
「これ以上はないまでに」
「そうなのね」
「はい、ですから」
「猫の国ではなのね」
「キャットフードと同じだけです」
「親しまれているのね」
「左様です」
 まさにというのです。
「そうなっています」
「成程ね」
「我々猫人達にとっても」
「そしてあたし達にもよね」
 ガラスの猫が言ってきました。
「そうよね」
「はい、その通りです」
「あたしは食べないけれどね」
 このことを言うのも忘れないガラスの猫でした。
「この国普通の猫も一杯いるしね」
「そうそう、凄く多いよね」
 カルロスがガラスの猫に応えて言ってきました、皆で猫まんまを食べつつ。
「猫がね」
「色々な種類の猫がいるよね」
 神宝はホテルの外の窓のところにいるシャム猫を見て述べました。
「外の世界の各地にいる」
「国自体が猫カフェや猫ランドみたいだよ」
 こうまで言うジョージでした。
「この国にいたら」
「私もそう思うわ」
 ナターシャもこう言います。
「この国は猫が凄く多いから」
「それは我が国にとって最高の誉め言葉です」
 支配人さんは皆のお話ににこりと笑って応えました、見ればそのお髭がピンと誇らしげに立っています。
「嬉しいことです」
「そこまでですか」
「はい」
 ナターシャにまさにと答えました。
「その通りです」
「色々な猫が沢山いることが」
「それで嫌に思われていますか?」
「いえ、全く」
 ナターシャは首を横に振って答えました。
「猫好きですから、皆」
「猫を好きじゃないなんてどうなのよ」 
 ガラスの猫がまた言ってきました。
「時にあたしをね」
「そこでそう言うのは本当に貴女ね」
「そうでしょ」
 ナターシャにもいつも通り胸を反らして応えます。
「あたしは猫の中で一番だからね」
「そう言うのね」
「とても素晴らしい猫の中でもね」
「だからそう言うのね」
「そうよ、それでだけれど」
 さらに言うガラスの猫でした。
「猫まんまを食べてからどうするの?」
「お風呂に入ってお休みするわ」
 オズマが答えました。
「それでつぎはぎ娘とチクタクが戻って来るまではよ」
「ここで待っているのね」
「そうするわ」
「じゃあ暫くゆっくり出来るわね」
「そうね、明日はね」
 明日一日はというのです。
「ゆっくり出来るわ」
「そうなのね」
「私達はお国の中を見回るけれど」
 猫の国のその中をというのです。
「貴女はどうするのかしら」
「あたし?あたしはいつも通りよ」
 ガラスの猫はオズマに平然として答えました。
「もうそれこそね」
「いつも通りになのね」
「自分で色々な場所を歩いていくのね」
「そうして見て回ってね」
 そうしてというのです。
「楽しんでいくわ」
「そうするのね」
「じゃあ私達もね」
 ナターシャは五人で少しお話してからガラスの猫に言いました。
「一緒にいていいかしら」
「明日はなのね」
「ええ、貴女とね」
「いいわよ」
 ガラスの猫はナターシャと四人にあっさりと答えました。
「あんた達がそうしたいならね」
「一緒にいていいのね」
「ええ、明日は一緒に遊びましょう」
「それではね」
「さて、それでなのですが」
 ここでまた一行にお話してきた支配人さんでした。
「皆さんキャットフードは召し上がられませんね」
「そちらはね」
 遠慮した口調で応えたオズマでした。
「私達はね」
「そうですね、では猫まんまをお出ししましたし」
「キャットフードではなくて」
「こちらは他の人達も食べられますので」
 猫の人達以外にもというのです。
「ですからお出ししましたし」
「それで猫まんまだったの」
「そうした意味もありました、では猫まんまの次は」
 さらにお話をする支配人さんでした。
「デザートとジュースをお出しします」
「その二つをなのね」
「そうさせて頂きます」
「ではね」
「はい、デザートもですね」
「楽しませてもらうわ」
「今日のデザートはアイスクリームです」
 こちらになるというのです。
「各種の」
「色々出してくれるのね」
「そちらをお楽しみ下さい」
「わかったわ、ではね」
「はい、アイスクリームを最後に」
「楽しませてもらうわ」
 オズマはにこりと笑って応えました、そして猫まんまの後に実際にでした。
