『オズのトロット』




                第十幕  王様と王女様

 一行はノーランドの国に入りました、これまで色々な国を巡ってきましたがこの国はどうかといいますと。
 オズの国の中では普通のお国で、です。カルロスは少し拍子抜けしたみたいに言いました。
「これまで独特の国ばかりでしたが」
「それでもよね」
「この国は普通ですね」
「オズの国の中ではね」
 トロットもこう応えます。
「普通よね」
「はい、お魚がお空を飛んでいても」
 見ればお空の上で本当に飛んでいます。
「オズの国では普通ですから」
「そうでしょ、この国自体はね」
「普通のオズの国ですね」
「そう言っていいのよ」
「ハイランドとローランドやメリーランドと比べたら」
「普通なの、ただ全部普通かっていうと」
「違うんですね」
「そうよ、見て」
 ここで、です。トロットは自分達から見て左手にある湖を指差しました。するとその湖の中からです。
 大きな首が出てきました、細長い首と小さな頭を持つそれは。
「恐竜ですか」
「この国は恐竜が一杯いるのよ」
「オズの国の中でもですか」
「そうなの、この国は恐竜が一番多いの」
 オズの国の中でもというのです。
「そして恐竜さん達と皆がね」
「仲良くなのね」
「暮らしているのよ」 
 そうしたお国だというのです。
「この国はね」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」
 さらにお話するトロットでした。
「色々な種類の恐竜がいるわよ」
「あの恐竜は確か」
「ブラキオサウルスかな」
 ジョージはその頭を見ていいました。
「完全に丸くなくて額のところが出ているから」
「あそこにお鼻の穴があるしね」
 神宝はその出ている額にそれを見ました。
「それじゃあね」
「私は恐竜のことはよくわからいけれど」
 ナターシャは男の子達程恐竜には詳しくないみたいです。
「あの大きさだとそうかしら」
「見れば大きな湖で周りにも恐竜さん達がいるわね」
 恵梨香は湖とその周り全体を見て言いました。
「何十匹も」
「あそこは恐竜の湖なのよ」
 トロットは五人に笑ってお話しました。
「ブラキオサウルスのね」
「やっぱりブラキオサウルスですか」
「その恐竜ですか」
「何かと思ったら」
「その恐竜なんですね」
「ブラキオサウルスっていう」
「そうよ、あの恐竜はああして湖の中にいることが多いのよ。前にも会ったかお話したわね」
 こうも言ったトロットでした。
「あの恐竜のことは」
「そういえば」
 カルロスはトロットのお話を聞いてそのことを思い出しました。
「そうでしたね」
「他にも色々とね」
「恐竜が多いお国なんですね」
「そうなの、そして王宮に行けば」
 そうすればというのです。
「もっと面白いものが見られるよ」
「といいますと」
「そう、それは行ってみてのお楽しみよ」
 その王宮までというのです、こうしたことをお話してそうしてなのでした。皆は湖を見つつ王宮に向かって進んでいきます。
 そして王宮があるノーランドの都まで来るとです、何と。 
 街は城壁に囲まれておらず街の中では色々な種類の恐竜達が街の中を闊歩していて街の人達と仲良くお話をして遊んでいます。
 その状況を見てです、五人はびっくりして思わす叫びそうになりました。
「恐竜が一緒に!?」
「街の中で街の人達と一緒にいるよ」
「それも楽しくお喋りして遊んで」
「こんな街あるの」
「オズの国には」
「そう、確かにこの国はオズの国の中では普通だけれど」
 それでもと言うトロットでした。
「こうしてね」
「普通じゃないところもあるんですね」
「他のオズの国と比べて」
「そうなんですね」
「こうして恐竜と皆が一緒にいる」
「そうしたこともあるんですね」
「そうなの、こうしてね」 
 まさにというのです。
「普通じゃないところもあるのよ」
 こうお話するのでした。
「他のオズの国と比べてね」
「いや、充分普通じゃないですよ」
 驚いたお顔のままです、カルロスはトロットに言いました。
「これは」
「オズの国でもよね」
