『オズのガラスの猫』




                第三幕  楽しく出発

 オズの魔法使いとモジャボロ、ムシノスケ教授達は朝に王宮に到着しました。彼等の到着を受けてです。
 オズマは今回一緒に冒険に出る皆に言いました。
「じゃあ今からね」
「出発ーーですーーね」
「そうよ」
 チクタクに笑顔で答えました。
「いよいよね」
「わかりーーましーーた」
 笑顔で応えたチクタクでした。
「私もーーネジをーー巻きーーましーーた」
「だからよね」
「沢山ーー動けーーます」
 そうだというのです。
「今日一日ーーは」
「それは何よりね、じゃあね」
「今からね」
 今度はガラスの猫が応えました。
「出発よ」
「行ってらっしゃい」
 見送りに来ているドロシー言ってきました、後ろには魔法使い達もいます。
「楽しんできてね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 オズマはドロシーににこりと笑って応えました。「これからね」
「そうしてね」
「久し振りの冒険だし」
 オズマにとってはです。
「余計にね」
「そうしてきてね、じゃあ私もね」
「ええ、今からよね」
「留守を守らせてもらうわ」
 是非にというのでした。
「そうさせてもらうわ、楽しんでね」
「そうしてね、貴女も」
「是非ね」
「ではね」
 魔法使いもここで言いました。
「皆元気で帰ってきてね」
「帰ってきたらパーティーをしよう」
「皆で用意しておくよ」
 モジャボロとムシノスケ教授も言ってきました。
「だから今から最後までね」
「楽しく旅をしてきて欲しいんだ」
「わかってるわ、もうあたしがいたらね」
 つぎはぎ娘が二人に応えて言います、今もくるくると舞っています。
「途中何があってもね」
「大丈夫なんだね」
「そうよ、あたしがいればそれこそよ」
 まさにとです、つぎはぎ娘はドロシーが抱いているトトに答えました。
「百人力だからね」
「あたしがいるのよ」
 ガラスの猫もこう言います。
「それでどうして不安なのよ」
「あらゆる困難も君がいれば」
「ええ、困難でなくなるわ」
 ガラスの猫もトトに答えました。
「全くね」
「それじゃあだね」
「ええ、オズマもこの子達もね」
 ガラスの猫はナターシャ達も見ました。
「大船に乗った様なものよ」
「君が大船だね」
「それも豪華客船よ」
 そこまでだというのです。
「だから何の問題もないわ」
「少なくとも自信はあるね」
「あたしの自信には根拠があるのよ」
 しっかりと、というのです。
「最高に奇麗な身体があるのよ」
「そのガラスの身体だね」
「そう、奇麗でしかも寝ることも食べることもない」
 どちらも必要がないというのです。
「そうした身体があるのよ」
「だからだね」
「大抵の困難はこの身体で解決してあげるわよ」
「そうそう、そんな身体の持ち主が三人もいるのよ」
 つぎはぎ娘はガラスの猫だけでなくチクタクもお話に入れていました。
「もう今回は万全でしょ」
「ええ、けれど油断や慢心は駄目よ」
 このことは釘を刺すドロシーでした。
「くれぐれもね」
「わかってるわ、じゃあね」
「ええ、行ってらっしゃい」
 ドロシーは魔法使い達と一緒にオズマ達を笑顔で見送りました、こうしてオズマ達の旅がはじまりました。
 オズマはエメラルドの都を出るとすぐにナターシャ達五人に尋ねました。
「心配しているかしら」
「いえ、特に」
「これといってです」
「心配はないです」
 ジョージと神宝、カルロスがオズマに答えました。
「むしろどんな旅になるか」
「そう思ってうきうきしています」
「そうなっています」
「そうなのね、オズの国の冒険はね」
 その旅はとです、オズマは三人の男の子に笑顔でお話しました。黄色い煉瓦の左右にある草原はエメラルドの都の奇麗な緑です。
「かつては大変なことも多かったけれど」
「今はですね」
「平和になりましたよね」
「そして凄く楽しいですね」
「そうなったわ、昔は開けていない地域も多かったから」
 まだオズマがオズの国を治めて間もない頃はです。