 皆で何種類ものアイスクリームとオレンジジュースを楽しみました、その後でホテルのそれぞれのお部屋のお風呂に入って歯も磨いて素敵なパジャマを着て寝ました。
 次の日はオズマがお話した通りお休みになりました、オズマはお休みの時に市長さんと色々とお話をして街のあちこちを案内してもらいましたが。
 ナターシャ達五人はガラスの猫と一緒に猫の国の中を歩き回って見て回ることにしました、その中でです。
 街のあちこちを猫の人達と仲良く歩き回って屋根や道や窓といったお国の至るところにいる猫達を見てでした。
 五人は唸ってです、こう言いました。
「やっぱりここはね」
「猫の国だね」
「猫の人達だけじゃなくて猫も沢山いて」
「そうして気持ちよくくつろいでいるからね」
「猫の国の名前に相応しいわね」
「そうでしょ、この国はね」
 ガラスの猫は他の猫達に気分よく挨拶をしつつ述べました。
「文字通りに猫の国なのよ」
「猫の人達に加えて猫も沢山いて」
「そう、楽しく暮らしているからね」
 こうナターシャにお話をします。
「国全体が猫ランドや猫カフェと言っていいね」
「そうしたお国なのね」
「そうよ、いい国でしょ」
「ええ、とてもね」
 ナターシャはにこりと笑って応えました、見れば他の子達も笑顔になっています。
「いいお国ね」
「そうでしょ、あたしこの国大好きよ」
「猫だからかしら」
「そうよ、ガラスの身体だけれどね」
 それでもというのです。
「あたしも猫でしょ」
「紛れもなくね」
「同じだから」 
 猫だからというのです。
「何度来ても落ち着くの」
「そうしたお国なのね」
「あたしにとってもね」
「そうなのね、けれど」
 ここで、です。ナターシャは自分の足元に来た白猫を抱っこしました。そうしてその猫を可愛がりながらガラスの猫にお話しました。
「貴女は普段エメラルドの都にいるわね」
「普段はね、けれど気が向いたらね」
「その時はなの」
「よくこの国に来てるわ」
 この猫の国にというのです。
「それもしょっちゅうね」
「そうなの」
「ええ、あたしにとってエメラルドの都と同じ位素敵な国だから」
 だからだというのです。
「よくね」
「この国に来てるのね」
「それで楽しんでるのね」
「そういえば君は寝る必要も休む必要もないから」
 ジョージは寅猫の目の前で猫じゃらしを動かして遊んでいます、寅猫は猫じゃらしにせっせと前足を出しています。
「ずっと全速で走れるしね」
「君が全速でずっと走ったら」
 神宝は自分にお腹を見せてごろごろしている三毛猫のお腹をやんわりと撫でています、すると三毛猫は気持ちよさそうにじゃれるのでした。
「都からもすぐだね」
「だからだね」
 カルロスも猫と遊んでいます、自分のところに来た白猫の背中を撫でたり耳を触ったりして気持ちよくさせています。
「時々この国に来てるんだね」
「じゃあ貴女はこの国にかなり馴染みがあるのね」
 恵梨香は黒猫の右の前足を指で持って握手をしたり肉球を触ったりしています、猫の肉球は本当に柔らかいです。
「よく来ていて」
「皆の言う通りよ、もうこの国はね」
 それこそとです、ガラスの猫は五人にお話しました。
「あたしの第二のお家みたいなものよ」
「エメラルドのお家が第一で」
「ここは第二なんだね」
「そこまでの場所になっているんだね」
「君にとっては」
「そうなのね」
「そうよ、ここに来たらいつも猫の皆と一日中遊んでね」
 そうしてというのです。
「楽しく過ごしてるのよ」
「もうずっとなのね」
「ええ、ただね」 
 ここでこんなことを言うガラスの猫でした。
「あたしは寝ることはしないけれど」
「普通の猫ちゃん達はね」
「猫の人達は一日八時間寝るけれど」
 普通の猫達はといいますと。
「その倍じゃない」
「十六時間ね」
「それだけ寝るから」
 だからだというのです。
「いつも同じ子とは遊べないのよね」
「そうよね」
「猫は一日の三分の二寝てね」
 二十四時間のうちに十六時間だとそうなります。
「三分の一遊ぶでしょ」
「貴女と違ってね」
「あたしは猫は猫でもね」
 それでもというのです。
「寝る必要がないから」
「ガラスの身体だからね」