「こんな街他にないですから」
「こうした街もあってね」
「そすてなんですね」
「オズの国はね」
 さらにお話するトロットでした。
「何処もそれぞれ個性があってね」
「普通のお国もですね」
「どの国も普通じゃないんですね」
「そうよ」 
 まさにというのです。
「見ての通りね」
「いや、凄いですね」
「凄いと言うのね」
「普通じゃないです」
「オズの国はの中では普通だけれどね」
「普通じゃない」
「どの国もね」
 オズの国の中にあるどの国もです、その中で普通のお国も実は違うのです。このことが本当にあるのです。
「そうなのよ」
「というかオズの国で普通は」
「こう言うとないわね」
「そうなりますね」
「ええ、だからね」
 さらにお話するトロットでした。
「この国は面白いのよ」
「普通のものはないから」
「何処にもね」
「それぞれのお国、場所に個性があるのだよ」
 教授は笑って五人にお話しました。
「オズの国は」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」
 さらにお話した教授でした。
「我々も遊べてね」
「お話出来るんですね」
「恐竜の皆とね」
「そう、出来るからね」
 こうカルロス達にお話するのでした。
「後で楽しもう」
「バド王とフラフ王女とお会いした後で」
「それからね」
「あれが王宮だよ」
 モジャボロは街の大通りの先にある王宮を指差しました、その王宮は紫の大理石で築かれたぴかぴかと光っていて沢山の建物や塔がある左右対称のとても奇麗な外観でした。
「ノーランドのね」
「あそこにですね」
「今から行こう」
 こうお話してです、そしてでした。
 一行は大通りを進んで王宮に向かいました、王宮には程なく着いてです。中に入って王の間に入るとです。
 見事な王様の服を着た金髪の少年と長い金髪の華奢な奇麗なドレスを着た少女が二つの玉座に並んで座っていました、二人共目の色は青でお顔立ちがよく似ています。
 そのお二人にです、トロットは笑顔でお話をしました。
「お久し振り」
「うん、こちらこそね」
 少年がトロットに笑顔で応えました。
「よく来てくれたね」
「用件は連絡した通りよ」
「プレゼントを届けにだね」
「来たのよ」
「嬉しいよ、じゃあ喜んでね」
「プレゼント受け取ってくれるのね」
「そうさせえもらうよ」
 こうトロットに返事をするのでした。
「これからね」
「それじゃあね」
「それでだけれど」  
 見れば少年は十六歳位です、トロットよりも年上で少女はその男の子よりも一歳か二歳年上の感じです。
 そのお二人がです、カルロス達を見てトロットに尋ねました。
「その子達があの」
「そう、オズの国の名誉市民のね」
「五人の子供達だね」
「そうよ」
 トロットはにこりと笑って答えました。
「この子達がね」
「そうだね、はじめまして」
 少年は五人に笑顔で挨拶をしました。
「このノーランドの国王バドだよ」
「王女のフラフよ」
 少女もにこりと笑って答えました。
「バドの姉でこの国を二人で治めているの」
「はじめまして」
 五人もお二人に笑顔で挨拶を返しました。
「お邪魔させてもらっています」
「邪魔なんかじゃないよ」
 バド王が笑って言葉を返しました。
「とてもね」
「だといいですけれど」
「それなら」
「よく来てくれたね、じゃあ今からね」
「皆で歓迎のパーティーをするから」
 フラフ王女も言ってきました。
「楽しんでね」
「いや、皆に歓迎されてもらってね」
 キャプテンも笑顔で言います。
「嬉しいよ」
「そう言ってもらえると僕達も嬉しいよ、じゃあね」
「今からだね」
「プレゼントを受け取って」
 そしてというのです。
「我が国のパーティーを開くよ」
「ノーランドのですね」
「そうだよ、これからね」
 まさにとです、バド王はカルロスに答えました。
「そうさせてもらうよ」
「どんなパーティーなんでしょうか」
「それは見てのお楽しみだよ」
 今は内緒というのです。
「もうすぐだからね」
「楽しみにてですね」
「待っていてね」
「それじゃあ今からね」