「大変な地域も多かったからね」
「そうでしたね、オズの国のあちこちで」
 それこそとです、恵梨香が応えました。
「色々な人がいて」
「その人達がオズの国のことを知らないでね」
「偏狭でしたね」
「それが変わりましたね」
「そうよ」
 そうなったというのです。
「私が政治をしてね」
「そこを変えていったんですね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「オズの国を平和にしていったのよ」
「そうでしたね」
「それでよかったですね」 
 今度はナターシャがオズマに応えました。
「例えばカドリングの国のガーゴイルさん達も」
「今ではね」
「平和な人達になっていますね」
「あの人達がそうなったのもね」
 まさにというのです。
「私がちゃんとあの人達のところに行って」
「オズの国のことをお話して」
「わかってもらったの」
「そうだったのね」
「そうよ、他の種族の人達もよ」
「それで、ですか」
「私自身が行ったりドロシー達に行ってもらったりしてね」
 そうしてというのです。
「種族や国の人達をね」
「オズの国に迎え入れ江いったんですね」
「そうなの、危険な地域には橋や堤防をかけたりもしたし」
「対策もですか」
「していったから」
 それでというのです。
「オズの国は今ではね」
「凄く平和になったんですね」
「そうよ、オズの国はただオズの大陸にあるだけじゃないの」
「オズの国の法律やルールに入ってこそですね」
「オズの国に入ったってことになるのよ」
 オズマはこうナターシャそして他の子達にお話しました。
「そうなるのよ」
「だからガーゴイルさん達も他の人達もですね」
「今はオズの国の住人になってくれて」
「危ない場所もですね」
「一つ一つ改善してね」
 そうしていってというのです。
「平和になったのよ」
「ううん、お話を聞いてますと」
「一つ一つですね」
「あらためていったんですね」
「オズの国の危険なことを」
「そうしていったんですね」
「そうよ、それが政治なのよ」
 一つ一つあらためていくことがというのです。
「あらためていくべきことを一つ一つあらためていくことがん」
「政治あんですね」
「だからですね」
「オズマ姫もそうされていったんですね」
「それでオズの国は昔よりずっと平和になった」
「そうなんですね」
「そうなの、それはこれからも続けていくから」 
 政治、それをというのです。
「オズの国をどんどんよくしていくわよ」
「今以上によくなるんですね」
 このことをしみじみとして言うナターシャでした。
「オズの国は」
「そうよ、オズの国はね」
「政治をしていってですね」
「前よりもずっとよくなったし」
「今以上にですね」
「これからもよくなるわよ」
「そうですか」
「私が皆と一緒にそうしていくの」
 笑顔でお話したオズマでした。
「是非ね、そしてそれは今もでね」
「猫の国に行ってですね」
「あの国の騒動を終わらせるわ」
 そうするというのです。
「何か犬の国と揉めているらしいけれど」
「犬の国とですか」
「そうなの、犬と猫は時々ね」
「仲悪いですね」
「そうでしょ」
「はい、どうしても」
「それでなの」
 今あの国はというのです。
「揉めているのよ」
「何ていうかね」
 ガラスの猫がここでこんなことを言いました。
「喧嘩なんてするだけね」
「時間の無駄よね」
「そうよ」
 こうつぎはぎ娘に言うのでした。
「まさにね」
「そうよね、喧嘩する位ならね」
「楽しく遊んだ方がいいわよ」
「全く以てね」
「しかも何で揉めてるか知らないけれど」
「些細なことでよ」
 オズマはこうガラスの猫とつぎはぎ娘に答えました。
「本当にね」
「些細なことなの」
「そうなの、ほんのね」
「具体的にどんなことなの?」
 ガラスの猫はオズマに尋ねました。
「それで」
「ええ、食べるもののことでね」
「そのことでなの」
「猫の国の人達が犬の国の人達と一緒にパーティーをした時にお魚を出したら」
「犬の国の人達がなの」
「お魚を食べなくてね」