「猫だけれど寝ないの」
 そうした身体になっていないのです。
「だから朝から晩まで遊んでね」
「晩から朝までね」
「遊べるの」
 まさに一日中です。
「それが出来るけれど」
「普通の猫ちゃん達は違うわね」
「そうよ、この通りね」 
 見れば皆の周りのあちこちにいる猫達の中には欠伸をしたり寝ようとしていたり実際に寝ている猫達も多いです、それも気持ちよく。
「寝ることが多いから」
「だからなのね」
「そう、あたしといつも遊べないの」
「貴女が特別で」
「だからね」
 それ故にというのです。
「あたしはいつも交代してね」
「色々な子と遊んでいるのね」
「そうしているのよ」
 この猫の国においてはというのです。
「いつもね」
「そうなのね」
「猫は基本夜に動くでしょ」
「お昼も動くけれどね」
「だからお昼に遊ぶことも出来て」
「夜もなのね」
「出来るから不自由しないのよ」
 そうだというのです。
「有り難いことにね」
「猫は一日十六時間寝ても」
「そうよ」
 まさにというのです。
「あたしは色々な子と遊べるの」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「あたしはここでもいつも楽しく遊んでいるの」
 猫の国でもというのです。
「エメラルドの都や他の場所にいる時と同じで」
「楽しくなの」
「凄くね」
「そうなのね」
「そうよ、あとね」
「あと?」
「いえ、何かね」
 ここでこう言ったナターシャでした。
「猫の皆毛並みがよくて身体つきもいいわね」
「うん、凄くね」
「どの猫も毛並みがふさふさしていてね」
「丸々としているよ」
「健康そうね」
「食べるものも沢山あるのね」
 見れば猫の人達がどんどん猫達にお魚や鶏肉やキャットフードをあげています、勿論猫まんまもです。
「そうなのね」
「そうよ、それでね」
「あのシュールストレミングもなのね」
「皆好きみたいね」
「普通の猫達もなの」
「いえ、あれは猫の人達みたいよ」
 こちらの人達がお好きだというのです。
「どうやらね」
「そうなの」
「あの人達にとっては美味しいみたいなの」
「匂いも気にならないのね」
「あれもね、ただあたしは興味ないから」
 食べる必要がないので他のお料理にも興味が薄いです、その中でもオズの国においても珍しいシュールストレミングはなのです。
「食べる場面もね」
「見ていないの」
「見てもね」
 例えそうしていてもというのです。
「気に留めていないのね」
「それじゃあ見ていないのと一緒ね」
「というかそれそんなに凄いの」
 ガラスの猫は耳の垂れた茶色の毛のマンチカンと遊びつつ白猫と遊び続けているナターシャに尋ねました。
「シュール何とかって」
「あまりにも匂いが凄くてね」
 ナターシャはそのシュールストレミングのお話をしました。
「お家の中では食べられないの」
「そうなの」
「中だと匂いが充満して中々取れなくなるから」
 その匂いがというのです。
「だからね」
「あまりなのね」
「そう、食べないの」
 そうだというのです。
「これがね」
「そうなのね」
「大抵お外で食べるの」
「ふうん、バーベキューみたいね」
「バーベキューとはまた違うわ」
 このことは確かに言うナターシャでした。
「缶詰だけれどね」
「缶詰だと缶を開かないといけないわね」
「開いた時に匂いが周りに出て凄いから」
「お外で食べてもなの」
「大変なのよ」
「何ていうかね」
 ここまで聞いてこう言ったガラスの猫でした。
「爆弾というか毒ガスみたいね」
「そうでしょ、食べものだけれどね」
「毒ガス扱いなのね」
「そうなの」
 そこまでの扱いだというのです。
「シュールストレミングはね」
「ううん、そんなのいきなり出したらね」
 それこそとです、ガラスの猫も事情がわかりました。
「犬の国の人達もびっくりしてね」
「怒るわよね」
「毒ガスみたいなの出されたら」
「特に犬の人達はね」 
 ナターシャは犬のことからお話しました。
「お鼻がいいでしょ」
「他の生きものより遥かにね」
「だから余計にね」
「怒っちゃったのね」
「そうだと思うわ、魚料理の中でもね」
 とりわけと言うナターシャでした。