 トロットが前に出てそうしてでした、お二人に笑顔でプレゼントを手渡しました。それが終わってからです。
 お二人は皆を笑顔で王宮の外、街に案内しました。そのうえで皆に言うのでした。
「さて、ではね」
「今からパーティーをはじめましょう」
「あれっ、ここでなんですか?」
 カルロスは街に案内してくれたお二人に怪訝なお顔で尋ねました。
「街でするんですか」
「そうだよ、街でパーティーを開くのが我が国の最高のおもてなしなんだ」
「街で、ですか」
「そう、恐竜と街の皆と一緒にね」
「遊んでお喋りして」
「そして飲んで食べてね」
 そうしてというのです。
「楽しくやるんだ」
「そうしたパーティーですか」
「そうだよ」
 バド王はカルロスに笑顔で答えました。
「珍しいパーティーだね」
「はい、確かに」
「そしてそのパーティーをね」
「今からですね」
「楽しもうね」
「そんなパーティーがあるなんて」
「面白いね」
「そして今から」
「そう、一緒にね」
「皆で楽しもうね」
 こうしてです、皆で恐竜そして街の人達と遊びはじめました。皆は恐竜とお話をしたりその大きなお身体の上に登ったりしてです。
 遊びます、カルロスはバド王とフラフ王女と一緒にスーパーサウルスの頭の上に乗ってそのうえでなのお二人に尋ねました。
「あの、お二人は最初は王様や王女様じゃなかったんですね」
「うん、そうだよ」
「色々なことがあってね」
「それでなったんだ」
「今の王様と王女様にね」
「何かそうした人が多いですよね」
 カルロスはお二人のお話を聞いて言いました。
「オズの国には」
「オズマ姫もだしね」
 フラフ王女がにこりと笑ってカルロスに答えました。
「思えばドロシーだってね」
「お姫様にですね」
「色々あってなったわね」
「何度かオズの国にお邪魔して」
 そうしたことがあってです。
「お姫様になっていますね」
「この国は本当にね」
「冒険の末にお姫様になってますね」
「トロットもだし」
 トロットは今はプテラノドンの背中に乗ってお空を飛んでいます、その横にはキャプテンも一緒です。他の皆も恐竜や街の皆と一緒に遊んでいます。
「お姫様になったわね」
「冒険の末に」
「そして私達もね」
「冒険の末に」
「お姫様になってね」
「僕は王様になったんだ」
 バド王も笑顔でお話します。
「そうなったんだ」
「そうですよね」
「ただ、僕はね」
「王様というのは」
「オズの国で冒険の末になる人はね」
「ドウ一世がおられても」
「僕達位なんだよね」
 王様になった人はというのです。
「ウーガブーの国は王様でリンキティンク王もいて獣の王様がいても」
「何か王女様が多いですね」
「そうなんだよね、樵さんは皇帝だし」
「何かですね」 
 カルロスは首を傾げさせつつバド王にお話しました。
「王様と皇帝って違うんですよね」
「うん、これがね」
「実際にですね」
「全然違うんだ」
 バド王自身こうお話します。
「皇帝は王様の上にあるんだ」
「そうですよね」
「王様は一つの民族を治めてるけれど」
「皇帝は違っていて」
「複数の民族を治めているんだ」
「樵さんはウィンキー全体を治めておられるので」
「そう、ウィンキーには沢山の民族がいるからね」
 このことはカドリング、マンチキン、ギリコンも同じです。オズの国のこの大きな四国の中には非常に沢山の人とお国があります。
「だからね」
「それで、ですね」
「あの人は皇帝なんだ」
「そして皇帝もですね」
「この国ではオズマ姫が国家元首だからね」
「皇帝の上におられる」
「言うならば法皇かな」
 こう答えたバド王でした。
「外の世界で言うと」
「外の世界のこともご存知ですか」
「トロット達から聞いてね」
 それで知っているというのです。
「僕も知ってるよ」
「そうなんですね」
「そちらでも王の上に皇帝がいてだね」
「はい、そして日本では違いますけれど」
 今はステゴザウルスとお話をしている恵梨香を見つつお話をします、見ればそこにジョージと神宝、ナターシャもいます。
「欧州ではそうみたいです」
「皇帝の上に法皇がいるね」
「はい、あとロシアは皇帝と法皇が同じだったとか」