 それでというのです。
「そこからなのよ」
「言い合いにでもなったのね」
「そう、それでね」
「今は仲が悪いの」
「そう、そしてそれをね」
「あたし達が言ってなのね」
「間に入って」
 そうしてというのです。
「仲直りしてもらうの」
「それがあたし達の今回の旅の目的ね」
「そうよ」
 まさにというのでした。
「それでだから」
「猫の国に行くのね」
「そういうことよ」
「わかったわ、しかし食べもので揉めるなんて」
 ガラスの猫はオズマから聞いたこのことにこう言いました。
「下らないわね」
「全くよね」
 つぎはぎ娘は自分の横を歩いているガラスの猫に応えました。
「そのことは」
「食べるものなんてね」
「あたし達にとってはね」
「見るだけのものだから」
「それじゃあね」
 それこそというのです、彼女達にとっては。
「お肉でもお魚でもね」
「何でもないわ」
「本当にね」
「私もーーです」
 チクタクもこう言いました。
「そうしたーーことでーー喧嘩をーーしても」
「意味ないわよね」
「下らないわね」
「私もーー食べまーーせんーーが」
 機械の身体でゼンマイを巻いて動くからです。
「意味のーーないことーーとーー思いーーます」
「その通りよ」
「どうしてそんなことで喧嘩するのよ」
「極端に言うと何を食べてもいいでしょ」
「本当にね」
「それは貴方達が食べないからよ」
 ナターシャが三人にこう言いました。
「だからよ」
「わからないっていうのね」
「こうしたことが」
「ええ、ただどうもね」
 ここでこうも言ったナターシャでした。
「犬の国の人達はお魚をよく知らないみたいね」
「ええ、お肉主体みたいね」
「お話を聞いてたらね」
「だからお魚は食べないでね」
「怒ったみたいだね」
 恵梨香に続いてジョージと神宝、カルロスが言いました。
「どうもね」
「まあ犬は大抵お肉が好きだから」
「猫はお魚も好きだけれど」
「そこが違うみたいね」
「というか猫はね」
 カルロスはこうも言いました。
「鶏肉とお魚だね」
「そうだね、その二種類だね」
 ジョージはカルロスのその言葉に頷きました。
「猫は」
「犬豚肉にしても牛肉にしても羊肉にしても」
 神宝は言葉の中に鶏肉も入れつつ思うのでした。
「お肉主体だからね」
「そう思うと」
 まさにと言う恵梨香でした。
「お魚の味を知らないのも仕方ないかしら」
「あとオズの国はアメリカという国がそのまま出るから」
 オズマは皆にこの国のことをお話しました。
「同じ時代のね」
「だったら犬や猫もですか」
「食べているものがですな」
「今のアメリカのもので」
「お肉やお魚にしても」
「それぞれなんですね」
「ドッグフードやキャットフードにしてもね」
 こうした食べものでもです。
「お肉とお魚でしょ」
「はい、確かに」
「そうしたものが原料ですよね」
「そうしたものから作られていて」
「それで、ですね」
「結局はそうしたものを食べていますね」
「そうなるでしょ、だからね」
 それ故にというのです。
「犬の国の人達はお魚に疎くて出されて食べられないって言ったのよ」
「何よ、じゃあ猫の国だけの問題じゃないじゃない」
 ガラスの猫はここまで聞いて思いました。
「犬の国の問題でもあるじゃない」
「そうなるわ」
 その通りとです、オズマはガラスの猫に答えました。
「まさにね」
「やっぱりね」
「だからね」
「猫の国にも行って」
「犬の国にもね」
 そちらのお国にもというのです。
「行く必要があるわ」
「そうなるのね」
「だから今回は両方の国に行ってね」
「そしてなのね」
「両方の国の言い分を聞いて」
 そのうえでというのです。
「問題を解決するわよ」
「わかったわ、しかし本当に食べもののことは」
 ガラスの猫はオズマのお話を聞いてからまたこう言いました。
「わからないわね」
「あたし達にはね」
「食べる必要がないとね」
「どうしてもね」
 つぎはぎ娘も言うのでした。
「わからないわね」
「本当にね」
「だからかかしさんや樵さんがウィンキーの国にいても」
 それでもというのです、オズマはガラスの猫とつぎはぎ娘にお話しました。