「とびきりの上級者向けを出したんだから」
「幾ら自分達が美味しいと思っていても」
「出すには無理があったわ」
 それこそというのです。
「本当にね」
「猫の国の人達のミスね」
「ええ、本当にそう思うわ」
「じゃあオズマも今は」
「そのことを市長さんにお話しているでしょうね」
「シュール何とかは出すなって」
「そうね、ロシアで言うとあれよ」
 ここでこう言ったナターシャでした。
「はじめて来てくれた人をシベリアに送る様なものよ」
「シベリアって?」
「凄く寒くて広いところよ」
 ロシアにあるその場所のこともお話するのでした。
「昔は悪いことをした人達が送られる場所だったの」
「いきなりなの」
「そこに送る様なものよ」
「猫の人達はそういうことをしたのね」
「それじゃあね」
 それこそというのです。
「喧嘩にもなるわ」
「ううん、普通のものを出していれば」
「そんな風にはならなかったわ」 
 喧嘩にはというのです。
「私もそう思うわ。あの食べものは私も聞いているだけだけれど」
「とにかく凄いってお話はなの」
「聞いてるから」
「噂で聞いてもなの」
「とんでもない食べものなのに」
 ナターシャは思わず難しいお顔になりました。
「出せないわよ、というかね」
「シュール何とかはね」
「どんな人でも上級者向けよ」
「その匂いと扱い方も難しさから」
「そうよ、お客さんに出すものじゃないわ」
「そういえばオズマが出すご馳走は」
 ガラスの猫はここで気付きました。
「食べられる人なら誰でも好きそうなね」
「そうしたものでしょ」
「ええ、そうよ」
「自分達が好きでもね」
「他の人が好きとはなのね」
「限らないし」
 ナターシャはさらにお話しました。
「だから出来るだけ多くの人が好きそうな」
「そうしたものを出すことがなの」
「お客さんへの気遣いでね」
「賢いやり方なのね」
「オズマ姫もわかっておられるのよ」
「そうしたことが」
「ええ、それでね」
 オズマはというのです。
「そうした失敗はされないのよ」
「オズマらしいわね」
「そうでしょ、あの方はね」
「そうしたことまで考える娘よ」
 ちゃんと、とです。ガラスの猫も言います。
「本当にね」
「だから信頼も出来て」
「オズの国の主が務まるのよ」
「そういうことなのね」
「そうよ、じゃあいいわね」
「ええ、今からのことは」
「ちゃんと楽しみにしていればいいのよ」
 まさにというのだ。
「そうしていればいいの」
「私達は」
「そうよ、それとね」
「それと?」
「あんた達はシュール何とかを実際に見たことはないのね」
「ないわよ」
 実際にとです、ナターシャは答えて。
 そして他の四人もです、こう言うのでした。
「見たことはないよ」
「噂には聞いてるけれど」
「これまでね」
「一度もないわ」
「そうなのね、あたしも納豆は知ってるし見たことはあるし」
 ガラスの猫が出した食べものはといいますと。
「色々匂いのする食べものや飲みものはあるけれど」
「ドリアンはあったわよね」
「ええ、あるわ」
 ガラスの猫はナターシャに答えました。
「あとくさやとかベジマイトにウォッシュチーズはね」
「そうしたものはあるわね、オズの国にも」
「ええ、ああしたものも匂いきついけれど」
「もうシュールストレミングはね」
「それ以上になのね」
「そう、凄いの」
 まさにというのです。
「噂によると」
「そうなのね、まあウォッシュチーズ以上の匂いのを出されたら」
 それこそと言うガラスの猫でした。
「犬の国の人達も怒るわね」
「そしてそれで怒った喧嘩がね」
「いよいよね」
「終わるわ」
「そうなるわね、まあオズマがいて香辛料もあるから」
 それでと言うガラスの猫でした。
「楽しみにしていましょう」
「問題がどう解決するのか」
「それをね」
 まさにとです、こう言ってでした。
 ナターシャ達五人はこの日はガラスの猫と一緒に猫の国の人達と一緒に遊びました。そうしてまずはつぎはぎ娘とチクタクが犬の国から帰って来るのを待ちました。








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