 今度はナターシャを見てお話したカルロスでした。
「言うならばオズマ姫が皇帝で法皇で」
「兼ねていたんだね」
「そうだったみたいですが」
「オズの国ではね」
「皇帝の上のオズマ姫はですね」
「法皇様みたいな存在だね」
 強いて言うならというのです。
「あの人は」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」 
 さらにお話するバド王でした。
「僕は王様でね」
「その王様になられるのにですね」
「冒険の末にね」
「イッソスの女王と戦争にもなりかけて」
「あの時は大変だったわ」
 くすりと笑ってです、フラフ王女も言ってきました。
「一体どうなるかってね」
「思ったよね」
「それが無事解決してね」
「僕達は仲良くなれたしね」
「二つの国は平和になって」
「僕は王様になって」
「私はお姫様になったわ」
 そうしたことがあったというのです。
「あの時は大変だったけれど」
「今は素敵な思い出だね」
「本当にね」
「そのイッソスの女王のところが最後に行く場所なんですよ」
 カルロスは笑ってそのお二人にお話しました。
「このノーランドの次に」
「そうだね、じゃあね」
 バド王はカルロスのお話を聞いて笑顔で応えました。
「僕達からも宜しくって伝えてくれるかな」
「お友達としてですね」
「また会った時は宜しくとね」
「はい、伝えさせてもらいます」
 笑顔で答えたカルロスでした。
「そのことは、というかもうすぐにでも」
「メールで、ですね」
「はい、僕達はイッソスの女王のメールアドレスを知らないですが」
「トロットなら知ってるよ」
「それならトロット王女にお願いします」
 早速自分の携帯を出して言うカルロスでした。
「今から」
「そうしてくれるかな」
「はい、これから」
 笑顔で答えたカルロスでした、そしてです。 
 早速トロットに携帯をかけてお願いをしますとトロットからも返事がきてです、そのうえでなのでした。
 トロットもメールを送りました、その返事がきますとカルロスはバド王とフラフ王女に笑顔で答えました。
「連絡してくれたそうです」
「それは嬉しいね」
「有り難いわ」
 笑顔で応えたお二人でした。
「本当にまたね」
「イッソスの女王とお会いしたいね」
「中々お会い出来ないんですね」
「お互いの国のことがあるからね」
「政治をしないといけないから」
 だからと答えたお二人でした。
「それでなの」
「中々ね」
「そうなんですね」
「だからね」 
 それでとです、バド王はカルロスに言いました。
「今こうしてね」
「僕達にお願いしたんですね」
「そうだよ、しかしね」
「しかし?」
「こうした連絡も今は簡単に出来るね」
 そうなったことを喜んでの言葉でした。
「そうなったね」
「携帯のメールで」
「本当に簡単にね」
「昔は違っても」
「僕達が王様になった時なんか」
 その頃のオズの国はというのです。
「そんなものとてもなかったから」
「想像も出来なかったわよ」
 フラフ王女も笑ってカルロスにお話します。
「携帯なんて、あとコンピューターも」
「そちらもですね」
「そうよ、潜水艦だってなかったし」
 その頃のオズの国はです。
「この国だってオズの国の外にあったわね」
「死の砂漠の」
「そう、死の砂漠も大陸の端になかったし」
 そうした状況でもなかったのです。
「外の世界からは簡単には見えなくてレーダーにも反応しない結界もなかったわね」
「あっ、結界ですね」
「その結界があるからね」
「僕達もですね」
「オズの国が見えないのよ」
 外の世界からはです。
「お空からも見えないし」
「地球にあってもですね」
「地図には海としか描かれていないわね」
「そうなんです、オズの国のありそうな場所は」 
 この地球に確かに存在していてもです。
「そこは海になっています」
「そうもなっていなかったのよ」
「その頃はですね」
「そう、それが変わったし」
「携帯での連絡もですね」
「出来る様になったから」
 だからだというのです。
「嬉しいわ」
「イッソスの女王様にも連絡出来て」
「本当にね」