「ジャックもそうだけれど」
「わからなくて」
「それでなの」
「問題を解決出来ていないの」
 そうなってしまっているというのです。
「食べる必要がないとね」
「どうしてもなのね」
「そのことが理解出来ないからなのね」
「そう、それで私達が行くことになったの」
 そうなったというのです。
「今回はね」
「それはわかったわ、しかしね」
 ガラスの猫はまたオズマに言いました。
「何ていうかね」
「食べもので揉めるってね」
 つぎはぎ娘もガラスの猫と一緒になって言います。
「馬鹿馬鹿しいわね」
「そうとしか思えないわよね」
「どうしてもね」
「あたし達には」
「美味しく食べられるならいいんじゃない?」
「そうよね」
「食べることのないあたし達が言うけれど」
 そこはというのです。
「どうしてもね」
「何でこだわるのよ」
「お肉とかお魚とか」
「もっと言えばお野菜でも果物でもね」
「美味しければいいじゃない」
「それでね」
「そういえばーーです」
 チクタクはここであることを思い出しました、その思い出したことは一体何かといいますと。
「トトーーはーーお魚もーー食べてーーいます」
「あっ、そういえば」
 ナターシャもチクタクの言葉で思い出しました。
「トトはね」
「そうーーですーーね」
「ええ、お肉だけじゃなくてね」
「お魚もーー好きーーですーーね」
「トトの自慢は好き嫌いがないことでね」
「お魚もーー美味しいーーと言ってーーいます」
「そうなのよね」
「犬もお魚食べるかっていうとね」
 よくお魚を食べる日本人の恵梨香も言いました。
「食べるわよ」
「うん、猫程じゃないかも知れないけれど」
 神宝も考えるお顔で述べます。
「犬だってね」
「アマゾンはよくお魚が採れるけれど」
 カルロスはお国のことを思い出しました。
「あそこの犬も食べるよ、川のところに住んでいる人達が飼っている犬はね」
「犬もキャットフード食べてもおかしくないね」
 ジョージはこう考えました。
「逆に猫がドッグフード食べても」
「そう考えると」
 どうにもと言ったナターシャでした。
「別に犬がお魚食べてもいいわね」
「ええ、私もそう思うわ」
 オズマもこう言うのでした。
「だからここはね」
「はい、知恵の使いどころですね」
「美味しいお魚料理をね」
「犬の国の人達に食べてもらえば」
「それでね」
「問題は解決しますね」
「問題はどう食べてもらうかだけれどね」 
 お魚を出されて怒ったことからこのことも頭に入れているオズマでした、こうしたことは絶対に忘れないのがこの王女なのです。
「それはね」
「はい、知恵の使いどころですね」
「考えていきましょう」
「わかりました」
「まあ犬だからね」
「ええと、犬はお鼻ですね」
「お鼻でもうね」
 それでというのです。
「お肉かお魚かをね」
「簡単にわかってしまいますね」
「犬のお鼻は凄くいいから」
「私達なんか比べものにならない位に」
「目より遥かにわかるのよ」
 犬はお鼻でというのです。
「もう何でもね」
「だからですね」
「その犬のお鼻をどうするかよ」
「それが問題ですね」
「そんなの簡単でしょ」
 ガラスの猫はオズマとナターシャのお話を聞いて何でもないといった調子で二人に対して言いました。
「それこそね」
「それこそって」
「ええ、簡単じゃない」
 こう自分のすぐ後ろを歩いているナターシャにお顔を向けて言うのでした。
「そんなのは」
「簡単っていうけれど」
「犬のお鼻のことでしょ?」
「ええ、どうお魚かどうかをね」
「見破られずに済むか」
「違うわよ、美味しい匂いを出せばよ」
 それでというのです。
「いいのよ」
「というと」
「そう、犬も美味しいものが好きでしょ」
「それはね」
「トトがお魚を食べるのも」
 このことにしてもというのです。
「美味しいからでしょ」
「そうだけれど」
「それならよ」
「お魚のお料理でなの」
「美味しいものを出せばね」
「それでいいのね」
「そうよ、本当に簡単じゃない」
 またこう言ったガラスの猫でした。
「考えるまでもない位に」
「それはそうね」
「猫の国の人達がどんなお料理を出したか知らないけれど」
「もっと美味しいものをなのね」
「出せばね」
「犬の国の人達にしても」
「食べないで怒るどころか」
 それで今現在揉めごとになっているけれど、というのです。
「それがね」
「変わるのね」
「そうよ、あたしは食べないけれど」
 それでもというのです。
「美味しいものには誰も勝てないのよね」
「そうよ、それはね」
「だったらね」
「うんと美味しいお魚のお料理を出したら」
「いいのよ、まあお魚なら」
 ガラスの猫は恵梨香を見て言いました。
「詳しい人もいるし」
「そうね、恵梨香はお魚というか魚介類のお料理に詳しいから」
 オズマも恵梨香を見て頷いて言います。
「ここは美味しいお料理を考えてもらいましょう、メインになってね」
「お寿司にお刺身、天婦羅に。和食だと他には焼いたり煮たり」
 恵梨香はオズマに応えてすぐにお料理を挙げてきました。
「お魚自体ですと鯛、鮭、鱒、河豚、鰯、鰻、秋刀魚、太刀魚とか一杯ありますけれど」
「それでどのお魚でどんなお料理がいいかよね」
 ナターシャはその恵梨香に応えました。
「そうよね」
「とりあえず難しく考えなくていいじゃない」
 つぎはぎ娘のアイディアはといいますと。
「恵梨香が思う一番美味しいお魚の一番美味しいお料理でね」
「それでなの」
「いけばいいのよ」
「そうなのね」
「もうね」
 それでというのです。
「いいじゃない」
「簡単に考えて」
「それでね」
「そうそう、もう簡単でいいのよ」
 ガラスの猫もつぎはぎ娘と同じ考えでした。
「あれこれ考えても仕方ないじゃない」
「だからなの」
「そう、一番でいいのよ」
「一番美味しいお魚の一番美味しいお料理ね」
「それでいいのよ」
「そうしたものなの」
「そうよ、というかあたし達食べる必要がないから美味しいってことはわからないけれど」
 それでもというのです。
「いい匂いはわかるわよ」
「じゃあ一番いい匂いのものをなのね」
「出せばいいのよ、犬の国の人達にね」
「それでなのね」
「万事解決よ、難しいと思われている問題こそね」
 こうも言ったガラスの猫でした。
「実は簡単に終わるものなのよ」
「そうね、そうした問題は実際に多いわ」
 オズマはオズの国の主として国政に携わっているのでガラスの猫の今の言葉には大いに同意出来ました。
「根はね」
「じゃあね」
「ええ、ここはね」
「もう簡単に考えて」
「やっていけばいいわね、それに今の私達は」 
 自分達はといいますと。
「ウィンキーの国にいるでしょ」
「あっ、この国にはですね」
「かかしさんがおられますね」
「オズの国一の知恵者のあの人が」
「だからよ」
 オズマはジョージと神宝、カルロスの三人に笑顔で応えました。
「かかしさんにも聞いてみましょう」
「どうしたらいいか」
「そのことをですね」
「かかしさんにお聞きすればいいですね」
「それで答えが出る筈よ、それにかかしさんだけじゃないでしょ」
 さらにお話するオズマでした。
「このウィンキーにいる人は」
「樵さんもジャックもいますし」
「必ず相談に乗ってくれる人が」
「あの人達も知恵がありますから」
「そう、あの人達もいるから」
 それでというのです。
「絶対に答えを出してくれるわ、あの人達とお話したらね」
「そうそう、折角ウィンキーの国に来たのよ」 
 また言うガラスの猫でした。
「それならよ」
「かかしさん達ともね」
「お話すればいいのよ、ウィンキーの国に入ったら」
「もうそれで」
「そうよ、すぐにあの人達のお城やお家があるから」
 ブリキの樵のブリキのお城にです、かかしのお家やジャックのお家はウィンキーの国のかなり東にあるのです。
「すぐに聞けるでしょ」
「今から連絡入れておくわね」
 つぎはぎ娘が携帯を出してかかしにメールを送りました、するとすぐにかかしからメールで返事が来ました。
「カエルマンもいるそうよ」
「あら、あの人もなの」
「ええ、それでジャックも誘いをかけて」
 この人もというのです。