「僕達も携帯は持っているよ」
 笑ってです、バド王がお話してきました。
「ちゃんとね、けれどね」
「けれど?」
「実は侍従長さんが管理しているんだ」
 バド王とフラフ王女の携帯はというのです。
「だから気軽には使えないんだ」
「そうなんですか」
「うん、王様と王女様は携帯は気軽に使うべきでない」
「そう言われてなの」
 二人でカルロスにお話します。
「必要な時以外にはなの」
「携帯を使わせてもらえないんだ」
「そうなんですね、何か」
 そう聞いてです、カルロスは考えるお顔になって言いました。
「王様も大変なんですね」
「あれをしたら駄目、これをしたら駄目とかね」
「結構あるわよ」
「携帯のこともそうだしね」
「一日のスケジュールも細かく決まってるし」
「特に我が国の侍従長は厳しいから」
「そうしたことが決められているのよ」
 お二人は少し苦笑いになってカルロスにお話しました、その侍従長さんがいる王宮の方を見ながらです。
「何かとね」
「それがちょっと困るかな」
「こうして皆へのおもてなしで遊ぶのも許可が必要だし」
「他のこともね」
「何か侍従長さんが親みたいですね」
 そのお話を聞いてこう思ったカルロスでした。
「何か」
「うん、そうだね」
「私達にとってはそうね」
「優しいけれど厳しくてね」
「私達のことをいつも見守ってくれているから」
「強いて言うとね」
「私達の今のお父さんとお母さんね」
 まさにそうした人達だとです、二人もカルロスに答えます。
「そうした人になるね」
「そのことは事実ね」
「そうですね、けれどそれだけお二人をいつも見守ってくれていて」
 優しく厳しくです。
「大事に思ってくれているんですね」
「そうなんだ、だからいつも色々なことを教えてくれるよ」
「政治のこともお勉強のこともね」
「世の中の大事なことも」
「全部教えてくれるの」
「凄い人ですね、その侍従長さんがおられるから」
 だからと思ったカルロスでした。
「お二人もですね」
「国王としてやっていけるんだ」
「私も王女としてね」
「冒険の末で王様になったけれど」
「それからはそうして助けてもらってやっていってるの」
 国家元首としてというのです。
「政治もね」
「侍従長さんと他の人達にもね」
「政治は一人では出来ないんですね」
 このことをここでわかったカルロスでした。
「そうなんですね」
「うん、そうだよ」
「一人や二人で出来るものじゃないのよ」
 それが政治だとです、お二人はカルロスに答えました。
「だから侍従長さんもいてくれて」
「他の人もいてくれてね」
「僕達も政治が出来るんだ」
「この国をやっていけてるのよ」
 そうだというのです、そしてです。
 今は皆で恐竜と一緒に遊びました、カルロスは今度はトリケラトプスの背中に五人とトロットと一緒に乗りました。
 カルロスは皆と一緒にトリケラトプスに乗ってまずはこう言いました。
「六人で乗れるかと思ったら」
「乗れたね」
 ジョージがカルロスに答えました。
「大丈夫だったね」
「案外大きいからね、トリケラトプスって」
 神宝はこの恐竜の大きさのことをお話しました。
「全長七メートル以上だし」
「それだけあると背中も広いから」
 ナターシャは山なりの背中に座っています、見れば六人共縦に並んでそのうえで座ってお話をしています。
「座れたわね」
「ええ、六人で座って」
 そしてと言う恵梨香でした。
「いけるなんて凄いわ」
「これが恐竜だよ」
 トリケラトプスが笑って言ってきました。
「僕達は大きいからね」
「だからね、子供だと六人位はね」
「こうして乗せられるんだよ」
 トリケラトプスはトロットにもお話しました。
「こうしてね」
「そうよね」
「僕達の大きさは他の人達から見れば結構以上だからね」
「その大きさもいいんだよ」 
 カルロスはトリケラトプスに目を輝かせて言いました。
「僕達にとっては。それに外の世界にはいないし」
「恐竜は」
「そう言われているんだ」
「いるってお話もあると聞いてるけれど」
 トロットは他ならぬカルロス達から聞いたお話を言いました。
「それでもね」