「樵さんのお城で待っているそうよ」
「四人でなのね」
「そうメールで答えてくれたわ」
「それじゃあね」
「ええ、樵さんのお城に行って」
 つぎはぎ娘はガラスの猫にお話しました。
「相談してみましょう」
「それでいいわね」
「ええ、もうこれでね」
「問題は解決したわ」
「後は猫の国に行って」
「実行するだけね」
「万事解決よ」
 二人でこうお話するのでした。
「じゃあ行きましょう」
「樵さんのお城から猫の国に」
「楽しい冒険の旅を続けつつ」
「歩いていきましょう」
「楽天的過ぎないかしら」
 ナターシャは笑ってお話する二人に首を傾げさせて聞きました。
「それは幾ら何でも」
「あら、楽天的かしら」
「普通よね」
「そうよね、だってあたし達が知恵を出してよ」
「かかしさん達も知恵を出してくれるから」
「もう問題は解決したわよ」
「既にね」
 ガラスの猫とつぎはぎ娘はそのナターシャに明るい声で述べました。
「かかしさん達に会うことも決まったし」
「あたしが知恵出したからね」
 特に言うのはガラスの猫でした。
「そうでしょ」
「一番美味しいお魚で一番美味しいお料理を作る」
「他の食材も調味料も一番を使ってね」
「一番ばかりでいけば」
「例えお魚に怒った犬の国の人達でもよ」
 それこそというのです。
「素直に喜んで食べるわよ」
「だといいけれど」
「あたし達が楽天的じゃなくてね」
 むしろと返したガラスの猫でした。
「あんたが悲観的過ぎるのよ」
「そうかしら」
「そうよ、悲観的になって問題が解決する?」
「そう言われると」
「悲観的に、最悪のことばかり考えてもね」
「意味がないのね」
「ええ、最悪のことなんてあたしは考えてもね」
 ガラスの猫も考えることは考えるのです。
 ですがそれでもです、こうも言ったのでした。
「そこから最高の展開と結末を考えるのよ」
「それがいいのね」
「そうよ」
 ナターシャに胸を張って言い切りました。
「だからよ」
「今もなのね」
「そうしたからよ、というか最悪の事態って今回のお話だとね」
「ないっていうの」
「もう喧嘩してる時点で最悪でしょ」
 それこそというのです。
「既にね、だったらね」
「もう上がるしかないから」
「そうよ、どう上がるかって考えたら」
「その結論になったのね」
「それだけよ」
 ガラスの猫にしてはです。
「だからね」
「この結論に至ったから」
「何でも一番の魚料理を出して」
「それでなのね」
「犬の国の人達を喜ばせて」
「終わらせるの」
「そうよ、それであたしが知恵を出したし」
 それにというのです。
「かかしさん達もそうしてくれるなら」
「後は貴女達の知恵を実行する」
「それで終わりよ、本当に簡単じゃない」
「そういうことね」
「ええ、じゃあこれからね」
「まずはかかしさん達が待っている樵さんのお城に行く」
「そうしましょう」
 こうお話してでした、一行はてくてくと歩いてでした。それで途中で朝御飯のオートミールを食べてからです。
 朝御飯の後も歩いてお昼はです、恵梨香がガラスの猫が言った一番のお魚の一番のお料理を意識してリクエストしたお料理を皆で食べることになりました。そのお料理はといいますと。
「これはね」
「どうでしょうか」
「いえ、凄い味ね」
 オズマはお箸とお椀でそのお料理、河豚鍋を食べながら恵梨香に応えました。
「物凄く美味しいわ」
「はい、咄嗟に思いついたんですが」
「この河豚鍋がなのね」
「一番美味しいお魚のお料理じゃないかって」
「そう思ってなのね」
「リクエストしてみましたけれど」
「これは確かにね」
 オズマは河豚だけでなくお鍋の中の白菜やお葱、お豆腐に茸そして糸蒟蒻といったものを食べつつ恵梨香に応えました。
「美味しいわね」
「そうですよね」
「それも凄く」
「河豚は美味しいですよね」
「ええ、こんな美味しいお魚があるのね」
「あとお刺身や唐揚げにしましても」
 そうしたお料理もというのです。
「これがです」
「そちらもなのね」
「物凄く美味しいんですよ」
「そうなのね」
「ですから」
「犬の国の人達にはなのね」