「はっきりとは見付かっていないですから」
「だからもういないとなってるのね」
「そうなんです」
 実はというのです。
「外の世界では」
「いたらいいわね」
「夢がありますね」
「そうよね、そしてオズの世界ではね」
 この世界ではというのです。
「恐竜もいるのよ」
「そうなんですね」
「外の世界ではないこともあるから」
「それがオズの国だから」
「こうして恐竜もいるのよ、しかもね」
 それだけでなくというのです。
「恐竜とお話も出来るのよ」
「こうしてですね」
「そう、出来るのよ」
 今の様にというのです。
「オズの国では生きものも喋れるから」
「それも普通に」
「しかも貴方達普通に読み書き出来てるわね」
 ふとこのことを指摘したトロットでした。
「オズの国でも」
「あっ、そういえば」
「普通に英語でやり取りしてるわね」
「僕達が使ってる言葉英語だったんですか」
「そうよ、ジョージはアメリカ人だから当然だけれど」 
 トロットはそのジョージを見つつカルロスにお話しました。
「中国人の神宝もロシア人のナターシャも日本人の恵梨香も普通にお話出来てるでしょ」
「そしてブラジル人の僕も」
「皆英語喋られるかしら」
「いえ、日本の学校にいて日本にいて長いですから」
 それでと答えたカルロスでした。
「日本語の読み書きは出来ますけれど」
「それでもよね」
「英語は」
 このことはジョージ以外の四人はです。
「出来ないです」
「そうよね、けれどね」
「オズの国ではですね」
「こうして皆お話が出来てるの」 
 ごく普通にというのです。
「入るとね」
「それだけで、ですか」
「オズの国の住人として英語の読み書きが出来るのよ」
「そうなんですね」
「ブラジルはポルトガル語よね」
「はい、今じゃブラジル語とも呼ばれてますけれど」
 それでもと答えたカルロスでした。
「そうです」
「英語を喋ってるって意識はあったかしら」
「そういえばなかったです」
 このことは実はジョージ以外の子は全員そうでした、オズの国に入って英語を喋っているという感覚はなかったです。
「日本語についても」
「そうよね」
「特に」
「それでも普通に英語を読み書き出来ていたのはね」
「それも意識しないで」
「オズの国だからよ」
「お伽の国だからですね」
「それが普通なのよ」
 まさにというのです。
「言葉についても」
「皆普通に英語の読み書きが出来ている」
「オズの国自体にかかっている魔法でね」
「そうだったんですか」
「だから皆普通に喋られるの」
 それぞれのお国にいるみたいにというのです。
「そうだったのよ」
「それは凄いことですね」
「オズの国ならではね」
「それじゃあ」
「このことについても安心してね」
 そうしてとです、トロットはカルロスににこりと笑って言いました。
「遊んでいきましょう」
「今もですね」
「そう、恐竜さん達と一緒にね」
 こうお話してそしてでした、皆で恐竜と仲良く遊んでノーランドの人達とも楽しくお喋りもしてでした。
 皆は王宮で出された晩御飯も食べるのですがそのメニューはといいますと。
「あっ、これは」
「それぞれのお国のお料理だね」
「全部出てるね」
「それも全部」
「ちゃんと」
「うん、君達それぞれのお国をと思って」 
 五国のお料理を出したいと考えてというのです。
「出したんだ」
「そうなんですね」
「こうしてですね」
「僕達のお国のお料理をそれぞれですか」
「出してそしてですね」
「食べてもらいたくて」
「そうだよ、だから食べてね」
 テーブルの上にはターキーのグリルに海老蒸し餃子、ブラジル料理のタブレサラというサラダにボルシチ、そしてざる蕎麦があります。その他にはハンバーガーや炒飯、フェイジョアーダ=コンプレッタやロシアの濃厚なサラダ、湯豆腐まであります。五人共それぞれのお国のお料理を見て喉をごくりと鳴らしました。
 そのうえで、です。五人でバド王に言いました。
「いや、凄いですね」
「まさかこれだけ一杯あるなんて」
「どれを食べていいか迷います」
「本当に」
「それだけあります」
「好きなのを食べてね」
 これがバド王の五人への返事でした。