「河豚を出せばいいかも知れないです」
 こうオズマに言う恵梨香でした、そしてです。
 ナターシャ達四人もです、こう言うのでした。
「河豚はね、確かにね」
「他のお魚とはまた核が違う」
「そんな味だね」
「こんなに美味しいなんてね」
「ええ、何ていうかね」
 オズマは河豚をさらに食べながらこうも言いました。
「日本人はこんな美味しいお魚をいつも食べてるのね」
「いつもじゃないです」 
 そこは断った恵梨香でした。
「河豚は高いんです」
「数が少ないお魚なの」
「数は多いです、河豚の種類も多くてよく釣れます」
「あら、じゃあしょっちゅう食べられるわね」
「いえ、それが」
 どうにもというお顔になって言う恵梨香でした、勿論恵梨香も食べています。ガラスの猫とつぎはぎ娘、チクタクは食べている皆と同じくお鍋を囲んでそのうえで食べて笑顔になっている皆を見ています。
「河豚は毒がありまして」
「毒があるの」
「はい、ですから」
「高いのね」
「その毒がかなり強くて」
 恵梨香はオズマに河豚の毒のお話もしました。
「当たったら死ぬんです」
「死ぬの」
「もの凄く強い毒でして」
「オズの国では誰も死なないし毒もね」
「ないですよね」
「ええ、けれど外の世界ではあるわね」
「それで外の世界の河豚には毒があるんです」 
 こうオズマにお話するんどえした。
「その毒のある部分を取り除いて食べないといけないので」
「河豚は外の世界では高くて」
「あまり食べられないんです」
「そうなのね」
「種類によって毒がある部分が違います」
「そういえばこのお魚内蔵はないわね」 
 つぎはぎ娘はお鍋の中をボタンの目で見て言いました。
「それは入ってないわね」
「河豚の多くにはなのよ」
「内臓になのね」
「毒があってね」
 それでとです、恵梨香はつぎはぎ娘にも答えました・
「皮に毒がある種類もあるの」
「この河豚は皮も入ってるわね」
「そうした種類みたい、ただ内臓はね」
「大抵の河豚になのね」
「毒があってね」
「食べないのね」
「取り除いているの」 
 食べる前にというのです。
「丁寧にね」
「それで食べないのね」
「そうなの、とにかく河豚は毒があるから」
「食べるには注意が必要なのね」
「あまり食べられないの」
 まさにそのせいでというのです。
「調理に特別な技術が必要だから」
「毒のある部分がちゃんとわかっていて捌けるね」
「それが必要だからなのよ」
「よくわかったわ、河豚のことがね」
「あたしもね。けれどこっちの世界じゃ毒はないのよ」
 ガラスの猫はこのことを指摘しました。
「だったらね」
「毒のことは気にしないで」
「河豚を食べればいいのよ」
「そうなのよね、このお話は前に誰かとしたわね」
 ここでこのことをふと思い出した恵梨香でした。
「河豚のことを」
「そういえばそうかしら」
 オズマも恵梨香のその言葉に応えました。
「河豚のことで」
「そうだったかと」
「私その時にそこにいたかしら」
「どうだったでしょうか」
「わからないわね、けれど今食べてるわね」
「はい、それでですね」
「もう河豚のことはわかったわ」
 河豚だけでなくお野菜やお豆腐も食べつつ言うオズマでした。
「この素晴らしい味がね」
「そしてオズの国ではですね」
「毒自体がないから」
 それでというのです。
「河豚もね」
「好きなだけ食べられますね」
「それも安心してね」
「それは最高のことですね」
「恵梨香も河豚が好きなのね」
「大好きです」
 恵梨香はオズマににこりと笑って答えました。
「本当に」
「そうなのね」
「はい、冬は食べたくなります」
「こうしてお鍋にして」
「そうなんです、すき焼きもいいですが」
「ああ、すき焼きはね」
 このお鍋はオズマも知っていました。
「いいわね」
「オズマ姫もお好きですか」
「ええ、大好きよ」
 実際にとです、オズマは恵梨香ににこりと笑って答えました。
「あのお鍋もね」
「牛肉のお鍋でして」
「美味しいわね、あと鶏の水炊きも好きよ」
「あのお鍋もですか」
「鱈も好きだし、日本はお鍋も多いわね」
「美味しいですよね」