「そうしてね」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「好きなものを食べさせてもらいます」
「私達それぞれで」
「そうさせてもらいます」
「是非ね」
 こう答えてでした、そのうえで。
 五人も他の皆も五国のお料理を楽しく食べはじめました、モジャボロはブラジル料理のフェイジョアーダ=コンプレッタを食べて言いました。
「これ美味しいね」
「うん、面白い味だよ」
 教授もそれを食べつつモジャボロに応えます。
「これはまた」
「そうだね、とてもね」
「こうしたお料理もあるのだね」
「ブラジル、そして外の世界のアメリカには」
「そして我々も食べられる」
「いいことだよ」
「他のお料理もいいね」
 キャプテンは蒸し餃子を食べています。
「蒸し餃子はわし等も結構食べているけれど」
「そうよね、中華料理や和食はね」
「オズの国でも普通に食べられるね」
「フランス料理やイタリア料理も多くて」
「アジアだとその二国だね」
「ええ、私もよく食べるわ」
 トロットにしてもです。
「和食や中華料理は」
「そうだね」
「こうしてね」
 ざる蕎麦を食べつつ答えたトロットでした。
「食べているから」
「そうだね、ロシア料理もあるしね」
「ブラジル料理もね。けれどこうして」
「五国のお料理を一度に食べることは」
「ちょっとないから」
「いい経験だね」
「本当にね」
 トロットはお箸を器用に使ってそうしてお蕎麦をおつゆの中に入れてお口の中で楽しみます。そうしつつ言うのでした。
「今回は」
「そうも思ってなのよ」 
 皆と一緒に五国のお料理を楽しんでいるトロットが言ってきました。
「こうしてね」
「出してくれたのね」
「五国のお料理をね」
「そうなのね」
「デザートもだよ」
 そちらもというのです、バド王がお話します。
「五国のものを用意したよ」
「林檎に柿にライチに」
「オレンジにすぐりとね」
「まさに僕達のお国の果物ですね」
「全部用意したからね」
 それぞれの国で人気のあるよく食べられる果物をというのです。
「楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
 大好物のオレンジを見つつです、カルロスはバド王に答えました。
「最後に」
「そうしてね、僕としてはね」
「バド王はですか」
「どの果物も好きだけれど」 
 その中でもというのです。
「最近はすぐりが好きかな」
「そちらの果物がですか」
「好きかな」
 こう言うのでした。
「ここにあるどの果物も好きだけれどね」
「それでもですね」
「一番好きなものはね」
「すぐりですか」
「今はそうだよ」
「すぐりもいいわよね」
 トロットはすぐりと聞いてにこりと笑って言いました。
「今お話に出たどの果物も好きだけれど」
「その中でもですね」
「そう、すぐりをパイにしたりケーキにしたりしたら」
「特にですか」
「好きよ、そのまま食べても好きだけれど」
 お菓子にしてもというのです。
「それが好きよ」
「あっ、それならね」
 フラフ王女はトロットのお話を聞いて笑顔で言いました。
「すぐりのパイかケーキもね」
「作ってくれるの?」
「シェフにお願いしてね」
 そうしてというのです。
「出すけれど」
「それじゃあ」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「皆に食べてもらうわ」
「それは嬉しいわ、本当にね」
「最近のトロット王女のお気に入りね」
「そうなの、すぐりが好きで」 
 そしてというのです。
「そのパイとかケーキがね」
「特にお気に入りね」
「それじゃあね」
「ええ、果物の後でね」
 それを食べた後でというのです。
「皆で食べましょう」
「それじゃあね」
 笑顔で応えたトロットでした、そして実際にです。
 お料理の後にデザートの果物達を食べてそのすぐりのパイを見てです、フラフ王女ににこにことして言いました。
「いいわね」
「見ただけでだね」
「ええ、嬉しいわ」
 こうした気持ちになるというのです。
「私もね」
「それじゃあね」
「最後にこれを食べてね」
「あと飲みものはどうするのかしら」
「あっ、飲みものね」
「ええ、そちらはどうするかしら」
「そうね、飲みものはね」
 そう言われてこう答えたトロットでした。
「紅茶ね、それもクリームをたっぷり入れたね」
「そうした紅茶ね」
「それにするわ、ホットでね」
 そちらにというのです。
「そうするわ」
「それじゃあね」
「じゃあ僕も紅茶にします」
「僕もです」
「私もそれに」
「私もです」
 ジョージと神宝、ナターシャと恵梨香も紅茶でした。
「ストレートで」
「ジャムを一緒に」
「僕はミルクをお願いします」
「僕はレモンを」
「僕も紅茶ですが」
 カルロスが言う紅茶はといいますと。
「アイスでお願いします」
「五人共違うのがまた個性だね」
 笑顔で言ったバド王でした、五人のお話を聞いて。
「それぞれのお料理と一緒で」
「うん、五人共結構こうしたところあるんだよ」
「これがね」
 教授とモジャボロがバド王に笑ってお話しました。
「こうしてね」
「飲みものにも五人それぞれの個性が出たりするんだ」
「そうだね、五人共服装や外見にも個性が出ているし」
 それぞれのファッション、特に色を見て言うバド王でした。
「飲みものにもね」
「個性が出るんだよ」
「それを見るのも面白いからね」
「それがわかるよ、じゃあ僕はコーヒーを飲もうかな」
「私もね」
 お二人はこちらをというのです。
「ミルクコーヒーね」
「そちらにするよ」
「僕はウィンナーコーヒーにしようかな」
 モジャボロはそちらのコーヒーをと言いました。
「それにね」
「私はストレートにするよ」
 教授はそちらでした。
「ホットでね」
「わしはクリームの紅茶にするか」
 キャプテンはトロットと同じものでした。
「そちらをね」
「それじゃあね」
「それぞれ出させてもらうわね」
 二人が笑顔で応えてでした、それぞれの飲みものも出してもらいました。そしてそれからなのでした。
 皆はパイの後のそれぞれの飲みものも楽しんででした、トロットは満足している笑顔でバド王とフラフ王女に言いました。
「最高だったわ」
「それは何よりだよ」
「そう言ってもらえるとね」
「ええ、このことは忘れられないわ」
 こうお話するのでした。
「だからずっとね」
「覚えていてくれるんだね」
「そうしてくれるのね」
「ええ、じゃあまたね」
 笑顔でお話したトロットでした。
「お邪魔させてもらうわね」
「そしてまたね」
「また来てね」
 二人もこう返してです、そしてでした。
 二人はトロット達に最後まで楽しんでもらってそれから笑顔で送り出しました。そしてノーランドの都を後にしてから。
 トロットは笑顔でカルロス達に言いました。
「じゃあ次はね」
「はい、次はですね」
「これからですね」
「イッソスの国に行きますね」
「最後の国ですね」
「いよいよ」
「そうよ、私達の旅の目的地よ」
 そこに行くというのです。
「遂にね」
「今回の旅も色々なところに行きましたけれど」
 カルロスはトロットにしみじみとした口調で言いました。
「それがですね」
「そうよ、いよいよね」
「最後の目的地に行って」
「終わるのよ」
「そうなるんですね」
「どんな冒険も旅もはじまりがあってね」
「終わるんですね」
「そうよ、終わるのよ」
「そうですか、終わると思うと」
 残念そうに言うカルロスでした。
「残念ですね」
「そうね、けれどまたね」
「冒険をですね」
「はじめるから」
 だからだというのです」
「その時にまた楽しんでね」
「そうですね、またオズの国にお邪魔して」
「楽しんでね」
 こうカルロスにお話するのでした。
「そうしてね」
「是非そうさせてもらいます」
「それじゃあね、これからね」
「イッソスの国にですね」
「行きましょう」
 こう笑顔で言ってでした、そのうえで。
 皆は今回の冒険の最後の目的地であるイッソスの国に向かうのでした、黄色い煉瓦の道を進みながら。








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