「どのお鍋もね、けれど本当にこの河豚のお鍋は」
 うっとりとさえして言うオズマでした。
「最高に素敵よ」
「そうなんですね」
「このお鍋なら」
「犬の国の人達もですね」
「きっと食べる筈よ」
「絶対にですね」
「そう思うわ」
 オズマはこう言いました、それもはっきりとした声で。
「私はね」
「それじゃあ」
「ええ、河豚鍋はね」
「猫の国で、ですね」
「出す候補、それもね」
 まさにというのです。
「筆頭候補にね」
「しますね」
「皆もそれでいいわよね」
 ナターシャ達四人にも聞くのでした。
「河豚鍋をね」
「出すんですね」
「犬の国の人達に」
「そうして食べてもらって」
「猫の国の人達との仲直りにつなげるんですね」
「それでいいわね」
 オズマは四人の子供達にまた聞きました。
「この河豚鍋で」
「いいと思います」
「こんな美味しいお魚そうそうないですし」
「それならです」
「これでいきましょう」 
 四人も異論はありませんでした、こうしてです。
 河豚鍋は犬の国の人達に出すお料理の筆頭候補になりました、このことが決まってそうしてからもでした。
 皆は河豚鍋を食べていきます、オズマはそうしつつこうも言いました。
「河豚はお鍋だけじゃなかったわね」
「はい、お刺身や唐揚げにしてもです」
 恵梨香は再びオズマに答えました。
「凄く美味しいです」
「そうよね」
「それじゃあですね」
「ええ、旅の間にそうしたお料理も食べて」
 河豚の、というのです。
「出すかどうか考えていきましょう」
「そうするんですね」
「是非ね、けれどこんな美味しいお魚がね」
 こうも言ったオズマでした。
「毒があるなんてね」
「そのことはですね」
「私としては残念よ」
 外の世界でのこのことはというのです。
「それで中々食べられないのは」
「そうですよね、ですが毒があるので」
「それでなの」
「河豚自身を守ってるんです」
「毒があるから人もあまり食べなくて?」
「海の生きものもです」
 人間以外の生きものもというのです。
「食べないですから」
「河豚自身を守っているのね」
「そうなんです」
「それで毒があるのね」
 オズマも納得しました。
「成程ね」
「実際日本以外の国じゃ殆ど食べないみたいですし」
「中国では昔は食べてたけれど」
 中国人の神宝が答えます。
「今はもうね」
「ブラジルではアマゾンのお魚の中にいるかも知れないけれど」
 カルロスは首を傾げさせています。
「やっぱり食べないと思うよ」
「アメリカでもこうしたお魚はね」
 ジョージも言います。
「食べないからね、どうにも」
「ロシアでは河豚自体殆ど知られていないわ」
 最後にナターシャが言いました。
「そもそもね」
「そうよね、日本以外の国ではね」
 日本人の恵梨香も言うのでした。
「まず食べないお魚ね」
「というかそこまでして食べるってね」
 ガラスの猫がここで言うことはといいますと。
「ある意味凄いわよ」
「毒があっても毒がある部分を切り取って食べるなんてね」
 つぎはぎ娘も言います。
「普通しないからね」
「努力ーーいえ熱意ーーでしょうーーか」
 チクタクはこう思いました。
「美味しいーーものをーー食べようーーとーーいう」
「その意気は認めていいわね」
 ガラスの猫は右の後ろ足で耳の後ろを掻きつつ言いました。
「日本人のね」
「そういうものかしら」
「ええ、あたしは認めてあげるわ」
 ガラスの猫は恵梨香に言いました。
「だから感謝しなさいよ」
「そこで感謝を求めるの?」
「ええ、駄目かしら」
「ちょっと違うんじゃないかしら」
「じゃあどうすればいいのよ」
「そう言われると困るけれど」
「じゃあ感謝は求めないわ」
 恵梨香が困るならというのです。
「あたしが認めるだけでね」
「そうなのね」
「ええ、とにかくこのお鍋をね」
「出すことは考えていきましょう」
 オズマはガラスの猫に言いました、そうして一行は今は河豚鍋を楽しむのでした。






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